プロアクティブチャットとは、Webサイトに滞在しているユーザーに対しサイトを運営している企業側からアプローチをするチャットの方法です。
ユーザーが商品購入に迷うタイミングや問題を抱えるタイミングなど一定の条件に応じてチャットをポップアップ表示させて、積極的にサポートを行います。その結果、商品やサービスの購入促進や顧客体験(CX)の向上につながります。
トランスコスモスが実施した「消費者のオンライン購入における接客ニーズ調査」では、約4割のユーザーはプロアクティブチャットがあると便利だと感じており、ユーザーのニーズに寄り添うためには導入が欠かせません。
そこでこの記事では、プロアクティブチャットを活用するメリットや注意点、そして「消費者のオンライン購入における接客ニーズ調査」から分かるプロアクティブチャットの利用動向を解説します。
◎プロアクティブチャットとは
◎プロアクティブチャットに関する調査結果
◎プロアクティブチャットを活用する3つのメリット
◎プロアクティブチャットを活用するときの注意点
◎調査データから読み解くプロアクティブチャットを成功させるポイント
この記事を最後まで読むとプロアクティブチャットの重要性や活用方法が理解でき、導入を検討できるはずです。
プロアクティブチャットはユーザーと企業の双方にメリットがある手法なので、ぜひ参考にしてみてください。
1.プロアクティブチャットとは
冒頭でも触れたようにプロアクティブチャットとは、Webサイトに滞在しているユーザーに対しサイトを運営している企業側からアプローチをするチャットの方法です。
・Webサイトの滞在時間
・商品やサービスを買い物かごに入れている
・短時間のうちに同じページに何度も訪問している
など、あらかじめ設定した一定の条件を満たしたときに下図のようにプロアクティブチャットをポップアップ表示します。
ユーザーはポップアップ表示されたチャットをクリックするだけで、オペレーターとのチャットを開始することができます。ユーザー側がチャットを使用するタイミングを待つのではなく、オペレーター側から積極的にサポートを提供するところが大きな特徴です。
「3.プロアクティブチャットを活用する3つのメリット」で詳しく解説しますが、プロアクティブチャットを活用することで顧客体験の向上や機会損失の防止などにつながります。
オペレーター(有人)が対応するチャットの種類については下記の記事で解説しているので、参考にしてみてください。
2.プロアクティブチャットに関する調査結果
ここからは、トランスコスモスが実施した「消費者のオンライン購入における接客ニーズ調査」をもとに、プロアクティブチャットの利用意向やユーザーが求める利用シーンをご紹介します。
今回の調査ではプロアクティブチャット以外にも、以下のようなオンライン購入におけるチャットニーズを調査しています。詳しくは、下記の記事をご覧ください。
消費者のオンライン購入における 接客ニーズ調査の質問 |
・インターネットでの購入(利用・申込)の経験があるか |
2-1.チャットに求められているのは迅速な問題解決
まずは、ユーザーがどのようなシーンでチャットを利用したくなるのか見てみましょう。
以下のグラフは「インターネットショッピングで購入を検討している際に、チャットで相談したいと感じたことがある」と事前に回答した方に対し、「チャットで相談したいと感じた理由」について調査しました。
Cotra編集部では、チャットを利用したいと感じるユーザーは手軽さや迅速な問題解決を求めていると想定し、以下5項目から最も近しい理由を回答いただいています。
<回答選択>
・自分で調べるより早く不明点が解消されそうだから
・近くに店舗がない(もしくは遠い)から
・電話よりも気軽に聞けるから
・営業時間以外でも好きな時に聞けるから
・急いで回答が欲しかったから
・その他
■チャットで相談したいと感じた理由で最も近しいのはどれですか?
調査の結果、「電話よりも気軽に聞ける」という手軽さよりも、「自分で調べるより早く不明点が解消されそう」という迅速な問題解決ができることへの期待感が高いことがわかりました。
多くのユーザーは不明点や問題点が発生した際に、自身でWebサイト上のFAQなどを活用しまずは自己解決をする傾向にあります。しかし、業界や利用シーンによって緊急性の高さや専門性の高さを理由に、自身で調べることよりも迅速な問題解決につながるチャットが評価されているようです。
とくに、業界別でみる緊急性の高い「電気・ガスの申し込み」ではユーザーの好きなタイミング問い合わせができ問題解決ができることへの期待感が感じられました。また「保険の加入」窓口や「生活家電の購入」窓口、スマートフォンのプラン変更窓口では専門的な知識が必要な場合があるため、自身で調べるより早く問題点が解決できるチャットを利用している人も多いことがわかっています。
コールセンターのチャットについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
2-2.50%のユーザーがプロアクティブチャットは便利だと感じている
次に、「何らかの理由で困っている場合、プロアクティブチャットがあると便利だと思いますか?」という質問に対して、50%以上のユーザーが「はい」と回答しています。
■何らかの理由で困っている場合、プロアクティブチャットがあると便利だと思いますか?
中でも、保険の加入や電話・ガスの申し込みにおいては、55%以上のユーザーがプロアクティブチャットは便利だと認識していました。
保険やガス・電気の申し込みはできるだけ手短に終わらせたいと思うものの、自身では判断できない点や記入方法が分からない点があります。そのようなときにユーザーはプロアクティブチャットを活用し、迅速に課題解決ができることを望んでいるのです。
企業側は顧客の気持ちを汲み取りプロアクティブチャットを介してサポートを行うことで、顧客体験(CX)の向上や利益拡大を実現できるでしょう。
顧客体験の向上についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
2-3.プロアクティブチャットはFAQとの親和性が高い
続いて、「どのような状況の時にプロアクティブチャットでサポートを受けられると便利だと思いますか?」という質問に対しては、「よくある質問に一定時間滞在しているとき」という回答が多くなっています。
■どのような状況の時にプロアクティブチャットでサポートを受けられると便利だと思いますか?
この結果から商品画面や検索画面だけでなく、FAQページとプロアクティブチャットの親和性が高いことが分かるでしょう。ユーザーが商品詳細ページや他のWebページからよくある質問に遷移して一定時間滞在しているときは、自己解決ができずに困っていることが伺えます。
商品を購入する前に確認したいことがありFAQページを見たものの問題解決につながる回答が見当たらず、困っているという事象も考えられます。
このまま問題解決ができないと、商品の購入を諦めてしまう可能性があります。Webサイト上でのユーザー行動を分析して、ユーザーの導線や行動に応じてプロアクティブチャットを配置することが求められます。
FAQについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
2-4.プロアクティブチャットは迅速なサポートとユーザーの利便性向上の2つの目的で有効活用できる
トランスコスモスが実施した「消費者のオンライン購入における接客ニーズ調査」を分析してみると、プロアクティブチャットは「迅速なサポート」と「ユーザーの利便性向上」の2つの目的で導入が検討できます。
①迅速なサポート
ユーザーがチャットを利用したいシーンやプロアクティブチャットを利用したいシーンを紐解いていくと、少しでも早く問題解決をしたい心理が見えてきます。
チャットを利用したいシーンでは
・自分で調べるよりも早く問題解決ができそう |
が利用する理由の1位となっています。また、プロアクティブチャットを利用したいシーンでも、FAQや検索を繰り返ししているときに少しでも早く問題を解消したい心理が見えてきます。
商品やサービスの手続きが複雑な業種やアフターサポートを重視したい場合は、プロアクティブチャットを有効活用できるでしょう。
②ユーザーの利便性の向上
ユーザーがチャットを利用したいシーンやプロアクティブチャットを利用したいシーンには、利便性を求める声が一定数あります。
例えば、チャットを利用したいシーンでは
・営業時間外に問い合わせができる |
という場合に、チャットの利用を検索しています。
プロアクティブチャットを利用したいシーンでも、商品画面に一定時間滞在しているとき など商品やサービスを検討するときのサポートを期待しているユーザーも少なからずいます。
Webサイトの場合は店頭のように対面接客ができないため、プロアクティブチャットを利用して利便性を向上させることも一つの方法でしょう。
3.プロアクティブチャットを活用する3つのメリット
プロアクティブチャットに対するユーザーの意識が理解できたところで、改めてプロアクティブチャットのメリットを確認してみましょう。プロアクティブチャットのメリットとしては、次の3つがあります。
プロアクティブチャットを活用する3つのメリット |
①フォローが必要なタイミングでサポートができる |
プロアクティブチャットを活用するべきか判断するときに知っておきたいポイントなので、ぜひチェックしてみてください。
3-1.フォローが必要なタイミングでサポートができる
1つ目は、ユーザーのフォローが必要となるタイミングでサポートができるところです。プロアクティブチャットがない場合はユーザーが疑問や悩みを抱えても、ユーザー側から問い合わせをしないと問題解決ができません。
その点、プロアクティブチャットは蓄積されたデータをもとに、トリガーを設定してアプローチができます。例えば、Webサイトの同じページを何度も往復しているユーザーは、何らかの問題や悩みを抱えていると予測できます。
そこで、一定回数1つのページを往復しているユーザーにはプロアクティブチャットを表示させると、ユーザーにとってベストなタイミングでサポートを受けられる可能性が高いです。逆に、ページを往復していないユーザーにプロアクティブチャットを表示させると「今は必要ない」「買い物を妨げている」と感じられるかもしれません。
このように、ユーザーにとってフォローが必要なタイミングを見極め、商品やサービスの購入へとつながるサポートができるのはプロアクティブチャットの魅力だと言えます。
3-2.ユーザーの離脱を防止できる
2つ目は、Webサイトからユーザーが離脱することを防止できるところです。店舗のように対面で接客を受けられないWebサイトでは、商品やサービスに不安や悩みを抱えることがあります。
その際に積極的にコンタクトセンター(コールセンター)に電話やメール、チャットで問い合わせができるユーザーばかりではないため、問い合わせにハードルを感じる場合には購入を諦めて離脱するかもしれません。
プロアクティブチャットを活用すれば、ユーザーが離脱をする前に企業側から積極的にアプローチができます。先ほどのアンケート調査にもありましたが
・よくある質問に一定時間滞在しているとき |
など、ユーザーが困っていると思われるタイミングで積極的に声をかければ、離脱を防止できるでしょう。
たとえば、ユーザーが商品画面に5分以上滞在していたときに「何かお困りごとはありませんか?」と、プロアクティブチャットをポップアップ表示します。
プロアクティブチャットに気付いたユーザーがチャットを開始し、「サイズで悩んでいます」などのテキスト入力をすると、問題が解決するようにオペレーターがサポートすることができます。その結果、離脱する可能性があったユーザーを商品購入まで導くことが可能です。
3-3.アップセルやクロスセルを提案できる
3つ目は、アップセルやクロスセルの提案ができるところです。
アップセルは現在検討している商品よりもワンランク上の商品を提案すること、クロスセルは現在検討している商品と関連性のある商品を勧めることです。
アップセル | ユーザーが購入を検討している商品よりも価格が高い商品を提案する手法 |
クロスセル | ユーザーが購入を検討している商品と関連性のある商品の追加購入を勧める手法 |
店舗型のアパレルショップの場合はシャツの購入を検討しているユーザーに対し、ワンランク上の商品やパンツ、スカートなどの関連商品を勧めることが可能です。しかし、Webサイトの場合はアップセルやクロスセルがなかなかできず、売り上げの拡大に悩んでいるケースもあるでしょう。
プロアクティブチャットを利用すれば、商品やサービスを購入する前にユーザーに企業側からアップセルやクロスセルの提案ができます。
例えば、買い物かごに音楽プレイヤーが入っているユーザーが「レジに進む」ボタンを押したとしましょう。このタイミングでプロアクティブチャットをポップアップ表示して「この商品を購入された方におすすめのイヤホンをご紹介します」などとチャットにつなげます。ユーザーが購入しようとしている商品に応じて、アップセルやクロスセルの提案ができれば売上の拡大につながる可能性があります。
アップセルについては下記の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
4.プロアクティブチャットを活用するときの注意点
実際に、プロアクティブチャットを活用するときには次の2つの点に注意が必要です。
プロアクティブチャットを活用するときの注意点 |
①蓄積されたデータを基にコミュニケーション設計をする |
プロアクティブチャットの導入に失敗しないためにも、事前に確認しましょう。
4-1.蓄積されたデータを基にコミュニケーション設計をする
特に意味もなくプロアクティブチャットを表示させても、ユーザーに興味を持ってもらえません。それどころかWebサイト閲覧の妨げになると判断されて、顧客満足度が低下する可能性があります。
そのため、プロアクティブチャットを活用するときはWebサイト上での行動データをもとにコミュニケーション設計をすることが大切です。
ECサイトであれば、通常買い物かごに入れてからどのくらいの時間で購入画面に遷移するのかなどを把握しておくと、ベストに近いタイミングで購入につながるサポートすることが可能になります。
・Webサイトの目的を達成するにはどのようなサポートが必要なのか |
などのデータを分析して、戦略的にプロアクティブチャットを活用しましょう。
顧客コミュニケーションについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
4-2.プロアクティブチャットの目的を明確にする
プロアクティブチャットを有効活用するには、導入の目的を明確にしておきましょう。導入の目的が曖昧だと、どのようなサポートをするべきかオペレーターが困る可能性があります。
一例ですが、顧客満足度を目的としたサポートと売上拡大を目的としたサポートでは、トークスクリプトが大きく異なります。顧客満足度を目的としたサポートが目的の場合顧客の現状を把握して寄り添うことが求められますが、売上拡大を目的としたサポートが目的の場合は顧客の現状を把握したうえで営業活動を行わなければなりません。
プロアクティブチャットの効果を最大化するためにも、顧客体験や顧客満足度の向上や売上の拡大などあらかじめ目的を明確にして取り組むようにしましょう。
5.調査データから読み解くプロアクティブチャットを成功させるポイント
最後に「消費者のオンライン購入における接客ニーズ調査」から読み解く、プロアクティブチャットを成功させるためのポイントをご紹介します。
プロアクティブチャットを成功させるためのポイント |
①プロアクティブチャットを表示させるページを検討する |
プロアクティブチャットの効果を最大化するためにも、ぜひ参考にしてください。
5-1.プロアクティブチャットを表示させるページを検討する
プロアクティブチャットは、どのページに表示させるべきか検討することが重要です。調査結果では商品ページや検索ページだけでなく、FAQページでの利用を望む声があることが分かりました。
蓄積されたWeb上の離脱率や滞在時間、URLのクリック率などを分析しながら、プロアクティブチャットの表示が必要とされるページを検討しましょう。このときにページの質を見直すことも大切です。
例えば、FAQページと商品ページでプロアクティブチャットが必要だと判断したとします。分析を重ねるとFAQの充実度が低く、FAQを補完すれば自己解決率があがる可能性が見えてきました。FAQの改善と自己解決率の向上ができれば、オペレーターは商品ページでの案内に集中できます。
FAQについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
5-2.簡潔なやり取りができるようにトークスクリプトを準備する
調査結果ではチャットに迅速な回答や、自分で調べるよりも早い問題解決を期待する声がありました。そのため、プロアクティブチャットのやり取りが長くなったり問題解決までに時間を要したりすると不満につながる可能性があります。
できる限り簡潔なやり取りで問題解決に導けるように、あらかじめトークスクリプトを用意しておきましょう。一例ですが以下のような工夫が検討できます。
・複雑な質問やテキストでは説明しにくい問い合わせは電話対応に切り替える |
プロアクティブチャットはテキストベースでのやり取りとなるので、長文や複雑な内容には向いていません。
どうしても複雑になる場合は参考URLを添付したり電話対応に切り替えたりと、テキスト以外の方法を活用することも一つの方法です。
5-3.プロアクティブチャットを分かりやすく表示させる
「2-2.50%のユーザーがプロアクティブチャットは便利だと感じている」からも分かるように、プロアクティブチャットが便利だと認識しているユーザーが50%を超えています。
表示させるタイミングやページを誤らなければ利用してもらえる可能性は比較的高いと考えられるので、分かりやすく表示させることが欠かせません。
・プロアクティブチャットだと分かるデザインであること |
を意識してみましょう。
Webページの片隅に小さくポップアップ表示をしても、プロアクティブチャットだと判断できない可能性があります。ユーザーが手軽に利用できないとプロアクティブチャットの役割を果たせないため、表示方法も工夫してみてください。
まとめ
いかがでしたか?最後まで読みプロアクティブチャットの概要やメリット、調査結果をもとにしたユーザーの動向や成功のポイントが理解できたかと思います。
最後に、この記事のポイントをまとめてみましょう。
◎プロアクティブチャットとはWebサイトに滞在しているユーザーに対しサイトを運用している企業からアプローチをするチャットの方法 |
◎調査結果から読み解くプロアクティブチャットを成功させるポイントは次の3つ |
今回ご紹介した調査結果から分かるように、プロアクティブチャットの利用に前向きなユーザーが多いです。
業界別・21種の購入シーン別に「消費者のオンライン購入における接客ニーズ調査」結果をまとめています。
是非ご活用ください。
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健康食品・サプリメント | 家具 | 書籍 | 飲料(酒類含む) | 食料品 | 日用品 | 電気・ガス |
プロアクティブチャットを含むチャット接客の導入や運用のお悩みについては、トランスコスモスへご相談ください。
自社の目的に応じてプロアクティブチャットを有効活用でき、ユーザー体験の向上や利益拡大につながることを願っています。