
コンタクトセンター(コールセンター)の応答率とは、入電数に対して応答できたコール数の割合のことで、コンタクトセンターのつながりやすさを示す指標となります。
応答率はコンタクトセンターの最も重要で基本的なKPIであり、コンタクトセンターを運営管理するのであれば、まず押さえておきたい指標です。
応答率を扱ううえでは、単に表面的な数字を追うのではなく、その数字の裏にある本質をつかみ、成果が最大化するポイントを探る必要があります。
そこで本記事では、コンタクトセンターに関わるならまず知っておきたい「応答率」について、詳しく解説します。
▼ 本記事のポイント
・応答率の基礎知識が身につく |
「コンタクトセンターの応答率について知りたい」
「自社のコンタクトセンターの運用管理を良くしていきたい」
…という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、「応答率とは何か」はもちろん、コンタクトセンターを管理するために、どのような視点を持って応答率を見れば良いのか、理解できるようになります。
結果として、応答率を改善し高い顧客満足度を実現できるはずです。ではさっそく解説を始めましょう。
なお、本記事ではコンタクトセンターで使われる「電話」の応答率について解説します。
1.コンタクトセンター(コールセンター)の応答率とは
まずはコンタクトセンター(コールセンター)の応答率の基礎知識から見ていきましょう。
1-1.応答率とは入電数に対して応答できたコール数の割合
応答率とは、コンタクトセンター(コールセンター)におけるKPIのひとつで、入電数に対して対応できた応答数の割合です。
応答率が高ければ高いほど、顧客からの電話の問い合わせに対応できていることになります。
逆に、応答率が低ければ、電話をしたのにオペレーターにつながらなかった顧客が多いことを示しますので、顧客満足度の低下を招く恐れがあります。
そのため、多くのコンタクトセンターでは応答率を一定以上に保つよう努めているのです。
1-2.応答率は「つながりやすさ」を表している
では、この応答率は何を表しているのかといえば、顧客にとってのつながりやすさです。
例えば、次のような顧客のニーズを、どれくらい満たせているかの指標となるのが、応答率です。
・「電話をかけたら、必ず出てほしい」 |
「いつ電話しても、すぐに電話に出てくれる」ことは、顧客が電話対応に求める最も基本的な要望といえます。
よって、コンタクトセンターを管理するうえで、メインの指標にされるKPIが応答率となります。
1-3.応答率の計算方法
応答率は、入電数(=顧客からコンタクトセンターにかかってきた電話の件数)に対してオペレーターが応答できた件数の割合なので、応答数を入電数で割って計算します。
計算式は以下の通りです。
例えば、100件の入電があり、そのうち80件について応答できたとしましょう。その場合の応答率は、以下のような計算になります。
・応答数80件÷入電数100件×100=【応答率80%】 |
1-4.応答率と「 SL 」との違い
応答率と似たようなKPIで、「SL=サービスレベル」があります。
両者は何が異なるのでしょうか?
比較すると、以下の通りです。
概要 | 計算式 | 単位 | |
応答率 | 入電数全体に対して、オペレーターが応答できた件数の割合 | 応答数 ÷ 総入電数 × 100 | % |
SL | 入電数全体に対して、設定時間内にオペレーターが応答できた件数の割合 | 設定時間内に受電した数 ÷ 総入電数 × 100 | ◎/◯ |
SLは、コンタクトセンターへの入電の全体数に対して、決められた目標時間内に電話に出られた件数の割合です。
そのため「設定時間内応答率」とも呼ばれます。
どちらも「入電数全体に対して」、「応答できた数」である点は同じですが、応答率は「時間」は関係ないのに対して、SLは時間を区切って測定するという違いがあります。
先ほどの例でみてみると、入電数が100件だった場合、もし80件に対応できたなら、応答率は80%ですが、そのうち「入電から20秒以内に対応できた件数」というサービスレベルが設けられている場合、「入電から20秒以内に対応できたのは50件」であれば、SLは「50/20」=「20」秒以内に対応できたのは全体の「50」%、となります。
つまり、応答率は「対応できたかどうか」のKPIであり、SLは「顧客を待たせずに対応できたかどうか」を測るものである、という違いです。
どちらもコンタクトセンターでは重要なKPIですので、目標を設定して達成するようにしましょう。
2.コンタクトセンター(コールセンター)の応答率の目安・平均
「具体的に、どの程度の応答率なら合格ラインなのか?」と、目安や平均値を知りたいという声はよく聞かれます。
2章では、応答率の目安や平均値について解説していきます。
2-1.応答率の平均
応答率の平均値については、統計などの客観的データはないようです。
ただ、株式会社リックテレコムの「コールセンター白書 2022」に、放棄呼率について以下のような調査結果があります。
放棄呼率とは応答率(入電数に対して応答できたコール数の割合)の反対で、入電数に対してオペレーターに繋がる前に顧客によって切断されたコールの割合のことです。
この結果から、放棄率5%~10%と10%~20%を選択している企業が多く、応答率に変換すると応答率80%~95%の企業が多いということがわかります。
この調査結果はあくまで調査に協力した企業の応答率の平均です。次に応答率の目安について解説します。
放棄呼については別の記事で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
2-2.応答率の目安
一般的に、応答率の目安は【80〜90%】とされています。
ただ、コンタクトセンターの分野や運営方針によって、目指すべき目標値は大きく異なる点に注意が必要です。
応答率が高ければ高いほど顧客ニーズは満たせる一方で、入電がない時間にも多くのオペレーターが待機している状況であれば、無駄なコストが発生します。よって「応答率100%=無駄なコストが発生している」という考え方をする企業もあります。
重要なのは、一般的な目安よりも、まず自社の戦略を立て、その戦略に見合った適切な目標値を設定することといえます。
そのためには、コンタクトセンターの応答率が下がるとどんな問題が起きるのか、またどうして下がってしまうのか、その背景を知っておくことが役立ちます。詳しくは、続けて解説しましょう。
3.コンタクトセンター(コールセンター)の応答率が下がると起こる問題
コンタクトセンター(コールセンター)の応答率が低い場合、具体的にどんな問題が起きるのでしょうか。ここでは2つのポイントを見ていきましょう。
1.顧客満足度が下がる |
3-1.顧客満足度が下がる
1つめの問題は「顧客満足度が下がる」ことです。
“顧客がコンタクトセンターに電話するとき”はどんなときかといえば、以下が挙げられます。
▼ 顧客がコンタクトセンターに電話をするとき
・何らかの解決したい問題が発生している |
このように「●●したい」という気持ちを抱えている顧客にとって、かけた電話がすぐにつながらないことはストレスとなります。
ましてや、
「何十分も待っているのに、ずっとつながらない」
「何度かけ直しても、電話に出ない」
といった状況となれば、顧客は大きな不満を感じることになります。
応答率が低く、“必要なときにつながらないコンタクトセンター”は、顧客満足度の低下を招き、顧客離れの原因となります。
3-2.受注の機会損失が起きる
2つめの問題は「受注の機会損失が起きる」ことです。
商品・サービスの注文や申込みをコンタクトセンターで応対している場合、「かかってきた電話に応答できない」ことは、すなわち機会損失に直結します。
特に、新規顧客の場合、初めての電話の機会を逃すと、再びかけ直ししてもらえる確率は低くなります。
なぜなら、初めてのカスタマーエクスペリエンス(CX、顧客体験)の印象が悪くなるためです。
一度ついた悪い印象を回復させるのは難しいケースが多く、新規顧客獲得のチャンスを失うことになります。
4.コンタクトセンター(コールセンター)の応答率が下がる原因
では、どうしてコンタクトセンターの応答率は下がってしまうのでしょうか。
その背景には、大きく分けて3つの原因があります。
1.応答できるオペレーターの不足 |
4-1.応答できるオペレーターの不足
1つめの原因は「応答できるオペレーターの不足」です。
顧客からのコール数に対して、必要なオペレーターの人数が足りていないと、応答率が下がります。
これには、配置しているオペレーターの人数不足のほかに、離席や後処理などで、入電があっても応答できないオペレーターが多い状況も含まれます。
必要十分な人数のオペレーターをアサインしていても、離席や後処理の管理が徹底されていなければ、応答率が下がる原因となりますので注意しましょう。
4-2.予測に反した入電数の増加
2つめの原因は「予測に反した入電数の増加」です。
配置しているオペレーターの人数を大幅に超える入電があれば、当然ながら応答率は下がります。
例えば、大規模な広告やテレビCMによって注文数が予想を超えて増加したときや、急なトラブル・報道などの影響で問い合わせ数が急増したときには、応答率は大幅に下がります。
そこまで極端ではなくても、オペレーター配置の際に予測した入電数と実績数との間にギャップが積み重なれば、応答率の低下として数字に表れてきます。
4-3.応対時間の長時間化
3つめの原因は「応対時間の長時間化」です。
顧客と通話を開始してから終了するまでの時間が、長くなればなるほど、対応できるコール数が少なくなって、応答率が下がります。
応対時間が長くなる原因として考えられるのが、ナレッジ(マニュアルやFAQ)・トークスクリプト(会話の台本)の精度が低く、円滑な応対ができていないケースです。
顧客がスムーズに理解できずやり取りが多くなる、通話中の保留時間が長くなるなど、結果として応対時間が長くなります。
また、窓口の特性にもよりますが、クレーム・苦情などの難しい案件が多いコンタクトセンターは通話が長時間化しやすいといえます。
5.コンタクトセンター(コールセンター)の応答率を改善する方法
ここまでのご紹介した応答率が下がる原因を踏まえつつ、応答率を改善するための方法を見ていきましょう。
1.オペレーターの人数を戦略的に増やす |
5-1.オペレーターの人数を戦略的に増やす
1つめは「オペレーターの人数を戦略的に増やす」方法です。
応答率を直接的に向上させるためには、配置するオペレーターの人数を増やせば良いことは当然ですが、大切なのは“どう増やすか”です。
オペレーターの人数を増やすには引き換えに「コスト」が増えます。オペレーターの人数はやみくもに増やせば良いというものではありません。
コンタクトセンター(コールセンター)全体での損益や顧客満足度に与えるインパクトなどを総合的に評価して、得られる成果を最大化できるポイントを見極め、戦略的にオペレーターを配置する必要があります。
5-2.業務フローを見直す
2つめは業務フローの見直す方法です。
無駄な作業が多いために、オペレーターがそちらに時間を取られて、入電があっても対応できないということもあります。
特に、後処理の効率化ができないか、ぜひ検討してください。
終話後に、オペレーターが応対内容をまとめて記録するフローを組んでいるコンタクトセンターは多いでしょう。
しかし、この作業に数分間かかってしまっているケースもよくあるのです。
これを短縮できるようにすれば、その分の時間を応対に使えるようになります。
具体的には、
・応対内容をいくつかカテゴリー分けし、モニター上のプルダウンで選択できるようにする |
といった改善方法が考えられます。
これにより、オペレーターが文章を考えて入力する必要がなくなり、大幅な時短になるでしょう。
後処理時間の短縮方法についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
5-3.入電数予測の精度を高める
3つめは「入電数予測の精度を高める」の方法です。
成果を最大化するオペレーターの配置を検討するうえで欠かせないのが、精度の高いフォーキャスト(予測、見込)です。
予測精度を高めるためには、過去の予測と実績の比較を行い、現状の予測精度を数値で把握していくことが大切です。
過去の予測と実績のギャップを、未来の予測作成に反映させ、常に予測精度を改善していきます。
コンタクトセンターのフォーキャストについてはこちらの記事も参考にしてください。
なお、トランスコスモスでは『DataRobot』というツールで、AI(人工知能)を活用して予測するサービスを実施しています。
『DataRobot』について詳しくは、以下のリンクからご確認ください。
5-4.応対支援ツールを導入する
4つめは「応対支援ツールを導入する」方法です。
応対品質を高め応対時間を短縮するためには、ナレッジ構築やオペレーターの教育、スーパーバイザーによるエスカレーション対応(オペレーターからの質問に助言する)が欠かせません。
そこでおすすめなのが、応対支援ツールを導入する方法です。できる限りシステムによって自動化することで、効率的に応対品質を高めることが可能です。
例えば、トランスコスモスの『transpeech(トランスピーチ)』では、音声認識によって注意すべきキーワードを検知し、トークスクリプトやFAQを自動表示します。
正確でスピーディーなオペレーションをシステム的に支援して、応対時間を短縮させます。
transpeechの機能詳細については、ソリューションページでご確認ください。動画も用意しております。
またtranspeechを活用した業務改善事例についてはこちらからお問い合わせください。
5-5.IVRを導入する
5つめは「IVR」を導入するのも方法です。IVRも応答率改善には効果的です。
「IVR(=Interactive Voice Response)」とは「自動音声応答システム」のことで、コンタクトセンターに顧客から電話が入ると、オペレーターにかわってIVRが一次対応をしてくれます。
以下の図を見てください。
顧客から入電があると、あらかじめ録音しておいた音声を、IVRが自動再生します。
そのアナウンスにしたがって、顧客がプッシュ操作したり、あるいは顧客の声を音声認識することで、適切な二次対応に振り分け、誘導するというしくみになっています。
これによって、オペレーターが専門外の問い合わせに時間を取られたり、適切な部署を探して転送したりする手間がなくなり、自分が担当する問い合わせ内容の対応に集中できるようになります。
オペレーターの負担が軽減され、より多くの入電に対応できるでしょう。
IVRについて詳しく知りたい方は、以下の関連記事を参照してください。
5-6.顧客の自己解決率を上げる
ここまでは、コンタクトセンター内の体制を改善する施策でしたが、視点を変えて、「問い合わせの入電数自体を減らす」ための施策も有効です。
顧客が疑問や課題を自分で解決できる手段を用意することで、自己解決率を向上させる、という方法です。
例えば、以下のようなことが可能でしょう。
・Webサイト内のFAQページを充実させ、そこを見れば「よくある質問」は解決できるようにする |
【ビジュアルIVRの視覚イメージ】
顧客が自分で知りたいことの答えを見つけることができれば、入電数自体が減少し、反対に応答率は向上するでしょう。
自己解決率を向上させたい人は、関連記事もぜひ読んでみてください。
6.応答率を管理・分析する方法
さて、ここまでで応答率についての基礎知識について解説しました。
しかし、この記事を読んでいるユーザーの方々は「応答率を管理したり分析したりしたい」というニーズもあるのではないでしょうか。最後に管理・分析について触れておきます。
6-1.応答率の管理
応答率を改善するためには、日頃から応答率が下がらないように管理する必要があります。
応答率を管理するためにExcelにオペレーター1人ずつの名前を記入し、出勤日や時間ごとに対応したコール数を入力し算出し管理する方法もありますが、それでは時間が掛かってしまいます。
応答率の管理にはコンタクトセンター(コールセンター)システムを活用しましょう。
ここではトランスコスモスが提供する2つのソリューションについて紹介します。
オール・イン・ワンのクラウド型コンタクトセンター・ソリューション「 Genesys Cloud CX 」
トランスコスモスが提供するGenesys Cloud CXは、多彩なチャネルのマネジメント・セルフサービス・品質管理の機能をひとつのプラットフォームで管理するクラウド型ソリューションです。
電話、Eメール、チャット、ソーシャルメディアといった各チャネルの応対管理機能とともに、自己解決を促すチャットボットなどのセルフサービス機能、従業員の品質管理・ワークフォース管理機能が備わっています。
Genesys Cloud CXの機能詳細についてはソリューションページをご覧ください。
クラウドコンタクトセンター「 Amazon Connect 」
Amazon Connectとは、AWS(Amazon Web Service、以下AWS)が提供するオムニチャネルのクラウドコンタクトセンターサービスです。
このサービスは電話番号の取得からコールフローの設定、オペレーターへのコールを振り分けるACD(PBX)機能、ユーザー管理機能、応対のパフォーマンス確認や通話履歴を確認するためのレポート機能など、多くの機能を備えています。
外部ソリューションとの統合が可能で、コールデータを、AWSや外部の分析サービスと連携させ、パフォーマンスや応対傾向を可視化することができます。
トランスコスモスでは、カスタマイズしたソフトフォンやコール監視ツール・transpeech(音声認識)と連携し、顧客サービスの品質向上に貢献しています。
Amazon Connectの機能詳細についてはソリューションページをご覧ください。
6-2.応答率の分析
応答率の分析といっても、日々、毎時間算出される応答率を手動で分析するのはレポート化に時間がかかり、PDCAサイクルが思うように回らない事象が発生してしまいます。
応答率の分析についてもコンタクトセンターシステムを活用しましょう。
CX最適化支援ダッシュボード「 Insight BI 」
Insight BIとは、カスタマーケア領域とデジタルマーケティング領域のデータを統合し、マルチチャネル戦略、CX最適化、比較分析の切り口でお客様事業における顧客コミュニケーションの成功、成長施策の実行を目的としたトランスコスモス独自開発のCX最適化支援ダッシュボードです。
Insight BIを活用すれば、高い鮮度のデータによって、先手となる攻めの施策が実行できます。CX業務における重要なKPIを厳選し、主要レポートを自動化することで効率アップ。高い鮮度でトラブルの予兆や売上増の機会などを把握して、今まで実現できなかった速度で攻めの施策を実行できます。
Insight BIの機能詳細についてはソリューションページをご覧ください。
まとめ
コンタクトセンター(コールセンター)の応答率とは、入電数に対して応答できたコール数の割合のことです。
応答率は「つながりやすさ」を表しており、コンタクトセンターの重要なKPIとなります。
コンタクトセンターの応答率が下がると起こる問題は以下のとおりです。
1.顧客満足度が下がる |
コンタクトセンターの応答率が下がる原因としては、以下が挙げられます。
1.応答できるオペレーターの不足 |
コンタクトセンターの応答率を改善する方法は次のとおりです。
1.オペレーターの人数を戦略的に増やす |
上記を実施しても、コンタクトセンターの応答率を確保できないときはこちらの記事も参考にしてください。入電分散対策にも触れています。
また、モビルス株式会社が運営する情報サイト「Mobilus SupportTech Lab」にてチャットを導入することにより入電数削減につながった記事・事例が配信されておりますので、参考にしてください。
コンタクトセンターの基本KPIである応答率を改善して、顧客にとって利便性の高いコンタクトセンターを構築していきましょう。