「VOCデータをビジネスで活用したいが、どうすればいい?成功した活用事例も知りたい」
「次の製品開発に対するコンセプトとして、どんなものが望まれているのか聞きたい」
この記事を読んでいるあなたが、VOCについてそんな疑問や悩みを持っているのではないでしょうか。
ビジネスにおいてVOCとは「Voice of Customer=顧客の声」の略で、「企業の製品やサービスを利用する顧客の正直な意見・感想」を指す言葉です。
【VOCの例】 ・コンタクトセンター(コールセンター)への問い合わせ など |
これらのVOCを収集、分析することで、企業は様々なメリットを得られるため、近年ビジネスシーンで非常に重要視されるようになりました。
そこでこの記事では、VOCについて知っておくべきことをわかりやすく解説します。
◎ビジネスにおける「VOC」とは |
最後まで読めば疑問の答えが得られるでしょう。
この記事で、あなたの会社がビジネスにおいてVOCを効果的に活用できることを願っています。
1.ビジネスにおける「VOC」とは何の略?
まず、ビジネスにおいてVOCと言われる場合、それはどんな意味でしょうか?
1-1.ビジネスにおける「VOC」とは「Voice of Customer=顧客の声」
ビジネスで「VOC」といえば、「Voice of Customer=顧客の声」の略で、「企業の製品やサービスを利用する顧客の正直な意見・感想」を指します。
VOCには、顧客から特定の企業に対して寄せられるものと、消費者が広く一般に向けて発信するものがあり、それぞれ以下のようなものです。
【顧客から特定の企業に対して寄せられるVOCの例】 【消費者が広く一般に向けて発信するVOCの例】 |
これらの「声」には、顧客がその企業、商品・サービスに対して抱いている、イメージ、期待、意見、要望、不満などが含まれています。
それを正しく収集・分析すれば、「この商品はどう改良すべきか」「どんな新サービスが求められているか」「自社はどんなイメージを持たれているか」などを可視化することができるため、ビジネスにおいてVOCを活用する企業が増えているのです。
1-2.コンタクトセンター(コールセンター)を利用したVOCマーケティングとは
ビジネスにおけるVOC活用の中でも、もっともよく行われる手法のひとつが、「コンタクトセンター(コールセンター)を利用したVOCマーケティング」です。
これは、企業が自社のコンタクトセンターを窓口としてVOCを収集し、それらのデータを分析することで、
・既存の商品やサービスの改善、改良 |
などを実施し、売り上げや利益の拡大を図るというマーケティング手法です。
コンタクトセンターをもっている企業は、単に顧客対応窓口として運用するだけでなく、そこに集まる貴重なVOCをぜひマーケティングに活用していきましょう。
これについてさらにくわしくは、以下の別記事も読んでください。
1-3.ビジネス以外にも環境問題において「VOC」という略語が使われる
ところで、実はビジネス用語以外にも「VOC」という略語が使われるシーンがあります。
それは、環境問題において「Volatile Organic Compounds=揮発性有機化合物」を指す場合です。
実際に、Googleで「VOC」を検索すると、「顧客の声」に関するサイトより「揮発性有機化合物」に関するサイトのほうが多く表示されています。(2024年5月現在)
2.VOCを集める7つの主な手法
さて、そのように重要なVOCですが、収集する手法は前述したコンタクトセンター(コールセンター)をはじめとして様々あります。
そこで、この章では主な方法を7つ挙げておきましょう。
・コンタクトセンター(コールセンター)を活用する |
上記のチャネルごとに、集まるVOCの特性も異なりますので、それもあわせて説明します。
2-1.コンタクトセンター(コールセンター)を活用する
まず、最も代表的な手法のひとつが「コンタクトセンター(コールセンター)を活用する」ことです。
コンタクトセンターには、日々多くの顧客から連絡が入ります。
また、コンタクトセンターから顧客へ発信をする場合もあります。
その内容は、問い合わせ、商品の注文・サービスの予約、要望、など多種多様で、それに個別に対応するのがコンタクトセンターの主な業務です。
一方でこれらの連絡内容は、すべて顧客から自社へ向けられた意見という貴重なデータでもあります。
それを活用しない手はないでしょう。
現在、コンタクトセンターはマルチチャネル化、オムニチャネル化が進んでいるため、VOCが集まるチャネルもひとつに限られません。
多くのセンターでは、以下の複数チャネルでVOCを集めることが可能でしょう。
― 電話チャネル |
電話チャネル
まず、従来のコールセンター時代から運用されてきた「電話チャネル」です。
コンタクトセンターに顧客から電話を入ったら、オペレーターが個別に対応し、終話後にその内容を記録します。
電話チャネルで集まるVOCの特徴は、まず「高い年齢層の割合が多い」ことでしょう。
以下グラフは、トランスコスモスが実施した「オムニチャネル利用実態調査2024」より、「問い合わせる際に一番最初に選ぶ手段(チャネル)」を年代別に聞いた結果です。
20代で電話を選ぶのは2割弱なのに対して、50〜60代は約4割、70代は半数以上を占めています。
出典:Cotra【オムニチャネル利用実態調査2024】
一方で、電話チャネルならではのもうひとつの特徴として、「情報量が多い」ことも挙げられます。
メールやチャットは文字だけの情報ですので、顧客側もコンタクトセンター側も言葉を選んでなるべく端的に必要なことを伝えようとします。
それに対して電話では、対話の中でより多くの言葉を発しますし、何より文字情報にはない「顧客の感情」という重要な情報が得られるのです。
最近では、顧客との対話を自動でテキスト化、要約する「音声認識」ツールや、AIが顧客の「感情分析」を行うツールも出ています。
これらを活用すれば、顧客からの膨大な入電内容を効率的にデータ化し、VOCとして活かすことができるでしょう。
電話チャネルでの | ・顧客からの入電内容をオペレーターが記録 |
電話チャネルで集まる | ・高い年齢層の割合が多い |
問い合わせフォーム・メール
企業の中には、公式サイトに問い合わせフォームを設けたり、問い合わせ専用のメールアドレスを掲載しているところも多いでしょう。
これらもVOC収集の重要なチャネルです。
前出のトランスコスモス「オムニチャネル利用実態調査2024」によれば、「問い合わせる際に一番最初に選ぶ手段(チャネル)」では「問い合わせフォーム」が全体の約20%(問い合わせメールも合わせると26%超)。
「最終的に解決した手段(チャネル)」は「問い合わせフォーム」が15%弱(問い合わせメールも合わせると約22%)でした。
つまり、問い合わせ全体の25%程度は問い合わせフォームやメールを利用しているわけです。
出典:Cotra【オムニチャネル利用実態調査2024】
多くのコンタクトセンターにおいて電話チャネルは営業時間内のみの受け付けですが、問い合わせフォームやメールなら24時間365日いつでも受け付けが可能です。
そのため、「時間内に電話をかけられない」という人、例えば平日の日中は仕事が多忙な人などからもVOCを集めることができます。
集め方は、電話チャネルと違って既にテキスト化されていますので、内容ごとに分類したり、特定のワードを抽出したりして整理するといいでしょう。
問い合わせフォームの場合は、集めたいデータについての質問項目を追加したり、回答を選択式にしたりすることで、よりデータとして利用しやすくすることも可能です。
また問い合わせフォーム・メールの特徴は、利用する年代に偏りがなく、どの年代においても20%程度利用されています。
出典:Cotra【オムニチャネル利用実態調査2024】
問い合わせフォーム・メールでの | ・既にテキスト化されているのでそのまま活用 |
問い合わせフォーム・メールで | ・若い年齢層の割合が多い |
チャット・チャットボット
最近は、チャットやチャットボットを導入しているコンタクトセンターも多いでしょう。
これらは顧客とオペレーター又はボットがリアルタイムで文字情報をやりとりするため、「電話で人と話すのは苦手」という人にも、「問い合わせフォームやメールだとすぐに返信がもらえなくて不便」という人にも対応できるチャネルとして注目されています。
集め方は、こちらも顧客とのやりとりが文字データで入力されるので、そのまま活用可能です。
また、やりとりの前後にこちらから聞きたいこと(自社サービスへの満足度など)を質問することもできますので、特に集めたいVOCがあればそこで質問を追加するといいでしょう。
チャットやチャットボットで集まるVOCの特徴としては、前出のグラフを見るとやはり「若い年齢層の割合が多い」ようです。
また、自社の公式サイト上での行動履歴を紐づけることができるため、「どの程度自社製品を理解した上で問い合わせているか」「自社の何に興味を持っているか」「どのページで離脱率が高いか」などを知るのにも役立ちます。
チャット・チャットボットでの | ・すでにテキスト化されているのでそのまま活用 |
チャット・チャットボットで | ・若い年齢層の割合が多い |
2-2.SNSから抽出する
コンタクトセンター以外で、手軽に多くのVOCを収集できるのが、「SNSから抽出する」方法です。
「X(旧Twitter)」や「Instagram」、「facebook」などのSNSから、自社について、自社製品やサービスについて触れている書き込みを抽出し、VOCとして利用します。
各SNSの検索機能を使って、社名や商品名などで検索することもできますが、それだと関係ない書き込みも大量に出てきてしまうため、有用なデータだけ抜き出す手間がかかるでしょう。
その点、特定の情報のみを抽出する「テキストマイニング」ツールや、ソーシャルメディアの情報を収集・分析できる「ソーシャルリスニング」ツールなどを用いれば、必要なデータを自動的に集めることが可能です。
SNSから抽出するVOCの最大の特徴は、「より本音に近い意見」が、「より幅広い消費者から」集まることでしょう。
というのも、コンタクトセンターに寄せられる声は、顧客が電話やWebをつなぐ手間をかけ、名前などの個人情報も明らかにして伝えてくるものです。
そこには「いますぐ回答が欲しい」「どうしても言いたい」といった、ある程度強い動機や意思が介在します。
それに対してSNSの書き込みは、企業向けではなく「広く一般に向けて言いたい」、あるいは「なんとなく」発信される上に、その多くは匿名です。
つまり、熱量は低めだけれど、言いたいことをそのまま書いている可能性が高いでしょう。
中には自社や自社製品へのマイナスな印象による忌憚ない声もあるはずで、ファン以外のVOCを広く集めるには適していると言えそうです。
SNSでの | ・各SNSの検索機能を利用して、社名や商品名などを検索する |
SNSで集まる | ・より本音に近い意見が集まりやすい |
2-3.顧客アンケートを実施する
SNSとは反対に、「自社や自社製品に興味が深い人からの意見が欲しい」という場合に適しているのが、「顧客アンケート」です。
既に自社に問い合わせ履歴があったり、購入・利用履歴があったりする「既存顧客」に向けて、聞きたいことをアンケート形式で質問します。
集め方は様々で、
・来店した人にアンケート用紙に回答してもらう |
などの方法が考えられるでしょう。
この方法だと、企業側がVOCの発信者を選ぶことができます。
例えば、顧客名簿の中から「自社製品を実際に1回以上利用したことがある人」に限定してアンケート送れば、使った上でのリアルな感想のみが集まります。
つまり、企業側が知りたいVOCを、それに適した人のみから収集できるわけです。
そのため、具体的な商品・サービスの改善をしたい場合などには大いに役立つでしょう。
顧客アンケート | ・来店した人にアンケート用紙に回答してもらう |
顧客アンケートで | ・企業側がVOCの発信者を選ぶことができる |
2-4.顧客にインタビューする
また、「顧客にインタビューする」という方法もあります。
これは、特定の顧客を集めて実際に話を聞くもので、顧客アンケートをより掘り下げたVOCを集めることが可能です。
集め方は、まず顧客名簿から抽出した人や、店舗を訪れた人に声かけして、こちらが聞きたい質問に答えてもらいます。
ひとりに対して深く話を聞く「デプスインタビュー」と、グループで意見を出し合ってもらう「グループインタビュー」があり、それぞれ以下のような特徴があります。
得たいVOCの内容によって各々の方法を使い分けて実施する必要があります。
デプスインタビュー | ・聞きたいことをより深く、じっくり聞くことができる |
グループインタビュー | ・複数人で話し合うことで、新たな発見や意見が生まれる可能性がある |
この手法の特徴は、なんといってもより深く濃度の高いVOCを集められることです。
コンタクトセンターやSNSのように、他の目的のついでに発せられるVOCではなく、企業側も顧客側も最初から「VOCを集める」ことを目的としているため、知りたい情報は何でも聞くことができます。
また、試作品や開発途中の商品・サービスに対する意見を集めたい場合など、広く一般には聞きにくいときには、特定の顧客だけを選んでインタビューするといいでしょう。
実際に商品に触れて、こちらの説明を聞いた上で、率直なVOCを集めることができるはずです。
顧客インタビュー | ・1対1の「デプスインタビュー」で深く話を聞く |
顧客インタビューで | ・集まる情報が深く、濃度が高い |
トランスコスモスでは、コンタクトセンターを活用したインタビューサービス「tra:Cii(トレイシー)」を提供しています。
tra:Cii(トレイシー)は Customer interview for insightの略でコンタクトセンターを活用した自社顧客へのインタビューサービスです。
事前に同意を得た顧客から、「ビジネス課題」に対してテレインタビューを行います。
顧客との会話からCX/DX施策の提案につながるインサイトを抽出します。
詳しくは以下ソリューションページをご覧ください。
2-5.市場調査を行う
最後の手法は、「市場調査」です。
これは、自社の顧客に限らず広く一般の消費者から意見を集めるもので、「マーケットリサーチ」とも呼ばれます。
具体的な方法は、
・街頭で声かけして行う「アンケート調査」 |
などがあります。
この方法の特徴は、なんといっても上記の6つの手法のどれよりも幅広い層からVOCを得られる点でしょう。
自社について「あまり知らない」「まったく知らない」「製品・サービスを利用したこともない」という人からもアンケートが集まるからです。
また、調査の母数を大きくすれば、顧客にターゲットを限定したVOCと比較してより偏りのない、中立的なVOCを得ることができるでしょう。
市場調査での | ・街頭で声かけして行う「アンケート調査」 |
市場調査で集まる | ・幅広い層の意見が含まれる |
3.ビジネスにおけるVOCの活用成果事例
VOCの集め方はわかりました。では、集めたVOCは、実際にどのように活用することができるでしょうか?
ここではトランスコスモスが携わった成功事例をいくつかご紹介しましょう。
3-1.【事例①】セブン&アイ・ホールディングス 様
「セブンイレブン」や「イトーヨーカドー」などを参加にもつ「セブン&アイ・ホールディングス」様の課題は、
・通販サイトでの利便性を向上させたい |
ということでした。
そこで、トランスコスモスが提案したのは以下の施策です。
1)VOC(顧客の声)活用
顧客視点でチャットボットのメンテナンスを継続的に実施
チャットや電話対応で蓄積された「よくある問い合わせ」や、顧客の関心度が高い内容に関してシナリオを見直して、定期的にチャット内FAQに反映することで、回答精度・解決率を向上
2)オペレーター改善意見の活用
顧客の不満体験を削減するために、VOCの収集・分析に加え、顧客コミュニケーションの担い手であるオペレーターの改善意見を収集し、業務改善サイクルを構築
必要に応じて、対話による双方向で柔軟なコミュニケーションを業務フローに導入することで、顧客感情を「マイナスからプラスへトランスフォーメーション」させることに貢献
その結果、以下のような成果をあげることができました。
VOC活用の成果 |
◎問い合わせ全体の30%をAIチャットボットで解決できるようになり、カスタマーセンターの入電ピーク抑制を実現 ◎収集した不満体験を基に業務フロー見直しを実現、不満体験起因で発生した商品キャンセルを防止し、顧客ロイヤリティ向上を実現 |
3-2.【事例②】株式会社協和 様
エイジングケアブランド「fracora(フラコラ)」を展開する「株式会社協和」様では、
・顧客コミュニケーションをオンライン化していくためのデジタルシフト支援、チャネル整備を1社に任せたい |
という課題をもっていました。
そこで、トランスコスモスでは以下のサービスを提供しました。
1)問い合わせの導線整備とチャネル拡充: 電話やメールに加えて、サポートコンシェルジュ(V-IVR)と有人チャット・チャットボットを導入、顧客ニーズに合わせた導線を整備
2)デジタルチャネルでの誘導施策: 電話応対中、口頭で伝えにくい内容の補完対応としてSMSを活用した情報発信、営業時間外でのチャット誘導や会員誌や商品明細書へV-IVRのQRコードの記載、有人チャット対応の体験キャンペーン企画・実施
3)VOC活用、チューニングの実施: 利用率拡大のため、実際利用した顧客からのアンケートを基にチャットボットシナリオ、チャット応対内容の改善を提案、顧客嗜好やチャネルの特性に合わせたサポート導線を整備
その結果、以下のような成果がありました。
VOC活用の成果 |
◎当初はメール中心で6%だったデジタルチャネルでの問い合わせ比率を、マルチチャネル化で20%まで拡大 ◎更にVOC活用、チューニングの実施、デジタルチャネルへの誘導施策により40%まで拡大させ、顧客の利便性を向上 |
4.VOCマーケティングがビジネスに与える7つのメリット
ここまでで、ビジネスにおけるVOCとは何かが具体的にイメージできたかと思います。
では、これらのVOCがなぜ重要なのでしょうか?
これらを集めることで、どんなメリットがあるのでしょう?
それは主に、以下の7点が考えられます。
・商品・サービスを改善・改良できる |
それぞれ説明しましょう。
4-1.商品・サービスを改善・改良できる
第一のメリットは、「商品やサービスを改善・改良することができる」点です。
VOCを分析すると、顧客が自社の商品やサービスに対して何を求めているのか、何を期待しているのかといったニーズを正しく把握することができます。
また、「もっとこうなればより満足」「ここが不満」といった課題もわかるでしょう。
これらを踏まえて商品を改善・改良することで、顧客が本当に欲しいと思っている商品・サービスに近づけることができるのです。
4-2.マーケティング戦略の軸になる
また、具体的な改善点ではなく、商品・サービスのターゲット層全体のニーズや消費傾向などもVOCから浮き彫りにできるため、それをもとにマーケティング戦略を練ることもできます。
例えば、企業としては20代向けに開発したつもりの商品でも、VOCを分析したところ、全体では30〜40代により売れていることがわかったとしましょう。
その場合、マーケティング戦略を修正する必要が出てきます。
・10〜20代の利用が多いSNSではなく、30〜40代がよく利用するSNSをマーケティングに活用する |
などが考えられるでしょう。
このように、マーケティング戦略の方向性を定めるためにも、VOCは役立ちます。
4-3.自社製品・サービスのアピールポイントが明確になる
VOCは、テキストデータとして集計・分析することで、顧客の意見を数値化することができます。
その数値の中でもポジティブなものは、自社製品や自社サービスのアピールに利用することが可能です。
もし、「この商品に満足しましたか?」というアンケートで「満足」と答えた人の率が高ければ、広告や営業トークで「利用者の◯割が満足」と謳うことができます。
4-4.顧客のニーズやインサイトを知ることができる
さらに、VOCからは既存の商品・サービスに関する具体的な意見だけでなく、もっと広い意味での顧客ニーズや、さらに深いインサイトを知ることもできます。
例えば、VOCを分析することで、顧客の「最近の関心事」や「困っていること」などがわかったとしましょう。
企業はその関心事に役立つ商品や、困りごとを解決するサービスを開発すれば、ヒットを生み出せる可能性があるわけです。
このように、表面化していない顧客の要望や需要を掘り起こすには、VOCを表面的に集計するだけでなく、深く分析することが必要です。
その分析方法については、「6.VOCを収集・分析する方法 5ステップ」で説明しますのでそちらを参照してください。
4-5.顧客の行動理由がわかる
VOCからは、「顧客の行動理由」を知ることもできます。
電話対応や問い合わせフォーム、アンケートなどで「なぜこの商品を購入したのか」「なんのためにこのサービスを利用したのか」といった動機を質問することもできます。
逆に、「なぜこのサービスを解約するのか」「どうして他社製品に乗り換えたのか」といった、不満の原因を探ることも可能です。
ただ購入数や解約率といった数値=定量データを出すだけでも、VOCは事業に役立ちますが、行動理由=定性データまで把握できれば、顧客のニーズをより明確化できるでしょう。
4-6.顧客満足度が向上する
前述したように、VOCからは顧客が自社製品やサービスに対して抱いている不満や悩みもわかります。
それに対して迅速に対応することで、顧客の不満を解決し、結果として顧客満足度の向上が期待できるのもメリットです。
例えば、「商品Aの使い方がわかりづらい」という問い合わせが多かったとします。
そのVOCは、「4-1.商品・サービスを改善・改良できる」で説明したように商品の改良につなげることもできますが、それにはある程度時間がかかるでしょう。
その場合、ひとまず商品の使い方動画を公開したり、チャットボットで使い方をわかりやすく説明したりといった対応をとることで、顧客の不満をすばやく解決することができます。
不満が解消されれば、結果として顧客満足度の向上が期待できるというわけです。
4-7.従業員のモチベーションが向上する
最後のメリットは、その企業で働く従業員のモチベーションを向上させられることです。
VOCを定期的に集計・分析してビジネスに活用すると、商品の売り上げや顧客満足度などの数値が向上していくはずです。
それを随時社内で共有することで、従業員は「自社の商品が顧客の役に立っているんだ」「顧客や社会に貢献しているんだ」という実感を得ることができるでしょう。
あるいは、VOCの中から特定のコメントを社内で回覧するのも効果的です。
「この商品のおかげでこんなに助かった」「このサービスを利用した際に、このような対応をしてもらってうれしかった」といった具体的なエピソードを知れば、顧客に感謝される喜びが生まれ、仕事へのモチベーションも高められます。
5.VOCマーケティングが効果的な企業
このように、VOCはビジネスの様々なシーンで活用できるものです。しかし、すべての企業が同じように効果が得られるとは限りません。
では、どんな企業であればVOCマーケティングを効果的に実施できるでしょうか?
それは、以下のような企業です。
・リピート率、顧客満足度が低い企業 |
5-1.リピート率・顧客満足度が低い企業
第一に、リピート率や顧客満足度が低い、なかなか向上しないという企業は、ぜひVOCマーケティングを実施してください。
リピート率や顧客満足度が上がらないのは、ニーズに正しく応えられていないことや、商品やサービスの印象が弱く、顧客の心に残らないことなどが原因と考えられます。
その点VOCを分析すれば、「4.VOCマーケティングがビジネスに与える7つのメリット」で挙げたように顧客のニーズや不満・悩み、行動理由など様々なことがわかります。
つまり、顧客についてより深く、多角的に理解することができるわけです。
これをもとに、マーケティング戦略を立て直したり商品やサービスを改良したりすれば、顧客満足度が上がり、リピートしてくれる顧客も増えるでしょう。
5-2.新商品・新サービスを開発したい企業
また、新たな商品やサービスを開発したいと考えている企業にも、VOCマーケティングは有効です。
まず、顧客の潜在ニーズやインサイト=顧客自身も自覚していない心情を掘り起こすことで、それを満たすような「世の中にまだ存在していない商品・サービス」のアイディアを得ることができるかもしれません。
さらに、開発した新商品・新サービスを発売する前に、顧客に試用してもらってVOCを集めることもできます。
実際に使ってみた人から、「使いやすさ」「デザイン」「価格」などについてどう感じるか意見を集め、発売前に修正してもいいでしょう。
あるいは、年代ごとのVOCを比較して、想定しているターゲット層が合っているかを確認したり、PR方法の効果を検証したりすることも可能です。
この場合は、市場調査で幅広い消費者からのVOCを集めましょう。
6.VOCを収集・分析する方法 5ステップ
VOCの集め方や、VOCマーケティングが適しているケースがわかりました。
が、実際にはどのように活用すればいいのでしょうか?
VOCをマーケティングに活かすためには、適切な方法で集計し、分析する必要があります。
具体的には、以下の5段階の流れで進めましょう。
それぞれ説明します。
6-1.目的を明確にする
まず、「何のためのVOCを分析するのか」という目的を明確にしましょう。
例えば、
「顧客満足度を向上させたい、そのために何が課題かを知りたい」
「競合他社と比較して、自社の強み、アピールポイントを差別化したい」
「新しい商品やサービスを開発したい、そのためターゲット層のニーズを掘り下げたい」
などです。
6-2.調査項目・収集方法・分析方法を決める
次に、目的のためにはVOCを、
・どんな項目について集めるか |
を決めましょう。
集め方は、「2.VOCを集める7つの主な手法」に説明したように、チャネルごとに以下の特色がありますので、適した方法を選びましょう。
収集方法 | 集め方 | 集まるVOCの特徴 | |
コ | 電話 | ・顧客からの入電内容をオペレーターが記録 | ・高い年齢層の割合が多い |
問い合わせフォーム | ・すでにテキスト化されているのでそのまま活用 | ・若い年齢層の割合が多い | |
チャット・ | ・すでにテキスト化されているのでそのまま活用 | ・若い年齢層の割合が多い | |
SNS | ・各SNSの検索機能を利用して、社名や商品名などを検索する | ・より本音に近い意見が集まりやすい | |
顧客アンケート | ・来店した人にアンケート用紙に回答してもらう | ・企業側がVOCの発信者を選ぶことができる | |
顧客 | ・1対1の「デプスインタビュー」で深く話を聞く | ・集まる情報が深く、濃度が高い | |
市場調査 | ・街頭で声かけして行う「アンケート調査」 | ・幅広い層の意見が含まれる |
分析方法には、顧客が商品やサービスのどの点を重要視していて、どの程度満足しているかを座標軸で見える化する「顧客満足度分析(CSポートフォリオ分析)」や、顧客がコールセンターになぜ電話してきたか、という理由を集計してグラフ化する「コールリーズン分析」などがあります。
コールリーズンについては別の記事で詳しく解説していますので、こちらの記事も参考にしてください。
6-3.データを収集する
前項で決めたVOCの項目を、同じく決めた方法で収集しましょう。
膨大な量のVOCを人力で集めて整理、集計するのは大変な手間です。
そこで多くの企業では、以下のようなITツールを用いています。
・テキストマイニングツール:テキストデータから必要な情報を抽出、分析する |
6-4.分析する
集めたVOCを分析します。
ここでも前項で挙げたような分析ツールを利用するといいでしょう。
6-5.業務に活用する
分析結果がわかったら、実際の業務に活用しましょう。
・商品やサービスの課題が見えたら、それを改善する |
などです。
VOCの分析については、別記事でさらにくわしく説明していますので、そちらもぜひ参照してください。
7.VOCマーケティングを成功させるための4つのポイント
VOCについて、ひと通り説明しました。
最後にもうひとつ、VOCをうまく活用してマーケティング戦略を成功に導くためのポイントを挙げておきましょう。
・VOCの収集は複数チャネルで行う |
7-1.VOCの収集は複数チャネルで行う
第1のポイントは、「VOCの収集は、ひとつのチャネルに限らず複数チャネルで行う」ことです。
「2.VOCを集める7つの主な手法」でも説明したように、電話、問い合わせフォーム、SNSなどのチャネルごとに顧客の属性や集まるVOCには傾向があります。
そのため、いずれかひとつだけでVOCを収集すると、どうしても意見に偏りが生じる恐れがあります。
なるべく偏りのない公正なVOCを得るには、特性の異なる複数のチャネルから収集する必要があるのです。
7-2.PDCAサイクルに組み込む
第2のポイントは、「VOCの収集・分析は1回だけでなく、PDCAサイクルに組み込んで継続的に実施する」ことです。
顧客のニーズは、社会の変化や情勢、流行など様々な影響を受けて常に変化します。
それを随時汲み取ってマーケティング活動に活かさなければなりません。
そこで、「VOCを収集する→分析する→業務に活かす→それに対するVOCを収集する→分析する→さらに改善する……」というように、繰り返していく必要があるのです。
具体的には、以下のようなPDCAサイクルを回していくといいでしょう。
7-3.量が多すぎる場合はITツールなどを活用する
VOCは、場合によっては膨大な量が集まります。
特にコンタクトセンター(コールセンター)を利用する場合、電話チャネルからは音声で、問い合わせフォームやメール、チャットからはテキストでと、型式の異なるVOCが毎日蓄積されていきます。
これを人力で整理、管理して分析するのは大変な作業です。
そこで、ITツールを活用するといいでしょう。
前述したテキストマイニングツール、顧客分析ツールなど、VOC分析ができる様々なツールがありますので、自社に適したものを選んで使いましょう。
トランスコスモスでは、顧客接点チャネルにおける様々なデータを統合し、お客様事業におけるCX最適化を支援するダッシュボードInsight BIをご用意しています。
Insight BIを活用することにより、各チャネル単体で分析→改善していたものを一元管理し、 全体最適視点でCX向上施策の実行が可能になります。
詳しくはソリューションページをご覧ください。
7-4.適切に分析できる人材を用意する
VOCを適切に収集、管理できたとしても、肝心の分析が正しくできていなければ意味はありません。
データ分析を行うことができる人材を用意した上で、VOCマーケティングに取り組みましょう。
もし自社内に適した人材がいなければ、外注するという手もあります。
VOC分析を請け負うサービスを提供している企業や、分析から実際の活用までコンサルティングしてくれる企業などもありますので、利用を検討してみるといいでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
VOCについて、疑問や悩みが解消されたのではないでしょうか。
ではあらためて、記事の要点を押さえておきましょう。
◎ビジネスにおける「VOC」とは
「Voice of Customer=顧客の声」の略で、「企業のサービスや商品を利用する顧客の正直な意見・感想」のこと
◎コンタクトセンター(コールセンター)を利用したVOCマーケティングとは、
「企業が自社のコンタクトセンターを窓口としてVOCを収集し、それらのデータを分析すること」
◎VOCを集める7つの主な手法
・コンタクトセンター(コールセンター)を活用する |
◎VOCマーケティングがビジネスに与える7つのメリット
・商品・サービスを改善・改良できる |
◎VOCマーケティングが効果的な企業
・リピート率、顧客満足度が低い企業 |
◎VOCを収集・分析する方法 5ステップ
◎VOCマーケティングを成功させるための4つのポイント
・VOCの収集は複数チャネルで行う |
以上を踏まえて、あなたの会社がVOCをビジネスにうまく活用し、効果をあげられるよう願っています。