「AIの音声認識ってどういうものなのかわからない」
「AIの音声認識っていいの?自社に活用出来そうか知りたい」
AIの音声認識について、このような疑問をお持ちではありませんか?
AIによる音声認識とは、人が話す言葉をAIが理解し、テキスト化する技術です。
私たちの身近にも多く活用されており、
「スマートフォンなどのデバイスのアシスタント機能(Siri/Alexaなど)」
「録音した音声をテキストに変換する文字起こしサービス」
など、私たちが言葉を発すると、その音声を認識してテキスト化してくれたり、適切な回答を返してくれたりします。
またビジネスの現場で利用すると、以下のようなメリットを得られます。
・業務を効率化できる |
ただしAI音声認識を自社へ導入検討している場合、その「活用方法」や「AI音声認識技術の課題点」なども知っておく必要があります。
というのも、自社の業務に合う活用方法がなかったり、自社にとってAI認識技術の課題となっている点が致命的であったりする可能性もあり、そうした情報を知っておかないと、導入してから後悔することになりかねないためです。
そこで本記事では、AI音声認識の基礎知識だけでなく、
・一般的な用途(AI音声認識でできること) |
などを解説します。
本記事の内容は以下のとおりです。
【本記事の内容】 ・AI音声認識とは |
この記事を読むことで、AI音声認識の概要や仕組み、一般的な用途などがわかるようになります。
またそれだけでなく、AI音声認識のメリットや課題、おすすめなケースなどを知って、自社に取り入れるかどうかを適切に判断できるようになります。
ぜひ最後までお読みください。
1.AI音声認識とは
AI音声認識は、人が話す言葉をAIが理解して、テキストデータに変換する技術です。
AIが音声の波形を読み取って分析し、それを文字情報に変換します。
これにはAIの「機械学習」や「深層学習(ディープラーニング)」などの技術を使用しています。
大量の音声データからパターンを学習し、AIが聞き取ったことがない音声に対しても、過去の音声データパターンを参照して、正確にテキスト化することができるのです。
具体的には、以下のような仕組みでAIが音声認識を行います。
【AIが音声認識を行う手順】
① | 音声入力 | マイクを使って、認識させたい音声を入力する |
② | 音響分析 | 人間の声や音をコンピュータが理解できる形(データ)に変換する |
③ | 音素を抽出 | 「②でデータ化した入力音声」と「AIが過去に学習した音声データ」を照らし合わせて、母音(アイウエオ)、擬音(ン)、子音を抽出する作業(音素を抽出する作業)を行う。 (例)「朝に水を飲む」の音素は「a-s-a-n-i-m-i-z-u-w-o-n-o-m-u」 |
④ | 音素を単語に変換後、文章として変換 | ③で抜き出した音素を意味のある単語に変換し、文章を整形していく。 例:「hashinochikakuniiku(橋の近くに行く)」の場合、 「hashi(橋/箸)no(の) chikaku(近く/知覚)ni(に) iku(行く/育)」 といったように、単語の候補へと変換。そして「この単語の前後には、こんな単語が来る確率が高い」ということを計算し、確率の高い組み合わせに決定していき、文章を整えていく |
⑤ | テキスト入力 | ④で音素を単語へと変換し、文章へと整形したら、最後にテキストとして出力される |
実は、私たちの身近にもAI音声認識技術が使われた製品があふれており、スマートフォンにも搭載されているAIアシスタントは、AI音声認識の技術が使われています。
具体的には、AI音声認識で人間が発した言葉を内部でテキスト化し、それを自然言語処理(※)することで、AIが人間の言葉を理解できるようにします。そして、「●●をお願いされたら~~をする」などといったように、AIに適切な対応を学習させます。
そうすることで、AIアシスタントとして、人間の声の指示に応じて、さまざまなタスクを自動で実行できるようになるのです。
例えば、AI音声認識を活用したAIアシスタントには、以下のようなものがあります。
【AIアシスタントの活用例】 ◆Siri(iPhone搭載) ◆Google Assistant(Google Home搭載) ◆Alexa(Amazon Echo搭載) ◆その他ビジネスシーンでの活用 |
このように私たちの身の回りにも、実はAI音声認識を活用したツールがあるのです。
※自然言語処理:人が話したり書いたりした言葉をコンピュータで処理して理解させる技術
2.AI音声認識の一般的な用途【できること】
AI音声認識の仕組みついて理解したところで、AI音声認識の一般的な用途も知っておきましょう。
そうすることで「具体的に何ができるのか」「自社で活用できるかどうか」など、イメージできるようになります。
2章では、AI音声認識の一般的な用途を以下5つご紹介します。
【AI音声認識の一般的な用途】 ・文字起こし・議事録の自動作成 |
それぞれ見ていきましょう。
2-1.文字起こし・議事録の自動作成
1つめは「文字起こし・議事録の自動作成」です。
AI音声認識の技術を活用することで、会議や打ち合わせの音声をリアルタイムにテキスト化できるため、会議と同時進行で議事録を作成できます。
これまで議事録作成は、担当者のスキルに依存していました。「作成にかかる時間」「正確性」に大きなばらつきがあったのです。
そこでAI音声認識を活用することで、担当者のスキル・スピードに依存しない、一貫した品質の議事録作成がリアルタイムにできます。会議の内容がリアルタイムでテキスト化されていれば、会議に途中参加した人でもそれまでにどのような会話がされていたかが分かります。
更には生成AIを活用し、要約をすれば要点をまとめた議事録を作ることができます。
さらにAIの音声認識では、業界特有の用語や独自の表現も学習し、正確にテキスト化することができます。
会議や打ち合わせ以外にも、問い合わせ電話の内容をその場で文字起こしして記録しておいたり、録音データから文字起こしをしたりするシーンにも有効活用できます。
【こんな企業におすすめ!】 ・社内会議ごとに議事録を残す必要がある |
2-2.通訳・翻訳
2つめは「通訳・翻訳」です。
AI音声認識は、多言語に対応し、リアルタイムでの翻訳ができます。
従来の通訳者を必要とするコミュニケーションと比較して、AIによる翻訳は、
・時間と場所を問わずに利用できる |
など、柔軟性があります。
また継続的にAI音声認識に学習させていくことにより、専門用語や方言などの特殊な言語パターンにも対応できるようになるなど精度が向上しています。
そのため、外国語でのコミュニケーションが必要な際に大いに活躍してくれるのです。
例えば「ポケトークW」などのAI音声翻訳機は、最大70言語間での翻訳ができ、外国語を理解したり、他国の人に自分が伝えたいことをスムーズに伝えたりする際にも役立ちます。
また「Google音声アシスタント」や「Siri」など、音声認識技術を活用したデバイスは、日常的なコミュニケーションでの言語翻訳サポートとして実際に利用されています。
こうした音声認識AIの技術は、対面の会話だけでなく、ビデオ会議や国際会議など、さまざまなシーンで言語の壁を低くし、スムーズなコミュニケーションを実現しているのです。
【こんな企業におすすめ!】 ・海外企業との取引が多い |
2-3.音声による文字入力
3つめは「音声による文字入力」です。
AI音声認識技術の発達によって人の話す言葉を正確にテキスト化できるようになり、
・手入力で生じる時間のロス |
が可能になったため、文章作成するシーンで利用されるようになりました。
例えば、ビジネスシーンで急いでメールを送らなければならないときです。
移動中や他の作業をしながらでも、音声入力を使って素早くメールの下書きを作成できます。
またブログを書くなど、長い文章を書く場合、音声によって文字入力を行うことで、手入力よりもスピーディーに記事を執筆できるでしょう。
このようにAIの音声認識による文字入力によって、時間を有効に活用できるようになるため、さまざまな場面で活用されています。
【こんな人・企業におすすめ!】 ・ライター・編集業務を行っている |
2-4.AIアシスタント
4つめは「AIアシスタント」です。
AI音声認識で人間が発した言葉を内部でテキスト化し、それを自然言語処理(※)することで、AIが人間の言葉を理解できるようにします。そして「●●をお願いされたら~~をする」などといったように、AIに適切な対応を学習させます。
この技術を活用することで、人間の声の指示に応じて、さまざまなタスクを自動で実行できる「AIアシスタント」が生み出されました。
AIアシスタントは音声のみで情報の検索、スケジュールの管理、家電の操作などが行えるため、マルチタスクが必要なビジネスシーンや、動作が難しい状況でも便利に使えます。
AI音声認識を活用したAIアシスタントは、以下のようなものがあります。
あなたも利用したことがあるのではないでしょうか。
【AIアシスタントの活用例】 ◆Siri(iPhone搭載) ◆Google Assistant(Google Home搭載) ◆Alexa(Amazon Echo搭載) ◆その他ビジネスシーンでの活用 |
このようにAI音声認識を活用したAIアシスタントは、私たちの身の回りでさまざまに活用されているのです。
AIアシスタントは、さまざまな場面で音声入力によって使用できるため、どのような人であっても便利に使うことができる、いわば便利屋さんのような存在です。
※自然言語処理:人が話したり書いたりした言葉をコンピュータで処理して理解させる技術
2-5.ボイスボット
5つめは「ボイスボット」です。
「AI音声認識技術」と「自然言語処理技術」を組み合わせることで、人間からの質問や要求を正確に理解し、音声で適切に反応できるボイスボットが誕生しました。
最近では、自然言語処理技術の進化により、より人間らしい自然な対話が可能になってきています。
ボイスボットは時間に関係なく対応できるため、企業は顧客からの問い合わせ対応を行う担当者(オペレーター)の人手不足を補い、24時間365日の対応体制を構築することができるようになります。
またオペレーターが業務過多になっている場合、一部の問い合わせ対応をボイスボットに対応してもらうことによって負荷を減らすことも可能です。
具体的には、以下のような場面でボイスボットが活用されています。
【ボイスボットの活用例】 ◆金融・保険や、通信サービスでのコンタクトセンター(コールセンター)の受付 ◆ECや通販における注文等の申し込み受付(コンタクトセンター) ◆飲食店・ホテルの予約・受付 |
ボイスボットの導入により、企業は顧客満足度の向上、業務効率化、コスト削減などのメリットを享受できます。AIと音声認識技術の進化に伴い、ボイスボットの可能性は今後もさらに広がっていくでしょう。
【こんな企業におすすめ!】 ・コンタクトセンターを運営している |
3.AI音声認識の活用事例
AI音声認識について、一般的な用途だけでなく、
・実際にビジネスの現場でどのように使われるのか |
を知っておきましょう。
そうすることで、自社での活用ができるのかどうか、イメージがわきやすくなるでしょう。
3章では、トランスコスモスが提供するAI音声認識サービス「transpeech」の活用事例を以下2つご紹介します。
①コンタクトセンター(コールセンター)における応答率の改善事例 |
3-1.コンタクトセンター(コールセンター)における応答率の改善事例
不動産業A社のコンタクトセンター(コールセンター)では、修理受付や工事内容の説明といった受信業務において、通話記録の入力作業が煩雑で時間を要していました。
特に新人オペレーターは通話後の処理(通話内容の記録など)に多くの時間がかかり、結果として応答率が低下してしまっていました。
そこで解決策として、AI音声認識ツール「transpeech」を導入し、以下の施策を実行しました。
【transpeechを導入して行った施策】~対話要約AIの導入~ 1 ログの標準化 2 生産性の向上 |
このような施策の実行により、平均後処理時間(電話応対終了後に、通話内容記録などの後処理にかかる時間)が30%削減し、280時間/月もの削減に成功しました。
これは対話要約AIの導入から僅か1ヵ月で、大幅な生産性向上とログ標準化を実現するという、A社にとって大きな成果でした。
この事例は、AI音声認識ツールの導入が、コンタクトセンター業務の
・応対の質の均一化 |
といった課題が解決でき、結果的に顧客サービスの質を大きく改善できることを実証している事例といえるでしょう。
3-2.コンタクトセンター(コールセンター)における教育研修の強化事例
サービス業B社では、来店のアポイント獲得業務を担当するコンタクトセンター(コールセンター)において、早期に新人育成をしてアポイント獲得率の全体的な向上を目指していました。
しかし、オペレーターの応対の品質評価のために上司が行う「聞き起こし」作業に多くの時間がかかり、モニタリングフォローやフィードバックを行う時間が不足していました。
そこでAI音声認識ツール「transpeech」を導入し、以下の取り組みを行いました。
【transpeechを導入して行った施策】 ①応対音声データを全件テキスト化してモニタリングを実施 |
このような取り組みを行った結果、「聞き起こし」にかかる工数を約40%削減し、モニタリング件数の増加とオペレーター指導の質及び量の向上につなげました。
またテキストでのリアルタイムモニタリングによってオペレーターの即時指導が可能となり、品質と効率が向上。結果として、来店率が5%アップしました。
そして最終的に、新人研修期間を12週間から8週間に短縮できたのです。
この事例によって、AI音声認識ツールを活用することで、業務プロセスの効率化と質の向上を同時に達成できることがわかります。
また、アポイント獲得率の向上や研修期間の短縮など、ビジネスに直接的な利益をもたらす成果も得られることがわかる事例だといえるでしょう。
4.AI音声認識をビジネスで活用する4つのメリット
ここまでAI音声認識の基礎知識や活用事例などをご紹介しましたが、「自社でAI音声認識を活用するべきかどうか」を判断するためには、メリット・デメリットの両面を知って適切に導入判断をする必要があります。
そこでまずは4章でAI音声認識をビジネスで活用するメリットを以下4つご紹介します。
【AI音声認識をビジネスで活用する4つのメリット】 ・業務を効率化できる |
また6章ではAI音声認識を活用する際の障壁となる課題について解説しています。
それではメリットについて1つずつ見ていきましょう。
4-1.業務を効率化できる
1つめのメリットは「業務を効率化できる」ことです。
AI音声認識の導入により、議事録の自動作成や会議の内容のリアルタイム文字起こしなど、従来は手作業で行っていた時間を要する作業が自動化され、業務プロセスがスピードアップします。
たとえば、会議の内容をAI音声認識によってリアルタイムでテキスト化する場合、会議の進行と同時にリアルタイムで文字起こしができるため、会議終了後、少し手直しをするだけですぐに議事録が完成し、参加者に共有できるようになります。
その結果、議事録担当者は会議の内容を記録する作業から解放され、他の業務に集中できるようになるでしょう。
このようにAI音声認識の活用によって業務を効率化できるため、生産性向上や、働き方改革が求められる現代のビジネス環境において大きな効果が期待できます。
4-2.業務精度を向上できる
2つめは「業務精度を向上できる」ことです。
現代のAI音声認識技術は、高い精度で音声データをテキストに変換できます。
そのため、私たちが起こしやすい「入力ミス」や「情報の誤認」を減らすことができ、業務精度を向上できるのです。
たとえば顧客からの電話に応対している際に、AI音声認識によって顧客の通話内容をリアルタイム入力することで、
・オペレーターの聞き間違い |
などを防ぐことができます。
その結果、正確な顧客データが保つことができます。
同じ顧客から再度問い合わせがあったときに正確で詳細なデータを参考にできるため、顧客対応の質を向上できるでしょう。
またAI音声認識による正確なデータ入力は、正確な内容がより重視される報告書や文書などの品質向上にも貢献し、結果的に企業の信頼性と業務効率の両方を高めることにつながるのです。
したがって業務の精度を向上できるという点は、AI音声認識の大きな魅力のひとつといえます。
4-3.問い合わせ・窓口などの対応を自動化でき、業務負担を軽減できる
3つめは、「音声認識AIを活用したボイスボットを活用すれば、問い合わせ・窓口などの対応を自動化でき、業務負担を軽減できる」ことです。
ボイスボットは、人が発した質問の内容をAIが理解し、自動で適切な回答ができるというものです。
そのため回答が簡単な質問に関してはボイスボットだけで対応できるようになります。
難しい質問や特殊な対応が必要なケースについては、オペレーターへの転送もスムーズに行うことが可能です。
こうしたボイスボットによる対応によって、担当者がすべての問い合わせに対応する必要がなくなり、業務負担を軽減できるのです。
例えば、家電メーカーA社で顧客からの電話問い合わせに対する一次対応として、ボイスボットを導入した場合を考えてみましょう。
ある顧客が、新しく購入したエアコンの設定方法についてA社に問い合わせを行うと、ボイスボットが製品マニュアルにもとづいた詳細な設定手順を音声で案内します。
オペレーターは、この顧客に対応する必要はなくなるため、その分業務負担は減ります。
このように、ボイスボットを活用することで、問い合わせや窓口対応の一部を自動化し、担当者の負担を軽減できるのです。
4-4.顧客満足度の向上に期待できる
4つめは「顧客満足度の向上に期待できる」ことです。
AI音声認識を使用したボイスボットを利用することで、顧客の問い合わせやサービス要求に迅速に対応できるようになるため、顧客体験が向上し、手続きや問い合わせのストレスが大幅に軽減され、顧客満足度が向上するのです。
先の例「家電メーカーAI社の問い合わせ窓口」を改めて考えてみましょう。
ある顧客が、新しく購入したエアコンの設定方法についてA社に問い合わせを行うと、ボイスボットが製品マニュアルにもとづいた詳細な設定手順を音声で即座に案内してくれます。スピーディーな問い合わせ対応に顧客は満足度を高めるでしょう。
このようにAI音声認識を活用したボイスボットの導入は、顧客体験の質を高めるとともに、ビジネスプロセスの効率化を実現し、結果として顧客満足度の向上に寄与してくれるのです。
5.AI音声認識を活用する際の4つの課題
AI音声認識は、ビジネスプロセスの効率化や顧客サービスの向上に大きなメリットをもたらしますが、一方で課題も存在します。
それは、
【AI音声認識をビジネスで活用する4つの課題】 ・雑音やノイズが多い場合に認識精度が下がる |
です。
それぞれ見ていきましょう。
5-1.雑音やノイズが多い場合に認識精度が下がる
1つめは「雑音やノイズが多い場合に認識精度が下がる」ことです。
周囲の雑音やノイズがあると、対象音声とノイズを区別できず、誤った解釈をしてしまうケースがあります。
環境音や人の話し声、機械の騒音など、さまざまなノイズが存在する現場において、音声認識システムが正確な認識を行うためには高度なノイズキャンセリング技術や音声前処理技術が必要です。
しかし、これらの技術も完全なノイズ除去を保証するものではなく、特に複雑なノイズ環境下では認識精度に影響を及ぼすことがあるのです。
雑音やノイズが多い環境下でAI音声認識ツールを利用する場合は、
・ノイズキャンセリング機能を備えた高性能マイク |
を導入するなどの対策を講じる必要があります。
このように、どのような環境下でも同じような性能で音声認識ができるわけではないという点は、AI音声認識の課題であるといえるでしょう。
5-2.標準語以外の音声認識精度が下がる
2つめは「標準語以外の音声認識精度が下がる」ことです。
AI音声認識の多くは、標準語や共通語にもとづいて訓練されています。
特定の方言やスラングをAI音声認識が網羅していない場合、その言語特有の音声パターンや語彙を正確に識別できません。その結果、誤認識や認識不能が発生してしまい、全体の認識精度が低下するケースがあるのです。
こうした方言やスラングなどにも対応するためには、特定の地域やコミュニティに照準を合わせて方言データを収集し、AI音声認識に学習させる必要があります。
近年、AIの機械学習や深層学習(ディープラーニング)の進化によって、さまざまな言語や方言、スラングにも対応できるよう、AI音声認識技術の改善が進んでいます。
そのため、近い将来、この課題は解決されるようになるかもしれません。
5-3.意訳ができない
3つめは「意訳ができない」ことです。
AI音声認識は「入力されたデータ」や「事前に学習した内容」にもとづいて、出力するテキストの判断を下します。しかし人間が使う言葉の中には、言葉通りの意味だけでなく、話者の意図や状況、文化的背景に根ざしたニュアンスが含まれていることが多い傾向にあります。
私たちが行う「暗黙の理解」をAI音声認識が行うには、膨大なデータと高度な解釈能力が必要ですが、現在の技術ではこれが完全には実現していないのです。
例えば、ある人が「コーヒーが冷めないうちに」と言った場合です。
人間ならば「早く行動しよう」や「急いでください」という意図を理解できます。
しかし、AI音声認識では「コーヒーが冷める前に何をするべきか」という直接的な意味しか捉えられず、背後にある「急ぐべき」という暗黙のメッセージやその状況に即した行動を推測することはできません。
このように、言葉そのものではなく、それが使われる文脈や話者の意図を理解することが、AI音声認識にはまだ難しいのです。
したがって、AI音声認識技術が急速に進化してきたものの、人間同士の会話で自然に行われる意訳のような複雑な理解はまだAI音声認識には課題点であるといえるでしょう。
5-4.複数人が同時発話した際に認識精度が下がる
4つめは「複数人が同時発話した際に認識精度が下がる」ことです。
というのも、複数人が同時に話す状況では、発話の重なりや干渉により認識精度が著しく低下してしまうのです。
会議やオンラインミーティングで複数人が同時に意見を述べる場合、AI音声認識では各発話者の言葉を正確に捉えるのは簡単ではありません。
その結果、会議の議事録作成において、重要な情報が記録されなかったり、誤って記録されてしまったりする可能性があります。
対応策としては、「発言者識別技術」が組み込まれた音声認識システムの利用が挙げられます。
この技術は、各発話者の声紋を識別し、誰が何を言ったのかを明確に区別することで、複数人の同時発話でも高精度の音声認識を実現できます。
改良された一部のツールではこの「発言者識別技術」が搭載されているものもありますが、すべての環境で同様の結果を得るのはまだ難しいでしょう。
6.AI音声認識の活用がおすすめなケース、おすすめではないケース
ここまで、AI音声認識の活用のメリット・課題を解説しましたが、最後に自社にAI音声認識を取り入れるかしっかり決断できるよう、「AI音声認識の活用がおすすめなケース、おすすめでないケース」を解説します。
概要は以下のとおりです。
【AI音声認識の活用がおすすめなケース】 【AI音声認識の活用がおすすめでないケース】 |
それではそれぞれ見ていきましょう。
6-1.AI音声認識の活用がおすすめなケース
まずはAI音声認識の活用がおすすめなケースをそれぞれご紹介します。
議事録作成を自動化したいケース
議事録の作成を自動化したいと考えている場合は、AI音声認識の利用をおすすめします。
AI音声認識を活用することで、担当者のスキル・スピードに依存しない、一貫した品質の議事録作成がリアルタイムに作成できます。
会議の内容がリアルタイムでテキスト化されていれば、会議に途中参加した人でもそれまでにどのような会話がされていたかが分かります。
更には生成AIを活用し、要約をすれば要点をまとめた議事録を作ることができます。
【AI音声認識の活用がおすすめなケース】 ・社内会議のたびに議事録を残しておく必要がある |
通訳・翻訳を行う機会が多いケース
通訳や翻訳を行う機会が多い業務の場合、AI音声認識で「通訳・翻訳」がおすすめです。
AI音声認識は多言語に対応しており、なおかつリアルタイムで翻訳してテキスト化してくれるため、業務上、外国語を利用することがある場合には利用がおすすめです。
【AI音声認識の活用がおすすめなケース】 ・海外企業との取引が多い |
文章作成の機会が多いケース
文章作成の機会が多い場合、AI音声認識の「音声による文字入力」の利用がおすすめです。
AI音声認識では人の話す言葉を正確にテキスト化でき、手入力で生じる時間のロスがなく、スピーディーに文章を作成することができます。
そのため、文章を作成する機会の多い業務がある場合は、音声文字入力を利用すると、業務効率がアップし、より素早く文章を書くことができるのです。
【AI音声認識の活用がおすすめなケース】 ・ライター・編集業務を行っている |
コンタクトセンター(コールセンター)業務を行っているケース
顧客からの問い合わせ対応を行っている場合は、AI音声認識の「音声入力による文字起こし」「ボイスボット」の利用をおすすめします。
コンタクトセンター(コールセンター)などで顧客対応をする場合に、電話でのやりとりをリアルタイムに文字起こしして記録しておけば、あとから問い合わせ内容を思い出しながら手入力で記録していくよりも、正確でスピーディーにログを残すことができるでしょう。
またAI音声認識を活用したボイスボットに一部の問い合わせを対応させることで、オペレーターの業務負荷を減らすことができます。
コンタクトセンター業務を行っている場合は、業務効率化・オペレーターの業務負荷軽減などのメリットがあるため、活用をおすすめします。
6-2.AI音声認識の活用がおすすめではないケース
一方で、AI音声認識の活用がおすすめではないケースもあります。
それは「クレーム対応・カウンセリングを自動化したいケース」です。
AI音声認識システムは、人間が発した言葉を認識してテキスト化することはできても、話者の感情の背景にある心情を深く理解することはまだ困難です。
そのため、顧客の感情を適切に判断し、共感を示しながら対話を進めることは、人間はできても、AIが代替することはできないのです。
またクレーム対応やカウンセリングでは、個々のケースに応じた柔軟な対応が求められます。AI音声認識システムを活用したボイスボットなどは、プログラミングされたシナリオに沿って対応するため、予期せぬ質問や複雑な状況に対しては適切に対処することは難しいでしょう。
例えば「いつも一緒にいた友人が引っ越して外国に行ってしまい、なかなか会えなくなって寂しい」という顧客がいた場合です。
AI音声認識は人間が発した言葉をテキスト化して、言葉通りに理解することはできたとしても、
「なぜなかなか会えないのが寂しいのか」
「その人がどのくらい辛そうなのか」
「それ以外にも何か辛いことがあるのではないか」
などは、AI音声認識システムでは理解しきれず、適切な対応を取るのは難しいでしょう。
人それぞれ、どのように表現するのかも異なれば、感じ方も違い、パターン化するのが難しいためです。
また、「遠くに行ってしまった人に会えないのが寂しい」という悩みが、ボイスボットのシナリオ上にない場合、回答できない、もしくは見当違いな回答しか出力できない可能性があります。
このように、クレーム対応やカウンセリングにおいては、技術的な課題だけでなく、人間としての共感や理解が不可欠であるため、AI音声認識の活用には向いていないのです。
7.AI音声認識サービスを選ぶ3つのポイント
ここまでお伝えした情報から、「AI音声認識サービスの利用をする」と方向性が定まったら、「AI音声認識サービスを選ぶポイント」も知っておきたいものです。
そこで7章では、AI音声認識サービスを選ぶポイントを、以下3つご紹介します。
【AI音声認識サービスを選ぶ3つのポイント】 ・音声認識精度の高いものを選ぶ |
7-1.音声認識精度の高いものを選ぶ
1つめは「音声認識精度の高いものを選ぶ」ことです。
AI音声認識サービスによって音声認識の精度が異なります。
精度が低いものを導入すると、結局手作業で修正する手間が増えてしまうのです。
サービスによってはトライアル期間を設けているものもあるため、無料の範囲で音声認識精度を試したうえで導入検討を行いましょう。
7-2.登録単語数の多いものを選ぶ
2つめは「登録単語数の多いものを選ぶ」ことです。
AI音声認識では、登録されている単語の中から、聞き取った音声に最適な単語を選択して、出力します。
そのため、登録されている単語数が多ければ多いほど、語彙力のある、自然な文章を出力してもらいやすくなるのです。
登録単語数が多いものと少ないものを、以下を例にどのように表現に違いが出るのか見てみましょう。
【登録単語数の違いで、文章の出力に違いが出る例】 「最近、エコバッグを持ち歩いています」と発言した場合を考えてみましょう。 ◆登録単語数が少ない場合 登録単語数が少ないため、特定のキーワード(この場合「エコバッグ」)を学習していない可能性があります。その結果、発言全体を正確に認識し、テキスト化することができないため、情報が欠けた不完全な出力になります。 ◆登録単語数が多い場合 登録単語数が多い場合、特定の専門用語や流行語などもAI音声認識が学習しているため、ユーザーの発言をより正確に認識し、完全なテキストとして出力することができます。そのため、より高い表現力があり、正確に出力してくれます。 |
極端な例ではありますが、登録単語数が多いほど、より高い表現力で正確に文章を作成してもらえるため、登録単語数の多いものを選ぶようにしましょう。
7-3.操作性が高いものを選ぶ
3つめは「操作性が高いもの・使いやすいものを選ぶ」ことです。
AI音声認識の操作が難しい場合、従業員によっては使いこなせず、導入したのに使ってもらえない場合があります。また、使っていたとしても操作が難しいために、以前より業務効率が落ちてしまうおそれもあるでしょう。
例えば、
「音声入力ボタンの位置が分かりにくい」
「録音音声をアップロードしてテキスト化したいのに、どこにアップロードすればいいのかわからない」
「テキスト化されたデータを一括でコピーしたいのに、一括コピーのボタンがない」
など、さまざまな「使いにくい点」があるため、事前にトライアルができる場合は、その操作性も確認しておきましょう。
コンタクトセンターのAI音声認識ツールについて詳しくは |
コンタクトセンター(コールセンター)でAI音声認識ツールの導入を検討している場合は、ぜひトランスコスモスにお問い合わせください。 トランスコスモスでは、コンタクトセンターの運営において役立つAI音声認識ソリューション「transpeech」をご提供し、顧客のCX(顧客体験向上)をサポートします。 具体的には、transpeechによって以下のような支援を行うことができます。 ①音声認識 ②感情解析 ③AI defender ④品質管理プラットフォーム ⑤対話要約AI ⑥セールストーク解析 コンタクトセンター運営においてAI音声認識ツールに興味がある方は、ぜひトランスコスモスにお問い合わせください。 |
まとめ
この記事では、AIの音声認識の基礎知識やメリット・デメリット、活用に向いている企業などをご紹介しました。
ここで改めて本記事の内容をおさらいしましょう。
◆AI音声認識とは人が話す言葉をAIが理解して、テキストデータに変換する技術のこと
◆AI音声認識の一般的な用途【できること】
・文字起こし・議事録の自動作成 |
◆AI音声認識をビジネスで活用する4つのメリット
・業務を効率化できる |
◆AI音声認識をビジネスで活用する4つの課題
・雑音やノイズが多い場合に認識精度が下がる |
◆AI音声認識の活用がおすすめなケース
・議事録作成を自動化したいケース |
◆AI音声認識サービスを選ぶ3つのポイント
・音声認識精度の高いものを選ぶ |
本記事がAI音声認識サービスを検討されているご担当者の参考になれば幸いです。