
CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは、顧客が商品やサービスと接触し興味を持った時点から、購入して利用し続けるまでのすべての企業との接点 (顧客接点、タッチポイントと呼ぶ)において、顧客が体験する驚きや楽しさ、快適さなどの付加価値のことです。
顧客体験・顧客体験価値や顧客経験価値と呼ばれることもあります。

従来は、商品やサービスの価格や機能などの合理的な価値だけでも差別化を図ることができました。
しかし、市場が成熟したことで似通った商品やサービスが溢れ、合理的な価値だけでは差別化が難しくなりました。そこで、重要視されるようになったのがCXです。
企業やブランドと顧客が接点を持ち、一連の購買行動に感情的な価値を与えることがこれからの営業活動やサービス提供では欠かせません。
そこでこの記事では、CXの概要や重要性、CXを向上させるための方法を具体的に解説していきます。
◎CXとは |
この記事を最後まで読めばCXの重要性が把握でき、営業活動やサービス提供に取り入れられるようになるはずです。CXの向上は顧客満足度の向上やロイヤルカスタマー獲得にも直結するため、ぜひ参考にしてみてください。
1.CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは

まず大前提として、「CXとは何か?」と聞かれたときに明確に説明できない、という方も多いのではないでしょうか。
CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは、顧客が企業やブランドとのあらゆる接点で得る体験価値のことです。商品やサービスの機能・価格といった合理的価値だけでなく、感情的価値や満足感も含まれます。
1-1.「CX(カスタマー・エクスペリエンス)」とは?
「CX」とは、カスタマー・エクスペリエンス(Customer Experience)の略称で、「顧客が商品やサービスと接触して興味を持った時点から、購入して利用し続けるまで、すべての企業との接点(=タッチポイント)において、顧客が体験する感情的な付加価値」のことです。
「顧客体験」「顧客体験価値」「顧客経験価値」と呼ばれることもあります。
【CX(カスタマー・エクスペリエンス)のイメージ図】

従来は、顧客が商品やサービスに価値を感じるのは、「機能が優れている」「デザインがよい」「価格が安い」など、合理的で客観的なポイントだと考えられていました。
ですが、人が商品・サービスを選ぶのはそれだけが理由ではありません。
たとえば「広告が印象的だった」「接客してくれた店員の感じがよかった」「配達が早くて梱包もていねいだった」など、「顧客個人が実際に見聞きして、感情が動かされたポイント」にも価値を見出し、購入や利用を決めることもしばしばあるでしょう。
この「感情的な価値」こそが、「CX=カスタマー・エクスペリエンス」と呼ばれるものです。
また、「感情的な価値を顧客に提供すること」に重点をおく考え方や戦略を、同じく「CX」と呼ぶこともあります。
企業としては、顧客に対して商品やサービスの質向上だけでなく、さまざまなタッチポイントで感動や快適さ、新鮮な驚きや特別感といった「感情的な価値」を提供できれば、競合の中から選ばれる確率が高まるでしょう。
そのため近年、CX向上を目指す企業が増えているのです。
1-2.CXにおける「5つの感情的(心理的)な価値」とは
CXでは、さまざまな「感情的な価値」を、下記の5つに分類します。
この5つの価値は、CXの生みの親であるバーンド・H.シュミット氏が唱えたものです。
5つの感情的(心理的)な価値 | |
Sense | 五感を通じて顧客が体験する価値 「店内に流れる音楽が心地よい」 |
Feel | 顧客の感情や内面に訴えかける価値 「丁寧な接客に感動した」 |
Think | 顧客の創造性や知的欲求を満たす価値 「メルマガで商品の新たな使い方を知ることができた」 |
Act | 顧客が体験したことのない新たな体験やライフスタイルを提供する 「新商品の体験会で興味をもった」 |
Relate | 特定の集団やコミュニティに属する特別感や優越感を与える価値 「ロイヤルカスタマーとして特別サービスを受けられてうれしい」 |
たとえば、飲食店がただ料理を提供するのではなく、照明の明るさや香り、音楽にこだわれば、それは「感覚的提供価値」を提供することになります。
また、コンタクトセンター(コールセンター)が顧客の要望を聞くだけでなく、「いつもありがとうございます」「貴重なご意見ありがとうございます」など一言添えて顧客の気持ちに寄り添うことで、「情緒的提供価値」が提供できます。
このように、ただ商品やサービスを提供するだけでなく、顧客の感情を動かすプラスアルファの価値を提供することが、CXの特徴です。
1-3.CXとUX、CSとの違い
CXと似た言葉、概念に「UX」「CS」があります。
これらは混同して使われてしまうこともしばしばなので、違いを説明しておきましょう。
まずはそれぞれの意味をまとめましたので、下の表と図を見てください。
【CX、UX、CSの意味】
用語 | 意味 | |
CX | カスタマー・エクスペリエンス | 顧客がある商品やサービスについて、認識してから利用し続けるまでのすべてのタッチポイントで得る体験や、感情的な価値 |
UX | ユーザー・エクスペリエンス | 顧客がある商品やサービスを利用した際に得る体験や感情 |
CS | カスタマー・サティスファクション | 顧客がある商品やサービスを利用した際の満足度を表す指標 |

つまり、
・CXとUXは対象範囲が異なる |
と捉えればいいでしょう。
CXは、顧客がある商品やサービスと接点を持ってからの一連の流れの中で、その商品・サービスに関して得たすべての体験や感情が対象になっています。
それに対して「UX=ユーザー・エクスペリエンス」は、「顧客がある商品やサービスを利用した際に得る体験や感情」を指します。
対象となるのは、商品やサービスを利用する過程における体験です。
また、CXは接客や企業の対応などを含めた体験を指すのに対して、UX(ユーザーエクスペリエンス)は、商品やサービスを利用する過程で顧客が得る体験全体を指します。操作性や使いやすさ、利便性、満足感などが含まれます。
一方「CS=カスタマー・サティスファクション」は、「顧客の満足度」を表す指標です。
たとえば、「商品をECサイトで購入した際に、サイトの利用しやすさにはどの程度満足したか」や、「サービスを利用したあとの満足度は、5段階でどの程度か」などをはかるものです。
3つを混同せず使い分けましょう。
2.CX向上に成功した企業事例
ここまで、「CXとは何か」をわかりやすく説明しました。
ただ、「もっと具体的に理解したい」「事例などを知りたい」という人もいるでしょう。
そこで、CXに関しての理解を深めるために、実際にCXに着目して向上させた企業の事例を見ていきましょう。
2-1.【CX改善事例】ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン合同会社様|コンバージョン率4.5ポイント向上
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン合同会社 | |
課題 | Webサイトからの離脱率が高く、カスタマーセンターへの問い合わせも多かった。 |
施策 | ・Webサイトを改善:「わかりやすい」「使いやすい」という感情的価値を提供 |
成果 | ・あるキャンペーンでは、コンバージョン率が4.5ポイント向上 |
加熱式たばこ専用機器「glo(グロー)」でも知られる「ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン(以下、BAT)」様では、販促のために年間を通じてさまざまなキャンペーンを展開していました。
ただ、Webサイトからの離脱率が高く、目標とするコンバージョン率は出せていませんでした。
また、販促キャンペーンに関するカスタマーセンターへの問い合わせも多くありました。
つまり、キャンペーンに関してCXはあまりよくなく、ユーザーは不便を感じていたわけです。
そこでBAT様では、CXを改善することで「コンバージョン率の向上」と「問い合わせの削減」をはかろうと、トランスコスモスの「DECサービス」を採用しました。
「DECサービス」は、デジタルマーケティング、カスタマーケア、データアナリティクスなどユーザー接点に関するサービスをワンストップで提供する統合サービスです。
これを活用して、まずはカスタマーセンターに寄せられた「顧客の声=VOC」と、Webサイトでの行動履歴を連携させて分析し、ユーザー一人ひとりの行動変化を導き出しました。
すると、「キャンペーンの応募方法が複雑で、類似したものが多いために、ユーザーが商品ページから離脱してもFAQページには行かず、カスタマーセンターに問い合わせている」ということがわかったのです。
そこで、以下のような施策を実施しました。
・ユーザーをセグメント分けし、ユーザー接点を広い範囲で改善し続けることで、最適化を目指す |
その結果、CXが最適化され、あるキャンペーンではコンバージョン率が4.5ポイント向上し、カスタマーセンターへの問い合わせ件数を約1/4に減少させることに成功したのです。

2-2.【CX改善事例】りそな銀行様|Webサイト改善でアクセス数1.7倍を実現
りそな銀行 | |
課題 | ・デジタル変革を進めて、顧客一人ひとりに多様な選択肢と新たな価値を提供したい |
施策 | ・Webサイトを改善:「知りたいことがわかる」という感情的価値を提供 |
成果 | ・Webサイト改善開始から3年で、アクセス数1.7倍 |
「りそな銀行」様は、顧客一人ひとりに多様な選択肢と新たな価値を提供することを目指して、デジタル変革を進めていました。
その取り組みのひとつとして、「Webサイトを改善して、よりよい顧客体験を提供する」ことを考えました。
そこで、以前からパートナーとして協働してきたトランスコスモスが、Webサイト改善とCX向上に協力することとなったのです。
実施した施策は以下の通りです。
・CXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」を導入、顧客の行動データや性格データからニーズを予測して適切なコンテンツに誘導する |
これらの改善策を続けた結果、3年目にはアクセス数が1.7倍に増加しました。
また、かかったコストに対して、費用対効果は単年で約2.5倍にもなり、大きな成果を上げることができたと言えるでしょう。

2-3.【CX改善事例】セブン&アイ・ホールディングス様|AI活用で顧客体験を向上
セブン&アイ・ホールディングス | |
課題 | ・顧客ロイヤリティを向上させるため、問い合わせ導線と応対方法の改善を模索 |
施策 | ・AIチャットボットを改善:「知りたいことに的確に答えてくれる」という感情的価値を提供 |
成果 | ・問い合わせ全体の30%を、AIチャットボットで解決可能に |
セブン‐イレブン、イトーヨーカドー、デニーズ、ロフトなどさまざまな店舗を展開する「セブン&アイ・ホールディングス」様では、「カスタマーセンターへの問い合わせ時に、不満や不便のせいでロイヤリティが下がっている顧客の感情を、マイナスからプラスに変えたい」、つまりCXを改善して顧客ロイヤルティを上げたいという要望がありました。
そこで、以前から問い合わせ対応を任せていただいているトランスコスモスは、以下の施策を提案しました。
・AIチャットボットを改善する |
まず、AIチャットボットでは、顧客がチャットだけで自己解決できるように、顧客目線で導線とチャットシナリオを見直しました。
カスタマーセンターに蓄積されたよくある問い合わせや、顧客の関心が高い内容などを定期的にチャットに反映することで、回答精度と解決率を高めていく作戦です。
また、カスタマーセンターにはさまざまな顧客の声=VOCが集まりますので、それを分析して、顧客が抱いているマイナスの印象を改善する取り組みを実施しました。
たとえば、予約した商品をキャンセルした顧客の「キャンセル理由」を分析したところ、カードの引き落としエラーが原因とわかりました。
エラーが生じた顧客には、支払い方法の変更を依頼するメールを送っていましたが、それを顧客が見落としてしまうと、自動的にキャンセルされていたのです。
つまり、「支払い方法変更依頼メール」というタッチポイントでのCXが悪かったわけです。
そこで、メールに加えて電話でも連絡するようにしたところ、これが理由でのキャンセルを防げるようになりました。
このように、顧客とのコミュニケーションでのマイナスを解消していった結果、問い合わせ全体の30%をAIチャットボットで解決できるようになり、カスタマーセンターの入電ピークが抑制されるなど、顧客体験価値=CXの向上が実現されました。
3.CXが重要視される3つの理由

昨今、CXが重要視されるようになった理由として次の3つが挙げられます。
・商品やサービスだけでは差別化しにくくなった |
CXを理解するうえで重要な部分なので、ぜひチェックしてみましょう。
3-1.商品やサービスだけでは差別化しにくくなった
1つ目は商品やサービスが溢れるようになり、機能や価格だけで充分な差別化が難しくなったことです。さまざまな技術の発達とともに、日本の市場は成熟化が進んでいます。
成熟した市場には似通った商品やサービスが溢れているため、今まで価値のあったものでさえ一般的な価格でしか購入してもらえなくなります。そうなると、価格や機能など商品やサービスそのものの合理的な価値だけでは生き残れなくなるのです。
CXを取り入れると商品やサービスの合理的な価値にプラスして、感情的な価値を提供できます。

たとえば、自動車の購入を検討する際に同価格、同じような機能、デザインの車種は多く存在します。この状態では、顧客に選んでもらうための圧倒的な差別化が難しいでしょう。
担当者の丁寧な対応や試乗の体験などのCXをプラスすると、他にはない体験や感動を経験できます。その結果、他社との差別化ができ選ばれるようになるのです。商品やサービスだけでは差別化が難しい時代だからこそ、CXに取り組む価値があると言えるでしょう。
3-2.顧客との接点が多様化・複雑化した
2つ目は、顧客との接点が多様化、複雑化していることです。
以前は店舗や通信販売など、顧客の購買ルートはある程度限定されていました。同時に顧客との接点も店舗での接客や電話やメールでのやり取りなど限定されており、その接点さえ押さえれば顧客や利益の獲得ができる状態でした。
しかし、今はインターネットやスマートフォンの普及により、SNSやネットショップなど多彩な接点が生まれています。限定された接点のみに注力していては、顧客を逃してしまうのです。企業やブランド側も多様な接点を活用して、顧客に新たな価値を提供する必要があります。
たとえば、アパレルショップの場合は、今までのように店舗での販売だけに注力しているとネットショップ経由やSNS経由での顧客を逃す可能性があります。
ネットショップではチャットによるフォローを、SNSでは顧客の問い合わせへの応対などそれぞれの接点でストレスのない対応をすると、新たな顧客を取り込めるでしょう。
3-3. 顧客側の発信力が増加した
3つ目はSNSやインターネットの普及により、顧客側の発信力が増したことです。
SNSやオンラインコミュニティでは、商品やサービスに関する口コミが瞬時に拡散され、多くの消費者の意思決定に影響を与えるようになりました。良い口コミは企業やブランドにプラスの影響を与えますが、悪い口コミが広がると想像以上のダメージを受ける可能性があります。
トランスコスモスが実施した「消費者と企業のコミュニケーション実態調査2025-2026」では、問題や不満が発生した場合の企業への直接的なVOC(顧客の声)伝達割合が2018年から低下し続けています。これは、企業が受け取る「生の声」の希少性が高まっていることを示唆しています。

一方で、いわゆる「サイレントマジョリティ」層が拡大しています。しかし、本当に沈黙している層は24%程度にとどまり、実際には半数近い48%の消費者がSNSなどで口コミを発信しています。その結果、口コミが新規顧客のブランド選択に与える影響力が増大していると考えられます。
実際、消費者の75%はSNS上のカスタマーサポートの評判が良い企業を優先的に選択するなど、VOCやSNS上の口コミはブランド選択に大きな影響を与えています。
このように、現代の消費者は自ら情報を収集する一方で、SNSや口コミなどで見聞きした他者の評価を重視する傾向があります。そのため、顧客が思わず共有したくなるような優れた体験を提供し、良好な口コミにつなげるCXの向上が求められているのです。
4.CXを測定する方法

自社のCXの現状を可視化する方法は、NPS (ネットプロモータースコア)やCES(カスタマーエフォートスコア)、Webサイトの平均ページビュー数、顧客獲得率、解約率、LTVなどがあります。
この章ではNPSとCESについて詳しく見ていきましょう。
CX (カスタマー・エクスペリエンス)は、「顧客ロイヤルティ」と相関しており、これは商品やサービスの合理的満足度だけでなく、商品やサービスを「知人や周囲へ推薦したいか、否か」といった支持レベルの感情的満足度を目標とした指標です。
NPS | 顧客ロイヤルティを数値化するための指標 |
CES | サービスを利用する際に顧客がどれくらいストレスや手間を感じたのか示す指標 |
それぞれどのように算出をするのか、参考にしてみてください。
4-1.NPS(ネットプロモータースコア)
NPS(ネットプロモータースコア)は、顧客ロイヤルティを数値化するための指標です。企業やブランド、サービスへの信頼や愛着を可視化し、潜在的な満足度を把握するために使用します。
NPSの調査方法は、「このサービスを知人や友人にどれくらい勧めたいですか?」など推奨度を測る質問に答えてもらうだけです。10段階評価で回答してもらい0~6は「批判者」、7と8は「中立者」、9と10は「推奨者」と分類します。

分類が終わったら、下記の数式に当てはめてNPSを算出します。
推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)=NPS |
例えば、推奨者が60%で批判者が30%だった場合は、60% - 30% =30となり、30がNPSスコアです。顧客推奨度は最高で100となり最低は-100となるため、100に近いほどNPSが高いと言えます。
NPSが高いと企業やブランドの価値観、サービスに共感している顧客が多いことになります。現状を把握してCXの施策を検討するために、定期的に測定してみましょう。
NPSのメリットやデメリット、詳しい分析方法は下記で解説しています。
4-2.CES(カスタマーエフォートスコア)
CES(カスタマーエフォートスコア)は、顧客がサービスを利用する際にどれくらいストレスや手間を感じたのか示す指標です。日本語では、顧客努力指標と訳されます。
CESの調査方法は「サービスの利用に手間がかかりましたか?」「サービスの利用にストレスを感じましたか?」など、顧客がどれほど努力が必要だったか測定できる質問に回答してもらいます。
7段階で評価を行い6〜7点と回答した顧客の割合から、1〜3点と回答した顧客の割合を差し引いて計算します。例えば、6~7点と回答した顧客が50%で1~3点だと回答した顧客が30%だった場合は、50% - 30% =20となり、20がCESスコアです。
CESは低ければ低いほどサービス利用に顧客の手間がかからないことになり、ストレスの少ないCXを提供できていると判断できます。
5.CXを向上させるための4つのステップ

CXを可視化してみると、もう少しCXを向上させたいと感じる方は多いのではないでしょうか。CXを向上させるには、下記の4つのステップを実施するといいでしょう。

それぞれのステップでのポイントを細かく解説していくので、ぜひ実践してみましょう。
5-1.カスタマージャーニーマップを作成する
まずは、カスタマージャーニーマップを作成します。カスタマージャーニーマップとは、顧客の購買行動を旅に例えたマップです。下記のように顧客との購買行動を時系列にまとめながら、それぞれの接点ごとの顧客の感情や行動を整理します。

顧客との接点と感情、行動を可視化できるため、どのフェーズでどのようなCXを実施するべきか施策するときに役立ちます。
カスタマージャーニーマップは、下記の手順で作成するといいでしょう。
1)ペルソナを設定する
自社の商品やサービスを購入する標準的顧客モデルペルソナを設定します。年齢や性別、趣味や仕事などできる限り細かく設定しましょう。ペルソナを設定する際のポイントは、企業側の理想ではなく実際に商品やサービスを購入している顧客をモデルにすることです。
理想の人物像でペルソナを設定してしまうと現状と乖離したカスタマージャーニーマップに仕上がります。蓄積した顧客データやアンケートを参考に、現状に近いリアルなペルソナを設定してみてください。
2)顧客の行動を設定する
続いて、ペルソナが実際に商品やサービスを購入する際に、どのような行動を辿るのか明確にします。商品やサービスを認知してから購入に至るまでの行動を細かく分析してみましょう。
3)顧客との接点を明確にする
顧客の行動を基に、顧客と商品やサービスの接点を抽出していきます。例えば、商品やサービスを認知するのはSNSや広告が中心の場合は、認知のフェーズでの接点はSNSと広告になります。接点を抽出する際も理想ではなく、顧客のリアルな行動を基に分析することが大切です。
4)顧客の感情や思考を記入する
最後に、カスタマージャーニーマップの各過程で顧客がどのような感情や思考を抱いているのか記入します。顧客の感情の揺れや高ぶりを把握することで、効果的なCXの施策が検討できます。
カスタマージャーニーマップが完成したら、次のステップへと進みます。カスタマージャーニーマップの詳しい作成方法は、下記の記事も参考にしてみてください。
5-2.顧客との接点を軸に課題を見つける
カスタマージャーニーマップで明確になった顧客との接点を軸に、現状の課題を見つけます。例えば、商品やサービスを購入するフェーズでは、インターネットと店舗が接点となっていたとしましょう。
店舗での接客サービスはあるもののインターネットではサイズや色、素材が分かりにくいと購入まで及びません。インターネット経由でも顧客が商品やサービスを購入しやすくなる工夫が必要です。
また、他の商品との比較のフェーズでは、実際の使い心地が知りたくて口コミを検索しているケースもあるでしょう。このフェーズで体験会や商品説明会などの接点を作れば、顧客の不安を解消できるはずです。
このように、接点ごとに顧客の悩みやストレスの原因となっている課題を明確にしていきます。
5-3.課題を解決するための具体的な施策を考える
接点ごとの課題が分かったところで、CXが向上する施策を考えます。例えば、商品やサービスの購入段階で店舗だけでなくネットショップの接点がある場合は、ネットショップ上にチャットを設置し常にサポートができる状態にするとCXが向上します。
CXの施策は「1.CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは」で解説をした5つの価値を基準に考えると、多彩な施策が浮かびやすくなります。
また施策の実行にあたっては、その効果を測る指標とともに、数値目標を設定しておきましょう。CXを測定する指標については「4.CXを測定する方法」を参考にしてください。
5-4.PDCAサイクルを繰り返す
CXを向上させる施策を実践したら、終わりではありません。施策の効果を分析して、次の施策へと活かす必要があります。
カスタマージャーニーマップの作成を含めPDCAサイクルを回して改善を繰り返すと、顧客満足度の高いCXを実現できるようになります。
CXは一度実施したら終わりではなく、顧客の心情や顧客との接点、環境や時代の変化に応じて柔軟に対応していく必要があります。今回ご紹介した4つのステップを繰り返して、常に質の高いCXを提供できるようにしましょう。
6.CXを向上させるための具体的な3つの施策

ここからは、トランスコスモスが実施した「消費者と企業のコミュニケーション実態調査2021」をもとに、実際にコンタクトセンター(コールセンター)でCXが向上した施策をご紹介します。
CXは重要だとは分かっていても具体的な施策が分からない方は多いかと思うので、ぜひ参考にしてみてください。
6-1.スムーズな問題解決ができる導線設計
顧客は問題解決時に、素早く手間のかからない対応を求めています。問題解決時のCXが向上するいい体験としては「素早く解決できる」が1位となっています。
問題解決時のいい体験 | 問題解決時の悪い体験 | |
1位 | 素早く解決できる | 転送・たらい回しにあう |
2位 | 1回の問合せで解決できる | 横柄・態度が悪い |
3位 | 説明が分かりやすい | 何度も問合せが必要になる |
インターネットが普及した現在では、顧客の問題解決はWeb上での検索から始まることが多いです。そのため、検索結果表示画面から直接FAQに移動できる機能が求められています。

実際にSEO対策済みのFAQへと改変したことで、FAQへのアクセスが倍増し顧客の利便性も向上した事例もあります。顧客が問題解決時にまず利用するFAQを見直すことは、CX向上の第一歩となるでしょう。
FAQの改善方法や手順は下記で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
6-2.オムニチャネルを活用したハイブリッドサポート
続いての施策は、オムニチャネルを活用したハイブリッドサポートです。昨今のコンタクトセンター(コールセンター)では顧客との多様な接点を活かすために、電話だけでなくチャットボットやチャット、メールなどの他チャネルを活用しています。
顧客はチャネル同士のスムーズな連携を望んでおり、チャットボットで問題解決ができなかった場合は有人対応のチャットの利用を望む声が90.6%と非常に高くなっています。

また、他チャネルに連携した際には同じ説明を行うことに負担を感じている消費者が多く、データ連携機能を望む声も82.6%と高くなっています。
そのため、CXを向上させるには、消費者が負担を感じにくいスムーズな他チャネル連携を検討することが必要です。
例えば、チャットボットを活用する場合は電話やチャットへと連携できるボタンを設けるなど、一つのチャネルで問題解決ができなかったときを想定した施策を検討してみてください。
チャットボットやチャットについてより詳しく知りたい場合は、下記の記事も参考にしてみてください。
6-3.顧客との接点を積極的に創出するアクティブサポート
SNSやWebサイトが顧客との接点になっている場合は、顧客の声に反応するアクティブサポートも有効な施策です。
アクティブサポートを行うとメッセージを受け取った本人が好印象を受けるのはもちろんのこと、アクティブサポートを見た第三者も好印象を持つことが分かっています。

例えば、消費者がSNSで「この商品が良かった」と共有していた場合は、投稿に対して「ご利用ありがとうございます。」などのコメントを返答します。コメントを受け取った消費者は好印象を持ち、この投稿をみた第三者も企業やブランドに好印象を持つのです。
アクティブサポートをすると消費者とのコミュニケーションそのものがCXの向上となり、好印象の輪が広がっていきます。
アクティブサポートについて詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
7.コンタクトセンター(コールセンター)でCXを向上させるための3つのポイント

最後に、コンタクトセンター(コールセンター)でCXを向上させるためのポイントをご紹介します。昨今のコンタクトセンター運営には欠かせないポイントとなるため、ぜひチェックしておきましょう。
7-1.オムニチャネルを導入し顧客と多彩な接点を持つ
顧客との接点を増やし有効活用するためには、オムニチャネルの導入が欠かせません。オムニチャネルとは複数のチャネルを活用し、シームレスなCXを提供する手法です。
例えば、コンタクトセンター(コールセンター)への問い合わせ方法が電話しかない場合、架電が集中しあふれ呼が発生しやすくなります。顧客の待機時間や問題解決までの時間が長くなりCXが低下するでしょう。
それだけでなく、電話に抵抗がある顧客やコンタクトセンターの営業時間内に問い合わせが難しい顧客はなかなか利用できず接点が生み出せません。
オムニチャネルを導入すれば、スマートフォンやパソコン、電話など顧客が使いやすいデバイスから問い合わせができるため、顧客との接点が増やせます。
「6-2.オムニチャネルを活用したハイブリッドサポート」でも解説したように、チャネル同士の連携を図ればスムーズな問題解決ができ、CXの向上が実現できます。
7-2.パーソナライズ化して顧客に寄り添う
価値観が多様化した現在では、均一化されたサービスやサポートの提供だけではCXの向上が見込めません。顧客一人ひとりの要望や願望を踏まえ、サービスやサポートを提供する工夫が必要です。
例えば、消費者のデータを蓄積し架電があった際に過去のデータを基に対応できればプラスアルファの価値が提供できるでしょう。
リピーターの場合は「〇〇〇様(お客様のお名前)、先日ご購入いただいた〇〇〇(商品)はいかがでしたか?」などの一言を添えるだけでも、他の消費者と差別化をした特別な体験ができます。
また、過去のデータと照らし合わせて商品やサービス、特典の案内をすることもパーソナライズ化につながります。コンタクトセンターは運営をしていくことで、データの蓄積ができます。データを有効活用して、一人ひとりに寄り添う応対ができればCXの向上が見込めるでしょう。
7-3.CXマネジメントの実施
CXの向上は、管理者や一部のオペレーターだけでは実現できません。コンタクトセンター(コールセンター)全体で同じ意識を持ち取り組むためにも、CXマネジメントを実施しましょう。
・CXの目的や目標 |
などを共有して、なぜCXが重要なのか把握したうえで業務に取り組むことが大切です。余力がある場合は、CXの向上を目指すための研修やフィードバックを実施すると、オペレーター一人ひとりが消費者にワンランク上のサービスを目指せます。
Cotraでは「CX向上・DX推進」に注力したい方向けに、これからのコンタクトセンターのあり方について、コンテンツをご用意しております。
またCXを起点に、DXの重要要素となる“顧客接点”に関する取り組みを評価、診断。今後のDX戦略におけるロードマップ策定を強力に支援するサービスも提供しております。
くわしいサービス内容については、こちらから資料をご確認ください。
顧客接点のあり方 診断サービス
まとめ
いかがでしたか?CXの概要や重要性、取り組み方が把握でき、CXの向上が目指せるようになったかと思います。最後にこの記事の内容をまとめてみると
〇CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは、顧客が商品やサービスを認知し購入、使用する過程での体験価値のこと
〇CXが重要視される理由は次の3つ
1)商品やサービスが持つ合理的な価値だけでは差別化しにくくなった |
〇CXの現状を可視化する評価方法
1)NPS(ネットプロモータースコア):顧客ロイヤルティを数値化するための指標 |
〇CXを向上させるためのステップは次のとおり
1)カスタマージャーニーマップを作成する |
〇CXを向上させるためにコンタクトセンター(コールセンター)で実施できる具体的な施策は次のとおり
1)問題があったときにまずは検索エンジン経由で問題解決を図る顧客が多い。スムーズな問題解決ができる導線設計が必要 |
〇コンタクトセンターでCXを向上させるためのポイントは次の3つ
1)オムニチャネルを活用して顧客と多彩な接点を持つ |
CXは、顧客との継続的な関係構築や企業の競争力向上に欠かせない重要な考え方です。この記事を参考に、CXの向上に取り組めるようになることを願っています。

