「顧客満足度という言葉がよく使われるけれど、何を意味するのか正確にはわからない」
「顧客満足度を上げるには、どうすればいいのだろう?」
このような疑問や悩みを抱いていませんか。
「顧客満足度」をひと言で説明すると、「企業が提供する商品やサービスに対して、顧客がどの程度満足しているかを数値化した指標」です。
英語の「Customer Satisfaction(カスタマー・サティスファクション)」を略して、「CS」と呼ばれることもあります。
また、コンタクトセンター(コールセンター)業界では「C-SAT(シーサット)」とも言います。
顧客満足度には、全世界に共通する規格のようなものはありませんが、日本では「JCSI(日本版顧客満足度指数)」という指標が主に用いられています。
顧客満足度の調査が必要とされるのは、以下のような理由からです。
◎顧客満足度を上げることで、売上アップが狙える
◎調査結果がKPIや業務改善の指標になる
そのため、定期的に顧客満足度調査を実施している企業も多いのです。
そこでこの記事では、顧客満足度について知っておくべきことをまとめました。
まず最初に、基本的な知識をお伝えします。
◎「顧客満足度」の意味と定義
◎顧客満足度調査がなぜ必要なのか
その上で、以下実践的な内容を解説していきます。
◎顧客満足度を上げるための基本的な流れ
◎顧客満足度を上げる具体的な施策
◎顧客満足度をはかる指標
◎顧客満足度の調査方法
◎顧客満足度に関する注意点
最後まで読めば、顧客満足度とは何か、どうすれば向上させることができるのかを理解することができるでしょう。
1.顧客満足度とは?
まず最初に、「顧客満足度」とは何なのか、その定義や必要性をあらためて確認しておきましょう。
1-1.「顧客満足度」の意味・定義
「顧客満足度」とは、企業が提供する商品やサービスに対して、顧客がどの程度満足しているかを数値化した指標です。
しかし、「満足度」は目に見えない感情の度合いですから、そのままでは数値化することは難しいものです。そこで、顧客に対して「満足」「普通」「不満」といった満足度合いを5〜10段階で表してもらうなどの方法で、数値化をはかっています。
ちなみにこの指標は、英語では「Customer Satisfaction(カスタマー・サティスファクション)」と呼ばれるため、コンタクトセンター業界では略して「C-SAT(シーサット)」とも言われます。
顧客満足度を上げてリピーターやファンを増やせば、売上・業績アップにつながるため、定期的にこれを調査する企業が多数です。
例えば、各種メーカーや小売業では、自社の製品について顧客がどの程度満足しているか、どんなことに不満を持っているかを把握することで、よりニーズに合った商品を提供できるようになります。
また、ホテルや旅行などのサービス関連業種であれば、自社のサービスに対する満足度を調査し、数値が低い点を改善することで、サービス品質をより改善することが可能です。
調査方法としては、顧客へのアンケートやヒアリングが一般的です。
企業側はその結果を分析して、より顧客の期待にこたえられるような商品作り、サービスの提供を目指しているのです。
1-2.顧客満足度調査がなぜ必要なのか
では、顧客満足度を調査することが、企業にとってなぜ必要なのでしょうか?
その理由として、以下のことが挙げられます。
・顧客満足度を上げることで、売り上げアップが狙える
・調査結果がKPIや業務改善の指標になる
顧客満足度を上げることで、売上アップが狙える
これまでさまざまな研究により、顧客満足度が向上すると「顧客ロイヤルティ(=その企業の商品やブランドに対して抱く信頼や愛情)」が高まり、その結果、商品の購買やサービス利用につながるということがわかっています。
「顧客満足および顧客ロイヤルティと財務業績の関係に関する実証研究」(松岡孝介/「大阪大学経済学」Vol. 55 No. 4/2006年)では、顧客満足および顧客ロイヤルティと財務業績(売上高)との関係について、国内のホテルチェーンA社における顧客アンケート調査と顧客取引履歴データをもちいて検証した結果、「顧客満足が利用金額(売上高)や顧客ロイヤルティに正の影響を与えること」を明らかにしました。 |
顧客満足度を調査・分析することで、顧客は自社商品・サービスの何に満足していて、逆に何が不満なのかをつかむことができます。その結果を踏まえて、顧客のニーズにより沿うように商品の改良やサービスの改善をおこなえば、顧客ロイヤルティが高まり、売上や収益アップも期待できるのです。
調査結果がKPIや業務改善の指標になる
顧客満足度を定期的に調査すると、その結果をKPIや業務改善のための目標として利用することもできます。
調査結果を踏まえて、「顧客満足度80以上を目指す」「顧客満足度調査で、『お得感』と『商品の魅力』のスコアが低いのでそれを向上させる」といった具体的な目標を立てることもできますし、そのためにはどうすればいいかという施策を考える際にも、顧客アンケートなどの調査結果が役立ちます。
このように、よりよい商品・サービスを提供して企業としてのブランドイメージと業績を向上させることが、多くの企業が顧客満足度調査を行っている理由です。
2.顧客満足度を上げるための基本的な流れ
前述したように、顧客満足度を上げることで、企業は業績や売り上げの向上をはかることができます。
その為多くの企業は、顧客満足度を向上させようと努めているわけです。
では、実際に顧客満足度をアップさせるにはどうすればいいのでしょうか?
ここからはその具体的な方法を解説していきましょう。
顧客満足度の指標にはいくつか種類があり、それによって調査方法などが異なりますが、ここでは代表的な指標である「JCSI(日本版顧客満足度指数)」の場合をもとにして、調査から向上までの基本的な流れを説明します。
【STEP①】事前期待値を把握する
【STEP②】実績評価を把握する
【STEP③】期待値を実績評価が上回るよう改善する
ちなみに「JCSI」については、のちほど「4-1.JCSI(日本版顧客満足度指数)」でくわしく説明しますので、そちらを参照してください。
2-1.【STEP①】事前期待値を把握する
最初にすべきことは、顧客の事前期待値の把握です。
JCSIで顧客満足度をはかる際には、「顧客満足度=顧客が感じた価値(P)-事前期待値(E)」という計算式を用いるので、そのためにも事前期待値は必要といえます。
事前期待値の調査方法としては、アンケートやヒアリングで調べることができますが、それ以外にも、
以下の方法でも知ることができます。
◎Webサイトのアクセス解析
→自社サイトに訪れた人が、どのページに多くアクセスしているか、何を検索しているかなどを分析する
◎統計データの分析
→公的機関や同業他社などが公表している統計データから、顧客のニーズや傾向を分析する
可能であれば複数の方法を用いて、顧客が何を望んでいるのか、より具体的に把握しておくとよいでしょう。
2-2.【STEP②】実績評価を把握する
次に、実際に商品購入・サービス利用をした顧客がどう感じたか=実績評価を調べます。
「顧客満足度=顧客が感じた価値(P)-事前期待値(E)」の「P」です。
これは、アンケートやヒアリングなどで調査します。
その具体的な方法は、「5-1.アンケート」「5-2.ヒアリング」を参照してください。
調査時に注意したいのは、なるべくさまざまなレベルの顧客から広く評価してもらうということです。
既存顧客、中でもすでにリピーターやファンになっている顧客にばかりリサーチすると、ポジティブな評価が集まりやすくなってしまいます。
そうなると、自社が抱える課題はなかなか見えてきません。
そこで、まだ見込み顧客のレベルにある人や、商品を認知していない人、自社よりも競合他社を選んだ人など、幅広い層にもモニタリングして意見を集めることで、より客観的で多様な評価を得る必要があるのです。
2-3.【STEP③】期待値を実績評価が上回るよう改善する
「事前期待値(E)」と「顧客が感じた価値(=実績評価・P)」が揃ったら、前述の式にあてはめて顧客満足度をはかります。
顧客満足度=実績評価(P)-事前期待値(E) ・P>Eの場合:顧客満足度が高い |
もし顧客満足度が低ければ、実績評価が期待値を上回るように改善しましょう。
JCSIのアンケートで評価が低いポイントがあれば、そこを重点的に改善するにはどうすればいいか、施策を練ってください。ヒアリングなどで具体的な要望が上がっていれば、それに応えた商品やサービスを考える必要もあるでしょう。
具体的にどんな施策が有効なのかは、次章「3.顧客満足度を上げる具体的な施策」で説明します。
3.【実践的】顧客満足度を上げる具体的な施策
では、実際にどのようにして顧客満足度を上げればいいのか、具体的な施策の例をいくつか挙げていきましょう。
・カスタマーサクセスを強化する
・CRMやSFAを活用する
・従業員満足度を上げる
3-1.カスタマーサクセスを強化する
カスタマーサクセスとは、顧客が「この商品・サービスを利用してよかった」という成功体験を得られるようにサポートするビジネス手法です。
「『顧客の成功』が自社の成功につながる」という考え方のもとに、2000年ごろから注目を集めるようになりました。
従来の企業は「商品やサービスを売る」ことで利益を上げてきましたが、そこから一歩踏み込んで、「商品を購入・利用した顧客を、企業側が『成功』に導く」ことで、より顧客満足度を高め、継続的に購入・利用してもらおうというアプローチが始まったのです。
例えば、パソコンを販売する場合、これまでは、
■企業側は、基本的にはパソコンを販売することに注力
■もし何かトラブルがあれば、顧客からの問い合わせに応じてカスタマーサービスで対応する
というあり方の企業が多い傾向にありました。
しかし、カスタマーサクセスを考えた場合には、
◎企業側は、パソコンを販売した後に起こるであろう顧客の疑問や不満を想定しておく
◎それに対して、先回りして問題の解決方法を提示したり、要望に応える
ということが求められます。
具体的には、以下のような対応をとるといいでしょう。
・コンタクトセンターを設置してあらゆる質問に答えられる態勢を整える
・Webサイト内にFAQページを設けて内容を充実させる
・タイミングを見計らって、購入後の「サンクスメール・サンクスコール」や「サポート案内メール」などを送る
その結果、顧客は「この商品を購入したことが成功だった」と感じ、顧客満足度が高まるわけです。
近年普及しているサブスクリプションサービスなども、カスタマーサクセスの強化が求められるサービスの一例です。継続的に利用するなか、サービス内容が随時更新・改善されることで、利用する顧客に成功体験へと導いていきます。
顧客満足度を向上を目指すなら、まず自社の商品やサービスについてカスタマーサクセスを強化するにはどうすればいいかを考えましょう。
カスタマーサクセスに関してさらにくわしく知りたい方は、別記事「カスタマーサクセスとは?成功事例やメリット・デメリットを解説」も読んでみてください。
また、「FAQページ」については別記事「顧客満足度を向上させるFAQの作り方とは?守るべき3つのポイント」で解説していますので、そちらも参照してください。
3-2.CRMやSFAを活用する
顧客満足度の調査と分析には手間やコスト、人的リソースが必要です。
そのため、「顧客満足度調査が満足にできない」「うまく分析できず、活用できていない」という企業も多いようです。
そんな場合は、ITツールを導入することで、効率よくより正確に顧客満足度の調査・分析ができます。
特に利用価値が高いのは、以下の2種のツールです。
◎CRM(顧客関係管理/Customer Relationship Management)
メールやアンケートなど顧客とのコミュニケーションを円滑にする機能が豊富なので、よい関係性を構築することができ、結果として顧客満足度がアップする
◎SFA(営業支援システム/Sales Force Automation)
営業の業務を効率化・自動化する機能が中心で、顧客とのやり取りや提案内容の履歴を一元管理できるため、顧客への無駄なアプローチをなくし、適切なタイミングで最適な提案ができるようになり、顧客満足度がアップする
中でも顧客満足度を高めるためには、以下のような機能が有効です。
CRMの機能 | ・顧客情報管理 |
SFAの機能 | ・顧客情報管理 |
これらをすべて自動化できるので、ぜひ利用したいものです。
3-3.従業員満足度を上げる
一般的に「従業員満足度の高い企業は、顧客満足度も高くなる傾向がある」ことがわかっています。
逆に考えれば、顧客満足度を上げるために、まず従業員満足度を上げることも有効だと言えます。
ではなぜ、「従業員満足度の向上」が「顧客満足度の向上」につながるのでしょうか?
それは、自社のブランドや製品、サービスに「満足している社員」の方が、「不満を抱えている社員」よりも、顧客に対して質の高い対応をすることができると考えるからです。
実際に、顧客満足度アップのために施策として、従業員満足度を上げる取り組みを推進する企業が増えています。
従業員満足度を向上させるには、まず定期的に従業員にアンケートやヒアリングを実施することで、要望や不満を吸い上げて改善しましょう。
具体的には、以下のような施策が有効です。
・職場環境を整備する:オフィス内の環境や設備だけでなく、勤務体系や人間関係なども見直す |
従業員満足度が上がれば、仕事へのモチベーションも高まり、商品やサービスの質向上も期待できるでしょう。
トランスコスモスでは、コンタクトセンターを中心とした顧客満足度を改善する運用サービスを提供しています。弊社のコンタクトセンターサービスにご興味のある方は以下よりお問い合わせください。
4.顧客満足度をはかる指標
しかし、「顧客満足」は人の感情に左右されるため、数値化しにくいものです。
これを客観的・俯瞰的な指標にするため、一般的には顧客にアンケートやヒアリングなどを実施してその結果を統計データ化、分析するという手法がとられています。
では、具体的にはどのような指標があるのか、代表的なものを6つ紹介しましょう。
指標 | 特徴 | 調査方法 | 向いているケース |
JCSI(日本版顧客満足度指数) | 顧客が商品・サービスを購入・利用するときに共通する心の動きをモデル化し、サービスの利用前から利用後までの全体を調査・分析 顧客が「なぜ満足したのか」「そしてどう行動するのか」といった因果関係を明らかにする | 以下の6項目を顧客にアンケート調査、その結果を数値化 ・顧客期待 | 30業種以上・約400社について調査実績があり、業種・業態にかかわらず有効 |
C-SAT | 顧客に商品やサービスの満足度を「満足」「普通」「不満」などの段階で評価してもらう 顧客満足度の測定法では比較的簡単なもので、コンタクトセンターでもっともよく用いられる | WEBサイトでのアンケート、チャット・コール応対後のアンケート、はがき・手紙によるアンケート、その他街頭インタビューや電話調査などもある
| 商品購入後やサービス利用後など、特定のタイミングでの短期的な満足度を知りたい場合 |
NPS | 「顧客ロイヤルティ」=顧客がその企業の商品やブランドに対して抱く「信頼」や「愛情」を計測 | 顧客に対して「あなたはこの商品またはサービスを、近しい人にどの程度勧めたいと思いますか」というアンケートを行い、0〜10までの点数で回答してもらうことで顧客ロイヤルティを数値化する 定期的に長期間調査するのが一般的 | 長期間にわたる、製品・サービスに対する全体的な満足度を知りたい場合 |
LTV | 「LTV」=ある顧客が取引を始めてから終わるまでの生涯(顧客ライフサイクル)の間に得られる売上を算出 →LTVが高いほどロイヤルティが高い傾向がある=優良顧客であるため、顧客満足度も高いと考えられる | 計算式は商品やサービスの販売方法によって異なり、代表的なものは以下 ・LTV=平均購買単価 × 平均購買回数 | 優良顧客の割合を知りたい場合 |
CES | 顧客が感じた負荷やストレス度合いなどネガティブな側面を計測 →CESが高いほど不満要素が多く、数値が少ないほど、ロイヤルティが高い | 顧客に対して「この手続きはどのくらい大変でしたか?/負荷がかかりましたか?」といったアンケートを実施 「非常に負荷がかかった」から「まったく負荷がなかった」までを1から7のスケールで評価してもらう | 商品やサービスの「使いやすさ」を知りたい場合 |
従業員満足度 | 企業に属する従業員が、自社にどの程度満足しているかを表わす指標 | 従業員に対して以下の項目に関するアンケートかインタビューを実施し、「◯✖️評価」や「5段階評価」などで数値化 ・会社について | 顧客満足度を上げるための施策として、まず従業員満足度のアップをはかる場合 |
では、それぞれ詳しく説明していきます。
4-1.JCSI(日本版顧客満足度指数)
顧客満足度をはかる指標としてもっともポピュラーなのは、「CSI(Customer Satisfaction Index/カスタマー・サティスファクション・インデックス)」と呼ばれるものです。
これは、アメリカをはじめとする世界の約30か国で採用されているもので、「顧客期待値」「知覚品質」「顧客忠実度」など、相関関係のあるいくつかの質問を顧客に行い、各項目の平均値を出すという方法で顧客満足度を数値化します。
このCSIを日本版にカスタマイズしたものが、「JCSI(Japanese Customer Satisfaction Index)」です。
ちなみにアメリカ版のCSIは、「ACSI(American Customer Satisfaction Index)」と呼ばれています。
JCSIは、経済産業省のサポートをうけた「サービス産業生産性協議会」が国家プロジェクトとして開発し、2009年に公開しました。
その主旨は、「商品・サービスを購入・利用するときに共通する心の動きをモデル化し、サービスの利用前から利用後までの全体を調査・分析」することで、顧客が「『なぜ満足したのか』『そしてどう行動するのか』といった因果関係を明らかに」しようというものです。(サービス産業生産性協議会公式サイト「《1.5》開発の経緯」より引用)
具体的には、以下の6つの指標について顧客にアンケート調査をし、その結果を分析します。
顧客期待 | 利用者が事前に持っている企業・ブランドの印象や期待、予想 |
知覚品質 | 実際にサービスを利用して感じた品質への評価 |
知覚価値 | 受けたサービスと価格に対して、利用者が感じる納得感、コストパフォーマンス |
顧客満足 | 実際にサービスを利用して感じた満足の度合い |
推奨意向 | 利用したサービスの内容について、他の人に肯定的に伝えるかどうか |
ロイヤルティ | 今後もそのサービスを使いたいか、もっと頻繁に使いたいかなど、再利用の意向 |
JCSIは、業界や業種にかかわらず顧客満足度を調査・計測できるのが利点です。
「公益財団法人 日本生産性本部」では定期的に業界・業種ごとの顧客満足度ランキングを発表しているので、競合他社と自社とを比較して課題を洗い出す手掛かりにもなります。
ただ、JCSIを正しく行うには、約100問もの設問について顧客に回答してもらわなければならず、手間と費用がかかるのが難点です。
ちなみに、JCSIで顧客満足度をはかる際には、「事前の期待感に対して、実際に購入・利用してみてどう感じたか」を重視するのが特徴です。
この事前の期待感を指標化したものを、「事前期待値」と呼びます。
たとえば、事前に広告などを見て高い期待を持っていたにもかかわらず、購入した商品が期待以下だった場合は「満足度が低い」と感じるでしょう。逆に、あまり期待していなかったものが、使ってみたら期待以上の品質だった場合には、「満足度が高い」と思うはずです。
事前期待値は、JCSIの6つの指標にも「顧客期待」という項目で挙げられているので、アンケートなどによって調査することができます。
その数値を、購入後に感じた商品の評価=実績評価と比べると、満足度は以下のようになります。
顧客満足度=実績評価(P)-事前期待値(E) ◎事前期待値(E) < 実績評価(P):満足度が高い |
つまり、事前期待値を超える商品やサービスを提供してはじめて、顧客満足度が高まると考えます。
顧客満足度の向上を目指すには、まず最初に事前期待値の把握が必須だといえるでしょう。
4-2.C-SAT
もうひとつ、顧客満足度調査の有効指標としてよく使われるのがC-SAT(Customer Satisfaction)で、
これはコンタクトセンター(コールセンター)で最もよく用いられるものです。
C-SATには決まった測定方法はなく、企業ごと、製品・サービスごとに適した方法を選んで実施されています。
中でも多く用いられるのがアンケートで、たとえば「非常に満足」から「非常に不満」までを5~10段階にわけて顧客に評価してもらい、満足度を数値化します。
このアンケートは、メールで自動送信したり、顧客が企業のWEBサイトでチャットやFAQを利用した際に、ポップアップで「問題は解決しましたか?」などの質問を表示したりして実施するケースが多いようです。
コンタクトセンターの場合も、顧客の問い合わせ後に「満足したか」「目標を達成できたか」を上記のような方法で測定するとよいでしょう。
ただこの調査方法は、顧客からの問い合わせや商品購入時などある特定の場合の対応について評価を募るケースが多いため、短期的な測定になりやすいのが特徴です。。
もちろん、何度も問い合わせや商品購入を繰り返す顧客を対象に、そのたびに評価してもらうことで長期的な測定を行うことも可能です。
が、その場合、評価に協力的な顧客はすでにその企業に対するロイヤルティが高い傾向にあり、総合的な評価を得にくいところが難点といわれています。
C-SATについてさらにくわしく知りたければ、別記事「CSAT(顧客満足度スコア)とは?測定法、計算式、向上策まで解説」も読んでみてください。
4-3.NPS
また、近年JCSIやC-SAT以上に注目されるようになったのが、「顧客ロイヤルティ」を計測する「NPS」です。
コンタクトセンター(コールセンター)でも多く取り入れられています。
「顧客ロイヤルティ」とは、顧客がその企業の商品やブランドに対して抱く「信頼」や「愛情」を指す言葉ですが、なぜこれが重視されているのでしょうか?
その理由として、
◎顧客満足度が高い顧客は、購入した商品やサービスには満足しているが、かならずしも今後も引き続き利用し続けてくれるとは限らない
◎一方で顧客ロイヤルティが高い顧客は、リピーターやファンとなって継続的に利用してくれる上に、周囲にその商品やサービスの評価を広めてくれる
と言われています。
NPSの調査方法は、基本的には以下の2問のアンケートのみのシンプルなものです。
1)あなたは当社(または当社の商品・サービス)を、家族や友人、同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?
→0から10までの11段階の数値で回答
(推奨度がもっとも高いのが「10」、もっとも低いのが「0」)
2)上記のように回答した理由をお答えください。/(自由回答)
その上で、1)の質問に対する回答を数値によって以下の3タイプに分類します。
◎9~10:推奨者
◎7~8:中立者
◎0~6:批判者
そして、以下の計算式でNPSを算出します。
推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)=NPS
たとえば推奨者が40%、批判者が30%の場合のNPSは「10」となり、推奨者が25%、批判者が50%の場合はNPSが「-25」となります。
推奨者が多いほどNPSスコアは高くなるわけです。
ちなみに、従来の顧客満足度とNPSの相違点は、「従来の顧客満足度にはグローバルな基準が存在しないこと」、「NPSは再購買や他者推奨というロイヤルティ行動への直接的な質問による数値化であるため、顧客ロイヤルティとの相関性がより強い指標とされていること」だと言われています。
つまり、従来の顧客満足度が事前期待と知覚価値のギャップを計測するものであるのに対し、NPSは徹底的に企業の収益向上に焦点を当てているのです。
なお、NPSについては、別記事「NPS®とは?その意味とメリット、調査・分析方法、活用事例を解説」にて
くわしく説明していますので、そちらもぜひ読んでみてください。
4-4.LTV(顧客生涯価値)
LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)は、ある顧客が取引を始めてから終わるまでの生涯(=顧客ライフサイクル)の間に得られる売上を指すものです。
LTVが高いほどロイヤルティが高い傾向にあることから、優良顧客の割合を測る指標として評価を行います。
その算出方法は、商品やサービスの販売方法によって変化しますが、代表的なものを以下で紹介します。
【LTVの計算方法の例】
・LTV=平均購買単価 × 平均購買回数
・LTV=顧客の平均月間取引額 × 平均契約期間
・LTV=平均購買単価×平均購買頻度×平均継続期間
ただ、LTVは長期的なスパンでの評価には役立ちますが、短期間で計測することが難しく、PDCAを回しにくいのが難点です。
また、LTVの算出は顧客ごとに行うのが理想ですが、すべての顧客に対して測定を行うのはかなりの負担を要します。
そこで、ターゲットをセグメントした上で、効果的な指標を探るケースが多いのが実情です。
ちなみにコンタクトセンターは、LTVを上げる施策を実施するタッチポイントとして活用されています。
アップセルトークやクロスセルトークをしたり、解約率を引き下げたりすることで、LTVの改善・向上をはかることができるのです。
4-5.CES(顧客努力指標)
CES(Customer Effort Score=顧客努力指標)は、顧客が商品やサービスを購入・利用するまでに、どのくらい手間や労力をかけたのかを表した指標です。
NPS同様、顧客の満足度を測る指標として注目を集めていますが、NPSが「推薦」というポジティブな側面で見るのに対し、CESは「顧客が感じた負荷やストレス度合い」などネガティブな側面を測るのが大きな特徴です。。
つまり、CESが高いほど顧客の不満要素は多く、数値が少ないほどロイヤルティが高いと判断されます。
例えばコンタクトセンター(コールセンター)では以下のようなケースは改善が必要なものとして指標化されています。
- 使い方や操作方法が複雑、またはわかりにくい
- 必要な操作が多い
- 問い合わせ方法がわかりにくい
- 電話がつながりにくく、待ち時間も長い。フォームやメールで問い合わせてもなかなか回答が得られない
- 公開されている情報や回答内容に誤りがある。または質問の意図に沿った回答が得られない
- 説明を受けても専門用語が多く、理解が難しい
調査はアンケートによっておこなうことが一般的で、質問の一例としては「この手続きはどのくらい大変でしたか?/負荷がかかりましたか?」といった内容が考えられます。
そして、顧客に「非常に負荷がかかった」「まったく負荷がなかった」までを1から7のスケールで評価してもらい、2~3パターンにセグメントして改善活動に活用します。
なお、CESもC-SATやNPSのように短期的な評価になりやすく、複雑な課題に気づきにくいのが難点です。また、顧客の体験後すぐに調査を実施することが望ましいため、タイミングも限定される特徴があります。
CESについてさらにくわしく知りたい方は、別記事「CES(カスタマーエフォートスコア)とは?重要な理由と実践方法」を参照してください。
4-6.従業員満足度
顧客満足度と対になる概念として、「従業員満足度」というものがあります。
これは、「企業に属する従業員が、自社にどの程度満足しているかを表わす指標」で、英語では「Employee Satisfaction」、その頭文字をとって「ES」とも言われています。
なぜこのESが顧客満足度と関係するのでしょうか?
実は、「従業員満足度の高い企業は、顧客満足度も高くなる傾向がある」とされているのです。
さまざまな研究により、
従業員満足度が向上→商品・サービスの質向上→顧客満足度が向上→業績向上 |
というプラスの連鎖が生じることがわかってきたため、「顧客満足度を上げるためには、従業員満足度を上げよう」という取り組みをする企業も増えています。
顧客満足度調査を実施する際には、あわせて従業員満足度も調査するといいでしょう。
5.顧客満足度の調査方法3つ
では次に、企業が実際に顧客満足度を調査する際には、どのような方法をとればいいのでしょうか?
その具体的な方法は、主に以下の3つです。
・アンケート
・ヒアリング
・リサーチ会社によるモニタリング調査
5-1.アンケート
顧客満足度調査でもっともよく用いられる方法は、顧客アンケートです。
商品購入後、またはサービス利用後の顧客に対して、
◎対面でのアンケート用紙記入
◎メールアンケート送付
◎Web上にアンケートフォームを設置
◎SNS
◎スマホアプリ
などで「商品・サービスにどの程度満足したか」の回答を集めます。
回答は、5段階・10段階などの数値を選択してもらう方法が主流です。
前掲のJCSIでは、基本の設問として6指標・21設問を設定していますので、参考として以下に挙げておきましょう。
これら各設問項目について、数問ずつの質問を用意します。
指標名 | NO | 設問名 | 設問例 |
顧客期待 | 1 | 全体期待 | 商品やサービス、店舗やWebサイト、情報提供、従業員などさまざまな点から、当社について全体的にどのくらい期待していたか |
2 | ニーズへの期待 | あなたの要望に対して、当社はどの程度こたえてくれると期待していたか | |
3 | 信頼性 | 商品やサービス、店舗やWebサイト、情報提供、従業員などさまざまな点から、このジャンルで必要な何かが不足していたり、利用できなかったりすることが、当社ではどの程度起き得ると思っていたか | |
知覚品質 | 4 | 全体評価 | 過去1年間に利用してきた経験を踏まえて、当社はどの程度優れていると思うか |
5 | ばらつき | 過去1年間の利用経験を振り返って、当社の商品・サービスはいつも問題なく安心して利用できたか | |
6 | ニーズへの合致 | 当社はあなたの要望にどの程度こたえていると思うか | |
7 | 信頼性 | 商品やサービス、店舗やWebサイト、情報提供、従業員などさまざまな点から、このジャンルで必要な何かが不足していたり、利用できなかったりしたことが、当社であったか | |
知覚価値 | 8 | 品質対価格 | あなたが当社に支払った金額を考えると、商品やサービス、店舗やWebサイト、情報提供、従業員などさまざまな点からみて、当社の品質はどの程度評価できるか |
9 | 価格対品質 | 当社の総合的な質は、支払った金額やかかった手間に見合っていたか | |
10 | お得感 | 当社は、他社と比較してお得感があったか | |
顧客満足 | 11 | 全体満足 | 過去1年間の利用経験を踏まえて、当社にはどの程度満足しているか |
12 | 選択満足 | 過去1年間を振り返ると、当社を利用してきたことはよい選択だったと思うか | |
13 | 生活満足 | 当社を利用することは、あなたの生活をどの程度豊かにしていると思うか | |
推奨意向 | 14 | 商品・サービス | 当社について友人や知人と話すとしたら、左記の点それぞれを肯定的に話すか、それとも肯定的ではない話題として話そうと思うか |
15 | 店舗、Webなど、 | ||
16 | 従業員 | ||
17 | 情報提供、ポイント、キャンペーンなど | ||
ロイヤルティ | 18 | 頻度拡大 | 今後3か月の間に、今までより頻繁に当社を利用したいと思うか |
19 | 関連購買 | 今後1年間で、これまでよりも幅広く当社を利用したいと思うか | |
20 | 持続期間 | これからも当社を利用し続けたいと思うか | |
21 | 第一候補 | 次回このジャンルを利用する場合、また当社を第一候補にすると思うか |
JCSIでは、以上の質問に対して10段階(ロイヤルティのみ7段階)で回答させ、その合計点数で評価します。
5-2.ヒアリング
また、書面ではなく直接ヒアリングするという方法もあります。
◎対面インタビュー
◎電話調査
のいずれかで実施するもので、アンケートに比べてコストと人的リソースが格段に必要になります。
そのため、5段階・10段階から選択する回答方式よりも、自由回答を求めたい場合に適しているでしょう。
たとえば、顧客がどのようにして商品やサービスに興味を持ったか、どのように購入に至り、どのように利用して何を感じたかといった具体的な「顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)」を知りたい場合などに有効な方法です。
5-3.リサーチ会社によるモニタリング調査
さらに、外部のリサーチ会社などに依頼して、モニタリング調査してもらうことも可能です。
専門業者が、
◎店頭や電話問い合わせなどによる覆面調査
◎一般消費者をモニターとする調査
などを行って、満足度を計測します。
アンケートやヒアリングよりもコストはかかりますが、前述の2つの方法が既存の顧客を対象とすることが多いのに対して、モニタリング調査は一般に広く意見を求めることができるので、併用するとより細かな顧客ニーズを把握できるでしょう。
6.顧客満足度を正しく活用するための注意点
ここまで、顧客満足度の調査方法や向上させる施策などをくわしく説明してきました。
しかし、実際に調査、対策するに当たって、注意してほしいことが2点ありますので、最後にそれをあげておきましょう。
・調査結果が低く出やすい
・顧客満足度を向上させる施策で業績も向上するとは限らない
6-1.調査結果が低く出やすい
まず第一の注意点は、顧客満足度調査の数値は、日本では実情よりも低く出やすい傾向があるということです。これは、「中心化傾向」によるものと考えられています。
「中心化傾向」とは、何かを評価したり点数をつけたりする際に、その評価が中央値に集中する現象のことです。
例えば、「満足度を5段階で評価してください」と言われると、「3」を選ぶ人が多くなるケースがあり、特に日本人はこの傾向が顕著だとされているのです。
これは、他の人と極端に差が出ることや目立つことを嫌い、集団に溶け込もうとする日本の文化が背景にあると言われていて、実際にNPS調査などを行った際に、他国よりもマイナス評価が出やすいことがわかっています。
そのため、もし顧客満足度調査の結果が悪かった場合は、それが本当の顧客の評価なのか、あるいは中心化傾向の影響で実情以上に悪い数値が出ているのかを、正しく見極めなければなりません。
また、顧客満足度の数値を絶対評価ととらえずに、定期的に計測して変化を見たり、競合他社と比較したりすることで、向上をはかるために利用するとよいでしょう。
6-2.顧客満足度を向上させる施策で業績も向上するとは限らない
第二の注意点は、顧客満足度を上げることが、必ずしも業績向上につながるとは限らないことです。
例えば、コンタクトセンター(コールセンター)で顧客満足度を上げることを考えてみましょう。
コンタクトセンターに関する不満として特に多いのが、「なかなか電話がつながらない」「つながっても待ち時間が長い」といったものです。
そこで、この不満を解消して顧客満足度を上げるにはどうすればいいでしょうか?
もっとも簡単な対策は、「オペレータを増員する」ことでしょう。
ただ、そうすれば顧客の待ち時間は減って満足度は上がるかもしれませんが、人件費などのコストが増大してしまいます。
つまり、顧客満足度と企業の利益が反比例するケースがあるわけです。
「顧客満足度の向上」は企業にとって重要ですが、本当の目的はその先にある「業績・売り上げの向上」です。
顧客満足度だけを向上させても、利益が下がってしまえば意味がありません。
顧客満足度の改善策を考える際には、それが業績や売り上げの向上につながるかどうかもかならず検討する必要があるのです。
まとめ
いかがでしたか?
顧客満足度とは何か、どうすれば向上させることができるのか、よく理解できたかと思います。
では最後にもう一度、記事の概要をまとめてみましょう。
◎「顧客満足度」とは、「企業が提供する商品やサービスに対して、顧客がどの程度満足しているかを数値化した指標」のこと
◎顧客満足度を上げる具体的な施策は、
・カスタマーサクセスを強化する
・CRMやSFAを活用する
・従業員満足度を上げる
◎顧客満足度をはかる指標としては、日本では「JCSI」が一般的
◎顧客満足度の調査方法は、アンケート、ヒアリング、モニタリングなどが用いられる
以上を踏まえて、あなたの会社の顧客満足度がますます向上するよう願っています。