「コールセンターのforecastって何のこと?」
「コンタクトセンターの人員配置をムダなくするには、どのようにforecastを出せばよい?」
コンタクトセンター(電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)に勤務する方の中には、そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
「forecast」とは、「インバウンド(受信)のコンタクト数予測」を表わす言葉です。
月ごと・日ごと・時間ごとに顧客からのコンタクトが何件入るかを予測すること、またはその予測数値のことで、「呼量予測」「入電予測」「forecasting」などと呼ばれる場合もあります。
これを正確に予測することができれば、コンタクトセンター(コールセンター)において、
・顧客からのコンタクト数が多すぎて対応しきれない
・コンタクト数に対してオペレーターが多すぎて人件費がムダになっている
といった非効率、不採算が解消できるため、コンタクトセンターの運営において非常に重視されているものです。
このforecastには、統計アルゴリズムを用いるなどさまざまな算出方法があり、その難易度や精度もまちまちなため、どの手法を選ぶかもポイントになるでしょう。
そこでこの記事では、コンタクトセンターのforecastについて、スタッフとして知っておくべきことをわかりやすく解説します。
まずは基礎知識として、
◎コンタクトセンターにおけるforecastとは何か
◎コンタクトセンターにおけるforecastの必要性
◎コンタクトセンターにおけるforecast算出の主な方法(概要)
について説明します。
それを踏まえた上で、
◎過去の平均値で予測する方法
◎回帰分析で予測する方法
◎時系列分析で予測する方法
にわけて解説します。
最後まで読めば、コンタクトセンターでのforecastとは何か、どのように予測すればいいかがひと通り理解できるはずです。
この記事で、あなたがコンタクトセンターで最適な人員配置をできるようになることを願っています。
1.コンタクトセンター(コールセンター)におけるforecastとは
コンタクトセンター(コールセンター)における「forecast」とは、「インバウンド(受信)のコンタクト数予測」を表します。
毎日、毎時間に顧客からのコンタクトが何件入るかを予測すること、またはその予測数値のことです。
「呼量予測」「入電予測」「forecasting」などと呼ばれることもあります。
コンタクトセンターでは、かかってくる電話や送られてくるメールの件数は一定ではありません。
曜日、時間帯、天候、各種イベントなどさまざまな要因によって増減します。
それらを踏まえた上で、日にちごと・時間ごとのforecastをできるだけ正確に予測することは、コンタクトセンターの運営にとって非常に重要だといえます。
2.コンタクトセンター(コールセンター)におけるforecastの必要性
ではなぜ、forecastがそれほど重要なのでしょうか?
その必要性を考えてみましょう。
2-1.forecastはセンターの運営を左右する
forecastが重要視されるのは、コンタクトセンター(コールセンター)における
◎人員配置計画
◎コストの適正化
にかかわるからです。
コンタクトセンターでは、顧客に対応するオペレーターやコミュニケーターの人員配置が、運営を成功させるための重要な要素になっています。
というのも、前述したように、顧客からのコンタクト数は一定ではなく、日や時間によって大幅に増減します。
そのため、人員配置もそれにあわせて増減させる必要があるのです。
2-2.forecastが適正でないとさまざまな不具合が生じる
では、コンタクトセンターの人員配置が適切でなければ、どうなってしまうのでしょうか?
コンタクト件数が多い日・時間に人員が足りなければ、
・顧客を長時間待たせてしまう(顧客満足度の低下)
・応対できない=放棄呼が増えてしまう(コールセンターKPIの未達成)
という課題が発生し、
・応対に十分な時間を割けなくなってしまう
という悪影響が生じ、応対品質が著しく下がってしまうでしょう。
また、通信販売などの受注をするセンターであれば、「放棄呼が増えること=受注件数が減ること」になるため、得られたはずの利益の損失にもつながります。
反対に、コンタクト件数が少ないのに人員が多く配置されている場合には、顧客に対応せず待機している人数・時間が増えて、人件費がムダになってしまいます。
そういったことを未然に防ぐためには、日ごと・時間ごとのforecastをできるだけ正確に予測し、必要かつ十分な人数でシフトを組むことが求められるのです。
3.コンタクトセンター(コールセンター)におけるforecast算出の主な方法
では、なるべく正確なforecastを求めるには、どうすればいいのでしょうか?
その方法には、主に以下のようなものがあります。
◎過去の平均値で予測する方法
◎回帰分析で予測する方法
◎時系列傾向分析で予測する方法
それぞれどんな方法で、どのような特徴・違いがあるのか、簡潔に説明していきましょう。
3-1.過去の平均値で予測
まず、もっともシンプルな方法として、過去のコンタクト数の平均値をもとに予測する方法があります。
たとえば過去数年の同月の平均値や、直近数か月の平均値の推移をもとにして、次月のコンタクト数を予測するというものです。
「例年の5月のコンタクト数の平均が1,000件なので、今年の5月も1,000件程度だろう」
「ここ6か月間は、毎月10%ずつコンタクト数が増えているので、来月も今月の10%増だろう」
というふうに予測する手法で、詳細は「4.過去の平均値で予測する方法」で詳しく説明します。
3-2.回帰分析で予測
次に、「回帰分析」という手法を用いて予測する方法があります。
「回帰分析」とは、コンタクト数の増減に影響する(=相関関係が強い)データと、その結果としてのコンタクト数との関係を統計学的に分析することです。
たとえば、家電製品の問い合わせセンターであれば、製品の販売数が増えれば問い合わせも増えることが予想されます。
つまり、コンタクト数と製品販売数は強い相関関係をもつと思われるので、製品の販売数を分析すれば、それに対応したコンタクト数が予測できる、というわけです。
詳細は、「5.回帰分析で予測する方法」で説明します。
3-3.時系列分析で予測
「時系列分析」は、「3-1.過去の平均値で予測」と同様に、過去のデータをもとに予測値を算出する方法です。
が、異なるのは、過去のデータだけでなく、それに影響を与える4つの「変動要因」も加味して、統計学的に予測値を算出することです。
4つの変動要因とは、
・季節変動:1年周期の中で、時期による変動。
→「3月は引っ越しが多いので、2~3月に賃貸物件、家具・家電などの問い合わせが増える」など
・傾向変動(トレンド変動):長期的な増加傾向や減少傾向。
・循環変動:一定の周期で増減を繰り返す変動。
・不規則変動:上記以外の予期できない要因による短期的な変動。
→「地震や水害など自然災害の影響」などで発生する変動
です。
これらを加味することで予測精度がぐんと高まるため、時系列分析は、重回帰分析と同様に多くのコンタクトセンターで広く用いられています。
なお、不規則変動は本来予測することが困難なケースが多いです。
そのため、コンタクトセンターでの活用方法としてはコール予測ではなく、いわゆるBCPプランとして被害予測として活用される場合があります。
実際の分析方法は、「6.時系列分析で予測する方法」で説明します。
また、複雑な計算と分析をAIが行なってくれる便利なツールもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
それでは次章よりそれぞれの分析方法を詳しく説明します。
4.過去の平均値で予測する方法
ここまで、コンタクトセンター(コールセンター)におけるforecast算出の方法を簡単に説明してきました。
さてここからは、それぞれの方法を具体的かつ実践的に解説していきましょう。
まずは、「過去の平均値で予測する方法」についてです。
これは、この記事で紹介するforecastの中ではもっとも簡単な方法ですが、一方で予測の精度はあまり高くはありません。
過去のコンタクト数が規則的に増え続けている場合は、比較的予測しやすいですが、月ごと・年ごとにバラつきがある場合は、特に精度が下がるという特徴があります。
具体的にいえば、
・5月:1,000件
・6月:1,100件
・7月:1,210件
であれば、毎月10%ずつの伸びなので、8月は「1,330件」程度と予測できます。
が、
・5月:1,000件
・6月:1,500件
・7月:500件
だとすると、毎月の伸びでも平均値でも、8月の予測は立てづらいですよね。
そのため、「コンタクト数が毎月コンスタントに増えている場合」にのみ有効だとされていますので、注意してください。
5.回帰分析で予測する方法
さて、次に解説するのは「回帰分析」です。
これは、「3-2.回帰分析で予測」でも説明したように、コンタクト数の増減に影響する(=相関関係が強い)データを分析することで、今後のforecastを予測するものです。
この相関関係を持つデータを「説明変数」と呼びますが、説明変数がひとつの場合を「単回帰分析」といい、説明変数が複数ある場合は「重回帰分析」といっています。
特に重回帰分析は、予測精度の高い手法として大規模のコンタクトセンターで活用されています。
まず、相関関係を持つデータ=「説明変数」を一種類だけ用いて分析する「単回帰分析」の方法です。
単回帰分析に必要なデータは、
◎過去のコンタクト数
◎コンタクト数の増減に深くかかわると思われるデータ=説明変数
→「新規加入顧客数」「商品の販売数」「資料請求件数」など
です。
ただ、回帰分析では、実際の予測に入る前にデータごとの相関関係を確認する必要があります。
◆コンタクト数と説明変数はどのような相関関係にあるか
→一方が増えればもう一方も増える「正の相関関係」か、
一方が増えればもう一方は減る「負の相関関係」か
◆どの程度の相関関係を持っているのか
→相関関係が強いのか弱いのか
まず相関関係の正負を確認して、なるべく相関関係が強いデータを選んで回帰分析をします。
相関関係が強いデータを用いて分析すれば、予測の精度は高くなり、逆に相関関係の薄いデータであれば、精度が下がってしまいます。
これにより、予測の精度が向上します。
上記の相関関係の正負を係数に数値に置き換えた係数を「相関係数」と呼びます。これはエクセル等で用意に算出することが可能です。
しかし、実際の現場において単回帰分析が使われていることは少ないと言えます。説明変数が複数あることが多いからです。
そこで、より精度の高いforecastが算出できる方法として重宝されているのが、複数の説明変数を用いる「重回帰分析」です。これは単回帰分析で使った説明変数を複数使って分析する手法です。
特に重回帰分析は、精度の高いforecastとして多くのコンタクトセンターで活用されていますので、コンタクト数に対して相関係数が大きい説明変数のデータを2つ以上用意して、ぜひ予測してみてください。
6.時系列分析で予測する方法
さて、コンタクトセンターのforecastを算出するには、重回帰分析が手軽で精度が高いことがわかりましたよね。
ですが、より正確なforecastを求めたい場合には、「時系列分析」という手法もあります。
この手法は、時系列に沿って変化するデータを分析し、未来を予測するもので、コンタクトセンターをはじめさまざまな業種・領域で広く活用されているものです。
が、時系列分析は、ここまで紹介してきた他の予測方法に比べて計算式が複雑で、簡単には行えません。
そこで、この記事ではその手法の概要のみを解説しておきます。
そのかわり、「実際に時系列分析を導入したい」という方のためには、簡単に時系列分析ができるツールを章末でご紹介しますので、ぜひ検討してみてください。
「時系列分析」は、過去のデータとそれに影響を与える4つの「変動要因」から、未来の数値を予測する分析方法です。
そのため、必要になるのは、
◎過去のコンタクト数
◎上記データの変動から算出した4つの変動要因
・季節変動:1年周期の中で、時期による変動。
・傾向変動(トレンド変動):長期的な増加傾向や減少傾向。
・循環変動:一定の周期で増減を繰り返す変動。
・不規則変動:上記以外の予期できない要因による短期的な変動。
→「地震や水害など自然災害の影響」などで発生する変動
です。
変動要因については、「季節要因指数」「トレンド要因指数」といったように、変動を指数化して用います。
不規則変動は本来予測が難しいため、使われることは少ないです。
6-1.予測方法
時系列分析にはいくつかの種類があります。
それぞれの分析方法は、前述したように複雑であるため、ここでは代表的な手法について概要のみ説明しておきましょう。
6-1-1.季節手法
季節によって増減するデータを予測するのに適した手法です。
たとえばコンタクトセンターの場合、「特定の季節・時期によく売れる家電(エアコンなど)の問い合わせ窓口」や、「ゴールデンウイーク前や年末年始前に申し込みが集中するツアー予約」など、多くのケースが考えられるでしょう。
この方法では、過去のデータ(コンタクトセンターの場合は過去のコンタクト数)を、
・季節性
・周期
・誤差
という要素にわけてそれぞれ分析、数値化し、それをもとに未来の数値を予測します。
季節手法の中でも、さらに以下の2つの手法があり、データの特性によってそれぞれ適した手法を用いることで、より予測の精度を高めることができます。
◎加法型季節平滑法:もとになるデータの数値が一定の範囲内で安定的に増減する場合に適しています。
◎積乗型季節平滑法:もとになるデータの数値が時系列に沿って増加傾向にある場合に適しています。
6-1-2.非季節手法
季節手法とは反対に、データの増減が季節の影響を受けない場合に適した方法が非季節手法です。
これにも複数の手法があり、
◎移動平均法:直近の一定期間の数値を平均化し、それをもとに未来の数値を予測します。
◎指数平滑法:もととなる時系列データに、過去から最近になるにつれて大きくなる重みづけ(=最近のデータほど重要度を高くする)をし、それをもとに未来の数値を予測します。
などが用いられます。
6-1-3.ARIMA(自己回帰和分移動平均)モデル
ARIMA(自己回帰和分移動平均)モデルは、
・過去のデータをもとに未来の数値を予測する
・過去のデータの予測値と実測値との誤差により、未来の数値を予測する
という2つの分析手法を組み合わせた方法です。
予測の精度が高く、さまざまな分野で用いられているものです。
6-2.時系列分析を簡単にできる「DataRobot」
以上のように、時系列分析は時間によって変化するデータから未来を予測するのに有効な方法で、コンタクトセンターにおいても精度の高いforecastを実現することができるものです。
が、その手法は複雑で、統計に関する理解も必要なので、残念ながら誰でも手軽にできるとは限りません。
そこでおすすめしたいのが、機械学習自動化AIプラットフォーム「DataRobot」です。
「DataRobot」は、DataRobot社が「優れた予測を素早く誰でも」という理念のもとに開発したソフトウエアで、AI(人工知能)が人間にかわって統計アルゴリズムを駆使し、さまざまな分析モデルで精度の高いforecastを導き出すことができるのが特徴です。
コンタクトセンターでは、forecastはもちろんオペレーターの応対品質予測や離職率予測、アウトバンド業務における獲得予測などにも活用できます。
AIに関する知識がなくても、簡単に導入できるのも利点です。
「DataRobot」についてのさらにくわしい情報は、以下の別記事をぜひ参照してください。
そして、トランスコスモスではこの「DataRobot」の導入をサポートしています。
・データの準備から運営までを一貫してサポート
・専属のデータサイエンティストが1名以上ついて伴走する
という当社独自のサポート体制で、より効率的で高品質なコンタクトセンター運営をお手伝いしますので、ぜひ一度お問い合わせください。
7.予測後の効果測定もかならず行う
以上のようなさまざまな手法でforecastを算出したら、それをもとに最適な人員配置をしてください。
と同時に、かならず行なってほしいのが「効果測定」です。
その人員配置は本当に最適かを、あとで検証するのです。
もし「人員が足りずに放棄呼が出てしまった」、あるいは逆に「コンタクト数に対してオペレーターが余っている時間帯があった」という場合は、forecastの精度が低かったということになります。
さらに精度が高い予測ができるよう、変動要因のデータを追加するなり、別の予測手法を試すなりする必要があるでしょう。
そうしてより最適な人員配置を目指していけば、あなたのコンタクトセンターはより効率的な運営ができるようになるはずです。
より精度の高いforecastを求めるなら、「DataRobot」の導入をご検討ください。 |
まとめ
いかがでしたか?
コンタクトセンター(コールセンター)におけるforecastについて、知りたいことがわかったかと思います。
では最後にもう一度、この記事の要点をまとめてみましょう。
◎コンタクトセンターの「forecast」とは「インバウンド(受信)のコンタクト数予測」
◎コンタクトセンターでforecastが重要視されるのは以下のことに必要であるため
・人員配置計画
・コストの適正化
◎コンタクトセンターのforecastを算出する方法は、主に以下の3種
・過去の平均値で予測する方法
・回帰分析で予測する方法(単回帰分析と重回帰分析)
・時系列分析で予測する方法
◎forecastを基にコンタクトセンターの人員配置を算出する手法として「アーラン式」がある
以上を踏まえて、あなたがコンタクトセンターの人員配置をより適正にできるよう願っています。