「コールセンターで慢性的な人手不足に悩んでいると言ったら『RPAを導入したら?』と勧められたが、どんなことができるの?」
「RPAがコールセンター業務を効率化してくれるというけれど、どんなメリットがある?」
コンタクトセンター(電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)の管理業務をしていて、そんな疑問や悩みを持っている方も多いでしょう。
システムの変更や運用変更では対応できない場合に、RPAで対応することが可能な場合があります。
RPAは、「人間がPCで行う単純作業や反復作業をロボットに覚えさせ、自動的に行えるようにするシステム」です。
Excelなどのマクロ機能と近いイメージですが、RPAの場合は複数のアプリケーションにまたがって一連の動作を自動化できるのが特徴だといえます。
たとえば、「自社サーバやインターネットを検索して情報を収集し、Excelやシステムに入力する」といったことが可能なのです。
そのため、コンタクトセンターでは以下のような業務を自動化し、効率アップが期待できます。
【SV業務】
・各種レポート作成
・勤怠記録の管理
・営業リストの作成
・データのダウンロード
・データのアップロード
【オペレーター業務】
・応対内容の転記
・WEBサイトから情報取得、データ登録・確認
・各種申請プロセスの自動化
・コンタクトセンターに付随した事務処理業務 など
そこでこの記事では、コンタクトセンターにRPA導入を考えている方が知っておくべきことをまとめました。
最初に、RPAの基礎知識を学びます。
・RPAとは
・RPAの機能
・RPAとAIの違い
その上で、実際にコンタクトセンターでRPAを活用する方法について考えていきます。
・コンタクトセンター(コールセンター)におけるRPA活用例
・コンタクトセンター(コールセンター)にRPAを導入するメリット
・コンタクトセンター(コールセンター)にRPAを導入する際の注意点
最後まで読めば、コンタクトセンターでRPAを十分に活用する方法がよくわかるでしょう。
この記事で、あなたのコンタクトセンターが人手不足の悩みから解放され、生産性が向上するよう願っています。
1.RPAとは
まず、「RPA」とは何かを簡潔に確認しておきましょう。
1-1.RPAとは?
「RPA」とは、「Robotic Process Automation」の略で、直訳すると「ロボットによるプロセス=手順の自動化」を指します。
端的に言えば、人間がPCで行う単純作業や反復作業をロボットに覚えさせ、自動的に行えるようにするシステムです。
あらかじめどのような作業をさせたいかという「シナリオ」を作成すれば、それに従ってRPAが自動的に計算や記録、分析、メール送信などさまざまなことを行ってくれます。
イメージとしてはExcelのマクロ機能に近いものですが、RPAの場合は、複数のアプリケーションにまたがる作業を一連で自動化できるのが特長です。
たとえば、「インターネット上で自社製品の評価や口コミを検索・収集して、レポートを作成する」「送られた注文内容を読み取って請求書を作成、メールで送信する」といった一連の作業を自動化することができます。
これにより、業務の大幅な効率化を図ることができるため、人員不足に悩まされているコンタクトセンター業界でも注目を集めているのです。
1-2.RPAの機能
前述のように、RPAではさまざまな作業を自動化することができます。
その機能は、RPAツールによって異なりますが、主に以下のようなことが可能です。
これらの機能を組み合わせることで、一連のルーティン作業をすべてRPAに代行させることができるようになるのです。
1-3.RPAとAIの違い
多様な作業を自動的に行うRPAですが、同じような目的で利用されるものに「AI」もあります。
両者はどのように異なるのでしょうか?
ひと言でいえば、人間が作った「シナリオ」に従って作業を行うのがRPA、データや経験を積み重ねて自ら学習するのがAI=人工知能です。
つまり、指示されたことだけをするか、自分で判断できるか、という点が異なるのです。
ただ、RPAは以下の3つのレベルに分けることができ、高度なレベルのものであれば、AI同様の学習・判断を行うこともできます。
現在利用されているのは、主にクラス1のRPAですのでAIとは大きく異なりますが、クラス2、クラス3のものが普及すれば、今よりもっとAIに近づくかもしれません。
2.コンタクトセンター(コールセンター)におけるRPA活用例
このような便利な機能を持つRPAは、コンタクトセンター(コールセンター)でも汎用性が高く、実際に導入するセンターも増えています。
では、具体的にはどのようなシーンで活用できるでしょうか?
その主な例を見ていきましょう。
2-1.SV業務
コンタクトセンターの場合、RPAは特にSVの業務に利用されることが多いと言えます。
中でも以下のような作業をRPAで自動化しているセンターは多いでしょう。
2-1-1.各種レポート作成・分析
もっとも利用頻度が高い機能のひとつが、「レポートの作成・分析」です。
たとえば、各オペレーターごとのレポートや日報などを、あらかじめ設定した形式で定期的に作成させることが可能です。
さらに、それをもとにパフォーマンスやコールリーズンなどを集計・分析することもできます。
SVは、その結果を見て改善策を考えるという、人間にしかできない作業だけを行えばよく、作業工数と時間の大幅な節約になります。
2-1-2.勤怠記録の管理
もうひとつ重要なのは、「勤怠記録の管理」です。
大勢いるオペレーターなどのスタッフすべての出勤日、出退勤時刻、残業・休日出勤などをRPAに自動で集計、チェックさせることができます。
これらの作業は、人力で行うと非常に時間がかかる上に、ミスも発生しやすいものです。
もしミスがあれば、給与計算などにも影響するため、正確を期さなければなりません。
その点RPAであれば、記録も集計も高い精度が期待できます。
オペレーターが申告した勤怠記録と、実際にPCが使用された時間やオフィスの入退室時刻とに齟齬がないかをチェックすることも可能ですので、より厳密で正確な勤怠管理ができるでしょう。
2-1-3.営業リストの作成
アウトバウンドのコンタクトセンターであれば、架電用の「営業リスト作成」もRPAで自動化できます。
たとえば、ターゲット層を指定すると、それに該当する企業情報や顧客情報を、RPAが社内データベースやインターネット上から収集し、Excelなどに自動的に入力、リスト化します。
あとは、オペレーターがそのリストにしたがって架電するだけです。
ちなみにこれは、CRMなどのツールでも自動化できる作業ですので、他の機能との兼ね合いを考えてどちらを導入するか判断するといいでしょう。
2-1-4.データのダウンロード
次に、「データのダウンロード」が挙げられます。
たとえば、多くのコンタクトセンターでは、対応品質の向上やトラブル防止のために、顧客との通話を録音しているでしょう。
通話数が多ければ、システム内に保存される音声データのデータ量も膨大になるため、定期的に溜まった音声データをダウンロードして別のサーバなどに移行する作業が必要になります。
音声認識ツールなどを導入することができればデータの移行は必要せずとも指定のサーバーへの保管が可能ですが、音声認識ツールなどの導入が難しい場合は、この一連の作業も、RPAに代行させることが可能です。
「〇日ごとにダウンロードし、このサーバに保存する」といったように作業を指定すれば、自動的にどんどんデータが移行されるため、「ダウンロードし忘れてデータの保存期間が過ぎてしまい、一部のデータが消えてしまった」といったミスも未然に防げます。
2-1-5.データのアップロード
データのダウンロードだけでなく、データのアップロードもをRPAで自動化することができます。
たとえば、WEBの予約サイトなどで顧客が入力した情報をダウンロードし、データベースへ取り込みます。
さらに顧客管理システムへ1件ずつ登録し、WEBサイト上で予約番号の更新をするという一連のプロセスをRPAで自動化することができるのです。
RPAを活用し自動化することで、顧客情報の登録ミスを未然に防ぎます。
2-2.オペレーター業務
一方、SVほどではありませんが、オペレーターの業務においてもRPAが活躍するシーンはあります。
たとえば以下のような例です。
2-2-1.応対内容の転記
オペレーターの業務で、特に時間と手間がかかるもののひとつが後処理です。
それを短縮させるために、RPAに「応対内容の転記」を任せるといいでしょう。
コンタクトセンターでは一般的に、終話後に業務システム上に対応内容を入力して記録に残します。
さらに、報告書や集計表など別の書式にも転記しなければならないケースもあり、これに時間と手間がかかるために後処理時間が長くなってしまうという課題を抱えているセンターも多いようです。
そこで、この転記作業をRPAに任せることで、後処理時間を大幅に短縮できます。
2-2-2.WEBサイトから情報取得、データ登録・確認
WEB上にある膨大な情報の中から、特定のハッシュタグで投稿されたアカウント情報や画像を収集したり、顧客の注文を代理で登録・確認をするといったWEBサイト上の対応もRPAにて自動化することが可能です。
自動化することによって、工数の削減と登録間違いや誤発送に繋がる重大なミスを未然に防ぐことができます。
2-2-3.コンタクトセンターに付随した事務処理業務
コンタクトセンターに付随している事務処理業務にもRPAが有効です。
たとえばFAXを活用し、営業店と業務をしている場合、受信したFAXの内容を確認しながらオペレーターが処理を行うことがあります。
RPAを活用することにより、受信したFAXをCSVファイルへとダウンロードしPDF化、所定のフォルダへ格納することができます。
また、入力においてもCSVファイルの一部をRPAにてPDFを元に半自動入力をすることが可能となります。
このようなルーティンワークが多く、工数がかかっている部分の一部を削減することによりコスト最適化に繋がります。
3.コンタクトセンター(コールセンター)にRPAを導入するメリット
このように、コンタクトセンター(コールセンター)でRPAが活用できるシーンはさまざまあります。
では、これを導入することで具体的にはどのようなメリットがあるでしょうか?
3-1.業務を効率化でき、人材不足を解消できる
多くのコンタクトセンターで課題となっているのが、オペレーターなどの人材不足です。
近年はコロナ禍の影響もあり、コンタクトセンターの採用状況は一時的に好転したものの、労働人口の減少により効率化が求められています。
そこでRPAを活用し、データの集計や管理を自動化すれば、その分SVは応対品質管理や業務改善に時間を割くことができますし、オペレーターはより多くの問い合わせ件数に対応することができるようになります。生産性を上げることで人材を適正化することができ、人材不足の解消も期待できます。
また、膨大な単純作業を人力で行うと、どうしてもミスが生じてしまいます。
が、ロボットに任せることで人為的ミスを避けることができ、より正確に作業を進めることが可能になります。
3-2.コストを適正化できる
RPAを導入することで人材不足が解消されるということはコスト削減も同時に実現でき、コスト適正化にもつながります。
一般的に、コンタクトセンターの人件費は総費用の7割以上とも言われていて、もっとも大きな負担となっていますが、人力で行う作業をRPAに任せることで、コストの適正化が可能になります。
また顧客対応における時間を削減するといった内容ではないので、対応品質を低下させることなく、人的リソースにかかるコストを削減できます。
4.コンタクトセンター(コールセンター)にRPAを導入する際の注意点
ここまで説明したように、コンタクトセンター(コールセンター)にRPAを導入することにはさまざまなメリットがあります。
が、一方でいくつかの点では注意も必要です。
そこで最後に、RPAに関する注意点を挙げておきます。
4-1.自動化できる業務・できない業務を切り分ける
RPAはコンタクトセンターにとって非常に有用なツールです。
が、「1-3.RPAとAIの違い」でも説明したように、一般的なクラス1のRPAは、自分で学習して考えるAIとは異なり、あくまで人が設定した単純作業・反復作業を行うものです。
そのため、導入前にはまず自社のセンターにはどんな業務があるかを洗い出し、それらを自動化できる業務とできない業務とに切り分けることが必要です。
もし、自動化できる業務が少なければ、RPAはあまり向かないかもしれません。
RPAで自動化できる業務とできない業務の傾向について表にまとめましたので、以下を見て判断してください。
4-2.小規模から導入する
また、RPAの導入を決めた場合には、最初からあらゆる業務を自動化するのは避け、まずは自動化しやすい単純作業から小規模に導入していきましょう。
というのも、RPAはさまざまな活用のしかたが想定できますが、一気にあれもこれもと業務プロセスを変更すると、スタッフが対応しきれなかったり、システムがうまく回らない恐れがあるからです。
そうなると、せっかくのRPAも逆効果になりかねません。
たとえば、最初はSVの「レポート作成」とオペレーターの「応対内容の転記」だけを自動化してみて、スタッフが慣れたところで徐々に自動化する業務を増やしていく、といった段階的な導入が望ましいでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
コンタクトセンターとRPAについてよくわかったかと思います。
ではあらためて、記事の要点を抑えておきましょう。
◆RPAは、人間がPCで行う単純作業や反復作業を自動的に行えるようにするシステム
◆コンタクトセンターにおけるRPAの活用事例は、
【SV業務】
・各種レポート作成
・勤怠記録の管理
・営業リストの作成
・データのダウンロード
・データのアップロード
【オペレーター業務】
・応対内容の転記
・WEBサイトから情報取得、データ登録
・各種申請プロセスの自動化
・コンタクトセンターに付随した事務処理業務 など
◆コンタクトセンター(コールセンター)にRPAを導入する際の注意点は、
・自動化できる業務とできない業務を切り分ける
・小規模から導入する
この記事で、あなたのセンターがRPAをうまく活用できるよう願っています。