「コールセンターで働いていて、『応対品質が重要』と言われるけれど、応対品質とはどういうこと?どうやって調べればいい?」
「自社のコールセンターの応対品質を向上させたいが、どのような施策で改善できるだろうか?」
コールセンターに勤務していて、そのような疑問を抱いている方も多いことでしょう。
コールセンターにおける「応対品質」とは、端的に言えば「オペレーターから顧客への対応の質=適切な対応ができているかをはかる指標」のことです。
オペレーターが電話対応をするときには、基本的な知識や正確性などの業務遂行力と、言葉遣いや傾聴力、共感力といったソフト面のどちらも持ち合わせている必要があります。
これらの要素が十分に満たされていれば「応対品質が高い」と言えますし、欠けているものがあったり、レベルが低かったりする場合は「応対品質が低い」ことになるでしょう。
応対品質が低いと顧客が不満を抱える可能性があり、顧客満足度の低下やブランドイメージのダウンに繋がります。
逆に言うと応対品質を高い基準でキープできていれば、顧客満足度向上や円滑なコール運営ができるようになるのです。
だからこそ、応対品質がどれくらいのレベルにあるのか調査をして、応対品質が向上するように改善していくことが欠かせません。
<応対品質向上の5つの施策>
この記事では電話窓口における応対品質を説明しており、
◎応対品質とは |
をまとめて解説していきます。
最後まで読めば、応対品質とはどのようなものか把握でき、応対品質が向上するように改善できるはずです。
応対品質はコールセンターの品質を測る重要な指標なので、ぜひコールセンター運用に活かせるようにしましょう。
1.応対品質とは
冒頭でも解説しましたが、「応対品質」とは「コールセンターにおけるオペレーターから顧客への対応の質=適切な対応ができているかをはかる指標」のことです。
コールセンターの管理者は、オペレーターが電話対応に必要な「業務遂行力」と、言葉遣いや共感力、提案力などの「ソフト面」においてどのレベルにあるかを総合的に把握し、そのレベルが顧客にとって快適に利用できる品質基準に達しているのかを確認します。
「3.応対品質の評価方法」で詳しく解説しますが、応対品質を評価するには下記のような4つの方法があります。
「応対の受け答えは迅速か」「顧客のニーズに合う情報を提供できているか」「顧客に寄り添うフレーズを利用できているか」など、コールセンターごとに重要視しているチェック項目を設けて評価していきます。
応対品質が低いと、
・コールセンターに電話をしても、目的達成や課題解決ができない |
など、顧客の不満や苦情の原因となり、顧客満足度の低下を招いてしまいます。
逆に応対品質が高ければ、顧客が安心して問い合わせできる環境を作ることができ、顧客満足度の向上やブランドイメージのアップに繋がるのです。
コールセンターを運営していく上で、応対品質の向上は重要な課題となるため、自社のコールセンターの応対品質を正確に把握して改善していくことが求められています。
2.応対品質の向上が重要な4つの理由
「応対品質の向上は、本当に必要なの?」と疑問に感じる方もいるでしょう。
そのような人のために、まずは応対品質の向上が重要だと言える理由として、以下の4点を挙げておきましょう。
・苦情などのリスクを避けられる |
なぜ応対品質を向上させる必要があるのかがよく理解できるはずですので、ぜひ以下を読んでみてください。
2-1.リスクを避けられる
オペレーターの応対品質を向上させることで、苦情や顧客満足度低下などのリスクを避けられます。
コールセンター専門誌を発行している「コールセンタージャパン」が、企業の コールセンターを利用した消費者にアンケートを実施したところ、下記のような不満点があることが分かりました。
参考:コールセンタージャパン「コールセンター顧客調査2018」
上位はコールセンターのシステムや運営方法に関するものですが、
・オペレーターの知識不足 |
といった応対品質に関わる部分も不満点に挙げられています。顧客に不満が残る対応を続けていると、後に苦情や顧客満足度の低下を招くでしょう。
逆に考えれば、応対品質を向上させることで顧客の不満を減らし、苦情などのリスクを未然に防ぐことができるというわけです。
2-2.企業やブランドのイメージアップに直結する
コールセンターは顧客と直接コミュニケーションが取れるので、企業やブランドの顔となる業務だと言っても過言ではありません。
コールセンターの応対品質が低いと、「冷たい印象を受けた」「ていねいに説明してもらえなかった」と捉えられて、企業やブランドのイメージダウンを引き起こします。
近年では、どの企業も自社の「ブランディング」や「ファン作り」を重視しており、そのために顧客接点全体の品質維持向上を推進しています。
コールセンターも単なる応対窓口ではなく、企業のイメージを左右する重要な役割を担っているのです。
少し古いデータですが、トランスコスモスが2017年に実施した「消費者と企業のコミュニケーション実態調査」では、消費者が企業のコミュニケーションに求めるものとして下記のような項目があがりました。
つまり、コールセンターの顧客は
・無料で対応してもらえること |
を望んでいることが分かります。この中で料金設定以外の項目は応対品質の向上でカバーすることが可能です。
コールセンターの応対品質を向上させれば、顧客が求めているようなコミュニケーションが取れるようになり、最終的に企業やブランドのイメージアップに繋がるでしょう。
2-3.業務改善、業務効率化につながる
さらに応対品質の向上は、 コールセンターの業務改善や業務効率化に繋がります。
応対品質を定期的に測定し管理するようになると、オペレーターの質をある程度均一化できます。応答速度のアップや明確な回答の提示などが期待でき、業務効率化ができるでしょう。
また、「3.応対品質の評価から改善までの5ステップ」でも詳しく解説しますが、応対品質を測定すると、コールセンターの課題やオペレーターひとり一人の改善点がよく分かります。
現在の課題を正確に把握しその解消に努めることで、業務改善ができ、より理想的なコールセンターに近づけるようになるのです。
2-4.優良顧客を増やすことができる
最後の利点は、応対品質の向上によって「優良顧客」を増やせることです。
「優良顧客」とは、企業にとって売り上げに貢献してくれるいわゆる「お得意さま」のことで、「ロイヤルカスタマー」とも呼ばれます。
製品やサービスをたびたび利用してくれたり、高額な買い物をしてくれたりするため、多くの企業では「優良顧客を増やすこと」を重視しています。
前述したように、企業の「顔」でもあるコールセンターで、質の良い応対を受けた顧客は、その企業に対する評価を高め、優良顧客になってくれる可能性が高まるでしょう。
さらには、家族や友人にその企業の製品やサービスを勧めてくれるケースも期待できます。
これらのメリットを踏まえると、応対品質の向上は、コールセンターをスムーズに運営していく上でも、欠かせないものだと言えるのです。
3.応対品質の評価方法
自社のコールセンターの応対品質はどの程度なのかは、チェックをしてみないと分かりません。応対品質の主な評価方法としては、下記の4つが用いられています。
それぞれどのような方法なのか確認してみましょう。
3-1.モニタリング
「モニタリング」とは、オペレーターの電話対応をチェックして、回答のスキルや顧客への話し方、マナーなどを評価する方法です。
モニタリングは自社のスタッフが一定の基準をもとに評価する場合と、応対品質チェックの代行をしている業者に依頼する場合があります。
応対品質の評価方法として一般的に用いられており、定期的に実施することでオペレーターひとり一人の応対品質の水準を把握できます。
モニタリングは、
・リアルタイムモニタリング |
の2つに分かれるので、それぞれどのような方法なのかご紹介します。
リアルタイムモニタリング
「リアルタイムモニタリング」は、オペレーターが顧客対応をしている様子を見ながらリアルタイムでチェックする方法です。
顧客への臨機応変な対応が分かるのはもちろんのこと、オペレーターの表情や問い合わせ内容の検索方法といった実際に現場にいるからこそ把握できる部分を確認できるところが特徴です。
他の評価方法ではこのような部分は確認できないため、より具体的に問題点や課題を洗い出せるという利点があります。
一方で、録音でのモニタリングとは異なりオペレーターの対応を何度も聞き直せないため、評価担当者は、1つの通話に集中して耳を傾ける必要があります。また、評価項目が多いとその1回ですべての評価をつけるのが難しく、適切な評価が難しくなるところがデメリットといえるでしょう。
やり方によってはオペレーターが常に見られているというプレッシャーの中で電話対応をしなければならないため、業務に支障が出る恐れがあります。
オペレーターのプレッシャーを軽減するためには遠隔でモニタリングをする方法をとるとよいでしょう。
このように、リアルタイムモニタリングは
・リアルタイムでのオペレーターの対応を細かく評価したい |
という場合に向いています。
リアルモニタリング | |
メリット | 現場でリアルタイムに評価するからこそ、表情や対応方法、通話前後の処理方法などを細かくチェックできる |
デメリット | ・1つの通話に集中して耳を傾ける必要があり、多くの評価項目をチェックするのが難しい |
利用をおすすめする | ・リアルタイムでのオペレーターの対応を細かく評価したい |
録音によるモニタリング
録音によるモニタリングは、オペレーターの対応を録音した音声データをもとに応対品質を評価する方法です。
コールセンターに電話をすると「この通話は応対品質向上のために録音しております」といった旨のガイダンスが流れることがありますが、ガイダンスの案内通りオペレーターと顧客の会話を録音して応対品質をチェックしていきます。
録音をすることで何度でも聞き直すことができ、オペレーターの癖や通話品質を細かく評価できるところが特徴です。また、データは録音されているためある程度余裕を持って柔軟に調査できるところもメリットだと言えるでしょう。
デメリットとしては、リアルタイムモニタリングのように表情や通話前後の様子を把握できないところです。あくまでも通話での声や顧客とのやり取りをもとに、評価することになります。
録音によるモニタリングは最も一般的な方法なので、
・初めてモニタリング評価をする |
という場合は、録音によるモニタリングを検討してみてください。
録音によるモニタリング | |
メリット | オペレーターの通話を何度も聞き直せるので、癖や通話品質を細かく評価できる |
デメリット | リアルモニタリングと比べると、通話前後の様子は把握できない |
利用をおすすめする | ・初めてモニタリング評価をする |
3-2.ミステリーコール
「ミステリーコール」とは、調査業者から依頼を受けた第三者が顧客のふりをしてオペレーターの応対品質を評価する方法です。
百貨店や飲食店では、覆面調査員が顧客として店舗に出向きサービスや接客の調査をしますが、それをコールセンターで行うのがミステリーコールだと考えると分かりやすいでしょう。
ミステリーコールは調査業者に依頼をするのが一般的で、依頼を受けた調査業者が該当するコールセンターに電話をかけます。
事前に顧客のシナリオやシチュエーション、オペレーターの評価基準を設定し、オペレーターと実際に通話をしながら評価をしていきます。
ミステリーコールのメリットは、「顧客の視点から評価ができるので、顧客にとっての不満点を見つけやすい」ところです。録音データや通話を聞いているよりも、リアルな視点で判断できるでしょう。
また、「電話のつながりやすさ」、「IVR分岐のわかりやすさ」などのオペレーターに繋がる前の部分を含めて評価できるところもメリットといえます。
デメリットとしては、ミステリーコール業務を業者に依頼することになるので、他の評価方法よりもコストがかかる点が挙げられます。
・顧客目線で応対品質を評価したい |
という場合は、ミステリーコールを検討してみてもいいかもしれません。
ミステリーコール | |
メリット | ・顧客の視点から評価ができるので、顧客にとっての不満点を見つけやすい |
デメリット | 業者に依頼することになるので、他の評価方法よりもコストがかかる |
利用をおすすめする | ・顧客目線で応対品質を評価したい |
3-3.アンケートサービスを利用する
応対品質の評価をするための「アンケートサービス」とは、オペレーターとの電話が終わった後に、顧客に対してアンケート回答を依頼する方法です。
アンケートサービスには、
・後日、顧客にアンケートのための電話をかける |
という方法があります。
実際にオペレーターと通話をした顧客がアンケート項目に沿って評価をするので、顧客自身がどのような印象を受けたのか、実態を把握できるところが特徴です。
それにより、コールセンターの応対品質向上の方針や取組みと顧客満足とのギャップの有無を確認することができます。
たとえば、コールセンターの応対品質向上の重要ポイントとして「業務遂行力」の向上に力を入れて取組みをしていたとします。しかし、アンケートを行ったところ顧客は「共感力」を求めていたということが発覚し、取組みの内容と顧客の要望が異なっていたということがわかりました。
その場合は、顧客のニーズに合わせて、方針転換の検討が必要となります。
デメリットとしては、アンケートではオペレーターひとり一人の応対品質を評価しにくいところです。コールセンター全体の応対品質を把握することはできますが、限られた数のアンケート結果だけでは適正に個人の評価ができるとはいいにくいでしょう。
また、アンケートは必ず回答が得られるとは限らないため、ある程度の回答数が得られるまで時間を要する可能性があります。
・モニタリングなど他の評価結果と併せて顧客のリアルな声を把握したい |
という場合は、アンケートサービスを利用してみるといいでしょう。
アンケートサービス | |
メリット | ・顧客がどのような印象を受けたのかリアルな声が把握できる |
デメリット | オペレーターひとり一人の応対品質を評価しにくい |
利用をおすすめする | ・モニタリングなど他の評価結果と併せて顧客のリアルな声を把握したい |
3-4.音声認識技術により自動評価する
ここまで3つの方法を挙げましたが、いずれの評価方法も労力と時間がかかります。そのため、すぐにコールセンターの応対品質を把握したいと思っても、そうはいかないのが現状でした。
そこで最近では、「音声認識技術を用いたサービス」を導入することで、応対品質評価を一部自動化するケースが出てきています。
音声認識技術を導入すると、下記のようなことができるようになります。
①オペレーターの自動評価
オペレーターの応対品質を自動評価し、改善点を洗い出します。オペレーターの過去成績や今までのデータを統合することもでき、オペレーター個人の応対品質をまとめて管理できます。
②リアルタイムでのオペレーターの応対品質管理
「必須トークを話しているか」、「NGワードを使用していないか」などオペレーターの応対品質をリアルタイムで管理します。万が一、NGワードの使用をはじめ応対品質の低下を招く対応をしている場合は、管理者にアラーム通知を行い、すぐに改善指示が出せるようになっています。
このように、音声認識技術を導入することでコストや時間がかかっていたオペレーターひとり一人の応対品質評価が簡単にできるようになり、リアルタイムでも把握できるようになるのです。
その結果、
・応対品質低下の要因をすぐに見つけ出し対応できる |
というメリットがあります。
トランスコスモスでは、課題解決型の音声認識ソリューション「transpeech2.0」を提供しています。「transpeech2.0」では応対品質の全件自動評価やコンタクトセンター(コールセンター)の課題の見える化が実現できます。
また、AIを活用したオペレーターの応対の正誤チェックでは高精度な判断ができ、応対品質のモニタリングにかかる時間や工程を大幅に削減することが可能です。
実際に導入した企業さまからは、
・応対品質のチェック工数が80%削減できた |
などの評価をいただいています。「transpeech2.0」の導入を検討したい企業さまや、コンタクトセンターの運用について課題を感じている方は、お気軽にお問い合わせください。
4.モニタリングによる応対品質の評価から改善までの5ステップ
応対品質の向上が、いかに重要かわかりました。
では、実際のところ応対品質はどのように調べ、どのように改善していけばよいのでしょうか?
それは、以下のような5段階の手順で行うのが一般的です。
※応対品質を評価する方法はいくつかありますが。ここでは評価方法として利用されることが多い「モニタリング」での測定手順をご紹介します。
評価方法については、「3.応対品質の評価方法」で詳しく説明しますので、そちらを参照してください。
では、各ステップについて説明していきましょう。
4-1.応対品質を評価するチェック項目を決める
まずは、「どのような基準で応対品質を評価するのか」を決めます。
重視したいポイントはたくさんあるかと思いますが、あまりにチェック項目が多いと評価が雑になったり時間がかかりすぎたりする恐れがあります。最大でも30項目程度にし、20項目程度に絞るようにしましょう。
チェック項目はコールセンターの目標や目指す姿を踏まえた上で、「現時点では目標のどれくらいの応対品質を保てているのか」を把握できるようにしてみてください。
ちなみにこのチェック項目については、「5.応対品質の品質基準チェック項目5つ」で詳しく解説しますので、そちらも参照してください。
4-2.評価基準を明確にし、認識を合わせる
応対品質を評価するチェック項目ができたら、評価基準を明確に設けます。評価基準が曖昧だとすべてのオペレーターを平等に評価することができなくなります。
また、決めた評価基準について評価者同士が基準を合わせるための話し合い、カリブレーションも必ず実施しましょう。
カリブレーションを行うことで、複数の評価者がモニタリングを行っても、評価に主観やブレが生じず適切な評価ができるようになります。
設定する評価基準としては、5段階評価と加重評価があります。
5段階評価
5段階評価は、達成度に応じて5段階で評価する方法です。下記のように、1つの質問に対して5段階で評価していきます。質問に対して達成率が高い場合は5を、低い場合は1を記入します。
すべての質問を5段階で評価していき、合計点数が高いオペレーターは応対品質が高いと評価されたことになります。
しかし、この方法だと3.どちらともいえない を選びやすくなりがちです。3.どちらともいえないが多くなると評価のメリハリがつきにくく、オペレーターとしても改善が必要なのかがわかりにくいので、できるだけ3以外で評価をつけるようにしましょう。
細かなさじ加減は調査員により左右されるデメリットはありますが、評価基準を設けやすく実施しやすい方法です。
また、評価項目が多い場合、「N/A (ノーアンサー:判定不能)」が生じることもあります。クロージングトークの前に顧客から切電されクロージングに関わる項目が評価できない場合などです。
その場合は評価できた項目のうちどのくらいの点数が付いたかで評価するなど事前に取り決めておくことも必要です。
加重評価
加重評価はすべての質問の合計が100点(100点以外を設定することも可能)となるように、点数を割り振る方法です。
例えば、ルールとマナーのチェック項目全体で100点にする場合、重要度に応じて下記のように自由に点数の割り振りができます。
調査項目 | 加重評価点数 | 実際の | |
言葉遣い | 顧客に不快感を与えない言葉遣いができる | 30点 | 20点 |
敬語・尊敬語 | 敬語や尊敬語の使い方を間違えていない | 20点 | 15点 |
ルールの厳守 | コールセンターのルールを守っている | 25点 | 15点 |
コンプライアンスの厳守 | コールセンターのコンプライアンスを守っている | 25点 | 17点 |
割り振りした点数を最大値として、各項目を評価していきます。言葉遣いの項目の場合は、30点が満点となり20点の評価を受けています。
重要度に合わせて点数を割り振ることで、よりリアルな評価ができるようになります。細かく評価をしなければならない分、調査員の負担は増えますが、5段階評価よりも細分化して評価をしたい場合におすすめです。
4-3.モニタリングを実施する
ここまで準備ができたところで、いよいよモニタリングを実施します。
モニタリングは、
・スーパーバイザー(SV) |
が担当する場合が多いので、実施日時や評価担当を明確にして進めていきます。
具体的な方法は、「3.応対品質の評価方法」で説明しますので、それを参考にしてください。
4-4.モニタリングの結果から問題点を洗い出す
モニタリングが終了したら結果を集計し、問題点を洗い出します。次の3つの視点でモニタリングの結果を見てみると、課題が明確になるでしょう。
最も評価が高かった質問と評価が低かった質問をチェックする
評価が高い質問事項と評価の低い質問事項を並べることで、「今のところは問題がない点」と「課題や苦手になっている点」を把握できます。
応対品質全体のレベルを把握する
オペレーター個人の応対品質を確認することも大切ですが、全体の平均値を算出することで、コールセンターの応対品質が目標レベルに達しているかどうかを把握することも可能です。
目標に達していない場合は、どこが問題点となっているのか項目を確認しましょう。
個人差のある項目をチェックする
平均値を見ると問題がない項目でも、個人差が大きい場合はオペレーターによって応対品質に差が生まれる可能性があります。
どのような項目で差ができているのか把握して、少しでも個人差が埋められるようにしましょう。
4-5.応対品質の改善をする
課題や問題点が明確になったら、実際に応対品質の向上に活かします。
モニタリングの結果をオペレーターと共有して、
・良かった点 |
を話します。改善が必要な点を共通認識できたら、期限を決めて現状の改善に取り組みましょう。
「4-2.評価基準を明確にし、認識を合わせる」で行ったカリブレーションはモニタリング後の改善方法やどこをポイントに改善を行っていくかの認識合わせでもでも必要となります。評価者同士は各ステップでカリブレーションを行い常に同一認識で評価を行うことが重要です。
このように応対品質を評価することで、具体的に良い点や課題が見えてきます。課題が明確にならないと応対品質の向上には取り組めませんので、まずは正しく評価することが応対品質向上の第一歩となります。
5.応対品質の品質基準チェック項目5つ
応対品質を評価する際には、品質基準のチェック項目を設定する必要があります。
項目は コールセンターが重視したいポイントや業種などによって大きく異なりますが、ここでは一例として下記の5つのチェック項目をご紹介します。
応対品質のチェック項目 | |
業種遂行力 | 正確性や迅速性、知識量など業務を遂行するための力 |
印象 | 第一印象や声のトーンなど顧客に与える印象 |
提案力 | 顧客のニーズを把握し、適切な提案、質問をする力 |
共感力 | 傾聴力など顧客に寄り添い目的達成や問題解決をする力 |
ルール・マナー | 言葉遣いやルールを守り目的達成や問題解決をする力 |
それぞれ具体的な評価項目の事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
また、チェック項目を策定する際、欠かせないのが「応対品質方針(MVVの設定)」です。ありきたりの評価基準ではなく、「その企業が実現したい顧客接点のビジョン」を描きます。
例えば、「お客様の不安を取り除き、一人でも多くのファンを創る」というのがビジョンだとするならば、実際の応対でどうすればこれを実現できるか等々が評価項目(重みづけ)に反映されます。
その評価基準を活用することで、目指すゴール(=一人でも多くのファンを創る)を実現することができます。オペレーターが応対品質のゴールを理解していることで、役割責任も明確化できますし、モチベーションが上がれば応対の品質も向上していきます。
トランスコスモスでは、2019年度より応対品質方針(MVVの設定)策定について特に力を入れており、下記の記事でも紹介していますので、興味があればご覧ください。
5-1.業務遂行力
「業務遂行力」では、顧客からの問い合わせに対し、業務を遂行する力をチェックします。
顧客は何らかの目的があって、 コールセンターに電話をかけています。商品購入窓口であれば商品の購入や返品、テクニカルサポート窓口であれば使い方や修理の問い合わせが目的です。
どれだけ丁寧な対応ができても、顧客の目的が達成されていなければ不満や苦情の原因となるため、業務遂行力は大切な評価ポイントとなります。
また、あまりに対応に時間がかかりすぎていてはせっかく丁寧に業務遂行ができていても不満につながる可能性があります。
併せてATT(平均通話時間)も確認しておくとよいでしょう。
的確な回答ができているか、適正な時間内で回答できているか、正しい知識を持ち合わせているかなど、コールセンターの目標や求めているオペレーターのレベルに合わせてチェック項目を設定してみてください。
業務遂行力のチェック項目例 | |
正確性 | 顧客の質問を適切に読み取り、情報や解決策を提示できる |
迅速性 | 無駄な時間をかけずに、情報や解決策を提示できている |
知識量 | 顧客に正確な情報や解決策を届けられる知識が備わっている |
姿勢 | 顧客に対して一生懸命な対応ができている |
5-2.印象
先ほども説明したように、 コールセンターは企業の顔と言っても過言ではありませんので、「顧客に対する印象」はとても重要です。
例えば、第一声の挨拶が明るい雰囲気かどうかだけでも、顧客に与える印象は異なります。印象をチェック項目化することはなかなか難しいことですが、ロールモデルとするオペレーターを設定しどのような応対品質を求めているか考えると分かりやすいでしょう。
業種や企業により重要視したい印象は異なるかと思いますが、イメージに合った印象で話せているかが把握できるチェック項目を考えてみてください。
印象のチェック項目事例 | |
第一印象 | 顧客に好印象を与えられる挨拶をしている |
話し方の速度 | 顧客に不快感を与えない速度で話せている |
声のトーン | 顧客が親しみやすさを感じるトーンで話せている |
質問時の印象 | オペレーターが顧客に質問をするときに、不快感を与えない質問ができている |
通話時の印象 | 通話全体を通して、オペレーターから好印象が感じられる |
通話終了時 | 通話終了時にお礼を言い、顧客より先に電話を切っていない |
5-3.提案力
コールセンターではマニュアル通りの回答だけではなく、もう一歩顧客に寄り添う姿勢や対応が求められています。
そのためには、顧客のニーズを瞬時に読み取り的確な提案や質問をする力が重要です。例えば、商品案内をする場合は、「顧客がどんなものを望んでいるのか」や予算を把握し、それに適した商品を提案しなければなりません。
的外れな回答をしていると、「思った回答が得られない」「解決までに時間がかかった」などの不満に繋がります。
限られた時間の中で最大限の顧客サポートをするためにも、
・顧客の目的に合わせた提案ができる |
という提案力もチェックするようにしてみましょう。
提案力のチェック項目事例 | |
ニーズを掴む | 顧客のニーズを正確に捉えられる |
質問力 | 顧客の目的達成や疑問解決のために踏み込んだ質問ができる |
提案力 | 顧客が求めている提案ができる |
要約力 | 顧客が分かりやすいように、提案の内容や質問を伝えられる |
他の提案 | 目的達成や問題解決ができない場合は、次の方法を提案できる |
5-4.共感力
コールセンターでは、昨今「顧客への共感力」が重要視されています。
コールセンターには、さまざまな目的や課題を持った顧客からの入電があります。不安や不満を抱いて電話をかけてくるケースも少なくありません。
そのようなときに顧客の気持ちに寄り添い、「分かります」「おっしゃる通りです」など共感するフレーズを話せるだけでも、顧客は「こちらの言いたいことを理解してくれた」と判断し、気持ちが落ち着きます。
また、どのような顧客に対してもしっかりと話を聞いて寄り添う言葉がかけられることで、スムーズなコミュニケーションが図れます。
共感力に対する考え方や導入方法はコールセンターによって異なるかと思いますが、どれだけ顧客目線に立ち共感する気持ちを持てているかという点でチェック項目を作成してみてください。
共感力のチェック項目事例 | |
相づちを打つ | 顧客に寄り添うように相づちが打てる |
共感するフレーズ | 顧客の立場に共感するフレーズを話せる |
傾聴力 | 顧客の話を遮らないで最後まで聞く |
顧客に寄り添う | 顧客の状況に応じて、気持ちに寄り添える言葉が使える |
5-5.ルール・マナー
応対品質を向上させるためには、通話時のルールやマナーが守れていることが大切です。
顧客が誰であってもていねいな言葉遣いができるのはもちろんのこと、不快感を与えないような言葉選びをしなければなりません。
また、 コールセンターで定められたルールに従い対応できないと、応対品質に差が生まれやすくなってしまいます。マナーやルールの厳守は基礎的な部分なので見落としがちではありますが、顧客満足度や企業、ブランドイメージに直結するところです。
・ていねいな言葉遣いができている |
というところは、いま一度しっかりとチェックできるようにしておきましょう。
マナーやルールのチェック項目事例 | |
言葉遣い | 顧客に不快感を与えない言葉遣いができる |
敬語 | 敬語の使い方を間違えていない |
ルールの厳守 | コールセンターのルールを守っている |
コンプライアンスの厳守 | コールセンターのコンプライアンスを守っている |
6.応対品質を改善する5つの方法
ここまで、実際の応対品質をどのように調べるのかを説明してきました。
では、応対品質のレベルを把握し、課題が明確になったら、どのように改善していけば良いのでしょうか?
具体的な改善方法としては、たとえば以下のようなものが考えられます。
・MVVを策定・徹底する |
それぞれ詳しく説明しましょう。
6-1.MVVを策定・徹底する
前章の「5.応対品質の品質基準チェック項目5つ」でも触れましたが、応対品質の根本的な改善には、「MVV」が重要です。
「MVV」とは「Mission(ミッション)・Vision(ビジョン)・Value(バリュー)」の頭文字を取った略語で、それぞれ以下のような事柄を指します。
コールセンターの場合は、「実現したい顧客接点(=タッチポイント)のあるべき姿」について、明確化しましょう。
たとえば「お客様の不安を取り除き、一人でも多くのファンを創る」というビジョンを定めた場合は、これが応対する際の目標になりますし、応対品質を評価する際の軸にもなります。
MVVをセンター全体に徹底すれば、各オペレーターで認識に齟齬が生まれることもなく、同じゴールを目指して顧客対応していくことができるでしょう。
MVVについて詳しく知りたい方は、下記の記事を参照してください。
トランスコスモスが トランスコスモスでは、コンタクトセンター(コールセンター)の事業所MVVの策定から運用までをサポートしています。 応対品質や生産性の向上など、コンタクトセンター運用の課題改善はもちろん、CXの創出やプロフィット化などコンタクトセンターの戦略的な活用も視野に入れ、企業価値向上に貢献します。 コンタクトセンター向けのMVVを策定したい場合は、お気軽にお問い合わせください。 |
6-2.応対品質に関わるKPIを設定し、達成を目指す
MVVを策定したら、それを実現するためのKPIを設定し、それを達成することを目指しましょう。
コールセンターの応対品質に関わるKPIは、主に以下のようなものがあります。
・モニタリングスコア:モニタリングでの評価を数値化したオペレーターの応対品質の平均点数 |
KPIを設定することで、応対品質の変化や課題を客観的に把握することができ、それを目標として応対品質の向上を目指せるようになります。
コールセンターのKPIに関しては、下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひそちらも読んでみてください。
6-3.トークスクリプトの作成・見直しをする
「トークスクリプト」は顧客対応のやりとりを具体的なシナリオにしたものです。
そのため、適切なトークスクリプトを作成し、その内容を随時見直し改善することも、応対品質向上に繋がります。
顧客とのやりとりは実に多種多様で、時には想定していない質問をされ、返答に困ることを言われる場合もあります。
そんな場合でも、トークスクリプトに適切な受け答えが示されていれば、慌てず質の高い対応をすることができるはずです。
トークスクリプトは、一般的には以下のような手順で作成します。
1)製品・サービスの特長をまとめる |
高い応対品質を実現するには、想定される顧客からの質問を漏らさず洗い出し、それぞれに対応のしかたを決めておくこと、オペレーターが見やすいように作ることが重要です。
さらに、使っていくうちに「この質問に対する回答例がない」「この対応だと、顧客が満足してくれなかった」など、スクリプトの不備が出てくるはずですので、その都度見直し・改善も行っていきましょう。
6-4.ナレッジを見直し・改善する
トークスクリプトとあわせて、「ナレッジ」の見直しや改善も必要です。
「ナレッジ」とは、業務に必要な知識や情報、経験を指し、個人が蓄積したナレッジを組織全体で共有することで、全体の業務レベルが向上します。
コールセンターでも日々の顧客対応の中で、各オペレーターには「良い対応例」「悪い対応例」「顧客ニーズ」などが積み上がっていくはずです。
これらを吸い上げてセンター全体で共有し、マニュアルやトークスクリプト、WEBサイトのFAQページ(「よくある質問」ページ)などに反映することで、応対品質はぐっとよくなるでしょう。
ナレッジとその共有のしかたについては、下記の記事に詳しく説明していますので、そちらを読んでぜひ実践してみてください。
6-5.トレーニングや研修を充実させる
最後に、オペレーター向けのトレーニングや研修を充実させることもお勧めします。
もちろんどのコールセンターでも、新人オペレーターへの研修は行っているでしょう。
ですが、その後は特にトレーニングや研修は行わず、日々の業務をOJTとして熟練することを期待しているセンターも多いのではないでしょうか?
それでスキルアップするオペレーターもいますが、残念ながら自力では成長に限界がある人もいるのが現実です。
また、ベテランになると対応がルーティーン化してしまい、知らず知らずのうちに顧客それぞれに寄り添った受け答えができなくなるケースもあります。
このようなことがないよう、トレーニングや研修の内容を充実させ、定期的に実施するようにしましょう。
たとえば、応対品質評価をした際に、スコアが低いオペレーターが多かった事柄に関しては、それを改善する研修(「敬語の使い方講座」「高齢者向けの説明のしかたレッスン」など)を実施するとよいでしょう。
また、ベテランでも定期的にトレーニングを受けることで、知識やスキルを更新することができます。
コールセンターにはさまざまな顧客から多種多様な問い合わせがありますし、応対するオペレーターのスキルや得意分野・苦手分野も千差万別です。
それらを踏まえた上でセンター全体の品質を底上げするには、きめ細かい研修、トレーニングの実施が不可欠なのです。
7.応対品質を向上させるための3つのポイント
最後に、応対品質を向上させるためのポイントとして、
・応対品質が向上する環境を整える |
という3つをご紹介します。応対品質を向上させるためには具体的にどのようなことを実施したらいいのか、参考にしてみてください。
7-1.応対品質が向上する環境を整える
応対品質の向上はオペレーター頼みにするのではなく、まずセンター側で応対品質を向上させる仕組みを整えていくことが欠かせません。
応対品質の評価で分かった課題によって取り組むべきことは異なるかと思いますが、
・応対品質の向上のためにIVR(自動音声応答システム)を導入する |
などがあげられます。
目標や課題の設定、オペレーターとコールセンターのスタッフが全員共通の認識をもって一丸となり、応対品質の向上に取り組める環境をつくるようにしましょう。
7-2.応対品質の評価は定期的に実施する
応対品質の評価は、一度実施して終わりではありません。3か月~4か月に1回のペースで、定期的に実践することが大切です。
下記の図のように コールセンター運用は常に応対品質の向上を目指し、改善し続けなければなりません。
調査 | 対応品質の評価を実施して、現状を把握する |
課題 | 応対品質の評価結果をもとに、課題を見つける |
準備 | 課題を共有し、改善できるように準備をする |
実践 | 課題を改善できるようにオペレーターが実践する |
新たな課題を洗い出して共有し実践していくサイクルが終わったところで、あらためて応対品質の評価をすると、また次の課題が見えてきます。
コールセンターの課題は常に変化し続けているため、いつまでも同じ課題を掲げていては応対品質の向上が見込めません。
現状の課題を的確に把握し改善するためにも、定期的に応対品質の評価をするようにしましょう。
7-3.オペレーターの評価や問題点のフィードバックは即実行する
応対品質を向上させるためには、オペレーターへのフィードバックはモニタリングなどの評価後できるだけ早く実行しましょう。
コールセンター全体でのレベルや課題を把握することはもちろん大切ですが、コールセンターの良し悪しを握るオペレーターひとり一人のレベルを向上させるには、個々の課題は対応を行った後、覚えているうちに伝えたほうがいいでしょう。
課題だけでなく高評価を受けたポイントも直接伝えることで、オペレーターのやる気やモチベーションアップに繋がります。
オペレーターの心構えや姿勢が変化していくことで、応対品質にも好影響が出てきますので、全体評価と個人評価の2軸でフィードバックを行ってみてください。
まとめ
いかがでしたか?
応対品質とはどのようなものか把握でき、自社の コールセンターでも応対品質の向上を目指せるようになったかと思います。
最後にこの記事の内容をまとめてみると、
◎応対品質とは、コールセンターにおける「オペレーターから顧客への対応の質」=適切な対応ができているかをはかる指標のこと
◎応対品質の向上が必要な理由は次の4つ
1)苦情や顧客満足度低下などのリスクを避けられる |
◎応対品質の評価から改善までの手順(モニタリングの場合)は下記のとおり
1)応対品質をチェックする項目を決める |
◎応対品質の主な評価方法は次の4つ
・モニタリング |
◎応対品質の評価チェック項目は下記のとおり
応対品質のチェック項目 | |
業種遂行力 | 正確性や迅速性、知識量など業務を遂行するための力 |
印象 | 第一印象や声のトーンなど顧客に与える印象 |
提案力 | 顧客のニーズを把握し、適切な提案、質問をする力 |
共感力 | 傾聴力など顧客に寄り添い目的達成や問題解決をする力 |
ルール・マナー | 言葉遣いやルールを守り目的達成や問題解決をする力 |
※評価チェック項目はコールセンターや業種によって異なるので、臨機応変に変更する
◎応対品質を向上させるポイントは次の3つ
1)IVRの導入や目標設定など応対品質が向上する仕組みや環境を整える |
この記事をもとに応対品質の向上ができ、顧客の満足度が高いコールセンター運用ができるようになることを願っています。