「コールセンター運営担当になり、マニュアルの作成を任されたけれど、どんなことを記載すればよいのかわからない。」
「コンタクトセンターの顧客対応の質を高めるためには、どのようなポイントを考慮してマニュアルを作成すればよいのだろうか。」
このようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
コンタクトセンター(コールセンター)の運営においてマニュアルは切っても切り離せない重要なものです。
なぜなら「顧客に対応する応対品質のバラつきをなくすことができる」からです。
顧客がコンタクトセンターに連絡したときに、どのオペレーターが対応しても同様の品質で同じ回答を出せることがコンタクトセンターに求められているミッションです。
そのためにマニュアルを作成し、教育することでオペレーターのスキルや品質の均一化をします。
一般的には、以下の4つに分けて作成することがポイントと言われています。
1.トークスクリプト |
そこでこの記事では、コンタクトセンターで運用するマニュアルやポイントについて、以下の内容をまとめて説明していきます。
・コンタクトセンター(コールセンター)マニュアルの種類 |
また、コンタクトセンターの運営にはマニュアルとあわせて、FAQも必要です。
FAQの作り方についてはこちらの記事を参考にしてください。
1.コンタクトセンター(コールセンター)マニュアルの種類
まずは、コンタクトセンター(コールセンター)のマニュアルには、どのような種類があるのかを知っておきましょう。
コンタクトセンターのマニュアルの全体像を把握でき、今後マニュアルを自社で作成する場合に、
「どの種類のマニュアルが足りていないのか」
「どれを作成するべきなのか」
を判断できるようになります。
コンタクトセンターのマニュアルには、以下の4種類があります。
1.トークスクリプト/トークフロー |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1-1.トークスクリプト/トークフロー
1つ目は「トークスクリプト/トークフロー」です。
トークスクリプトとは、顧客応対の受け答えをまとめた、いわば「台本」のようなものです。
新人のオペレーターであっても、トークスクリプトがきちんと作られていれば一通りのやり取りはできるようになります。
会話の導入、メイントークへの繋げ方など、応対が初めてのオペレーターであっても応対できるように作成することで、新人育成のためにかかる時間や負担を削減でき、効率的で質の高いオペレーターを育成することができます。
同じような役割をするマニュアルにトークフローがあります。
トークフローは、電話を受けてから終話するまでの一連の流れを記載したものです。
トークスクリプトほど細かい文言は書いていないですが、どの順番で何を聴取するかなどの流れを確認することができます。
トークスクリプトやトークフローを作成する目的は、オペレーターによる対応のばらつきを軽減し、顧客満足度を一定に保つためです。
コンタクトセンターによってどちらかを使用したり、どちらも使用したりしますが、顧客対応するときは、いずれも常に参照できるようにしておきましょう。
1-2.電子機器・システムのマニュアル
2つ目は「電子機器・システムのマニュアル」です。
電子機器・システムのマニュアルには、オペレーターが業務を遂行する際に必要なパソコンや電話機の操作、システムの使い方等が記載されています。
コンタクトセンターにおいて、オペレーターの業務内容は電話応対だけではありません。
応対履歴を入力したり、顧客管理ソフトを操作したり、コンタクトセンター独自のシステムを操作したりするなど、さまざまな業務を行う必要があります。
そのため、オペレーターが顧客対応時にもスムーズにシステム操作ができるよう、事前に操作を確認しておけるマニュアルを作成しておくことが重要です。
電子機器・システムのマニュアルはセットアップなど最初のみ参照するものやバージョンアップなど定期的に参照するもの、入力や登録方法など都度参照するものと利用頻度が異なる内容があります。
よく使うものはスクリプトと一緒にするなど、使用頻度に合わせてまとめておくとよいでしょう。
1-3.ビジネスマナーのマニュアル
3つ目は「ビジネスマナー」のマニュアルです。
ビジネスマナーのマニュアルは、電話応対をはじめ、ビジネス上で仕事を進めるための基本的な礼儀作法をまとめたマニュアルです。社会人として必ず知っておくべきものであり、顧客対応の基礎となります。
コンタクトセンターにおいてオペレーターのビジネスマナーが伴っていない場合、たとえパソコンでの業務がスムーズにこなせたとしても、品質の高い対応をすることはできません。
当然ながら最低限のビジネスマナーを身につけていないと顧客に満足してもらうことはできません。電話応対の際に正しい言葉遣いができないオペレーターが応対すると、顧客から不信感・不快感を持たれてしまいます。
そのためビジネスマナーのマニュアルを作成し、入社時の研修や導入研修などでオペレーターの応対の基礎を養える体制を整えましょう。
1-4.会社の基礎知識のマニュアル
4つ目は「会社の基礎知識」のマニュアルです。
会社の基礎知識のマニュアルでは、コンタクトセンターのオペレーターとして働くうえで知っておくべき会社の概要や会社のルールなどが記載されています。
顧客からの問い合わせ内容は、商品・サービスの注文、変更、キャンセル、商品・サービスに関する困りごと、意見などだけではありません。「会社や商品・サービスそのものに関する情報が知りたい」と、顧客から問い合わせをもらうケースもあります。
「自分の会社のことなのに知らないのか」と顧客に不信感を抱かれないためにも、オペレーターは会社の基礎知識についてスムーズに回答できるようにしておく必要があります。
そのためにも会社の基礎知識のマニュアルは必ず作っておきましょう。
2.【種類別】コンタクトセンター(コールセンター)マニュアルに載せるべきこと
ここでは、マニュアルの種類別に、一般的にどのような内容を記載するのかをご紹介します。
マニュアルの種類別に記載内容を知ることで、各マニュアルの具体的なイメージを持つことができ、「どのようにマニュアルを作成するべきか」思い描けるようになります。
1章で説明した4つのマニュアルについてそれぞれ詳しく解説します。
1.トークスクリプト/トークフロー |
2-1.トークスクリプト/トークフローに記載すること
1つ目は「トークスクリプト」や「トークフロー」です。
コンタクトセンター(コールセンター)のマニュアルにおいて、最も重要になるのが電話での顧客対応におけるトークスクリプトやトークフローです。
トークスクリプトには以下のような内容を会話形式で記載します。
【トークスクリプトの内容例】
・オープニングとクロージングの挨拶 |
トークフローでは問い合わせと回答の流れをフローチャート形式で記載します。
【トークフローの内容例】
・顧客情報の確認タイミング |
いずれも
・「顧客が『はい』と回答した場合は、『○○○』を案内」 |
のように、顧客からの問い合わせに対して、
・どのような順番で答えていくのか |
を明確にしていきます。
トークスクリプトとトークフローはセットで作るほうが、オペレーターが利用しやすいです。
ただし、問診項目が多いテクニカルサポートや、分岐が多くなりやすい専門性の高い業務場合は、分けて作ることや、システム化するなどの工夫が必要になります。
オペレーターはこのトークスクリプトやトークフローを見ることでスムーズな電話対応が可能になります。
オペレーターは状況に合わせて顧客対応をすることも求められますが、基本的なトークの流れを理解していることが大前提です。トークスクリプトやトークフローを作成してマニュアル化しておかないと、
・対応が統一されない |
といったような、電話における応対品質が下がる事態を引き起こしかねませんので、基本の対応ルールや流れは揃えましょう。
ちなみに、トークスクリプトにはFAQを記載する場合もあります。話の流れで回答する頻度が高いFAQをトークスクリプトに入れておくと、オペレーターが応対中に参照する資料を減らすことができ、保留や応対時間短縮にもつながります。
また、トークスクリプトは言い回しの変更や運用の変更に合わせて改善や更新をすることも多いので、オペレーターが最新のものに差替えがしやすいようにしておきましょう。
トークスクリプトの作り方については下記記事でも説明していますので参考にしてください。
2-2.電子機器・システムのマニュアルに記載すること
2つ目は、オペレーターが業務で使う「電子機器・システムのマニュアル」です。
コンタクトセンターの種類によりますが、システム操作は非常に重要な作業精度を求められます。
顧客情報の書き換え、削除だけではなく、課金、返金などをシステムで行う業務であれば、間違いやミスが起きないようにオペレーションを組まないと、顧客対応時にトラブルが発生してしまいます。
この品質を担保するものの1つが、マニュアルです。
上記のような高品質な操作が求められるシステムを使った業務以外でも、システムやツールの操作方法の記載がないと
・操作方法がわからず、保留をして顧客を待たせてしまう |
というように、顧客対応の質と業務効率化に支障がでる事態になります。
【電子機器・システムのマニュアルの内容例】
・システムの立ち上げ方法やログイン方法 |
オペレーターが顧客対応するときに使用するシステムやツールのマニュアルは、ただ操作方法を記載するだけでなく、実際のオペレーションに合わせた順番で記載をするようにしましょう。
また、システム・ツールのマニュアルを作成する際は以下の2つを考慮して作ると良いでしょう。
画像や図を取り入れて記載する | ・実際に使用するツールの画面の画像を取り入れる |
重要な操作は強調させる | 重要な操作が目に入るような装飾する |
文章だけで記載すると、実際に操作したときのイメージがつかみにくく、オペレーターの業務を滞らせる恐れがあります。
また、画像や図を取り入れて操作方法を分かりやすく記載するだけでなく、重要な操作はその重要さを視覚的に分かるようにしておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
2-3.ビジネスマナーマニュアルに記載すること
3つ目は「ビジネスマナーのマニュアル」です。
一般的にコンタクトセンターにおいて記載されているビジネスマナーは、「電話応対におけるビジネスマナー」が基本です。
具体的には、以下のような内容を記載しておくことをお勧めします。
【コンタクトセンターにおけるビジネスマナーの内容例】
◆電話応対の基本、心がまえ |
敬称の種類や、電話を受けるとき、架けるときのルールはコンタクトセンターや行う業務によって異なります。
業務の内容や扱う商品、会社の雰囲気などに合わせてルールを制定し、コンタクトセンター内で統一することが大切です。
ビジネスマナーについては基本的に更新や変更を行うことは少ないので、導入研修の際などにしっかり身に着けておき、その後は困ったときに見ることができるところに置いておくのがよいでしょう。
2-4.会社の基礎知識のマニュアルに記載すること
4つ目は「会社の基礎知識」のマニュアルの一般的な記載内容です。
会社の基礎知識のマニュアルには、以下のような内容を記載するといいでしょう。
【会社の基礎知識のマニュアルの内容一覧】
◆会社概要 ◆商品・サービスに関する情報 ◆社内規定 |
各項目について、それぞれ詳しく見てみましょう。
会社概要
会社概要は顧客から問い合わせを受ける可能性があるのももちろんですが、企業ビジョンをコンタクトセンターのミッションまで浸透させる際にも重要になりますので、必ず作成しましょう。
具体的には以下のようなものをまとめていきます。
【会社概要の記載例】
・社長の名前 |
問い合わせとして聞かれることの多い社長名はフルネームで言えるようにしておき、歴史や沿革については創業年月や合併など主要な出来事は必ず入れておくようにしましょう。
ビジョンや経営方針やスローガンは事業所のミッションに落とし込む際の基本になるものです。
オペレーターまで浸透させるためにもマニュアルにしっかり入れておきましょう。
浸透施策の一例として、執務室内に貼り出し、業務開始前に唱和するなどの方法もあります。
会社概要は、オペレーターが顧客への説明がしやすくなるよう、分かりやすく表や一覧などにしてまとめておくと良いです。
会社概要をマニュアルに含めることで、オペレーターが自分の所属する会社について理解することができ、帰属意識が高まることが期待できます。オペレーターの帰属意識が高まれば、離職率も下がるでしょう。
商品・サービスに関する情報
問い合わせ内容の多くは、商材に関することがメインになります。商品やサービスなど商材の情報は必ず作成する必要があります。また、商材が多い企業ではデータベース化し、対応中でもすぐに情報が取り出せるように工夫するといいでしょう。
【商品・サービスに関する情報の記載例】
◆全商材の基本情報を記載する(網羅性) ◆主力商材や人気商材は情報を充実させる(利便性) |
商品・サービスの情報については、コンタクトセンターで取り扱っている全商材の情報を盛り込みましょう。
人気の商材への問い合わせが集中しますが、他の商材に興味を持っている顧客も当然います。人気の商材以外の商材に関する問い合わせにもスムーズに答えられるよう、商材情報を準備します。商材の量が多い場合はナレッジシステムを使うとよいでしょう。
また、主力商材や人気商材に関しては問い合わせの傾向や商材の特徴に合わせて情報を充実させておくことも重要です。
同じような特徴を持ったサービスや、商品ごとの違いを一覧化しておくと、比較や代替え案として顧客に案内することができるため、より満足度の高い対応を提供することも可能です。
Webサイトと連動させることも良く使われる手法です。顧客と共通のFAQやナレッジが確認できると、対応がスムーズに行えます。
また、問い合わせの際にヒアリングする製造番号など必要な情報を事前に公開しておくと、顧客側で問い合わせ前にある程度準備してくれるケースがあり生産性改善につながることもあります。
社内規定
会社の基礎知識マニュアルでは、一般的に社内規定を記載します。
入社の時点で社内規定は一通り研修を行うことが多いですが、社内のルールを守ることはコンタクトセンター運営する上でも重要となりますので。いつでも見返したり、確認したりできるよう、必ず入れておきましょう。
社内規定には、以下の3つを含めると良いです。
【社内規定の記載例】
・コンプライアンス・情報セキュリティ |
順番に説明していきましょう。
コンプライアンス・情報セキュリティ
コンタクトセンターでは、ミッションによって異なりますが、以下のような情報を取り扱います。
・顧客情報(個人情報、機微情報) |
外部に漏えいしてはならない個人情報や社外秘情報を扱うため、その取り扱い方をマニュアルに記載することは重要です。
インターネットの発達により、一度漏えいしてしまうと短時間で拡散することが可能なうえ、複製が容易で回収できないといった特徴があります。
このような情報セキュリティに関するマニュアルは明確化して防ぐ施策をとっておかないと、企業の信用を失います。
具体的には、
・コンプライアンス/法令順守関連の知識 |
等を記載します。
「重要さ」をコンタクトセンターのスタッフに改めて認識させるためにも、マニュアルに記載するだけでなく、研修や定期的な検査、テストなどを行い形骸化させない工夫もしましょう。
対応を開始・終了する際のルール
コンタクトセンターでは、電話対応やチャットなど顧客対応が主な業務となります。
顧客と対応を開始してから画面の準備ができていなかったり、必要なテンプレートが開けていなかったりということが無いように、電話を受ける前やチャットを開始する前に準備すべきことはマニュアルに記載しておきましょう。
同じように顧客対応を終了する際のルールも決めておきましょう。
基本的にオペレーター側から電話を切らないのが、一般的なルールです。
しかし、相手が切ったつもりで電話機から離れてしまった場合や、コンタクトセンターに災害が発生し、急遽こちらから電話を切らなくてはいけない事態が発生する可能性もあります。
そういった場合の案内文言などを事前に決めておくと、いざというときに混乱せずにすみます。
具体的には、
・電話の始め方(ログイン方法) |
などです。
保留操作ができておらず、管理者との会話が顧客に聞こえてしまい、トラブルに発展するといったことが無いように電話対応に関するルールを徹底してマニュアルに明示しましょう。
またコンタクトセンターでは、ハードフォン(電話機が独立しているもの)、ソフトフォン(PC内のソフトで電話をするもの)、どちらでもログイン、ログアウトの時間がデータ化されて記録されます。
これを活用して、生産性や稼働率が計算できるため、対応の開始・終了する際のルールは明記しておくとよいでしょう。
勤務時間や休憩の取得ルール
コンタクトセンターでは、顧客から問い合わせがきたときに常に対応できるような状態を作っておかなければなりません。
そのため、業務を開始するタイミングや休憩の取得ルール(時間・回数・確認方法)をマニュアル化しておくとよいでしょう。
具体的には、
・窓口開始時間 |
といったように、業務開始のタイミングや休憩時間の取り方を明確にします。
実際の現場ではマニュアルの記載にあわせて、時間別ログイン・ログアウト表を作成し、休憩が重複しないようにすると良いでしょう。
1日の勤務時間(休憩時間)の意識づけや管理ができるため、コンタクトセンターの接続品質が守られます。
これにより、オペレーターごとに出勤時間や業務前の準備時間がバラバラになることで不公平感が生まれることを避けたり、繁忙でも休憩時間を明確にしておくことでオペレーターのモチベーションを保つこともでき、オペレーターの離職抑止にもつながります。
3.コンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルの作り方4ステップ
コンタクトセンター(コールセンター)のマニュアルがどういうものか具体的にイメージできるようになったところで、実際に「どうやってマニュアルを作るのか」について解説します。
以下4ステップで作成方法を見ていきましょう。
【ステップ①】必要な情報を集める |
3-1.【ステップ①】必要な情報を集める
ステップ①は「必要な情報を集める」ことです。
はじめてコンタクトセンターを立ち上げる場合はすべて作る必要がありますが、すでにマニュアルがある場合は足りないものをまず作ることから始めます。
マニュアルに記載する情報を集めます。
トークスクリプトの場合は、問い合わせを受けるために必要な項目や、案内すべき事項、システムマニュアルであれば、システム自体の説明資料などです。
他の部門の場合やアウトソーシングの場合は、他部署・お客様企業の対応ルールなどの情報を集める必要があります。
マニュアルは1人で作成するよりも何人かで意見を出し合って作成する方がよいでしょう。
責任者を決め、目的やスケジュールを共有しながら作成を進めることで、最後まで責任を持って作成し、なおかつ複数の意見を元に改善を行うことも可能となります。
コンタクトセンターのマニュアルは、応対品質を左右する重要な役割を担っています。質の高いマニュアル作成のためにも、何が必要な情報かはしっかり吟味しましょう。
3-2.【ステップ②】マニュアルの使い方を決める
ステップ②は「マニュアルの使い方を決める」です。
マニュアルをどのように使っていくかをまず決めておきましょう。
例えば、紙に印刷、冊子の形にするのか、ExcelやWordをつかってデータを格納しておくのか、などです。
オペレーターが顧客の対応をするときには、システム画面やマニュアルなど複数の画面や資料を参照しなければいけません。
全てデータ化すると複数の画面を開かなければならず、操作ミスを引き起こす可能性があります。しかし、印刷したものばかりでも、必要なマニュアルをとりだすのに時間がかかる場合があります。
オペレーションの内容と併せてマニュアルの使い方を決め、参照しやすいマニュアルを作成しましょう。
3-3.【ステップ③】マニュアルのレイアウトを決める
ステップ③は「マニュアルのレイアウトを決める」です。
どのマニュアルをどのように使うかを決めたら、次にマニュアルのレイアウトを決めましょう。
見出しの付け方や図表の入れ方、ポイントや注意事項はどこに記載するのかなどを決めておくと、どのマニュアルを見ても同じように記載されているので、必要な情報が見つけやすく、使い勝手もよくなります。
見やすいレイアウトにするためには、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
・業務内容をカテゴリーに分ける |
また質問が派生して、複数の質問に回答する必要があるケースもあるため、関連する情報を調べられるようにしておくと、オペレーターにとってより使いやすく、充実したマニュアルにすることができるでしょう。
3-4.【ステップ④】ロールプレイングをする
ステップ④は「ロールプレイングをする」です。
例えば、トークスクリプトの文章は、文字の段階では問題がなくても、実際にスクリプトに沿って会話をしてみると違和感があることもあります。
そのため作成したトークスクリプトに沿ってロールプレイングを行い、会話にしたときにどこに違和感があるのか特定し、トークスクリプトを修正するようにしましょう。
ロールプレイングではトークスクリプトに沿って会話のやり取りを行ってもらい、
・会話の中で違和感のある表現 |
を見つけ出して、それぞれの修正を行いましょう。
ここで改善する点がなくなるまで繰り返し行うことで、質の高いマニュアルを作成できるでしょう。
更に、想定対応時間がシミュレーションできるため、マネジメントKPIの設計が正しいかをチェックすることもできます。
また、マニュアルを作成する中でマニュアル同士に矛盾が生じていないかも確認しましょう。
トークスクリプトには「ここでシステムを操作する」と書いてあるのに、システムマニュアルでは「電話が終わった後に操作する」と書いてあったりすると、オペレーターの混乱を招きます。
単体で作成するのではなく、各マニュアルに関連性・統一性を持たせて作成してくことが必要です。
それぞれのマニュアルの内容を突合せしながら作成を進めるようにしましょう。
4.コンタクトセンター(コールセンター)の品質を高めるマニュアルを作るポイント3つ
ここまでコンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルの項目と作成方法について説明してきました。マニュアルがうまく活用されると、コンタクトセンターの品質向上に繋がります。
そのためには利用しやすいマニュアルを作ることが必要です。ここではマニュアルが利用されるためのポイントを紹介します。
1.必要な情報を探しやすくする |
1つずつ説明していきましょう。
4-1.必要な情報を探しやすくする
マニュアルは1ファイルにまとめて閲覧できるようにすることも可能ですが、オペレーターが電話における顧客対応をするときに必要な情報をすぐに取り出せるような工夫が必要です。
また、資料の更新があったときに差替えや変更をしやすくしておくことも重要です。
すべてのマニュアルを1つにまとめる場合はファイリング形式にして、変更があった部分だけ差し替えられるようにしたり、電話対応する間はスクリプトを取り出しておくことができるようにしましょう。
スクリプトをマニュアルと分けて使うことで、スクリプトをどこまで進めたか見失ってしまったり、何度もページを行き来することを避けることができます。
また、マニュアルは顧客の要件ごとにトーク例やFAQを作成しておくと、スムーズな顧客対応と更新管理ができます。
顧客が電話をかける要件の例としては、
・利用方法がわからない |
といったものが挙げられます。
自社で展開する商材について問い合わせが予想される要件を洗い出し、その要件ごとに紙の場合は見出しをつけておいたり、データの場合は1つのフォルダやファイルにまとめておくと、必要な情報をすぐに探し出すことができる使い勝手のいいマニュアルになります。
また、質問されたときにスムーズにマニュアルを参照できるよう、設置場所も工夫するとよいでしょう。
トランスコスモスが提供する「transpeech」はオペレーターと顧客との会話の音声を認識して、必要なFAQなどのマニュアルを表示させる機能があります。
この機能を使うと、オペレーターが自分でマニュアルを探さなくても、自動で表示されるので、顧客への質問にスムーズに回答することができます。
transpeechの詳細についてはこちらをご覧ください。
4-2.図表をうまく入れる
「2-2.電子機器・システムのマニュアルに記載すること」でも記載しましたが、文章だけで記載すると、実際のイメージがつかみにくい場合があります。
そのため、図や表をうまく入れることで見やすく使いやすいマニュアルになります。
・電子機器・システムのマニュアルに実際の画面のキャプチャをいれる |
など、顧客対応の際にぱっと見て情報がわかるように準備をしておきましょう。
操作のイメージが付きやすくなって操作時間が短縮したり、顧客への質問にスムーズに会同できるようになります。
4-3.初心者でもわかりやすい内容にする
マニュアルは、コンタクトセンターに配属されたオペレーターが研修などのために使用されることもあります。
すでに業務を知っているオペレーターや管理者はわかっても、今までコンタクトセンターで仕事をしたことが無いオペレーターにはわからない文言や内容を記載してしまうと、理解に時間がかかります。
初心者でもわかりやすい言葉にしたり、用語集などを一緒に利用することで、この問題を解決することができます。
また、トークスクリプトなどは具体的な案内の文言を記載しますが、最初のうちはそのまま読むだけで、ある程度の品質が保たれるような内容にしておく必要があります。
そのため、顧客満足度の高いオペレーターの応対例をベストプラクティスとして載せると電話対応の質を上げられます。
顧客満足度の高いオペレーターというのは、
・顧客が求めている回答をスピーディーに行える |
といったように、高い顧客対応能力を持っています。
トーク例を参考にし、トークスクリプトに盛り込むことで、品質の底上げが可能となります。
最初の段階で品質の高いトークを身に着けておくことができれば、その後は定期的なフォローを行うことでさらなる品質向上も目指すことができます。
もちろん、顧客満足度の高いオペレーターのトークをそのまま使うように徹底するのではなく、オペレーター全員が顧客満足度の高い対応ができるよう、見本として載せて参考にしてもらうようにしましょう。
5.コンタクトセンター(コールセンター)でマニュアルを運用するときに心がけるべきこと2つ
ここまで、コンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルについて、含める項目とコンタクトセンターの質を高めるための作成ポイントを説明してきました。
最後に、マニュアルの作成を終えて実際に運用するときに心がけるべき以下2つのことを説明しましょう。
1.定期的に更新する |
5-1.定期的に更新する
これは前段の各所にも出てきていますが、マニュアルは作成したら終わりではなく、随時情報を更新することが重要です。
通常はスーパーバイザーが更新することが多いですが、コンタクトセンターのスーパーバイザーは他の管理業務が多数あり、更新が後回しになってしまうことがあります。
そこで、更新タイミングや更新頻度を整理してルール化し、更新を漏らさないようにしましょう。
マニュアルの更新タイミングの一例をまとめました。
【項目別・更新タイミングと更新頻度】
マニュアルの項目 | 更新タイミング(例) | 更新頻度 |
---|---|---|
トークフロー/スクリプト | ・過去になかった問い合わせが増えたとき | 高 |
システム/ツールの操作方法 | ・新しいバージョンがリリースされるとき | 低 |
社内規則(センタールール) | ・営業時間が変わるとき | 中 |
会社の概要 | ・社長が変わるとき | 小 |
商材の情報 | ・新しい商材がリリースされるとき | 高 |
上記のように整理すると、何が起きたときに更新が必要なのかがわかり、チェックがしやすくなります。
情報をマニュアル作成時のままにしておくと、
・誤った情報を顧客に案内してしまう |
といったようなことが生じ、コンタクトセンターの信頼性を低下させることにつながります。
顧客に案内する情報が変わるときは、迅速にマニュアルを更新しましょう。
また、更新漏れがあると誤案内や対応のばらつきの原因になりますので、古いものは回収したり、データを削除するなど、混在しないように気を付けましょう。
マニュアルを更新したら、更新したところを関係者に知らせて共有も忘れずに行なってください。
5-2.常にマニュアル通りの対応をしない
これまでマニュアルの重要性について説明してきましたが、常にマニュアル通りの対応をすることがよいわけではありません。
ベーシックスキルとして理解は必要ですが、臨機応変に変化することも運用する上で大切です。
もちろん、マニュアルは顧客対応の品質と業務効率化を高めるために参照すべきものです。
まずは、対応や作業のベーシックスキルを統一しないと対応品質にバラつきが発生しますし、オペレーターにわかりやすく作る意味で統一的に書かざるを得ません。
とはいえ、全員マニュアル通りの対応をすると、
・顧客から「決まった対応しかしてくれない」とネガティブな印象を持たれる |
といったように、電話対応の顧客満足度とオペレーターの成長の低下を招くことにつながります。
新人オペレーターの場合は慣れるのに時間を要するため、最初はマニュアル通りの対応をしてもらうのが良いですが、業務経験が豊富なオペレーターは顧客に合わせたトーンで話すといった柔軟な対応ができるようにしてもらうと良いでしょう。
まとめ
コンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルは、業務効率化を実現して顧客対応の質を高めるために重要なものです。
以下の4つのステップで作成できます。
【ステップ①】必要な情報を集める |
そして、コンタクトセンターの品質を高めるためには、以下の3つを踏まえて作成することがポイントになります。
1.必要な情報を探しやすくする |
マニュアルを作成したら、以下2点を心がけて運用していくことが大切です。
1.定期的に更新する |
またマニュアル作成をするにあたり、こちらの記事も参考になりますので、併せてご覧ください。
この記事を参考に、より良いコンタクトセンターが構築されることを願っています。