
コンタクトセンター(電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)のAI導入は急速に広がりを見せており、実用化されている活用シーンとしては以下が挙げられます。
- AIチャットボットの自動応答
- オペレーター支援
- 管理者業務の効率化
- 応対品質自動判定
- 会話の要約・履歴作成の自動化
▼ コンタクトセンターにおけるAI適応領域
しかしながら、まだコンタクトセンターにおけるAIの実務的情報は不足しており、
「コンタクトセンターのAI化=人間のようなロボットが応対する近未来」
というイメージを持っている担当者も多い現状があります。
そこで本記事では、実は今すぐにでも導入したい利点の多いコンタクトセンターのAIについて、基礎知識から解説します。
▼ 本記事のポイント ・コンタクトセンターのAI活用の基本がわかる |
「コンタクトセンターへのAI活用について知りたい」
「自社のコンタクトセンターを強化したい」
…という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、「コンタクトセンターのAI活用とは何か?」はもちろん、期待できる効果から導入の注意点まで、網羅的に情報をインプットできるでしょう。
AIをどうコンタクトセンターに活用すべきか理解でき、自社にとって最適な選択ができるはずです。では、さっそく解説を始めましょう。
目次
- 1 1.コンタクトセンター(コールセンター)のAI活用とは
- 2 2.コンタクトセンター(コールセンター)のAI化が進んでいる背景
- 3 3.コンタクトセンター(コールセンター)でのAI活用方法
- 4 4.コンタクトセンター(コールセンター)にAIを導入するメリット
- 5 5.コンタクトセンター(コールセンター)にAIを導入するデメリット
- 6 6.コンタクトセンター(コールセンター)へのAI導入事例
- 7 7.コンタクトセンター(コールセンター)にAIを導入する際の注意点
- 8 8.コンタクトセンター(コールセンター)のAI化を成功させるために
- 9 9.コンタクトセンター(コールセンター)向けAIシステム紹介
- 10 まとめ
1.コンタクトセンター(コールセンター)のAI活用とは
まずはコンタクトセンター(コールセンター)のAI活用について、基礎知識から見ていきましょう。
1-1.そもそもAI(人工知能)とは
そもそもAI(人工知能)とは、人間の脳が行うような知的な行為をコンピュータープログラムで実現するデジタル技術を指します。
ただ、最初に注意点としてお伝えしておきたいのは、多くの人がAIと聞いて想像するような、
「人間のように考えたり、見たり、聞いたり、話したりする、自我を持つ人工ロボット」
という技術は現時点では実現していません。
実際には、コンタクトセンターで扱うAIとは、
「従来のシステムでは実現できなかった高度な処理が可能になるデジタル技術」という程度の認識で理解しておいたほうが、誤解なく実務で扱いやすいはずです。
「AIを導入すれば、魔法のように何でもできる」と捉えてしまうと、実体と離れてしまいますので、注意しましょう。
2.コンタクトセンター(コールセンター)のAI化が進んでいる背景
近年、コンタクトセンター(コールセンター)では、AIの導入が進んでいます。その背景として、3つのポイントがありますので、押さえておきましょう。
・AI技術が発展し性能が上がった ・コンタクトセンター(コールセンター)を取り巻く状況が変化している ・より優れたCX(顧客体験)を追求する企業が増えている |
2-1.AI技術が発展し性能が上がった
1つめのポイントは「AI技術が発展し性能が上がった」ことです。AIの仕組みのなかでも、コンタクトセンター(コールセンター)の業務と親和性の高い分野の技術が発展したことにより、コンタクトセンターでAIを活用しやすくなっています。
▼ AIの仕組み
たとえば、「機械学習」「深層学習(ディープラーニング)」の技術によって、AIにパターンやルールを発見させる、自ら学習し処理精度を高める、といったことが可能になりました。結果、AIチャットボットの自動応答の精度を高めたり、高レベルなデータ分析や数値予測をしたりできるようになったのです。
また、コンタクトセンターに欠かせない「自然言語処理」の技術も向上しています。自然言語処理で、言葉の意味や文脈を解析する精度が高まり、音声認識による応対品質の判定や、AIチャットボットなどに活用されています。
2-2.コンタクトセンター(コールセンター)を取り巻く状況が変化している
2つめのポイントは「コンタクトセンター(コールセンター)を取り巻く状況が変化している」ことです。
人材採用の難しさ
従来よりコンタクトセンター業界は離職率の高さが課題とされていましたが、近年の少子高齢化社会における採用難で、より一層、人材の確保が難しくなっていました。新型コロナウイルスの影響により、他産業の求人数が落ち込んだことから、現在は若干回復していますが、依然として潤沢でないことは確かです。
参考記事:コンタクトセンター(コールセンター)の離職率が高い理由は?と8つの改善方法を解説
コロナ禍でのリモート化の進展
一方で新型コロナウイルスの影響により、コンタクトセンター業務もリモート化(在宅化)が進んでおります。その中において、これまでと異なる運用を採用する必要もあり、マネジメント面の新たな課題が生まれております。
そのため、コンタクトセンターにおける業務効率化や新たなマネジメント課題を解決するための手法が急務となっており、その解決策としてAIが活用されるシーンが多くなっています。
たとえば、今までは管理者やオペレーターが手作業で行っていた処理をAIで自動化すれば、コンタクトセンターの生産性を大幅に向上できます。また音声認識と関連したリアルタイムモニタリング、オペレータ支援などが出来れば、離れた場所でもサポートが出来るようになります。
2-3.より優れたCX(顧客体験)を追求する企業が増えている
3つめのポイントは「より優れたCXを追求する企業が増えている」ことです。というのは、AIを活用すると「今まで人力では手が回らなかったカスタマーサービス」の実現が可能になるためです。
AIチャットボットを例にとれば、AIなら1人で何十人もの顧客と同時に会話ができ、顧客を待たせません。しかも、営業時間の制約なしに24時間の応対が可能なうえ、対応の精度も過去の対応結果を学習してより適切な回答をすることができるのです。
このように「最新テクノロジーを活用して、高いレベルのCXを実現したい」という企業のニーズに応えるのが、コンタクトセンター(コールセンター)におけるAI活用といえるでしょう。
3.コンタクトセンター(コールセンター)でのAI活用方法
次に、より具体的にコンタクトセンター(コールセンター)のAI活用について見ていきましょう。
コンタクトセンターにおけるAIは、試験的に運用されているものも含めると多岐にわたるのですが、ここではすでに実用化されており、導入検討しやすい6つの活用方法をご紹介します。
・AIチャットボット(自動応答におけるチャネル拡充) ・音声認識システム(オペレーター支援、応対品質の向上、後工程の業務効率化) ・AIナレッジツール(オペレーター支援、応対品質の向上) ・AIルーティング(応対品質の向上) ・応対品質自動判定AI(応対品質の向上、管理者業務の効率化) ・AI活用による予測精度の向上(管理者業務の効率化) |
3-1.AIチャットボット
1つめのAI活用方法は「AIチャットボット」です。自動応答におけるチャネル拡充する手段として期待できます。
そもそもチャットボットとは「チャット+ロボット」の造語で、Webサイト上に設置したチャットやLINEなどで、自動応答するシステムです。チャットボットにAIを搭載して応対の精度を高めたチャットボットがAIチャットボットとなります。
顧客がチャットにテキスト入力した質問文の意図を、AIチャットボットが解析したうえで、統計的に正解になる確率の高い回答を適切に返答する仕組みになっています。
参照:トランスコスモス、JR九州のお問い合わせAIチャットボット(自動応答)の導入・構築を支援
AI非搭載のチャットボットでは、人間があらかじめ設定したシナリオ(ルール)の範囲内でしか応対できませんが、AIチャットボットではシナリオだけに依存せず、AIが学習した統計データ判断に基づいて応対できるのが利点です。
AIチャットボットは、より多くの回答を繰り返すことで教師データが蓄積され、AIチャットボットの精度を高めていくことが、特徴として挙げられます。「回答するたびに学習して、賢く育っていく」イメージです。
3-2.音声認識システム
2つめのAI活用方法は「音声認識システム」です。オペレーター支援、応対品質の向上、後工程の業務効率化が期待できます。音声認識とは、人間が発する音声をコンピューターに理解させることで、話し言葉をテキストに変換したり、音声の特徴から発声者を識別したりする技術のことです
音声認識システムを使うと、顧客やオペレーターが電話で話した音声を文字に起こすことができ、そのテキストをさまざまなシーンで活用できます。
応対の後処理業務(要約作成など)の時間を短縮する、顧客対応中にお客様の発言意図を理解し参考回答をFAQから推薦する、VOC(顧客の声)の分析に活用するなど、音声認識システムから派生するソリューションは数多くあります。
音声認識について詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。
3-3.AIナレッジツール
3つめのAI活用方法は「AIナレッジツール」です。オペレーター支援(業務効率化)が期待できます。コンタクトセンター(コールセンター)にある有益な情報・知識(ナレッジ)を一元管理するナレッジを、AI(人工知能)の活用により自動的に分類・推薦し、必要なナレッジに素早く到達することが可能になります。
オペレータ―の検索にあわせてスピーディーな結果を表示するだけではなく、たとえば、音声認識システムと組み合わせ、“会話内容から注意すべきキーワードをリアルタイムで検知し、オペレーターのパソコン画面にスクリプト(トークの台本)を表示させ、オペレーターの応対支援をする”ことが可能になります。
3-4.AIルーティング
4つめのAI活用方法は「音声ルーティング」です。応対品質の向上が期待できます。
大手通販事業者等や製造メーカーのサポート等で有効な方法として期待されている技術です。過去の成約成功事例や解決事例から、顧客属性と最適なスキルをもつオペレーターを“ペアリング”の観点から見つけだし、顧客から電話がかかってきたら、そのオペレーターにルーティングします。
特定の顧客属性と特定のオペレーター(属性)のペアリングにより成約率が高まるという実証された仮説をもとに、膨大なデータから最適なペアリングを発見し、それを実際のルーティングに役立てます。膨大な顧客とエージェントのペアリング事例が必要なため、大手通販や大手コンタクトセンター向けの方法といえるでしょう。
3-5.応対品質自動判定AI
5つめのAI活用方法は「応対品質自動判定AI」です。応対品質の向上、管理者業務の効率化が期待できます。応対品質自動判定AIでは、これまで管理者が顧客とオペレーターの対話内容を確認して行っていた応対品質のチェックを、AIが代わって行います。
具体的にチェックできる応対品質の内容としては、トランスコスモスでは「応対マナー」を自動で判定するAIの開発に成功しています。
▼ 応対マナー:基本的なマナー・動作ができているか ・オープニング・クロージングの挨拶 |
コンタクトセンター(コールセンター)の管理者にとって、品質チェックは負担の大きな業務でしたが、AIを活用すると、ヒトの精度で大量・高速な自動判定が可能になります。
3-6.AI活用による予測精度の向上
最後のAI活用方法は「AI活用による予測精度の向上」です。管理者業務の効率化が期待できます。
コンタクトセンター(コールセンター)では、事前に入電数や問い合わせ数を正確に予測し、オペレーターの適正な稼働人数をコントロールすることが欠かせません(Forecast予測)。オペレーターの人数が少なければ応答率が下がり、多ければ無駄なコストが発生するためです。
そこで、精度の高い予測をするためにも、AIが活用されています。
▼ AIを活用した予測の例
AIの予測技術を使うと、年間・月別といった大まかな予測はもちろん、曜日別・日別・時間帯別といった細かな予測まで精度が上がるため、効率的なオペレーターの配置が可能になります。
4.コンタクトセンター(コールセンター)にAIを導入するメリット
ここまでコンタクトセンター(コールセンター)におけるAI活用の基礎知識を解説しましたが、気になるのは、「自社に導入する必要性や価値はあるのか?ないのか?」という点ではないでしょうか。
そこで、コンタクトセンターにAIを導入するメリット・デメリットを見ていきましょう。まずは3つのメリットから解説します。
・顧客に対し利便性を高めつつ、精度の高いサポートを受けられる ・管理者の負担を軽減しオペレーターの成長を加速できる ・非属人化や省力化により業務を効率化できる |
4-1.顧客に対し利便性を高めつつ、精度の高いサポートを受けられる
1つめのメリットは「顧客に対し利便性を高めつつ、精度の高いサポートを受けられる」ことです。
たとえば、近年では、「ちょっとした疑問や質問は、できるだけ手間をかけずに解決したい」という顧客も増えています。そこでコンタクトセンターではチャットボットを導入することで、“24時間、いつでも瞬時に答えが返ってくる”という利便性を顧客に提供できます。
チャットに質問を入力すれば答えが返ってくるチャットボットは、顧客にとって利便性の高いツールです。ただし、課題もあります。回答は事前に指定された回答しかできないため、人と比べると回答精度が低いという問題がありました。
そこで、回答精度の低いチャットボットではなく、AI搭載のチャットボットを利用することが増えています。欲しい答えにマッチした回答を学習して、回答精度の向上が見込めます。結果顧客の質問に的確に得られる可能性が高まります。
4-2.管理者の負担を軽減しオペレーターの成長を加速できる
2つめのメリットは「管理者の負担を軽減しオペレーターの成長を加速できる」ことです。コンタクトセンター(コールセンター)の管理者にとって重要な仕事は、オペレーターの応対をモニタリングして品質を評価し、フィードバックすることです。
応対品質にAIを活用すると、たとえば従来なら週1回〜月1回が限界だったモニタリングのフィードバックが、毎日・全件数対応できるようになります。AIで品質評価を自動化することで管理者の負担は軽減し、オペレーターは自分の間違いにスピーディに気付けるようになります。
加えて、主観が混じりやすい人間による評価とは異なり、AIの評価はデータに基づき客観的です。たとえば、話速(会話のスピード)や感情解析(顧客に喜んでいただける対応ができていたか)から公正な分析を行うため、オペレーターにとっては心情的に納得しやすくわかりやすいメリットがあります。
4-3.非属人化や省力化により業務を効率化できる
3つめのメリットは「非属人化や省力化により業務を効率化できる」ことです。ベテランの管理者しかできない属人化している業務や、オペレーターを長時間占有している処理作業をAIに任せれば、大幅な業務効率化が可能です。
たとえば、アウトバウンド業務の架電リストの分析をAIが高い精度で行えば、かけても無駄なリストを省いて、作業を効率化できます。ほかにも、インバウンド業務の着信予測や、応対の後処理(履歴の記録など)の時間短縮など、コンタクトセンター(コールセンター)業務の非属人化・省力化を推進するために、AIは有効です。
5.コンタクトセンター(コールセンター)にAIを導入するデメリット
コンタクトセンター(コールセンター)にとって多くのメリットがあるAIですが、デメリットもあります。導入に失敗しないためには、デメリットを踏まえたうえで進めることが大切です。
・導入コストと保守運用コストが発生する ・AIの精度が低いと逆効果になる ・AIでは対応し切れない部分は人間のフォローが必要になる |
それぞれ見ていきましょう。
5-1.導入コストと保守運用コストが発生する
1つめのデメリットは「導入コストと保守運用コストが発生する」ことです。AIは高度なデジタル技術であることから、AI搭載のシステムを導入しようとすると、AIなしのシステムよりも費用が高額になることは、当然ともいえます。
導入コストだけでなく、保守運用コストも発生する点には、注意が必要です。AIを導入する際には、導入の目的や解決が期待できる課題や得られる成果を明確にして、費用対効果をよく検討する必要があります。
5-2.AIの精度が低いと逆効果になる
2つめのデメリットは「AIの精度が低いと逆効果になる」ことです。先にも触れたとおり、AIは何でもできる魔法のツールではないので、導入さえすれば何とかなるという類いのものではありません。導入したAIの精度が低くて使い物にならず、結局、手作業でやり直すことになれば、業務効率化どころか逆効果です。
加えて注意しておきたいのは、「顧客満足度の低下を招くリスク」です。
特にAIチャットボットは失敗例も多いので要注意
特に注意したいのがAIチャットボットです。多くの企業がすでに導入してしますが、失敗例も多く見られます。AIチャットボットは、顧客に「思ったような答えが返ってこない、バカなチャットボットだ」と思われてしまうと、もう使ってもらえないでしょう。
しかし、AIチャットボットを高い精度で運用するためには、そのための準備に大きな労力が必要です。具体的には、「教師データ」と呼ばれるAIに学習させるためのデータを大量に準備して、AIをチューニングしなければなりません。
運用をスタートした後も放置して良いわけではなく、AIに学習させるデータを常にメンテナンスして鮮度を保っておかないと、回答の精度が落ちてしまいます。AIもオペレーターと同じく教育や知識のアップデートが必要なのです。
5-3.AIでは対応し切れない部分は人間のフォローが必要になる
3つめのデメリットは「AIでは対応し切れない部分は人間のフォローが必要になる」ことです。現在、実用化されているAI技術では、「どんな種類のAIを導入したとしても、必ず人間の手でサポートしなければならない部分がある」という認識をもったうえでAI導入を進めたほうが良いでしょう。
たとえば、応対品質自動判定AIは管理者に代わってオペレーターの応対を評価するAIですが、弱点があります。「単語ベース」では評価できるのですが、「複雑な会話」の良し悪しは評価できないのです。テクニカルサポートや専門知識が必要な会話などは、管理者がチェックしなければなりません。
AIチャットボットも、どんなに精度を高めたとしても回答が難しい複雑な質問は発生します。その場合は、有人でサポートできるフローの設計が大切です。このフロー設計に失敗すると、顧客は質問の回答が得られず、大きな不満を抱えることになりかねません。
6.コンタクトセンター(コールセンター)へのAI導入事例
すでにコンタクトセンター(コールセンター)でAIを活用している企業は、具体的にどのような成果をあげているのでしょうか。2社の事例をご紹介しましょう。
・ソニーネットワークコミュニケーションズ ・三井住友トラストTAソリューション |
6-1.ソニーネットワークコミュニケーションズ
ソニーネットワークコミュニケーションズでは、AIチャットボットを活用してお問い合わせの半数以上をAIチャットボットで対応する体制を構築しました。結果、お問い合わせの半数以上をAIチャットボットで対応する体制を構築することに成功しています。
課題 | ・労働人口減少に伴う人手不足や、コロナ禍におけるBCP対応など、カスタマーサポート人員の安定確保が困難 |
サービス | ノンボイス カスタマーサポートサービス |
成果 | ・約1年半のプロジェクトの結果、ノンボイス(有人チャット、AIチャットボット)中心のカスタマーサポートを実現 |
出典:ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社 導入事例 トランスコスモス
6-2.三井住友トラストTAソリューション
三井住友トラストTAソリューションでは、音声認識AIおよびテキスト要約AIを組み合わせて活用。従来の会話を文字起こしして要約し、応対履歴を記録する作業をなくすことで、生産性向上を実現しています。
課題 | ・三井住友トラスト・グループの業務範囲は広く、コールセンターも12業務で運営。証券代行コールセンターも知識やサポート面からオペレーターの支援強化策を考える必要がありましたが、三井住友トラストTAソリューション様が導入されたAIはまさにこれらを解消するものでした。 |
サービス | コンタクトセンターのデジタルトランスフォーメーション支援 ・主な支援内容 |
成果 | ・コンタクトセンター従業員の総労働時間を年間で約9,200時間(約1割)削減し、導入後2年あまりで2つのAIに関わる投資を回収 |
出典:三井住友トラスト TAソリューション 導入事例 トランスコスモス
7.コンタクトセンター(コールセンター)にAIを導入する際の注意点
コンタクトセンター(コールセンター)へのAI導入を進めるうえでは、注意したいポイントがあります。
・AIに学習させる準備期間も考慮に入れる ・利用頻度が少ないと精度がなかなか上がらない ・運用の人的リソース確保が必要になる |
それぞれ見ていきましょう。
7-1.AIに学習させる準備期間も考慮に入れる
1つめの注意点は「AIに学習させる準備期間も考慮に入れる」ことです。先に言及したとおり、事前準備としてAIを教育して賢く育てるのは、人間の役目です。
AIシステムの導入自体はスピーディにできたとしても、“そのAIが使い物になるか”は別と考えましょう。AIがしっかり働ける状態を作るためには、そのための準備期間も含めてスケジューリングすることが大切です。たとえば、以下はAIチャットボットを導入する際の概算スケジュールです。
7-2.利用頻度が少ないと精度がなかなか上がらない
2つめの注意点は「利用頻度が少ないと精度がなかなか上がらない」ことです。機械学習・ディープラーニング(深層学習)の技術を使っているAIでは、AIの精度はデータで決まります。
AIも自ら学習ができますが、人間とAIが決定的に違うのは、AIは自分で勝手にデータをインプットしないということです。たとえば、3カ月という暇な時間があったら、人間であれば自ら本を読んで知識を蓄え、スキルアップするかもしれません。
しかしAIが学習するのは、与えられたデータと実際にAIが使用された例の範囲内です。利用頻度が少ないAIは、精度がなかなか上がらずにますます使われなくなり、最終的には廃止されるケースが多いので、ご注意ください。
もし、コンタクトセンター(コールセンター)のAI化をこれから推進していきたいと考えていて、クイックウィン(早期に成功事例)を作りたいのであれば、利用頻度の多さが見込める種類のAIから導入するべきといえます。
7-3.運用の人的リソース確保が必要になる
3つめの注意点は「運用の人的リソース確保が必要になる」ことです。
ここまでお読みいただいた方なら、
「AIを本当に機能させようと思ったら、実は結構大変そう」
……という印象を持たれたかもしれません。
実際そのとおりで、“形だけのAI導入”ではなく、本当に顧客の利便性に貢献し、現場の負担を軽減し、生産性を上げるAIを導入するためには、それなりの人的ソースが必要になります。
もちろん、AIによって省力化できる人的リソースと比較すれば、多くの場合、AIを導入したほうがメリットは大きくなります。
しかし、「AIを導入すれば自動化・省力化・効率化ができる」という印象が強すぎて、“AI導入を成功させるための人的リソース”の見積もりを誤ると、AI導入自体が失敗と判断される場合もあるので、注意しましょう
8.コンタクトセンター(コールセンター)のAI化を成功させるために
最後に、コンタクトセンター(コールセンター)のAI化を成功させるためのポイントを2つ、お伝えしましょう。
・AI導入の目的を明確にしてからシステムを検討する ・コンタクトセンター(コールセンター)の専門家とともに進める |
8-1.AI導入の目的を明確にしてからシステムを検討する
1つめのポイントは「AI導入の目的を明確にしてからシステムを検討する」ことです。特に最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の傾向が強いため、注意が必要です。
どういうことかといえば、「DXを進めたいがあまり、“AI導入ありき”になっていて、現場の課題に寄り添っていない」ケースが散見されます。しかし、コンタクトセンター(コールセンター)のAI化を成功させるためには、そもそも何のためにAIを導入し、具体的にどんな課題を解決したいのかを明確にすることを最重視してください。
8-2.コンタクトセンター(コールセンター)の専門家とともに進める
2つめのポイントは「コンタクトセンター(コールセンター)の専門家とともに進める」ことです。
失敗例として多いのが、「AIの技術力は高いがコンタクトセンターの現場に精通していないベンダーを選んでしまい、結局現場で役立たない」というケースです。コンタクトセンターのAI化は、コンタクトセンター特有の課題を知り尽くしたコンタクトセンターのプロと一緒に進めると、スムーズに成功しやすくなります。
なお、トランスコスモスは国内最大級の規模でコンタクトセンターのサービスを展開しており、コンタクトセンターのAIテクノロジーを多数開発しています。コンタクトセンターへのAI導入をご検討中であれば、ぜひご相談ください。
9.コンタクトセンター(コールセンター)向けAIシステム紹介
ここでは、当社トランスコスモスのソリューションとなりますが、コンタクトセンター(コールセンター)に導入できる具体的なAIシステムを3つご紹介します。
・AIチャットボット搭載『DEC Support』 ・音声認識AI『transpeech2.0』 ・AI予測『DataRobot』 |
9-1.AIチャットボット『DEC Support』
『DEC Support』は、顧客との会話を通してユーザーインサイト(深層にある本音)を理解し、マーケティングデータの取得ができるチャットサポートソリューションです。
お問い合わせ対応をAIチャットボットで行って省人化するだけでなく、顧客がチャットボットに対して気兼ねなく話した内容を、マーケティング活動に反映できる特徴を持っています。詳しくは以下のリンクから資料をダウンロードしてご確認ください。
9-2.音声認識AI『transpeech2.0』
『transpeech2.0』は、音声認識・品質管理・AI degender・感情解析・対話要約の5つの機能を兼ね備えたシステムです。会話をテキストに文字起こしする、品質モニタリングにAIを活用する、顧客が発話した内容を把握してFAQを推薦する、会話を要約して記録する、などの作業をAI化したいニーズに対応します。
また今回紹介しきれなかった顧客やオペレーターの発話から感情を解析し、傾向を分析することも可能です。詳しくは以下のリンクから資料をダウンロードしてご確認ください。
9-3.AI予測『DataRobot』
『DataRobot』は、世界のトップデータサイエンティストが開発した予測AIです。AIが自動的に様々な機械学習の手法を取捨選択し、最適な予測モデルを構築・ブレンドします。アウトバウンドのリスト作成業務や、インバウンドの予測作成に活用できます。詳しくは以下のリンクから資料をダウンロードしてご確認ください。
まとめ
近年、コンタクトセンターのAI導入が急速に進んでいます。その背景には次の3つのポイントがあります。
・AI技術の発展 |
実用化が進んでいるコンタクトセンターでのAI活用方法としては以下があります。
・AIチャットボット(自動応答におけるチャネル拡充) |
コンタクトセンターにAIを導入するメリットは次のとおりです。
・顧客に対し利便性を高めつつ、精度の高いサポートを受けられる |
コンタクトセンターにAIを導入するデメリットは次のとおりです。
・導入コストと保守運用コストが発生する |
コンタクトセンターにAIを導入する際には、次の3つの点にご注意ください。
・AIに学習させる準備期間も考慮に入れる |
コンタクトセンターのAI化を成功させるために押さえておきたいポイントはこちらです。
・AI導入の目的を明確にしてからシステムを検討する |
AIはこれからのコンタクトセンターに必要不可欠の存在です。早期に導入に着手し、ノウハウを蓄積しながら自社の競争優位性を高めるとともに、ワンランク上のCXの実現を目指していきましょう。