
「『コンタクトセンター(コールセンター)に関する評価』とは、何をどう評価すること?」
「コンタクトセンターのSVをしているが、オペレーターの評価ってどうすればいいの?」
コンタクトセンター(電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)に関して、そのような疑問を抱いている人も多いかと思います。
実は、「コンタクトセンターの評価」という表現には、以下の2つの意味があります。
①特定のコンタクトセンター全体の評価
②コンタクトセンターで働く個々のスタッフ(オペレーター)の評価
パフォーマンス(効率)、クオリティ(品質)、プロフィット(収益性)などを調査、分析することで、①、②の良し悪しを評価することができるのです。
それでは、なぜコンタクトセンターを評価する必要があるのでしょうか?業界内での立ち位置を把握するためでしょうか?確かにそれも重要なことではありますが、一番重要なことはコンタクトセンターを立ち上げる際に設定した企業方針に沿って運営ができているかどうかを評価することです。
企業の製品やサービスだけでなく、企業方針によってコンタクトセンターの在り方は異なります。そのことを理解した上で、どの評価項目をどのような基準で採用するかを決めてください。
この記事では、まず最初に、
◎コンタクトセンターにおける評価とは何か
◎コンタクトセンターの評価 3つのポイント
◎評価の方法
から解説します。それを踏まえた上で、個々の詳しい評価基準について、
◎パフォーマンス(効率)の評価項目
◎クオリティ(品質)の評価項目
◎プロフィット(収益性)の評価項目
◎その他の評価項目
◎コンタクトセンターの評価制度を作る際の注意点
などを掘り下げていきます。
コンタクトセンターの評価をしていく際の参考になれば幸いです。
目次
1. コンタクトセンター(コールセンター)における評価とは
そもそも「コンタクトセンター(コールセンター)の評価」とは何でしょうか?
この言葉が示す意味としては、以下の2つが考えられます。
①特定のコンタクトセンター全体の評価
②コンタクトセンターで働く個々のスタッフ(オペレーター)の評価
つまり、センター自体に対する評価と、センターに所属する個々のスタッフの応対に対する評価、そのどちらの意味でも使われます。この二つは全体と要素の関係でなりたっているため、②を理解すると①もよく理解できます。
次に、コンタクトセンターを評価するポイントです。以下の3つが挙げられます。
◎パフォーマンス(効率):顧客からのコンタクトに対する処理効率
◎クオリティ(品質):顧客に対する応対品質、サービス品質
◎プロフィット(収益性):事業としての利益
そして、
■①を評価する際には、パフォーマンス、クオリティ、プロフィットの3点で評価
■②を評価する際には、パフォーマンス、クオリティの2点で評価
というのが一般的です。
2者の違いは、「プロフィット(収益性)が評価ポイントになるか、ならないか」だけです。
実は、パフォーマンスとクオリティに関しては、評価基準が数値などである程度定まっていますが、プロフィットについては、「コンタクトセンターとして適正な収益はどれくらいか」という基準値が定まっていません。業務の内容や目的によって大きく異なることが理由です。
例えば営業系のアウトバウンド型コンタクトセンターや商品受注系のインバウンド型コンタクトセンターであれば、プロフィットに直接繋がる業務が多く、運用費用に対して回収できているかというのが判断しやすいですが、カスタマーサポート系のインバウンド型コンタクトセンターでは、プロフィットを生み出す目的で作られていないことがほとんどなので、評価することが難しいといわれています。
但し、最近では、サービスや商品を購入する過程・利用する過程、その後のサポート過程における経験的価値、いわゆる顧客体験価値が顧客継続率を高め、企業収益に直結すると叫ばれていることから、問題解決を担うカスタマーサポート系のインバウンド型コンタクトセンターで評価は難しいが、プロフィットには影響するといわれています。
そこでこの記事では、カスタマーサポート系のインバウンド型コンタクトセンターにフォーカスして、パフォーマンス、クオリティ、プロフィットの軸で評価の話を進めたいと思います。ぜひ最後まで読んでください。
2. コンタクトセンター(コールセンター)の評価 3つのポイント
ところで前述した3つの評価ポイントとは、具体的には何を評価するものでしょうか?
一般的なカスタマーサポート系のインバウンド型コンタクトセンターのとなりますが、以下表にそれぞれの評価すべき項目を挙げましたので見てください。
パフォーマンス(効率) | クオリティ(品質) | プロフィット(収益性) |
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では、3つそれぞれを説明しておきましょう。
2-1. パフォーマンス(効率)
まず、パフォーマンス=効率とは、顧客対応をどれくらい効率的に処理できたかという評価指標です。
具体的な項目としては、
- 応答率
- 放棄呼率
- 稼働率
- 占有率
- CPH(平均処理時間)
- ASA(平均応答速度)
- SL(設定時間内応答率)
- 平均通話時間
- 平均保留時間
- 平均後処理時間
- 平均処理時間
などをはかることで評価します。
たとえば、入電件数に対して実際に応答できた件数の割合や、オペレーターひとりが1時間で何件対応できたかなどを数値化することで、客観的な評価ができます。
より多くの件数に対応できるほど、パフォーマンスが優れているというわけです。
それぞれの項目の詳しい説明は、「4. パフォーマンス(効率)の評価指標」を参照してください。
2-2. クオリティ(品質)
次に、クオリティ=品質は、顧客対応の内容に対する評価指標です。
よい対応ができているか、顧客を満足させることができているかを評価するため、
- モニタリングスコア
- 一次解決率
- ミス発生率
- CS(顧客満足度)
- ES(従業員満足度)
などをはかります。
なるべく1回のコンタクトで顧客の疑問や問題点が解決され、ミスや不満が少ないほど、顧客対応のクオリティが高いとされます。
こちらも詳しくは、「5. クオリティ(品質)の評価指標」で説明していますので、そちらも読んでください。
2-3. プロフィット(収益性)
3つ目のプロフィット=収益性は、コンタクトセンターの業務が企業自体の利益にどのように寄与しているかを評価するものです。
前述したようにこのプロフィットは、カスタマーサポート系のインバウンド型コンタクトセンターでは、プロフィットを生み出す目的で作られていないことがほとんどなので、評価することが難しいといわれています。
その一方で、従来の「コンタクトセンターは“コストセンター(=費用は掛かるが利益は生まない)”」という捉え方を改善し、センターに集まるさまざまな情報をもとにプロフィットや心地よい顧客体験を生み出す事例も増えています。
たとえば、顧客がコンタクトセンターに問い合わせをした際に、顧客情報を基にオペレーターがシステムを活用し、顧客に適した商品や顧客が得するサービスの案内を実施し、結果的に企業の売り上げやコスト削減をする仕組みが生まれています。少しずつではありますが、プロフィット化に向けた取り組みが進んできています。
また、コンタクトセンターを企業の数多くある顧客接点のうちの一つとして考え、問い合わせをしてくる顧客の負担を少なくするために、問題解決までの導線をエフォートレスにしていく取り組みも増えています。結果的に顧客の負担を少なくするということは、企業のサポートチャネル全体のコストを減らせるとともに、CX向上にも繋がるので一石二鳥の取り組みだといえます。
カスタマーサポート系のインバウンド型コンタクトセンターのプロフィット化については、画一的な評価基準は定めにくいながらも、一般的な評価項目としては以下の項目があります。
- 売上/利益貢献
- NPS(顧客ロイヤルティ評価)
- CES(顧客努力指標)
こちらの項目の詳細は、「6. プロフィット(収益性)の評価指標」で解説します。
3. 評価の方法
さて、コンタクトセンター(コールセンター)の評価指標について2章でわかったと思います。
では、実際の評価はどのように行うのでしょうか?
この章では、具体的な方法について説明していきましょう。
3-1. 調査方法
調査はどのようにすればいいのでしょうか?
その方法は、以下の4つです。
3-1-1. データ分析
コンタクトセンターでは、PBXにより受発信の管理データを取得したり、CTS/CRMシステムで顧客対応の履歴を記録しているところが多いです。
これらを基に、全体、オペレーターごとでの顧客対応した件数や時間や成果などを抽出することも可能なので、データを分析して、主にパフォーマンスやプロフィットを評価することができるでしょう。
3-1-2. モニタリング
音声録音ツールを用いて、顧客とのやりとりの内容を記録します。
電話であれば、通話内容を自動的に録音し、メールやSMSなどはその文面が保存されます。
そこで、その内容をチェックすることで、顧客対応のクオリティを評価することが可能です。
これをモニタリングと呼び、つけた点数をモニタリングスコアと呼んでいます。
モニタリングは、主にSVやLD、QAなどが行い、
- 言葉遣い
- 話し方
- 聴き方
- 内容の正しさ
- 顧客の満足度
などをチェックします。
モニタリングを定期的に行い、フォードバックを実施することでオペレーターの成長を促します。評価については、公平になるように客観的で公平な評価を心がけましょう。
あらかじめモニタリングシート(チェック表)を作成して、評価基準を配布するといいでしょう。
3-1-3. ミステリーコール
コンタクトセンターによっては、「ミステリーコール」という調査方法を用いているところもあります。
これは、SVなど評価を担当する管理者が、顧客を装ってセンターに連絡を入れ、オペレーターのパフォーマンスとクオリティを評価する手法で、いわゆる「覆面調査」です。ミステリーコールを外部委託して調査しているケースもあります。
モニタリングとの違いは、
・顧客視点から評価することができる
・投げかける質問やクレームの内容によって、さまざまな対応を引き出せる
という点で、よりきめ細かい評価ができるでしょう。
さらに、同じ内容のコールを他社のコンタクトセンターに入れれば、自社のオペレーターが同業の間でどの程度のレベルなのかを知ることもできるため、客観的で俯瞰的な評価にもつながります。
なお、客観的な評価指標とされているのが、HDI-Japanが行っている「HDI格付けベンチマーク」がありますので、参考にしてみるとよいでしょう。
3-1-4. 顧客からの評価
コンタクトセンターに問い合わせをしてきた顧客からフォードバックをしてもらい、クオリティやプロフィットを評価してもらいます。
利用後にアンケートを投げかけて取得するのが一般的です。
調査方法には主に3種類あり、CS(顧客満足度)調査、NPS(顧客推奨度)調査、CES(顧客努力指標)調査があります。
これらを収集し改善していくことで、コンタクトセンター全体の評価は上がっていきます。
3-2. 評価の頻度
コンタクトセンターの評価にはさまざまな手法があることがわかりました。
では、実際に評価を行う際には、どれくらいの頻度が望ましいでしょうか?
これはコンタクトセンターの業務や目標指標によって様々です。
たとえば、データ分析が出来るものに関しては、毎月評価をしているケースもありますが、モニタリングやミステリーコールなどは、3か月に1回の頻度、顧客からの評価も定常的にやっているケースもあれば、半期に1回程度で評価しているケースもあります。
頻度に関してはあなたのセンターの特性に合わせて、決めるのがよいでしょう。
4. パフォーマンス(効率)の評価項目
ここまでは、評価指標と評価方法を説明してきました。
次は実際に評価する際の具体的な評価項目について、3つの評価指標ごとに掘り下げていきましょう。
まず、パフォーマンスを評価する項目は以下です。
4-1. 応答率・放棄呼率
顧客対応が円滑にできているかを評価するために応答率・放棄呼率があります。
コンタクトセンター(コールセンター)に入った電話の件数に対して、
・オペレーターが対応できた件数の割合が「応答率」
・対応できずに切れてしまった件数の割合が「放棄呼率」
と呼ばれ、どちらも応対の効率を「件数」ではかる項目です。
それぞれの計算式は、以下の通りです。
応答率(%)=応答数/入電数×100 放棄呼率(%)=放棄呼数/入電数×100 |
応答率が高く、放棄呼率が低いほど、評価は高くなります。
個人評価に直接使いませんが、「個人の生産性を上げる」事で、改善施策を取ることが多いです。
ただ、この指標改善だけに専念し、オペレーターごとの対応件数を増やすことにこだわりすぎると、クオリティが下がる恐れがあります。
パフォーマンスとクオリティのバランスを考慮して、総合的に応答率を上げる対策を取ることが重要です。
4-2. 稼働率・占有率
オペレーターが無駄なく顧客対応しているかを、「時間」ではかる項目もあります。
・稼働率はオペレーターの労働時間全体から顧客対応にあてられる時間を判断するために用いられる指標
・占有率は顧客対応にあてられる時間が効率的かどうかを判断するために用いられる指標
となっていて、その具体的な計算式は以下で算出されることが多いです。
稼働率(%)=(通話時間+ 保留時間 +後処理時間+ 受付可能時間)÷(給与時間 ) ×100 占有率(%)=(通話時間+保留時間+後処理時間) ÷(通話時間+保留時間+後処理時間 + 受付可能時間)×100 |
応答率と同じく高ければいいというわけでもありません。
高すぎる場合は、人員不足で忙しすぎるか、十分な応対をしておらずクオリティが低下している恐れがあります。他指標とあわせた総合的な改善が必要です。
コンタクトセンターの国際的品質保証規格(COPC CX規格)では、ハイパフォーマンスベンチマークとして稼働率86%が定義されています。但し、稼働率に関しては、センター特性(研修を毎月20%程度は必要になる)等によっても異なるので、あくまで目安とされており、一般的には80~85%で設定されています
稼働率・占有率について、詳しく知りたい方はこちらの記事も併せてご確認ください。
コールセンターの稼働率・占有率とは?適正な稼働率・占有率を維持するコツを紹介
4-3. CPH(平均処理件数)
オペレーターの生産性を評価するために、CPHがあります。
CPHとは「Call Per Hour」を略したもので、文字通り「オペレーターが、1時間あたりに何件のコールに対応したか」を表わすものです。
「平均処理件数」とも呼ばれ、計算式は以下です。
CPH=総処理件数/総稼働時間 |
6時間稼働で60本対応したならCPHは10本となります。
CPHは、業務内容によって大きく異なるため、適正数値や基準値を定めることはできません。
複雑な対応が必要なセンターでは、CPHは低くなり、単純な対応が多いセンターであれば高くなるからです。
そのため、同じコンタクトセンターで同じ業務を担当するオペレーターの間での平均値を出し、それに対して高いか低いかで評価します。
4-4. ASA(平均応答速度)・サービスレベル(設定時間内応答率)
応答までの速度を評価する評価項目も2つあります。
・顧客が電話をかけてからオペレーターが電話に出るまでの平均時間が「ASA(平均応答速度)」
・目標時間内に電話に出られた件数の割合が「サービスレベル(設定時間内応答率)」
以下の計算式で求められます。
ASA=総待機時間/入電数 サービスレベル(%)=目標の時間内に応答できた数/入電数×100 |
良く使われる一般的な基準値は、
◎ASA:30秒以内
◎SL:30秒以内に応答する割合が80%
です。但し、業務の種類や内容ごとに、個別に設定されることが多いです。
ASAが長い、またはSLが低いということは、電話してきた顧客を長時間待たせてしまっているということです。
1件の対応が終わったらなるべく早く次の電話に出られるよう、後処理を簡潔にしたり、人員配置を工夫するなどの対策を講じてください。
4-5. 平均通話時間・平均保留時間・平均後処理時間・平均処理時間
最後は応対にかかる時間の評価です。
オペレーター個人を評価する際は、この数値が最も使われます。
- 1件あたりの通話時間の平均が「平均通話時間」
- 1件あたりの保留時間の平均が「平均保留時間」
- 通話が終わったあとの後処理1件あたりにかかる時間の平均が「平均後処理時間」
- 通話、保留、後処理含めて1件あたりの対応にかかった時間の平均が「平均処理時間」
という4つがあり、計算式は以下です。
1.平均通話時間=総通話時間/総応答件数 2.平均保留時間=総保留時間/総応答件数 3.平均後処理時間=総後処理時間/総応答件数 4.平均処理時間=総通話時間+総保留時間+総後処理時間/総応答件数 |
通話時間や後処理時間は、業務の種類や内容によって大きく異なりますので、「これが基準値」というものはありません。
同じコンタクトセンターの同じ業務を担当しているオペレーターの中で平均値を出して、それより長すぎる、または短すぎるオペレーターがいれば、その対応をモニタリングする必要があります。
その際に、平均処理時間だけでなく、平均通話時間、平均保留時間、平均後処理時間をそれぞれ比較することが重要です。通話時間や保留時間が平均と比較して長ければ、知識不足の可能性を疑い、後処理時間が平均と比較して長ければ、操作スキルや処理ルールの浸透度合いを疑い、改善アプローチをとるのがよいでしょう。比較して短い場合は、クオリティとのバランスを考えて評価、指導しましょう。
5. クオリティ(品質)の評価項目
次に、クオリティを評価する項目を解説します。
顧客への応対内容にかかわるだけに、数値化しにくいものもありますが、それぞれ客観的で公平な評価をするよう努めましょう。
5-1. モニタリングスコア
クオリティ評価の中心となるのは、モニタリングスコアです。
各オペレーターの対応をモニタリングする際に、チェックリストを作成し、5段階評価などでスコアリング評価します。
オープニングの名乗りから、クロージングトークまで、トークスクリプトにあわせた対応ができているかをチェックします。これにより対応者による品質のバラつきを防ぐことが可能になり、
また、個々のオペレーターが抱える課題や弱点を洗い出すことが可能です。オペレーター本人にフィードバックし、応対品質の向上を目指しましょう。
5-2. 一次解決率
「一次解決率」は、顧客からの連絡に対して、最初に応対したオペレーターが一回の通話だけで回答が完結できた割合を評価する項目です。
その場では解決できずに、確認してコールバックすることになったり、リーダーやSVに二次対応してもらったりする場合もよくありますが、そうなると非効率的である上に、顧客自身も「すぐに問題が解決されなかった」というストレスを感じて満足度が下がってしまいます。
一方で、一回で解決できれば、効率の面でも顧客満足の面でも最良です。
そのため、一次解決率が高いほど評価は高くなります。
一次解決率が低い場合は、
・マニュアルやトークスクリプトを充実させ、一次対応のオペレーターがなるべく多種多様な問題を解決できるように準備する
・研修を実施して、一次解決できなかった問題も解決できるようなトレーニングを積む
といった施策が必要になるでしょう。
5-3. ミス発生率
反対に、数値を下げていかなければいけないのが「ミス発生率」です。
対応件数に対して、ミスが生じてしまった割合を示すものです。
ミスには主に3つのタイプがあります。
1.顧客視点での重大なミス(間違った情報を伝えて、コールバックが必要になる)
2.ビジネス上の重大なミス(本来発生しない、不必要なコストを発生させる)
3.コンプライアンスの重大なミス(振る舞いや言動で、個人や企業の不利益を招く可能性がある)
ミスのタイプにより対策が異なりますが、
- 面談をして、ミス原因を探る
- 必要な研修を実施する
- ミスを防げるような、環境(ツール導入やオペレーション変更)を整える
といった対策をしましょう。
5-4. CS(顧客満足度)
顧客がコンタクトセンターの対応に満足したかどうかは、クオリティ評価の重要なファクターです。
それをはかるために、オペレーターの対応に対して顧客がどの程度満足したかを数値化して、「顧客満足度」を導き出します。
調査はアンケート方式で、たとえば電話応対の場合、終わった直後にSMSで、
- 電話の繋がりやすさ
- オペレーターの話し方や聞き取りやすさ
- 問題の解決度
- 今後も利用したいかどうか
- 電話に対する総合満足度
といった質問を送り、5段階評価(「満足」「やや満足」「普通」「やや不満」「不満」)や10段階などのレベル分けで回答してもらいます。(CS調査)
オペレーターごとに満足度の低い項目があれば、指導・改善が必要です。
6. プロフィット(収益性)の評価項目
さて、パフォーマンスとクオリティの評価項目と評価基準にフォーカスして説明してきましたが、
コンタクトセンター(コールセンター)自体を評価する際のポイントである「プロフィット(収益性)」に関しても、どんな項目で評価することができるのかを説明しておきましょう。
6-1. 売上/利益貢献
プロフィットを判断する要素として、直接的な売上や利益を目標にするケースもあります。
製品やサービスの受注を目的としたインバウンド型のコンタクトセンターや、営業系のアウトバウンド型コンタクトセンターでは特に重要な指標になります。
たとえば、1個5,000円の商品を1,000個コンタクトセンターで受注した場合、500万円の売上になりますが、その場合のコンタクトセンターの運営費用が500万以下の場合は、売上/利益貢献している、運営費用が500万以上の場合は、売上貢献は出来ているが、利益貢献は出来ていないとみなされることがあります。
受注を目的としたインバウンド型のコンタクトセンターの場合は、顧客をコンタクトセンターに流入させるための広告費等も費用に計上することもあるため、経営企画部門が評価をするケースもありますが、企業によって評価方法は異なります。
カスタマーサポート系のインバウンド型コンタクトセンターでは、製品やサービスを積極的に販売することを目的に構築されていないことから、上記のような評価をするのは難しく、問題解決を図りながらアップセルやクロスセルを実施した際の、売上貢献額のみを参考程度に把握する目的で使われています。
6-2. NPS(顧客推奨度)
近年、企業活動において、新規獲得から顧客維持が重視されるようになってきており、顧客ロイヤルティを評価するためのNPS(顧客推奨度、Net Promoter Score)に注目が集まっています。
顧客が他者に製品やサービスを推奨するかどうかを0~10の11段階で評価し、好意的に評価する顧客の割合(推奨者、11段階評価中9,10を選択する顧客)と否定的に評価する顧客の割合(批判者、11段階評価中0~6を選択する顧客)の差で推奨度を判定します。
5-4CS(顧客満足度)と顧客に評価してもらうという部分では同じですが、CSは個別的な製品やサービスの満足度(コンタクトセンターの応対に満足したかどうか)を評価する指標、いわば線の接点を評価。NPSは包括的な製品やサービスの推奨度(コンタクトセンターの応対も含めて、他者に推奨したいかどうか)を評価する指標、いわば面の接点を評価するものです。
顧客が製品やサービスを購入して、推奨者になるまでには、顧客との関係性構築が必要になります。そのため、顧客接点を担うコンタクトセンターの対応が重要になってきており、コンタクトセンター利用後にNPS調査をするケースが増えてきています。
なお、NPSを求める計算方法は、
NPS(顧客推奨度)=自社製品やサービスを推奨する顧客数-自社製品やサービスを推奨しない顧客数
ですが、日本では中間評価を選択する顧客が多く、推奨度はマイナス評価になることが多いです。
6-3. CES(顧客努力指標)
NPSと同様に注目されている指標の一つに、CES(顧客努力指標、Customer Effort Score)があります。
顧客が製品やサービス利用において、問題解決する際の企業とのやり取りに対し、どの程度努力が必要だったのか、負担を感じたかをスコア化したものです。
解決までに努力が必要だった場合、顧客はストレスを感じてしまい、ストレスを感じることで、サービス継続利用に対する意欲が減り、解約に繋がります。
その為、顧客の問題解決を担うコンタクトセンターの役割が重要になってきます。
顧客は問題解決をしたいと思う際に、必ずしも電話をかけるわけではありません。解決方法をWEBで探す人もいれば、FAQやチャットボットで解決方法を探すなど様々コンタクトチャネルを利用します。その際、解決までに時間がかかる、たとえば、ファースト選択チャネルでは解決せず、他の方法を探したなどで負担だと感じれば、CESは下がり、ファースト選択チャネルですぐに解決できたとなれば負担だとは感じにくいでしょう。
なお、CES(顧客努力指標)の計測は、アンケート方式で、
・サービス利用における負担感やストレス
を7段階で選択してもらい、以下スコアを算出します。
CESスコア = 肯定評価Top2 - 否定評価Bottom3
但し、アンケートをどのタイミングで取得するかによっては、アンケート内容にどのようなコンタクトチャネルを利用したか等を追加で回答してもらう必要があります。
NPS調査やCES調査に興味がある方は、以下よりお問い合わせください。状況ヒアリングの上、サービスをご紹介させていただきます。
7. その他の評価項目
この記事の冒頭で説明したように、「コンタクトセンター(コールセンター)の評価」といえば、多くの場合は
- パフォーマンス
- クオリティ
- プロフィット
の3点に関しての評価を指します。
が、実はコンタクトセンターで働くオペレーターの評価には、この3つにおさまらない項目も関わってきます。
この章では、それについても補完しておきましょう。
7-1. 勤怠状況
まず、コンタクトセンターのオペレーターに限らず、社会人すべてに適用される評価項目として、「勤怠状況」が挙げられます。
決められたシフトに従って、遅刻や無断欠勤などなくきちんと勤務しているか、残業はどれくらいか、有給休暇はきちんと取得できているかといった勤務の状態は、評価に大きく影響します。
勤怠に問題があるオペレーターがいれば、面談の上でシフトや勤務形態を調整したり、場合によっては厳しい指導をする必要もあるでしょう。
7-2. コミュニケーション力
コンタクトセンターのオペレーターというと、外部からみれば「コミュニケーション能力が高くなければできない仕事」だと思われがちです。
これについては、かならずしもその通りとは言い切れず、「日常生活ではコミュニケーションはあまり得意ではないが、仕事での顧客対応は問題なくできる」という人もいるでしょう。
とはいえ、やはりコミュニケーション力が高ければ、業務においてプラスに働くこともありますので、できれば評価に加えたいところです。
が、この能力は数値化しづらく、客観的に評価するのは難しいと言えます。
そこで、以下のようなポイントを点数化して評価するといいでしょう。
- 言葉遣いや話し方、話すスピードなどは好印象か
- 顧客の要望や疑問、抱えている問題をうまく引き出し、共感できているか
- 顧客のために役立ちたいという、誠意と熱意をもって応対しているか
- 顧客ごと、問い合わせ内容ごとに最適な対応を、臨機応変にできているか
などです。
モニタリングスコアとあわせて、チェック項目をリスト化して、公平な評価を心掛けてください。
7-3. 業務知識
また、オペレーターによって差が出る評価ポイントとしては、業務に関する知識量の多寡も重要でしょう。
顧客から同じ問い合わせを受けたとしても、業務知識が豊富な人と未熟な人では、応対にかかる時間、一次対応で解決できる率の高さ、回答の正確さ、応対後の顧客の満足度など、さまざまな面で差が生じます。
日ごろから努力や勉強を重ねて知識を蓄積している人は、正しく評価されるべきです。
これについては、定期的にテストを行うなどの方法で評価している企業もあります。
スキルチェックもかねて、実施してみてもいいでしょう。
8. コールセンターの評価制度を作る際の注意点
以上で、コンタクトセンター(コールセンター)を評価する方法と評価項目を解説しました。
これらをもとに、センターの評価制度を作っていってもらえれば幸いです。
ただ、その際に注意してほしいこと、意識してほしいことがあります。
最後にそれらを挙げておきましょう。
8-1. 業種、業務内容に合わせた評価基準を定める
説明してきた通り、コンタクトセンターはその業種や業態によって、業務内容は千差万別です。
インバウンドかアウトバウンドか、問い合わせ対応か申し込み受け付けかによって、平均通話時間は大きく変わりますし、一次解決率も異なるでしょう。
そのため、すべてのセンターに適用できる同一の評価基準というものはありません。
この記事では便宜上、評価項目ごとの基準値を提示しましたが、それらもあくまで一例です。
これに縛られず、あなたのセンターの業種、業態、業務内容に合わせた最適な基準値を探ってください。
そして、一度定めた評価基準でも、「パフォーマンスをあげるとクオリティが下がる」などの問題が生じた場合は、基準を随時見直す柔軟性をもちましょう。
8-2. 単純な収益性のみを重視しない
これまでコンタクトセンターは、「コストはかかるが収益はうまない部門」と見られ、
コスト削減を推進されることが多い状況でした。
コスト削減で収益性を改善しようとすると、
・オペレーターの人員最少化
・顧客対応の短時間化
などに走ることになり、その結果、
■オペレーターの負担増による応対クオリティ低下、ミスの増加
■顧客満足度の低下
■オペレーターの離職率上昇
といった悪い結果につながりかねません。
近年では、6-2.NPS(顧客推奨度)や6-3.CES(顧客努力指標)で前述したような指標が提唱され、
見直されてはいますが、まだまだ浸透しきれていません。
コンタクトセンターは、あくまで顧客対応が業務の主軸です。
「顧客のために」という視点を決して忘れずに、評価基準を定めましょう。
8-3. ES(従業員満足度)も意識する
今までとは異なる視点の評価として、「ES(従業員満足度)」というものもあります。
これは従業員、つまりオペレーター自身が業務内容や職場環境にどの程度満足しているかをあらわすものです。
調査はアンケートや面談で行われ、
- 今の業務にやりがいを感じるか
- 研修や指導は十分か
- 職場の人間関係は円滑か
- 上司は信頼できるか
といった質問をします。
これは、オペレーター自身を評価するのではなく、オペレーターが職場や上司などを評価するものです。
ほかの評価項目とはベクトルが逆ですが、これもまた、応対クオリティを上げる一助になるのです。
というのも、ESが高い企業や職場は、CS(顧客満足度)も高くなる傾向があるとされています。
ESを向上させることで、オペレーターのモチベーションが上がり、その結果、
〇応対のクオリティも高まる
〇オペレーターの離職率が下がる
ことが期待できるわけです。
オペレーターを評価するだけでなく、働く環境をより良いものにしていきましょう。
9. まとめ
いかがですか?
コールセンターにおける評価方法、評価基準についてよく理解していただけたかと思います。
ではもう一度、記事の要点をまとめてみましょう。
◎「コールセンターの評価」には以下の2パターンがある
- 特定のコンタクトセンター全体の評価
- コンタクトセンターで働く個々のスタッフ(オペレーター)の評価
◎コンタクトセンターの評価 3つのポイントは、
- パフォーマンス(効率):顧客からのコンタクトに対する処理効率
- クオリティ(品質):顧客に対する応対品質、サービス品質
- プロフィット(収益性):事業としての利益
◎コンタクトセンターの評価方法は、
- データ分析
- モニタリング
- ミステリーコール
- 顧客からの評価
◎パフォーマンス(効率)の評価項目は、
- 応答率/放棄呼率
- 稼働率/占有率
- CPH(平均処理件数)
- ASA(平均応答速度)/サービスレベル(設定時間内応答率)
- 平均通話時間/平均保留時間/平均後処理時間/平均処理時間
◎クオリティ(品質)の評価項目は、
- モニタリングスコア
- 一次解決率
- ミス発生率
- CS(顧客満足度)
◎プロフィット(収益性)の評価項目は、
- 売上/利益貢献
- NPS(顧客推奨度)
- CES(顧客努力指標)
◎コールセンターの評価制度を作る際の注意点
- 業種、業務内容に合わせた評価基準を定める
- 単純な収益性のみを重視しない
- ES(従業員満足度)も意識する
以上、コンタクトセンターの運営の一助となれば幸いです。