
モダナイゼーション(modernization)とは、業務で使用しているITシステムやハードウェア、ソフトウェアなどを最新のものに置き換え新たな価値を創出することです。
モダナイゼーションには「現代化」「近代化」という意味があり、レガシーシステム(古いシステム)から脱却し現在の課題解消や新たな価値の創出を目指します。
ただ単に新しいシステムを導入するのではなく価値の創出を意識することで、DX化へとつながります。
モダナイゼーションには複数の手法があるためそれぞれの特徴を把握して、自社に合う手法で進めることが大切です。
そこでこの記事では、モダナイゼーションを実施するときに知っておきたい手法や手順、注意点をまとめて解説しています。
◎モダナイゼーションとは |
この記事を最後まで読めばモダナイゼーションに関する基礎知識が把握でき、適切な手法で取り組めるようになります。
今、注目を集めているモダナイゼーションを成功させるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
1.モダナイゼーションとは
冒頭でも触れたように、モダナイゼーション(modernization)とは業務で使用しているITシステムやハードウェア、ソフトウェアなどを最新のものに置き換え新たな価値を創出することを指します。
すべてを最新のシステムに置き換えるわけではなく企業の資産や既存システムを活用しながら、課題やニーズに応じてシステム構造を変革していきます。
そもそも、モダナイゼーションには「近代化」や「現代化」という意味があります。
現在、企業で使用しているシステムや基盤には、コンピューターの導入が盛んになった1980年代のものが多く残っています。
現在と比べると古い技術や仕組みで構築されているため、この頃の基盤やシステムはレガシーシステムと呼ばれています。
IT化が進む中でレガシーシステムを維持するには、古いシステムを把握できる人材の確保や維持管理コストが必要です。また、過去の働き方や業務に依存したシステムを使い続けることで、業務効率化やDXの妨げとなることも考えられます。
そこで、レガシーシステムから脱却し、現在の課題解消や新たな価値の創出ともにインフラを現代化することが求められています。
モダナイゼーションの手法は「3.モダナイゼーションの5つの手法」で詳しく解説していますが、一例を挙げると
・既存のプラットフォームから新しいプラットフォームに移行する |
などが当てはまります。
モダナイゼーションの範囲や目標に応じてIT化で終わることもあればDX化につながることもありますが、基本的にはDXを推進するために使用する手法となっています。
1-1.マイグレーションとの違い
マイグレーション(migration)とは、既存のシステムの性能や機能は変えずに新しい環境に移行することを指します。
モダナイゼーションには、「移動」や「移転」という意味があります。
あくまでも既存システムはそのままで、データやソフトウェアなどの移動を行うところが特徴です。
モダナイゼーションは既存システム自体の変革も視野に入れるため、最新のシステムを導入する範囲や規模が異なります。
一例として、既存アプリケーションをモダナイゼーションする場合とマイグレーションをする場合の違いを見てみましょう。
モダナイゼーションは、既存アプリケーションの構造から見直しを行います。
その上で、利用者の拡大や利益の創出など新たな付加価値を実現できるアプリケーションの構築や移行を検討します。
一方で、マイグレーションは、既存アプリケーションの構造は変更しないで扱っているデータをクラウドや他のソフトウェアへと移行します。データ運用の最適化や業務効率化など、データ移行における恩恵を受けられます。
モダナイゼーション | マイグレーション | |
概要 | 業務で使用しているITシステムやハードウェアなどを最新のものに置き換え新たな価値を創出する | 既存のシステムの性能や機能は変えずに新しい環境に移行する |
特徴 | 既存システムから見直しができ、目的や課題、付加価値に応じた大きな変革が可能 | 既存システムの変更は行わないため、データやシステムの移行によって得られるメリットが中心 |
DX | 向いている | あまり向いていない |
両者はどちらも「既存システムからの脱却」という視点では同じですが、対象の範囲や目的が異なります。
2.モダナイゼーションを実施するべき理由
モダナイゼーションの概要が分かったところで、なぜ今モダナイゼーションを実施するべきなのか気になるところです。
モダナイゼーションを実施するべき理由には、次の4つが挙げられます。
モダナイゼーションを実施するべき理由 |
①2025年の崖を克服できる |
モダナイゼーションを実施する効果やメリットを把握するためにも、ぜひ参考にしてみてください。
2-1.2025年の崖を克服できる
経済産業省は、各業界のDX化を推進しています。
DX(Digital Transformation)とは簡単に言うと、デジタル技術を用いてサービスやビジネスモデルに変革を起こし、企業の競争力を高めることです。
今、DX化が推進される理由の一つに、2025年の崖があります。
2025年の崖とは日本の企業がDXを進めなければ、2025年以降の5年間で最大年間12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があることを提言したものです。
その背景として、下記のようなレガシーシステムの問題を挙げています。
レガシーシステムの問題点 | |
レガシーシステムの | レガシーシステムを把握している社員が少なくなる。その結果、データ活用やカスタマイズができない。 |
維持管理費の高額化 | レガシーシステムを保守管理できる人材がいなくなりコストが高額になる。 |
維持管理ができる | レガシーシステムについて理解している人材が不足する。その結果、セキュリティリスクが高まる。 |
レガシーシステムの | アプリケーションやソフトウェアのサポートが切れることで、セキュリティが弱くなる。 |
参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
つまり、レガシーシステムを使い続けることでランニングコストの高騰やセキュリティリスクの増加が起こり、企業にとって大きな負債となることが懸念されているのです。
2025年の壁を克服し企業にとってリスクやデメリットのないデータ活用やデータ管理をするためにも、モダナイゼーションは欠かせません。
2-2.IT人材の不足を解消できる
IT人材の不足は、非常に深刻化しています。経済産業省の調査では需要と供給のバランスが崩れており、2030年には最大で79万人のIT人材不足に陥ると予測されています。
外部の保守管理やサービスに依存していると、コストの高騰や充分なサービスを受けられなくなるでしょう。
それだけでなく、IT人材の高齢化も問題視されています。
IT人材が高齢化して退職していくと、レガシーシステムを扱える人材が少なくなります。
その結果、レガシーシステム自体を有効活用することが難しくなる可能性があります。
このように
①IT人材そのものの不足 |
という2つの課題を解決するためにも、モダナイゼーションが必要です。社内の誰もが手軽に使用できるシステムに変更すれば、外部のIT人材に依存することがありません。
また、現在一般的に使用されているシステムやソフトウェアに移行すれば、思わぬトラブルが発生しても対応できるIT人材の幅が広がります。
2-3.業務効率化につながる
レガシーシステムは、複雑化していることが多々あります。
【レガシーシステムの複雑化の例】 ・部署ごとに分断されており社内での連携ができない |
現在のITシステムは社内外との連携を重視していますが、レガシーシステムは部署ごとや業務内容ごとなどで分断されているケースが多いです。データ連携がしにくく、手動でのデータ移動や他システムでのデータ管理を行っているケースもあるでしょう。
モダナイゼーションを実施すると、現状の課題に応じて業務がしやすい環境を構築できます。その結果、業務効率化へとつながり他の業務への余力の創出や働きやすい環境の構築が叶います。
2-4.コストを削減できる
経済産業省の「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」によると、IT予算の9割以上がレガシーシステムの維持管理費に充てられているそうです。
その理由は、レガシーシステムを扱える人材不足と個別対応の必要性です。レガシーシステムを扱うには、過去のIT技術や知識が欠かせません。必然的にレガシーシステムを扱える人材は長期間IT業界に携わっている人に限定されてしまうので、人材が不足しています。
また、レガシーシステムは個々にカスタマイズされていることが多いです。そのため、個々に応じた運用や修正が必要となりどうしても費用がかさみます。
モダナイゼーションを実施してレガシーシステムから脱却すると、高額な保守管理費用や運用費用がかかりません。大幅なランニングコストの削減も期待できるでしょう。
3.モダナイゼーションの5つの手法
モダナイゼーションを実施する主な手法としては、下記の5つがあります。
モダナイゼーションの5つの手法 | |
リホスト | アプリケーションや現在のプログラム、言語は変えずにプラットフォームのみを移行する |
リライト | 古い開発言語で記述されたコードをJavaやNetなどの新しい開発言語に書き直す |
リファクター | ソフトウェアの挙動を変えることなく内部構造を整理する |
リプレイス | レガシーシステムと同様の機能や性能を持つ新しいパッケージやソリューションズに置き換える |
リビルド | レガシーシステムを廃棄して一からシステムを構築する |
それぞれモダナイゼーションの範囲が大きく異なるため、目的やコスト、移行期間などを考慮しながら最適な手法を選んでみましょう。
3-1.リホスト
リホストとは、アプリケーションや現在のプログラム、言語は変えずにプラットフォームのみを移行する手法です。
例えば、メインフレーム(大型コンピューターシステム)で使用していたソフトウェアをWindowsサーバーやクラウドなどオープンなプラットフォームへと移行することを指します。
リホストは既存のプログラムをそのまま使用するため移行の負荷が少なく、手軽に実施できるところが特徴です。プラットフォームによっては他の機能との連携もでき、業務効率化やシステムの簡略化が目指せます。
一方で、プラットフォームしか移動しないため、言語やプログラムとの互換性を考慮して実施する必要があります。
また、オープンなプラットフォームになるとセキュリティ対策が必要となります。メインフレームとは異なる脅威に備えなければならないことを把握しておくことが重要です。
【向いているケース】
リホストはレガシーシステムを生かしつつ、利便性を向上させたい場合に向いています。
モダナイゼーションの中では最も移行領域が少ないため、移行先との相性さえ良ければ既存のプログラムや言語を保ったまま使用できます。
また、移行期間が少なく他の方法よりもコストが低いため、コスト負担や移行期間の負担を抑えたい場合にも検討できるでしょう。
リホスト | |
概要 | アプリケーションや現在のプログラム、言語は変えずにプラットフォームのみを移行する |
変更システム | プラットフォーム |
メリット | コスト負担や移行期間の負担が少ない |
デメリット | プラットフォームしか移動しないため、言語やプログラムとの互換性を考慮しなければならない |
3-2.リライト
リライトとは、古い開発言語で記述されたコードをJavaやNetなどの新しい開発言語に書き直す手法です。例えば、60年以上前から使用されているCOBOL言語をJavaやNetなどの新しい開発言語に書き直します。
最新の言語に変更すると、他の最新システムとの連携ができたりセキュリティが向上したりするところがメリットです。
一方で、開発言語の書き直しはハードルが高く、容易に取り組めるものではありません。古い開発言語と新しい開発言語の双方の知識が必要なのはもちろんのこと、正確に書き換える技術も要します。
また、開発言語の変化だけでは劇的な変化や付加価値を与えにくく、費用対効果が低いことがあります。
【向いているケース】
リライトもアプリケーションや現在のシステムの変更はないので、レガシーシステムを生かしたい場合に向いています。
特に、最新システムとの連携を必要としている場合は、リライトだけでも大きな恩恵を受けられる可能性があります。
リライト | |
概要 | 古い開発言語で記述されたコードをJavaやNetなどの新しい開発言語に書き直す |
変更システム | 開発言語 |
メリット | 最新システムとの連携がしやすくなる |
デメリット | 技術的なハードルが高い |
3-3.リファクター
リファクターとは、ソフトウェアの挙動を変えることなく内部構造を整理する手法です。不要なコードの削除や複雑なコードの簡略化などがリファクターに当てはまります。
古いコードや不要コード、分かりにくいコードがあると理解できる人が限定されます。内部構造を整理すると誰でも分かるようになり、引継ぎや複数人での管理がしやすくなります。また、バグの発生を防止することができ、突然のトラブルを防げるところもメリットだと言えるでしょう。
一方で、リファクターは挙動の変更はないので、見た目では変化が感じられません。リライトと同様に劇的な変化や付加価値を与えにくく、費用対効果が低いことがあります。
【向いているケース】
リファクターは、既存のレガシーシステムにソフトウェアが多い場合に向いています。一度内部構造を見直すことで、今後の運用がしやすくなります。
リファクター | |
概要 | ソフトウェアの挙動を変えることなく内部構造を整理する |
変更システム | ソフトウェアの内部構造(コードなど) |
メリット | 複数人管理や引継ぎがしやすくなる |
デメリット | 劇的な変化や付加価値を与えにくく、費用対効果が低いことがある |
3-4.リプレイス
リプレイスは、レガシーシステムと同様の機能や性能を持つ新しいパッケージやソリューションズに置き換える手法です。例えば、勤怠管理ができるレガシーシステムをパッケージ化されている既存の勤怠管理システムに置き換えます。
必要なシステムを一から構築するのではなく既存のパッケージやソリューションを使うことで、移行期間の短縮化やコストダウンが見込めます。次の章で解説する「リビルド」よりも負担を減らしながら、レガシーシステムを一から見直せるところがメリットです。
一方で、パッケージやソリューションから選択するため、自由度が低い側面があります。機能や性能はパッケージ内容に依存するので、細かく選択できないところはデメリットだと言えるでしょう。
【向いているケース】
リプレイスは、レガシーシステムがシンプルで置き換えしやすい場合に向いています。レガシーシステム自体が複雑だと、似ているパッケージやソリューションを探すことに苦労します。
また、レガシーシステムを一新したいけど移行期間やコストをできる限り削減したい場合にも検討する余地があるでしょう。
リプレイス | |
概要 | レガシーシステムと同様の機能や性能を持つ新しいパッケージやソリューションズに置き換える |
変更システム | 該当のレガシーシステムすべて(データのみは使用する場合がある) |
メリット | リビルドよりも負担を減らしながらレガシーシステムを一から見直せる |
デメリット | パッケージやソリューションから選択するため自由度が低い |
3-5.リビルド
リビルドとは、レガシーシステムを廃棄して一からシステムを構築する手法です。
例えば、現在顧客情報を管理するレガシーシステムを使用しているとしましょう。このシステムを廃棄して新たなシステムを構築し、最終的にデータのみを移行する方法がリビルドです。
現在のレガシーシステムを完全に廃棄して一から構築するため、今の時代に合わせた理想的なシステムに仕上がります。自社の課題解決や付加価値の創出に直結しやすいところがメリットです。
一方で、他の方法よりも大がかりとなるので、時間とコストを要します。長期間かけて計画的に進める必要があるので、投資効果を考えながら実施する必要があります。
【向いているケース】
リビルドは時間やコストをかけてでも、新たなシステムを構築したほうが付加価値や課題解決につながる場合に向いています。また、企業全体の改革時や新規事業の導入時にも有効活用できるでしょう。
リビルド | |
概要 | レガシーシステムを廃棄して一からシステムを構築する |
変更システム | 該当のレガシーシステムすべて(データのみは使用する場合がある) |
メリット | 今の時代に合わせた理想的なシステムに仕上がる |
デメリット | 時間とコストが大幅にかかる |
4.モダナイゼーションの手順
モダナイゼーションは、下記の手順で実施していきます。
4-1.IT資産の現状を分析する
まずは、自社のIT資産の現状を把握するところから始めましょう。確認したい主なIT資産は、下記のとおりです。
IT資産の種類 | 概要 |
ハードウェア | パソコン・サーバーなどの機器 |
ソフトウェア | 基幹システムやアプリケーションなど |
ライセンス | ソフトウェアを使用する権利 |
メンテナンス費用 | IT資産を維持するための費用 |
この中で注目したいのは、ソフトウェアです。基幹システムなどのソフトウェアは、レガシーシステム化しやすい部分です。どれくらい使用しており、どのような課題があるのか明確にしましょう。
また、ソフトウェアを使用するためのライセンスやメンテナンスに必要な費用も確認しておきます。2025年の崖で解説したように、レガシーシステムによってはライセンス更新ができない場合やライセンス切れが迫っている可能性があります。
4-2.モダナイゼーションの手法の決定
IT資産の現状が把握でき課題が掴めたら、モダナイゼーションの手法を決めます。「3.モダナイゼーションの5つの手法」で触れた方法を参考に、自社に合う方法を決定しましょう。
このときに複数の方法を併せて実施することも可能です。たとえば、リライトリホストを組み合わせて課題を解決するなども検討できます。
また、モダナイゼーションを実行する範囲を決めることも重要です。たとえば、リライトを選択した場合は、すべてのIT資産を対象とするのか一部のIT資産を対象とするのか決めておきましょう。
4-3.ベンダー企業の選定
モダナイゼーションの方法が具体的に決まったら、モダナイゼーションを依頼するベンダー企業を選定しましょう。
モダナイゼーションは手法により必要な技術が異なるため、手法が決まらないとベンダー企業が選定できません。
ベンダー企業を選定するときは、下記のポイントをチェックしてみましょう。
ベンダー企業を選定するときのチェックポイント | |
技術・知識 | 依頼する分野の知識や技術を持ち合わせている |
モダナイゼーションの実績 | 複数社のモダナイゼーションに携わった実績がある |
コスト | 適切なコストで実施できるか |
移行期間 | モダナイゼーションにかかる期間は適切か |
業務範囲 | 技術的な業務のみやモダナイゼーションの計画からなどどの範囲の業務を依頼できるか |
アフターサポート | モダナイゼーション後のサポートを用意しているか |
モダナイゼーションの実績や技術、知識はもちろんのこと、共に施策できる範囲やアフターサポートは確認しておきたいところです。
とくに、モダナイゼーションは導入後に予期せぬトラブルが起きたりカスタマイズを依頼したりする可能性があります。その部分まで対応できるベンダー企業を選定すると安心です。
4-4.移行ロードマップの策定
モダナイゼーションは移行期間を要するため、急に取り組めるものではありません。ベンダー企業と共にロードマップを策定し、計画的に実施しましょう。
例えば、一時的に使用できなくなるシステムがある場合や代替品が必要な場合はロードマップ作成時に明確にします。また、業務への影響や懸念されるリスクも書き出して、モダナイゼーションの実施中にトラブルが起きないようにあらかじめ対処法を検討します。
4-5.社内外への浸透
モダナイゼーションの実施とスケジュールが決まったら、社内外への浸透を促します。
・システムが使用できない期間 |
など、業務に関わる部分は早めにアナウンスをして協力をしてもらいます。
リビルドやリプレイスなど社内システムが大きく変更する場合は、研修期間や研修会を設けて社内に浸透するよう努めることも大切です。
5.モダナイゼーションを実施するときの注意点
モダナイゼーションを実施するときの注意点には、下記の3つがあります。
モダナイゼーションを実施するときの注意点 |
①レガシーシステムの問題点を細かく抽出する |
モダナイゼーションを成功に導くためにも、あらかじめ把握して対処しておきましょう。
5-1.レガシーシステムの問題点を細かく抽出する
モダナイゼーションがレガシーシステムの課題解決につながるように、レガシーシステムの問題点は細かく抽出しましょう。
例えば、レガシーシステムに他のシステムと連携できない問題があったとします。この部分のみを重視すれば、リライトやリホストだけで解決できる可能性があります。
しかし、他にも利便性の低さや管理コストなど複数の問題が潜んでいたとしたら、リライトやリホスト以外を検討しなければなりません。せっかくモダナイゼーションを実施しても的確に問題点を掴めていなければ、効果が薄くなってしまうのです。
問題点の抽出は社員へのアンケート調査や部署ごとでの話し合いなど、できるだけ多くの意見を取り入れるといいでしょう。モダナイゼーションの導入である程度解決できるように、スタート時の問題点の抽出は丁寧に実施してください。
5-2.モダナイゼーションを実施するリスクを検討する
モダナイゼーションを実施するときは、起こり得るリスクも検討しておきましょう。モダナイゼーションのリスクには、大きく3つあります。
モダナイゼーションのリスク | |
動作に関するリスク | モダナイゼーションを実施することで、システムの動作に与えるリスク |
連携に関するリスク | モダナイゼーションを実施したシステムやソフトウェアと、他のシステムとの連携のリスク |
利便性や操作性のリスク | モダナイゼーションを実施したことで社員の操作性や利便性を妨げるリスク |
新たなシステムやソフトウェアの導入は、一定のリスクが発生します。どのようなリスクが想定されるのかあらかじめチェックして、リスクに対する対処法を用意しておけば大きな失敗を回避できるでしょう。
5-3.機能や性能の追加ができるか確認する
モダナイゼーションは実施をしたら終わりではなく、自社で最大限活用できるよう改善を重ねることが多いです。そのため、導入後にグレードアップやカスタマイズが可能か確認しておきましょう。
シンプルなシステムを導入してもカスタマイズのしにくさが原因で複数のシステムを継ぎ足し、結果として複雑化してしまうことも少なくありません。
長期的に保守管理がしやすい状態や扱いやすい状態を維持するためにも、基盤となる性能や機能に着目して選定しましょう。
6.モダナイゼーションを成功させるための3つのポイント
最後に、モダナイゼーションを成功させるためのポイントをご紹介します。
モダナイゼーションを成功させるための3つのポイント |
①「管理」「性能」「保守」の3つの柱で現状より改善するか確認する |
モダナイゼーションはコストや時間を要するため、できる限り失敗を避けたいものです。どのようなポイントを把握しておけばいいのか、参考にしてください。
6-1.「管理」「性能」「保守」の3つの柱で現状より改善するか確認する
モダナイゼーションの実施前には、下記の3つの視点で現状よりも良くなるか確認をしてみましょう。
モダナイゼーションのチェックポイント | |
管理 | データの管理やアウトプット(連携)がしやすいか |
性能 | 自社の問題点や課題を解消できるか |
保守 | 保守点検に膨大なコストがかからないか |
管理は、データ管理やデータ連携のしやすさを確認する指標です。セキュリティやアウトプット方法も踏まえて、チェックしましょう。
性能は、モダナイゼーションで実施する手法がもたらす結果です。リビルドやリライトなど具体的な対策を実施することで、課題の解消や付加価値の創出につながるか検討します。
レガシーシステムは保守管理に膨大なコストがかかりますが、モダナイゼーションでは解消できるかも確認したいポイントです。3つの視点からモダナイゼーションがプラスになることが明確であれば、失敗を避けられるでしょう。
6-2.既存システムの変えられる部分と変えられない部分を明確にする
モダナイゼーションだけを目的にしてしまうと、扱いにくさからシステム導入後に社内に浸透しない可能性があります。
すべての既存システムを無理に変更する必要はないため、変える部分と変えない部分を明確に決めて実施しましょう。モダナイゼーションの成功に不安がある場合は、一部のシステムのみリビルドをするスモールスタートをすることも可能です。
新しいシステムが社員に与える影響を確認してから、他の部分にも取り入れることも検討できます。このように、現状に応じてモダナイゼーションの対応範囲を検討してみましょう。
6-3.新たな価値を創出できるか確認する
モダナイゼーションは、ただ単にソフトウェアやシステムを新しくする取り組みではありません。モダナイゼーションを実施したことで、今までにない付加価値を創出することが重要です。
例えば、顧客管理システムを一新し、顧客の成熟度に合わせた管理ができるようになったとしましょう。従来はできなかった顧客の成熟度に応じた営業活動やサポートが可能になれば、新たなビジネス機会の創出が実現できます。
また、モダナイゼーションを機に複数の社内管理システムを連携できれば、業務効率化につながるでしょう。余力があれば新たな施策やビジネスに取り組めます。
モダナイゼーションを実施することで生まれる付加価値も念頭において、計画を立ててみましょう。
まとめ
いかがでしたか?最後まで読み、モダナイゼーションの概要や手法を把握できたかと思います。最後にこの記事の内容をまとめてみると
◎モダナイゼーション(modernization)とは、業務で使用しているITシステムやハードウェア、ソフトウェアなどを最新のものに置き換え新たな価値を創出すること
◎マイグレーション(Migration)とは、既存のシステムの性能や機能は変えずに新しい環境に移行すること
◎モダナイゼーションの主な手法は下記のとおり
モダナイゼーションの5つの手法 | |
リホスト | アプリケーションや現在のプログラム、言語は変えずにプラットフォームのみを移行する |
リライト | 古い開発言語で記述されたコードをJavaやNetなどの新しい開発言語に書き直す |
リファクター | ソフトウェアの挙動を変えることなく内部構造を整理する |
リプレイス | レガシーシステムと同様の機能や性能を持つ新しいパッケージやソリューションズに置き換える |
リビルド | レガシーシステムを廃棄して一からシステムを構築する |
◎モダナイゼーションの手順は下記のとおり
1)自社のIT資産の現状を把握する |
◎モダナイゼーションを実施するときの注意点は次の3つ
1)レガシーシステムの問題点を細かく抽出する |
◎モダナイゼーションを成功させるためのポイントは次の3つ
1)「管理」「性能」「保守」の3つの柱で現状より改善するか確認する |
モダナイゼーションを実施することで、レガシーシステムから脱却し新たな価値の創出や業務効率化が目指せます。
この記事を参考に、モダナイゼーションの実施を検討できることを願っています。