
コンタクトセンター運営担当になり、マニュアルの作成を任されたけれど、どんなことを記載すればよいのでしょうか。
また、コンタクトセンターの顧客対応の質を高めるためには、どのようなポイントを考慮してマニュアルを作成すべきでしょうか。
コンタクトセンター(コンタクトセンターとは、電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)の運営においてマニュアルは切っても切り離せないほど重要なものです。
マニュアルについて、いざ作成するとなると何を基準としてよいか、悩みを抱えている方も多いと思います。
一般的には、
・マニュアル(社内規則、業務運用、システム・ツール操作方法)
・スクリプト(トークフロー/スクリプト)
・FAQ
の3つに分けて作成することがポイントと言われていますが、しっかりと理解している方は少ないように思います。(なお、コンタクトセンターの運営にはFAQとあわせて、Q&Aが必要です。Q&Aは網羅性が重視されるため量が多く、WEB等のシステム化している事が多いためマニュアルの作成というテーマから外しています。)
そこでこの記事では、コンタクトセンターで運用するマニュアルやポイントについて、以下の内容をまとめて説明していきます。
・コンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルの作り方
・コンタクトセンター(コールセンター)の品質を高めるマニュアルを作るポイント
・コンタクトセンター(コールセンター)でマニュアルを運用するときに心がけるべきこと
コンタクトセンターでマニュアルを作成する際にぜひ一読いただき、何が必要となるのかを把握した上で進めてください。
目次
1. コンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルの作り方
1-1.コンタクトセンター(コールセンター)マニュアルを作る目的
マニュアルは何のために作るのでしょうか?
答えはたくさんあると思いますが、最も重要なことは「顧客に対応する応対品質のバラつきをなくすこと」です。
顧客がコンタクトセンターに連絡したときに、オペレーターによって説明される内容がバラバラだと、顧客は満足することができません。
結果、顧客にとって「信頼できないオペレーター」との会話を拒み、「●●さん出して」という指名の要求が増加するケースや、「上司に代わって」と言われてしまうことが考えられます。
これでは当然コンタクトセンターに求められているミッションは達成されません。
このようなセンターに陥らないようにマニュアルを作成し、教育することでオペレーターの基礎スキルの品質の均一化をします。
1-2.マニュアルの種類
それではコンタクトセンターの「マニュアル」とはどのような種類があるのでしょうか。
もちろん業務内容によって変わるところもあるのですが、一般的には、
1.初期研修に使われるマニュアル
2.フォローアップ研修で使われるマニュアル
3.スキルアップや役職アップに使われるマニュアル
があります。
2.3.はコンタクトセンターのミッションやサポート範囲によって変わるため、本記事では「1.初期研修に使われるマニュアル」についてフォーカスを当てて紹介していきます。
1-3.マニュアルの内容
冒頭でも説明しましたが、コンタクトセンターで運用するマニュアルは、次の6つを順に作成していくと良いです。
- センタールール(社内規則)
- 会社の概要(業務運用)
- 商材の情報(業務運用)
- トークフロー/スクリプト(スクリプト)
- FAQ
- システム/ツール操作方法(システム操作)
1つずつ説明していきましょう。
なお、マニュアルには上記の他に、ビジネスマナーや応対スキルに関する内容などが盛り込まれます。
本章では、一般的な業務に関連するマニュアル項目について説明していきますが、センターが目指すべき内容に応じてカスタマイズしてください。
1-3-1. センタールール(社内規則)を記載する
まずは、センタールール(社内規則)を作成します。
自社でコンタクトセンター(コールセンター)を運営している方は、「社内規則は知っていて当然のため、マニュアルに記載しなくても良いのでは?」と思われるかもしれません。しかし、コンタクトセンターは事業の伸長や製品の追加等にあわせて、組織体制を伸縮する必要があります。当然、新規採用したメンバーを育成してオペレーターにすることも発生します。センタールール(社内規則)は、そのため、必ず最初に入れておきます。
社内規則には、以下の4つを含めると良いです。
- 勤務時間(休憩時間)や休憩の取得ルール
- 服装の規定(ドレスコード)
- コンプライアンス・情報セキュリティ
- 対応を開始・終了する際のルール
順番に説明していきましょう。
1-3-1-1. 勤務時間(休憩時間)や休憩の取得ルール
コンタクトセンター(コールセンター)では、顧客から問い合わせがきたときに常に対応できるような状態を作っておかなければなりません。そのため、一斉にお昼休憩にでたり、忙しい時に休憩が集中して電話を取る人がいないことがないように、取得ルール(時間・回数・確認方法)をマニュアル化します。
具体的には、
・オペレーターの多数が一斉に休憩に入らないような休憩時間
(例:電話が多い時間帯は分散して休憩を取る など)
・業務中の休憩時間
(例:午前1回、午後1回、昼休憩と別に休憩15分 など)
といったように、休憩時間の取り方を明確にします。
実際の現場ではマニュアルの記載にあわせて、時間別ログイン・ログアウト表を作成し、休憩が重複しないようにすると良いでしょう。これにより、1日の勤務時間(休憩時間)を意識づけることで、コンタクトセンターの接続品質が守られます。
1-3-1-2. 服装の規定(ドレスコード)
「コンタクトセンター(コールセンター)では直接顧客と対応するわけではないから、服装の規定は関連性がないのでは?」と思われる方もいるでしょう。
確かに、コンタクトセンターのスタッフは顧客と対面でコミュニケーションを取ることはありません。
しかし、服装の規定を記載しておかないと、業務にふさわしくない服装をするスタッフが増えることは間違いありません。
業務に支障が出るといわれたケースとして、以下のような事例があります。
・ヘッドセットが装着しづらいアクセサリーを身に付ける
・強い香水のせいで、隣の人が気持ち悪くなった
顧客と直接会話をしなくても、
・不快感を与えないような服装を心がける
・業務に支障をきたさない服装を心がける
など、相応の服装で業務する旨をマニュアルに記載して明確にしておきましょう。
1-3-1-3. コンプライアンス・情報セキュリティ
コンタクトセンター(コールセンター)では、ミッションによって異なりますが、以下のような情報を取り扱います。
・顧客情報(個人情報、機微情報)
・自社の商材情報(販売前情報)
・他社と差別化を図るためのノウハウ(プロモーション情報等)
外部に漏えいしてはならない個人情報や社外秘情報を扱うため、その取り扱い方をマニュアルに記載することは重要です。
「機密情報を社外に漏らさないことは当然のため、マニュアルに記載しなくても意識づいているのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、インターネットの発達により、一度漏えいしてしまうと短時間で拡散することが可能で
複製が容易で回収できないといった特徴があります。
このような情報セキュリティに関するマニュアルは明確化して防ぐ施策をとっておかないと、企業の信用を失います。
具体的には、
・コンプライアンス/法令順守関連の知識
・情報の取り扱いルール
・持ち込み物、持ち出し禁止物のルール
等を記載します。
「重要さ」をコンタクトセンターのスタッフに改めて認識させるためにも、マニュアルに取り扱い方を記載しましょう。
1-3-1-4. 対応を開始・終了する際のルール
みなさんのコンタクトセンター(コールセンター)では、「いつから業務開始ですか?」と聞かれたら、明確に答えられますか?
ルールが決まっていないセンターでは、人により、「窓口が空いたら」とか、「朝礼の開始前には」など、意見が変わることが多いのではないでしょうか。
もし、そのまま受付開始時間になったら、人によって受付できますが、人によってはパソコンが立ち上がってなかったり、朝礼の情報を聞いていなかったりバラつくはずです。
コンタクトセンターでは、そのミッションとして「窓口開始時間に受付ができる準備を終えている」必要があります。これを実装するためには、朝礼や、周知事項の更新キャッチアップ等を逆算して、業務開始時間が設定されることが求められます。
朝の窓口開始前時間は特に重要な時間なので、しっかりと設計し、マニュアル反映・教育することで、スムーズに顧客対応を開始しましょう。
また、コンタクトセンターでは、ハードフォン(電話機が独立しているもの)、ソフトフォン(PC内のソフトで電話をするもの)、どちらでもログイン、ログアウトの時間がデータ化されて記録されます。これを活用して、生産性や稼働率が計算できます。
離席に対する操作方法や、研修時の計測ルール等、電話機の操作方法が決まっている事が多いので、マニュアルに記載しましょう。
具体的には、
・電話の始め方(ログイン方法)
・電話の取り方
・電話の取り次ぎ方
・電話の切り方
・ログの入力時の操作
・離席時の操作
まで、電話対応に関するルールを徹底してマニュアルに明示化しましょう。
1-4. 会社概要をまとめる
会社の概要は社内規則と同様、コンタクトセンター(コールセンター)のマニュアルに含める必要性を感じない方もいるかもしれませんが、実は重要な項目の1つでもあります。
・会社について尋ねてきた顧客へ迅速に回答できる
といった理由はもちろんですが、企業ビジョンをコンタクトセンターのミッションまで落としこむ際にも重要になります。
具体的には以下のようなものをまとめていきます。
・社長名
・歴史や沿革
・ビジョン
・経営方針やスローガン
会社概要をマニュアルに含めることで、オペレーターの愛社精神が養われ、帰属意識も高まるといわれており、オペレーターの帰属意識が高まれば、離職率も下がるでしょう。
会社概要は、オペレーターが顧客への説明がしやすくなるよう、分かりやすく表や一覧などにしてまとめておくと良いです。
1-5. 商材情報をまとめる
問い合わせ内容の多くは、商材に関することがメインになります。製品やサービスなど商材の情報は必ず作成する必要があります。また、商材が多い企業ではデータベース化し、対応中でもすぐに情報が取り出せるようにする必要があります。
商材情報の記載のポイントとしては、次の2点が挙げられます。
- 全商材の情報を記載する(網羅性)
- 主力商材や人気商材は情報を充実させる(利便性)
1-5-1. 全商材の情報を記載する(網羅性)
コンタクトセンターで取り扱っている全商材の情報を盛り込みましょう。
人気の商材への問い合わせが集中しますが、他の商材に興味を持っている顧客も当然います。人気の商材以外の商材に関する問い合わせにもスムーズに答えられるよう、商材情報を準備します。商材の量が多い場合はナレッジシステムを使うとよいでしょう。
Webサイトと連動させることも良く使われる手法です。顧客と共通のFAQやナレッジが確認できると、対応がスムーズに行えます。
内容としては
・商材名
・商材の特徴(カラー、販売時期、料金)
・利用方法
・注意点(契約期間、保守可能期間)
といった基本情報はどの商材も記載し、正確に案内できるようにしておきましょう。
たとえば、製品サポートでは、製造番号の記載場所がどこにあるのか、サブスクリプションでは登録のキーとなるユーザID等がいつ発行されて通知されているか等、特徴を記載して公開していると、顧客側で問い合わせ前にある程度準備してくれるケースがあり生産性改善につながることもあります。
1-5-2. 主力商材や人気商材は情報を充実させる(利便性)
コンタクトセンター(コールセンター)で取り扱っている全商材の情報は記載するものの、主力商材や人気商材に関しては情報を充実させかつ、適度なタイミングで更新することが大切です。
更新のタイミングは
・製品やサービスのアップデート時
・問い合わせ傾向と情報補完性
といったように、販売戦略と、問い合わせ傾向から現在の情報で適切な回答が出来ているかを確認した上で更新することが重要です。これによりオペレーターが、顧客が欲しいときに役に立つ情報をお伝えしやすくなるため、顧客対応のレスポンスが早くなり、顧客満足度を高めることができます。
1-6. トークフロー/スクリプトを作る
コンタクトセンター(コールセンター)のマニュアルにおいて、最も重要になるのが電話での顧客対応におけるトークフロー/スクリプト例です。顧客からの問い合わせに対して、
・どのような順番で答えていくのか
・どのように受け答えをするべきか
を明確にしたものであり、オペレーターはこのトークフロー/スクリプト例を見ることでスムーズな電話対応が可能になります。
「決められた順に沿って、決められた受け答えをすると、顧客から「マニュアル通りに対応している」というイメージを持たれないだろうか?」と思われるかもしれません。
確かにオペレーターは状況に合わせて顧客対応をすることも求められますが、このトーク例を作成してマニュアルで見える化しておかないと、
・対応が統一されない
・商材案内に一貫性がなくなる
といったような、電話における顧客対応品質を下げるような事態を引き起こしかねません。
そこで、基本の対応ルールや流れは揃えましょう。
具体的な作り方として、構成要素は二つあります。
・スクリプト(トークスクリプト)…オペレーターが顧客対応時に話す言葉
・フロー図…顧客対応の流れを表した図
エクセルやパワーポイント等の資料で作られる事が多いです。
フロー図とスクリプトをセットで作るほうが、オペレーターに利用されやすいです。ただし、問診項目が多いテクニカルサポートや、分岐が多くなりやすい専門性の高い業務場合は、分けて作ることや、システム化することなどが必要になります。
また、すべてのフロー図とスクリプトをマニュアルにいれると、マニュアル自体のページもあるので、ページ数が増えすぎ、あまり使われなくなります。
更新頻度もスクリプトの部分が多いですし、オペレーターがさっと見ることができるよう、マニュアルと別で作成することをお勧めします。
トランスコスモスでは名乗りやクロージングなどのベースルールだけマニュアル化し、トークスクリプト自体は別で作ることが多いです。
1-7. FAQを作る
FAQを準備することで、オペレーターは顧客からの問い合わせに対してお待たせすることなく答えることが可能になります。
FAQ作成の方法は、
・問い合わせが多い質問から作る
・どんな顧客にも伝わるような分かりやすい回答を作る
・オペレーターが対応中に、調べて回答を案内できる量や操作性
を考慮して作ると、オペレーターが質問に答えるときに活用されやすくなります。
なお、コンタクトセンターの中では、FAQと似たもので一問一答式のQ&Aがありますが、オペレーターのマニュアルとして利用するには好まれません。Q&Aは、普段あまり聞かれないような基礎情報、たとえば、「会社の設立は何年ですか?」といったような商品/サービスに関係ない部分まで網羅している為、マニュアルとは分けて管理されていることが多いです。
話を少し戻しますが、コンタクトセンターに問い合わせが多い内容(FAQ)を、企業のWEBページなどで「FAQサイト」のような形で情報を公開することにより、顧客の自己解決を促し、入電削減することが可能になります。
FAQを作成・更新をする際には、内部だけではなく、外部への発信について連動して考えましょう。
なお、WEBページのFAQは「使い勝手が悪く、顧客に見てもらえない」、「WEBは特殊で更新がしづらい」など、顧客利用率や利用ツールの使い勝手に課題が多くありましたが、
トランスコスモスが提供しているSEO対策FAQマネジメントサービスでは、これまでの課題であった利用率の改善とともに利用者側の使いやすさを追求したサービスを提供することが可能です。
ご興味のある方は以下からお問い合わせください。
1-8. システム/ツールの操作方法を作る
最後に、オペレーターが業務で使うツールの操作方法を作成します。
コンタクトセンター(コールセンター)の種類によりますが、システム操作は非常に重要な作業精度を求められます。顧客情報の書き換え、削除だけではなく、課金、返金などをシステムで行う業務であれば、間違いやミスが起きにくいオペレーションを組まないと、顧客対応時にトラブルが発生してしまいます。
この品質を担保するものが、マニュアルです。また、上記のような高品質な操作が求められるシステムを使った業務以外でも、システムやツールの操作方法の記載がないと
・操作方法がわからず、保留をして顧客を待たせてしまう
・後処理時間がかかり次の電話がとれない
というように、顧客対応の質と業務効率化に支障がでる事態になります。
システムツールのマニュアルでは操作方法を図解化して作ります。
- 画像や図を取り入れて記載する
- 重要な操作は強調させる
の2つを考慮して作ると良いです。
1-8-1. 画像や図を取り入れて記載する
ツールの操作方法は、画像や図を取り入れて記載しましょう。文章だけで記載すると、
・実際に操作したときのイメージがつかみにくい
・業務中に参照するとき、迅速に理解できない
というように、オペレーターの業務を滞らせる恐れがあります。
・実際に使用するツールの画面の画像を取り入れる
・操作するときのポイントを図や吹き出しをつかって明確にする
といった工夫をすれば、オペレーターの頭に入りやすく、操作もスムーズになります。
1-8-2. 重要な操作は強調させる
重要な操作は強調させることも大切です。
画像や図を取り入れて操作方法を分かりやすく記載はできても、重要な操作はその重要さを視覚的に分かるようにしておかないと、トラブルが生じ、業務にも支障をきたす恐れがあります。
・フォントのサイズを大きくする
・フォントの色を変える
・ハイライトする
といったように、重要な操作が目に入るような装飾は、基本的ですが重要です。
2. コンタクトセンター(コールセンター)の品質を高めるマニュアルを作るポイント3つ
ここまでコンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルの項目と作成方法について説明してきましたが、マニュアルは利用されて初めて意味が出てきます。そこで、利用されるためのポイントを紹介します。
- 誰が読んでも見やすく作る
- 更新頻度にあわせて冊子を分ける
- 目指すべき手本(ベストプラクティス)を記載する
1つずつ説明していきましょう。
2-1. 誰が読んでも見やすく作る
マニュアルは、誰が読んでも見やすく作ることを心がけましょう。
マニュアルを主に使うのはオペレーターであるため、オペレーターを最優先にして見やすく作るべきなことは間違いがありません。
ただし、マニュアルは正当性や網羅性をチェックするオペレーター以外のスタッフも利用します。コンタクトセンター(コールセンター)のスタッフ全員が理解しやすいようにマニュアルを作ることで、ミッションが違っても共通で使われるように作成する必要があります。
たとえば、
・チームリーダー
→2次対応(オペレーターからのエスカレーション対応)時にスムーズな顧客対応が可能になる
・スーパーバイザー
→マニュアルの作成や更新作業がしやすくなる
のように、コンタクトセンター全体の業務効率化につながるメリットを得られます。
そこで具体的にマニュアルの構成は、
・業務内容をカテゴリーに分ける
・業務内容を時系列に並べる
・文章だけにしない
・画像や図を取り入れる
といったことを考慮して作るのがおすすめです。コンタクトセンターのスタッフ全員が読んで頭に入りやすいようなレイアウトを心がけましょう。
2-2. 更新頻度にあわせてファイルを分ける
「1. コンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルの作り方」で説明した項目は1ファイルにまとめて閲覧できるようにすることも可能ですが、オペレーターが電話における顧客対応をするときに使いづらくなる場合もあります。
その理由としては、マニュアルは一度作成したら終わりではなく、随時更新する必要があるからです。
このため、更新頻度が比較的高くなる「スクリプト(トークスクリプト)」やFAQは、別ファイルにして作成するのがおすすめです。
また、スクリプト(トークスクリプト)の作成にあたっては以下がポイントとして挙げられます。
2-2-1. 要件ごとのトーク例を作成する
顧客の要件ごとのトーク例を作成しておくと、スムーズな顧客対応と更新管理が容易になります。
顧客が電話をかける要件の例としては、
・利用方法がわからない
・利用方法に沿った使い方をしているが使えない
・購入した商品をキャンセルしたい
・ 返品したい
・退会したい
といったものが挙げられます。自社で展開する商材について問い合わせが予想される要件を洗い出し、その要件ごとのトーク例を作成しておくと良いでしょう。
2-3. 目指すべき手本(ベストプラクティス)を記載する
顧客満足度の高いオペレーターの対応例を載せる
オペレーター全員が顧客の問い合わせを解決できるベーシックなトーク例を載せるのも良いですが、顧客満足度の高いオペレーターの応対例をベストプラクティスとして載せると電話対応の質を上げられます。
顧客満足度の高いオペレーターというのは、
・顧客が求めている回答をスピーディーに行える
・顧客の理解度を確認しながら丁寧な対応ができる
・柔軟な対応ができる
といったように、高い顧客対応能力を持っています。
より実践的かつ効果的なトークの例を盛り込むことで電話対応の印象と顧客満足度を高められます。
もちろん、顧客満足度の高いオペレーターのトークをそのまま使うように徹底するのではなく、オペレーター全員が顧客満足度の高い対応ができるよう、見本として載せて参考にしてもらうようにしましょう。
3. コンタクトセンター(コールセンター)でマニュアルを運用するときに心がけるべきこと3つ
ここまで、コンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルについて、含める項目とコンタクトセンターの質を高めるための作成ポイントを説明してきました。
最後に、マニュアルの作成を終えて実際に運用するときに心がけるべき以下3つのことを説明しましょう。
- 事前にシミュレーションを行う
- 随時情報を更新する
- 常にマニュアル通りの対応をしない
3-1. 事前にシミュレーションを行う
マニュアルを運用する前に、マニュアルを実際に使う人に読ませてシミュレーションをしましょう。事前にトークスクリプトをロールプレイングすることや、研修内容をチェックすることで、分かりにくい点や改善すべき点が見えてきます。
たとえば、トークスクリプトに沿ってさまざまな業務のロールプレイングを行うことで、
・トークスクリプトが分かりにくいことで、スムーズな応対ができず顧客を待たせる
・ツールの操作方法が分かりにくいことで、業務が滞る
といった事態を避けることができ、かつ、想定対応時間がシミュレーションできるため、マネジメントKPIの設計が正しいかをチェックすることができます。
オペレーターが安心して顧客対応をするためにも、事前のロールプレイングは重要なのです。また、研修を定期的に見直してマニュアルに問題がないかチェックすることもお勧めです。
3-2. 随時情報を更新する
これは前段の各所にも出てきていますが、マニュアルは作成したら終わりではなく、随時情報を更新することが重要です。通常はスーパーバイザーが更新することが多いですが、コンタクトセンターのスーパーバイザーは他の管理業務が多数あり、更新が後回しになることが多いです。
そこで、更新タイミングや更新頻度を整理してルール化し、更新を漏らさないようにしましょう。
参考として、「1. コンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルの作り方」で説明したマニュアルに含める項目を整理しました。
【項目別・更新タイミングと更新頻度】
マニュアルの項目 | 更新タイミング(例) | 更新頻度 |
社内規則(センタールール) | ・営業時間が変わるとき ・管理ルールが変更されたとき | 低 |
会社の概要 | ・社長が変わるとき ・新規事業が立ち上がるとき | 低 |
商材の情報 | ・新しい商材がリリースされるとき ・今後リリースがなくなる商材が生じたとき ・展開中の商材に改良があったとき ・キャンペーンが実施されるとき | 中 |
トークフロー/スクリプト | ・過去になかったトラブルの問い合わせが あったとき ・対応範囲が増えたとき ・対応内容が変わったとき | 高 |
FAQ | ・既存の情報では、回答ができない(情報が不足している)とき ・新しいサービスが開始されるとき ・サービス内容が変更されるとき | 中 |
システム/ツールの操作方法 | ・新しいバージョンがリリースされるとき | 低 |
上記のように整理すると、何が起きたときに更新が必要なのかがわかり、チェックがしやすくなります。
情報をマニュアル作成時のままにしておくと、
・誤った情報を顧客に案内してしまう
・業務効率化が進まず、顧客を待たせる
といったようなことが生じ、コンタクトセンターの信頼性を低下させることにつながります。顧客に案内する情報が変わるときは、迅速にマニュアルを更新しましょう。
マニュアルを更新したら、更新したところを関係者に知らせて共有も忘れずに行なってください。
3-3. 常にマニュアル通りの対応をしない
これまでマニュアルの重要性について説明してきましたが、常にマニュアル通りの対応をすることがよいわけではありません。ベーシックスキルとして理解は必要ですが、臨機応変に変化することも運用する上で大切です。
もちろん、マニュアルは顧客対応の品質と業務効率化を高めるために参照すべきものです。
まずは、対応や作業のベーシックスキルを統一しないと対応品質にバラつきが発生しますし、オペレーターにわかりやすく作る意味で統一的に書かざるを得ません。
とはいえ、全員マニュアル通りの対応をすると、
・顧客から「決まった対応しかしてくれない」とネガティブな印象を持たれる
・予想外の問い合わせに対し柔軟な対応ができない
といったように、電話対応の顧客満足度とオペレーターの成長の低下を招くことにつながります。
新人オペレーターの場合は慣れるのに時間を要するため、最初はマニュアル通りの対応をしてもらうのが良いですが、業務経験が豊富なオペレーターは顧客に合わせたトーンで話すといった柔軟な対応ができるようにしてもらうと良いでしょう。
まとめ
コンタクトセンター(コールセンター)で運用するマニュアルは、業務効率化を実現して顧客対応の質を高めるために重要なものです。以下の6つを作成することで、実現できます。
- センタールールを記載する
- 会社の概要をまとめる
- 商材の情報をまとめる
- トークフロー/スクリプトを作る
- FAQを作る
- ツールの操作方法 を作る
そして、コンタクトセンターの品質を高めるためには、
- 誰が読んでも見やすく作る
- 更新頻度にあわせて冊子を分ける
- 最新の手本(ベストプラクティス)を記載する
の3つを踏まえて作成することがポイントになります。
マニュアルを作成したら、
- 事前にシミュレーションを行う
- 随時情報を更新する
- 常にマニュアル通りの対応をしない
を心がけて運用していくことが大切です。
またマニュアル作成をするにあたり、こちらの記事も参考になりますので、併せてご覧ください。
この記事を参考にいただき、より良いコンタクトセンターが構築されることを願っています。