
コンタクトセンター運営において、生成AIは人手不足やコスト増加といった深刻な課題の解決策として、注目を集めています。コンタクトセンターにおける生成AIの活用方法やメリット・デメリット、導入時のポイントをご紹介します。
- コンタクトセンターで生成AIを有効活用する方法:顧客対応の自動化、オペレーターの支援・教育、センター運営の最適化の活用シーンが挙げられます。
- 成功事例:応対内容要約やオペレーター支援で活用している2つの企業をご紹介します。
- 生成AIを導入するメリット・デメリット:メリットとしては、業務効率化、コスト削減、応対品質の向上、CX向上が期待でき、デメリットとしては、ハルシネーション、情報漏洩のリスクがあります。
- 成功させるためのポイント:目的の明確化、継続した改善活動、利用ルールの策定、有人対応への導線整備、外部サポートの活用が重要です。
「コンタクトセンターで生成AIをどのように活用できるのか?」
近年、生成AIの活用がビジネスの現場で注目を集めています。自社の課題解決に向けた期待が高まる一方で、具体的な活用方法に関しては不明瞭な点も多いでしょう。
コンタクトセンター(コールセンター)において生成AIは、主に以下の7つの方法で活用できます。これにより、オペレーターの生産性や応対品質の向上を図れます。
・応対履歴の要約 |
ただし、生成AIを導入しただけでは成果を最大化するには難しいことがあります。精度を上げるためには、学習・調整を繰り返し、セキュリティ対策を徹底する必要があります。
この記事を読むことで、生成AIの活用イメージが具体的に見えてくるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
1.コンタクトセンター(コールセンター)における生成AI活用の現状

ビジネス界で注目を集める生成AIは、コンタクトセンター(コールセンター)業界も例外ではなく、導入が進んでいます。
本章では、コンタクトセンターの現場における生成AI活用の認識と導入状況を解説します。
1-1.生成AIの活用が進むコンタクトセンター
「コールセンター白書2024」の調査結果によれば、2023年には5.1%だった「すでに活用している」と回答した企業が、2024年には18.9%に大幅に増加しました。また、「活用を検討中」とする企業も50%以上に達しています。
【生成AIのコールセンターでの活用状況】

活用している企業では、主に以下の用途で生成AIが利用されています。
・VOC(顧客の声)の要約 |
特に「VOCの要約」は、顧客ニーズに沿った商品・サービス開発に活用でき、売上向上や顧客満足度の向上が見込まれます。
また、オペレーターが応対内容をまとめる必要がなくなることで、後処理時間の短縮に寄与しています。これにより、顧客対応というコア業務に集中できるメリットがあります。
興味深いのは、 2024年には「企画やアイデアの創造的業務の壁打ち役」としての活用が増加している点です。生成AIが「単なる作業の代行者」から「高度な頭脳労働のパートナー」へと進化していることが伺えます。
【コンタクトセンターにおける生成AIの活用用途】

出典:月刊コールセンタージャパン編集部『コールセンター白書2024』(株式会社リックテレコム)をもとにCotra編集部で作成
生成AIの詳細については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
1-2.コンタクトセンター(コールセンター)での生成AI活用に対する不安
一方で、コンタクトセンターにおいて生成AIの活用に不安を感じている企業も多く存在します。「コールセンター白書2024」の調査によると、生成AIの不安を持つ企業の8割以上が、AI特有の「事実とは異なる回答が混在する(ハルシネーション)」を挙げています。
この問題はコンタクトセンターに限らず、生成AIを利用する際の重要な注意点です。AIの回答をそのまま受け入れず、事実確認を徹底する必要があります。
また、セキュリティに関する不安も根強く、情報漏洩や不正使用といったリスクへの懸念が依然として高まっています。
【生成AIの活用に対する不安】

出典:月刊コールセンタージャパン編集部『コールセンター白書2024』(株式会社リックテレコム)をもとにCotra編集部で作成
それでも、コンタクトセンターにおける生成AIの活用は進むことが確実です。顧客は生成AIを導入したコンタクトセンターのサービスレベルに慣れていくでしょうし、各ベンダーも生成AIを前提としたシステム開発に取り組んでいます。
各企業のコンタクトセンターでは、生成AIのリスクを十分に考慮しながら、自社に最適な活用法を模索することが求められます。
2.コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIを有効活用する方法7つ【事例】

では、コンタクトセンターで生成AIをどのように活用できるのでしょうか?主に、以下の7つの方法が挙げられます。
・応対履歴の要約 |
それぞれの方法について具体的に説明します。
2-1.応対履歴の要約
1つ目の方法は、応対履歴の要約です。オペレーターと顧客の会話を音声認識技術でテキスト化し、その内容を生成AIによって自動的に要約することが可能です。
従来のプロセスでは、オペレーターが自分で要約し手入力するため、時間がかかり要約の質にバラつきが生じていました。しかし、生成AIを活用することで、大幅に時間を短縮でき、品質の均一化も実現できます。
たとえば、トランスコスモスの事例では、生成AIを導入した結果、応対ログの作成時間が1か月あたり280時間削減され、3か月で785時間の削減に成功したケースもあります。

2-2.オペレーターの応対サポート
2つ目の方法は、オペレーターの応対サポートです。生成AIは、顧客対応中のオペレーターを以下のような方法でリアルタイムにサポートします。
・顧客との会話内容や相手の感情を解析し、適切な応対方法や注意喚起をポップアップ表示する |
このようなサポートにより、オペレーターは顧客のニーズを把握しやすくなり、難しい問い合わせにもスムーズに対応できます。
結果として、精度の高い回答が可能となり、応対品質が向上します。また、オペレーターからスーパーバイザーへのエスカレーションも減少し、生産性が向上します。
2-3.オペレーターの教育・トレーニング
3つ目の方法は、オペレーターの教育・トレーニングです。生成AIを活用することで、マニュアルやFAQコンテンツを参照し、必要な知識を得ることが可能になります。これにより、オペレーターのスキルアップが促進されます。
さらに、従来はスーパーバイザーが相手役となって行っていたロールプレイングも、生成AIを活用することで管理者の負担を軽減できます。また、オペレーターも生成AI相手に気兼ねなくロールプレイングすることができます。
これにより、オペレーターの業務知識の定着率が向上し、デビューまでの研修期間短縮やオペレーション品質の維持向上が期待できます。
【トランスコスモスの管理者支援サービスの例】

2-4.チャットボットによる自動応答
4つ目の方法は、チャットボットによる自動応答です。生成AIが登場する以前から、ルールに基づいて回答する「シナリオ型」や学習データから正解を探す「自然言語(NLP)型」のチャットボットが存在していました。
これらのチャットボットと生成AI型のチャットボットとの大きな違いは、事前に用意した回答以外にも対応できる点です。生成AI型のチャットボットは、顧客からの質問に対して自ら回答を生成するため、想定外の質問にも柔軟に対応し、迅速な問題解決を実現します。
また、自然な言葉での応答が可能であり、多言語にも対応できるため、顧客に安心感や満足感を提供しやすくなります。
生成AIを搭載したチャットボットを活用することで、オペレーターに繋がなくても顧客が自己解決できるケースが増え、顧客対応の効率化と顧客体験(CX)の向上が期待されます。
2-5.FAQなどコンテンツの自動作成
5つ目の方法は、FAQなどのコンテンツ自動作成です。生成AIは、商品情報や応対履歴を学習データとして基に、以下のようなコンテンツを自動生成できます。
・FAQ |
生成AIを用いたコンテンツ作成は、手作業に比べて大幅に作業時間を短縮でき、最新の情報を反映した均質なコンテンツを作成しやすくなります。
ただし、生成AIが100%正確というわけではありません。学習データが不足したり偏ったりすると、「事実とは異なる回答が混在する(ハルシネーション)」のリスクがあります。
そのため、生成された内容の確認は人力で行う必要がありますが、それでも人間よりもはるかに短時間で多様なコンテンツを作成できるため、活用の幅は広いと言えるでしょう。
2-6.VOC(顧客の声)分析
6つ目の方法は、VOC(顧客の声)分析です。生成AIは、以下の2つの理由でVOC分析を容易にし、その質を高めます。
・大量のデータから必要な情報を抽出し、分析に適した形式に整えることができる |
たとえば、生成AIを用いて顧客との会話内容を要約すれば、長い会話でも要点が簡潔にまとめられたテキストデータに変換されます。生成されたデータは、ボリュームや抽出の視点をプロンプトで指定できるため、共通の形式で分析が行いやすくなります。
さらに、生成AIは膨大なデータを迅速に処理でき、文脈から感情や意図・テーマを認識することも可能です。
そのため、「苦情だけを分析したい」「顧客満足度の高い対応を抽出してオペレーター教育に活用したい」「製品改良の要望を集めたい」といった目的に応じたデータの収集・分析が適切に行えます。
このように生成AIを活用することで、VOCから顧客のニーズを把握し、コンタクトセンターの応対品質改善や製品改良に役立てることが可能になります。
2-7.外国語での対応
7つ目の活用法は、外国語での対応です。コンタクトセンターには、外国人顧客からの問い合わせもあります。「英語に対応できるオペレーターがいる」コンタクトセンターもありますが、入電は英語だけとは限りません。
その際、生成AIを活用すれば多言語対応が可能です。自動翻訳機能を活用し、相手が使用する言語に応じてリアルタイムでチャット対応ができます。
海外からの注文や問い合わせをスムーズに受けられれば、ビジネスの範囲が広がります。海外展開を検討している企業にとって、コンタクトセンターに生成AIを導入する効果は非常に高いと言えるでしょう。
3.コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIを活用した成功事例

次に、実際にコンタクトセンターで生成AIを活用した企業の成功事例を2つ紹介します。
具体的な活用シーンをイメージするための参考にしてください。
3-1.三井住友トラストTAソリューション株式会社様:応対内容要約とオペレーター支援でセンタースタッフの労働時間9,200時間/年削減
企業名 | 三井住友トラストTAソリューション株式会社 |
課題 | コンタクトセンターでのサービス充実と顧客満足度向上を実現したい |
施策 | ・音声認識AIとテキスト要約AIを組み合わせたソリューションを導入 |
成果 | ・コンタクトセンター従業員の総労働時間を年間で約9,200時間(約1割)削減 |
証券代行事業を行う三井住友トラストTAソリューション株式会社では、年配の顧客が多く、特に電話での問い合わせが重要です。オペレーターの応対品質が顧客満足に直結するため、コンタクトセンターのサービス向上が常に求められています。
そこで、トランスコスモスは「音声認識AI(AmiVoice)」と「テキスト要約AI(TRAINA)」の導入を支援しました。
音声認識AIは、電話での問い合わせを自動でテキスト化し、重要なキーワードをオペレーターのモニターにポップアップ表示します。オペレーターがキーワードをクリックすると、適切な回答やトークスクリプトが自動表示される仕組みです。
この結果、オペレーターは会話中にメモを取ったり、マニュアルを検索したりする必要がなくなりました。また、新人オペレーターでも短時間で高精度の回答が可能になり、調べ物のために通話を保留する回数も減少し、応対時間が短縮されました。
クレーム発生時には、管理者が音声認識AIによってリアルタイムでテキスト化された会話を確認できるため、迅速なサポートが可能となります。
一方、テキスト要約AIは、顧客との会話を即座に自動要約し、オペレーターの後処理時間を短縮します。これにより、応対記録が均質化され、データの活用がしやすくなります。
AI導入後2年で、応対品質が向上し、顧客満足度も向上しました。センター従業員の総労働時間は年間で約9,200時間削減され、新人研修日数も一人当たり3営業日短縮されるなど、幅広い成果が上がっています。このため、AI導入のコストはわずか2年で回収できたとのことです。

3-2.トランスコスモス:生成AIがオペレーター支援、エスカレーション6割削減を目指す
課題 | オペレーターの生産性を高めたい |
施策 | ・生成AIによるオペレーター支援を導入 |
成果 | ・難しい質問にもオペレーターが即座に回答可能に |
トランスコスモス自身も、生成AIをコンタクトセンターに活用しています。近年のコンタクトセンターでは、人手不足や問い合わせ件数の増加に伴い、オペレーターの生産性向上が重要な課題となっています。
このため、トランスコスモスのコンタクトセンターでは、オペレーターが生成AIに質問できる仕組みを導入しました。
顧客から難しい問い合わせがあった際、オペレーターが答えられない場合には、従来通りより深い知識を持つ管理者や専門スタッフにエスカレーションしていました。
しかし、これには時間がかかり、顧客が「たらい回しにされた」と感じることもあり、顧客満足度を下げる原因となっていました。
生成AI導入後は、難しい質問があればオペレーターがまず生成AIに質問を投げかけるようになりました。
AIは過去の応対記録やFAQ、製品の取扱説明書を参照し、最適な回答を生成してオペレーターに提供します。オペレーターはその情報をもとに顧客に回答するため、エスカレーションの回数を減らすことが可能になります。
実際に、難しい問い合わせでもオペレーターがすぐに回答できるようになり、エスカレーションの件数を6割削減できる見込みです。この結果、顧客も待たされることなく知りたい情報を得られるため、顧客満足度の向上が期待されます。
4.コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入する4つのメリット

ここからは、生成AIを導入することで期待できる効果を確認していきましょう。コンタクトセンターにおける生成AIの導入メリットは、大きく以下の4つに集約されます。
コンタクトセンターに生成AIを導入するメリット |
・業務を効率化できる |
4-1.業務を効率化できる
コンタクトセンターに生成AIを導入する最初のメリットは、業務を効率化できることです。
生成AIのサポートを受けたり、業務を代行してもらったりすることで、業務にかかる時間やコストを削減できます。これにより、より多くの業務を処理できるようになり、人員を減らしても業務を円滑に回すことが可能になります。
以下は、ビジネスシーンで生成AIを使用したことがある人に対するアンケート結果です。

出典:Cotra編集部「ビジネスシーンにおける生成AI利用実態調査2024」
「時間とコストの削減ができた」と回答した人が最も多く、2番目に「生産性が上がった」という回答を得られています。これにより、業務の効率化が生産性の向上につながることが明らかです。
生成AIを導入することで、まず感じられるメリットは業務の効率化でしょう。
4-2.コストの削減につながる
コンタクトセンターに生成AIを導入する2つ目のメリットは、コストの削減につながることです。
前述の通り、生成AIを導入すると業務が効率化され、その結果、業務に必要なリソースが少なくて済むようになります。
たとえば、応対履歴の入力を自動化することで、応対履歴の品質が均一化され、スーパーバイザーによるログ分析の工数も削減できます。その分、人件費の削減が期待できるでしょう。
また、チャットボットやFAQの充実により顧客の自己解決率が向上し、問い合わせ件数が減少すれば、オペレーターの人数を減らして人件費を抑えることや、通話料金の削減も可能になります。
実際に、では、生成AIによって「時間とコストの削減ができた」と回答した人が最も多く、業務の効率化とともにコスト削減が実現する可能性が高いと言えます。
生成AIの導入には一定の初期コストがかかりますが、長期的に見れば十分に回収できる見込みがあります。
4-3.応対品質の底上げができる
コンタクトセンターに生成AIを導入する3つ目のメリットは、応対品質の向上ができることです。
生成AIはオペレーターの応対の質を担保し、スキルアップをサポートします。また、ノンボイス対応の充実やVOC分析に基づいた品質改善によって、顧客のニーズに適した応対を実現する手助けをします。
たとえば、経験の浅いオペレーターが多い環境でも、生成AIを活用したロールプレイングを実施することで、知識の浸透が促進され、応対品質の向上が期待できます。
スキルの高い人員が不足している、あるいはより顧客のニーズに応えたいと考える企業にとって、生成AIの活用は強力なソリューションとなるでしょう。
4-4.CX(顧客体験価値)が向上する
コンタクトセンターに生成AIを導入する4つ目のメリットは、CX(顧客体験価値)の向上です。
CXとは、顧客が企業との接点で体験する価値を指します。商品やサービスの機能・価格での差別化が難しい現代では、CXを向上させて競争優位を確立することが企業の重要な課題となっています。
生成AIを導入することで、コンタクトセンターは顧客のニーズに即した質の高い応対が可能になります。これにより、顧客は迅速かつ的確なサービスを受けられ、顧客満足度が向上します。
具体的な事例として、「新しい車を購入し、保険の切り替えと名義変更が必要になった田中さん」の問い合わせを取り上げ、その際の従来のコンタクトセンターと『これからの』コンタクトセンターでの顧客体験の違いを示す動画を用意しました。
顧客とのコミュニケーションの最前線を担うコンタクトセンターで満足のいく対応を受けることで、顧客は「この企業との関わりは良い体験だった」と感じ、CXが向上します。コンタクトセンターへの生成AI導入は、他社との差別化を図る手段にもなり得ます。
CXについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
5.コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入する2つのデメリット

コンタクトセンターへの生成AI導入には多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。デメリットをしっかり把握しておくことで、導入後のトラブルを防ぎ、効果的な活用を実現することが可能です。
コンタクトセンターに生成AIを導入することによるデメリットは、以下の2つです。
コンタクトセンターに生成AIを導入するメリット |
・ハルシネーション(虚偽情報の出力)へのリスク管理が求められる |
それぞれの内容について、詳しく解説していきます。
5-1.ハルシネーション(虚偽情報の出力)へのリスク管理が求められる
1つ目のデメリットは、ハルシネーション(虚偽情報の出力)へのリスク管理が求められることです。ハルシネーションとは、生成AIがもっともらしく聞こえるが正しくない発言をする現象を指します。
ハルシネーションによって誤った情報が提供されると、顧客が混乱したり、企業の信頼を失ったりする可能性があります。そのため、適切なリスク管理が不可欠です。
ハルシネーションは、確率的な生成プロセス、学習データの不足や偏り、AIが文脈を重視して推測してしまうなどの理由で発生します。現状、完全にハルシネーションを排除することは難しいものの、以下の対策が有効とされています。
・学習に使用するデータやURLを指定して正確性を担保する |
生成AIにハルシネーションが伴う事実を認識し、システマティックな管理体制を整えることで、リスクを軽減できるでしょう。
5-2.情報漏洩のリスクがある
2つ目のデメリットは、情報漏洩のリスクがあることです。
生成AIの利用による情報漏洩は、以下の原因が挙げられます。
原因 | 内容 |
個人情報や機密情報の入力 | 個人情報や社内情報を含むデータを入力し、それを生成AIが学習に利用した場合、本来秘匿すべきデータが、出力結果に含まれてしまう可能性があります。 |
プログラムの設計ミスや意図せぬバグの発生 | 生成AIは、まだ発展途上のテクノロジーのため、設計ミスやバグが起こる可能性があります。 |
プロンプトインジェクション攻撃 | プロンプトインジェクションとは、生成AIに対して意図的に誤作動を起こさせるような指令を与え、提供側が出力を禁止している情報を生成させる攻撃です。 |
ユーザーのセキュリティ対策不足 | ユーザーがパスワードの使い回しや、模倣サイトへの会員登録、公衆Wi-Fiの利用などからアカウントの乗っ取り、ログイン情報の流出する可能性があります。 |
生成AIサービス提供側での不正・セキュリティ対策不足 | 生成AIを提供する企業における管理体制が甘く、情報漏洩したり内部関係者が不正アクセスしたりする可能性があります。 |
これらの情報漏洩を防ぐためには、サイバーセキュリティツールを整備することが重要です。また、データの暗号化やアクセス権限の管理を徹底し、セキュリティポリシーを策定・遵守することが不可欠です。
6.生成AI活用は短期的視点だけではなく長期的な運用視点を持つことが重要

コンタクトセンターで生成AIを活用し、成果を上げるためには、生成AIを調整しながらより効果的な運用を検討する長期的な視点が欠かせません。
生成AIはその性能の高さが注目されていますが、導入しただけでは業務効率化等の面で一定の効果は得られるものの、真の成果を上げるためには、学習とフィードバックを繰り返す必要があります。
このプロセスを通じて、生成AIはさらに賢くなり、適切に管理し活用方法を進化させることで、より大きな成果が期待できます。
実際、トランスコスモスにおいても、オペレーターの応対支援に加え、今後はチャットボットの充実やVOC分析にも生成AIの活用を広げる意向です。
この視点を踏まえて、次章から「コンタクトセンターにおける生成AI活用を成功させるポイント」について解説していきます。
7.コンタクトセンター(コールセンター)の生成AI活用を成功させる5つのポイント

最後に、コンタクトセンターにおける生成AI活用を成功させるためのポイントをお伝えします。
以下のポイントを押さえた取り組みを行うことで、成果の最大化を目指すことができます。
コンタクトセンターにおける生成AI活用を成功させるポイント |
・導入目的を明確にし、それに応じたツールを選定する |
それぞれの内容について、詳しく解説していきます。
7-1.導入目的を明確にし、それに応じたツールを選定する
まず、導入の段階から生成AIによってどのようなことを実現したいのか、目的を明確にし、それに応じたツールを選定することが重要です。目的がはっきりしていて、適切なツールを導入できれば、期待する成果を上げやすくなります。
たとえば、チャットボットによる対応を充実させたい場合、学習用データやFAQ作成も管理してくれるツールを選ぶことで、効率的に成果を最大化できるでしょう。
自社の業務内容やフローをしっかりと棚卸し、どの業務に生成AIを活用するのが最も効果的かを試算したうえで、最適なツールを検討してください。
7-2.最適化には時間がかかることを認識し、継続的に調整する
生成AIの最適化には時間がかかることを認識し、継続的に調整することも重要なポイントです。学習データやプロンプトを定期的に見直すことで、生成AIのパフォーマンスが向上します。
有効な学習データを蓄積したり、最適な利用方法を模索したりするには相応の時間がかかりますが、焦らず取り組むことが生成AI活用の最適化に繋がります。
利用しながら評価と改善を繰り返し、方法や機能をブラッシュアップすることで、より大きな成果を得られるでしょう。
7-3.安全に活用するためのシステムやルールを設ける
安全に活用するためのシステムやルールを整備することも不可欠です。「5.コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入する2つのデメリット」で解説したように、生成AIの活用にはハルシネーションや情報漏洩といったリスクが存在します。
データを適切に管理し、顧客に正確な情報を提供するためには、リスクを軽減するための環境整備が必要です。セキュリティツールや活用マニュアルなどのハード面に加え、「どう使うか」「何をしてはいけないか」を明確に周知・徹底するための従業員教育も重要です。
7-4.人間とAIが効果的に連携できる導線を整える
コンタクトセンターでの生成AI活用においては、人間とAIが効果的に連携できる導線を整えることが重要です。これにより、顧客のニーズに応じた質の高い対応を実現できます。
生成AIは学習を繰り返すことで精度を上げていきますが、どんなに難しい問い合わせにも対応できるわけではありません。複雑な内容には、オペレーターの対応が必要です。
そのため、生成AIが単独で対応できなくなった場合に、スムーズに有人対応へ切り替えられる仕組みを整えることが効果的です。顧客がチャネルを選択できるようにし、AIからオペレーターへのエスカレーション機能を設定することが、CXの向上につながります。
7-5.外部サポートを有効活用する
コンタクトセンターへの生成AIの導入・活用にあたっては、外部サポートを有効に活用することをおすすめします。生成AI活用のノウハウを持った企業からサポートを受けることで、スムーズかつ迅速に成果を上げることが可能になります。
生成AIを効果的に活用するためには、その機能や特性、ベストプラクティスについて十分な知識を持ち、プロジェクトを牽引する人材が必要ですが、自社内でその人材を確保するのは難しい場合が少なくありません。
外部サポートを利用することで、人材不足に悩むことなく、確実に取り組みを進めることができます。学習データやモデルの調整もサポートしてもらうことで、生成AIの精度はさらに向上するでしょう。
コンタクトセンターへの生成AI導入を検討する際は、気になるサポート会社をいくつかピックアップして、話を聞いてみてはいかがでしょうか。
コンタクトセンターへの生成AI導入にご興味がある方は、 |
トランスコスモスでは、国内屈指の運用経験を基に、高い成果につながる生成AI活用術をお伝えいたします。多くのお客様企業をサポートする中で、生成AIの活用がコンタクトセンターの生産性やVOC活用を劇的に向上させることを実感しています。 生成AIについてまだよくわからないという段階からでもお手伝いできますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。 |
まとめ
この記事では、コンタクトセンターにおける生成AI活用の基礎知識について解説しました。以下に要点をまとめます。
現在、コンタクトセンターでも生成AI活用に対する意識が高まっており、実際に導入する企業が増加しています。特に大手企業では、すでに顧客対応に生成AIを活用しているケースが多く、その成果も表れています。
コンタクトセンターで生成AIを有効活用する方法には、以下の7つがあります。
1.応対履歴入力の自動化 |
生成AIをコンタクトセンターに導入すると、以下のメリットが得られます。
・業務の効率化 |
一方で、デメリットも存在します。
・ハルシネーション(虚偽情報の出力)へのリスク管理が必要 |
生成AIの活用を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
・導入目的を明確にし、それに応じたツールを選定する |
生成AIは、コンタクトセンターが抱える課題を解決し、運用の質を高める大きな力を持つツールです。この記事の内容を参考に、ぜひ導入を前向きに検討してみてください。
