
「ハイパーパーソナライゼーションとは何か?」
「従来のパーソナライゼーションとの違いは?」
こうした疑問を持つマーケティング担当者は増えています。
ハイパーパーソナライゼーションとは、AIがリアルタイムデータを分析し、顧客一人ひとりに最適な体験を提供するマーケティング手法です。

これまでも、顧客のニーズや嗜好をセグメントして、適した商品をレコメンドしたりクーポンを送付するなどのパーソナライゼーションは実施されてきました。
ただ、それを実施する企業が増え、競合優位性が薄まったことや、顧客側もそのアプローチ手法に慣れてしまったことなどから、「より顧客個人にフォーカスした、精度の高いパーソナライゼーションを」という必要性が高まり、ハイパーパーソナライゼーションに注目が集まるようになっています。
ハイパーパーソナライゼーションの特徴は、以下のようなものが挙げられます。
・プロセス全体にAIを活用する |
その結果、顧客がほしいものや好むコンテンツをより正確にレコメンドし、オファーできます。
そこでこの記事では、ハイパーパーソナライゼーションについて知っておきたいことをまとめました。
◎ハイパーパーソナライゼーションとは |
最後まで読めば、ハイパーパーソナライゼーションについてよく理解できるでしょう。
この記事で、あなたの会社が顧客に刺さるアプローチができ、競合優位性を確保できることを願っています。
1.ハイパーパーソナライゼーションとは(意味と特徴)

まずみなさんが知りたいのは、「ハイパーパーソナライゼーション」とは何か? 従来のパーソナライゼーションとどう違うのか? ということですよね。
最初にそれを、わかりやすく説明していきましょう。
1-1.「ハイパーパーソナライゼーション」とは?
「ハイパーパーソナライゼーション」とは、AIを中心とした高度な技術を活用し、顧客のリアルタイムデータを分析して、一人ひとりに最適なサービスや顧客体験を提供するマーケティング手法です。
これまでも、顧客の属性や購買履歴などのデータにもとづいて、その人が求めているであろう商品情報などを提供する手法はありました。
いわゆる「パーソナライゼーション」と呼ばれるマーケティング手法です。

たとえば、以前に購入した商品のリニューアル情報が、「〇〇様への特別な情報です」といった名前付きで送られてくるとか、ECサイトでスニーカーをいくつか見ていたら、ポップアップ広告で似たようなスニーカーをおすすめされる(=レコメンド機能)などが、従来のパーソナライゼーションの代表的なものです。
ハイパーパーソナライゼーションとは、この手法をさらに進化させたものだと考えてください。
生成AIや機械学習、リアルタイムデータなどの最新技術を活用することで、従来よりもさらに顧客個人の嗜好やニーズを細かく分析し、その人にとって最適にカスタマイズされた情報をピンポイントに届けることが可能になりました。
1-2.従来のパーソナライゼーションとの違い
「でも、従来のパーソナライゼーションでも、それを行っていたんじゃないの?」
そのような疑問を持つ方もいるでしょう。
たしかにそうなのですが、ハイパーパーソナライゼーションは前述したとおり、生成AIを中心とした最新技術によって従来のパーソナライゼーションを進化させたものです。
その違いをひと言でいえば、
・従来のパーソナライゼーション:その顧客が属している「セグメント」向けのアプローチ |
と考えればいいでしょう。
従来は、顧客の性別や年齢といった属性データに、顧客個人との取引履歴(購入履歴、問い合わせ履歴など)を加味して、その人のニーズを予測していました。
それに対してハイパーパーソナライゼーションでは、AI(生成AI含む)を活用して、顧客個人のWeb閲覧履歴、位置情報などをリアルタイムで把握します。
さらに、今いる場所の周辺の天気情報も加味したり、チャットボットとの会話から感情の動きを分析したりもします。
これらのリアルタイムかつパーソナルな情報にもとづくことで、従来よりも顧客のニーズをよりピンポイントに深く理解し、それに合わせた最適な情報提供ができるというわけです。
具体的な違いを表にまとめましたので、以下を見てください。
【ハイパーパーソナライゼーションと従来のパーソナライゼーションの違い】
従来のパーソナライゼーション | ハイパーパーソナライゼーション | |
使用するデータ | ・属性データ:年齢、性別、居住地、収入など | ・リアルタイムデータ:Web閲覧履歴、位置情報、感情の状態など |
活用する技術 | CRMなどの顧客情報管理システム | 生成AIを含むAI、機械学習、CDPなどの高度な顧客情報管理・分析システム |
予測タイミング | 過去のデータにもとづき、現在のニーズや行動を予測 | 過去データに加えてリアルタイムデータを分析、現在だけでなく将来のニーズや行動まで予測 |
カスタマイズの | 顧客が属するセグメント向けにカスタマイズ | 顧客個人向けにカスタマイズ |
提供する情報の | 顧客個人のニーズやタイミングからは多少ずれる可能性あり | 顧客個人のニーズをより的確に、リアルタイムで把握できる |
アプローチの | ・ECサイト閲覧中に、最近よく検索した商品の類似商品をポップアップ広告でレコメンド | ・顧客の位置情報にもとづき、近隣店舗のセール情報やクーポンを配信 |
つまり、ハイパーパーソナライゼーションは、従来よりもより顧客のニーズを正確に、リアルタイムで、細かく把握でき、顧客に特別なカスタマーエクスペリエンスを提供するマーケティング手法なのです。
1-3.ハイパーパーソナライゼーションが重要視される理由
では、なぜ今ハイパーパーソナライゼーションが注目されるようになったのでしょうか?
それは、従来のパーソナライゼーションの効果に限界が見えてきたからです。
まず前述したように、これまではパーソナライゼーションといっても、カスタマイズの粒度は顧客を属性によってセグメントするのが主でした。
年齢、性別、居住地、収入などの属性データをもとに、たとえば「都市部に住む20代女性」で、過去に自社の「商品A」を購入したことがある人たちに対して、Aを改良した「新商品A+」の情報を、「〇〇様」という個別の宛名つきメールで一斉に送る、といった方法です。
ただ、それだと「過去にAを購入したけれど、好みに合わなかった」という人など、実際はニーズのない顧客に対してアプローチしてしまう可能性が一定数生じます。
そのため、コンバージョン率の増加にも限界があるわけです。
また、顧客側にパーソナライゼーションの手法が知られてしまったことも、効果を頭打ちにしていると考えられます。
最近では顧客は、ECサイトで自分の好みに近い商品がレコメンドされたとしても、「これは、自分が最近これに似た商品を検索したから表示されているだけだ」とわかってしまいます。
そうなると、パーソナライゼーションならではの「あなただけの特別感」を感じることがなくなってしまうでしょう。
そこで、もっと本当の意味で顧客個人にフォーカスしたアプローチ、つまりハイパーパーソナライゼーションが求められるようになった、というわけです。
2.ハイパーパーソナライゼーションのしくみ(仕組みと流れ)

では、ハイパーパーソナライゼーションとはどのようなしくみで行われるものなのでしょうか。
図にしてみましたので、以下を見てください。

ハイパーパーソナライゼーションでは、AI技術がプロセス全体に活用されます。
具体的には、まずさまざまなデータを収集します。
従来のパーソナライゼーションでも活用されてきた、顧客の属性データや顧客情報だけでなく、ハイパーパーソナライゼーションの特徴であるリアルタイムの行動データやコンテキストデータなども加味した幅広いデータです。
次に、それらをAIによって分析、セグメントします。
顧客のニーズや要望について、「現在」と「将来」を予測できます。
そして、その予測にもとづいて、顧客個人に向けた広告やレコメンド、メッセージなどのコンテンツを生成します。
従来のパーソナライゼーションに比べて、個人の嗜好やニーズによりピンポイントに刺さるカスタマイズができるのが特徴です。
最後に、生成したコンテンツを用いて、Web広告やECサイトのポップアップ表示、名前入りのメール、チャットボットの回答など、顧客の要望に合った形でアプローチします。
これを受け取った顧客は、「自分にとって最適のタイミング」で「自分の求めている最適な情報」を入手することができるというわけです。
3.ハイパーパーソナライゼーションでできること(活用例)

このようなしくみで顧客個人の嗜好やニーズにアプローチするハイパーパーソナライゼーションですが、ではどのようなアプローチが可能なのでしょうか?
具体的には、以下のような方法が実施されています。
・リアルタイム情報にもとづいたレコメンド |
順番に説明していきましょう。
3-1.リアルタイム情報にもとづいたレコメンド
前述したように、ハイパーパーソナライゼーションの最大の特徴のひとつが、リアルタイムデータの活用です。
顧客の過去の購入履歴などに加えて、いまWeb上で閲覧・購入した商品情報や、GPSによる位置情報、その周辺の天気情報などさまざまな「リアルタイム」のデータを分析、その顧客個人に「いま」求められているであろう広告や情報を配信します。
たとえばカフェチェーンなどでは、顧客の過去の利用履歴に、位置情報と時刻、天気などのコンテキスト情報も加味して、「いまこの瞬間」にその人が求めているであろうメニューをレコメンドすることが可能です。
また、動画配信サービスなら、視聴履歴データをリアルタイムでどんどん更新、さらに「最後まで見た作品」と「途中で視聴をやめた作品」の情報なども加えて分析し、「いまのあなたにおすすめの作品」をレコメンドする、といったケースもあります。
リアルタイムデータを活用することで、顧客のニーズをより詳細に把握し、、最適なタイミングでアプローチすることができるのです。
3-2.WebサイトやアプリのUIをカスタマイズ
ハイパーパーソナライゼーションでは、広告表示だけでなく、WebサイトやアプリのUI(ユーザーインターフェース)自体を、顧客にあわせてカスタマイズすることもできます。
たとえばECサイトでは、その顧客の好みに合った商品を目立たせるように、ランディングページの構成が変わっているのを目にすることがあるでしょう。
あるいは旅行情報サイトなら、過去の利用履歴、検索履歴、居住地、家族構成などの顧客情報に、季節や天候などのデータもかけあわせて、「あなたが次に行きたいであろう旅行」に関するコンテンツが表示されるよう、Webページやアプリの構成をつねに変更することも可能です。
自分の好みやニーズに合った情報が、わかりやすく表示されることで、顧客の購買行動を大きく後押しすることができるでしょう。
3-3.よりパーソナライズされたオファーやメッセージの送信
また、広告やWebページ以外にも、よりパーソナライズされたさまざまなメッセージやオファーを顧客に送信することができます。
代表的なのは、「ダイナミックプライシング」です。
これは、動的価格設定とも呼ばれる手法で、需要と供給のバランスなどの要因をもとに、商品の価格をリアルタイムで変動させることを指します。
ハイパーパーソナライゼーションでは、たとえば利用履歴をもとにロイヤルティの高い顧客に特別割引のクーポンを発行することができるでしょう。
あるいは、旅行サイトで申し込みを迷っている顧客には、すぐに割引価格を提示して申し込みを促すこともできます。
ダイナミックプライシングのほかにも、顧客の位置情報や時刻、天候情報をもとに、最寄り店舗で使える特別クーポンを送信するなど、コンバージョン率アップにつなげることができるのです。
3-4.予測にもとづいたレコメンドやメッセージ送信
ハイパーパーソナライゼーションのもうひとつの特徴として、「いま」の情報をもとに「将来のニーズ」をとらえることができる点が挙げられます。
つまり、それをもとに、顧客が「いま求めているもの」だけでなく、「これから求めるであろうもの」を先回りして提案することができるのです。
たとえば金融機関や保険会社なら、その顧客のライフステージにあわせたニーズを予測し、将来必要になるはずの「学資保険」や「投資商品」などをオファーする、といったアプローチが考えられます。
また、動画配信サービスなどでは、これから配信されるコンテンツの中から「この顧客が見たいであろう作品」を予測して、視聴予約を促すこともできるでしょう。
このような、ニーズを先取りするアプローチは、従来のパーソナライゼーションでは難しい、ハイパーパーソナライゼーションならではの手法といえます。
3-5.ユーザー個別の事情や感情まで分析したチャットボット対応
ハイパーパーソナライゼーションは、カスタマーサービスの領域にも大きな変革をもたらします。
AIが顧客それぞれの細かい事情や背景、さらにはやりとり中のリアルタイムの感情変化なども分析して、最適な対応を可能にするのです。
たとえばチャットボットがよい例です。
これまでは、過去の問い合わせ履歴や、ほかの顧客からのよくある質問などをもとに、顧客の質問に答えていました。
それがハイパーパーソナライゼーションを導入することで、より具体的で的確な回答が可能になります。
進化したAIチャットボットは、オンライン、オフラインあわせた過去のやりとりの履歴、顧客のWeb上での行動履歴、そこから分析した嗜好やニーズなどさまざまなデータをリアルタイムで把握します。
さらに、感情分析技術が搭載されていれば、顧客の入力したテキスト(ボイスボットの場合は会話の音声)から、相手の感情の変化をリアルタイムで認識し、それをふまえて適切な対応をすることも可能です。
これにより、顧客はAIボットから、人間のオペレーターと同様の適切で質の高い対応を受けることができ、顧客満足度の向上につながるでしょう。
4.ハイパーパーソナライゼーションの成功事例

ここまでで、ハイパーパーソナライゼーションとはどんなものか、理解できたのではないでしょうか。
では、実際にハイパーパーソナライゼーションを実施した企業は、どのような成果を得ているのでしょうか?
成功事例をいくつか見ていきましょう。
4-1.動画配信サービス A社:視聴時間の約80%が最適化されたレコメンド機能によるもの
動画配信サービス A社 | |
課題 | 膨大な数の動画コンテンツの中から、視聴者が見たい作品をすぐに見つけられるようにしたい |
施策 | ハイパーパーソナライゼーションによるレコメンド最適化 |
成果 | 総視聴時間のうち約80%がレコメンド経由に |
ハイパーパーソナライゼーションの成功事例としてもっとも有名なもののひとつが、世界的に展開する動画配信サービスA社です。
A社では、膨大なコンテンツを配信していて、その数は定期的に増え続けています。
ユーザーは多くの選択肢を持てる一方で、見たい作品を選ぶのが大変だという課題もありました。
そこでA社が実施したのが、ハイパーパーソナライゼーションによるレコメンドです。
その方法は徹底していて、具体的には以下のようなものでした。
まず、登録ユーザーの視聴履歴だけでなく、アプリ内で何を検索したか、どんな動画をクリックしたか、どれを最後まで視聴して、どれは途中で離脱したか、離脱した場合は何分視聴したか、といったさまざまなデータをトラッキングします。
これらをもとに、ユーザー一人ひとりの「好みのジャンル」を把握し、そのジャンルの中でも「見たいと思われる作品」を優先順位をつけてピックアップし、その結果に従ってUIをその個人に向けてカスタマイズ表示するのです。
また、同じ作品であっても、表示されるサムネイル画像は個人によって異なります。
恋愛映画が好きなユーザーにはロマンティックなシーンを、アクション好きな人には迫力あるシーンを、俳優ファンの人にはその俳優のアップを、といったように、興味を惹きやすいシーンを切り取っています。
これらの施策により、動画が視聴される総時間数のうち約80%はこのレコメンド機能によるものになったそうです。
検索で動画にたどり着くのは残りの20%だけで、多くの人は自分で探す苦労をせずに、好みの動画に出会えるようになりました。
ちなみにA社では、ハイパーパーソナライゼーション施策の一環として、動画を配信する際の画質まで、ユーザーにあわせてカスタマイズしています。
動画を視聴する際のネットワーク状況、クリックから再生開始までどの程度時間がかかったか、どんなデバイスで視聴しているかなどのデータを把握し、環境が安定しているときには高画質で、不安定なときには画質を下げて配信するのです。
そのためユーザーは、快適に視聴できる可能性が高まり、これも視聴時間の増加につながっているようです。
4-2.カフェチェーン B社:独自のAIプラットフォームによるパーソナライズでリピート率や顧客単価がアップ
カフェチェーン B社 | |
課題 | 顧客エンゲージメントを高めたい |
施策 | 独自のAIプラットフォームでハイパーパーソナライゼーションを実施 |
成果 | リピート購入率が大幅に向上、顧客単価もアップ |
こちらも世界的に展開するカフェチェーンのB社の事例です。
B社は、DXを積極的に推進する中で、顧客エンゲージメントを強化してリピート率を向上させたい思いがありました。
そこで導入したのが、ハイパーパーソナライゼーション施策です。
まず、独自のAIプラットフォームを開発しました。
これは、顧客のさまざまなデータを収集、分析して、高度にパーソナライズされた情報を顧客に配信するためのものです。
具体的に活用されるデータは、顧客の購買履歴、来店頻度などに加えて、ハイパーパーソナライゼーションには欠かせない位置情報、時間や天候情報、B社のアプリ内での行動履歴といったリアルタイム情報などです。
これらのデータをもとにAIが分析し、その顧客にとって「いまいちばん適した商品」や「おすすめのクーポン」などを配信します。
たとえば、冷たいドリンクをよく飲む顧客には、暑い日におすすめの冷たいドリンクのレコメンドと、最寄りの店舗で利用できるクーポンを配布する、といったことが可能です。
これにより、顧客は「自分の好みをよく理解してくれている」と感じ、企業へのエンゲージメントを高めます。
その結果、B社ではリピート購入率や顧客単価が向上したそうです。
まさにハイパーパーソナライゼーションがうまく機能した典型的な成功例だといえるでしょう。
5.ハイパーパーソナライゼーションのメリット(導入効果)

ハイパーパーソナライゼーションが企業でどのように活用されているか、イメージが具体的につかめたかと思います。
そこで、「わが社でも取り組んでみたいけれど、わが社の場合どんなメリットがあるのだろう?」と疑問に思う方もいるでしょう。
そこでこの章では、ハイパーパーソナライゼーションによるメリットを説明します。
具体的には以下の5点です。
・カスタマーエクスペリエンスが向上する |
ひとつずつ説明します。
5-1.カスタマーエクスペリエンスが向上する
第一のメリットは、カスタマーエクスペリエンスの向上です。
言い換えれば、これこそがハイパーパーソナライゼーションの大きな目的だと言っていいでしょう。
企業はハイパーパーソナライゼーションによって顧客のリアルタイムデータを把握することで、タッチポイントごとに顧客のニーズや行動をより深く理解できるようになります。
その情報をもとにして顧客にアプローチすることで、顧客一人ひとりが「自分の好みをよく理解してくれている」「大切に扱われている」と感じられ、顧客体験=カスタマーエクスペリエンスはより満足度の高いものになります。
その結果として、リピート率やアップセル率の向上が期待できるのです。
5-2.顧客ロイヤルティが強化される
また、上質なカスタマーエクスペリエンスを得た顧客は、企業に対して顧客ロイヤルティを向上させるでしょう。
従来のパーソナライゼーションでは、セグメントした顧客に情報を送っても、「同じ情報をいろいろな人に送っているんだろうな」と思われてしまうこともありました。
それがハイパーパーソナライゼーションになると、顧客が「いままさに求めているもの・情報」を、最適なタイミングでつねに届けることが可能になります。
そのため顧客は、企業に対する信頼を深め、「この商品はかならずここで買う」という、いわゆるロイヤルカスタマーに育つ可能性が高まるのです。
5-3.マーケティングを効率化できる
ハイパーパーソナライゼーションは、マーケティング施策の効率もアップします。
従来のパーソナライゼーションでは、セグメントした顧客に同じアプローチをしていたので、一定の割合でニーズから外れる顧客が生じていました。
クーポンやキャンペーン情報を送信しても、「興味がない」「前はそれが必要だったけれど、いまはもう必要ない」という顧客には利用されず、無駄打ちになっていたのです。
一方ハイパーパーソナライゼーションでは、顧客のニーズをリアルタイムで的確にとらえることができるため、無駄なアプローチが減ります。
その結果、コンバージョン率やROI(Return on investment=投資利益率)を最大化することができるでしょう。
5-4.コストを削減できる
さらに、ハイパーパーソナライゼーションは、コスト削減にもつながります。
たとえばカスタマーサービスでは、これまでは顧客からの連絡を受けて対応していました。
問い合わせがあればその答えを探して回答し、注文が入れば希望のものを送る、という形です。
この方法では、オペレーターの人件費などのコストが発生します。
一方のハイパーパーソナライゼーションでは、顧客の要望を先回りして予測し、こちらから「そろそろこの商品が必要ではないですか?」といったメッセージを送信するなど、アプローチすることができます。
問い合わせに対しても、あらかじめ「想定される質問」をAIが用意しておくことで、顧客はチャットボットやFAQページで自己解決をはかることが可能です。
つまり、自動化できることはAIが行うため、人的リソースなどのコストを減らすことができるというわけです。
5-5.競合優位性を得られる
最後のメリットは、競合優位性です。
DXの推進や生成AIの登場などにより、従来型のパーソナライゼーションを導入する企業は増えているでしょう。
「競合するA社もB社も、みんなパーソナライゼーションを行っている」となれば、顧客側では特別感を得られなくなり、その効果は薄れてしまいます。
そこで、競合に先駆けてハイパーパーソナライゼーションに踏み切れば、他社に比べて顧客のニーズをより正確にとらえたアプローチが可能になります。
顧客側も、「ほかの会社は自分のニーズと少しずれているけれど、この会社だけは本当にほしい情報を絶妙なタイミングで提供してくれる」と感じ、その企業を他社と差別化して認識するようになるでしょう。
その結果、リピート利用やアップセルにつながったり、顧客満足度、顧客ロイヤルティが向上したりといった効果が得られるというわけです。
6.ハイパーパーソナライゼーションの注意点

このように、企業にとってさまざまなメリットがあるハイパーパーソナライゼーションですが、取り組むにあたってはいくつかの注意点があります。
それは、以下の3点です。
・プライバシーとセキュリティに配慮する必要がある |
説明しますので、導入の際にはかならず留意してください。
6-1.プライバシーとセキュリティに配慮する必要がある
ひとつ目の注意点は、プライバシーとセキュリティです。
ハイパーパーソナライゼーションを実施するにあたっては、顧客のさまざまな個人情報を収集、活用する必要があります。
属性データだけでなく、個人の嗜好や収入、金融情報、位置情報といった、非常に機密性の高い情報も多く含まれるでしょう。
そのため、データを扱うに際してのプライバシーポリシーの設定と、情報漏洩を防ぐ強固なセキュリティ体制が必要不可欠です。
ときどき、企業から個人情報が流出したというニュースが出ることがありますが、そうなると企業の信頼は大きく損なわれ、顧客離れにもつながってしまいます。
そのようなことがないよう、プライバシーとセキュリティには十分な配慮をしてください。
6-2.高度AI人材を確保しなければならない
また、ハイパーパーソナライゼーションを成功させるには、高度AI人材が必要です。
ここまで説明してきたように、ハイパーパーソナライゼーションはAI技術がなければ実現できません。
ということは、AIに関して高度な技術と知見、経験をもったIT人材をアサインする必要があるということです。
残念ながら、現在の日本ではAIを含むいわゆる「先端IT人材」は不足していて、確保するのに苦戦している企業も多いようです。
また、自社で教育、育成できる体制が整っていない、時間もないという企業もあるでしょう。
そのため、ハイパーパーソナライゼーションの実施を決めたらすぐに人材確保に着手するか、最初は外部の専門家に依頼するなど、あらかじめ対策をしておくことが重要です。
6-3.ある程度のコストを確保する必要がある
さらに、ハイパーパーソナライゼーションにはそれなりのコストが発生します。
というのも、ハイパーパーソナライゼーションは膨大なデータをAIで分析、活用するため、まずAIプラットフォームの導入が不可欠です。
もし、これまで顧客情報などのデータをCRMやMAなどのツールで管理していたのであれば、それらのデータを統合して一元管理する必要もあるため、そこにもコストがかかるでしょう。
前項で説明した、高度AI人材の人件費も小さくはありません。
これらのコストをかけてもなお、ハイパーパーソナライゼーションによる成果が得られるのか、ROI=投資対効果を試算したうえで導入計画を立てる必要があるでしょう。
7.ハイパーパーソナライゼーションが向いている企業・向かない企業

さて、ここまでハイパーパーソナライゼーションについてさまざまな角度から説明してきました。
ただ、どんなマーケティング手法か、どのようなメリットがあるのかを理解したうえで、「結局、わが社では導入すべきなのかどうか?」と判断に迷っている方も多いのではないでしょうか。
そこで最後に、ハイパーパーソナライゼーションが向いている企業、向いていない企業について説明しておきましょう。
まずは以下の表に簡単にまとめましたので、見てください。
ハイパーパーソナライゼーションが | ・顧客データが集まりやすい企業 |
ハイパーパーソナライゼーションが | ・顧客データの収集が難しい企業 |
7-1.ハイパーパーソナライゼーションが向いている企業
まず、ハイパーパーソナライゼーションが向いているのは、顧客データが集まりやすい企業です。
たとえば、以下のようなものが挙げられます。
・小売業やECサイト:ECモール、アパレル、飲食など |
前述したように、ハイパーパーソナライゼーションはさまざまなデータの活用が前提になっています。
中でも、顧客データを収集することが欠かせません。
その点、上記の企業・事業であれば、利用の際にかならず個人情報の提供を受けますので、データ収集が容易です。
また、利用中の顧客にアンケートなどを実施して、データを追加収集することもできるでしょう。
また、これらの企業は、ハイパーパーソナライゼーションが成果につながりやすいともいえます。
個人の好みやライフスタイルに深く関わるため、「あなただけの情報」に対するニーズが高いためです。
ECであれば、顧客が「これから求めるであろう商品」を先取りしてレコメンドする、金融であれば、ライフスタイルに沿った金融商品を早めに提案するといったアプローチが可能です。
サブスクリプションサービスなら、ユーザーの好みに合った作品をレコメンドすることで、利用率が上がるでしょう。
ヘルスケアは、個人の健康情報をもとに、ダイエット方法やレシピの提案など、さまざまな提案をすることで、ユーザー満足度の向上がはかれます。
このように、「個人情報が集まりやすく、個人のニーズに応えることが期待されている」事業を行っている企業は、ぜひハイパーパーソナライゼーションを検討してみてください。
7-2.ハイパーパーソナライゼーションが向いていない企業
反対に、ハイパーパーソナライゼーションが向いていないのは、以下のような企業です。
・顧客データの収集が難しい企業: BtoB企業 など |
まず、顧客データの収集が難しい企業であれば、ハイパーパーソナライゼーションの実施も難しいといえます。
たとえば、BtoB企業は、取引先のリアルタイムデータを把握するのは困難です。
それよりも、営業のコミュニケーションでニーズにこたえていくほうが効率的でしょう。
また、病院など個人情報の取り扱いが法的に規制されている場合も、ハイパーパーソナライゼーションには向きません。
個人データは豊富に集まってきますが、法律の範囲内ではそれらの活用にも制限がかかるためです。
さらに、扱っている商材が他社と差別化しづらい企業も、ハイパーパーソナライゼーションの導入は難しいでしょう。
たとえば、通信事業や電気、ガス会社などです。
競合との価格競争はできるかもしれませんが、そもそも商材自体にバリエーションが少ないので、「あなたにピッタリなものはこれ」と細かくレコメンドするような余地はあまりないのです。
このような企業・事業では、ハイパーパーソナライゼーションの導入を検討する必要はないといっていいでしょう。
ハイパーパーソナライゼーションの導入をご検討中の方は、 |
トランスコスモスでは、ハイパーパーソナライゼーションをはじめ、カスタマーエクスペリエンスを向上させるさまざまなソリューションをご提供しています。 ・顧客エンゲージメントを高めたい などの課題に応じた最適な施策設計から運用までご支援します。 |
まとめ
いかがでしたか?
ハイパーパーソナライゼーションについて理解が深まったのではないでしょうか。では最後にあらためて、記事の要点をまとめておきます。
◎ハイパーパーソナライゼーションとは、AIを活用して、顧客一人ひとりに最適なアプローチをするマーケティング手法
◎従来のパーソナライゼーションとの違いは、
・プロセス全体にAIを活用する |
◎ハイパーパーソナライゼーションでできることは、
・リアルタイム情報にもとづいたレコメンド |
◎ハイパーパーソナライゼーションのメリットは、
・カスタマーエクスペリエンスが向上する |
◎ハイパーパーソナライゼーションの注意点は、
・プライバシーとセキュリティに配慮する必要がある |
◎ハイパーパーソナライゼーションが向いている企業・向かない企業は、
ハイパーパーソナライゼーションが | ・顧客データが集まりやすい企業 |
ハイパーパーソナライゼーションが | ・顧客データの収集が難しい企業 |
以上を踏まえて、あなたの会社がハイパーパーソナライゼーションを積極的に実施し、最高のカスタマーエクスペリエンスを実現できるようご参考になれば幸いです。
