「コンタクトセンターで管理業務をしていて、最近上司から『もっと顧客の自己解決を促すように』と言われたが、『自己解決』とはどんなこと?」
「オペレーターの人手不足や業務の煩雑化に悩んでいるが、それには『自己解決率を上げればいい」と聞いた、どんな施策をとればいい?」
この記事を読んでいる方は、そんな悩みを抱えているのではないでしょうか。
コンタクトセンター(電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)において「自己解決」とは、「顧客が、商品やサービスに関してわからないことや問題を抱えた際に、自分で調べることで回答・解決に至ること」を指します。
その方法としては、主に以下のようなものがあります。
・自社のWEBサイト内のFAQを充実させる
・Q&Aのやりとりができるチャットボットを導入する
・ビジュアルIVRを導入して、自己解決できる問い合わせとオペレーターが対応する問い合わせを分類する
これらの方法をとれば、以下のようなメリットが期待できるのです。
・CX(顧客体験)向上が期待できる
・業務を効率化できる
・オペレーターの負担軽減が期待できる
そこでこの記事では、顧客のエフォートレス体験につながるコンタクトセンターでの「自己解決」について、メリットや自己解決につながる手段についてまとめました。
まず基本的な知識からおさえておきましょう。
◎コンタクトセンターにおける「自己解決」とは
◎「自己解決率」の重要性
◎顧客の自己解決率を高めるメリット
そのうえで、実践的な施策や導入方法を解説します。
◎顧客に自己解決させる手段
◎顧客の自己解決率を高めるポイント
最後まで読めば、「自己解決」についての疑問が解けるでしょう。
この記事で、あなたのコンタクトセンターを利用する顧客のCXが向上し、より効率的な業務を行えるよう願っています。
1.コンタクトセンター(コールセンター)における「自己解決」
コンタクトセンター(コールセンター)では、CX(顧客体験)向上や業務の効率化のために「自己解決」が重視されています。
ではそもそもこの「自己解決」とは何なのか、あらためて明確にしておきましょう。
1-1.「自己解決」とは?
コンタクトセンターにおいて「自己解決」といえば、「顧客が、商品やサービスに関してわからないことや問題を抱えた際に、コンタクトセンターに問い合わせることなく、自分で調べることで回答・解決に至ること」を指します。
最近では、その商品・サービスを提供する企業の公式Webサイトを開いて、「オンラインマニュアル」を読んだり、「よくある質問」「Q&A」「FAQ」といったページで自分の知りたいことが書かれていないか調べたりする人も多いでしょう。
また、公式Webサイト上にFAQの回答を自動化した「チャットボット」を設置する企業も増えています。
あらかじめ、想定される質問とその回答(=FAQ)をボットに登録しておき、顧客がチャットで質問すると、即座にチャットボットから回答が返ってくるという仕組みです。
これらの自己解決手段が充実していれば、顧客はコンタクトセンターのオペレーターと電話やチャットでやりとりすることなく、コンタクトセンターの営業時間などを気にせずに問題を解決できるというわけです。
1-2.コンタクトセンター(コールセンター)では「自己解決率」が重要
コンタクトセンターでは、顧客がどのくらい自己解決しているかの割合を算出した「自己解決率」という指標で判断することが多いです。この自己解決率を高めることが重要です。
自己解決率は、以下のような方法で算出します。
自己解決率=自己解決数 ÷ 問い合わせ総数 |
Cotra編集部が実施したオムニチャネル利用実態調査では、商品やサービスについてわからないことや問題があった際に、まずは自身で調べて回答を探し、それでも解決できなかった場合にコンタクトセンターに問い合わせをする、という手順を踏む人が多いことがわかっています。
参考:トランスコスモス Cotra編集部調べ
最初の段階で自己解決できれば、コンタクトセンターへ問い合わせる手間がなくなり顧客のエフォートレス体験の向上が期待できます。またコンタクトセンターとしては、問い合わせ件数が減り業務のスリム化も期待できます。
2.顧客の自己解決率を高めるメリット
コンタクトセンター(コールセンター)にとって、顧客の自己解決率を高めることが重要であることはわかりました。では、その具体的なメリットとは何でしょうか?
2-1.コンタクトセンター(コールセンター)側の3つのメリット
まず、コンタクトセンター側のメリットは以下の3点です。
・CX(顧客体験)向上が期待できる
・業務を効率化できる
・オペレーターの負担軽減が期待できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
CX(顧客体験)向上が期待できる
ひとつめのメリットはCX(顧客体験)の向上が期待できる点です。
自己解決ができる環境が整っていることにより、顧客は営業時間内にコンタクトセンターに問い合わせをするというストレスや手間がなくなるためです。
カスタマーサポート利用時にストレスを感じた問い合わせチャネルについて調査したところ、最も高い割合を占めたのが電話で約5割の方がストレスを感じていることが分かっています。
また電話でのストレスで最も多かったのは、「電話がつながりにくい」という回答が6割と半数以上の方がつながり憎さにストレスを感じているようです。
参考:トランスコスモス Cotra編集部調べ
自己解決率を高めることで、コンタクトセンターに問い合わせる必要がなくなり、こういったストレスからも解消されるためCX(顧客体験)向上が期待できるでしょう。
業務を効率化できる
ふたつめは業務を効率化できる点があげられます。
コンタクトセンターの基本業務は、顧客からの問い合わせに対応し、疑問や問題を解決することです。
なるべく多くの顧客を対応すべきですが、実際には問い合わせが多過ぎて、顧客を待たせてしまったり、十分な対応ができていないコンタクトセンターも多いでしょう。
しかし自己解決できる顧客が増えれば、コンタクトセンターへの問い合わせが減ります。
オペレーターが対応しなければならない問い合わせ件数が減ることで、コンタクトセンター業務で重要な応答率の維持・向上が期待できます。
さらにパンデミック発生時のような出社人数を制限しなければならなくなった場合には、顧客の自己解決率を高めることが非常に有効です。問い合わせ件数自体を減らすことができれば、以前より少人数のオペレーターでも対応可能になるはずです。
オペレーターの負担軽減が期待できる
続いてコンタクトセンター側の3つめのメリットとして、オペレーターの負担軽減が期待できることがあげられます。
一般的にコンタクトセンターのオペレーターは離職率が高いといわれています。
「コールセンター白書2020」(株式会社リックテレコム)の調査では、オペレーターの離職率が30%を超える企業が28.8%、つまり3割近くのコンタクトセンターでは、オペレーターのうち10人に3人が辞めてしまうことがわかっています。
コンタクトセンターには、単純な問い合わせだけでなく、さまざまな内容の問い合わせが寄せられます。
中にはクレームや理不尽な要求、説明してもなかなか理解してもらえないケースなども多く、オペレーターにとっては負担がかかる仕事です。
そこでオペレーターの負担軽減に有効なのが、顧客の自己解決率を上げることです。
自己解決率を高めコンタクトセンターへの問い合わせを減らすことできれば、1日中ひっきりなしに対応しているような余裕のない状況から解放されるのと同時に、より丁寧で質の高い応対にもつながるようになるでしょう。
また、スーパーバイザーやマネージャーといった管理者側にも余裕ができるので、オペレーターの教育や業務改善により多くの時間を割くことも可能になります。
2-2.顧客側のメリット
これまではコンタクトセンター(コールセンター)側のメリットを述べましたが、自己解決ができることは、顧客側にとっても「最小限の時間と労力で問題を解決できる」というメリットがあります。
最小限の時間と労力で問題を解決できる
「CX(顧客体験)向上が期待できる」にもつながる部分がありますが、顧客側のメリットとして「最小限の時間と労力で問題を解決できる」という点があげられます。
カスタマーサポートに対するカスタマーニーズ調査2022においてカスタマーサポートに電話をした際に感じるストレスについて調査したところ、以下のような結果が出ました。
上のグラフからもわかるように、電話が繋がらないことへの不満が多数を占めています。コンタクトセンターへの問い合わせは、顧客の時間と手間を奪うストレスフルなものなのです。
そこでもし自己解決の方法が充実していれば、顧客は簡単に求めている解決法や回答を得られます。長く待たされることも、聞きたい内容をオペレーターへ説明することも必要ありません。
このように、顧客が商品やサービスを、努力(=effort)する必要なく快適に利用できることを「エフォートレス(=effortless)な体験」と呼び、カスタマーサービスにおいて顧客満足度に寄与する重要な要素とされています。
コンタクトセンターでも「エフォートレスな体験」の実現を目指すところが増えていますので、今後意識してコンタクトセンター運営を行うといいでしょう。
エフォートレス体験ついては以下の記事で詳しく解説しています。こちらも是非ご一読ください。
3.顧客の自己解決につながる手段
ここまででコンタクトセンター(コールセンター)における自己解決の重要性とメリットについて解説してきました。
では、実際に顧客の自己解決には、どのような手段・方法があるのでしょうか?
それは主に以下の3つです。
・Webサイト内のFAQ
・チャットボット
・ビジュアルIVR
3-1.WEBサイト内のFAQ
自己解決の手段としてもっともポピュラーで手軽なのは、自社のWebサイト内に「FAQ」を作ることです。
「よくある質問」「Q&A」といってもいいでしょう。
企業のホームページの多くはこのようなページを設けていますが、内容が薄かったり、顧客のニーズに合っていなかったりすれば、自己解決につながりません。
顧客が本当に知りたいことは何かをリサーチしてそれに対する十分な回答を用意することが重要です。
具体的には、以下のようなポイントをおさえたFAQを作るとよいでしょう。
・FAQの項目を充実させる
・サイト自体の検索性をアップする
・Googleなど検索エンジンで上位表示されるようSEO対策をする
・FAQの項目をカテゴリー分けする
・問い合わせが多い順に並べる
・回答をわかりやすく記載する
・定期的に内容を更新する
自己解決率を高めるFAQについては、以下の記事にくわしく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
3-2.チャットボット
近年導入が進んでいる自己解決法に、「チャットボット」があります。
これは、リアルタイムで対話できる自動会話プログラムです。
あらかじめボットにFAQの内容やシナリオを登録しておいて、顧客がチャットで問い合わせをしてくると、それに適した回答を自動で返信します。
チャットボットに登録されている内容であれば、問題解決に導くことができます。もしチャットボットでは答えられない質問があれば、有人チャットやメール、オペレーターへの電話問い合わせに誘導することで対応可能です。
チャットボットの中にはAIを搭載しているものもあり、対応を重ねるうちにデータを蓄積して回答の精度を高めていくことができますので、顧客の自己解決により役立つでしょう。
チャットボットに関しては、以下の記事で解説しています。参考にしてください。
3-3.ビジュアルIVR
また最近では、「ビジュアルIVR」にも注目が集まっています。
ビジュアルIVRとは、「IVR=自動音声応答システム」を視覚化したものです。
わかりやすくいえば、スマートフォンやwebの画面上にメニューを表示して、顧客がその案内に従って選択肢を選んでいくと、必要な情報にたどり着くことができます。
【ビジュアルIVRの視覚イメージ】
【ビジュアルIVRの仕組み】
ビジュアルIVR利用して、顧客からの問い合わせを適切なチャネルに誘導することができます。
FAQに回答がある質問であればFAQへ、チャットボットが適切であればチャットボットへ誘導し、オペレーターの対応が必要であれば電話や有人チャットに誘導します。
つまり、自己解決できる問い合わせとできない問い合わせを自動で振り分けることができるため、自己解決率が高まるのです。
このビジュアルIVRに関しては、下記の記事に詳細を解説していますので、ぜひ参照してください。
4.顧客の自己解決率を高めるポイント
顧客の自己解決率を高める方法としては、前述したFAQ、チャットボット、ビジュアルIVRなどが有効です。
しかし、それらをただ導入しただけで自己解決率が向上するとは限りません。
システムの設計や想定する問い合わせ内容などが適切でなければ、顧客自身では問題解決に至らず、結局コンタクトセンター(コールセンター)に電話しなければならないという残念な結果に陥る恐れもあります。
そこでこの章では、自己解決率を高めるためのポイントを5つ挙げておきましょう。
・問い合わせの動線を適切に設計する
・検索をしやすくする
・回答をわかりやすくする
・情報や知見を蓄積、共有する
・定期的に内容を改善する
4-1.問い合わせの導線を適切に設計する
最初に重要なのは、顧客から問い合わせがあった際の導線を適切に設計することです。
自社の顧客が、商品やサービスに関して何か疑問を持った際に、どのような行動を取るかを分析して、それに沿ってスムーズに自己解決に至る最適な導線を考慮しましょう。
たとえば、顧客に以下のような傾向があるとします。
1)わからないことがあると、まずWebでその単語を検索する
2)それでわからなければ、商品・サービスを提供している企業のホームページで「FAQ」を探す
3)そこに求めるQ&Aがなければ、問い合わせ方法を調べてコンタクトセンターに問い合わせをする
この場合は、まず顧客が1)の検索をした時点で、検索上位に2)の「FAQ」がヒットするように対策するといいでしょう。
さらに、FAQに答えがない場合はスムーズに3)に移行できるよう、FAQに「その他のお問い合わせはこちら」などのボタンを設置して、そこをクリックするとダイレクトにチャットボットが開いたり、電話がかけられたりするように設計するのもおすすめです。
いずれにしろ、顧客の動きを正しく予測して、なるべく「エフォートレス」に自己解決できるチャンネルへと誘導しましょう。
4-2.検索をしやすくする
また、FAQを作る場合は、Q&Aの項目を充実させることが大前提ですが、それに加えて検索のしやすさも重要です。
企業によっては、FAQページにたくさんのQ&Aが用意されているものの、検索機能がなくてひとつずつ確認しなければならないケースや、検索ボックスはあっても複数キーワードでの検索ができず、似たようなQ&Aがたくさんヒットしてしまうケースなど、検索性が低い例が見受けられます。
これでは顧客が求める回答を探しにくく、自己解決できない恐れがあるのです。
そこで、顧客が求める回答を見つけやすいような検索機能を用意するとよいでしょう。前述のように、複数キーワードでの検索を可能にするのは有効です。
Q&Aの項目が数多い場合は、商品やサービスごと、あるいは質問内容ごとにカテゴリー分けするなど、絞り込み検索ができるようにするのも便利です。
さらに、閲覧数の多いQ&A項目をランキングにして、ベスト10をサイドバーに表示したり、ヘッダー部分にFAQへのリンクやFAQの検索ボックスを設置して、どのページからでもダイレクトにFAQに飛べるようにするなどの手法も考えられます。
4-3.回答をわかりやすくする
上記2つのポイントは、使いやすさに関するものでしたが、顧客の自己解決を促すには、用意された回答の内容も大切になってきます。
FAQやチャットボットで知りたいことに関する質問が見つけられても、肝心の回答そのものが理解できなかったり不十分であれば、顧客は自己解決できずにコンタクトセンターへ問い合わせをしなければなりません。
第一に、回答は誰にでもわかりやすく、それでいて十分な内容にする必要があります。
以下の点に留意しましょう。
・長過ぎる文章は避け、簡潔にまとめる
・専門用語や一般的でない言葉はなるべく使わない。使う必要がある場合は、注釈をつける
・言葉では表現しづらいこと、たとえば視覚的な説明や複雑な仕組みの説明などでは、図解や動画などを活用する
4-4.情報や知見を蓄積、共有する
FAQとチャットボットなど、複数のチャネルを利用する場合は、得られた情報や知見を蓄積して共有することも必要です。
同じ質問に対する回答は、オペレーターが対応する電話やチャットでの回答も含めてすべて統一しなければなりませんし、「最近チャットで◯◯に関する質問が増えた」となれば、それに対する回答を他のチャネルにも用意します。
顧客は何を知りたがっているか、どのような回答が得られれば満足して自己解決に至るかなど、各チャネルを運用する中で蓄積される情報は、コンタクトセンター全体で共有することで、より自己解決率を高めることにつながるのです。
4-5.定期的に内容を改善する
前項とも関連しますが、FAQやチャットボットは一度導入すれば終わりというものではありません。
常に内容を改訂、更新し続ける必要があります。
実際に運用を開始すると、顧客の反応によって「この質問に関する回答も必要だった」と気づくこともありますし、新商品や新サービスがリリースされればそれに関するQ&Aを追加する必要も出てきます。
反対に、「この質問はニーズがない」という項目は、整理したほうがよいでしょう。
各質問の閲覧数や自己解決率、あるいは自己解決できずにコンタクトセンターに問い合わせがあった内容などを定期的に分析して、その時点でもっとも顧客が求めているQ&Aを、FAQやチャットボットに用意するとよいでしょう。
そうすることで、常に高い自己解決率を保つことができるはずです。
まとめ
いかがでしたか?
顧客のエフォートレス体験につながる「自己解決」とは何か、どうすれば自己解決率が高まるのかがよくわかったかと思います。
ではあらためて、記事の要点を振り返ってみましょう。
◎コンタクトセンターにおける「自己解決」とは、「顧客が、ある商品やサービスに関してわからないことや問題を抱えた際に、コンタクトセンターに問い合わせることなく、自分で調べることで回答・解決に至ること」
◎顧客の自己解決率を高めるメリットは、
1)CX(顧客体験)向上が期待できる
2)業務を効率化できる
3)オペレーターの負担軽減が期待できる
◎顧客に自己解決させる手段は、
1)Webサイト内のFAQ
2)チャットボット
3)ビジュアルIVR
◎顧客の自己解決率を高めるポイントは、
1)問い合わせの動線を適切に設計する
2)検索をしやすくする
3)回答をわかりやすくする
4)情報や知見を蓄積、共有する
5)定期的に内容を改善する
以上を踏まえて、あなたのコンタクトセンターが自己解決率を高めて業務効率化を実現できるよう願っています。