
「顧客満足度という言葉がよく使われるけれど、何を意味するのか正確にはわからない」
「顧客満足度を上げるミッションを課せられたが、どうすればいいのだろう?」
この記事を開いたあなたは、そんな疑問や悩みを抱いているのではないでしょうか。
「顧客満足度」をひと言で説明すると、「企業が提供する商品やサービスに対して、顧客がどの程度満足しているかを数値化した指標」です。
英語の「Customer Satisfaction(カスタマー・サティスファクション)」を略して、「CS」と呼ばれることもあります。また、コンタクトセンター業界では「C-SAT(シーサット)」とも言います。
顧客満足度には、全世界に共通する規格のようなものはありませんが、日本では「JCSI(日本版顧客満足度指数)」という指標が主に用いられています。
顧客満足度の調査が必要とされるのは、以下のような理由からです。
◎顧客満足度を上げることで、売上アップが狙える
◎調査結果がKPIや業務改善の指標になる
そのため、定期的に顧客満足度調査を実施している企業も多いのです。
そこでこの記事では、顧客満足度について知っておくべきことをまとめました。
まず最初に、
◎「顧客満足度」の意味と定義
◎顧客満足度調査がなぜ必要なのか
◎顧客満足度をはかる指標
◎顧客満足度と関連する指標
といった基本的な知識をお伝えします。その上で、
◎顧客満足度の調査方法
◎顧客満足度を上げるための基本的な流れ
◎顧客満足度を上げる具体的な施策
などを実践的に解説していきます。最後には、
◎顧客満足度が高い企業例
をケーススタディとして紹介しますので、参考にしてください。
最後まで読めば、顧客満足度とは何か、どうすれば向上させることができるのかを理解することができるでしょう。
この記事で、あなたの会社の顧客満足度が向上することを願っています。
1.顧客満足度とは?
まず最初に、「顧客満足度」とは何なのか、その定義や必要性をあらためて確認しておきましょう。
1-1.「顧客満足度」の意味・定義
「顧客満足度」とは、企業が提供する商品やサービスに対して、顧客がどの程度満足しているかを数値化した指標です。
英語では「Customer Satisfaction(カスタマー・サティスファクション)」と呼ばれるため、コンタクトセンター業界では略して「C-SAT(シーサット)」とも言われます。
顧客満足度を上げてリピーターやファンを増やせば、売上・業績アップにつながるため、定期的にこれを調査する企業も多くあります。
調査方法としては、顧客へのアンケートやヒアリングが一般的です。企業側はその結果を分析して、より顧客の期待にこたえられるような商品作り、サービスの提供を目指しているのです。
1-2.顧客満足度調査がなぜ必要なのか
では、顧客満足度を調査することが、企業にとってなぜ必要なのでしょうか?
その理由として、以下のことが挙げられます。
◎顧客満足度を上げることで、売上アップが狙える
→これまでのさまざまな研究により、顧客満足度が向上すると「顧客ロイヤルティ(=その企業の商品やブランドに対して抱く信頼や愛情)」が高まり、その結果、商品の購買やサービス利用につながるということがわかっています。
たとえば、「顧客満足および顧客ロイヤルティと財務業績の関係に関する実証研究」(松岡孝介/「大阪大学経済学」Vol. 55 No. 4/2006年)では、顧客満足および顧客ロイヤルティと財務業績(売上高)との関係について、国内のホテルチェーンA社における顧客アンケート調査と顧客取引履歴データをもちいて検証した結果、「顧客満足が利用金額(売上高)や顧客ロイヤルティに正の影響を与えること」を明らかにしました。 |
参考:「顧客満足および顧客ロイヤルティと財務業績の関係に関する実証研究」(松岡孝介/「大阪大学経済学」Vol. 55 No. 4/2006年)
顧客満足度を調査・分析することで、顧客は自社商品・サービスの何に満足していて、逆に何が不満なのかをつかむことができます。その結果を踏まえて、顧客のニーズにより沿うように商品の改良やサービスの改善をおこなえば、顧客ロイヤルティが高まり、売上や収益アップも期待できるのです。
◎調査結果がKPIや業務改善の指標になる
→顧客満足度を定期的に調査すると、その結果をKPIや業務改善のための目標として利用することもできます。
調査結果を踏まえて、「顧客満足度80以上を目指す」「顧客満足度調査で、『お得感』と『商品の魅力』のスコアが低いのでそれを向上させる」といった具体的な目標を立てることもできますし、そのためにはどうすればいいかという施策を考える際にも、顧客アンケートなどの調査結果が役立ちます。
このように、よりよい商品・サービスを提供して企業としてのブランドイメージと業績を向上させるために、多くの企業が顧客満足度調査を行っている理由です。
2.顧客満足度をはかる指標
これを客観的・俯瞰的な指標にするため、一般的には顧客にアンケートやヒアリングなどを実施してその結果を統計データ化、分析するという手法がとられています。
では、具体的にはどのような指標があるのか、代表的なものを6つ紹介いたします。
2-1.JCSI(日本版顧客満足度指数)
顧客満足度をはかる指標としてもっともポピュラーなのは、「CSI(Customer Satisfaction Index/カスタマー・サティスファクション・インデックス)」と呼ばれるものです。
これは、アメリカをはじめとする世界の約30か国で採用されているもので、「顧客期待値」「知覚品質」「顧客忠実度」など、相関関係のあるいくつかの質問を顧客に行い、各項目の平均値を出すという方法で顧客満足度を数値化します。
このCSIを日本版にカスタマイズしたものが、「JCSI(Japanese Customer Satisfaction Index)」です。ちなみにアメリカ版のCSIは、「ACSI(American Customer Satisfaction Index)」と呼ばれています。
JCSIは、経済産業省のサポートをうけた「サービス産業生産性協議会」が国家プロジェクトとして開発し、2009年に公開しました。
その主旨は、「商品・サービスを購入・利用するときに共通する心の動きをモデル化し、サービスの利用前から利用後までの全体を調査・分析」することで、顧客が「『なぜ満足したのか』『そしてどう行動するのか』といった因果関係を明らかに」しようというものです。
引用:サービス産業生産性協議会公式サイト「《1.5》開発の経緯」
その調査方法は、以下の6つの指標について顧客にアンケート調査をし、その結果を分析します。
顧客期待 | 利用者が事前に持っている企業・ブランドの印象や期待、予想 |
知覚品質 | 実際にサービスを利用して感じた品質への評価 |
知覚価値 | 受けたサービスと価格に対して、利用者が感じる納得感、コストパフォーマンス |
顧客満足 | 実際にサービスを利用して感じた満足の度合い |
推奨意向 | 利用したサービスの内容について、他の人に肯定的に伝えるかどうか |
ロイヤルティ | 今後もそのサービスを使いたいか、もっと頻繁に使いたいかなど、再利用の意向 |
JCSIは、業界や業種にかかわらず顧客満足度を調査・計測できるのが利点です。
「公益財団法人 日本生産性本部」では定期的に業界・業種ごとの顧客満足度ランキングを発表しているので、競合他社と自社とを比較して課題を洗い出す手掛かりにもなります。
ただ、JCSIを正しく行うには、約100問もの設問について顧客に回答してもらわなければならず、手間と費用がかかります。
また、特徴として顧客が商品やサービスに満足するかどうかは、「事前の期待感に対して、実際に購入・利用してみてどう感じたか」を重視します。この事前の期待感を指標化したものを、「事前期待値」と呼びます。
たとえば、事前に広告などを見て高い期待を持っていたにもかかわらず、購入した商品が期待以下だった場合は「満足度が低い」と感じるでしょう。逆に、あまり期待していなかったものが、使ってみたら期待以上の品質だった場合には、「満足度が高い」と思うはずです。
事前期待値は、JCSIの6つの指標にも「顧客期待」という項目で挙げられていて、アンケートなどによって調査することができます。
その数値を、購入後に感じた商品の評価=実績評価と比べると、満足度は以下のようになります。
顧客満足度=実績評価(P)-事前期待値(E) |
つまり、事前期待値を超える商品やサービスを提供してはじめて、顧客満足度が高まると考えます。顧客満足度の向上を目指すには、まず最初に事前期待値の把握が必須だといえるでしょう。
2-2.C-SAT
満足度調査の有効指標としてよく使われるのがC-SAT(Customer Satisfaction)です。
コンタクトセンター(コールセンター)で最も使われる指標です。
「満足」「普通」「不満」などを星や数字で表してもらうといった、視覚的で簡単な評価が行いやすいのが特徴で、比較的簡単な方法で調査できるため、顧客からデータを集めやすいというメリットがあります。
C-SATは決まった測定方法がなく、多種多様な方法で取得されます。調査のタイミングも任意です。各社自社の製品に適した方法を選びます。その中でも多い方法はメールアンケートで5段階の項目を取得する方法や、チャットやWebFAQを使って解決したかどうかを聞くケースが使われます。
コンタクトセンターで顧客が体験した後に「満足したかどうか、目標を達成できたかどうか」を測ります。
例えば何かを購入した後に満足度を評価したり、Web上のサポートページであれば「問題は解決しましたか?」などと尋ねられたりするものがこれに当たります。
ただし、問い合わせ終了後や商品購入時の対応といった、ある特定の内容についての評価を得ることが多いため、短期的な測定になりやすいという特徴があります。長期的な測定を行うことも可能ですが、評価に協力的な顧客は、すでにロイヤルティの高い傾向にあり、総合的な評価を得にくいところが難点といわれています。
2-3.NPS
近年顧客満足度以上に注目されるようになったのが、「顧客ロイヤルティ」を計測する「NPS」です。コンタクトセンター(コールセンター)でも多く取り入れられています。
NPSはアメリカのコンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニー社のフレッド・ライクヘルド氏が2003年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌で発表し、その後『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』(HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS/2006年)として書籍化されてから世界中で注目されるようになりました。現在、欧米では公開企業の3分の1以上が活用しているとされ、日本においても導入する企業が増えています。
「顧客ロイヤルティ」とは、顧客がその企業の商品やブランドに対して抱く「信頼」や「愛情」を指す言葉ですが、なぜこれが重視されているのでしょうか?
その理由として、
◎顧客満足度が高い顧客は、購入した商品やサービスには満足しているが、かならずしも今後も引
き続き利用し続けてくれるとは限らない
◎一方で顧客ロイヤルティが高い顧客は、リピーターやファンとなって継続的に利用してくれる上
に、周囲にその商品やサービスの評価を広めてくれる
と言われています。
計算方法は、顧客ロイヤルティを数値化して測る指標の1つです。「推奨者の正味比率」を意味し、「0~10点で表すとして、この企業(あるいはサービス、商品)を友人や同僚に薦める可能性はありますか」という1つの質問を用いて、企業やブランドに対してどれくらい愛着や信頼があるのかをスコア化したものです。
企業によって差はありますが、一般的に以下の3つにセグメントします。
推奨者(9-10)
中立者(7-8)
批判者(0-6)
推奨者はロイヤルティの高い顧客であり、逆に批判者はロイヤルティの低い顧客とみなします。
顧客満足度とNPSの違いとして、「顧客満足度にはグローバルな基準が存在しないこと」
「再購買や他者推奨というロイヤルティ行動への直接的な質問による数値化であるため、顧客ロイヤルティとの相関性がより強い指標とされていること」が違いと言われています。
つまり、顧客満足度が事前期待と知覚価値のギャップを計測するものであるのに対し、NPSは徹底的に企業の収益向上に焦点を当てています。
なお、NPSについては、別記事「NPSとは?その意味とメリット、調査・分析方法、活用事例まで解説」にてくわしく説明していますので、そちらもぜひ読んでみてください。
2-4.LTV(顧客生涯価値)
LTV(Life Time Value)は、ある顧客が取引を始めてから終わるまでの生涯(顧客ライフサイクル)の間に得られる売上を指します。LTVが高いほどロイヤルティが高い傾向にあることから、優良顧客の割合を測る指標とし、評価を行います。
ただし、LTVは短期間で計測することが難しく、PDCAを回しにくいのが難点です。長期的なスパンで評価したい場合であれば、LTVは大いに役立ちます。LTVの算出は顧客個々で行うのが理想ですが、全ての顧客に対して測定を行うのはかなりの負担を要します。そこで各企業でターゲットをセグメントしたうえで、効果的な指標を探るケースが多いです。
コンタクトセンター(コールセンター)では、主にLTVを上げる施策を実施するタッチポイントとして活用されます。アップセルトークやクロスセルトークをしたり、解約率を引き下げたりすることで、LTVの改善・向上を実施します。
LTVの計算式は商品やサービスの販売方法によって変化しますが、代表的なものを以下で紹介します。
LTVの計算方法(サンプル)
- LTV=平均購買単価 × 平均購買回数
- LTV=顧客の平均月間取引額 × 平均契約期間
- LTV=平均購買単価×平均購買頻度×平均継続期間
2-5.CES(顧客努力指標)
CES(Customer Effort Score)はNPSのように、顧客の満足度を測る指標として注目を集めています。NPSが「推薦」というポジティブな側面で見るのに対し、CESは顧客が感じた負荷やストレス度合いなどネガティブな側面を測る特徴があります。
CESが高いほど不満要素が多く、数値が少ないほど、ロイヤルティが高いと判断されます。例えばコンタクトセンター(コールセンター)では以下のようなケースは改善が必要と指標化します。
- 使い方や操作方法が複雑、またはわかりにくい
- 必要な操作が多い
- 問い合わせ方法がわかりにくい
- 電話がつながりにくく、待ち時間も長い。フォームやメールで問い合わせてもなかなか回答が得られない
- 公開されている情報や回答内容に誤りがある。または質問の意図に沿った回答が得られない
- 説明を受けても専門用語が多く、理解が難しい
なお、CESもC-SAT・NPSのように短期的な評価になりやすく、複雑な課題に気づきにくいのが難点です。また、体験後すぐの実施が望ましいため、タイミングも限定される特徴があります。
調査はアンケートによっておこなうことが一般的で、質問の一例としては「この手続きはどのくらい大変でしたか?/負荷がかかりましたか?」といった内容が考えられます。そして、顧客に「非常に負荷がかかった」「まったく負荷がなかった」までを1から7のスケールで評価してもらい、2パターン~3パターンにセグメントを分けて改善活動に活用します。
2-6.従業員満足度
顧客満足度と対になる概念として、「従業員満足度」というものがあります。
これは、「企業に属する従業員が、自社にどの程度満足しているかを表わす指標」で、英語では「Employee Satisfaction」、その頭文字をとって「ES」とも言われています。
なぜこのESが顧客満足度と関係するのでしょうか?
実は、「従業員満足度の高い企業は、顧客満足度も高くなる傾向がある」とされているのです。
さまざまな研究により、
従業員満足度が向上→商品・サービスの質向上→顧客満足度が向上→業績向上 |
参考:「従業員満足度,顧客満足度,財務業績の関係 ーホスピタリティ産業における検証一」(鈴木研—, 松岡孝介)
というプラスの連鎖が生じることがわかってきたため、「顧客満足度を上げるためには、従業員満足度を上げよう」という取り組みをする企業も増えています。
顧客満足度調査を実施する際には、あわせて従業員満足度も調査するといいでしょう。
3.顧客満足度の調査方法
ここまで、顧客満足度とは何か、なぜ企業にとって重要なのかを解説しました。
では、企業が実際に顧客満足度を調査する際には、どのような方法をとればいいのでしょうか?
その具体的な方法は、主に以下の3つです。
3-1.アンケート
顧客満足度調査でもっともよく用いられる方法は、顧客アンケートです。
商品購入後、またはサービス利用後の顧客に対して、
◎対面でのアンケート用紙記入
◎メールアンケート送付
◎Web上にアンケートフォームを設置
◎SNS
◎スマホアプリ
などで「商品・サービスにどの程度満足したか」の回答を集めます。
回答は、5段階・10段階などの数値を選択してもらう方法が主流です。
前掲のJCSIでは、基本の設問として6指標・21設問を設定していますので、参考として以下に挙げておきましょう。
これら各設問項目について、数問ずつの質問を用意します。
指標名 | NO | 設問名 | 設問例 |
顧客期待 | 1 | 全体期待 | 商品やサービス、店舗やWebサイト、情報提供、従業員などさまざまな点から、当社について全体的にどのくらい期待していたか |
2 | ニーズへの期待 | あなたの要望に対して、当社はどの程度こたえてくれると期待していたか | |
3 | 信頼性 | 商品やサービス、店舗やWebサイト、情報提供、従業員などさまざまな点から、このジャンルで必要な何かが不足していたり、利用できなかったりすることが、当社ではどの程度起き得ると思っていたか | |
知覚品質 | 4 | 全体評価 | 過去1年間に利用してきた経験を踏まえて、当社はどの程度優れていると思うか |
5 | ばらつき | 過去1年間の利用経験を振り返って、当社の商品・サービスはいつも問題なく安心して利用できたか | |
6 | ニーズへの合致 | 当社はあなたの要望にどの程度こたえていると思うか | |
7 | 信頼性 | 商品やサービス、店舗やWebサイト、情報提供、従業員などさまざまな点から、このジャンルで必要な何かが不足していたり、利用できなかったりしたことが、当社であったか | |
知覚価値 | 8 | 品質対価格 | あなたが当社に支払った金額を考えると、商品やサービス、店舗やWebサイト、情報提供、従業員などさまざまな点からみて、当社の品質はどの程度評価できるか |
9 | 価格対品質 | 当社の総合的な質は、支払った金額やかかった手間に見合っていたか | |
10 | お得感 | 当社は、他社と比較してお得感があったか | |
顧客満足 | 11 | 全体満足 | 過去1年間の利用経験を踏まえて、当社にはどの程度満足しているか |
12 | 選択満足 | 過去1年間を振り返ると、当社を利用してきたことはよい選択だったと思うか | |
13 | 生活満足 | 当社を利用することは、あなたの生活をどの程度豊かにしていると思うか | |
推奨意向 | 14 | 商品・サービスそのもの | 当社について友人や知人と話すとしたら、左記の点それぞれを肯定的に話すか、それとも肯定的ではない話題として話そうと思うか |
15 | 店舗、Webなど、 | ||
16 | 従業員 | ||
17 | 情報提供、ポイント、 | ||
ロイヤルティ | 18 | 頻度拡大 | 今後3か月の間に、今までより頻繁に当社を利用したいと思うか |
19 | 関連購買 | 今後1年間で、これまでよりも幅広く当社を利用したいと思うか | |
20 | 持続期間 | これからも当社を利用し続けたいと思うか | |
21 | 第一候補 | 次回このジャンルを利用する場合、また当社を第一候補にすると思うか |
JCSIでは、以上の質問に対して10段階(ロイヤルティのみ7段階)で回答させ、その合計点数で評価します。
3-2.ヒアリング
また、書面ではなく直接ヒアリングするという方法もあります。
◎対面インタビュー
◎電話調査
のいずれかで実施するもので、アンケートに比べてコストと人的リソースが格段に必要になります。そのため、5段階・10段階から選択する回答方式よりも、自由回答を求めたい場合に適しているでしょう。
たとえば、顧客がどのようにして商品やサービスに興味を持ったか、どのように購入に至り、どのように利用して何を感じたかといった具体的な「顧客体験(カスタマー・エクスペリエンス)」を知りたい場合などに有効な方法です。
3-3.リサーチ会社によるモニタリング調査
さらに、外部のリサーチ会社などに依頼して、モニタリング調査してもらうことも可能です。
専門業者が、
◎店頭や電話問い合わせなどによる覆面調査
◎一般消費者をモニターとする調査
などを行って、満足度を計測します。
アンケートやヒアリングよりもコストはかかりますが、前述の2つの方法が既存の顧客を対象とすることが多いのに対して、モニタリング調査は一般に広く意見を求めることができるので、併用するとより細かな顧客ニーズを把握できるでしょう。
4.顧客満足度を上げるための基本的な流れ
ここまで、顧客満足度とその調査について解説してきました。しかし、満足度を把握するだけでは意味がありません。その結果を踏まえて、改善すべき課題を見つけ出し、顧客満足度を向上させなければなりません。
そこでこの章では、顧客満足度の調査から向上まで、どのような流れで進めればいいのかJCSIの手法を参考として説明していきましょう。
4-1.事前期待値を把握する
まず最初にすべきことは、顧客の事前期待値の把握です。
顧客満足度をはかる際には、「顧客満足度=顧客が感じた価値(P)-事前期待値(E)」という計算式を用いますから、そのためにも事前期待値は必要といえます。
事前期待値の調査方法としては、前掲のJCSIアンケートにも項目として含まれているように、アンケートやヒアリングで調べることができますが、それ以外にも、
◎Webサイトのアクセス解析
→自社サイトに訪れた人が、どのページに多くアクセスしているか、何を検索しているかなどを
分析する
◎統計データの分析
→公的機関や同業他社などが公表している統計データから、顧客のニーズや傾向を分析する
といった方法でも知ることができます。
できれば複数の方法を用いて、顧客が何を望んでいるのか、より具体的に把握しておきましょう。
4-2.実績評価を把握する
次に、実際に商品購入・サービス利用をした顧客がどう感じたか=実績評価を調べます。
「顧客満足度=顧客が感じた価値(P)-事前期待値(E)」の「P」ですね。
これは、アンケートやヒアリングなどで調査しますが、注意したいのは、なるべくさまざまなレベルの顧客から広く評価してもらうということです。
既存顧客、中でもすでにリピーターやファンになっている顧客にばかりリサーチすると、ポジティブな評価が集まりやすくなってしまいます。そうなると、自社が抱える課題はなかなか見えてきません。
そこで、まだ顧客見込みのレベルにある人や、商品を認知していない人、自社よりも競合他社を選んだ人など、幅広い層にもモニタリングして意見を集めることで、より客観的で多様な評価を得る必要があるのです。
4-3.期待値を実績評価が上回るよう改善する
「事前期待値(E)」と「顧客が感じた価値(=実績評価・P)」が揃ったら、前述の式にあてはめて顧客満足度をはかります。
顧客満足度=実績評価(P)-事前期待値(E) |
もし顧客満足度が低ければ、実績評価が期待値を上回るように改善しましょう。
たとえばJCSIのアンケートで評価が低いポイントがあれば、そこを重点的に改善するにはどうすればいいか、施策を練ってください。ヒアリングなどで具体的な要望が上がっていれば、それに応えた商品やサービスを考える必要もあるでしょう。
具体的にどんな施策が有効なのかは、次章「 5.顧客満足度を上げる具体的な施策 」で説明しますので、このまま読み進めてください。
5.顧客満足度を上げる具体的な施策
では、実際にどのようにして顧客満足度を上げればいいのか、具体的な施策の例をいくつか挙げていきましょう。
5-1.カスタマーサクセスを強化する
「カスタマーサクセス」とは、顧客が「この商品・サービスを利用してよかった」という成功体験を得られるようにサポートするビジネス手法です。
「『顧客の成功』が自社の成功につながる」という考え方のもとに、2000年ごろから注目を集めるようになりました。
従来の企業は「商品やサービスを売る」ことで利益を上げてきましたが、そこから一歩踏み込んで、「商品を購入・利用した顧客を、企業側が『成功』に導く」ことで、より顧客満足度を高め、継続的に購入・利用してもらおうというアプローチが始まったのです。
たとえば、パソコンを販売する場合、これまでは、
■企業側は、基本的には売ったら終わり
■もし何かトラブルがあれば、顧客からの問い合わせに応じてカスタマーサービスで対応する
というあり方でした。
が、カスタマーサクセスを考えた場合には、
◎企業側は、売ったあとに起こるであろう顧客の疑問や不満を想定しておく
◎それに対して、先回りして問題の解決方法を提示したり、要望に応える
ということが求められます。具体的には、
・コンタクトセンターを設置してあらゆる質問に答えられる態勢を整える
・Webサイト内にFAQページを設けて内容を充実させる
・タイミングを見計らって、購入後の「サンクスメール・サンクスコール」や「サポート案内メー
ル」などを送る
などの対応をとるといいでしょう。その結果、顧客は「この商品を購入したことが成功だった」と感じ、顧客満足度が高まるわけです。
近年普及しているサブスクリプションサービスなども、カスタマーサクセスの強化が求められるサービスの一例です。
継続的に利用するなか、サービス内容が随時更新・改善されることで、利用する顧客に成功体験へと導いていきます。顧客満足度を向上させたいなら、まず自社の商品やサービスについてカスタマーサクセスを強化するにはどうすればいいかを考えましょう。
5-2.CRMやSFAを活用する
前述したように、顧客満足度の調査と分析には手間やコスト、人的リソースが必要です。
そのため、「顧客満足度調査が満足にできない」「うまく分析できず、活用できていない」という企業も多いのではないでしょうか。そんな場合は、ITツールを導入することで、効率よくより正確に顧客満足度の調査・分析ができます。
特に利用価値が高いのは、
◎CRM(顧客関係管理/Customer Relationship Management)
◎SFA(営業支援システム/Sales Force Automation)
です。これらにはさまざまな機能がありますが、中でも顧客満足度を高めるためには以下のような機能が有効です。
CRMの機能 | ・顧客情報管理 |
SFAの機能 | ・顧客情報管理 |
これらをすべて自動化できるので、ぜひ利用したいものです。
5-3.従業員満足度を上げる
「2-6.従業員満足度」でも触れましたが、一般的に「従業員満足度の高い企業は、顧客満足度も高くなる傾向がある」ことがわかっています。
つまり、自社の組織・ブランド・製品・サービスに「満足している社員」と「不満を抱えている社員」では、どちらが質の高い対応をすることができるでしょうか。もちろん「自身をもった社員」とのコミュニケーションの質が高いと言われています。
そこで、顧客満足度を上げるために、従業員満足度を上げていく取り組みを推進する会社が増えています。定期的に従業員にアンケートやヒアリングを実施することで、要望や不満を吸い上げて改善しましょう。従業員満足度が上がれば、仕事へのモチベーションも高まり、商品やサービスの質向上にもつながるはずです。
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まとめ
いかがでしたか?
顧客満足度とは何か、どうすれば向上させることができるのか、よく理解できたかと思います。
では最後にもう一度、記事の概要をまとめてみましょう。
◎「顧客満足度」とは、「企業が提供する商品やサービスに対して、顧客がどの程度満足している
かを数値化した指標」のこと
◎顧客満足度をはかる指標としては、日本では「JCSI」が一般的
◎顧客満足度の調査方法は、アンケート、ヒアリング、モニタリングなどが用いられる
◎顧客満足度を上げる具体的な施策は、
・カスタマーサクセスを強化する
・CRMやSFAを活用する
・従業員満足度を上げる
以上を踏まえて、あなたの会社の顧客満足度がますます向上するよう願っています。