
コンタクトセンター(コールセンター)におけるKPIを接続・応対・生産・処理品質の4つのカテゴリ、優先度別に解説します。
- 優先度が高いKPI設定項目:業務の安定化と顧客対応の基本品質を担保できる項目が望ましい。
- KPI活用のポイント:PDCAを回し継続的な改善、KPIの関連性の把握、優先順位付け、現状把握と課題を全体で共有、KPI項目を定期的な見直し
KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)とは、ビジネスの最終目標(KGI)を達成するための中間目標です。
コンタクトセンター(コールセンター)では、KPIを正しく設定・管理することで、課題の可視化や改善の方向性が明確になり、運営の質を大きく向上できます。
項目 | 内容 |
接続品質 | コンタクトセンターの全体のつながりやすさを測る指標 |
応対品質 | コンタクトセンターの応対の丁寧さを測る指標 |
生産品質 | コンタクトセンターの対応の速さを測る指標 |
処理品質 | コンタクトセンターの処理の正しさを測る指標 |
本記事では、コールセンターのKPIを「接続品質」「応対品質」「生産品質」「処理品質」の4分類に分け、重要な21項目を図解付きでわかりやすく解説します。さらに、KPI設定のポイントや優先度別の管理方法も紹介するので、ぜひ自社の運営改善に役立ててください。
1.コンタクトセンター(コールセンター)におけるKPIとは

KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)とは、ビジネスの最終目標を達成するために設定する「中間目標」のことです。
企業が「売上を前年比120%にする」という最終目標(KGI:Key Goal Indicator)を掲げた場合、その達成に向けて進捗を測るための具体的な指標がKPIです。
KPIは、目標達成までの道のりを数値で可視化し、現状の把握や課題の特定、改善の方向性を明確にする羅針盤のような役割を果たします。
ここで、コンタクトセンターを例に考えてみましょう。

「顧客満足度を向上させる」という目標を掲げても、何を改善すべきか、どこに課題があるのかが曖昧なままでは、効果的なアクションを取ることは困難です。
このような状況では、次のような問題が起こりがちです。
・何を改善すれば満足度が上がるのかが不明確 |
こうした課題を解決するためには、KPIを設定し、数値で管理することが不可欠です。
KPIを導入することで、次のようなメリットがあります。
・現状の課題を定量的に把握できる |

つまりKPIは、最終目標に向かって「どのように進めばよいか」を示す具体的な指針であり、やみくもな努力ではなく、数値に基づいた戦略的な運営を可能にします。
2.【一覧表】インバウンド・アウトバウンド別コンタクトセンター(コールセンター)の代表的なKPI項目

コンタクトセンターのKPIは、業務内容によって重視すべき指標が異なります。とくに、インバウンド(受信業務)とアウトバウンド(発信業務)では、重要なKPIが大きく変わります。
ここでは、インバウンドとアウトバウンドそれぞれで代表的なKPI項目を一覧で紹介します。
「どの指標を優先すべきか」や「意味・算出方法」も後章で詳しく解説するので、まずは全体像を把握しましょう。
2-1.インバウンドで重要なKPI一覧
インバウンド業務では、顧客からの問い合わせに迅速かつ丁寧に対応することが求められます。
そのため、以下の4つの品質に関するKPIが重要です。
【接続品質(つながりやすさ)に関する主な指標】
指標 | 内容 |
応答率 | 総着信に対して、オペレーターが対応できた割合 |
放棄呼率 | 総着信に対して、対応できなかった割合 |
サービスレベル(SL) | 総着信に対して、設定した時間内で応答した数の割合 |
平均応答時間(ASA) | 着信から応答するまでの平均時間 |
【応対品質(丁寧さ)】
指標 | 内容 |
モニタリングスコア | 応対品質を点数化 |
顧客満足度スコア(C–SAT) | 企業が提供する商品やサービスに対する顧客満足の度合い。 |
苦情発生率 | 全応答数に対する苦情件数の割合 |
Thanks Call発生件数 | 感謝の声をいただいた件数 |
【生産品質(速さ)】
指標 | 内容 |
CPH | 1時間あたりの応対する件数 |
平均処理時間(AHT) | 1応対あたりの通話開始から後処理終了までに要した平均時間 |
平均通話時間(ATT) | 1応対あたりの平均通話時間 |
平均後処理時間(ACW) | 1応対あたりの平均後処理時間 |
稼働率 | オペレーターの労働時間全体のうち顧客対応にあてられた時間の割合 |
占有率 | 顧客対応にあてられる時間のうち通話や後処理にあてられた時間の割合 |
平均保留時間 | 1応対あたりの平均保留時間 |
【処理品質(正確さ)】
指標 | 内容 |
一次完結率 | 1回の対応で完了した割合 |
ミス率 | 対応や付随業務でのミス発生率 |
エスカレーション率 | 上司や他部門への相談率 |
保留発生率 | 対応中に保留を発生させた割合 |
再入電発生率 | 同じ問い合わせで再度入電した割合 |
これらすべての指標をKPIとして管理する必要はありません。センターの目標や課題に合わせて優先順位をつけることが重要です。
2-2.アウトバウンドで重要なKPI一覧
アウトバウンド業務では、顧客へのアプローチ効率と成果が重視されます。
以下は代表的なKPIです。
【アウトバウンド特有の指標】
指標 | 内容 |
架電数 | オペレーターが架電した件数 |
コンタクト率 | 架電数のうち顧客につながった割合 |
承諾率・成約率 | 架電件数のうち承諾や成約を得られた割合 |
平均架電単価(CPC) | 1通話あたりのコスト |
【共通指標(生産・処理品質)】
指標 | 内容 |
稼働率 | オペレーターの労働時間全体のうち顧客対応にあてられた時間の割合 |
平均処理時間(AHT) | 1応対あたりの通話開始から後処理終了までに要した平均時間 |
平均通話時間(ATT) | 1応対あたりの平均通話時間 |
ミス率 | 対応や付随業務でのミス発生率 |
2-3.その他のKPI(人材・コスト管理)
コンタクトセンター運営では、品質指標だけでなく人材管理やコスト管理のKPIも重要です。
代表例は以下の通りです。
・勤怠率 |
これを踏まえて、次章からは主にインバウンドで重視すべきKPIについて、その意味と算出方法を詳しく説明します。
3.【優先度:高】最優先で設定すべきコンタクトセンター(コールセンター)KPI5項目

ここまでで、KPIの基礎知識と代表的な項目を紹介しました。
しかし、21項目すべてを一度に管理するのは現実的ではありません。
そこで本章では、コンタクトセンター運営において最優先で設定すべきKPI5項目を解説します。
この5つは、業務の安定化と顧客対応の基本品質を確保するために不可欠な指標です。
まずはここから着手することで、コンタクトセンター全体のパフォーマンス改善につながります。
【優先度:高】コンタクトセンターのKPI5項目一覧
指標 | 内容 |
応答率 | 総着信に対してオペレーターが対応できた割合 |
放棄呼率 | 総着信に対して顧客が切断した割合 |
サービスレベル(SL) | 設定時間内に応答できた割合 |
一次完結率 | 1回の対応で問題解決できた割合 |
平均処理時間(AHT) | 通話開始から後処理終了までの平均時間 |
3-1.応答率(Answer Rate)

応答率とは、総着信に対してオペレーターが対応できた受電件数の割合を指します。
コンタクトセンターの「つながりやすさ」を示す基本指標です。
応答率が高いほど、つながりやすいコンタクトセンターと評価され、顧客満足度の向上が見込まれます。逆に、応答率が低い場合、顧客満足度の低下や機会損失につながるため、応答率を適正に維持するための取り組みが重要です。
概要 | 総着信に対してオペレーターが対応できた受電件数の割合 |
算出方法 | 対応件数 ÷ 総着信数 × 100 |
目安 | 80〜90%が一般的 |
3-2.放棄呼率(Abandon Rate)

放棄呼率とは、オペレーターにつながる前に顧客が切断をした割合を指します。
放棄呼率が高い場合、入電集中やオペレーター数の不足、処理時間の長さに原因である可能性があります。
改善策としては、IVRの最適化やオペレーター配置の見直し、マルチチャネル化が有効です。
概要 | オペレーターにつながる前に顧客が切断した割合 |
算出方法 | 放棄呼数 ÷ 総着信数 × 100 |
目安 | 平均 11.1% |
3-3.サービスレベル(SL:Service Level)

サービスレベルとは、設定した時間内で応答できた受電件数の割合を指します。
サービスレベルは、顧客がストレスなくつながるかどうかを示す指標です。
応答率と合わせて管理することで、「つながるまでの時間」も評価可能になります。
概要 | 設定時間内に応答できた割合 |
算出方法 | 設定時間内に応答した件数 ÷ 総着信数 × 100 |
目安 | センターによって異なる |
3-4.一次完結率(FCR:First Call Resolution)

一次完結率は、一度の電話、もしくは応対者一人の対応で顧客の問題・要望等を解決した割合を指します。
なお、企業によっては、専任の担当者に取り次いだ対応を一次完結としない場合もあります。
概要 | 一度の電話、もしくは応対者一人の対応で顧客の問題・要望等を解決した割合 |
算出方法 | 1度の対応で完了した件数÷全対応数 × 100 |
目安 | 業務内容により異なる |
3-5.平均処理時間(AHT:Average Handling Time)

平均処理時間とは、1応対にかかる通話開始から後処理終了までの平均時間です。
平均処理時間が長すぎると、待ち呼や放棄呼が増加し、対応効率が低下します。ただし、短すぎると品質低下のリスクがあるため、バランスが重要です。
概要 | 1応対にかかる通話開始から後処理終了までの平均時間 |
算出方法 | (総通話時間 + 総後処理時間+総保留時間 )÷ 総処理件数 |
目安 | 業務内容により異なる |
4.【優先度:中】重要なコンタクトセンターKPI7項目

最優先のKPIを導入した後は、業務品質の向上やオペレーターのパフォーマンス改善を目指す段階です。ここでは、優先度「中」とされる7つのKPIを紹介します。
これらは、顧客満足度や応対品質を高めるために不可欠な指標です。
【優先度:中】重要なコンタクトセンターKPI一覧
指標 | 内容 |
モニタリングスコア | オペレーターの応対品質を評価する指標 |
顧客満足度調査スコア(C-SAT) | 顧客が応対に満足したかを数値化 |
苦情発生率 | 全応答数に対する苦情件数の割合 |
再入電発生率 | 顧客が同じ用件で再度電話をかけてくる件数の割合 |
CPH ( Call Per Hour) | 1時間あたりの処理件数 |
エスカレーション率 | 全応答数に対する上司や他部門への相談した割合 |
平均通話時間(ATT) | 通話時間の平均値 |
4-1.モニタリングスコア
モニタリングスコアとは、オペレーターの応対品質を評価する指標です。
モニタリングスコアは、オペレーターの品質改善や教育に直結する重要指標です。
評価項目を明確にし、定期的なフィードバックを行うことで、応対品質の底上げが可能になります。
【応対品質を評価する項目6つ】
項目 | 内容 |
正確性 | ミスがない、正確な情報を提供する |
迅速性 | 対応のスピードが速い、納期を守る |
柔軟性 | 臨機応変に対応できる、顧客のニーズに応えられる |
共感性 | 傾聴力、観察力、顧客に寄り添う姿勢がある |
安心感 | 余裕がある、落ち着いている、知識が豊富である |
好印象 | 口調、声のトーン、聴き方、挨拶などの印象が良い |
上記の項目が含まれるモニタリングシートを作成し、オペレーターの応対品質に点数を付けて算出します。
概要 | オペレーターの応対品質を評価する指標 |
算出方法 | モニタリングシートで評価項目を点数化し、合計点を算出 |
目安 | 評価方法や評価項目などによって異なる |
4-2.顧客満足度スコア(C–SAT)
顧客満足度スコアとは、企業が提供する商品・サービスを購入、利用した顧客がどの程度満足しているかを示す指標です。
顧客満足度は、コンタクトセンターの目的達成度を示す最重要指標の一つです。
概要 | 企業が提供する商品・サービスを購入、利用した顧客がどの程度満足しているかを示す指標 |
算出方法 | 決まった形式はなく、一般的には5段階に分けて計測 |
目安 | 商品・サービスによって異なる |
4-3.苦情発生率
苦情発生率とは、顧客満足度を測る指標の一つであり、企業が提供する商品・サービス関して顧客が不満を感じて電話をかけてきた件数の割合のことです。
概要 | 全応答数に対する苦情件数の割合 |
算出方法 | 苦情件数÷全応答件数 × 100 |
目安 | 業務内容によって異なる |
4-4.再入電発生率
再入電発生率は、顧客が同じ用件で再度電話をかけてくる件数の割合を示す指標です。
再入電発生率が高い場合、一次完結率が低い証拠です。原因分析とプロセス改善が必要です。
概要 | 同じ問い合わせで再度入電した割合 |
算出方法 | 再入電件数÷全応答件数 × 100 |
目安 | 業務内容によって異なる |
4-5.CPH(Call Per Hour )
CPHとは、オペレーターの1時間あたりの処理件数を指します。
CPHは、オペレーターの生産性を示す指標です。
CPHは、高すぎると応対品質に課題があったり、低すぎると生産性に課題があったりします。そのため、標準的なCPHを決め、バランスをとることが重要です。
概要 | 1時間あたりの処理件数 |
算出方法 | 総処理件数 ÷ 総稼働時間 |
目安 | 業務内容によって異なる |
4-6.エスカレーション率
エスカレーション率は顧客対応のお問い合わせに対し、オペレーターが自己解決できず、上司へ相談したり他部署へ質問したりする件数の割合を示す指標です。
エスカレーション率が高い場合は、オペレーターの知識不足やマニュアル整備不足が原因です。
概要 | オペレーターが自己解決できず、上司や他部署に相談した割合 |
算出方法 | 相談件数÷全対応数 × 100 |
目安 | センターの性質によって異なる |
4-7.平均通話時間(ATT:Average Talk Time)
平均通話時間は、オペレーターが顧客と通話をしている時間の平均値です。
ATTは、応対品質と生産性のバランスを示す指標です。
長すぎると効率低下、短すぎると品質低下のリスクがあります。
概要 | 顧客と通話をしている時間の平均値 |
算出方法 | 総通話時間 ÷ 総処理件数 |
目安 | 平均 6.75 分 |
5.【優先度:低】運営が安定した後に導入すべきコンタクトセンター(コールセンター)KPI9項目

ここまで、優先度「高」「中」のKPIを紹介しました。次に、運営が安定した後に取り入れるべきKPIを9項目紹介します。これらは、効率化や品質向上をさらに進めるための指標です。
【優先度:低】運営が安定した後に導入すべきコンタクトセンターKPI一覧
指標 | 内容 |
平均応答速度(ASA) | 着信から応答までの平均時間 |
平均後処理時間(ACW) | 通話後の後処理にかかる平均時間 |
Thanks Call発生件数 | 顧客からの感謝の声の件数 |
稼働率 | 勤務時間のうち顧客対応に費やした割合 |
占有率 | 顧客対応業務に使った時間のうち実際に対応した割合 |
平均保留時間(AWT) | 1件あたりの保留時間の平均 |
話中率 | 着信時に話し中となった割合 |
ミス率 | 対応や付随業務で発生したミスの割合 |
保留発生率 | 対応中に保留を発生させた割合 |
5-1.平均応答時間(ASA:Average Speed of Answer)

平均応答時間は、顧客による入電があってからオペレーターが応答するまでの平均時間を指す指標です。
平均応答時間が長いと顧客満足度が低下するため、サービスレベルと併せて管理することが重要です。
概要 | 顧客による入電があってからオペレーターが応答するまでの平均時間 |
算出方法 | 応答するまでにかかった時間の合計 ÷ 総着信数 |
目安 | 平均 34.5 秒 |
5-2.平均後処理時間(ACW:After Call Work)
平均後処理時間は、応対履歴の記入などオペレーターによる通話後の処理にかかる時間の平均です。
平均後処理時間が長いと、待ち呼や放棄呼の増加につながるため、マニュアル改善やツール活用で短縮を目指しましょう。
概要 | 通話後の後処理にかかる平均時間 |
算出方法 | 総後処理時間 ÷ 総処理件数 |
目安 | 平均 4.8 分 |
【コンタクトセンターシステムでの後処理画面イメージ】

5-3.Thanks Call発生件数
Thanks Call発生件数とは、電話やメール、手紙など顧客から感謝や御礼をいただいた件数です。顧客満足度(CS)や応対品質の向上を目的とした指標です。
概要 | 顧客からの感謝や御礼の件数 |
算出方法 | 対応履歴やCRMで集計 |
目安 | センターごとに異なる |
5-4.稼働率
稼働率とは、オペレーターの勤務時間のうち、顧客との通話や後処理、待機時間など顧客対応に費やしている時間の割合を示します。

稼働率が高すぎるとオペレーターが疲弊し欠勤や退職につながる恐れがあります。また、低すぎると非効率な運営になるため、適正値の維持が重要です。
稼働率が高すぎる、または低すぎる場合、以下のような状況に陥ってしまいます。
稼働率が高すぎる | ・オペレーターが勤務時間内に多くの顧客対応をしており疲弊する |
稼働率が低すぎる | ・業務に関係ない時間が増加する |
概要 | 勤務時間のうち顧客対応に費やした割合 |
算出方法 | (通話+ 保留 +後処理+ 受付可能時間)÷ 給与時間 × 100 |
目安 | 業務内容によって異なる |
たとえば、1日のオペレーターの平均的な業務時間が以下の場合です。
通話+保留時間 | 3.5時間 |
後処理時間 | 1時間 |
受付可能時間 | 0.5時間 |
給与時間 | 7.5時間 |
計算式:(3.5 + 1 + 0.5) ÷ (7.5)× 100 =約66.6%
稼働率は曜日や業務が集中する日にちによっても異なるため、適切な生産性を保つためにも細かく把握しておくといいでしょう。
5-5.占有率
占有率とは、顧客対応業務に使った時間のうち「実際に顧客対応にあてた時間の割合」を示す指標です。占有率は、オペレーターの業務効率を把握する指標です。

顧客対応にあてられる時間が効率的かどうかを判断するために用いられます。
占有率が高すぎる場合、もしくは低すぎる場合、コンタクトセンターは以下のような事態に陥ってしまいます。
占有率が高すぎる | ・顧客対応時間内に多くの顧客対応をする必要がある |
占有率が低すぎる | ・待機時間が長い |
こうしたことから、適正な占有率を維持するのが重要であり、目安として85%程度といわれています。
概要 | 顧客対応業務に使った時間のうち、実際に対応した割合 |
算出方法 | (通話+保留+後処理) ÷(通話+保留+後処理 + 受付可能時間)× 100 |
目安 | 85%程度 |
5-6.平均保留時間(AWT:Average Waiting Time)
平均保留時間は、応対1件あたりの保留時間の平均値です。
平均保留時間が長い場合、顧客満足度低下のリスクがあるため、必要以上の保留時間の削減が重要です。
概要 | 1件当たりの保留時間の平均 |
算出方法 | 総保留時間 ÷ 総処理件数 |
目安 | 業務内容によって異なる |
5-7.話中率
話中率は、顧客が電話をかけたにもかかわらず、オペレーターにつながらず話し中(通話中)となってしまった着信の割合です。
これはオペレーターの業務効率の状況を把握するために活用される指標です。

話中率が高い場合、オペレーター配置や回線数の見直しが必要です。
概要 | 着信時に話し中となった割合 |
算出方法 | 話中呼数 ÷ 総着信数 × 100 |
目安 | センターによって異なる |
5-8.ミス率
ミス率とは、コンタクトセンター業務の対応や、付随する作業のミスの割合を指します。ミス発生率とも呼ばれます。ミス率は、品質管理や教育改善の指標として活用します。
概要 | 対応や付随業務で発生したミスの割合 |
算出方法 | センターごとに定義し測定 |
目安 | 業務内容によって異なる |
5-9.保留発生率
保留発生率はオペレーターの保留の回数を測定する指標となります。保留発生率が高い場合、オペレーターの知識不足や情報共有体制の改善が必要です。
概要 | 対応中に保留を発生させた割合 |
算出方法 | 保留回数 ÷ 全応答数 × 100 |
目安 | 業務内容によって異なる |
6.コンタクトセンター(コールセンター)でKPIを活用するための5つのポイント

ここまでKPIの設定方法や項目を解説しましたが、設定しただけでは意味がありません。
重要なのは、KPIを「運営改善に活かす仕組み」を作ることです。
ここでは、コールセンターでKPIを活用するための5つのポイントを紹介します。
【KPI活用の5つのポイント】
1.週次・月次でPDCAを回す |
6-1.週次・月次でPDCAを回す
KPIは「設定して終わり」ではなく、PCDAサイクルで改善を繰り返すことが重要です。

そのため、週次や月次で集計し、PDCAサイクルを回す仕組みを作りましょう。PDCAとは「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)」の流れで、業務を継続的に改善するための基本手法です。
たとえば、今週は「応答率を80%、平均通話時間を5分以内」を目標に設定し、オペレーター全員に共有します。週末にKPIを集計し、達成度を確認。課題を洗い出し、改善を次週に反映する。このサイクルを繰り返すことで、最終目標に効率よく近づけます。
ポイントは、KPIを集計するだけで満足せず、改善アクションに結びつけることです。
6-2.目標に応じたロジックツリーを描く
KPIを効果的に活用するためには、目標と指標の関係性を明確にすることが重要です。そのために役立つのがロジックツリーです。ロジックツリーを作成すると、最終目標に到達するためにどのKPIを改善すべきかが一目でわかります。

たとえば「応答率を向上させる」という目標を掲げた場合、放棄呼率の低下や平均処理時間の短縮が必要になります。さらに、平均処理時間を短縮するにはオペレーター教育やシステム改善が求められるなど、複数の要素が連動していることが見えてきます。
ロジックツリーを描く際は、以下2点を意識しましょう。
①最終目標に必要なKPIと構成要素を明確にする |
KPIは単独で改善しても効果が薄い場合があります。相関関係を可視化し、戦略的に取り組むことが成功への近道です。
6-3.目標達成のための優先順位をつける
KPIを測定すると、改善したい項目が次々と出てきます。しかし、すべてを同時に改善しようとするのは非効率です。
重要なのは、最終目標に直結するKPIから優先的に取り組むことです。
たとえば、応答率を改善したい場合、まずは放棄呼率の低下や平均処理時間の短縮に注力するのが効果的です。優先順位をつけることで、リソースを集中させ、改善スピードを高めることができます。

改善の進捗を確認しながら、次に取り組むべきKPIを見極める。この繰り返しが、効率的な運営改善につながります。
6-4.現状と課題を共有する
KPIを測定したら、その結果をオペレーターと共有しましょう。データを収集するだけでは意味がありません。現状と課題を共有することで、チーム全体が改善意識を持ち、モチベーションも高まります。
共有する際は、以下の内容を明確にし、次にどのような行動を取るべきかまで伝えることが重要です。
・高水準を維持できている項目 |
特に改善された点や強みを共有することで、オペレーターのやる気を引き出せます。PDCAサイクルを意識し、単なる報告ではなく「次のアクション」につなげる共有を心がけましょう。
6-5.KPI項目は定期的に見直す
KPIは一度設定したら終わりではありません。
コンタクトセンターの業務改善が進むにつれて、重要な指標は変化します。定期的に見直しを行い、現状に合ったKPIを設定することが必要です。
見直しの際は、これらを確認しましょう。
・最終目標に紐づいているか |
状況に応じて柔軟にKPIを更新することで、改善の効果を最大化できます。
7. KPI改善のPDCAを回すならアウトソーシング活用も検討

KPIを設定し、定期的に改善計画を立てて実行することは、コンタクトセンター運営において非常に重要です。しかし、実際にはこれを自社だけで継続するのは簡単ではありません。
コンタクトセンターは「モノ」ではなく「人」がサービスを提供するため、計画通りに進むこともあれば、予想外の課題が発生することもあります。
こうした変動をコントロールするためには、スーパーバイザーのマネジメント力やオペレーターを支援するツールなど、運営環境の整備が不可欠です。しかし、これらをすべてインハウスで準備しようとすると、費用や工数が膨大になるリスクがあります。
そこで検討したいのが、アウトソーシングの活用です。
専門の運営パートナーを利用することで、以下のようなメリットがあります。
・専門知識とノウハウの活用:KPI改善に特化した運営手法を導入可能 |
トランスコスモスでは、3000社以上の運営実績から培ったノウハウを活かし、KPI改善に必要な「人・モノ・ツール」ワンストップで提供しています。
KPI改善のPDCAを効率的に回したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?この記事を通じて、コンタクトセンターのKPIとは何か、そして目標達成のためにどのように設定・活用すべきかを理解できたと思います。
最後に、この記事のポイントを整理します。
●KPIとは?
KPI(重要業績評価指標)は、最終目標(KGI)達成に向けた中間目標です。コンタクトセンターでは、接続品質・応対品質・生産品質・処理品質を軸にKPIを設定・管理することが一般的です。
●KPIを管理する必要性
1.課題解決の近道になる |
●KPI活用の5つのポイント
1.週次・月次でPDCAを回し、継続的に改善する |
この記事を参考に、自社のコンタクトセンターに合ったKPIを設定し、最終目標達成に向けて戦略的に活用できることを願っています。
