「生成AIとはどんなもの?」
「生成AIを自社で活用するためには、どうしたらよい?」
生成AIに関心はあるが正確には理解できていない、ビジネス活用の可能性を探りたい、という方は少なくないと思います。
生成AIとは、「さまざまなコンテンツやデータ、アイデア、情報などを新たにつくり出すことができる人工知能(AI)」です。
生成AIでつくり出せるものには文章(テキスト)やプログラムコード・画像・動画・会話・音楽など様々あり、近年その性能が目覚ましく発展しているために注目を集めています。
生成AIをビジネスに用いる企業も増えており、以下のような方法で活用されています。
しかし生成AIは、適切に使用しなければ著作権の侵害や低品質なコンテンツの制作、セキュリティ上の問題、また、ハルシネーション(AIが虚偽の情報をもっともらしい形で出力してしまう現象)による誤発信などにつながってしまうリスクも併せもっています。
そのため、活用にあたっては正しい知識を身に付けることが欠かせません。
そこでこの記事では、以下の内容について詳しく解説します。
▼生成AIとは |
この記事を読むことで、生成AIとはどのようなものかがよく理解できます。ビジネス活用する方法とその際に重要となるポイントもわかるため、すぐに導入の可否について検討を始められるはずです。
生成AI活用の波が拡大する中で遅れを取ることなく、自社ビジネスを発展させていくための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
1.生成AIとは
最初に、生成AIとは何かについて確認しましょう。
近年大きな注目を集めている言葉なのでよく耳にするものの、その本質的な意味についてはよくわからない、という方も少なくないと思います。
この章では生成AIを理解するために、以下の内容について解説します。
・生成AIという言葉の意味 |
1-1.生成AIとは「さまざまなコンテンツコンテンツやデータ、アイデア、情報などを新たにつくり出すことができる人工知能」のこと
生成AIとは、「さまざまなコンテンツやデータ、アイデア、情報などを新たにつくり出すことができる人工知能(AI)」です。
「生成する力がある」という意味をもつ「Generative」という英単語を用いてジェネレーティブAIと呼ばれることもあります。
生成AIでつくり出せるコンテンツには、文章(テキスト)やプログラムコード・画像・動画・会話・音楽など様々あります。
人間の指示に応じて、学習したデータをもとにコンテンツをアウトプットするわけですが、単にデータの中から適切なものを選ぶわけではありません。
大量のデータから学習したパターンや関係性を基に、新しいコンテンツをつくり出すのです。
この「新しいコンテンツをつくり出す」という特徴が、生成AIが従来のAIと一線を画す理由です。
1-2.生成AIと従来のAIとの違い
生成AIと従来のAI(生成AIが出現する前のAI)との違いは、生成AIが新しいコンテンツをつくり出すことができるという点にあります。
【生成AIと従来のAIとの違い】
生成AI | 従来のAI | |
---|---|---|
アウトプットの目的 | 創造 | 特定や予測 |
学習方法 | データの関係性やパターンを捉える | データを整理・分類する |
活用方法 | 新しいコンテンツを生成する | 一定の行為を自動化する |
従来は、人間がAIに目的に見合ったデータを学習させ、AIはそれを記憶・体系化することによって判断した答えをアウトプットしていました。たとえば売上を予測したり、不良品を特定したりする方法です。
つまり「与えられたデータの中から適切な回答を探して提示する」のが従来のAIだといえます。
それに対して生成AIは、データ自体だけではなくその関係性やパターンを学習し、指示に応じた内容を新たにつくり出してアウトプットします。これは、ディープラーニング(深層学習)という仕組みです。
つまり「自ら学習したデータを駆使して適切な回答を考え出す」のが生成AIだといえます。
1-3.生成AIの活用が社会に与える影響
生成AIの活用が社会に浸透し、例えばコンテンツ制作の領域で言うと現在人間が担っているコンテンツ制作がある程度自動化されることにより、多くの人が影響を受けるともいわれています。
専門的なスキルがなくてもコンテンツを制作することが可能になるため、ライターやデザイナーなどのクリエイティブな仕事に就く障壁が下がり、クリエイター人口が増加するでしょう。
生成AIに仕事を取って代わられるのではないかと懸念する人もいますが、雇用そのものが失われる可能性は限定的とみられています。
むしろ、生成AIに適切な指示を出すプロンプトエンジニアという職種が生まれるなど、新しい雇用の可能性が高まることもあり得ます。
このように社会全体で生成AIを活用する流れが広まれば、クリエイティブな作業における生産性や満足度が底上げされると考えられます。
またコンテンツ制作の効率化によって、本来使いたいことに充てる時間を確保でき、仕事や私生活が充実するという未来像も描けます。
2.【2023年最新】生成AIの利用実態調査
生成AIとは何かがわかったところで気になるのは、実際にどの程度普及しているのかということではないでしょうか。
たとえば生成AIの代名詞ともいえるChatGPTは、公開から1週間で100万ユーザー、2ヶ月で1億ユーザーを達成しており、消費者向けアプリケーションの中では史上最速の成長だといわれています。
そこでトランスコスモスでは、生成AIの利用実態について調査を行いました。その結果を、以下2つの観点からご紹介します。
・個人利用における生成AI利用実態 |
なお本調査の事前調査において、約2万人に「生成AIを利用したことがあるか」を尋ねたところ、約18%が利用したことがあると回答しました。本調査ではその人たちを対象にしています。
2-1.個人利用における生成AI利用実態
生成AIの利用経験者のうち、プライベートで利用したことがある人は81.5%でした。利用頻度は「週に1回以上」が過半数を占め、「毎日」という人も14.2%存在します。
生成AIが個人利用において頻繁に活用されていることがわかります。
生成AIの利用目的としては、娯楽と学習サポートを挙げる人の割合が多くなっています。
生成AIを利用するメリットとして「時間と労力を節約できる」、課題として「適切性や正確性が不足している」と答えた人が最多でした。
また、「生成AIを活用したカスタマーサービスがあれば使いたい」という人は約半数存在し、その理由として「品質の向上」と「迅速な対応」に期待しているということがわかりました。
※本調査についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
2-2.ビジネスシーンにおける生成AI利用実態
生成AIの利用経験者のうち、ビジネスシーンでの利用経験がある人は38.4%でした。利用頻度は「週に1回以上」が7割以上に上り、「毎日」という人も18.4%存在します。
業務の中で日常的に生成AIが活用されていることがわかります。
生成AIの利用目的としては、教育やトレーニング・データ解析のほか、翻訳支援・プログラミングといった回答が多い傾向にありました。
生成AIを利用するメリットとして「情報の要約や整理ができる」「自動化による業務効率化ができる」を挙げた人が多く、実際に「時間とコストの削減ができた」「生産性が上がった」という成果を実感しているという結果になりました。
一方の課題としては「適切性や正確性が不足(出てきた情報が正しいのか判断しにくい)」を挙げた人が最多で、「データの匿名化や暗号化」と併せて今後改善が期待される点だということがわかりました。
また、生成AIの利用については約80%が満足しており、ビジネスの場で使っていくべきかという質問には約90%が「使っていくべき」と回答しました。生成AIの利用によって成果を得ているケースが多く、積極的に取り入れようとする流れがあるといえるでしょう。
※本調査についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
3.生成AIの主な種類は4つ
公私にわたって活用できそうな生成AIの可能性を認識したところで、生成AIの種類を確認しておきましょう。用途に応じて使い分けることで、期待する成果を上げやすくなります。
生成AIには、主に以下の4種類があります。
それぞれの内容について、解説していきます。
3-1.文章(テキスト)生成AI
テキスト生成AIでは、テキストボックスに指示(プロンプト)を入力すると、AIがその内容を解析して回答となるテキストを生成します。
テキスト生成AIを活用すると、以下のようなことが可能になります。
・メールや広告などの文章作成 |
文章を作成するだけではなく、アイデア出しやプログラミングなどのサポートまで幅広く役立ちます。
また、知りたいことを質問すれば回答を得られるため、あれこれ検索する手間が省けるという魅力もあります。
情報の正誤や文章表現の適否について確認することは欠かせませんが、高性能なモデルであればまるで人間が書いたようなテキストを生成することができる場合もあります。
代表的な文章生成AI ・ChatGPT(チャットジーピーティ) ・Google Bard(グーグルバード) ・Perplexity(パープレキシティ) |
3-2.画像生成AI
画像生成AIでは、生成したい画像イメージに関するプロンプト(テキストによる指示)を入力すると、その内容に応じた画像が生成されます。
たとえば「よく晴れた空を見上げる少年」という文章や、「SF ジャングル 宇宙船」などのキーワードを入力することで、イメージに合った新しい画像を手に入れることができます。「浮世絵風」「セピア写真風」などのアレンジも可能です。
また、複数の画像を読み込ませてそれらの特徴をもった新しい画像を生成するという使い方ができる画像生成AIもあります。
画像生成AIを活用すると、Webサイトや資料などに使用するデザイン素材を簡単に用意することが可能になります。
代表的な画像生成AI ・Stable Diffusion(ステイブルディフュージョン) ・Midjourney(ミッドジャーニー) ・Bing Image Creator(ビングイメージクリエイター) |
3-3.動画生成AI
動画生成AIでは、生成したい動画イメージに関するプロンプト(テキストによる指示)を入力すると、その内容に応じた画像が生成されます。また、画像や動画を入力して新しい動画を生成することもできます。
現時点では数秒ほどの短い動画しか生成できませんが、技術が進歩すればさらに長尺の動画も生成できるようになると期待されています。
動画生成AIを活用すると、アイデアの創出につながるイメージ動画が手軽に準備できるほか、将来的には簡単なプロモーション動画などの制作も可能になると考えられます。
代表的な動画生成AI ・Gen2(ジェンツー) ・Video BRAIN(ビデオブレイン) |
3-4.音声生成AI
音声生成AIは、テキストや音声を入力するとそれに応じた新しい音声データを生成します。
テキスト入力ではその内容を読み上げる音声が作られ、音声入力では自由に話せる同じ声を再現します。音声生成AIの性能は向上してきており、一昔前の「機械的で不自然な音声」という違和感は払拭されつつあります。
音声生成AIの活用は、カスタマーサポート用のアナウンスを作成する、動画やアバターに音声を付加するなどの作業に役立ちます。
代表的な音声生成AI ・Amazon Polly(アマゾンポリー) ・Voicebox(ヴォイスボックス) |
4.生成AIがコンテンツをつくる仕組み
生成AIの活用によって、さまざまなコンテンツをつくり出せるということがわかりました。しかし生成AIは一体どうやってコンテンツをつくっているのか?という疑問を感じる方もいるでしょう。
そこでこの章では、生成AIがコンテンツをつくる仕組みについて解説します。何となくでも構わないのでその仕組みを理解することが、生成AIをうまく活用するコツや限界を知ることにつながります。
4-1.生成AIは「学習・処理・アウトプット」というプロセスでコンテンツをつくり出す
生成AIは、データを「学習・処理・アウトプット」というプロセスにかけることでコンテンツをつくり出します。
まずは与えられた大量のデータについて、その特徴やパターンを学習します。次に、プロンプト(人間のAIに対する指示)に応じて学習データを処理し、結果をアウトプットするのです。
テキスト生成AIであれば、言語データを学習し、それらの言葉の意味を解析してプロンプトに対応するテキストを返します。
画像生成AIにはいくつかのモデルがありますが、たとえば「VAE(変分オートエンコーダ)」というモデルでは、画像データの特徴を学習し、プロンプトに応じて似たような画像をアウトプットします。
生成AIはこのような仕組みになっていることから、希望に近いコンテンツをつくり出すためには「学習データ」と「プロンプト」が重要になってくるのです。
4-2.生成AIをうまく活用する上では「学習データ」と「プロンプト」が重要
データについて学習し、それを処理することでコンテンツをアウトプットするという生成AIの仕組みを踏まえると、うまく活用する上では「必要十分量でバリエーションに富んだ学習データ」と「できる限り具体的なプロンプト(人間のAIに対する指示)」が重要になってきます。
学習データの質が低ければ、新しいコンテンツの材料が少なくなり、精度の高いものを生成できないからです。そしてプロンプトが適切でなければ、AIが人間の意図に応じたコンテンツを生成できず、「イメージしていたものと違うため使えない」ということになってしまいます。
たとえば、人間の画像データしか学習していないAIに猫の画像生成を指示しても、うまくつくられない可能性があります。
また、「謝罪文を作成してください」というプロンプトではそのまま使えるレベルのテキストはできず、「取引先宛てに納期が送れたことを謝罪する文面のメールを作成してください」というように詳細な条件を指定する必要があります。
このように、生成AIによるコンテンツの出来高は、学習データとプロンプトの質に依存するという限界をもつのです。
5.生成AIの活用方法は大きく3つ
生成AIがどのようなものか理解できたところで、活用方法について考えていきましょう。生成AIで「何ができるか」ということに対する答えは、大きく以下の3つに集約されます。
・コンテンツ制作のアイデアを得る |
それぞれの内容について、解説していきます。
5-1.コンテンツ制作のアイデアを得る
生成AIを活用すると、コンテンツを制作するためのアイデアを得ることができます。
目的のコンテンツについて生成AIに質問したり、ひとまずつくってみたりすることによって、新しい視点や不足部分が見えてくると同時に、目指す仕上がりを具体的にイメージすることが可能になるからです。
たとえば、新商品の魅力をアピールする広告文を制作したいとしましょう。テキスト生成AIに「このような商品を買いたいと思うのはどんな人?」「売上を最大化するために訴求すべき要素は?」などの質問をすることで、ターゲットとなるセグメントや広告文に盛り込む内容についてのヒントが得られます。
このように生成AIは、まずコンテンツ制作の準備をするためのアイデアの創出から活用できます。
5-2.コンテンツ制作を自動化する
生成AIを活用すると、コンテンツ制作をある程度自動化することができます。
もちろん人間によるチェックは不可欠ですが、コンテンツのたたき台をつくったり、定型的なコンテンツ制作を代行させたりすることは可能です。
たとえば、キャッチコピーの案をリスト化したり、営業資料の翻訳版を作成したり、という使い方があります。
このように生成AIは、コンテンツ制作のメインとなる部分のサポートとして活用できます。
5-3.コンテンツのブラッシュアップに利用する
生成AIは、制作したコンテンツをブラッシュアップすることにも役立ちます。
コンテンツの誤りをチェックしたり、違うバージョンを提示したりすることができるため、それらを参考にコンテンツを改善することが可能になるからです。
たとえばテキスト生成AIでは文章の要約や添削によって、画像生成AIでは元の画像の特徴を備えた新しい画像の生成によって、制作したコンテンツをよりよくするためのポイントを知ることができます。
このように生成AIは、コンテンツ制作の仕上げや更新にも活用できます。
6.【具体例あり】生成AIをビジネスに活用する方法
次に、生成AIはビジネスにおいてどのように活用できるのかということを確認しましょう。生成AIをビジネスに活用する方法には、以下のようなものがあります。
それぞれの内容について具体例を用いながら解説しますので、自社における活用イメージが湧くと思います。
6-1.顧客向けコンテンツの制作
生成AIのビジネス活用としてまず挙げられるのは、顧客向けコンテンツの制作です。
「5.生成AIの活用方法は大きく3つ」で解説したように、生成AIは顧客向けコンテンツ制作においてアイデア出し・制作・ブラッシュアップの各局面で有効活用することができます。
ターゲットとなる顧客のニーズを推測したり、それに応じた魅力的な構成案やデザインを手軽に準備したりすることが可能になるため、質の高い顧客向けコンテンツを制作するのに役立つのです。
以下は、制作できる顧客向けコンテンツの一例です。
・記事コンテンツ |
たとえば製造業で、過去に作成した仕様書を生成AIに読み込ませ、それをもとに顧客の希望する様式に応じた仕様書をアウトプットするという方法で活用することができます。
6-2.資料の作成
生成AIを活用すると、ビジネスで使う資料の作成を効率化することができます。
構成や素材の準備を簡略化できるほか、定型的な資料であれば制作を自動化することも可能だからです。以下は、制作できるビジネス資料の一例です。
・報告書 |
生成AIの翻訳と要約の機能を活用し、英論文の概要を掴むことに役立てることができます。また、生成AIに既存の資料内容を蓄積することで、行政文書や治験報告書などを自動出力するケースもあります。
6-3.ブレインストーミングのサポート
生成AIは、複数人でアイデアを出し合うブレインストーミングのサポートとしても役立ちます。
ブレインストーミングに先立って参加者が生成AIからアイデアを得ておくことで、複数人集まったときに持ち寄れるアイデアの数やバリエーションがさらに広がるからです。
またブレインストーミングの最中にも生成AIを使えば、新しいアイデアの提案を受けたり、アイデアの整合性や可能性を確認したりすることができます。
たとえば新商品の開発についてブレインストーミングを行うとしましょう。事前に以下のような内容を準備できれば、より建設的な話し合いが可能になるはずです。
・新商品のテーマやキーワード |
通信業界では、生成AIを組み込んだ社内チャットサービスを整備し、企画立案などのクリエイティブな業務を支援しようとする企業が少なくありません。
6-4.カスタマーサポートの充実
生成AIの活用によってカスタマーサポートを充実させることも可能です。顧客からの問い合わせに適切に回答するためのリソースになるからです。
たとえばテキスト生成AIを活用すれば、オペレーターが問い合わせに関連する情報を素早く検索することができます。動画生成AIを活用して顧客が疑問に感じやすい内容をわかりやすく解説したり、音声生成AIを活用して聞き取りやすい電話案内が可能になったりするでしょう。
社内文献を生成AIに読み込ませて瞬時に検索できるようにすることで、顧客からの問い合わせに正確かつ迅速に答えることができるシステムを整備することもできますし、チャットサポートにテキスト生成AIを組み込んで顧客との自然なやりとりを目指すことも可能になります。
6-5.教育・研修におけるトレーニング
生成AIは、ビジネス教育・研修におけるトレーニングにも活用できます。
生成AIによって疑問を解決したり、自分の行動に対するフィードバックを受けたりすることができるからです。
たとえばテキスト生成AIに優秀なアクションや業務上よくあるシチュエーション・質問への模範解答などをインプットしておけば、職員が自分のとるべき行動を手軽に検索することができます。
他にも、セールス教育などで生成AIによるロールプレイングを導入し、教育の質向上と工数削減に取り組むこともできます。
6-6.データの管理・分析
社内データの管理・分析に生成AIを活用することもできます。テキスト生成AIによってデータベースを作成したり、データの類似性や特徴を把握したりすることが可能だからです。
たとえば、以下のような使い方ができます。
・データをカテゴリー化する |
製造業で、生産現場におけるノウハウや事例を生成AIに学習させ、職員がいつでも検索できるデータベースを作成することで利便性を高めることができます。
また、顧客からの問い合わせ内容を要約し、類似性や応対履歴との関係性を分析するという風に、受電内容の解析に生成AIを活用することも可能です。
6-7.専門的なスキルの補完
生成AIの活用は、専門的なスキルの補完にもつながります。
これまでは、コピーライティングやデザイン・プログラミングなどの専門業務は当該スキルをもつ人材が請け負うのが一般的でした。しかし生成AIを活用すれば、専門的なスキルがなくても一定レベルのコンテンツを生み出すことが可能になるのです。
これによって、誰もがクリエイティブな役割を果たせるようになり、特定の人材を確保する手間やコストを削減できます。
7.生成AIを活用するメリット
生成AIの活用に興味が湧いてきたという方へ向けて、生成AIを活用するとどのようなメリットが得られるのかをお伝えしておきます。自社のビジネスにとって魅力が大きいという場合には、導入を前向きに検討するとよいでしょう。
生成AIを活用するメリットには、以下のようなものがあります。
それぞれの内容について、解説していきます。
7-1.作業効率が上がる
生成AIを活用するメリットとしてまず挙げられるのは、作業効率が上がることです。
アイデア出しや資料の作成など、工程の一部を生成AIに代行させることで、作業時間が短縮されます。また、誰でも一定レベルのコンテンツを制作できるため、品質の底上げが可能になります。
このように「既に品質の最低ラインをクリアした下地を、時間に余裕をもってカスタマイズできる」ことが、効率的なコンテンツ制作につながるのです。
下図は2章でご紹介した調査データですが、実際にビジネスシーンにおける成果を「時間とコストの削減ができた」「生産性が上がった」というように作業効率の向上として実感している人が最も多く、その割合は30%を超えています。
コンテンツ制作の効率や生産性を上げたいと考える企業にとっては、非常に魅力的なメリットだといえるでしょう。
7-2.アイデアのバリエーションが広がる
生成AIの活用には、アイデアのバリエーションが広がるというメリットもあります。
生成AIは膨大な学習データを駆使してコンテンツをつくり出すため、その中には自分では考えつかなかったものが含まれていることも少なくありません。また、ひとつのコンテンツをベースとしてニュアンスの違う複数のコンテンツを簡単に作成することも可能です。
それによって、視点や特徴が異なるアイデアが数多く引き出されるというわけです。
下図は2章でご紹介した調査データですが、ビジネスシーンにおけるメリットとして「幅広いジャンルに対応できる」ことを挙げる人が多く、たとえ自分にとって馴染みの薄い分野であってもアイデアを出しやすいということの表れだといえるでしょう。
クリエイティブな作業が多い・ブレインストーミングを充実させたいなどの企業にとっては、生成AIによるサポートが役立つでしょう。
7-3.コンテンツ制作のリソースが増える
生成AIを活用すると、コンテンツ制作のリソースが増えます。
「6-7.専門的なスキルの補完」で解説したように、生成AIを活用すれば専門的なスキルがなくても一定レベルのコンテンツを生み出すことが可能になるからです。
そのため、従来は特定の技術者しかできなかった作業が誰にでもできるという環境が生まれ、コンテンツ制作に費やせる人材や時間が増えることになります。
実際に上記の調査では、ビジネスシーンにおけるメリットとして「人的リソースを節約できる」ことを挙げた人が30%以上存在し、期待の高さが伺えます。
リソース不足だが現状なかなか増やせないという企業にとっては、生成AIが救いになるかもしれません。
8.生成AIのデメリット
生成AIの活用にはビジネス上魅力的なメリットが多い一方で、デメリットも存在します。導入したもののトラブルが起きてしまうという事態を防ぐために、確認しておきましょう。
生成AIを活用するデメリットには、以下のようなものがあります。
それぞれの内容について、解説していきます。
8-1.著作権への配慮が必要になる
生成AIを用いてコンテンツを制作する際には、著作権への配慮が必要になるというデメリットもあります。
生成AIの学習データの中には、著作物が含まれている場合があります。そのデータをもとにつくり出したコンテンツは、新しいといえども既存の著作物に類似する可能性がゼロではありません。
既存の著作物との類似性が高いコンテンツを、著作物の存在を認識した上で利用してしまうと、著作権侵害に問われるかもしれないのです。
そのため、生成AIのつくり出すコンテンツについて、よく似た先行コンテンツがないかどうかを複数人でしっかりと確認することが大切になります。
生成AIでつくり出したコンテンツの著作権 一方、生成AIでつくり出したコンテンツの著作権については、2024年1月現在で文化庁が以下のように規定しています。 ・AIが自律的に生成したもの(※)は、著作物に該当しない ・人が思想感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したものは、著作物に該当する |
8-2.情報漏洩が起こる場合がある
生成AIの利用によって情報漏洩が起こる場合もあります。
生成AIに入力した情報は、学習データとして使用されることがあるからです。
たとえば個人情報や社内の機密事項などを入力してしまうと、他のユーザーへの回答として表示されることで外部に流出する危険性がゼロではありません。
そのため、生成AIには秘匿性の高い情報を入力しないということを徹底する必要があります。
9.生成AIをうまく活用するためのポイント
最後に、生成AIをうまく活用するためのポイントをお伝えします。生成AI導入の成果を最大化し、トラブルを回避するために、確認しておきましょう。
生成AIをうまく活用するためのポイントには、以下のようなものがあります。
それぞれの内容について、解説していきます。
9-1.出力されたコンテンツの適切性を精査する
生成AIをうまく活用する上で最も重要といっても過言ではないのは、出力されたコンテンツの適切性を精査することです。
今までも何度か出てきているように、生成AIが学習に用いるデータの中には、古いものや信憑性が低いものが含まれる場合があります。
そのため、現時点では生成AIがつくり出すコンテンツも、情報が誤っていたり、表現が不適切だったり、似たようなコンテンツを何度もつくり出す可能性がゼロではないのです。
実際に多くの生成AIは、利用にあたってそのリスクがあることを明示しており、出力されたコンテンツの適切性をユーザーの責任において確認するよう推奨しています。
生成AIがつくり出したコンテンツをそのまま使用すると、フェイクニュースのように誤情報を拡散してしまうなど、不適切なコンテンツを発信して企業の信頼が揺らいでしまう、とい事態を避けるためにも、生成AIによるコンテンツは必ず人間の手によってその内容を精査してから活用するようにしましょう。
生成AIはあくまでも作業の補助と位置付け、人間主体でコンテンツをつくり上げることで品質を担保する必要があります。
9-2.ガイドラインやマニュアルを整備する
社内で生成AIを活用する場合には、ガイドラインやマニュアルを整備することが必要です。
社員それぞれが好きなように生成AIを使うということになれば、成果の最大化が難しいばかりでなく、トラブルが発生する可能性もあるからです。
たとえば、質の高いコンテンツを制作できるフローがあるにもかかわらず周知されていなければ、一部の社員しか活用できす、実現可能な成果の一部しか達成できないでしょう。
また、情報漏洩の危険性について注意喚起できていなければ、社内の機密事項が外部に流出することも考えられます。
生成AIを導入するのであれば、どのように活用するのかという具体的な取り決めが欠かせないのです。
9-3.倫理観に基づいて使用する
生成AIは倫理観に基づいて使用する、ということも重要です。
生成AIはあくまでも補助であり、コンテンツ制作の最終責任は自分にあるという認識でいなければ、生成AIを不適切に利用してしまう可能性があるからです。
たとえば、生成AIがつくり出したコンテンツを確認せずそのまま使用したり、類似性の高いコンテンツを使い回したりすると、どうでしょう。低品質なコンテンツしか制作できないばかりか、悪意があるのではないかと批判されることもあり得ます。
コンテンツ制作の第一義は「自分の頭で考えること」であると忘れないようにしましょう。
カスタマーサポートにおける生成AI活用ならトランスコスモスにお問い合わせください |
カスタマーサポートで生成AIを活用したいとお考えの方は、まずトランスコスモスにご相談ください。 トランスコスモスでは、カスタマーサポートにおけるAI活用について多くの実績とナレッジを備えておりますので、お客様企業のお悩みに応じて適切にサポートいたします。 最近では、サポートデスクに入る各種問い合わせを一括管理できるシステム「Quick Support Cloud」に生成AIを搭載した「Quick Support Cloud with GAI」のご提供を開始しました。 「Quick Support Cloud with GAI」では、以下の作業に生成AIが対応します。 ・チャットボット用の学習データ生成 これによって、顧客が求めている回答を、均一な品質で素早く提供できるようになります。また、人的工数の削減や処理時間の短縮によって、お客様企業の業務最適化も実現します。
また生成AIを活用した自動翻訳ツール「Translingo SMART(トランスリンゴスマート)」を開発し、マルチ言語に対応するチャットサービスの提供を開始しました。
御社のサポートデスクにAIが必要かどうかというアセスメントから対応できますので、どのようなことでもお気軽にお問い合わせください。 |
まとめ
この記事では、生成AIの基礎知識とビジネス活用の方法について解説しました。以下に要点をまとめます。
生成AIとは、「さまざまなコンテンツをつくり出すことができる人工知能(AI)」です。この「新しいコンテンツをつくり出す」という点が、従来のAIとは異なります。
生成AIの主な種類には、以下の4つがあります。
・文章(テキスト)生成AI |
生成AIをビジネスに活用するための方法には、以下のようなものがあります。
・顧客向けコンテンツの制作 |
生成AIを活用すると、以下のメリットを得られます。
・作業効率が上がる |
一方、生成AIのデメリットには以下のようなものがあります。
・著作権への配慮が必要になる |
生成AIをうまく活用するためには、以下のポイントをおさえましょう。
・出力されたコンテンツの適切性を精査する |
生成AIは、うまく活用すれば質の高いコンテンツを効率よく制作するための優秀なサポーターになります。この記事の内容を参考に、自社ビジネスへの有効性について検討してみてはいかがでしょうか。