
クラウドPBXとは、クラウド事業者がインターネット上で提供するPBXを利用し、インターネットを通じて通話を行う新しいタイプのPBXです。
従来のPBXでは、物理的な機器を購入し工事をして設置する必要がありましたが、クラウドPBXでは必要なものはクラウド上に構築され、初期費用を抑えてスピーディに導入できるのが特徴です。
クラウドPBXは、一時的に社内にコンタクトセンター(電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)を設置したい企業や、テレワークに対応したい企業などに採用されています。
これから新たにコンタクトセンターやオフィスを構えるなら、ぜひ知っておきたいのがクラウドPBXです。
そこで本記事では、新しいサービスである「クラウドPBX」について、詳しく解説します。
本記事のポイント
1.クラウドPBXの基本がわかる
2. クラウドPBXのメリット・デメリットを解説
3. 導入の流れや注意点まで網羅
「クラウドPBXってどんなものなのか把握したい」
「自社にクラウドPBXを導入するか検討したい」
…という方におすすめの内容となっています。
この解説を最後までお読みいただければ、あなたは「クラウドPBXの基礎知識」はもちろん、マイナス面も含めて多角的にクラウドPBXについて理解できるようになります。
導入するうえでの注意点も把握できるため、失敗を回避してクラウドPBXを選べるようになるでしょう。
ではさっそく、クラウドPBXについて解説します。
目次
1. クラウドPBXとは
まずはクラウドPBXの基礎知識から解説します。
1-1. クラウドPBXとはクラウド事業者が提供するサービスを利用するPBX
クラウドPBXとは、クラウド事業者が提供するサービスを利用して、クラウド上にPBXを設置し、インターネット回線を使用して電話の通話を行うタイプのPBXです。
「クラウド」はクラウド事業者がインターネットを経由して提供するサービスのことで、クラウドPBXでは、クラウドPBXサービスを提供する事業者に、サービスの利用料を支払って、PBX機能を利用する仕組みとなっています。
「そもそも、PBXって?」という疑問には、次項で詳しくお答えしましょう。
1-2. PBXとは?
「PBXは何なのか知りたい」という方のために、PBXについて解説します。
PBXは“Private Branch Exchange”の略で、日本語でいえば「構内電話交換機」となります。
簡単にいえば、オフィスやコンタクトセンター(コールセンター)などの内線電話機をつないでネットワークし、外線と内線をつないだり、内線同士の通話を可能にしたりする機能を持つのがPBXです。
PBXは、代表電話番号での発着信、同じ電話番号で同時に複数の回線から発着信、内線通話など、電話を業務で利用するうえで欠かせない機能を利用できるようにします。
もちろん、コンタクトセンターを設置するうえでも、PBXは必要不可欠です。PBXについてより詳しくは以下の記事で解説しています。
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1-3. 従来のPBXとクラウドPBXの違い
クラウドPBXは2010年頃に登場した新しいサービスです。クラウドPBXが登場する以前に主流だった従来のPBXとクラウドPBXの違いを見てみましょう。
▼ 従来のPBXとクラウドPBXの違い
従来のPBX | クラウドPBX | |
タイプ | オンプレミス (社内にある) | クラウド (インターネット上にある) |
初期費用 | ×高い | ○安い |
機器の購入 | ×必要 | ○不要 |
導入の工事 | ×必要 | ○不要 |
機器のメンテナンス | ×必要 | ○不要 |
導入スピード | ×遅い | ○早い |
品質 | 〇良い | △Internet回線、PCに依存 |
従来のPBXは、社内に工事して機器を設置する必要があったため、初期費用が高いことがデメリットでした。加えて、機器は老朽化するため、定期的な買い換えが必要でした。
従来のPBXが抱えていたデメリットを解決する新たな方法として注目されているのが、物理的な機器を持たないクラウドPBXです。
2. クラウドPBXのメリット
クラウドPBXには、大きく分けて5つのメリットがあります。
- 初期費用を節約できる
- スピーディに導入できる
- PCやスマホを用いて内線化できる
- テレワークに対応できる
- 拡張が容易にできる
それぞれ見てみましょう。
2-1. 初期費用を節約できる
1つめのメリットは「初期費用を節約できる」ことです。
クラウド型ではない従来のオンプレミス(自社運用)のPBXは、物理的な機器をオフィスに導入する必要があります。
そのため初期費用として機器の購入費用や工事費用が発生していました。オフィスの規模にもよりますが、オンプレミスのPBXでは、数十万円〜数百万円以上の初期費用がかかるのが一般的です。
一方、クラウドPBXでは、物理的な機器は必要ありませんので、機器の購入費用と工事費用を節約できます。
クラウドPBXで必要な初期費用はサービスによって異なりますが、小規模オフィスであれば数万~数十万円程度が相場となっています。
2-2. スピーディに導入できる
2つめのメリットは「スピーディに導入できる」ことです。
クラウドPBXは、すでにクラウド上に構築されているPBXを利用するため、オンプレミス型のように自社で環境を整備する必要がありません。
オンプレミス型では機器購入や工事の手配などで数週間の時間を要することも珍しくありませんが、Internet回線があれば、クラウドPBXなら最短即日で開通できるほど、スピーディに導入できます。
2-3. PCやスマホを用いて内線化できる
3つめのメリットは「PCやスマホを用いて内線化できる」ことです。
※一部出来ないものもあります
インターネットを介して通話するクラウドPBXでは、社内に内線電話機を設置する必要はなく、利用中のPCやスマートフォンを内線化できます。
内線化したソフトフォン同士で無料の内線通話をすることはもちろん、会社の代表電話番号の発着信もPCやスマホで可能です。
内線電話機を購入する必要がなく、普段使い慣れたPCやスマホを活用できるため利便性が高まります。
2-4. テレワークに対応できる
4つめのメリットは「テレワークに対応できる」ことです。
クラウドPBXでは、単にPCやスマホを内線電話機として活用できるだけでなく、「いつでも・どこでも、インターネットさえあれば発着信が可能」になります。
従来のオンプレミス型PBXでは、オフィスに誰かが出勤しないと取れなかった外線電話が、社員の自宅やサテライトオフィスなど、さまざまな場所で受けられるようになります。
例えば、オペレーターがテレワーク勤務するコンタクトセンター(コールセンター)の構築も、クラウドPBXなら可能です。
2-5. 拡張が容易にできる
5つめのメリットは「拡張が容易にできる」ことです。
前述のとおりクラウドPBXでは物理的な機器や工事の必要がないため導入が容易ですが、これは拡張する際にも同じことがいえます。
回線数を増やしたいときには、Web上の管理画面やクラウド事業者への申請で手軽に変更ができます。
逆に回線数を減らしたいときにも、設定変更だけで簡単に縮小できる点も、クラウドPBXならではの利点です。
例えば、コンタクトセンター(コールセンター)で一時的に注文数が増える時期のみ回線数を増やしたり、社員数の増減に合わせて小まめに回線数を変更したりと、常に自社のニーズにフィットした規模のPBXを運用できます。
3. クラウドPBXのデメリット
メリットの多いクラウドPBXですが、デメリットもあります。
- 毎月のランニングコストがかかる
- 番号に制限がある
- 通信環境によって音質が悪くなる場合がある
それぞれ解説しましょう。
3-1. 毎月のランニングコストがかかる
1つめのデメリットは「毎月のランニングコストがかかる」ことです。
従来のオンプレミス型PBXは、自社で運用するものですから、運用のためのランニングコストはかかりません(機器の老朽化への対応、保守対応費など、メンテナンス費用はかかります)。
一方クラウドPBXは、自社で運用する手間がかからない分、クラウド事業者に対して、毎月サービスの利用料を支払う必要があります。
利用料の相場は、1回線あたり数千円(月額)程度です。例えば、1回線2,000円のサービスで10回線を導入すると、毎月20,000円のランニングコストが発生することになります。また、回線数だけではなく、利用した分を従量課金で発生する場合があり、通信量によって多くの金額がかかる可能性があります。
3-2. 発信できない電話番号がある
2つめのデメリットは「発信できない電話番号がある」ことです。
クラウドPBXでは、電話回線からでないと発信できない電話番号には発信できません。電話回線ではなく、インターネット回線を介して通話を行うためです。
例えば「110」「118」「119」などの緊急通報は、クラウドPBXではできないので、注意が必要です。また、取り扱える番号の制限が各クラウドPBXによりある可能性があるため、注意が必要です。
緊急通報はクラウドPBX経由ではなく、携帯電話回線から発信する必要があります。
3-3. 通信環境などによって音質が悪くなる場合がある
3つめのデメリットは「通信環境などによって音質が悪くなる場合がある」ことです。
インターネット回線を介し、クラウド事業者のサーバを経由して通話を行うクラウドPBXは、オンプレミス型のPBXに比較すると音質は悪くなります。
特に、通信速度の遅いインターネット回線を利用している場合やPCの環境などによっては、音質の悪さが目立つことがあります。
また、クラウドPBXの事業者のサーバが重くなったり不安定になったりすると、影響を受けて音質が低下することがあります。
4. クラウドPBXはこんな企業におすすめ
クラウドPBXのメリットとデメリットを踏まえつつ、クラウドPBXはどんな企業におすすめなのか、ご紹介しましょう。
▼ クラウドPBXがおすすめのケース
・テレワークに対応した業務環境を作りたい |
4-1. テレワークに対応した業務環境を作りたい
1つめは「テレワークに対応した業務環境を作りたい」ケースです。
PCやスマホで内線化し、いつでも・どこでも会社の電話を発着信できるようになるクラウドPBXは、まさにテレワーク対応に最適なPBXといえます。
テレワークを推進するために、ファイル共有や業務用ソフトのクラウド化を進めている企業であれば、その一貫としてPBXもクラウド化することをおすすめします。
今までは「電話対応のために誰かが出勤しなければならなかった」という職場でも、クラウドPBXの導入で、完全なテレワーク体制が構築できます。
例えば、テレワークは難しいとされていたコンタクトセンター(コールセンター)も、クラウドPBXの登場によってテレワークが可能になっており、導入する企業が増えつつあります。
4-2. 資産を持つことなくPBXを導入したい
2つめは「資産を持つことなくPBXを導入したい」ケースです。
社員数の少ない中小企業や個人事業主の小規模オフィスでは、PBXは導入できず、不便を感じながらも何とか運用している例が多くあります。
従来のオンプレミス型PBXでは、初期費用の大きさやメンテナンスの手間などが負担になっていたためです。
クラウドPBXでは、数人以下の小規模オフィス向けのサービスプランもあり、初期費用を抑えたPBX導入が可能です。
従来のPBXでは導入が難しかった小規模オフィスにとって、クラウドPBXは良い選択肢となります。
4-3. 柔軟に回線数を増やしたり減らしたりしたい
3つめは「柔軟に回線数を増やしたり減らしたりしたい」ケースです。
例えば、大規模プロモーションやキャンペーンなどを実施している期間中だけ、受注コンタクトセンター(コールセンター)として機能させたい場合や、まだ事業の先行きが見えていないスタートアップ企業などに、クラウドPBXはおすすめです。
クラウドPBXは、導入規模を拡大する・縮小するといった対応が柔軟にでき、費用は基本的に使った分を支払うだけです。
仮に事業撤退となったとしても、先行投資分が無駄になることはありません。
5. クラウドPBXを導入する流れ 3ステップ
クラウドPBXを導入する際は、どんな流れになるのでしょうか。3ステップでご紹介しましょう。
- ステップ1:利用したいサービスを選定し見積もりを依頼する
- ステップ2:サービスの申込みを行う
- ステップ3:各種設定をする
5-1. ステップ1:利用したいサービスを選定し見積もりを依頼する
1つめのステップは「利用したいサービスを選定し見積もりを依頼する」です。
クラウドPBX自体は2010年頃に登場したサービスですが、近年、新規参入するクラウド事業者が増えています。
さまざまなクラウドPBXサービスが登場していますので、自社に合うサービスを選定しましょう。
利用したいサービスが見つかったら、Webサイト上のメールフォームや問い合わせ電話番号から連絡して、見積もりを依頼します。
必要に応じて自社の状況を相談し、ベストなプランや構成の提案を受けましょう。
5-2. ステップ2:サービスの申込みを行う
2つめのステップは「サービスの申込みを行う」です。
見積もりを確認し、提案内容に納得ができたら、サービスに申込みを行います。
クラウドPBXの申込みのプロセスは、選定したサービスや自社の状況によっても異なりますが、主に以下の流れとなります。
▼ クラウドPBXの申込み
1 規定の申込書・本人確認書類などを提出する |
申込み完了までにかかる日数は、数日〜1週間程度です。
5-3. ステップ3:各種設定をする
3つめのステップは「各種設定をする」です。
具体的な設定内容はクラウド事業者や利用している電話回線の種類によって異なりますので、クラウド事業者からの案内に従って設定をしましょう。
基本的には、対象クラウドPBXの設定画面より、番号の取得、着信フローの作成、ログインする内線・Agentの作成などを行い、PC・スマホからログインすればクラウドPBXの利用をスタートできます。
6. クラウドPBXの 導入に失敗しないための注意点
前章ではクラウドPBXを導入する流れを簡単にご紹介しましたが、クラウドPBXの導入に失敗しないためには、注意したいポイントがあります。
- 信頼性のあるクラウド事業者を選ぶ
- 複数のサービスをトライアル試用して使い勝手をチェックする
- 契約前に解約について確認しておく
それぞれ見てみましょう。
6-1. 信頼性のあるクラウド事業者を選ぶ
1つめの注意点は「信頼性のあるクラウド事業者を選ぶ」ことです。
今後、クラウドPBXの市場拡大とともに、多くの事業者の新規参入が予想されます。サービスの質が低いクラウド事業者も出てくる可能性がありますので、注意してください。
信頼性のあるクラウド事業者を選ぶためには、公式サイト上で公開されている導入実績や、ネット上で確認できる口コミ・評判などをチェックすることが大切です。
しかし、多くのクラウド事業者の中から自社にあったサービスを見つけ出すことは難しいですよね。
日本最大級の法人向けサービス口コミ・比較サイト「ボクシル」では、ボクシルがおすすめする13社のクラウドPBXサービスの「仕様」「料金」「特徴」をまとめて比較していて、資料も無料でダウンロードできるのでおすすめです。
またボクシルではクラウドPBXを導入した企業が、どんなポイントでサービス選定したのかについても紹介しているので情報収集の参考にしてみてください。
なお、音質を確認するためには、そのクラウド事業者の相談窓口に電話してみると良いでしょう。その事業者のクラウドPBXが利用されていれば、どの程度の音質なのか実際に確認できます。
6-2. 複数のサービスをトライアル試用して使い勝手をチェックする
2つめの注意点は「複数のサービスをトライアル試用して使い勝手をチェックする」ことです。
クラウドPBXサービスの多くは、無料で試用できるトライアル期間が設けられています。複数のサービスを実際に試して、使い勝手をチェックしましょう。
実際に使ってみると、サービス資料を読んでいるだけでは気付けなかった発見があり、自社にとってより良いサービスを選ぶ一助になります。
6-3. 契約前に解約について確認しておく
3つめの注意点は「契約前に解約について確認しておく」ことです。
クラウドPBXを導入してから不満があれば、早期に解約して、より良いクラウドPBXサービスに乗り換えることも必要です。
その際に大切なのは、解約について事前によく確認しておくことです。
最低継続期間の縛りがないか、解約する場合には解約希望日の何日前までに申し出れば良いのかなど、解約時のことを把握したうえで、納得できるサービスを選びましょう。
7. クラウドPBXでフレキシブルなコンタクトセンターやオフィスの構築を
クラウドPBXは、コンタクトセンター(コールセンター)やオフィスの電話システム構築が、非常にフレキシブルにできることが魅力です。
導入障壁の低さ、拡張・縮小のしやすさ、テレワークへの対応など、従来のPBXの課題を解決して進化しています。
一方で、音質など一部には改善の余地が残されていることは事実です。クラウドPBXは登場してから日が浅く、まだサービスとして発展途上にあるためです。
ですが、ここ数年を見ただけでも、クラウドPBXの改良は進んでいます。今後はクラウドPBXがPBXのメインになっていくと考えられます。
ぜひ、クラウドPBXの利点を味方につけて、自社の状況に合わせた環境の整備や、働きやすい職場づくりに役立てていきましょう。
なお、クラウドPBXを含むクラウド型コンタクトセンターの構築をご希望の場合は、クラウド型コンタクトセンタープラットフォーム『Amazon Connect』の導入がおすすめです。
詳しくは以下のリンクからご確認ください。
8. まとめ
クラウドPBXとはクラウド事業者が提供するサービスを利用したPBXです。
クラウドPBXは、従来のオンプレミス型のPBX(レガシーPBX・IP-PBX)の課題を解決した進化版PBXといえます。
クラウドPBXのメリットは以下のとおりです。
1 初期費用を節約できる |
クラウドPBXのデメリットは以下のとおりです。
1 毎月のランニングコストがかかる |
クラウドPBXはこんな企業におすすめです。
1 テレワークに対応した業務環境を作りたい |
クラウドPBXを導入する流れは以下のとおりです。
ステップ1:利用したいサービスを選定し見積もりを依頼する |
クラウドPBXの 導入に失敗しないための注意点として、次の点が挙げられます。
1 信頼性のあるクラウド事業者を選ぶ |
クラウドPBXでフレキシブルなコンタクトセンター(コールセンター)やオフィスの構築を目指しましょう。