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ヒューマンインザループ(HITL)とは?意味・必要性・メリット・具体例をわかりやすく解説

「ヒューマンインザループとはどんな意味?」
「業務を自動化したいけれど、ヒューマンインザループは必要?」

この記事を読んでいる方は、そのような疑問をお持ちではないでしょうか。

「ヒューマンインザループ(Human in the Loop/HITL)」とは、業務や作業の自動化において、完全にシステムへ任せるのではなく、プロセスの中に人間の判断や管理を組み込む仕組みを指します。

ヒューマンインザループのイメージ

たとえば、企業サイトの問い合わせ対応にチャットボットを導入した場合でも、対応できない複雑な質問は人間のオペレーターに引き継ぎます。これがヒューマンインザループの典型例です。

AIを含むITシステムは大量処理が得意な一方で、倫理的判断やイレギュラー対応は苦手です。そのため、「人とAIの役割分担」が重要になります。

ヒューマンインザループの導入により、企業は次のメリットを得られます。

【ヒューマンインザループのメリット】

・業務精度向上による信頼性の強化
・誤情報(ハルシネーション)のリスク低減
・継続的な業務改善

一方、以下の課題もあり、今後は対策が求められます。

【ヒューマンインザループの課題】

・コスト増加
・ヒューマンエラー
・セキュリティリスク

本記事では、ヒューマンインザループの基礎から実践までわかりやすく解説します。

◎ヒューマンインザループ(HITL)とは
◎ヒューマンインザループの必要性
◎「完全自動化」との違い
◎ヒューマンインザループ(HITL)で人が介在する3つの業務領域
◎ヒューマンインザループ(HITL)の具体例
◎ヒューマンインザループ(HITL)のメリット
◎ヒューマンインザループ(HITL)の課題
◎ヒューマンインザループ(HITL)が向いている業務・領域

本記事を読むことで、ヒューマンインザループの全体像と実務での活用方法を具体的に理解できます。
この記事で、あなたの会社が業務の効率化と質向上を両立できるよう願っています。

1.ヒューマンインザループ(HITL)とは

ヒューマンインザループ(HITL)とは

この記事を読んでいるあなたがまず知りたいのは、「ヒューマンインザループとは何?」ということでしょう。
そこで最初に、その意味をわかりやすく説明しましょう。

1-1.「ヒューマンインザループ」とは?

「ヒューマンインザループ(Human in the Loop/HITL)」とは、業務自動化の中に人間の判断や管理を組み込む仕組みです。

たとえば、経理業務では、伝票処理から請求書発行まで自動化できますが、イレギュラーな取引や誤入力の可能性があります。

そのため、

・入力前チェック
・請求書の送付前確認

といった工程に人が介在します。

ヒューマンインザループのイメージ

これが、「ヒューマンインザループ=作業の流れ(ループ)の中に人を組み込むしくみ」です。
ITシステムによる業務自動化の際に、システムにはできない作業や判断、管理などのプロセスは人間が担当すること、と考えればいいでしょう。

特に近年は、AIが急速に普及するのにともなって、ヒューマンインザループでプロセス設計をする企業が増えています。

このようにヒューマンインザループ(HITL)は、AIと人間が協働するための基本的な設計思想として、近年のDX(デジタルトランスフォーメーション)において重要視されています。AI活用における品質担保とリスク管理の観点から、企業のDX推進において中核的な役割を担う概念です。

1-2.ヒューマンインザループの必要性

では、なぜいまヒューマンインザループが注目されているのでしょうか?

前述したように、AIの導入が多様な領域で進んでいるためです。AIの精度を高め、適切に活用するには、人間による判断・意思決定や管理が不可欠といえます。

というのも、AIは非常に優秀ではあるものの、以下のような特性を持っています。

・完璧ではなく間違えることがある
・継続的に学習・改善させる必要がある

まず、AIは「ハルシネーション」を起こすことがあります。
これは、AIが間違った情報や存在しない情報を生成してしまう現象です。学習データが偏っていたり間違っていたり、こちらからの指示があいまいだったりすることが原因で発生します。

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とヨーロッパのAI研究機関・ELLIS研究所によるチームが、ハルシネーションを測定する「HalluHard」という指標を開発し、さまざまなAIを検証したところ、もっとも確率の低いAI(Claude-Opus-4.5-Web-Search)でも、約30%の確率で誤情報を生成するという結果が出ました。

【AIモデルごとのハルシネーション率】

AIモデルごとのハルシネーション率を表すグラフ

出典:HalluHard – Hallucination Benchmark Leaderboard

現在のAIでは、どんなに高精度のものでもハルシネーションをゼロにはできないと言われています。

そのため、AIが出力した結果に対して、かならず人がチェックする=ヒューマンインザループを実施する必要があるのです。

また、AIの精度を高めるためには、良質な学習データを大量に与え、その後も定期的にチューニングしていく必要があります。
この「学習データの精査」と「チューニング」も、人間が行わなければなりません。

AIに自律的な学習を任せていると、間違ったデータや不要なデータを学んでしまうリスクが避けられないためです。

そのため現在では、AIによる完全自動化を目指すのではなく、AIと人間で「協働」しようという考え方がトレンドになっています。
つまり、AI導入においてはヒューマンインザループが不可欠です。

1-3.「完全自動化」との違い

ここまで説明したように、ヒューマンインザループとは、システムによる業務自動化の中に人が介在することを指します。

では逆に、人間が介在しない、システムによる完全自動化と比べると、どんな点が異なるのでしょうか?

両者の違いを表にまとめてみましたので、以下を見てください。

ヒューマンインザループ

完全自動化

人間の介在

ある

ない
(ITシステム(AI含む)がすべて行う)

判断・意思決定

AIの判断を人間が検証する
あるいは判断は人間が行う

AIが自ら判断する

業務の精度

人間が検証するため高い
(ただしヒューマンエラーはある)

基本的には高いが、
ハルシネーションのリスクあり
・イレギュラー対応は難しい

導入スピード

人とシステムの協働プロセスを設計、運用するため、ある程度の時間がかかる

既成のシステムを導入するため、短期間で導入が可能

コスト

高め
(人件費が発生する)

低め
(人件費を抑えられる)

向いている業務

高度な判断やイレギュラー対応が必要なもの

定型業務や大量のデータ処理など

つまり、決まった作業を大量に行う業務であれば、完全自動化のほうが低コストで行えるのに対して、難しい判断やイレギュラー対応が発生する業務なら、ヒューマンインザループが必要、といえるでしょう。

2.ヒューマンインザループ(HITL)で人が介在する3つの業務領域

ヒューマンインザループ(HITL)で人が介在する3つの業務領域

では、実際にヒューマンインザループを実行する場合、自動化された業務プロセスのどの部分に人間が介在すればいいのでしょうか?
それは以下のような領域です。

領域

具体例

倫理性が求められる判断
・リスクの高い判断

・重要な施策決定
・医療における診断、治療方針の決定 など

イレギュラー対応

・クレーム対応 など

機械学習の改善・強化

・AIの学習データ検証、トレーニング など

それぞれ説明しましょう。

2-1.倫理性が求められる判断・リスクの高い判断

まず第一に人間の介在が必要とされるのは、「重要な判断・意思決定」のプロセスです。
倫理性が求められる場面や、判断を間違えると重大なリスクにつながる場面では、AIではなく人が判断の責任を持つべきと言えるでしょう。

具体的には、以下のような業務です。

業種・業界

職種

人が行うべき業務

民間企業全般

マネジメント担当/人事担当

最終的な施策の決定、契約の可否の判断、人材採用の可否の判断、人事評価など

医療

医師/法務担当

最終的な診断、治療法の決定など

金融

融資担当/審査担当/法務担当

融資の可否の判断、不正取引の判断、トラブルの際の法的判断など

保険

保険査定担当/法務担当

保険契約の可否の判断、保険支払いの判断など

人材

人事担当/法務担当

採用の可否の判断、人事評価など

不動産

不動産査定担当/法務担当

最終的な不動産査定、賃貸の入居審査など

教育

教師

成績評価、試験の合否の判断など

公共機関

公務員

行政処分の判断など

たとえば、AIが「利益を追求するためには、事業Aからは撤退すべき」と判断したとします。
ただ、その事業Aは利益につながらなくても、長期的にみると社会に貢献するものだった場合、あえて続けることが企業の将来的な信頼度を向上させるかもしれません。

また、AIがデータをもとに考えた施策が、「たしかに効率や利益率はいいけれど、弱者を切り捨てるもので差別にあたる」「競合他社に対して、道徳的配慮を欠く」といったものになる恐れもあります。

医療現場であれば、AIが導き出した最善の治療法が、生命の倫理や人間の尊厳を損なうものではないかを、あらためて判断する必要もあるでしょう。

このように、AIは人間の倫理観や道徳、感情を加味して判断するのはまだ苦手です。

さらに、前述したようなハルシネーションのリスクもあります。
重大な決定を下すに際して、間違った判断をするかもしれませんし、結果に対して責任を取ることもできません

やはりこのような場面では、AIの判断を人間が検証するか、あるいは最初から判断・意思決定は人間がするようなプロセス設計が必要なのです。

2-2.イレギュラー対応

第二に、「イレギュラーな対応」が必要になる場合、そこは人が介入する必要があります。
具体的には、以下のような業務が該当します。

業種・業界

職種

人が行うべき業務

民間企業全般

カスタマーサービス/営業

難しい問い合わせ対応、クレーム対応、トラブル時の取引先対応など

小売

店舗責任者/営業

クレーム対応、返金・返品の個別対応など

IT・通信

カスタマーサポート/運用担当

障害が発生した際の判断と対応など

医療

医師/看護師

定型外の症状の診断、特別な事情がある患者の対応など

金融

融資担当/審査担当

特殊な事情がある顧客の融資審査など

公共機関

公務員

特殊な事情がある住民の対応、災害対応など

たとえば、カスタマーサービスを自動化することを考えてみましょう。

商品の注文や解約の受け付け、使い方に関する簡単な問い合わせだけなら、決まったシナリオ通りの応答で十分でしょうから、自動音声やAIチャットボット、自動送信のメールなどで対応できます。

一方で、複雑で専門的な問い合わせや、多種多様なクレームが発生するようなコンタクトセンター(コールセンター)であれば、AIを搭載したシステムであっても、完全に任せることは困難です。
その都度、人間のオペレーターが対応を引き継ぎ、個別対応する必要が生じます。

このような、定型からはずれた対応がしばしば求められる業務では、人がシステムの動作や出力結果をモニタリングして、必要に応じて介入できるようにするとよいでしょう。

2-3.機械学習の改善・強化

自動化の中でも、特にAIを導入する場合は、「機械学習の改善や強化」にも人の手が必要です。
特に、以下のような業種が該当します。

業種・業界

職種

人が行うべき業務

民間企業全般

エンジニア/データアナリスト/マーケティング担当

学習データの精査、AIが出力した結果の評価・修正、データのラベル付け、誤判定した際のフィードバック

IT・通信

EC・小売

広告

製造

AIは、膨大なデータを学習することでルールやパターンを覚え、それにもとづいてコンテンツや回答を生成したり、判断したりします。
その際に、AI自らデータを収集、学習することもできますが、ここに問題が生じます。

たとえば、間違ったデータを正しいものとして認識してしまうと、それをもとに間違った回答を生成する恐れがあります。
また、偏ったデータを学んでしまえば、公平ではない不当な結果を出力することもあるのです。

そのようなリスクを避け、AIの精度を上げるためには、正確で最適な学習データを人間が収集、精査、選別して与える必要があります

また、運用開始後も、AIが不適切なデータを学んでいないか、定期的に人がチェックしてトレーニングやチューニングを実施しなければなりません。
AIの精度を上げ、公平性を保つためには、学習プロセスに人のサポートが必要なのです。

3.ヒューマンインザループ(HITL)の具体例

ヒューマンインザループ(HITL)の具体例

ここまで、ヒューマンインザループとはどんなものかをできるだけわかりやすく説明してきましたが、中には「いまひとつ明確に意味がつかめない」という方もいるでしょう。

そこで、ヒューマンインザループの具体例をいくつか挙げておきます。

・営業支援
・カスタマーサービス
・医療における画像診断
・金融機関の不正検知
・自動運転

3-1.営業支援

まずどの企業にも身近な例として、営業活動にヒューマンインザループを導入する例が挙げられます。

営業担当部署で、SFA(営業支援)ツールやMA(マーケティング・オートメーション)ツールなどで業務の自動化を図っている企業は多いでしょう。

たとえば、見込み顧客を抽出してそれぞれの見込み度を予測、リスト化する機能を活用すれば、営業担当者はそれをもとに顧客にアプローチすることができ、効率的な営業活動につながります。

ただ、これらのツールは、過去のデータをもとに見込み度をスコアリングして判断するため、創業から日が浅くデータがない企業など、実際には可能性のある顧客をとりこぼす恐れがあります。

そこで、出力されたリストを最終的に営業担当者がチェックし、取捨選択を加えることで、より精度の高いリストに改善する、というヒューマンインザループを実践している企業があるのです。

また、見込み顧客のリスト化と分析までをAIに任せ、実際のアプローチ方法を組み立てるのは人が担当する、というケースもあります。

3-2.カスタマーサービス

カスタマーサービスを担当するコンタクトセンター(コールセンター)では、実際にヒューマンインザループで業務を行っているケースが多くあります。

代表的なのは、チャットボットと有人チャットのハイブリッド運用です。
顧客が企業サイトを訪れると、まずチャットボットがポップアップ表示され、「どのようなお問い合わせですか?」「何かお手伝いしますか?」などと問いかけます。

このチャットボットは、あらかじめよくある質問と回答のシナリオを学習しているので、簡単な問い合わせであれば完全自動で回答し、問題解決まで完結することが可能です。

ただ、イレギュラーな質問があった場合には、ボットでは対応しきれません。
そこで、「申し訳ありません、わたしではお答えできないのでオペレーターに引き継いでもよろしいですか?」と、人間のオペレーターにバトンタッチするのです。

またこれ以外にも、メールでの問い合わせにシステムが自動返信したり、顧客それぞれの属性やニーズをAIが分析し、その人にとって最適なタイミングと内容でメルマガやDMを配信したりすることができますが、その際に不適切な内容になっていないかなどを人がモニタリングすることもあります。

このように、自動化できることはシステムに任せて、回答内容の検証やイレギュラー対応は人が介在するというのは、典型的なヒューマンインザループの例と言えるでしょう。

3-3.医療における画像診断

医療分野も、ヒューマンインザループが活用されている領域です。

たとえば、画像診断にAIを導入している病院があります。
レントゲンやCTスキャン、MRIなどの画像を撮影した際に、従来は医師がそれを見て過去の膨大な症例や経験などをもとに診断を下していました。

AI画像診断では、同じように膨大な過去の症例データを学んだAIが、医師のかわりに画像を解析、診断をします。

ただ、前述したようにAIは完璧ではなく、間違った判断をする恐れがあります。
そうなると、医療の現場ではミスが命にかかわるため、AIに任せきることはできません。

そこで、AIによる高度な画像解析をもとにして、最終的な診断や治療方針の決定は医師が行います

これにより信頼性が担保され、責任の所在も明確になるため、患者も安心して医療を受けることができるのです。

3-4.金融機関の不正検知

金融機関でも、ヒューマンインザループを取り入れている例があります。

クレジットカードやオンラインでの決済、送金などをAIがリアルタイムで検証、不正があれば自動的に検知するシステムを導入している金融機関も多いでしょう。

通常にはなかった高額の入出金や、突然の海外からのアクセスなど、不審な動きがあれば、口座を凍結したり、ネットバンクのアカウントを停止したりして不正を防ぐ仕組みです。

ただ、AIが不正と判断した取引の中にも、事情を知れば問題ないと判断されるものもあるはずです。
それを一律に口座凍結してしまうと、顧客に対して大変な不便を強いることにもなりかねません。

そこで、不正検知まではAIに任せて、検知された取引を実際に不正かどうか判断するのは人が担当する、というヒューマンインザループが行われています。

また金融機関では、融資審査の際にもデータに基づく融資の可否判断をAIにさせたうえで、最終的な決定は人が行う、といったケースもあります。

3-5.自動運転

身近な例としては、車などの自動運転にもヒューマンインザループが取り入れられています。

自動運転技術は、AIが道路の状況や周囲の車、歩行者の動き、標識などを検知して、安全に車を走行させるものです。
基本的には、人がハンドルを握らなくても、無人でも走行できるように設計されています。

ただ、周りの車が急に予期せぬ動きをしたり、悪天候でセンサー検知がうまく働かなかったり、あるいは車自体が原因不明の不具合を起こしたりと、さまざまなアクシデントが起こり得るものです。

そうなった場合に備えて、人間が運転を引き継ぐ仕組みが整備されています。

さらに、自動運転の精度を高めるため、AIに自動車や歩行者のさまざまな動きや状況などのデータを人が学ばせ、トレーニングすることも行われています。

自動運転もまた、人の安全や命にかかわる技術なので、ヒューマンインザループによって安全性の向上が図られているのです。

4.ヒューマンインザループ(HITL)のメリット

ヒューマンインザループ(HITL)のメリット

ここまでで、ヒューマンインザループとはどんなものかを把握できたかと思います。
となると、次に知りたいのは「具体的にどんなメリットがあるのか」でしょう。
その答えは、以下の3点です。

・自動化した業務の精度を向上させ、企業としての信頼性を高めることができる
・AIが偏った情報や間違った回答を生成するリスクを軽減できる
・業務自動化を常に改善していくことができる

順番に説明します。

4-1.自動化した業務の精度を向上させ、企業としての信頼性を高めることができる

ヒューマンインザループは、ITシステムによる業務自動化の精度を向上させ、企業としての信頼性を高めることが可能です。

前述したように、システムは定型業務を大量にこなすことは得意ですが、イレギュラー対応は苦手なケースもあります。
また、AIには間違った情報を生成するハルシネーションも懸念点です。

イレギュラー対応を人間が引き継いだり、AIの出力結果を人がチェックしたり、人がAIに適切なデータを学習させてトレーニングしたりすることで、これらのリスクを軽減することができます。

4-2.AIが偏った情報や間違った回答を生成するリスクを軽減できる

また、AI導入に際しては、ヒューマンインザループによって誤情報や誤回答のリスクを軽減する効果もあります。

これも前述しましたが、AIは偏ったデータを学習してしまうと、情報や回答を生成する際に「バイアス=偏り・偏見」がかかってしまう恐れがあります。

たとえば、海外における医療の分野では、コンピューター診断のシステムが白人のデータを多く学習した結果、診断結果の精度は白人に比べて黒人のほうが低くなった、という例もありました。

また、倫理観や道徳を加味して判断することも苦手なので、公平性に欠けたり倫理に反したりする回答を出すこともあり得ます。

そこで、ヒューマンインザループによって人間が学習データを精査したり、生成された回答を検証したりするプロセスを組み込めば、これらの偏りや誤りを軽減し、より公正な結果を得ることができるというわけです。

4-3.業務自動化を常に改善していくことができる

3つ目のメリットは、人が介在することで、常に業務自動化のプロセスを改善していくことができる点です。

ヒューマンインザループによって、システムの動作やAIの出力結果はリアルタイムで、あるいは定期的にチェックされます。

その中でもし何か問題が検出されれば、すぐに原因を解明、解消し、改善策を講じることができるでしょう。

たとえば、コンタクトセンター(コールセンター)での顧客対応にAIチャットボットを導入した場合を考えてみます。

顧客からの問い合わせに対して、ボットが間違った回答をしてしまうハルシネーションが生じたとします。

その際に、人が回答をモニタリングするような業務設計にしておけば、すぐに気づいて顧客に正しい回答を伝えられるのはもちろん、今後は同様のことが生じないよう、AIに新しいFAQを学習させるなどの改善策を実施できるでしょう。

このような改善フィードバックを繰り返すことで、業務自動化の精度を向上させることができるのです。

5.ヒューマンインザループ(HITL)の課題

ヒューマンインザループ(HITL)の課題

ヒューマンインザループにはメリットがある一方で、もちろん課題もまだ残されています。
それは主に以下の3点です。

・コストが発生する
・ヒューマンエラーが避けられない
・セキュリティリスクが高まる

こちらも説明していきましょう。

5-1.コストが発生する

まずヒューマンインザループは、完全自動化と比較してコストがかさむというのが第一の課題です。

そもそも企業が業務の自動化を目指すのは、業務の効率化や生産性向上と同時に、人間が行う業務をシステムに任せて人件費などのコストをカットしたいという理由もあるでしょう。

ただ、完全自動化ではなくヒューマンインザループを実施すると、システムの導入コスト、運用コストに加えて人件費は発生してしまいます。

コスト削減を目指してシステムを導入したのに、システムの動作をモニタリングしたりAIをトレーニングしたりと、運用のために新たな人間の業務が発生するという矛盾が生じてしまうわけです。

5-2.ヒューマンエラーが避けられない

前述したように、重要な判断や意思決定、システムが対応できないイレギュラーや、AIのハルシネーションが発生した場合、ヒューマンインザループでは人がその部分の作業を請け負います。

ただ、人間もまた、ミスをするものです。
AIの間違いを見落としたり、判断を誤ったりする可能性はゼロにはできません。

また、人は機械と違って完全に客観的になることは難しく、判断を下す際にどうしても個人の主観に左右されてしまいます。

そのため、倫理的・道徳的な問題が発生した際に、人によって異なる回答を選ぶこともあるでしょう。

あるいは、AIの学習データを収集、整理する際にも、人により異なる基準で取捨選択したり、分類したりとブレが生じるかもしれません。

そうなると、AIが混乱したり、かえって個人の意見によるバイアスがかかってしまったりする恐れがあるのです。

ITシステムと人間が協働するヒューマンインザループでは、システムのエラーを人が監視するとともに、人がミスや偏った判断をしないようなチェック体制も求められるでしょう。

5-3.セキュリティリスクが高まる

さらに、ヒューマンインザループにはセキュリティリスクもともないます。

ITシステム、特にAIを搭載したものは、非常に膨大な量のデータを管理したり学習したりするものです。

その中には、個人情報や企業の機密情報なども含まれるため、プライバシー保護とセキュリティ管理には厳しい対策が求められます。

システム側には、データの暗号化やセキュリティソフトの導入、ファイアウォールを設置するなど、さまざまな対策をとることができます。

ただ人間がデータにアクセスする際に、うっかり情報を漏洩してしまうリスクは残るでしょう。
さらに、意図的にデータを流出させることもないとは言えません。

ヒューマンインザループでは、このような人間によるセキュリティリスクに対しても、厳しい対策を講じなければならないのです。

6.ヒューマンインザループ(HITL)が向いている業務・領域

ヒューマンインザループ(HITL)が向いている業務・領域

ここまで、ヒューマンインザループについてさまざまな面から解説してきました。
が、「どんなものかはわかったけれど、結局自社・自部署の場合はどうすればいいの?」という疑問が残っている方も多いでしょう。

そこで最後に、完全自動化ではなくヒューマンインザループが向いている業務や領域とはどんなものか、説明しておきます。
表にまとめましたので、以下を見てください。

向いている
業務・領域

具体例

人の介在が必要な理由

重要・高度な判断

・取引の可否判断
・融資審査

・企業の利益に直接かかわる
・複雑な要件をもとに判断しなければならない

・人事評価
・採用選考

・公平な人物評価はデータだけでは難しい
・説明責任が生じる(AIに責任はとれない)

・医療における診断
・治療方針の最終決定

・説明責任が生じる
・症状などに個人差が大きい(イレギュラーが多発)
・生命倫理や尊厳にかかわるデリケートな判断が必要
・判断ミスが命にかかわる

法的な判断

・契約書のチェック

・説明責任が生じる

・個人情報を扱う際の管理とチェック

・説明責任が生じる

イレギュラー対応

・接客、顧客対応
・カスタマーサービス
 (クレーム対応)

・ケースが多様で対応がルール化しづらい
・人の感情が大きくかかわる

AIの精度向上

・学習データの収集、整理
・改善フィードバック

・間違ったデータや偏ったデータを学習させない
・ハルシネーションやバイアスを発見、修正する

端的にいえば、「重要で難しい判断」「イレギュラーが発生しやすい業務」「AIのトレーニング」は人の仕事だと考えればいいでしょう。

反対に、定型的で大量な作業が必要な業務、責任が重くない領域であれば、システムに任せることができます。

たとえばデータ入力や請求書などの処理、ネットワーク上の不正検知、メルマガや広告のパーソナライズ配信などです。

ヒューマンインザループでは、このようにシステムが得意な領域はシステムに、人でなければできないことは人に任せる業務プロセスの設計が重要だと言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたか?
ヒューマンインザループとは何か、よく理解できたかと思います。
ではあらためて、記事の要点をまとめましょう。

◎ヒューマンインザループ(HITL)とは、「業務や作業を自動化する際に、完全にシステムに任せるのではなく、業務・作業プロセスの中に人間の判断や管理を組み込む仕組み」

◎ヒューマンインザループで人が介在する領域は、

・倫理性が求められる判断・リスクの高い判断
・イレギュラー対応
・機械学習の改善・強化

◎ヒューマンインザループのメリットは、

・自動化した業務の精度を向上させ、企業としての信頼性を高めることができる
・AIが偏った情報や間違った回答を生成するリスクを軽減できる
・業務自動化を常に改善していくことができる

◎ヒューマンインザループの課題は、

・コストが発生する
・ヒューマンエラーが避けられない
・セキュリティリスクが高まる

ヒューマンインザループ(HITL)は、AI活用におけるリスクを抑え、業務精度と信頼性を両立するための重要な仕組みです。

これを踏まえて、あなたの会社がヒューマンインザループ(HITL)を適切に取り入れ、業務効率化、売上向上などの目標を達成できるよう願っています。

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栄福 優人

監修者

栄福 優人

トランスコスモス株式会社
CX事業統括 デジタルカスタマーコミュニケーション総括
サービス開発本部 コミュニケーション開発部 コミュニケーション開発課

2010年よりコンタクトセンターの現場からキャリアをスタートし、商用車メーカーや通信、流通通販業界などのセンターマネジメントを経験。2017年よりノンボイス推進部門への異動以降、チャットサポートをはじめとするノンボイスチャネルの立ち上げや、チャットボット・ボイスボットの導入支援において数多くのプロジェクトに参画。2023年よりCC領域における生成AIの活用に注力し、生成AIを活用した最先端のトレーニングツール「trans-AI Tutor」の開発など、コンタクトセンターにおける品質向上・業務効率化に寄与するサービスの企画開発からブランディングまでを一貫して担当。

トランスコスモスは3,000社を超えるお客様企業のオペレーションを支援してきた実績と、顧客コミュニケーションの
ノウハウを活かして、CX向上や売上拡大・コスト最適化を支援します。お気軽にお問い合わせください。
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