
「コールフローってどんな意味の言葉だろう?」
コールフローとは、顧客からの入電内容に応じて「適切な問い合わせ先」に振り分けるための「フロー図」のことです。
主に、コンタクトセンター(コールセンター)で用いられる「専門用語」です。
ポイントを押さえたコールフローを描けると「顧客満足度の向上」や「オペレーターの配置最適化」につながりますが、ポイントを外してしまうと「あふれ呼」や「企業のイメージダウン」「顧客離れ」につながる恐れがあるため、注意が必要です。
そこで、以下について解説します。
本記事で分かること |
・コールフローとは何か? |
「顧客満足度の向上」や「オペレーターの配置最適化」を行いたい方に、おすすめの記事です。
それでは早速、見ていきましょう。
1.コールフローとは何か?
「コールフローとは何か」について、以下3つのポイントで解説します。
・コールフローの概要 |
1つずつ、見ていきましょう。
1-1.コールフローの概要
冒頭でご説明したとおり、コールフローの定義は以下の通りです。
コールフローの定義 |
顧客からの「入電内容」に応じて、「適切な問い合わせ先」に振り分けるまでのフロー図 |
例えば、携帯電話会社に電話を架けた場合、自動ガイダンスの呼びかけに応じたプッシュ操作によって、以下のように振り分けられるとします。
なお、同時に何人の顧客応対をするのか、営業時間外のアナウンスをどうするのか、オペレーターが埋まっているときの待機をどうするのか、といったこともコールフローで決めることを覚えておきましょう。
コールフローを描く際には「IVR」と「ACD」の2つの制御システムが関わります。
それぞれ、どのようなシステムなのか理解しておくと、コールフローをスムーズに描けます。
次項でご紹介しますので、コールフローを描きたい方は、ぜひ押さえておきましょう。
なぜ、コールフローを設計するべきなのか? 顧客の問い合わせ内容(=悩みの種類)は多岐にわたります。 例えば携帯電話会社の場合、新規契約・料金・修理・解約・契約内容の確認など、数えきれないほど、問い合わせの種類があります。 そうした問い合わせカテゴリーに付随する知識を、オペレーターがすべて身につけるのは、効率的ではありません。 当然のことながら、「広く浅く」ではなく「狭く深く」知識を身につけさせた方が、顧客の問題解決率が高まります。 つまり「顧客満足度の向上」や「スピーディな問題解決の実現」の観点から、「この分野の問い合わせは、このオペレーターグループに振り分ける」といったことを実現できる「コールフローの設計」が求められているのです。 |
1-2.コールフローに関わる制御システム 1:IVR
コールフローに関わる制御システムの一つが「IVR(Interactive Voice Response)」です。「自動音声応答機能」とも呼ばれています。
IVRは、自動音声ガイダンスが、オペレーターの代わりに「一次対応」を行うシステムです。
IVRを活用すれば、顧客の「契約者情報」や「問い合わせ内容」を事前に把握したうえで、オペレーターが応対できます。そのため、顧客が抱える問題を「スピーディかつ確実に」解決することができます。
例えば、携帯電話会社の場合。以下のような機能は、全て「IVR」の機能によるものです。
IVRの機能例 |
●「問い合わせ内容」を振り分ける ●「契約者情報」を確認する ●電話が混み合っている場合 |
「自動ガイダンスによるプッシュ操作によって問い合わせ内容を振り分けるシステム=IVR」だと覚えておきましょう。
IVRについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せて、ご覧ください。
1-3.コールフローに関わる制御システム 2:ACD
コールフローに関わる、もう一つの制御システムが「ACD(Automatic Call Distribution)」です。「着信呼自動分配装置」とも呼ばれています。
ACDは、顧客のプッシュ操作によって振り分けられた「問い合わせ内容」に応じて、適切なオペレーターに振り分けるシステムです。
ACDシステムを活用することで「オペレーターの有効活用(=対応件数の平準化)」を実現できます。
ACDの振り分け例 |
●「新規契約」に関する問い合わせの場合 ●「電話対応を行っていないオペレーター」がいる場合 ●「対応スキルが求められる」高度な問い合わせの場合 |
「問い合わせ内容に応じて、最適なオペレーターに顧客をつなぐシステム=ACD」だと覚えておきましょう。
先ほどのコールフローに照らし合わせると、IVRとACDが担うのは以下の部分となります。
IVRとACDの機能を把握したうえで、コールフローを描いてみましょう。
ACDについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せて、ご覧ください。
2.コールフローを設計するメリット・注意点
ここまでの記事を通して、コールフローの概要や、コールフローの設計にかかわる制御システムについて、理解が深まったのではないでしょうか。
続きまして、コールフローを設計する「メリット&注意点」を解説します。
・メリット:顧客満足度が向上する |
2-1.メリット:顧客満足度が向上する
コールフローを設計する最大のメリットは「顧客満足度の向上」です。
顧客は、自動ガイダンスから流れる音声に従ってプッシュ操作を行うだけで「相応の知識を持ったオペレーター」と対話できるため、スピーディかつ的確に問題解決ができます。
コールフローを設計するメリット |
●IVRによる「自動ガイダンス」 ●ACDによる「入電の振り分け」 |
コールフローがないコンタクトセンター(コールセンター)の場合(=IVRやACDなどの制御システムを用いない場合)、オペレーターが、顧客の「問い合わせ意図」を聞き出すことから、スタートしなければなりません。
また、オペレーターは、あらゆる問い合わせに対して、知識を身につけ、対応をしなければならなくなります。その結果、オペレーターの専門性やスキルが磨かれにくくなります。
「問い合わせ対応の効率化」と「オペレーターの問題解決率の向上」の観点で、コールフローに基づいたコンタクトセンター運用は必須のものといえるでしょう。
2-2.注意点:離脱につながる可能性がある
一方、コールフローを設計する際の注意点は「離脱につながる可能性がある」ことです。
IVRを用いれば、ガイダンス操作によって「顧客の問い合わせ内容」を絞り込むことができますが、プッシュ操作があまりにも多すぎると
「一体、いつになったらオペレーターにつながる?」と、イライラしてしまうことがあります。顧客が多忙な場合にはなおさらです。
その結果、ガイダンス操作の途中で、電話を切られてしまうこともあります。
こうしたネガティブな「ユーザー体験」が積み重なると「顧客離れ」を引き起こす可能性が高まります。
コールフローを設計する際には「 最小限のガイダンス操作 」にとどめ、スムーズに適切なオペレーターへつなぐことで、離脱率を下げましょう。
顧客離れを回避する「工夫例」 |
●「個人/法人」で、それぞれ電話番号を用意する |
3.コールフローを作成する5ステップ
コールフローの重要性、必要性が分かったところで、では実際にどのように作成すればいいのでしょうか?
具体的には、以下の5ステップに沿って作成しましょう。
1)コンタクトセンター(コールセンター)の対応内容や作業を洗い出す |
3-1.コンタクトセンター(コールセンター)の対応内容や作業を洗い出す
まず最初に、自分のコンタクトセンターではどのような対応が必要か、それに伴って、どのような作業が生じるのかを細かく洗い出しましょう。
同じインバウンドのコンタクトセンターといっても、応対する内容はさまざまです。
商品の注文受付専門のコンタクトセンターなのか、テクニカルサポートなのか、問い合わせから苦情までさまざまな内容を受け付けているのかによって、コールフローは異なります。
自分のコンタクトセンターへの入電は、どのようなものがあるか、それに対してどのように対応しているか、エスカレーションの内容、さらにそれぞれの場合に行うべき作業(注文・顧客情報・応対記録の入力など)を、抜け漏れのないようにリストアップしましょう。
3-2.対応や作業を時系列に沿って整理する
次に、洗い出した対応や作業を、それぞれ時系列に沿って整理しましょう。
例えば、商品注文の場合、まずどのようなトークをして、それと同時に顧客情報を参照して、次に注文を聞いて、注文画面に入力し、口頭で一度確認し……といったようにです。
実際には、このようにひとつの流れでは進まずに、途中で「注文だけの場合」「別の商品の注文もあわせて受ける場合」「注文のあとに製品の使い方問い合わせがあった場合」など、応対内容が分岐することも多いでしょう。
それらの分岐も抜け漏れのないように、分かりやすい流れにまとめましょう。
3-3.振り分ける窓口を整理、用意する
振り分ける窓口を複数に分ける場合は、どのような窓口を用意するのか、どこでどのような対応を担当するのかも整理が必要です。
「3-1.コンタクトセンター(コールセンター)の対応内容や作業を洗い出す」でリストアップした対応のうち、商品の契約に関する問い合わせは注文受付へ、使い方の問い合わせはカスタマーサポートへ、そこで故障と判断したら修理受付へ、といったように振り分けます。
その際に、適切な振り分け先がない場合は、新たに窓口を増やす必要があるかもしれません。
顧客が問い合わせしてきた際に、誰が対応すればいいのか分からずにたらい回しになってしまうことがないよう、全てのケースに対して正しく対応できる窓口を割り当てましょう。
3-4.コールフロー図を作成する
ここまで整理できたら、いよいよコールフロー図を作成します。
コールフロー図は、フローチャートや表の形に落とし込むのが一般的です。
【フローチャート】
基本的には上から下へ時系列に沿って対応と作業を並べます。
その際に、対応と作業ではワクの形を変える、対応内容の種類別に色分けするなどの工夫をすると、視覚的にも分かりやすくなるでしょう。
また、オペレーターが対応するケースだけでなく、営業時間外の入電にはどのように対応するか(自動音声ガイダンスが流れる、希望者には連絡先を残してもらって翌営業日にコールバックするなど)や、転送先と転送方法なども記載しておくといいでしょう。
3-5.運用しながら改善する
コールフローは、作成して終わりではありません。
実際に運用してみると、「このケースの対応が抜けていた」「ここでこの作業を行うと、余計な時間がかかってしまう」など、不備や不都合が出てくるものです。
そこで、運用しながら改善を繰り返していってください。
現場のオペレーターやスーパーバイザーから定期的にアンケートをとったり、社内掲示板などにいつでも思いついたことを書き込めるようにしたりと、改善点を吸い上げられるような仕組みを作るのもいいでしょう。
運用実態に沿った改善を繰り返すことで、より顧客のニーズにかなったコールフローになり、顧客満足度の向上につながるはずです。
4.コールフロー図の具体例
5.コールフローを設計する際のポイント3つ
コールフローにおけるメリットと注意点について、理解が深まったことと思います。
そのうえで「コールフローを設計したい」という方に向けて、コールフローを設計する際の3つのポイントを解説します。
・「階層」と「選択肢」を少なくする |
5-1.「階層」と「選択肢」を少なくする
コールフローを設計する際には「オペレーターにたどり着くまでの階層」と「プッシュ操作の選択肢」 をできるだけ少なくしましょう。
たとえば、以下の3つのコールフローを比べた場合、どれが、もっとも顧客にとってストレスが少ないでしょうか。ちょっと考えてみましょう。
3つのコールフローの違い | |||
パターン | 特徴 | 階層 | 選択肢(最大) |
パターン1 | 階層も選択肢も標準的 | 3 | 3 |
パターン2 | 選択肢は少ないが階層が深い | 5 | 2 |
パターン3 | 階層は浅いが選択肢は多い | 3 | 4 |
選択肢が少ないパターン2は、一見、顧客にとってストレスが少ないように思えますが、階層が深いため、いつまでもオペレーターと話せません。
また、顧客に質問を投げかけつつ、NOがでたらオペレーターに回すフローです。質問が何度も出てくることでストレスを感じるか、最初からオペレーターと会話することを選択されてしまうことになりかねません。
よって、顧客はストレスを感じやすく、使われにくいコールフローです。そのため「NGなパターン」です。
一方、パターン3は、階層が浅いですが、選択肢の候補数が多いです。候補数が多すぎると、細かくオペレーターのグループが分けられてしまい、自分が問い合わせしたい内容に適したオペレーターにつながらないケースが発生しやすくなります。
こちらもコールフローとしては「NGなパターン」です。
よって、正解はパターン1です。階層も選択肢もバランスが取れているため、顧客のストレスを最小化できる優れたコールフローです。
パターン1のように、階層とプッシュ候補数のバランスのよいコールフローを設計しましょう。
どうしても、階層が増えたり、プッシュ候補の選択肢が増えてしまう場合には「2-2.注意点:離脱につながる可能性がある」でお伝えしたとおり、電話番号そのものを増やすのがベストな解決策です。
5-2.セリフは短く簡潔にする
先述のとおり、コールフローを設計する際には、顧客のストレスを最小化することが大切です。
顧客は、電話で問い合わせを行う時点で、私たちが想像する以上に、「大きなストレス」を抱えていることを肝に銘じておきましょう。
ストレスを軽減するうえで、心がけてほしいのが「セリフの最短化」です。
できるだけスピーディにオペレーターと会話できるよう、一文一文において「長いセリフ」を用いないでください。
オープニングも短くしてください。たとえば、以下のような音声が流れてきたら、あなたはどう感じるでしょうか。
「お電話ありがとうございます。〇〇株式会社です。この会話の録音は通話品質の向上を目的に、録音させていただいております。あらかじめ、ご了承ください。なお、当社では、〇〇のキャンペーンを行っております。この商品は〇〇なお客様におすすめしております。気になる方は〇〇-〇〇-〇〇までお問い合わせください。それでは、本日のお問い合わせ内容を…」
問い合わせをしたいのに、宣伝を聴かされるなどして、なかなかオペレーターと話せないと、顧客は大きなストレスを感じます。
「いつになったら、オペレーターと話せるんだ!」と怒りにつながってしまう場合もあるでしょう。ですから、オープニングも含めて、短く簡潔なセリフ作成を心がけてください。
5-3.「その他の問い合わせ」の項目を設ける
問い合わせ内容のガイダンス候補は「申し込み」「修理」「契約内容の確認」などの定型カテゴリーだけでなく、「その他の問い合わせ」の項目も設けるようにしましょう。
なぜならば、顧客の問い合わせ内容が、カテゴリー外である場合もあるからです。また「どのカテゴリーを選べばよいのか分からない」という場合もあるからです。
カテゴリー外の場合や、どのカテゴリーを選べばよいか分からない場合。顧客はやむを得ず、いずれかの番号をプッシュしますが、「たらい回しにされるかもしれない」という不安を抱きます。実際に、たらい回しにしてしまう可能性も高いです。
忙しいのに、なかなか問題が解決されないとなれば、顧客の不満は頂点に達します。「顧客離れ」につながることもあるでしょう。
そのため、「その他の問い合わせ」を設け、問い合わせ内容の切り分けを行い、担当部署につなげるオペレーターグループを用意しておきましょう。
そもそも、メールフォームを使って問い合わせず、電話で問い合わせる時点で、顧客は「オペレーターとの対話を通じて、確実に問題解決をしたい」と考えています。
この心理を踏まえると「その他の問い合わせ」は、設けておくべきカテゴリーだということが、理解できるのではないかと思います。
顧客満足度を高めるためにも「その他の問い合わせ」は、必ず設けておきましょう。
6.コンタクトセンター(コールセンター)の業務設計は「実績豊富なプロ」に任せよう
ここまでの記事を通して、
・コールフローを設計するべきか |
について、理解できたのではないでしょうか。
コールフローの設計は電話チャネルでの顧客接点を考えるうえで初めに設計すべき箇所であり、「顧客との信頼関係を左右する重要なファクター」と考えれば、コールフローの設計は、慎重を期したいものです。
本記事で紹介した内容の知識だけでなく、通信インフラ事業者のサービス内容知識やPBX、IVR、ACDなどの制御システムに関する知識、コンタクトセンター(コールセンター)運用経験を身に着けたうえで設計するのが良いでしょう。
「どのように設計すればいいかアドバイスしてほしい」「コールフローの設計から運用まで含めてやってもらいたい」という方は、トランスコスモスまでご相談ください。
トランスコスモスでは、大手企業や官公庁などの大規模コンタクトセンターの運営経験のあるプロが、貴社が抱える課題をヒアリング・徹底調査したうえで、ベストな解決策をご提示いたします。
ご興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
いかがでしたか。「コールフロー」に関する疑問が解消できたのではないでしょうか。
ここで、本記事のまとめを入れます。
●コールフローとは何か?
顧客からの「入電内容」に応じて、振り分けるフロー図のこと
●コールフローに関わる制御システム 1:IVR
IVRは、自動音声ガイダンスが、オペレーターの代わりに「一次対応」を行うシステム
●コールフローに関わる制御システム 2:ACD
ACDは、顧客のプッシュ操作によって振り分けられた「問い合わせ内容」に応じて、適切なオペレーターに振り分けるシステム
●コールフローを設計するメリット・注意点
・メリット:顧客満足度が向上する |
●コールフローを設計する際のポイント3つ
・「階層」と「選択肢」を少なくする |
本記事が、コールフローについて知りたい方のお力になれましたら嬉しいです。