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DXに成功した7事例!どうすれば成功できる?失敗しないコツも解説

「DXを推進している企業の事例が知りたい」
「成功した企業はどのような取り組みをしているの?」

企業でDX化に関わっている担当者の中には、そのような疑問を抱いている方も多いのはないでしょうか。実際に、DXに取り組んでいる企業は多く、成功した事例を見てみると、以下のようなポイントが共通しています。

【DX成功のポイント】
・組織のリーダーが率先して取り組む
・目標を明確に設定する
・DX人材を確保する
・部署横断的な協力が必要
・事前にコストや工数を予測して綿密な計画を立てる

そこでこの記事では、DXの事例をさまざま挙げて、成功パターンと失敗パターンについて考えていきたいと思います。最後まで読めば、DXのさまざまな事例を知ることができるでしょう。

DXとは?
DX優良事例【経済産業省「DXセレクション2022」より】
コンタクトセンター(コールセンター)におけるDX成功事例6例
事例からわかる!DX化の重要性とメリット
事例からわかる!DX化が失敗する5つのケース
DX化に有用なデジタル技術4つ
DXを成功に導くための5つのポイント

目次

1.DXの基礎知識

まず初めにDXとは何か、なぜ重要なのかを説明します。

1-1.DXとは?

DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略語で、企業がITなどのデジタル技術を用いて新たな価値を創造し、競争力を高めていくことを指します。

経済産業省は、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0」の中でDXを以下のように定義しています。

【DXの定義】

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

出典:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0」

つまり、「IT化によって業務を効率化したり、製品やサービスを改善する」だけでなく、それによって業績を向上させたり顧客満足度を高めたりすることができてこそ、DXと言えるのです。

1-2.DXとデジタイゼーション、デジタライゼーションの違い

DXと似たものとして「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。これらは混同して使われることもありますが、経済産業省のDXレポート2によるとその意味は以下のように異なります。

【DXの構造】

DXの構造

出典:経済産業省「DXレポート2

つまり、ペーパーレス化をするだけなら「デジタイゼーション」、ITツールの導入までなら「デジタライゼーション」に過ぎません。

それらを含めて全社的に業務のあり方自体をデジタル化によって変革し、その結果として顧客満足度を高め、業績を向上させることこそが「DX」なのです。

2.DX優良事例【経済産業省「DXセレクション2022」より】

DXについての基礎知識をおさらいしたところで、ここからはDX事例を見ていきましょう。

DX化を推進している企業は多数あります。そこでまずは、経済産業省の「DXセレクション2022に選出された企業の事例を紹介します。

DXセレクション2022は、経済産業省が中堅・中小企業等のDXのモデルケースとなる優良事例を選定するもので、2022年度から始まりました。DXに取り組む企業からの応募を受けて、以下の評価項目にのっとって審査をし、16社が選定されています。今回はグランプリを受賞した事例のみご紹介します。

【DXセレクションの評価項目】
.経営ビジョン・ビジネスモデル
.戦略
.戦略実現のための組織・制度等
.戦略実現のためのデジタル技術の活用・情報システム
.成果と重要な成果指標の共有
.ガバナンス

2-1.<グランプリ>株式会社山本金属製作所

抱えていた課題

他社との差別化の必要性、高度な加工技術の属人化

DXの目的、目標

「機械加工の現場にイノベーションを起こす」
「高度な加工技術をもったエンジニアリングカンパニー」を目指す
→生産技術を担う人材の育成

取り組み、施策

・機械加工技術を測定、数値化
→誰でも高度な加工作業が可能になった

・LASプロジェクト:「ものづくりの現場は学習の場でもある」という新しい価値観
→製造現場でノウハウの伝承や教育も行う

DXセレクション2022でグランプリに選出された株式会社山本金属製作所は、主に機械加工を行っている企業です。

リーマン・ショックなどをきっかけに他社との差別化、自社の強みをあらためて見直した結果、それまで属人化されていた機械加工の技術を、デジタル技術によって誰でも高度に行えるようにしようと考えたそうです。そこで、自社の存在意義を「機械加工の現場にイノベーションを起こす」と定義づけ、DXに取り組みました。

まず行ったのは、機械加工のさまざまなプロセスについてデータを取り、技術を数値化する作業だったそうです。削ったり磨いたりといった作業を、人の感覚で捉えるのではなく、力や熱、振動などを測定した数値で示すことで、誰でも同じように高度な作業ができるようになったのです。

中でも本当の狙いは「生産技術を担う人材の育成」にあり、ものづくりだけでなく「LASプロジェクト」というサービスにも注力しています。

【LASプロジェクト】  

Learning :
技能、ノウハウの伝承
次世代の教育
技術教育カリキュラム構築

Advanced:
条件最適化
生産ライン省人化、自動化

Suppor:  
生産ライン立ち上げ
システムインテグレーション
不具合時の対応
データ分析

このように、売り上げを拡大するだけでなく、他者への技術提供といった新規事業の開拓にもつながっているのは、まさにDXの目指す「旧来の業務プロセスやビジネスモデルを根本から見直して効率化をはかること」、「これまでにはなかった新たな製品、サービス、ビジネスを創出すること」を実現した例と言えるでしょう。

3.コンタクトセンター(コールセンター)におけるDX成功事例6例

では次に、トランスコスモスのコンタクトセンター(コールセンター)DX成功事例を業界別に6件紹介します。

・【流通・通販】A社:チャット導入でコール流入65%削減
・【流通・通販】B社:VOC活用で返品に関するクレームゼロに
・【製造】C社:ボイスボット活用でコール45%減・ボット利用19.3倍に
・【製造】D社:IVR導入・WEB改善でノンボイス比率22%→47%に向上
・【通信】E社:月間の後処理時間を670時間削減
・【金融】F社:チャットボットへ誘導するQRコード活用で繁忙期の入電を10%削減

3-1.【流通・通販】A社:チャット導入でコール流入65%削減

業務内容

カスタマーサポート窓口

抱えていた課題

繁忙時間になると、顧客からのコールに対応しきれずに応答率が低迷する

取り組み、施策

チャット窓口へのWeb導線を整理
→顧客の個人情報を聴き取る以外の問い合わせをチャットに誘導

成果

・コール流入が65%削減
・コール件数100%→35%(チャット対応65%)

流通・通販業のA社のカスタマーサポート窓口では、「繁忙時間になると、顧客からのコールに対応しきれずに応答率が低迷する」という課題を抱えていました。特に、キャンペーン時は繁忙の度合いが高く、応答率は50%台と半分近くのコールが放棄呼になる窓口でした。

そこで、問題解決のためにチャットを導入しました。

チャット窓口からの導線を整理し、顧客の個人情報を必要としない問い合わせをチャットに誘導するようにしたところ、導入から1年で、多くの問い合わせにチャットで対応できるようになり、コールに流入する件数が65%も削減されました。

チャット導入でコール流入65%削減

トランスコスモスではコンタクトセンターでのチャット運用において、優良顧客と直接接点を持ち、囲い込み、会話を通してユーザーインサイト理解しマーケティングデータを取得可能な自社開発のチャットサポートソリューションDEC Supportを活用しています。

DEC Supportの機能についてはこちらをご覧ください。

なお、コールセンターにチャットを導入するメリットについては、こちらの記事もご参考ください。

3-2.【流通・通販】B社:VOC活用で返品に関するクレームゼロに

業務内容

アパレル通販のカスタマー窓口

抱えていた課題

ECで返品ができないことに対する不満の声

取り組み、施策

VOCを収集・分析し、新規購入者の不満解消に着目
→「新規購入者向けのクーポンを配布、その利用者に限って返品を受け付ける」という施策を実施

成果

・返品に関する不満のVOCがゼロに
リピーターの増加、売上向上

こちらの流通・通販B社のケースでは、アパレル通販のカスタマー窓口でVOCを活用し、DXに成功しました。

B社が運営するアパレルECサイトでは、返品ができないことに関して顧客からの不満の声がありました。そこで、あらためてVOCを分析することにしました。

蓄積されたVOCのうち苦情に類するものを集約したところ、以下のような声があったのです。

・サイズ感やフィット感はメーカーごとに異なるのに、購入後に返品できないのは納得いかない
・初めて購入した(=購入の仕組みやブランドのサイズ感がよくわからない)のに、返品不可だったので期待外れだった など

これらのVOCをもとに、苦情の要因や課題を詳しく分析した結果、「新規購入者向けのクーポンを配布し、それを利用した顧客に限って返品を受け付ける」という施策を実施することになりました。

その結果、返品に関する不満のVOCがゼロになりました。

さらに、新規購入者の不満が解消されたことで、リピーターが増え売り上げも向上したのです。

VOC収集・分析に興味がある方は、こちらをご覧ください。コンタクトセンターを活用したインタビューサービス『tra:Cii(トレイシー)』は、自社サービスの顧客接点を行動プロセス毎に数値・可視化し、戦略や施策立案につながるインサイトをご提供します。

VOCに関する基礎知識や分析で期待できる効果については、こちらの記事もご参考ください。

3-3.【製造】C社:ボイスボット活用でコール45%減・ボット利用19.3倍に

業務内容

家電修理の問い合わせに対するコールバック業務

抱えていた課題

コール数が多くキャパシティを超えた運用が慢性化していた

取り組み、施策

ユーザー利便性の向上とコール量の削減を目指しAIボイスボットを導入

成果

・コール数が45%減少
・AIボイスボットの利用数は19.3倍に急増

製造業C社のコンタクトセンターでは、家電修理の問い合わせに対してコールバックする業務で課題が生じていました。コール数が多過ぎて、オペレータでは対応しきれなかったのです。

そこで、AIボイスボットを導入することにしました。

AIボイスボットとは、AIが顧客からの問い合わせ内容を認識し、音声で回答するものです。

D社の場合、いきなり導入するのではなく1年間のPOC(検証するプロセス)を設け、その間にAIボットのチューニングを繰り返した上で本格導入しました。

その結果、コール数は45%減少し、AIボイスボットの利用数は19.3倍に急増したのです。

これは、それまでオペレータによる有人対応のみだったときを上回る着信実績となっています。ボイスボット活用でコール45%減・ボット利用19.3倍に

ボイスボットについて興味がある方はこちらもご覧ください。

ボイスボットを導入するメリット・デメリットや活用できる場面については、こちらの記事もご参考ください。

3-4.【製造】D社:IVR導入・WEB改善でノンボイス比率22%→47%に向上

業務内容

問い合わせ対応

抱えていた課題

新設チャネルへの誘導、ノンボイス化を推進したい

取り組み、施策

IVRの導入
・WEBサイトの改修 →自己解決できる導線を強化

成果

・問い合わせ総数に対するノンボイス比率:22%→47%と2倍以上に上昇
・WEBサイト上での自己解決率も60%

同じく製造業D社の場合、DX推進の目的はノンボイス化でした。そのために行った施策は以下です。

・IVR(自動音声応答システム)の導入
→顧客からの入電に対して自動音声が応答、問い合わせ内容に合わせてプッシュボタンを押してもらうことで、問い合わせを適切なチャネル・オペレータに振り分ける
また、自動音声の冒頭や待ち時間などに、チャットでも問い合わせ対応できることを訴求

・WEBサイトの改修
→サイト内でも、チャットやサイト内コンテンツを訴求して、ユーザーが自己解決できる導線を強化

その結果、問い合わせ総数に対するノンボイス比率は22%から47%と2倍以上に上昇、WEBサイト上での自己解決率も60%に達しました。

IVR導入・WEB改善でノンボイス比率22%→47%に向上IVRについては、メリットやデメリットなど基本的な情報を中心に、以下の記事でご紹介しています。

ノンボイス化のメリットやデメリット、その他の事例については、こちらの記事もご参考ください。

3-5.【通信】E社:月間の後処理時間を670時間削減

業務内容

インターネットサービスプロバイダの問い合わせ窓口

抱えていた課題

膨大な月間入電数(2万件)と、ログ入力の長い後処理時間(5分)
→契約獲得や解約阻止にリソースを割くことができていない

取り組み、施策

・音声認識システムtranspeechの導入
・通話ログを重要度で振り分け、重要度が高いもののみログを残す

成果

・後処理時間を月間670時間削減
→削減できたリソースを契約獲得や解約引き止め施策に回せるようになった

通信業E社のコンタクトセンターでは、プロバイダーの問い合わせ窓口業務を行っています。

1ヶ月あたりの入電件数は約2万件と非常に多く、その通話中に契約を獲得したり解約引き止め施策をしたりするための時間を十分に割くために、生産性を向上させる必要がありました。

そこで注目したのが、後処理時間です。

それまでは通常の後処理時間は平均5分でしたが、これを短縮することで契約獲得・解約引き止め施策のためのリソースを確保しようと考えたのです。

具体的な施策としては、まず音声認識システムを導入しました。

通話内容が自動的にテキスト化されるため、後処理ではそのテキストを既存のシステムにコピー&ペーストすることで、時間を5分から1分に短縮できるという計画です。

さらに、すべての通話ログを記録するのをやめました

顧客からの名乗りがあり、再コールの可能性が高いもののみ上記の方法でログを残し、逆に名乗りがなく再コールの可能性が低いものは思い切って通話内容のログを残さないことにしたのです。

その結果、後処理時間を月間670時間も削減することができました。

つまり、その670時間を契約獲得や解約引き止め施策に使うことができるようになります。

月間の後処理時間を670時間削減

音声認識ソリューションtranspeechの機能についてはこちらをご覧ください。

コンタクトセンター(コールセンター)の後処理時間を短縮する重要性や方法については、こちらの記事もご参考ください。

3-6.【金融】F社:チャットボットへ誘導するQRコード活用で繁忙期の入電を10%削減

業務内容

生命保険の相談窓口

抱えていた課題

毎年発生する年末調整の繁忙期に工数削減が進まない

取り組み、施策

年末調整に関わる郵送物に、チャットボットへ誘導するQRコードを記載

成果

・入電は昨対比10%削減
・チャットボットへの流入量が4倍に増加

金融業F社のコンタクトセンターの場合は、生命保険の相談窓口で「毎年恒例の年末調整で繁忙になる時期に、工数削減が進まない」という課題を抱えていました。

そこで、問い合わせをチャットボットなど他のチャネルへ誘導し、入電数を削減しようと考えました。

具体的には、年末調整に関わる郵送物に、チャットボットへ誘導するQRコードを記載したのです。

その結果、チャットボットへの流入量が4倍に増え、入電は昨対比10%削減されました。

チャットボットへ誘導するQRコード活用で繁忙期の入電を10%削減

チャットボットの活用方法や導入の参考になる成功事例・失敗事例については、こちらの記事もご参考ください。

4.事例からわかる!DX化の重要性とメリット

このように、近年DXを推進する企業は増えていますが、それはなぜでしょうか?

それは、DX化によって以下のようなメリットが得られるからです。

業務の効率化や生産性の向上が期待できる

RPA、CRMなどさまざまなITツール、ITシステムをオフィスに導入することで、これまで人力で行っていた業務を自動化できるため、工数が削減でき、より多くの業務をこなせるようになる

多様な働き方を選択できるようになる

WEB会議システムやクラウドストレージなどを利用することで、いつでもどこでもオフィスと同様の業務を行うことが可能になる

オフィスのペーパーレス化が実現する

これまで紙でやりとりしていた書類を電子化したり、電子署名、電子契約システムを導入したりすれば、コストが削減できるだけでなく、機密文書のセキュリティ強化、意思決定プロセスの簡略化も期待できる

レガシーシステムから脱却できる

レガシーシステムは業務の属人化、ブラックボックス化が起こりやすいという課題があったが、デジタル技術の導入に伴って、それらを見直し新しく効率的な業務システムを構築できる

スマートフォンやIT機器の普及により、消費者の行動は大きく変化しました。

企業がそれに対応するためには、DX化によって旧来の業務プロセスやビジネスモデルを根本から見直して効率化をはかること、これまでにはなかった新たな製品、サービス、ビジネスを創出することが必要なのです。

5.事例からわかる!DX化が失敗する5つのケース

ここまで、具体的なDX成功例を挙げてきました。

この章では、DXに取り組んでも失敗に終わりがちなケースとして以下の5つを挙げています。

・組織のリーダーがDXを理解できていない場合
・目標設定があいまいな場合
・DX人材が確保できない場合
・全社的な協力が得られない場合
・コストや工数がかかりすぎる場合

5-1.組織のリーダーがDXを理解できていない

第一に、「組織のリーダーがDXを理解できていない」というケースです。

経営陣や、DXに取り組む部署の管理職らが「DXとは何か」「何を目的としていて、何をしなければならないか」を正しく理解していないと、失敗に終わる確率は高まります。

例えば、ITツールを導入して一部の業務を自動化しただけで「DX化できた」と満足してしまうと、それは単なるデジタライゼーションです。

「業務プロセスやビジネスモデルを根本的に変革する」ことと、それにより「新たな製品、サービス、ビジネスモデルを創出し、顧客満足度と業績を向上させる」ことが達成されてはじめて、DX化が成功したと言えます。

ただ、経営陣や管理職は大きな変化やそれにともなうコストの発生を嫌うケースも多いでしょう。

従来の業務プロセスをまったく刷新する、といった考えに抵抗し、小さな改善に留めようとするかもしれません。

そういったケースでは、DXをよく理解している現場のメンバーが、組織のリーダーにDXの意味と意義、目的などを説明し、理解を得る努力が必要です。

5-2.目標設定があいまい

もうひとつありがちな失敗パターンとして、「目標設定があいまい」なケースが挙げられます。

例えば、自社の抱える課題や達成したい明確な目的がなく、「なんとなく業務を効率化したい」「この ITツールを導入すると便利だと聞いたので、うちでも導入しよう」といった漠然とした考えでDXに取り組む企業もあるでしょう。

そのような場合、ゴールが明確でないために、せっかく導入したツールを十分に活用しきれなかったり、従来の業務プロセス、ビジネスモデルからは脱却できなかったりしがちです。

そもそも目標があいまいでは、どのようなツールが最適なのか、業務プロセスやビジネスモデルをどのように変革すれば結果が出るのかを判断することもできないでしょう。

DX化に取り組む際には、まず目標を具体的に定めることが重要なのです。

これについては、6-2.目標を明確に設定するで説明しますので、そちらもぜひ読んでください。

5-3.DX人材が確保できない

3つ目の失敗パターンは、「DX人材が確保できない」ことです。

近年日本では、IT人材の不足が深刻化しています。

特にDXに欠かせない先端IT技術のエンジニア不足は著しく、そのためDX化が滞っている企業もあるでしょう。

システムの構築などを外注するにしても、社内にDXを深く理解している人材は必要です。

十分な人材が揃わないままにDX推進に踏み出した場合、どのITツールを導入すべきか、どのように活用するか、業務プロセスをどう構築するか、など意思決定が必要な場面で最適な選択をするのも難しいでしょう。

これについては、人材育成や採用活動に注力して、質量ともに十分なDX人材を確保するよう努めるしかありません。詳しくは、6-3.DX人材を確保するを参照してください。

5-4.全社的な協力が得られない

1-2.DXとデジタイゼーション、デジタライゼーションの違いで説明したように、DXは「全社的に」業務プロセスやビジネスモデルを刷新するものです。

DXに取り組む際には、情報システム部が主導したり、「DX推進部」などの部署やプロジェクトを立ち上げる企業も多いですが、他の部署は「DXは担当部署が行うもの、うちの部署は関係ない」と捉えてしまう恐れがあります。

となると、単に一部の部署だけがデジタイゼーション、あるいはデジタライゼーションされただけで、DXの要である「全社的な業務・プロセスのデジタル化、および顧客起点の価値創造のための事業やビジネスモデルの変革」には至りません。

これを解決するには、6-4.部署横断的な協力が必要を読んでください。

5-5.コストや工数がかかりすぎる

また、DXは全社的な取り組みであるだけに、一部の部署だけでITシステムを導入する場合などに比べて、コストも工数も大きくなりがちです。

あらかじめ定めた目標に対して、コストや工数がかかりすぎてしまったり、費用対効果が低ければ、そのDXは失敗だと言えるでしょう。

そのようなことを避けるには、6-5.事前にコストや工数を予測して綿密な計画を立てるを実践してください。

6.DXを成功に導くための5つのポイント

このように、DXを推進するにあたっては、各企業に適したデジタル技術の活用が必須です。

が、単にDX化を進めるだけでなく、成果を上げて成功に導くためには以下のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。

・組織のリーダーが率先して取り組む
・目標を明確に設定する
・DX人材を確保する
・部署横断的な協力が必要
・事前にコストや工数を予測して綿密な計画を立てる

6-1.組織のリーダーが率先して取り組む

5章で5-1.組織のリーダーがDXを理解できていないという例を挙げました。

これを逆に考えると、成功するためにはまず企業の経営陣や管理職がDXをよく理解し、率先して取り組むことが求められます。

まず、「DXは全社を挙げて取り組むべきもので、全部署が横断的に協力する必要がある」こと、そして「自社がDXによって目指す目標」を組織のリーダーから全社に周知、浸透させます。

その上で、組織のリーダーは大きな変革を恐れることなく、率先してDX推進に取り組んでいくとよいでしょう。

6-2.目標を明確に設定する

同じく失敗するケースとして5-2.目標設定があいまいという例を挙げましたが、成功のカギははっきりとした目標を設定することです。

まず、DXによって「課題を解決したい」のか、「顧客満足度を上げたい、顧客価値を高めたい」のか、「売り上げを拡大したい」のか、「新たな市場を開拓したい」のかなど、目指す方向性を明らかにしましょう。

その上で、数値目標など具体的な目標を設定します。

例えば、単に「顧客満足度をアップする」ではなく、「顧客満足度を現状の6ポイントから8.5ポイントに向上させる」などです。

目標が明確であれば、達成度の評価もしやすくなるため、「評価→改善」を繰り返すことでよりゴールに近づくことができます。

また、目標を明確に定めることで、そこに辿り着くまでのDX推進プランやロードマップも、より具体的に描けるでしょう。

6-3.DX人材を確保する

5-3.DX人材が確保できないことによって失敗パターンに陥らないためには、十分なDX人材を確保する努力が必須です。

すでにDXの知見が深い人材を求めて通常の採用活動をするだけでなく、以下のような方法も利用するとよいでしょう。

・既存のDX人材から優秀な人材を紹介してもらう「リファラル採用」を行う
・社内のエンジニアに研修を受けさせるなどして、DX人材として育成する
・エンジニア採用した新卒者をDX人材として育成する など

DX化を全面的に支援するコンサルティング会社などもありますが、社内にDXを理解し、同時に自社のビジネスを熟知した上で意思決定できる担当者は必要です。

そのような人材を確保した上で、DXに取り組みましょう。

6-4.部署横断的な協力が必要

1-2.DXとデジタイゼーション、デジタライゼーションの違いで挙げたように、DXがデジタイゼーションやデジタライゼーションと異なるのは「全社的な業務・プロセスのデジタル化、および顧客起点の価値創造のために事業やビジネスモデルを変革すること」という点です。

もちろん情報システム部や「DX推進部」などが主導して進めることにはなりますが、それに対して無関係な部署はありません。

そこで、DX担当部署はまずそのことを全社に周知し、理解と協力を得る必要があるでしょう。

もちろん前述のように、組織のリーダー自らも率先してDXに取り組み、必要があれば各部署に協力を要請しながら進めてください。

6-5.事前にコストや工数を予測して綿密な計画を立てる

DXは全社的な取り組みであるだけに、コストや工数も大きくかかるので、成果が上がらず失敗に終わった場合のリスクは非常に大きいでしょう。

そこで、事前に綿密な計画を立てた上で、十分な予算や人的リソースを用意する必要があります。

さらに、DXは成果がすぐに上がるものではなく、結果が出るまである程度の時間を要するという点にも注意してください。

経営陣や管理職は、売り上げアップなどの成果をなるべく早くあげたいと考えがちですが、前述したようにDXは単なる業務効率化ではなく、業務プロセスやビジネスモデル自体を刷新するものです。

そのため、新しいプロセス、ビジネスが定着するまでにはある程度の時間がかかります。

企業によってはその数年に耐えられず、「なかなか成果が上がらない」「これは失敗だった」と考えて途中でDXを断念してしまうケースもあるようです。

それではせっかくの投資がムダになってしまいます。

DXを推進する企業は、数年間は成果が出なくても継続するつもりで計画を立て、長期的に取り組む必要があるのです。

以上、DXを成功に導くためのポイント5つを紹介しましたが、最後にレガシーシステムを活用している企業は、レガシーシステムについても見直すことも検討してみるとよいでしょう。

また、セキュリティ技術も日進月歩ですので、レガシーシステムを入れ替えることで情報漏洩などのインシデントのリスクも減らせる可能性もあります。

DXでは、レガシーシステムから脱却し、モダナイゼーションを成功させることが重要です。DXに欠かせないモダナイゼーションについては、こちらの記事もご参考ください。

7.DX化に有用なデジタル技術4つ

さて、DXの成功例と失敗例がわかったところで、いよいよDXに取り掛かりましょう。

そこでまず知っておきたのは、DX化に役立つ、よく利用されるデジタル技術にはどのようなものがあるか、ということです。いくつか主な例を挙げると以下のようなものがあります。

・AI
・ビッグデータ
・RPA

7-1.AI

代表的なのは「AI(artificial intelligence=人工知能)」です。AIは主に、以下の分野で活用されています。

できること

活用例

音声認識

音声をテキストデータに変換する

・顧客からの問い合わせ電話の内容をテキストデータとして記録する
・会議の議事録を自動で作成する

画像認識

カメラに写っているものを認識する

・顔認証システムで顔を識別し、スマホなどのパスワードの代わりにロックを解除する
・車の自動運転で、障害物を認識して回避する

自然言語処理

人間が使っている言葉、文章を理解し、意味を把握する

・検索エンジンで、検索条件の意図をより正しく読み取ってユーザーの求める検索結果を出す
・自動応答システムやチャットボットに組み込み、顧客からの問い合わせ内容を適切に理解して対応する

異常検知

膨大なデータ(画像や数値など)の中から、通常と異なるものがあればそれを検知、検出する

・工場などで、製造物の中から不良品を見つけ出す
・建物やインフラ施設などの検査で、不具合を発見する

分析・予測

膨大なデータを分析し、それをもとに傾向や将来の予測をする

・店舗やECサイトの訪問客数を予測して、仕入数を調整する
・株価の変動を予測する

このように、AIを用いることでさまざまなシーンで業務の自動化、効率化が可能になるため、多くの業種でDXを推進する際に、AIを搭載したシステムやツールが利用されています。

コンタクトセンター(コールセンター)におけるAI活用については、こちらの記事もご参考ください。

コンタクトセンターのDXを目指すなら、
音声認識ソリューション「transpeech」(トランスピーチ)がおすすめ!

コンタクトセンターのDXを推進するなら、おすすめしたいのがトランスコスモスが提供する音声認識ソリューション「transpeech」(トランスピーチ)です。

「transpeech」は以下のような機能を備えていて、コンタクトセンター業務の効率化、応対品質向上などさまざまなシーンに貢献します。

音声認識
顧客との通話内容を自動でテキスト化し、他にも以下のような機能が備えています。また、以下のような機能も活用できます。

・応対支援:ナレッジを自動でモニター上にポップアップ表示
・品質管理:オペレータの応対をシートマップに表示、リアルタイムでモニタリングやサポートが可能
・データ活用:通話中に特定のキーワードを検知、関連するWEBサイトやFAQ、スクリプトを表示
・テキストデータのログ入力:応対内容をテキスト化し履歴として保存

感情解析
通話中の顧客の感情を、「興味」「期待」「怒り」などに分けてパラメータ表示します。

対話要約オプション
音声認識された会話テキストを要約します。

品質管理プラットフォーム
オペレータの応対を、AIが顧客目線で分析し、「丁寧語の使い方」「口ぐせの頻度」「NGワードがないか」などを数値的に評価します。

リスクマネジメント
通話解析とナレッジ支援により、クレームなどの早期発見やトーク遵守の注意喚起をすることで、トラブルや誤案内などのリスクを抑止します。

コストセービング
問い合わせ分析と会話テキスト活用により、後処理時間を適正化します。また都度のシステム導入を不要にすることで、ベストプライスで提供します。

AI defender
AIが応対の正誤を自動で判断、リスクを管理者にリアルタイムで通知することで、迅速なフォローが可能になります。

トランスコスモスでは、この「transpeech」を音声認識環境の導入から運用までをワンストップで提供しますので、コンタクトセンターの品質向上と業務効率化を実現することができるでしょう。

詳しいサービス内容については、こちらから資料をご確認ください。

7-2.ビッグデータ

ビッグデータとは、さまざまな種類、形式のものを含めた膨大なデータ群で、例えば以下のようなものが該当します。

・ECサイトや企業の公式サイトに蓄積された購入履歴や訪問履歴などのデータ
・SNS上の不特定多数のユーザーのプロフィールや書き込みなどの情報
・サーバに記録されるアクセスログなどのデータ など              など

DXにおいては、これらのビッグデータを分析し活用することが不可欠です。

というのも、前出の経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver. 1.0」でも定義されているように、DXの目的は「競争上の優位性を確立すること」にあるからです。

ビッグデータを収集、分析することで、顧客ニーズや、それよりも深い「顧客インサイト(=顧客自身もまだ自覚していない、深層心理に潜んでいる感情や動機)」を把握することが可能になります。

それをもとにビジネスにおける意思決定をしたり、新たなビジネスを創出したりすることで、競合他社から抜きん出ることができるのです。

ビッグデータの収集・分析にはさまざまな手法がありますが、専用の分析ツールもありますので、活用するとよいでしょう。

7-3.RPA

業務の効率化に役立つ技術としては、「RPA(Robotic Process Automation=ロボットによるプロセスの自動化)」も活用されています。

これは、従来は人間だけができるとされていた事務作業などを自動化する技術で、たとえば以下のようなことが可能です。

・伝票の処理など、PC上で行うルーティン作業
・定型文でのメール作成、送信
・顧客データや文書のチェック、異常検出 など

これにより、業務を大幅に効率化することができるため、浮いた人的リソースを業務プロセスの見直しやビジネスモデルの構築、新たなサービスや製品の創出に割くことができるようになり、DXの推進に貢献できるでしょう。

コンタクトセンター(コールセンター)でRPAを活用する方法や注意点については、こちらの記事もご参考ください。

まとめ

いかがでしたか?改めて、記事の要点をまとめてみましょう。

DXとデジタイゼーション、デジタライゼーションの違いは、

デジタイゼーション

アナログ・物理データの単純なデジタルデータ化
例)紙文書を電子化する など

デジタライゼーション

個別業務・プロセスのデジタル化
例)営業支援ツールを導入して営業の業務を自動化する など

DX
(デジタル・
トランスフォーメーション)

全社的な業務・プロセスのデジタル化、および顧客起点の価値創造のために事業やビジネスモデルを変革すること

DX化が失敗する5つのケース

・組織のリーダーがDXを理解できていない場合
・目標設定があいまいな場合
・DX人材が確保できない場合
・全社的な協力が得られない場合
・コストや工数がかかりすぎる場合

DXを成功に導くための5つのポイント

・組織のリーダーが率先して取り組む
・目標を明確に設定する
・DX人材を確保する
・部署横断的な協力が必要
・事前にコストや工数を予測して綿密な計画を立てる

これを踏まえて、あなたの会社がDX化に成功することを願っています。

トランスコスモスは3,000社を超えるお客様企業のオペレーションを支援してきた実績と、顧客コミュニケーションの
ノウハウを活かして、CX向上や売上拡大・コスト最適化を支援します。お気軽にお問い合わせください。
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