「コールセンターで利用されている『IVR』って何? 導入するとどんなことができるの?」
「わが社のコールセンターでも、IVRを導入した方がいい?」
コンタクトセンター(コールセンター)に関わる仕事をしていて、そのような疑問や悩みを持っている方も多いでしょう。
IVR(Interactive Voice Response)とは、音声ガイダンスで自動応答を行うシステムのことです。
電話で企業に問い合わせなどを行った際に「音声ガイダンスに接続します」という声が流れ、プッシュボタンで操作して問い合わせ内容を伝える、といった機能がIVRです。
IVRは利用者がプッシュ操作をすることで、あらかじめ録音しておいた音声が自動再生される仕組みで、
・適切な窓口への誘導
・自動受付、自動応答
・営業時間外の対応
など、幅広く活用できます。
これを活用すれば、以下のようなメリットが得られるため、多くのコンタクトセンターで導入されているのです。
定型的なやり取りであれば、IVRを導入することでオペレーターを介することなく対応することができます。企業にとっては人的リソースを消費せずに済むため業務効率化を図れますし、顧客にとっては迅速に問題解決を目指せるのが利点です。
特に近年では、コンタクトセンターのオペレーター不足が深刻化しています。
オペレーターが不足すると待ち時間の増加や問題解決の遅れが生じ、顧客に余計なストレスを与えてしまいます。
効果的にIVRを活用することで迅速な対応が可能になるため、顧客にとっても企業にとってもメリットは多いと言えるでしょう。
そこでこの記事では、IVRのメリットやデメリットなど基本的な情報を中心に、以下の内容について詳しく解説します。
この記事のポイント |
・IVRとは |
IVRの導入で失敗しないためにも、基礎知識やメリット、デメリットを把握して自社のコンタクトセンターに向いているのか確認できるようになりましょう。
1.コンタクトセンター(コールセンター)におけるIVR(Interactive Voice Response)とは
最初に、「IVRとは何なのか」についてより詳しく解説していきましょう。
1-1.IVRは自動音声応答システムのこと
「IVR(Interactive Voice Response)」とは「自動音声応答システム」のことです。
コンタクトセンター(コールセンター)で顧客から入電があった際に、プッシュ操作や音声認識に応じて、あらかじめ録音してある音声を自動再生するのが基本的な仕組みです。
IVRでは具体的に、以下のようなことが可能となります。
・適切な窓口への誘導 |
コンタクトセンターへの入電すべてにオペレーターが対応していると、時間がかかる上にあふれ呼や待ち呼・放棄呼が発生しやすくなり、顧客満足度が下がってしまう恐れがあります。
IVRを導入することにより、問い合わせ内容によるグループ分けや無人対応、折り返し電話対応などができるようになり、限られたオペレーターでも効率よく運用することが可能になります。
IVRでできる事に関しては、「3.IVRでできる6つのこと」でも解説していきます。
1-2.IVRの仕組み
次に、IVRの具体的な仕組みについてより詳しく見ていきましょう。
顧客がコンタクトセンターに電話をすると、最初にIVRの音声ガイダンスが流れます。
例えば、「資料請求をご希望の方は1を、製品の使い方に関するお問い合わせは2を、故障に関するお問い合わせは3を、それ以外のお問い合わせは4を押してください」といったガイダンスに沿って、顧客が知りたい問合せ内容のボタンを押します。
この操作を数回繰り返すことで自動的に接続先が割り振りされて、最適なオペレーターや自動受付システムに繋がるという仕組みです。
2.IVRはなぜ必要なのか、その2つの理由
このようにIVRの役割は、従来オペレーターが担っていたものです。それをなぜ自動化する必要があるのでしょうか?その理由は以下の2点です。
・消費者はストレスフリーな体験を求めている |
それぞれ説明していきましょう。
2-1.消費者はストレスフリーな体験を求めている
第一の理由は、「消費者はストレスフリーな体験を求めている」ためです。
コンタクトセンター(コールセンター)に限らず顧客対応業務では、通り一遍のやりとりではなく、心に残るような応対をして、顧客に特別な体験をしてもらいたい、それによって企業のブランドイメージを高め、ファンを作りたい、といった考え方が一般的になってきました。
しかし、顧客対応において重要なのはそれだけではありません。
トランスコスモスが行った「消費者と企業のコミュニケーション実態調査 2021」から、顧客が企業とコミュニケーションをとる際に、「感動的な対応・解決」と「ストレスや負担感のない対応・解決」のどちらがより重要かを訊ねた結果です。
これによると顧客の70%以上が、「ストレスや負担感のない対応・解決」をより望んでいることがわかります。
出典:トランスコスモス株式会社 Communication Science Lab 調べ
「消費者と企業のコミュニケーション実態調査 2021」
裏を返せば、コンタクトセンターに問い合わせする顧客は、それだけストレスや負担を感じているとも考えられます。顧客満足度を高めるには、顧客のストレスを軽減させなければなりません。
そこでIVRが役立ちます。
IVRは自動応答ですので、多数の入電に同時対応することができます。
そのため、顧客を待たせることなく、すぐに電話が繋がり、顧客の「コールセンターに繋がらない」ストレスや負担を減らすことができるのです。
2-2.自己解決できなかった場合にコンタクトセンター(コールセンター)を活用する
第二の理由は、自己解決できなかった場合にコンタクトセンター(コールセンター)を活用するためです。
同じく「消費者と企業のコミュニケーション実態調査 2021」によると、消費者のうち、何か問題や疑問が生じた場合、まずは「WEBで検索を行う」という人が実に97%にものぼっています。
つまり、まずは自己解決をはかるという人がほとんどで、自己解決できない場合は「チャットボット・チャットや問い合わせフォームを使う」人が82%、有人対応の「コールセンターに電話する」人が44%であることがわかりました。
出典:トランスコスモス株式会社 Communication Science Lab 調べ
「消費者と企業のコミュニケーション実態調査 2021」
この結果により、消費者がコンタクトセンターへ連絡してきた理由は「自身で調べて疑問・問題を解決できなかった」という顧客が多いことが予測できます。
そのためIVRであれば、顧客が求めている内容をオペレーターが対応する前に明確にすることが可能となり、疑問・問題解決がスムーズになります。
3.IVRでできる6つのこと
それでは具体的に、「IVRで何ができるのか」について詳しく解説します。
コンタクトセンター(コールセンター)にIVRを導入することで、主に下記の6つのことができるようになります。
(IVRのサービス内容により、対応している機能は異なります)
IVRを導入するとできること | |
問い合わせの導線を最適化する | 利用者の要件とオペレーターグループを紐付けして、最適なオペレーターや自動受付などに接続する |
予約や再配達などの自動応対 | オペレーターを介さなくても自動で受付ができる |
無人対応と有人対応の切り替え | 無人対応とオペレーターへの有人対応の切り替えができる |
営業時間外の対応 | コンタクトセンターの営業時間外の対応ができる |
折り返し電話機能 | コンタクトセンターの混雑時に、後ほどコンタクトセンター側から折り返し電話をする予約ができる |
SMSとの連携 | 電話番号にSMSを送り、ウェブサイトの質問集やチャットボットなどに誘導する |
具体的にどのようなことができるようになるのか、一つずつ解説していきます。
3-1.問い合わせの導線を最適化する
IVRの第一の機能は、問い合わせ導線の最適化です。
前述したように、顧客がコンタクトセンターに電話してきた際に、適切なオペレーターに電話をつなぐための「データベースルーティング機能」が備わっています。
データベースルーティングとは、問い合わせの要件を分類し、知りたい情報に適したオペレーターグループに優先的に繋げるため、スムーズな対応を実現します。顧客にとっても「なかなか回答が得られない」「問い合わせ中にあちこちに回された」といったストレスを感じずにすむでしょう。
3-2.予約や再配達などの自動応対
IVRを導入すると、プッシュ操作で対応できる内容であればオペレーターを介さなくても自動で受付ができます。
自動受付はさまざまなシーンで活用されていますが、ここでは2つの事例を紹介します。
【①予約受付のケース】
プッシュ操作で顧客の電話番号、予約日などを入力確認できるようにしておけば、ガイダンスの終了とともにシステムに情報が記録されます。以下は、IVRを活用して予約受付を行ったケースです。
オペレーターが対応すると時間やコストのかかる作業ですが、自動受付を活用することでコストを削減しながら機会損失を防ぐことができます。
【②荷物や郵便の再配達受付のケース】
荷物や郵便の再配達を依頼するときに、不在連絡票に記載されている電話番号に電話をしたことがある人は多いのではないでしょうか。実はこれにも、IVRによる自動受付が役立ちます。
ガイダンスに従いプッシュ操作をして再配達希望日を入力することで、システムに日付が記録されますので、収集したデータをもとに、再配達を行います。
国土交通省の調べによると、郵便や荷物の2回以上の再配達は荷物全体の2割で発生しています。その再配達依頼をすべてオペレーターが対応するとコストと手間がかかりますが、自動受付を利用することで、必要な部分に集中してオペレーターを配置できるようになるでしょう。
このように、日常的に発生する定型的な問合せであれば、自動受付でも十分に対応が可能です。
3-3.無人対応と有人対応の切り替え
IVRを活用することで、無人対応と有人対応との切り替えができるようになります。
例えば、顧客が店舗の商品の在庫について問い合わせがしたい場合、IVRを利用すれば、下記のように段階的に顧客が知りたい情報を絞り込んでいくことができます。
音声ガイダンスのみで知りたい情報を得られる場合には「3-2.予約や再配達などの自動応対」で解説した無人対応で終えることが可能ですし、店舗商品の問い合わせなど細かな対応が必要となる場合には、オペレーターへつながるように動線を張ることができます。
このように、顧客の問い合わせ内容により無人対応と有人対応を切り替えることで、オペレーターの人員を抑えながらも解決率が維持できるようになるのです。
3-4.営業時間外の対応
IVRは、コンタクトセンターの営業時間外にも顧客対応を可能にします。
コンタクトセンターに関する顧客の不満のひとつに、「問い合わせできる時間が限られている」ことがあります。
多くのコンタクトセンターでは営業時間を「平日◯時〜◯時、土日祝休」といったように限定しています。しかし、平日仕事をしている場合はその時間内に問い合わせるのがなかなか難しく、それが顧客のストレスになっているのです。
そこでIVRを活用すれば、オペレーターが対応していない時間、深夜や休日でも、簡単な問い合わせであれば適切な回答に導くことができます。
複雑な問い合わせの場合は、次項で説明する「折り返し電話機能」でオペレーターが折り返し連絡をするように設定すれば、顧客側が電話を何回もかけることはなくなるでしょう。
3-5.折り返し電話機能
IVRには、「コールバック」や「折り返し電話」と呼ばれる機能が備わっています。
この機能を使えば、コンタクトセンターが混雑してなかなか繋がらないときに、後ほどコンタクトセンター側から折り返し電話をする予約ができます。
具体的には、まずガイダンスでコンタクトセンターが混み合っていることを伝え、次に顧客の電話番号と、折り返し連絡をして欲しい時間帯をプッシュ操作で入力してもらいます。
それを受けて、記録された情報を基にオペレーターから電話をかけます。
コンタクトセンターが混雑しやすい時間帯や、一時的に問い合わせが集中しやすい場合、あるいは前項のように営業時間外には、折り返し電話機能を使うことで顧客の待ち時間を減らし、スムーズに対応できるようになります。
3-6.SMSとの連携
IVRを利用すると、SMSとの連携を行うことも可能です。
例えば、自動受付のみで利用者の問題を解決したい場合、あまりにプッシュ操作が長くなったり複雑な案内になってしまったりすると、離脱率の増加や問題解決率の低下につながります。
そこで、ガイダンスに沿って入力してもらった電話番号に、SMSを利用してメッセージを送り、メッセージに記載されているURLからウェブサイトの質問集やチャットボットなどに誘導するのです。
SMSを利用することで、顧客が自己解決できるようになるため、コンタクトセンターへの入電集中を避けられるでしょう。
また、既存顧客のサポートをしているコンタクトセンターでは、SMS送信と組み合わせることで最新情報やお買い得商品などをお知らせして、コンタクトセンターへの問い合わせを次の購入に繋げることもできます。
SMSはメールなどに比べて開封率が高いツールであるため、上手に活用することで、業務効率化や次の行動への紐付けが可能です。
4.IVRを導入する3つのメリット
それではここからは、より具体的にIVRを導入するメリットについても解説していきます。
具体的には以下の3点が挙げられます。
・業務効率化が可能 |
具体的なメリットを把握して、IVRを導入すべきか検討してみましょう。
4-1.業務効率化が可能
IVRは、業務の効率化ができるのも大きなメリットです。
IVRによる事前の情報収集や自動振り分け機能により、オペレーターが顧客からの問い合わせ内容がどんなものなのかを予測して準備することが可能です。
「3.IVRでできる6つのこと」でも説明したように、IVRが導入されていればスキルベースルーティング機能などを利用して、ある程度顧客の問い合わせ内容を絞った状態でオペレーターに引き継げます。
また、「自動受付機能」や「無人対応と有人対応の切り替え機能」を活用すれば、オペレーターに繋ぐべき問い合わせを精査でき、簡単な問い合わせが減るのでオペレーターが対応する問い合わせ自体も削減できるはずです。
営業時間の確認や商品の手配管理など定型的な問い合わせはガイダンスで対応できるため、オペレーターにつながるのは臨機応変な対応が必要となる問い合わせのみに抑えられます。
近年ではオペレーターの人材確保も難しくなってきています。オペレーター不足のままですとあふれ呼や待ち呼、放棄呼などが発生し顧客満足度の低下やクレームに繋がり、オペレーターの負担も増えます。
IVRを活用することで、オペレーターの負担を軽減できるだけでなく、対応の質を保ちながらコンタクトセンターの人員を適正化していくことができるでしょう。
4-2.顧客満足度の向上につながる
コンタクトセンターを設置する目的として、顧客満足度やブランドイメージの向上を意識している企業は多いと思います。
IVRを導入することで以下のような機能を付けることができ、顧客満足度の向上に繋がります。
顧客満足度の向上に繋がる機能 | |
データベースルーティング | オペレーターとのやり取りを最小限にして通話時間を短縮できる |
自動受付 | オペレーターに繋がるまで待つ必要がない |
無人・有人対応の切り替え | オペレーターに繋がなくても、解決できるようになる |
折り返し電話機能 | あふれ呼でのストレスを軽減できる |
SMS送信サービス | 問い合わせ内容を後からでも確認できる |
顧客は問い合わせを行った際に、迅速かつ的確に問題解決できることを望んでいます。
オペレーターになかなかつながらず、通話時間が長くなることが最もストレスとなるため、できる限り避けなければなりません。
IVRを導入すれば上記のような効果を得ることができるため、結果的に顧客満足度の向上に繋がります。
4-3.機会損失を防止できる
IVRを活用すれば、コンタクトセンターでの機会損失防止に先手が打てるところも大きなメリットです。
例えば、入電が集中したときに何の対策もしていないとあふれ呼や放棄呼となり、顧客獲得や商品購入の機会を逃すことになります。
しかし、折り返し電話機能を利用することで、ガイダンス案内とプッシュ操作でオペレーター側から利用者に折り返し連絡をする約束ができます。
また、自動受付を活用すれば、コンタクトセンターの営業時間外でも自動受付で商品の注文受付や資料請求、再配達などの顧客対応ができるようになります。
通信販売での商品購入や宅配便の配達受付、保険商品などの資料請求にこの方法を導入すれば、オペレーターが対応できない時間帯や入電が多くつながりにくいときでもプッシュ操作で商品購入の受付などができるため、「回線が繋がらないから商品購入を諦めよう」「今すぐこの商品を使ってみたかったのに、他の似た商品を購入するしかない」といった機会損失も避けられます。
5.IVRの3つのデメリット
このように、さまざまなメリットがあるIVRですが、もちろんデメリットもあります。
それは以下の3点です。
・利用者の手間が増える |
5-1.利用者の手間が増える
IVRはプッシュ操作など利用者側で操作をする必要が出てくるため、どうしても手間が増えてしまいます。
特に、階層が深い場合はガイダンスに従って何時もプッシュ操作をしなければならないので、面倒だと感じる利用者が出てくるでしょう。
IVRに非対応のコンタクトセンターは、入電が集中していなければ電話番号を押すだけでどんな問い合わせでも直接オペレーターに繋がります。
IVRの便利さは、裏を返せば利用者の手間によるところもあり、これはデメリットの一つだと言えるでしょう。
5-2.離脱率が高くなる可能性がある
IVRは導入方法によっては、離脱率が高くなる可能性があります。
- プッシュ操作が長い間続く
- オペレーターに繋がるまでのフローが長い
など、利用者側でのプッシュ操作が続く場合やなかなかオペレーターに繋がらない場合は、途中で通話を切られてしまうことがあります。
通話を中断するということは、利用者が問題解決に至っていないということですので、顧客満足度の低下やクレームなどに繋がる恐れがあるでしょう。
離脱率はIVR導入時のフローの作り方やプッシュ操作の取り入れ方によって抑えられるので、利用者が面倒と感じないよう工夫することが欠かせません。
5-3.シナリオ設計によっては顧客にストレスを与える
また、IVRのシナリオ設計によっては、顧客にストレスを与えてしまう可能性もあります。
IVRでは、コンタクトセンターの利用者がプッシュ操作を間違えると適切な対応ができません。
例えば、データベースルーティングを活用している場合、問い合わせ内容を絞り込む段階のプッシュ操作を間違えると目的とは異なるオペレーターにつながります。
オペレーターが利用者の問い合わせ内容を聞き、他のオペレーターに繋ぎ直さなければならないので通話時間が長くなってしまいます。
また、自動受付の場合は、利用者が住所や電話番号の入力を間違えると、商品や資料が届かなくなってしまいます。特にプッシュ操作が長い場合や、プッシュ操作の選択肢が多い場合は、利用者が操作を間違えやすくなるようです。
このように、IVRでは一次解決や重要事項の入力を利用者自身の操作で行うため、誤りがあると適切なフローで処理できない一面があります。
6.IVRはどんなコンタクトセンター(コールセンター)が導入すべき?
IVRでできることやメリット、デメリットが把握できたところで、自社のコンタクトセンター(コールセンター)がIVR導入に向いているかどうか気になるかと思います。
ここでは、IVRの導入が向いているコンタクトセンターの特徴をまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
6-1.IVRを導入すべきコンタクトセンター(コールセンター)
IVRの導入が向いているコンタクトセンター(コールセンター)は、以下の通りです。
オペレーターの離職率が3割を超えている
まず、オペレーターの離職率が3割を超えているコンタクトセンターは、IVRの導入を検討してみてください。
IVRを導入することでオペレーターの負担を軽減できる為、離職率の抑制につながる可能性があります。
一般的にコンタクトセンターは離職率が高く、平均で約3割だと言われています。株式会社リックテレコムの調査によると、入社1年以内のオペレーターの離職率は以下の通りです。
このように、回答した約半数以上の企業で、新人オペレーター離職率が31~71%以上と大変高い数字になっていることが分かります。
平均的なコンタクトセンターよりも離職率が高い場合には、業務環境の改善を行う必要があります。
もしもまだIVRを導入していない場合はまずは導入し、オペレーターの負担を軽減することで離職率の抑制を目指すことをおすすめします。
コンタクトセンターの離職率の改善に関しては、下記記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
定型的な問い合わせが多い
コンタクトセンターへの問い合わせを分析し、定型的で簡単に回答できる問い合わせが多い場合はIVRの導入が向いています。
例えば、以下のような問い合わせです。
・定休日の確認 |
自動応答でも対応できる問い合わせが一定数ある場合は、IVRを導入することでオペレーターの手間を省くことができ、業務効率化やあふれ呼防止に繋がります。
対応する窓口が複数ある
コンタクトセンターの窓口が一つではなく複数ある場合も、IVRの導入がおすすめです。
例えば、以下のように複数ある場合、IVRを利用しないと電話を引き継ぐ手間が発生します。
・新規購入者窓口 |
IVRのスキルベースルーティング機能を活用すれば、問い合わせの目的を把握した上で最適な窓口に割り振りができるため、業務効率化に繋がります。
窓口によっては自動受付機能などと組み合わせることで、人員削減ができる可能性もあります。
このように、IVRを導入することで利用者とオペレーター共にメリットが得られるコンタクトセンターは、IVRの導入を検討してみてください。
6-2.IVRの導入が向かないコンタクトセンター(コールセンター)
反対に、IVRが向かないコンタクトセンター(コールセンター)としては以下が挙げられます。
どのような点がIVRの導入に向いていないのか、見ていきましょう。
問い合わせ内容が複雑化しやすい
コンタクトセンターへの問い合わせ内容が定型化しにくく、利用者によって異なる問題を抱えている場合は、IVRを導入しても大きな効果が見込めません。
例えば、故障受付専用窓口など専門的な知識や利用者側での操作が必要となる場合は、自動応答などでは解決できないでしょう。
また、問い合わせ内容が複雑化する場合はプッシュ操作のフローも複雑化しやすく、利用者の離脱率や不満が高くなる傾向があります。利用者一人一人に合わせた対応が必要なコンタクトセンターでは、IVRが活躍する場が少ないかもしれません。
高齢者を対象としている
高齢者を対象としているコンタクトセンターでは、IVRを導入しても利用者が適切な操作ができない可能性があります。
プッシュ操作を間違えると正しいオペレーターに繋げないのはもちろんのこと、オペレーター側の手間が増えてしまいます。また、プッシュ操作が分からない場合にはIVRを導入していない窓口に入電が集中してしまうので、本末転倒です。
IVRはとても便利ですが、利用者が操作に慣れていないと活用しきれないため、ターゲット層をチェックして検討してみてください。
7.IVRの2つの種類
さて、ここまで読んで「わが社のコンタクトセンター(コールセンター)でも、ぜひIVR導入を検討したい」と考えた方も多いでしょう。
実は、コンタクトセンターにIVRを導入する方法としては、オンプレミス型とクラウド型の2種があります。
オンプレミス型 | IVR用のサーバーやソフトウェアなどの情報管理システムを自社内に設置し運用する仕組み |
クラウド型 | IVRのサービスや機能をインターネット経由で利用する仕組み |
それぞれどのように導入できるのか把握し、コンタクトセンターへの導入方法を検討してみてください。
7-1.オンプレミス型IVR
オンプレミス型IVRとは | IVR用のサーバーやソフトウェアなどの情報管理システムを自社内に設置し運用する仕組み |
おすすめの企業 | ・既存のソフトウェアやシステムと連携し、自社で使いやすいようにカスタマイズしたい |
オンプレミス(on-premises)とは、サーバーやソフトウェアなどの情報管理システムを自社内に設置し運用することです。
自社のインターネット環境や既存設備、導入したい設備に合わせてIVRシステムを構築できるので、自由度が高く使いやすいようにカスタマイズできるところが最大のメリットです。
また、クラウド型のように不特定多数の人が利用しているサービスにアクセスする必要がないため、セキュリティが強化できます。
デメリットとしては導入にコストと時間がかかることが挙げられます。
一からシステムを構築していくため、利用開始までに数ヶ月を要することがあるのです。構築してしまえば安定した運用ができますが、クラウド型よりも導入に時間とコストがかかるでしょう。
・既存のソフトウェアやシステムと連携し、自社で使いやすいようにカスタマイズしたい |
という場合には、オンプレミス型が向いているといえます。
7-2.クラウド型IVR
クラウド型IVRとは | IVRのサービスや機能をインターネット経由で利用する仕組み |
おすすめの企業 | ・すぐにでもIVRを導入し利用したい |
クラウドとは、IVRのサービスや機能をインターネット経由で利用する仕組みです。
IVRを提供しているクラウドサービスと契約することで、必要な機能がすぐに利用できるようになります。
クラウド型の大きなメリットは、ソフトウェアやサーバーなどの準備が不要で、気に入ったクラウドサービスと契約するだけで利用できるところです。
そのため、初期費用をかなり抑えることができ、導入時の負担が減らせます。
昨今は、IVRのクラウドサービスが多数登場しているため、利用したい機能を比較検討しながら必要な機能だけを選べるようになっています。
一方デメリットとしては、長期間運用するとオンプレミス型よりもコストがかかる可能性がある点が挙げられます。
また、個々のクラウドサービスでセキュリティ対策は実施されていますが、オンプレミス型に比べると不特定多数の人が利用するインターネット経由となるので、どうしてもセキュリティが弱くなりがちです。
・すぐにでもIVRを導入し利用したい |
という場合は、クラウド型を検討してみてください。
8.IVRを導入するときの4つの注意点
IVRを導入するときには注意しなければならないことがあります。
それは以下の4点です。
それぞれ説明していきましょう。
8-1.問い合わせの細分化は最大3回〜4回までにする
IVRを導入するときには、内容を複雑化しすぎないように注意しましょう。
利用者の問い合わせ内容をできるだけ細分化しようとすると、階層が深くなり、利用者の手間が増えてしまうため途中で離脱する可能性が出てきます。
また、何度もプッシュ操作や音声認識を繰り返していると、ミスをする確率が高くなりますし、利用者自身がどのような回答をしたのか覚えていることが難しくもなります。
階層は下記のように、最大で3〜4回までで終えるように構成を考えましょう。
8-2.ガイダンスの内容を簡潔にまとめる
ガイダンスの内容は、1回聞いただけで理解できる簡単な文章にまとめてください。
利用者は基本的にガイダンスを耳で聞きながら操作をしていくので、長文や複雑な内容だと理解が追いつかなかったり覚えていられなかったりして操作しにくくなります。
しかし、何度も聞き直すと問題解決や目的達成までに長時間を要し、顧客満足度の低下に繋がります。
・修理受付は#1、営業時間の案内は#2、その他の問い合わせは#3を押してください。 |
このようにできるだけ簡潔に分かりやすくまとめるようにしましょう。
8-3.オペレーターにつながる導線を用意しておく
IVRを導入する場合には、オペレーターにつながる動線も必ず用意しておきましょう。自動音声で対応しきれない問い合わせも発生するので、それに的確に対応するためには必須です。
IVRを活用した自動応答や自動受付のみで利用者の問題解決ができれば、コンタクトセンター(コールセンター)にとっては業務効率化や入電の集中の回避などができて助かるでしょう。
しかし、利用者目線に立ってみると「オペレーターと直接通話がしたい」「オペレーターに相談をして判断したい」など、オペレーターとの通話を望んでいる声があることも確かです。
できる限りIVRを活用しオペレーターへの接続を削減したい気持ちは分かりますが、利用者のニーズを考えて、選択肢の中にオペレーターに接続をする導線を用意しておくようにしましょう。
8-4.メニュー構成をしっかりと考える
IVRを導入するときは、必要な情報をただ並べるのではなく、利用者が使いやすいメニュー構成を意識しましょう。
メニュー構成を決める方法としては、主に次の2つの方法が使われます。
①問い合わせ頻度の多い順に並べる
問い合わせの頻度に従い、メニュー構成を決める方法です。
例えば、コンタクトセンター(コールセンター)への問い合わせで修理受付が最も多い場合は、最初に修理受付を持ってきます。
問い合わせ頻度が多い順に並べることで、利用者が問い合わせしたいメニューを選びやすくなります。
②工程順に並べる
メニューを工程順に並べるのも、利用者が理解しやすくなる方法です。
例えば、スマートフォンを扱っている場合は「申し込み、契約状況の確認、操作方法、解約方法」という順に並べると時系列になっており、分かりやすくなります。
メニュー構成はコンタクトセンターの問い合わせ内容や業種によって異なるので、利用者目線に立ち、戸惑わずにプッシュ操作や音声認識ができる方法を採用してみてください。
まとめ
いかがでしたか?
コンタクトセンター(コールセンター)で導入されているIVRとはどのようなものか把握でき、自社のコンタクトセンターに導入すべきか判断できたかと思います。
最後にこの記事の内容をまとめます。
◎IVR(Interactive Voice Response)とは、自動音声応答システムのこと
◎IVRでできることは下記のとおり
IVRを導入するとできること | |
問い合わせの導線を最適化する | 利用者の要件とオペレーターグループを紐付けして、最適なオペレーターや自動受付などに接続する |
予約や再配達などの自動応対 | オペレーターを介さなくても自動で受付ができる |
無人対応と有人対応の切り替え | 無人対応とオペレーターへの有人対応の切り替えができる |
営業時間外の対応 | コンタクトセンターの営業時間外の対応ができる |
折り返し電話機能 | コンタクトセンターの混雑時に、後ほどコンタクトセンター側から折り返し電話をする予約ができる |
SMSとの連携 | 電話番号にSMSを送り、ウェブサイトの質問集やチャットボットなどに誘導する |
◎IVRを導入するメリットは次の3つ
・業務効率化が可能
・顧客満足度の向上につながる
・あふれ呼による機会損失を防止できる
◎IVRを導入するデメリットは次の3つ
・利用者が操作をしなければならないため手間が増える
・プッシュ操作などが長くなると離脱率が高くなる可能性がある
・シナリオ設計によっては顧客にストレスを与える
◎IVRの導入が向いているコンタクトセンターは次のとおり
・オペレーターの離職率が3割を超えている
・来店予約や定休日の問い合わせなど定型的な問い合わせが多い
・修理受付や商品予約受付など窓口が複数ある
◎IVRの導入が向いていないコンタクトセンターは次のとおり
・問い合わせ内容が複雑化しやすく、自動受付や自動応答では対応できない
・プッシュ操作に慣れていない年配者を対象としている
◎IVRを導入する方法にはオンプレミス型とクラウド型がある
オンプレミス型 | サーバーやソフトウェアなどの情報管理システムを自社内に設置し運用 |
クラウド型 | IVRのサービスや機能をインターネット経由で利用する仕組み |
◎IVRを導入するときの注意点は次の4つ
・内容を複雑化しすぎない
・ガイダンスの内容は簡潔にまとめる
・オペレーターにつながる動線を用意しておく
・メニュー構成をしっかりと考える
この記事をもとに、業務効率化や顧客満足度の向上に繋がる方法でIVRを導入できるようになることを願っています。