「クラウドPBXというのは、普通のPBXとどう違うの?」
「コールセンターのPBXをクラウドにしたいけれど、どうすればいい?」
コンタクトセンター(電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)の運営を担当していて、そのような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
クラウドPBXとは、クラウド事業者がインターネット上で提供するPBXを利用し、インターネットを通じて通話を行うタイプのPBXです。
オンプレミスのPBXでは、物理的な機器を購入し、工事をして設置する必要がありましたが、クラウドPBXでは必要なものはクラウド上に構築され、初期費用を抑えてスピーディに導入できるのが特徴です。
そのためクラウドPBXは、一時的に社内にコンタクトセンターを設置したい企業や、テレワークに対応したい企業などに採用されています。また、これから新たにコンタクトセンターやオフィスを構える場合にも、ぜひ知っておきたいものだといえます。
そこで本記事ではクラウドPBXについて詳しく解説します。
1.クラウドPBXの基本
2.クラウドPBXのメリット・デメリット
3.クラウドPBX選びのポイントや注意点
この記事を最後までお読みいただければ、クラウドPBXの基礎知識はもちろん、マイナス面も含めて多角的にクラウドPBXについて理解でき、導入するうえでの注意点も把握できるため、失敗を回避してクラウドPBXを選べるようになるでしょう。
1.クラウドPBXとは
まずはクラウドPBXの基礎知識から解説します。
1-1.クラウドPBXとはクラウド事業者が提供するサービスを利用するPBX
クラウドPBXとは、クラウド事業者が提供するサービスを利用して、クラウド上にPBXを設置し、インターネット回線を使用して電話の通話を行うタイプのPBXです。
「クラウド」はクラウド事業者がインターネットを経由して提供するサービスのことです。つまりクラウドPBXでは、クラウドPBXサービスを提供する事業者に、サービスの利用料を支払って、PBX機能を利用する仕組みとなっています。
クラウドPBXでできること、主な機能としては以下のようなものが挙げられます。
・オフィスの電話をPCやスマートフォンで受発信、転送
・内線番号の追加や変更などを、ブラウザ上で簡単操作
・電話帳を社内で共有
・通話録音
・IVR:自動音声で顧客対応
・ACD:着信をオペレーターに自動的に分配、管理
・CRM連携:CRMのデータと連携して、着信時に顧客データを表示
これらの機能によって、コンタクトセンター(コールセンター)など電話に関わる業務を大きく効率化することが可能になります。
「そもそも、PBXとは?」という疑問をお持ちの方には、次項で詳しく解説します。
1-2.PBXとは?
「PBXは何なのか知りたい」という方のために、PBXについて解説します。
PBXはPrivate Branch Exchangeの略で、日本語に訳すと「構内電話交換機」となります。
簡単にいえば、オフィスやコンタクトセンターなどの内線電話機をつないでネットワーク化し、外線と内線をつないだり、内線同士の通話を可能にしたりする機能を持つものです。
PBXを導入することで、代表電話番号での発着信、同じ電話番号で同時に複数の回線から発着信、内線通話など、電話を業務で利用するうえで欠かせない機能が利用できるようになります。
そのため、コンタクトセンターを設置するうえでも、PBXは必要不可欠です。
PBXについてより詳しくは以下の記事で解説しています。
1-3.クラウドPBXと従来のPBX、IP-PBXとの違い
クラウドPBXは、2010年頃に登場した新しいサービスです。
それ以前は「レガシーPBX」が主流であり、それとは別にIPネットワークを利用する「IP-PBX」というものも利用されています。
つまり、PBXには3種類あるというわけですが、では違いはどこにあるのでしょうか?
それを図表にまとめましたので、以下を見てください。
▼ 従来のPBXとクラウドPBXの違い
レガシーPBX | IP-PBX | クラウドPBX | |
タイプ | オンプレミス | オンプレミス | クラウド |
初期 | × | △ | ○ |
機器 | × | × | ○ |
導入 | × |
| ○ |
機器 | × | × | ○ |
導入 | × | × | ○ |
品質 | 〇 | 〇 | △ |
レガシーPBXは、社内に工事して機器を設置する必要があったため、初期費用が高いことがデメリットでした。加えて、機器は老朽化するため、定期的な買い換えが必要でした。
また、IP-PBXはIP通信を利用するため、すでに社内LANが構築されている場合には簡単に導入できますが、機器やソフトウェアが必要なため初期費用はある程度かかってしまいます。
これらが抱えていたデメリットを解決する新たな方法として注目されているのが、物理的な機器を持たないクラウドPBXです。
なお、従来のPBX、IP-PBXについてさらに詳しく知りたい場合は、以下の記事を参照してください。
1-4.クラウドPBXの現状
前述したように、クラウドPBXは2010年ごろに登場したばかりのまだ新しいサービスです。そのため、当初は普及率が低かったのですが、その後は徐々に市場が拡大しています。
株式会社グローバルインフォメーションが発表した市場調査レポート「クラウドPBXの世界市場 – 業界分析、市場規模、シェア、成長率、動向、予測:2020年~2030年」によると、「クラウドPBX市場は、予測期間中(編集部注:2020〜2030年の間)に14%という驚異的なCAGRで成長」し、「2030年末までに683億米ドルの規模に達すると予測されているそうです。
反対に、オンプレミス型のPBXは需要が減少傾向にあります。
このように、オンプレミス型のPBXからクラウドPBXへと需要が移行しているのには、以下のような原因があると考えられています。
・コロナ禍によりテレワークが普及し、オフィス以外の場所で電話業務を行う必要が生じた(コンタクトセンターの在宅化など)
・ICT化、クラウド化を推進する企業が増えている
・半導体が不足し、従来のPBX機器の中にはその影響を受けている など
テレワークなどのワークスタイルの変化や業務のクラウド化は、今後もますます進むことが予想されます。
それにともなって、インターネットがあればオフィス内外のどこでも利用できるPBXも、需要が伸びていくことでしょう。
2.クラウドPBXのメリット
クラウドPBXには、大きく分けて5つのメリットがあります。
・PCやスマートフォンを用いて内線化できる
・テレワークに対応できる
・拡張が容易にできる
・スピーディに導入できる
・初期費用を節約できる
それぞれ見てみましょう。
2-1.PCやスマートフォンを用いて内線化できる
1つめのメリットは、「PCやスマートフォンを用いて内線化できる」ことです。
一部例外もありますがインターネットを介して通話するクラウドPBXでは、社内に内線電話機を設置する必要はなく、利用中のPCやスマートフォンを内線化できます。
内線化したソフトフォン同士で無料の内線通話をすることはもちろん、会社の代表電話番号の発着信もPCやスマートフォンで可能です。
内線電話機を購入する必要がなく、普段使い慣れたPCやスマートフォンを活用できるため利便性が高まります。
2-2.テレワークに対応できる
2つめのメリットは、「テレワークに対応できる」ことです。
クラウドPBXでは、単にPCやスマートフォンを内線電話機として活用できるだけでなく、「いつでも・どこでも、インターネットさえあれば発着信が可能」になります。
オンプレミス型PBXでは、オフィスに誰かが出勤しないと取れなかった外線電話が、社員の自宅やサテライトオフィスなど、さまざまな場所で受けられるようになるのです。
オペレーターがテレワーク勤務するコンタクトセンター(コールセンター)の構築も、クラウドPBXなら容易に可能です。
2-3.拡張が容易にできる
3つめのメリットは、「拡張が容易にできる」ことです。
前述のとおり、クラウドPBXでは物理的な機器や工事の必要がないため導入が容易ですが、これは拡張する際にも同じことがいえます。
回線数を増やしたいときには、Web上の管理画面やクラウド事業者への申請で手軽に変更ができます。逆に回線数を減らしたいときにも、設定変更だけで簡単に縮小できる点も、クラウドPBXならではの利点です。
コンタクトセンターで一時的に注文数が増える繁忙期にのみ回線数を増やすこともできますし、社員数の増減に合わせて小まめに回線数を変更することも可能です。
つまり、常に自社のニーズにフィットした規模のPBXを運用できるというわけです。
2-4.スピーディに導入できる
4つめのメリットは、「スピーディに導入できる」ことです。
クラウドPBXは、すでにクラウド上に構築されているPBXを利用するため、オンプレミス型のように自社で環境を整備する必要がありません。
オンプレミス型では機器購入や工事の手配などで数カ月の時間を要することも珍しくありませんが、クラウドPBXであれば、インターネット回線があれば最短即日で開通できるほど、スピーディに導入できます。
2-5.初期費用を節約できる
5つめのメリットは、「初期費用を節約できる」ことです。
前述のように、従来のオンプレミスのPBXは、物理的な機器をオフィスに導入する必要があります。
そのため初期費用として、機器の購入費用や工事費用が発生するのが難点でした。
オフィスの規模にもよりますが、オンプレミスのPBXでは、数十万円〜数百万円以上の初期費用がかかるのが一般的です。
一方、クラウドPBXでは、物理的な機器は必要ありませんので、機器の購入費用と工事費用を節約できます。
クラウドPBXで必要な初期費用はサービスによって異なりますが、小規模オフィスであれば数万~数十万円程度が相場ですので、オンプレミスよりかなりコストダウンできるのが大きなメリットと言えるでしょう。
3.クラウドPBXのデメリット
メリットの多いクラウドPBXですが、デメリットもあります。
・発信できない電話番号がある
・通信環境などによって音質が悪くなる場合がある
・毎月のランニングコストがかかる
それぞれ解説しましょう。
3-1.発信できない電話番号がある
1つめのデメリットは、「発信できない電話番号がある」ことです。
クラウドPBXでは、電話回線からでないと受信できない電話番号には架電できません。
電話回線ではなく、インターネット回線を介して通話を行うためです。
たとえば「110」「118」「119」などの緊急通報は、クラウドPBXではできないので、注意が必要です。
また、クラウドPBXのサービスによっては、取り扱える番号に制限が設けられているものもあるので、注意が必要です。
緊急通報はクラウドPBX経由ではなく、携帯電話回線から発信する必要があります。
3-2.通信環境などによって音質が悪くなる場合がある
2つめのデメリットは、「通信環境などによって音質が悪くなる場合がある」ことです。
クラウドPBXは、インターネット回線を介し、クラウド事業者のサーバを経由して通話を行う仕組みです。そのため、オンプレミス型のPBXに比較すると音質は悪くなります。
特に、通信速度の遅いインターネット回線を利用している場合やPCの環境などによっては、音質の悪さが目立つことがあるのです。
また、クラウドPBXサービスを提供する事業者のサーバが重くなったり不安定になったりすると、影響を受けて音質が低下することもあるので注意が必要です。
3-3.毎月のランニングコストがかかる
3つめのデメリットは、「毎月のランニングコストがかかる」ことです。
従来のオンプレミス型PBXは、自社で運用するものですから、運用のためのランニングコストはかかりません(機器の老朽化への対応、保守対応費など、メンテナンス費用はかかります)。
一方クラウドPBXは、自社で運用する手間がかからない分、クラウド事業者に対して、毎月サービスの利用料を支払う必要があります。
利用料の相場は、1回線あたり数千円(月額)程度です。
また、回線数だけではなく、利用した分に応じて従量課金制で費用が発生する場合もあり、そうなると、通信量によっては多額の費用を支払わなければならないでしょう。
4.クラウドPBXはこんな企業におすすめ
クラウドPBXのメリットとデメリットについて解説しました。
それらを踏まえつつ、クラウドPBXはどんな企業におすすめなのかを挙げていきましょう。
▼ クラウドPBXがおすすめのケース
・テレワークに対応した業務環境を作りたい |
4-1.テレワークに対応した業務環境を作りたい
1つめは、「テレワークに対応した業務環境を作りたい」ケースです。
会社の電話網をPCやスマートフォンで内線化し、いつでも・どこでも発着信できるようになるクラウドPBXは、まさにテレワーク対応に最適といえます。
テレワークを推進するために、ファイル共有や業務用ソフトのクラウド化を進めている企業であれば、その一貫としてPBXもクラウド化することをおすすめします。
今までは「電話対応のために誰かが出勤しなければならなかった」という職場でも、クラウドPBXの導入で、完全なテレワーク体制が構築できます。
テレワークは難しいとされていたコンタクトセンター(コールセンター)も、クラウドPBXの登場によってテレワークが可能になり、「コンタクトセンターの在宅化」を目指して導入する企業が増えつつあります。
4-2.柔軟に回線数を増やしたり減らしたりしたい
2つめは、「柔軟に回線数を増やしたり減らしたりしたい」ケースです。
「2-3.拡張が容易にできる」で説明したように、クラウドPBXではWeb上の管理画面やクラウド事業者への申請で手軽に回線数の変更ができます。
そのため、「キャンペーンなどを実施している期間中だけ、受注コンタクトセンターとして機能させたい」という場合や、「まだ事業の先行きが見えていない」というスタートアップ企業などには、クラウドPBXがおすすめです。
導入規模を拡大する・縮小するといった対応が柔軟にできる上に、費用は基本的に使った分を支払えばいいのも利点でしょう。
仮に事業撤退となったとしても、「先行投資分が無駄になってしまった」ということはありません。
4-3.BCP対策を充実させたい
3つめは、「BCP対策を充実させたい」ケースです。
従来のPBXは社内に機器を設置するため、万が一オフィスが災害や火事、事故などの緊急事態に遭遇した場合には、機器が損壊したり電話回線が遮断されたりして電話が利用できなくなってしまう恐れがあります。
一方で、クラウドPBXの場合は、PBXはクラウド上にあるためオフィスが被災しても電話の機能は被害を免れる可能性があるのです。
そのため、BCP=事業継続計画の一環として役立つでしょう。
ひとつの拠点緊急事態が発生しても、そこにかかってきた電話を他の拠点に転送したり、電話回線を一時的に他の拠点に移して業務を続けたりすることも可能なのです。
4-4.小規模コンタクトセンター(コールセンター)でもPBXを導入したい
4つめは、「小規模コンタクトセンターでもPBXを導入したい」ケースです。
社員数の少ない中小企業や個人事業主の小規模コンタクトセンターでは、PBXは導入できず、不便を感じながらも何とか運用している例が多くあります。
オンプレミス型PBXでは、初期費用の大きさやメンテナンスの手間などが負担になっていたためです。
その点クラウドPBXであれば、数人以下の小規模コンタクトセンター向けのサービスプランもあり、初期費用を抑えたPBX導入が可能です。
従来のPBXでは導入が難しかった小規模コンタクトセンターにとって、クラウドPBXは良い選択肢となります。
5.クラウドPBX選びのポイント
前述したように、クラウドPBXはさまざまなベンダーからサービス提供されているため、どれを選べばいいのか迷ってしまいます。
そこで、自社に最適なサービスを選ぶには何をチェックすればいいのか、比較すべきポイントを挙げてみました。
・必要十分な機能が備わっているか
・音質が安定しているか
・コストは予算内に収まるか
・セキュリティ面は安全か
・管理画面が使いやすいか
・今の電話番号を引き継げるか
・インターネット回線に制限はないか
・既存システムと連携できるか
・同時通話数は十分か
・サポート体制は充実しているか
それぞれ説明していきましょう。
5-1.必要十分な機能が備わっているか
まず確認したいのは、「必要十分な機能が備わっているか」という点です。
クラウドPBXは、オンプレミスのPBXに比べると、カスタマイズの自由度が低い傾向があります。そのため最初の時点で、自社の業務に必要な機能が過不足なく備わっているものを探しましょう。
PBXの主な機能としては、以下のようなものが挙げられますので、必要なものはどれかまずチェックしてみてください。
機能 | 概要 | |
基本 | 代表番号発着信 | 代表番号にかかってきた電話をさまざまな端末で受信・発信できる |
保留転送 | 着信を保留して、内線電話で呼び出し、転送できる | |
ダイヤルイン | 1つの電話回線で複数の電話番号を利用できる | |
ACD | 着信をオペレーターに自動で振り分ける | |
IVR | 録音された音声ガイダンスで一次対応し、通話内容に応じて担当オペレーターに振り分ける | |
CTI | 電話・FAXをPCと連携させ、着信と同時に相手の情報をモニターに表示する | |
通話録音 | 通話内容を自動的に録音、保存する | |
その他 | CRM連携 | CRMと連携して、社内全体の顧客情報などのデータを参照できるようにする |
SFA連携 | SFA(営業支援システム)と連携して、営業部門の顧客情報などのデータを共有する | |
通話モニタリング | 通話内容を他の電話機から聞くことができる | |
ウィスパリング機能 | 通話モニタリングを利用中に、通話を聞いている人の声を、通話しているオペレーターのみに聞かせる | |
通話データの分析 | 各オペレーターが処理した着信数、かかった時間などのデータをレポート化し分析できる |
5-2.音質が安定しているか
次に、「音質が安定しているか」も重要です。
「1-3.クラウドPBXと従来のPBX、IP-PBXとの違い」で触れたように、クラウドPBXはオンプレミスのPBXとは違ってインターネット回線を利用するため、音質はインターネット回線やPCなどの機器に依存します。
回線が不安定な場合や、リモートワークでWi-Fiを利用している場合などは、音質が低下する恐れがあるのです。
そこで、クラウドPBXを選ぶ際には、総務省が定めた通話音声基準を確認してください。
品質により、クラスA/クラスB/クラスCに分けられていますが、もっとも高品質の「クラスA=固定電話相当」の安定性があると評価されているサービスを選ぶとよいでしょう。
5-3.コストは予算内に収まるか
また、「コストは予算内に収まるか」も重要なポイントです。
クラウドPBXは、オンプレミスのPBXと比べるとコストを抑えることができますが、それでも以下のような費用が発生します。
・初期費用
・月額利用料
・システム利用料
・内線↔︎外線の通話料 など
導入コストは抑えられても、ランニングコストが思いのほか高くなってしまい、結果として予算を超えてしまった、というケースもあるようです。
そこで、各サービスでどのような費用がいくら発生するかを試算した上で、数社から相見積もりをとり、予算内に収まるものを選びましょう。
5-4.セキュリティ面は安全か
PBXに限らずクラウドサービスを利用する際に気になるのが、「セキュリティ面は安全か」という点でしょう。インターネットを利用するため、サイバー攻撃を受けたり情報が漏洩したりするリスクは避けられません。
そこで、以下の点をチェックして、高いレベルでセキュリティ対策を実施しているサービスを選ぶようにしましょう。
・ファイアウォール、通信の暗号化、ウイルスチェックなどの対策は、自社のセキュリティポリシーを満たしているか
・多要素認証を設定できるか
・ISO27017(クラウドセキュリティに関する国際規格)を取得しているか
5-5.管理画面が使いやすいか
PBXは毎日の業務で利用するものですので、「管理画面が使いやすいか」も判断基準になるでしょう。
クラウドPBXサービスは多種多様なので、管理画面のインターフェイスもサービスごとに異なります。毎日の利用を考えると、ひと目でわかりやすく使いやすい管理画面が望ましいです。
クラウドPBXを提供しているベンダーの中には、Webサイトで管理画面のサンプルを公開しているところもありますので、それらを比較して見るといいでしょう。
5-6.今の電話番号を引き継げるか
すでに電話業務を行っているオフィスやコンタクトセンターにクラウドPBXを導入するのであれば、「今の電話番号を引き継げるか」も重要です。
サービスによって、引き継げるものと引き継げないものがあるためです。
もし、引き継げずに新たな電話番号を利用する場合は、番号の変更を顧客や取引先などに十分に告知する必要が生じます。
そこで、「番号を引き継げるか」、「引き継げるならどのような方法か(そのまま継続できるか、番号ポータビリティを利用するかなど)」の2点を確認して、希望に合致するサービスを選びましょう。
5-7.インターネット回線に制限はないか
さらに、「インターネット回線に制限はないか」も確認する必要があります。
クラウドPBXサービスの中には、ベンダーが指定したインターネット回線を使用しなければならないものもあるのです。
その場合、指定された回線が現在使用中のものと異なれば、クラウドPBX導入に合わせて回線の契約も変更しなければなりません。
「変更しても構わない」というのであれば問題ありませんが、すでに構築されたネットワークに影響がある場合や、変更するとコストが大きくかさむ場合などは、回線に制限のないサービス=いま利用している回線をそのまま利用できるサービスを探すとよいでしょう。
5-8.既存システムと連携できるか
現在、業務でCRMやSFAなど何らかのシステムを利用している場合は、新たに導入するクラウドPBXが「既存システムと連携できるか」も検討する必要があります。
PBXは、他のシステムと連携することで電話業務をより効率化し、業績向上に繋げることができるものです。
そこで、いま自社で使っているシステムとスムーズに連携できるものを選んでください。ベンダー側に「この既存システムと連携できるか」を確認するのはもちろん、そのシステムや類似システムとの連携実績があるかどうかも確認するとよいでしょう。実績が豊富なベンダーであれば、安心度も高まります。
5-9.同時通話数は十分か
「同時通話数は十分か」という点も確認しておきましょう。
クラウドPBXの内線電話数は、理論上は無制限に増やすことができます。
しかし実際のサービスでは、同時に通話できる数に上限があったり、同時通話数を増やすと利用料金も上がったりする場合があります。
そこでまず、必要な同時通話数を算出し、それを十分に満たしているサービスを選ぶ必要があります。さらに、今後電話業務が拡大して、同時通話数が増える可能性がある場合は、後から増やすことができるかも確認しておきましょう。
5-10.サポート体制は充実しているか
最後にチェックするポイントは、「サポート体制は充実しているか」という点です。
クラウドPBXは、PBXの機能がクラウド上にあるのが特徴です。
もし何か不具合が生じた際には、オンプレミスPBXであればPBXが自社内にあるため社内で対応することも可能ですが、クラウドPBXの場合はベンダーに対応してもらわなければなりません。
そのため、緊急時にどのようなサポートが受けられるかは重要な選定ポイントになります。
・サポート窓口の受付時間
・電話、メール、チャットボットなどサポートを受けられるチャネルの種類
・不具合など緊急時の対応スピード
などをよく確認しましょう。
もし、「メールでの受付中心で、対応までに2〜3日かかる」などということがあれば、その間の業務が滞ってしまいますので、なるべく迅速にきめ細やかなサポートが受けられるサービスを選んでください。
6.クラウドPBXの導入に失敗しないための注意点
ここまで、クラウドPBXを導入する流れや選ぶ際のポイントを解説しましたが、クラウドPBXの導入に失敗しないためにも、注意したいポイントがあります。
- 信頼性のあるクラウド事業者を選ぶ
- 複数のサービスをトライアル試用して使い勝手をチェックする
それぞれ見てみましょう。
6-1.信頼性のあるクラウド事業者を選ぶ
1つめの注意点は、「信頼性のあるクラウド事業者を選ぶ」ことです。
今後、クラウドPBXの市場拡大とともに、多くの事業者の新規参入が予想されます。
信頼性のあるクラウド事業者を選ぶためには、公式サイト上で公開されている導入実績や、ネット上で確認できる口コミ・評判などをチェックすることが大切です。
できるだけ多くの情報を集めた上で、納得いく事業者のサービスを選びましょう。
6-2.複数のサービスでトライアル試用して使い勝手をチェックする
2つめの注意点は、「複数のサービスでトライアル試用して使い勝手をチェックする」ことです。
クラウドPBXサービスの多くは、無料で試用できるトライアル期間が設けられています。無料トライアルを利用して複数のサービスを実際に試してみて、使い勝手をチェックしましょう。
実際に使ってみると、サービス資料を読んでいるだけでは気付けなかった発見があり、自社にとってより良いサービスを選ぶ一助になります。
7.クラウドPBXでフレキシブルなコンタクトセンターやオフィスの構築を
クラウドPBXは、コンタクトセンター(コールセンター)やオフィスの電話システム構築が、非常にフレキシブルにできることが魅力です。
導入障壁の低さ、拡張・縮小のしやすさ、テレワークへの対応など、従来のPBXの課題を解決して進化しています。
一方で、音質など一部には改善の余地が残されていることも事実です。
クラウドPBXは登場してから日が浅く、まだサービスとして発展途上にあるためです。
しかしここ数年を見ただけでも、クラウドPBXの改良は進んでいます。今後はクラウドPBXがPBXのメインになっていくと考えられます。ぜひ、クラウドPBXの利点を味方につけて、自社の状況に合わせた環境の整備や、働きやすい職場づくりに役立てていきましょう。
なお、クラウドPBXを含むクラウド型コンタクトセンターの構築をご希望の場合は、クラウド型コンタクトセンタープラットフォーム『Amazon Connect』の導入がおすすめです。
詳しくは以下のリンクからご確認ください。
まとめ
◎クラウドPBXとはクラウド事業者が提供するサービスを利用したPBX
◎クラウドPBXのメリット
・PCやスマートフォンを用いて内線化できる |
◎クラウドPBXのデメリット
・発信できない電話番号がある |
◎クラウドPBXはこんな企業におすすめ
・テレワークに対応した業務環境を作りたい |
◎クラウドPBX選びのポイント
・必要十分な機能が備わっているか |
◎クラウドPBXの 導入に失敗しないための注意点
・信頼性のあるクラウド事業者を選ぶ |
クラウドPBXでフレキシブルなコンタクトセンター(コールセンターやオフィスの構築を目指しましょう。