「コンタクトセンターを自動化したいけれど、どうすればいい?」
「わが社のコンタクトセンターの課題を解決するには、何を自動化するのが適している?」
コンタクトセンター(コールセンター)の運営を担当していて、そのような疑問や悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
コンタクトセンターの自動化といえば、以下の4パターンが代表的です。
・チャットボットで問い合わせに対応する |
これらの技術を導入することで、以下のような課題を解決することができます。
課題 | 適する自動化 | |
1 | 後処理など事務作業を効率化したい | 音声認識、RPA |
2 | オペレータの人員不足を解消したい | チャットボット、IVR |
3 | 応答率を上げ、放棄呼率を下げたい | チャットボット、IVR |
4 | オペレータの教育を効率化し、応対品質を均質化したい | 音声認識 |
5 | 休日や深夜帯も対応したい | チャットボット、IVR |
6 | VOCを適切に分析したい | 音声認識、RPA |
ただ、自動化の際には以下のことに注意が必要です。
・費用対効果を考える必要がある |
そこでこの記事では、コンタクトセンターの自動化について知っておくべきことを説明します。
◎コンタクトセンター(コールセンター)の自動化でできる4つのこと |
最後まで読めば、知りたいことがわかるでしょう。
この記事で、あなたのコンタクトセンターが適切に自動化できることを願っています。
1.コンタクトセンター(コールセンター)の自動化でできる4つのこと
業務の「自動化」とは、これまで人が行ってきた作業を、できるだけ機械やソフトウェア、AIなどに担わせることを指します。
たとえばコンタクトセンター(コールセンター)なら、これまでオペレーターが電話で対応していた問い合わせに、チャットボットなどのチャネルでも対応できるようにし、オペレーターの稼働を最小化するといったことです。
【チャットボットのイメージ】
これをはじめ、コンタクトセンターで自動化できるポイントといえば、以下の4つが挙げられるでしょう。
・チャットボットで問い合わせに対応する |
まずはこれらの技術がどんなものか、何ができるのか、そして自動化した際のメリット・デメリットについて説明していきましょう。
1-1.チャットボット:問い合わせに対応する
コンタクトセンター自動化の代表格といえば、「チャットボット」でしょう。
「チャットボット」とは、「チャット(=chat/おしゃべり)」+「ボット(=bot/ロボット)」から生まれた言葉です。
その機能をひと言でいえば、「リアルタイムで会話できる自動応答プログラム」で、コンタクトセンターに導入すれば、顧客からの問い合わせに自動で対応してくれます。
「チャット」というと、一般的には人と人がWEBを通じてメッセージをやりとりするサービスで、利用している人も多いでしょう。
チャットボットは、その対話相手をロボットが務めるしくみと考えてください。
たとえばコンタクトセンターなら、これまでオペレーターが対応していた顧客からの問い合わせや申し込み連絡などに、チャットボットが答えてくれます。
中でも「AIチャットボット」なら、より精度の高い回答が可能です。
チャットボットが回答できない複雑な問い合わせにだけオペレーターが対応すればいいので、オペレーターの負担を減らし、人件費の節約にもつながります。
また、チャットボットであれば、同時に複数の問い合わせに対応することも、24時間365日いつでも対応することも可能です。
顧客側も、オペレーターに電話がつながるまで待たされることが少なくなり、問題を自己解決できる率が高まるため、顧客満足度も向上するはずです。
チャットボットとは | リアルタイムで会話できる自動応答プログラム |
チャットボットで | オペレーターのかわりに問い合わせや申し込み受付に対応する |
チャットボットの | ・オペレーターの負荷を減らすことができる |
チャットボットの | ・質問と回答の「シナリオ設計」が難しい |
チャットボットについてさらにくわしく知りたい場合は、以下の関連記事を参照してください。
1-2.IVR:電話の一次対応をする
「IVR」を導入するコンタクトセンターも増えています。
「IVR(=Interactive Voice Response)」とは「自動音声応答システム」のことです。
コンタクトセンターに顧客から電話が入ると、オペレーターのかわりにIVRが一次対応をします。
例えば以下の図のようなしくみです。
顧客から入電があると、IVRがあらかじめ録音した音声を自動再生します。
そのアナウンスにより、顧客にプッシュ操作してもらう、あるいは顧客の声を音声認識することで、顧客を適切な二次対応に誘導するのです。
これにより、使い方の問い合わせなら「カスタマーサポート」に、故障の連絡は「修理受付」に、商品の注文は「注文受付」に、といった振り分けができ、オペレーターが専門外の質問に時間を取られることがなくなるでしょう。
また、夜間や休日などの問い合わせには、「折り返しご連絡いたします」と連絡先を残してもらい、営業時間内に対応することも可能です。
そのため、オペレーターの負担軽減、応対業務の効率化、24時間365日対応の実現などのメリットが生まれるというわけです。
最近では、スマートフォンやWebの画面上で視覚的な案内を行う「ビジュアルIVR」も誕生し、活用が広がっています。
IVRとは | 自動音声応答システム |
IVRで | 入電に対してあらかじめ録音した音声を自動再生、以下のようなことを行う ・担当窓口への振り分け |
IVRの | ・顧客の自己解決を促進できる |
IVRの | ・顧客側がプッシュ操作などをしなければならず、手間が増える |
IVRについては、以下の関連記事にさらにくわしく解説していますので参照してください。
1-3.音声認識:応対履歴を記録する
「チャットボット」と「IVR」は、コンタクトセンター業務のうち、「オペレーターによる顧客対応」を自動化するものです。
それに対して、後処理などの作業を自動化するのが「音声認識」と呼ばれる技術です。
「音声認識」とは、「コンピューターに人間の音声を自動認識させる技術」を指します。
人間が話す声を分析してテキストに変換したり、音声の特徴から誰の声かを識別したりすることが可能です。
コンタクトセンターでは、オペレーターが顧客対応後に応対記録を残す際などに活用されています。
今までは、通話内容をオペレーター自身が要約、手入力していたため、後処理時間がかかっていました。
しかし、音声認識を利用すれば、顧客との応対を自動でテキスト化することができるため、後処理時間を大幅に短縮することが可能です。
また、「AI音声認識」なら、以下のような機能も持っています。
・顧客の会話内容を感情分析する ・応対中に「要注意ワード」を検出、アラートを出す |
音声認識とは | コンピューターに人間の音声を自動認識させる技術 |
音声認識で | ・顧客との応対内容を自動でテキスト化する |
音声認識の | ・後処理時間を短縮し、業務を効率化できる |
音声認識の | ・雑音があると、音声認識の精度が下がる |
音声認識については、以下の記事でくわしく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
1-4.RPA:事務処理を簡略化する
前項で挙げた後処理業務だけでなく、コンタクトセンターの業務の中にはさまざまな事務処理も含まれます。
それらを自動化するのが「RPA」です。
「RPA(=Robotic Process Automation)」は「ロボットによるプロセス=手順の自動化」という意味で、言い換えれば「人間がPCで行う単純作業や反復作業をロボットに覚えさせ、自動的に行えるようにするシステム」を指します。
あらかじめ、ロボットにどのような作業をさせたいかという「シナリオ」を作成しておくと、RPAがそれに従って自動的に計算や記録、分析、メール送信などを行ってくれるのです。
たとえば、コンタクトセンターでは以下のような業務を自動化することができるでしょう。
【スーパーバイザー業務】 【オペレーター業務】 |
これにより、業務の効率化、人手不足の解消、コンタクトセンターの運営コスト削減が期待できます。
RPAとは | 人間がPCで行う単純作業や反復作業をロボットに覚えさせ、自動的に行えるようにするシステム |
RPAで | 【スーパーバイザー業務】 【オペレーター業務】 |
RPAの | ・業務を効率化できる |
RPAの | ・自動化できる業務とできない業務を切り分けて、適切に導入しないと、RPAのシステムがうまく回らず逆効果になる恐れがある |
RPAについてさらにくわしく知りたい場合は、以下の記事も読んでみてください。
2.【課題別】あなたのコンタクトセンター(コールセンター)に取り入れたい自動化ソリューションは?
コンタクトセンター(コールセンター)では、主に4つの自動化が可能なことがわかりました。
となると、「わが社のコンタクトセンターには、どんな自動化を取り入れればいいの?」という疑問がわくでしょう。
それは、「あなたのコンタクトセンターがどんな課題を抱えているか」によって決まります。
課題ごとに、どの自動化ソリューションが適しているかを一覧にまとめました。
課題 | 適する自動化 | |
1 | 後処理など事務作業を効率化したい | 音声認識、RPA |
2 | オペレータの人員不足を解消したい | チャットボット、IVR |
3 | 応答率を上げ、放棄呼率を下げたい | チャットボット、IVR |
4 | オペレータの教育を効率化し、応対品質を均質化したい | 音声認識 |
5 | 休日や深夜帯も対応したい | チャットボット、IVR |
6 | VOCを適切に分析したい | 音声認識、RPA |
では、それぞれ説明していきましょう。
2-1.後処理など事務作業を効率化したい
「オペレーターが顧客対応後に応対内容を記録するのに時間がかかる」
「そのために、ASA(=平均応答速度/顧客が電話をかけてからオペレータにつながるまで待ち間の平均値)が長くなって、顧客満足度が下がってしまう」
といった課題がある場合は、まず「音声認識」が有効です。
「1-3.音声認識:応対履歴を記録する」 で解説したように、音声認識は「コンピューターに人間の音声を自動認識させる技術」です。
これが、後処理時間を短縮させてくれます。
通常、コンタクトセンターでは顧客との終話後に、業務システム上に決められた形式でやりとりの内容を入力します。
これを音声認識に任せることで、顧客とのやりとりはリアルタイムでテキスト化され、業務システム内にデータとして蓄積されます。オペレーターは、対話内容を要約し手入力する手間から解放されるわけです。
また、内容によっては報告書を作成したり、VOCの集計のために表などに転記したりすることもあるでしょう。こういった単純なルーティン作業は、「RPA」の得意分野です。
あらかじめ、「定期的にこの項目とこの項目について報告書をまとめる」「応対の中からこのデータをこちらの表に転記する」といったシナリオを設定すれば、以後は毎回その作業を自動で行ってくれます。
ちなみに、RPAができることは主に以下の通りです。
これらを人力でする必要がなくなれば、オペレーターはもちろんスーパーバイザーも、事務作業にかける時間を大きく短縮できるはずです。
2-2.オペレーターの人員不足を解消したい
「常にオペレーターが不足している」
「忙しすぎるせいか、オペレーターの離職率が高く、新規採用もなかなか進まない」
という課題がある場合は、「チャットボット」や「IVR」が適しています。
まず、よくある問い合わせや簡単な対応は、基本的にチャットボットに任せてしまいましょう。
そして、チャットボットでは答えられない複雑な問い合わせに限り、チャットボットがオペレーターに引き継ぐようにすればいいのです。
あるいは、「スマホから問い合わせるより、やっぱり電話のほうが慣れている」という顧客が多い場合は、電話チャネルの一次対応にIVRを導入しましょう。
IVRのアナウンスで、顧客の連絡内容をいくつかに振り分け、オペレーターが対応するものとしないものをセグメントします。
たとえば、使い方の質問や故障の連絡などは、オペレーターが話を聞いて回答する必要がありますが、単純な注文受付などは、IVRが自動で対応できます。会員番号、商品番号、注文個数などをプッシュボタンで入力するようなフローを組めばいいのです。
いずれの場合も、顧客からの問い合わせのうち何割かを自動化することで、オペレーターが直接対応する件数を減らすことができます。
つまり、少ないオペレーターの人数でも、対応できるようになるというわけです。
2-3.応答率を上げ、放棄呼率を下げたい
前項とも関連しますが、
「電話がなかなかつながらず、顧客からの不満の声が大きい」
「応答率を上げ、放棄呼率を下げなければ、顧客満足度が向上しない」
といった課題のあるコンタクトセンターも多いでしょう。
その場合も、「チャットボット」と「IVR」が効果を発揮します。というのも、チャットボットもIVRも、同時に複数の問い合わせに対応することができるからです。
オペレーターであれば、基本的に一度に対応できるのは顧客ひとりだけです。
しかし、チャットボットなら何十件もの問い合わせを同時に受けることができますし、IVRも回線数いっぱいまで対応できます。「オペレーターの手がいっぱいで、電話が鳴っているのに対応できない」ということがなくなるのです。
さらに、「AIチャットボット」や「ビジュアルIVR」といった最新のサービスを利用すれば、効果はさらに上がるでしょう。
AIチャットボットは、決められたシナリオ通りの対応をする普通のチャットボットに比べて、学習することでより複雑な質問にも的確に回答できるようになります。
また、ビジュアルIVRは、電話を通じた音声対応ではなく、スマートフォンやWebの画面上で視覚的な案内を行うIVRです。
顧客を電話以外のさまざまなチャネルに誘導できるので、自己解決率が上がり、オペレーターが対応する率をより下げることが可能になるでしょう。
2-4.オペレーターの教育を効率化し、応対品質を均質化したい
「オペレーターの人数は足りているけれど、教育に時間がかかってスーパーバイザーの負担になっている」
「オペレーターそれぞれのスキルに差があり、応対品質にムラが生じる」
という悩みを持っているスーパーバイザーやマネージャーもいるでしょう。
その場合は、「音声認識」を活用してください。「1-3.音声認識:応対履歴を記録する」 では、顧客対応の後処理を自動化する例を挙げましたが、それ以外にもオペレーター教育に利用できるのです。
まず、応対内容がテキスト化されるので、スーパーバイザーが内容を確認しやすくなります。
スーパーバイザーは、オペレーターのスキルチェックや指導のために、顧客との応対を適宜モニタリングしますが、音声でモニタリングする場合は、時間がかかるためあまり多くの件数を聴くことは難しいものです。
一方、音声認識を利用してテキスト化されていれば、より多くの応対内容に目を通すことができるでしょう。
また、オペレーター自身も、自分の応対がテキストとして見える化されることで、「口ぐせになっている言葉や言い回し」「同じ言葉や内容の重複」といった問題点に気づくことができます。
それらを自ら改善するようにすれば、センター全体の応対品質の底上げにつながっていくはずです。
【トランスコスモスの音声認識ソリューション「transpeech(トランスピーチ)」の画面表示例】
2-5.休日や深夜帯も対応したい
コンタクトセンターの中には、
「平日の朝から夕方までしか営業していないので、顧客から『電話したくてもいつも営業時間外で困る』という不満があがっている」
「休日や深夜も対応したいけれど、オペレーターの人件費がかかりすぎるので難しい」
という問題に悩まされているところもあります。
これは、「チャットボット」や「IVR」で解決できます。
「1.コンタクトセンター(コールセンター)の自動化でできる4つのこと」 でも説明したように、チャットボットもIVRも24時間365日対応し続けることができるからです。
簡単な質問であれば、チャットボットが回答できますし、もしシナリオにない質問であれば、「2営業日以内にこちらからご連絡いたしますので、ご連絡先をお教えください」など、折り返し対応できるようにしておけばいいでしょう。
IVRも同様に、オペレーターにつながなければいけない内容であれば、折り返す旨を伝えましょう。
そうすれば、顧客はすぐに回答が得られなくても、「つながらなかった」という不満ではなく「◯日までに回答が得られる」という安心感が残るので、顧客満足度も改善が期待できます。
2-6.VOCを適切に分析したい
コンタクトセンターには、貴重な「VOC=顧客の声」が自然に集まってきますが、
「VOCを分析して商品やサービスの改良に活かしたいけれど、どうすればいいかわからない」
「会話の内容から有用なデータを抽出して分析するのは難しい」
など、うまく活用できていないところもあるでしょう。
そのような時は、「音声認識」と「RPA」が役立ちます。
コンタクトセンターに集まってくるVOCは、電話チャネルからの音声データ、チャットやメールなどのテキストデータなど、形式がまちまちです。
特に電話での会話は、集計や分析に手間がかかるのが悩みというコンタクトセンターも多いでしょう。その場合、音声認識を使えば、顧客とのやりとりがリアルタイムにテキスト形式でデータ化されます。
そこから特定のキーワードを抽出して顧客の傾向を分析することもできますし、「1-3.音声認識:応対履歴を記録する」 で触れた「感情分析」を活用すれば、顧客の感情もあわせて「何を望んでいるのか」を深く分析することも可能です。
【トランスコスモスの音声認識ソリューション「transpeech(トランスピーチ)」でのVOC分析】
また、RPAにもデータ分析機能がありますので、テキストから抽出したキーワードの集計、分析などに活用できるでしょう。
VOCの分析については、以下の記事にくわしく解説がありますので、ぜひ読んでみてください。
参考記事:
・VOCはマーケティングに必要!VOC収集の手法やポイントを解説
・コールセンターでVOCを収集する手法や具体的なステップを解説
・VOC分析で期待できる4つの効果|基礎から分析手順まで網羅解説
コンタクトセンターの自動化にご興味がある方は、トランスコスモスにお問い合わせください |
コンタクトセンターを自動化したいなら、 「AIエージェント」は、手軽にコンタクトセンター(コールセンター)を自動化できるサービスです。 お問い合わせ窓口の仕組み(システム+運用)一式を、サブスクリプションモデル(月額定額制)でご提供します。 ◎音声AIの自動応答やAIチャットボットなど、最新のコンタクトセンターサービスが利用できます。 「コストをかけずにコンタクトセンターを開設したい」 といった場合は、ぜひ「AIエージェント」をご検討ください。 |
3.コンタクトセンターの自動化に成功した事例
ここまで、コンタクトセンターの自動化で課題を解決する方法をいろいろと考えてきました。
それを踏まえて、実際に自動化に成功した事例をいくつか紹介しておきましょう。
今回は、トランスコスモスのコンタクトセンター向け音声認識ソリューション「transpeech(トランスピーチ)」の導入事例を挙げますので、参考にしてください。
3-1.金融業(ローン受付):通話録音のチェック時間を50%削減、生産性130%UP
金融業A社コンタクトセンターのローン受付窓口(インバウンド)では、オペレーターが顧客との通話でローン審査に必要な情報を聞き取り、入力しています。
これらは非常に重要な情報で、誤入力は許されません。そのため、オペレーターとは別の確認担当者が、すべての通話録音データを聴き起こして入力内容に間違いがないかチェックしていました。
このチェック作業には、実際の通話時間の2倍近い時間がかかるため、何か工数を減らす方法はないかと考えていました。
そこで、「transpeech」を導入することにしました。
これまでは確認担当者が通話音声を確認していましたが、音声認識によって通話内容をテキスト化したのです。
そして、チェックが必要な重要情報をキーワードで検索、該当部分だけをテキストでチェックするようにしました。
これにより、録音チェックにかかる時間は約半分になり、生産性も130%アップすることができました。
3-2.通信業(問い合わせセンター):音声認識で後処理工数を約670時間/月削減
通信業B社の問い合わせセンターの課題は、オペレーターの後処理時間が「平均5分間」と長いことでした。
それを効率化することでオペレーターの空き稼働を増やし、顧客の獲得や解約阻止といった攻めの施策にリソースを割きたいと考えていたのです。
そこで、音声認識を導入することにしました。まず、毎月約2万件ある問い合わせを、重要度の高低で半分ずつに仕分けします。
重要度の高いもの | 重要度の低いもの |
・名乗りがある | ・名乗りがない |
その上で、重要度の低いものの後処理は、音声認識でテキスト化された応対内容をただ貼り付けるだけにしました。
これにより、後処理時間が1分に短縮できました。その結果、後処理工数を約670時間/月削減することに成功しました。
4.コンタクトセンターを自動化する際の注意点
多くの企業が、コンタクトセンターの自動化に成功していることがわかりました。
ただ、自動化すればかならずメリットがあるかというと、そうとは言い切れません。
実施する際には、以下のことに注意してください。
・費用対効果を考える必要がある |
それぞれ説明します。
4-1.費用対効果を考える必要がある
コンタクトセンターを自動化することで、オペレーターやスーパーバイザーの業務負荷を軽減し、人件費を少なく抑えることができます。
その一方で、新しいツールやシステムを導入するためには、導入の初期費用やランニングコスト、オペレーターやスーパーバイザーの教育にかかるコストなど、ある程度の費用も用意しなければなりません。
そのため、自動化する前にまず、費用対効果を考えましょう。自動化により「削減できるもの」と「かかる費用」との収支を試算して、費用よりも大きな効果が期待できる場合には、自動化は有効です。
たとえば、「3-2.通信業(問い合わせセンター):音声認識で後処理工数を約670時間/月削減」 の事例で考えると、「削減できるもの」は「後処理時間」です。
平均5分だったものを、自動化で1分に短縮できるため、4分間削減できます。これを月の問い合わせ件数2万件のうち、半分に適用するとなると、4分×1万件=4万分=約667時間の削減です。
これにオペレーターの1時間あたりの人件費をかければ、自動化によりカットできるコストが算出できます。その金額と、音声認識の導入費用とを差引して、コストカット分のほうが大きければ、費用対効果があるというわけです。
中にはコストをかけても、それに見合う成果が出せないケースもあります。例えば、顧客からの問い合わせ内容が一つひとつ異なっていて類型化できないような性質のコンタクトセンターであれば、チャットボットやIVRを導入したとしても、その段階で問題解決できるケースは少ないかもしれません。
オペレーターが対応する件数を減らすことができなければ、導入する意味はあまりないと言えそうです。
ただその場合でも、音声認識やRPAで業務負荷を減らすことはできるかもしれません。
まずは自社のセンターに合った自動化は何かを「2.【課題別】あなたのコンタクトセンターに取り入れたい自動化ソリューションは?」 で見極めた上で、費用対効果が高いと予想できれば導入する、という判断が必要なのです。
4-2.業務のオペレーションを刷新しなければならない
費用対効果を考えた上で、「わが社のコンタクトセンターには自動化が必要」と判断できたら、自社に適したシステムやサービスを導入することになります。
その際に注意したいのが、「従来の業務フローやオペレーションをすべて見直し、新たに組み直さなければならない」ということです。
たとえばチャットボットやIVRを導入する場合は、顧客の問い合わせ導線自体が変わります。となると、オペレーターの業務内容やトークスクリプトも変わってくるでしょう。
音声認識でオペレーターの後処理を自動化するのであれば、その業務フローを考える必要がありますし、RPAに事務作業を任せる場合も同様です。その見直し作業にはある程度の時間と手間がかかります。
また、新たな業務フロー、オペレーションをオペレーターやスーパーバイザーに教育しなければなりませんし、それに慣れて業務がうまく回るまでにも一定の期間がかかるはずなので、それを見越した上で導入計画を立てる必要があるでしょう。
自動化のシステム・サービスを提供する企業の中には、導入計画や業務フロー、オペレーションの設計から一緒に考えてくれるところもあります。
「うまく導入できるか不安」という場合は、そのような企業にワンストップで依頼するといいでしょう。
4-3.すべての応対を自動化することはできない
チャットボットやIVRなどをうまく活用すれば、多くの問い合わせ対応を自動化することが可能です。
ただ、現在の技術では、顧客からの問い合わせすべてに自動で対応できるわけではありません。あくまでも、オペレーターが対応しなければならないケースが生じることを前提に考えてください。
よくある定型の質問であれば、チャットボットやIVRで顧客が自己解決することができるでしょう。
しかし、中には難しい質問や、個別の事情によって類型化できない問い合わせをする顧客もいます。その場合は、オペレーターが相手の話をくわしく聞き取った上で、適切な対応をしなければなりません。
また、自動化で対応した場合でも、その回答が適切でなく、顧客が満足しないケースも生じます。となると、やはりオペレーターが対応する必要があります。
このように、自動化といってもオペレーターの応対がゼロになることはありませんし、オペレーターが対応する問い合わせは難しい内容が多くなることが予想されます。
そのため、オペレーターの応対スキル向上がより求められる可能性があることを心しておいてください。
5.コンタクトセンター(コールセンター)にChatGPTを導入すると何が自動化できる?
さて、ここまでコンタクトセンター(コールセンター)の自動化について説明してきましたが、もうひとつ触れておくべきことがあります。
それは、最近話題になっている「ChatGPT」についてです。
これを「コンタクトセンター業務に応用できないか?」と考える人は多いようですので、そのテーマについて考えてみましょう。
5-1.ChatGPTとは
「ChatGPT」とは、OpenAIが公開しているAIチャットボットの一種です。
従来のAIチャットボットと比べて、人間と対話しているような自然な文章を生成することができることから注目を集めるようになりました。
誰でも無料で利用でき(有料プランあり)、質問を入力すると数秒〜数十秒で自然な文章の回答が返ってきます。
出典:OpenAI ChatGPT(画面の一部を編集済み)
CHatGPTを用いれば、以下のようなことが簡単にできます。
・質問に対する回答 |
5-2.ChatGPTで自動化できそうなコンタクトセンター業務
では、このChatGPTの機能を、コンタクトセンター業務ではどのように活かすことができるでしょうか?
たとえば以下のような使い方が考えられます。
1)顧客からの問い合わせに回答する |
ChatGPTは基本的にはチャットボットですので、コンタクトセンターの主業務である顧客対応には大いに活用できそうです。
(ただし、重要な課題もありますので、それについては次項で説明します。)
また、短時間で自然な文章を生成できるため、トークスクリプトやメール文章など、さまざまな文章を作成する際にも有用だと考えられます。
5-3.ChatGPTをコンタクトセンターで活用する際の問題点
ただ、現在のところ、ChatGPTに上記の業務をそのまま任せることは難しいでしょう。
というのも、ChatGPTには「間違った回答や文章を生成することがしばしばある」という大きな問題があるからです。
ChatGPTは、インターネット上からさまざまな情報を学習して文章を生成します。ただ、その情報についてファクトチェックができず、間違った情報もそのまま学習してしまいます。
そのため、たとえば「AとB、どちらが正しいか」と質問された場合、本来は「A」が正しいとしても、インターネット上で「Bが正しい」と信じている人が多い場合は、ChatGPTも「B」と回答してしまう可能性があるのです。
となると、顧客との対応を直接任せることはできません。また、文章作成も、間違ったことが書かれていないかを人間がチェックする必要があるでしょう。
5-4.ChatGPTをコンタクトセンターで利用する現実的な方法
とはいえ、ChatGPTの文章作成能力は非常に便利なものですので、できれば活用したいところです。
そこで、前項の問題点を踏まえて、以下のような活用方法を検討してみるといいでしょう。
・オペレーターが通話後に、顧客との応対内容を要約して記録する際に、ChatGPTに要約させる |
つまり、要約や下書きなどに利用して、最終的には人がファクトチェックや修正をする、という使い方です。これなら、業務の正確性は保ちつつ、効率化することができるでしょう。
ChatGPTのくわしい使い方については、「Chat GPT – 日本サイト」などで確認してください。
まとめ
いかがでしたか?コンタクトセンターの自動化について、よく理解できたでしょう。
最後にこの記事の要点をもう一度まとめましょう。
◎コンタクトセンター(コールセンター)の自動化でできる4つのこととは、
・チャットボットで問い合わせに対応する |
◎課題別・コンタクトセンターに取り入れたい自動化ソリューションは、
課題 | 適する自動化 | |
1 | 後処理など事務作業を効率化したい | 音声認識、RPA |
2 | オペレータの人員不足を解消したい | チャットボット、IVR |
3 | 応答率を上げ、放棄呼率を下げたい | チャットボット、IVR |
4 | オペレータの教育を効率化し、応対品質を均質化したい | 音声認識 |
5 | 休日や深夜帯も対応したい | チャットボット、IVR |
6 | VOCを適切に分析したい | 音声認識、RPA |
◎コンタクトセンターを自動化する際の注意点は、
・費用対効果を考える必要がある |
以上を踏まえて、あなたのコンタクトセンターが適切に自動化されることを願っています。