
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの企業でテレワークが導入されるようになりました。この流れは、一見在宅勤務が難しそうなコンタクトセンター(電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)業界でも見られ、多くのコンタクトセンターが在宅勤務を導入し始めています。
在宅需要が高まっている今、コンタクトセンターにおけるクラウド化の重要性が問われています。そしてそのコンタクトセンターシステムのクラウド化を実現するソリューションとして、アマゾン ウェブ サービス (AWS)が提供している「Amazon Connect(アマゾンコネクト)」に注目が集まっています。
本記事では、現在コンタクトセンターが抱えている課題を踏まえつつ、その課題解決につながるソリューションとしてのAmazon Connectについて解説します。コンタクトセンターの在宅化、クラウド化を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
1.在宅勤務で高まるクラウドサービスの需要
新型コロナウイルスの感染拡大は、コンタクトセンター(コールセンター)の運用にも影響を与えています。人が密集しやすい環境のコンタクトセンターでは、オペレーターの感染リスクやクラスターが発生する可能性も高い点が課題です。一度集団感染が発生してしまうと、コンタクトセンター自体の営業にも影響するため、根本的に運用体制を見直さなければなりません。
このような背景もあり、コンタクトセンター業務を在宅勤務で行うことを可能にするコンタクトセンターシステムのクラウド化の需要が高まっています。また、コンタクトセンターの在宅化を実現することで、新型コロナウイルスの感染症対策になるだけでなく、台風等の自然災害時のBCPとして、また、人手不足の解消や生産性の向上などにつなげることもできます。
2.コンタクトセンター(コールセンター)が抱える課題
コンタクトセンター(コールセンター)を在宅化する際の懸念として、顧客対応の質が挙げられます。在宅勤務の場合は従来のセンター稼働とは異なり、オペレーターを直接指導することが難しくなります。その結果、オペレーターによる対応の質が悪くなり、場合によってはさらなる苦情を受けたり、顧客からの自社に対する評価が下がったりする可能性も考えられます。
また、環境構築に膨大な時間やコストがかかるという懸念もあります。コンタクトセンターシステムを導入するには、高額な初期投資費用がかかる上に構築までに時間がかかるため、安易な判断で行うことができるものではありません。もし自社の目的や用途に合わなかったり、導入した後にうまく使いこなすことができなかったりした場合を考えると大きなリスクが伴います。
ほかにも、セキュリティ・信頼性や電話機・PBX等の資産所有など、コンタクトセンターの在宅化には多くの課題があります。そこで、これらの課題を解決するソリューションとして、Amazon Connectが注目されています。次は、Amazon Connectについて紹介していきます。
3.Amazon Connectとは
Amazon Connectとは、「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」が提供するコンタクトセンター向けのクラウド型プラットフォームです。もともとはAmazon社が、自社のカスタマーサービスをサポートするために独自で開発した顧客対応システムでしたが、それを一般向けに提供するようになったサービスがAmazon Connectとなります。
Amazon Connectは顧客とオペレーターをシームレスにつなげることができることから、日本国内に限らず、世界中のコンタクトセンター(コールセンター)で導入されており、世界的に人気の高いクラウド型コンタクトセンターサービスとなっています。
また、利用に応じて料金が加算される従量課金制であるため、料金を最適化できるほか、容易に規模も調整することが可能です。また、電話機やPBXなどはクラウド提供されているため、比較的コストを抑えて立ち上げ可能なことも魅力となっています。
あわせて、サービスの申し込みから各種設定までweb上で対応が可能です。電話機などもソフトフォンを使い、インターネット環境とPCがあれば利用ができます。新たにPBXや電話機等の機械を購入する必要がありませんので、短期間での構築が可能です。
4.Amazon Connectの機能
Amazon Connectには、コンタクトセンター(コールセンター)の在宅化を実現可能にする機能が豊富に備わっています。ここでは、主な機能について紹介します。
4-1.CCP機能(ソフトフォン機能)
電話機を用意しなくてもPC上で電話対応が可能になります。これにより電話機というハードの用意が不要になります。これにより、在宅勤務対応やBCP対策に活用されるケースが増えています。
4-2.メトリクス機能
レポートの機能です。エージェントのログイン・ログアウトの時間や、着信した問い合わせ数など、従来のpbxで必要とされるデータの基本的なものを取得できるようになっております。また、レポートとしてヒストリカルレポートとリアルタイムレポートを参照することが可能です。
4-3.音声録音機能
音声録音機能では、顧客・オペレーターの双方またはどちらかの通話内容を記録する機能です。通話内容を保存することができるため、発言内容に関する有り無しのトラブル防止やオペレーターの品質改善に役立ちます。
たとえば、スキルの高いオペレーターの通話内容を記録し、新人オペレーター向けの研修材料として使ったり、オペレーターの態度に関する苦情を受けた際に発言内容をチェックしたりすることができます。
4-4.顧客管理システムとの連携機能(CTI)
CTI機能とは、「Computer Telephony Integration」を略したもので、パソコンと電話を統合するシステムのことです。自社で管理している電話番号情報をもとに、CRM(顧客管理システム)から顧客を検索し、システム上に反映することができます。
つまり、オペレーターが顧客情報を聞かなくても書けてきた相手の情報がわかるため、トークタイムの短縮につなげる事が可能になります。
なお、様々なCRMとCTI連携が可能で、CRM側にAmazon Connectのソフトフォンを埋め込み統合させることも可能です。
4-5.着信自動呼分配機能(ACD)
ACD機能は、英語で「Automatic Call Distributor」と呼び、日本語では着信自動呼分配機能とも言われています。ACD機能を搭載していることで、顧客からの着信を自動的にコントロールし、あらかじめ設定したルールに従って割り振りが行われます。コンタクトセンター(コールセンター)の稼働状況に合わせて各オペレーターに着信が割り振られるため、効率的な顧客対応を実現できます。
たとえば、経験が浅いオペレーターには、過去にトラブルがなかった電話番号からの着信を割り振ったり、顧客からの着信自体を少なくしたりするなど、オリジナルのプロファイルが可能です。
4-6.自動音声応答機能(IVR)
IVR機能(Interactive Voice Response )とは、あらかじめ用意した自動音声案内にもとづいて各オペレーターに対して着信を振り分けられる機能です。具体的には、「購入した商品に関する問い合わせは1番を押してください」というような自動音声案内を指します。
顧客側が問い合わせをする内容を事前に把握し、各部門のオペレーターに着信されるため、効率的に顧客の悩みや不満を解決することができます。また、IVR機能によって顧客の待ち時間も少なくなり、コンタクトセンター(コールセンター)全体における顧客満足度の向上にもつながります。
4-7.コンタクトコールフロー設定機能
機能として、「ノンプログラミングでコンタクトフローを作成できること」があります。専用のUIから直感的な操作でブロックを組み合わせつないでいくことで作成できます。プログラミングの知識がなくてもコールフローを作成し、4-6で紹介したIVR (自動音声応答) システムを連動させてカスタマイズできます。
参考:Amazon Connect 管理者ガイド
なお、Amazon ConnectではクラウドタイプのPBXを採用しており、自社でPBX環境を整備する手間を省くことができます。コンタクトセンター(コールセンター)の拡大に伴い電話機を増設する際にも、クラウドサービスを追加するだけで済みます。クラウドPBXの詳細については、下記リンク先の記事をご参照ください。
5.コンタクトセンター(コールセンター)運営におすすめのAWSサービス
Amazon Connectは、他のAWSサービスと連携することでさらに自社のイメージに近いコンタクトセンター(コールセンター)システムの実現可能になります。ここでは、おすすめのAWSサービスを4つ紹介します。
5-1.Amazon Polly
Amazon Pollyは、ディープラーニングで構築した学習モデルを活用し、テキストデータを音声データに変換するサービスです。ラジオ番組にも採用されるほどの高音質な音声を提供しており、コンタクトセンター(コールセンター)でも違和感なくテキストデータの自動案内を実現できます。
また、Amazon Pollyは日本語のほかに、英語(アメリカ英語、イギリス英語、オーストラリア英語、インド英語)、イタリア語、フランス語、韓国語などメジャー言語に対応しているのも特徴です。Java、PHP、Rubyといったプログラミング言語にも対応し、API経由でテキストを送信することでストリーミング再生や音声ダウンロードも行えます。
5-2.Amazon Transcribe
Amazon Transcribeとは、オーディオファイルや動画ファイルを音声認識し、テキストに文字起こしするサービスです。顧客とのやりとりをテキスト化することで、コンタクトセンター(コールセンター)での品質改善や、アプリケーションにテキストデータを入力する際に役立ちます。
従来の文字起こしサービスは精度が安定せず、正確なテキストデータを抽出するのに不便を強いられていました。しかしAmazon Transcribeでは、会話中の製品名や専門用語、さらに句読点もテキストで表現できるため、人の手による文字起こしと比較しても遜色のない仕上がりを期待できます。
5-3.Amazon Comprehend
Amazon Comprehendは機会学習を通して、構造化されていないデータから隠れた情報を見つけ出すサービスです。テキストデータから顧客の感情を読み取り、自社製品やカスタマーサービスに対してポジティブ・ナチュラル・ネガティブといった指標を分けられます。
また、特定の用語の検出も可能です。製品ごとにSNSで発信されるテキストデータに応じて、メッセージとドキュメントをカスタマイズすることができます。
なお、トランスコスモスのセンターでは「顧客との通話を音声認識に加え、単語ごとにテキストに起こし、感情解析してホップアップさせることが可能な製品」も利用可能です。
Amazon Connectとの組み合わせ利用をご検討の方は以下より資料をご確認ください。
6.Amazon Connectの構築なら外部委託も検討しよう
Amazon Connectの構築を検討している方は、外部委託も検討してみてください。トランスコスモスでは、コンタクトセンター(コールセンター)でAmazon Connectを使いやすいように、設計・構築・導入後のサポートや改修サービスを提供しています。
また、トランスコスモスが提供しているサービス(ContactLink)と組み合わせることで、コンタクトセンターに必要な機能が備わったシステムの構築が可能になります。
以下ではトランスコスモスのサービスと併用することで得られるメリットを3つ紹介します。
6-1.オリジナルソフトフォン
オペレーター電話操作画面のカスタマイズを行い、直感的で使いやすいユーザーインターフェイスへの変更が可能です。発着信履歴、保留時間の表示、複数発信番号の選択など、オペレーター側での操作性の向上に役立ちます。
6-2.オリジナルダッシュボード
オリジナルダッシュボードは、コンタクトセンター(コールセンター)の状況をリアルタイムで表示します。AmazonConnectの一般的なダッシュボードよりも視認性に優れており、多くの情報を管理できます。
6-3.音声ボットによる自動対応
顧客からの問い合わせに対して、音声ボットによる自動対応が可能です。自動対応により応対の完結を行うだけでなく、オペレーターに接続する前の段階でFAQや問い合わせ内容の把握に活用し、効率的な業務を実現します。外部ソリューションのAmivoiceやGoogleDialogflowなどとシステム連携をさせて提供を検討することが多いです。
トランスコスモスが提供するAmazon Connectサービスに興味がある方はこちらから詳細資料を請求いただくか、お問い合わせをお願い致します。
まとめ
コンタクトセンター(コールセンター)が抱える課題に対して、コンタクトセンターシステムのクラウド化は課題解決に大いに役立ちます。Amazon Connectは導入ハードルが低く、コンタクトセンター運営に必要な機能を豊富に備えているため、コンタクトセンターシステムの構築においてはおすすめのサービスです。
トランスコスモスでは、コンタクトセンターにおけるAmazon Connectの導入から構築、サービスの提供、サポートまで一貫して行っています。トランスコスモスが提供しているサービスとセットでAmazon Connectを利用すると、さらに高度なコンタクトセンターシステムの構築が可能なので、もし興味・関心がございましたらぜひお気軽にお問い合わせください。
※Amazon Web Services、Amazon EC2、Amazon S3、は、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。