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コールセンターのAHTとは?計算方法・目安・短縮のコツをわかりやすく解説

この記事で学べること

AHT (平均処理時間)とは1件あたりの問い合わせ対応にかかる平均時間を示す指標のことで、適切に管理・改善することで顧客満足度と業務効率の向上に役立ちます。

    • AHTの計算方法: AHT=ATT(平均通話時間)+ACW(平均後処理時間)
    • 最新の業界平均(2024年版):ATT(平均通話時間)が6.75分、ACW(平均後処理時間)が4.8分で、AHTは約11.55分。
    • AHTを改善するメリット:顧客側では対応時間の短縮により、迅速かつ丁寧なサービス提供が期待できる。企業側では、業務効率の向上に伴い、人件費や運用コストの削減が可能になる。
    • AHTを短縮する方法:オペレーターのスキルアップ、業務フロー・マニュアルの見直し、後処理の自動化などがある。

コールセンターのAHTとは何を表す数値なのか?」
「コールセンターのAHTはどのくらいが適切なのか?」

コンタクトセンター(コールセンター)業務に携わっている方の中には、このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

コンタクトセンター/コールセンター用語には、AHTのようにアルファベット3文字で表記されるものが多く、初めて業務に関わる方にとっては混乱しやすいのが現状です。

AHT(Average Handling Time/平均処理時間)とは、顧客からの問い合わせに対して、1件あたりの対応にかかる平均時間を示す指標です。

具体的には、以下の2つを合計して算出できます。

・ATT(Average Talk Time/平均通話時間)
・ACW(After Call Work/平均後処理時間)

コンタクトセンター(コールセンター)のAHTの計算方法

AHTが短ければ、より多くの問い合わせに対応できるため、業務効率の高いと言えますただし、AHTを短縮することだけに注力すると、応対品質の低下を招く可能性があります。顧客満足度を維持しながら、適切なAHTを設定・改善することが重要です。

この記事を読むことで、AHTの基本的な意味から、妥当な数値の判断基準、改善施策までを理解できます。コンタクトセンター業務の効率化と応対品質向上に役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

1.コンタクトセンター(コールセンター)のAHTとは?ATT+ACWで算出される平均処理時間

コンタクトセンター業務において、AHT(Average Handling Time/平均処理時間)は、生産性を測る非常に重要な指標です。

AHTとは、1件の問い合わせ対応にかかる平均時間を示すもので、以下の2つの要素で構成されています:

ATT(Average Talk Time/平均通話時間):オペレーターが顧客と通話している時間の平均(保留時間含む)
ACW(After Call Work/平均後処理時間):顧客と通話が終わった後の処理時間の平均

コンタクトセンターにおけるATT、ACW、AHTの構成

AHTを短縮することで、業務効率の向上やコスト削減が期待できます。
しかし、短縮しすぎると応対品質の低下やオペレーターの負担増加につながるため、注意が必要です。

顧客満足度への影響
AHT短縮を意識しすぎると、オペレーターが必要な情報を十分に伝えられず、顧客が「適切な対応を受けられなかった」と感じることがあり、結果として、顧客満足度の低下につながる恐れがあります。

従業員満足度への影響
オペレーターが常に通話時間や後処理時間を気にして急かされるような環境では、ストレスやミスの増加、さらには離職率の上昇にもつながりかねません。

AHTはコンタクトセンターの生産性を測る重要な指標ですが、応対品質とのバランスを取ることが不可欠です。顧客満足度・従業員満足度の両方を考慮しながら、適切なAHTの設定と改善を行うことが、持続可能な業務運営につながります。

2.コンタクトセンター(コールセンター)のAHTの計算方法

コンタクトセンター(コールセンター)のAHTの計算方法

AHTは、以下の2つの要素を合計することで算出されます。

ATT(Average Talk Time/平均通話時間)= 総通話時間 ÷  総処理件数

ACW(After Call Work/平均後処理時間)= 総後処理時間 ÷ 総処理件数

したがって、以下の計算式になります。
AHT = ATT + ACW

●AHTの計算例①:平均値が分かっている場合
例えば、ATT(平均通話時間):300秒(5分)、ACW(平均後処理時間):120秒(2分)の場合、以下のように計算します。

AHT=300秒+120秒=420秒(7分)

●AHTの計算例②:合計時間から求める場合
平均値が取れていない場合は、以下の式で算出できます。
AHT =(通話時間の合計 + 後処理時間の合計)÷ 処理件数

例えば、通話時間の合計:2400秒、後処理時間の合計:1200秒、処理件数:10件の場合、以下のように計算します。

AHT=(2400秒+1200秒)÷10件=360秒(6分)

このように、AHTは業務効率や生産性を測るための基本指標として活用されます。

3.コンタクトセンターにおけるAHTの平均値は「約12分」

前章で紹介したように、AHT(平均処理時間)は短すぎると顧客満足度・従業員満足度が低下し、長すぎると業務効率が悪化します。
そのため、応対品質と生産性のバランスが取れた適切なAHTの目安を知ることが重要です。

株式会社リックテレコムが発行する『コールセンター白書2024』によると、以下のような平均値が報告されています。

ATT(平均通話時間):6.75分
ACW(平均後処理時間):4.8分

平均通話時間と平均後処理時間を表したグラフ

参考:株式会社リックテレコム「コールセンター白書2024

これらを合計すると、AHTの平均値は約11.55分と推定されます。

ただし、AHTの適正値は業種や対応内容、チャネル(電話・チャットなど)によって異なります。テクニカルサポートや保険業務などは1件あたりの対応時間が長くなる傾向があります。

そのため、自社の業務特性に合わせてAHTの目標値を設定し、定期的に見直すことが重要です。

4.コンタクトセンター(コールセンター)のAHTの実態把握には平均値だけでなく中央値も重要

AHT(平均処理時間)は、通話1件あたりの対応時間の平均値ですが、実態を正確に把握するためには「平均値」だけでなく「中央値」にも注目することが重要です。

なぜなら、平均値は極端な数値に引っ張られやすく、実態を正しく反映しない場合があります。

平均値と中央値の違いを具体例で解説
以下は、5人のオペレーターの処理時間の例です。

オペレーター

A

B

C

D

E

処理時間

5分

4分

6分

5分

15分

この場合の平均値(AHT)は(5+4+6+5+15)÷ 5 = 7分

しかし、A〜Dの4人は5分前後で処理しており、Eさんの極端な数値が平均を押し上げています。

一方、中央値は「5分」となり、より実態に近い指標と言えます。

オペレーター

B

A

D

C

E

処理時間

4分

5分

5分

6分

15分

※処理時間を昇順に並べ替え

◎AHTの分析にはCPHとの併用が効果的
AHTの実態を把握するには、CPH(Call Per Hour)=1時間あたりの処理件数も併せて確認するのがおすすめです。

CPHが高いほど、オペレーターが効率的に顧客対応できていることを示します。
一方で、AHTが長くCPHが低い場合は、対応に時間がかかっているオペレーターを特定し、支援や教育を行う判断材料になります。

■CPHの計算式
CPH = 総処理件数 ÷ 総稼働時間

この指標を活用することで、センター全体の生産性向上やAHTの底上げが期待できます。
詳しくは関連記事をご覧ください。

5.コンタクトセンターでAHTを計測・改善するメリット

AHT(平均処理時間)は、ただ測定するだけでなく、継続的に改善することで顧客・企業双方にメリットをもたらします。
ここでは、顧客側・企業側それぞれの視点からのメリットを詳しく解説します。

【顧客側のメリット】納得のいく対応で満足度が向上
【企業側のメリット】業務効率の向上とコスト削減

5-1.【顧客側のメリット】納得のいく対応で満足度が向上

AHTが適切に管理・改善されることで、顧客は以下のようなメリットがあります。

・待ち時間の短縮
1件あたりの処理時間が短くなれば、より多くの問い合わせに対応でき、待ち時間が減少します。
・丁寧な対応の維持
通話時間の極端な短縮を避けることで、顧客の課題や声をしっかりとヒアリング・解決する時間が確保されます。

「すぐにつながって、丁寧に対応してもらえる」体験が実現し、顧客満足度が向上します。

5-2.【企業側のメリット】業務効率の向上とコスト削減

企業にとっても、AHTの計測・改善には以下のようなメリットがあります。

・対応時間の可視化
AHTを定期的に計測することで、対応時間の傾向や課題を把握しやすくなります。
・他チャネルとの比較
電話・チャット・メールなど、チャネルごとの処理時間を比較し、最適な運用が可能になります。
・生産性の向上
AHTを短縮することで、応対件数が増え、少人数でも効率的な運営が可能になります。

例えば、1時間あたりの対応件数を比較してみましょう。

1.AHTが6分のオペレーターが5人いる場合
 1人あたりの対応件数:60分 ÷ 6分 = 10件
 5人で対応できる件数:10件 × 5人 = 50件

2.AHTを5分に短縮し、オペレーター4人で対応した場合
 1人あたりの対応件数:60分 ÷ 5分 = 12件
 4人で対応できる件数:12件 × 4人 = 48件

このように、AHTを短縮することで、ほぼ1人分の人件費を削減できる計算となり、通信費や設備費などの運用コストの削減にもつながります。

AHTの改善は、顧客満足度と業務効率の向上の両立を実現するための重要な取り組みです。

6.コンタクトセンター(コールセンター)のAHTを短縮する5つの方法

AHT(平均処理時間)は、単に短ければ良いというものではありません。
顧客満足度・従業員満足度とのバランスを考慮しながら、適切な範囲での短縮を目指すことが重要です。

ここでは、AHTを短縮するための具体的な5つの方法をご紹介します。

AHTを短縮する5つの方法

6-1.オペレーターのスキルアップを図る

オペレーターの顧客対応力が向上すれば、ATT (平均通話時間)とACW(平均後処理時間)の両方を短縮することが可能です。

具体的な取り組み例
・顧客対応のモニタリングとフィードバック
・ベストプラクティス音声の共有
・定期的なロールプレイ研修

その他に、商品知識や問題解決能力、タイピングスキルなどを強化することで、スムーズな顧客対応が可能になり、AHTの短縮に直結します。

6-2.業務フロー・マニュアルの見直し

業務フローやマニュアルの最適化も、AHT短縮に効果的な施策です。

改善ポイント
・FAQやマニュアル、トークスクリプトの整備
・本人確認やヒアリング項目の簡素化

・IVR(自動音声応答システム)の導入

IVRを活用すれば、顧客の問い合わせ内容に応じて適切な担当者へ自動振り分けが可能になり、通話時間の削減につながります。

IVRによって適切な担当者へ自動的に振り分けが行われているイメージ

詳しくは関連記事をご覧ください。

6-3.応対サポートツールを活用する

CTI(Computer Telephony Integration)などの応対サポートツールを導入することで、通話中に必要な情報を即座に表示でき、対応のスピードと正確性が向上します。

主な機能
・ポップアップによる顧客情報の表示
・CRM連携による通話内容の即時参照

これにより、オペレーターの負担を軽減しながら、AHTの短縮を実現できます。

6-4.後処理の自動化を進める

音声認識やAI要約ツールを活用すれば、応対履歴の作成を自動化でき、ACW(後処理時間)の大幅な短縮が期待できます。

主な機能
・通話内容の自動テキスト化
・要点抽出による自動要約
・CRMへの自動登録

これにより、オペレーターは確認・修正のみで済むようになり、業務効率が大幅に向上します。

6-5.目標値を設定して共有する

AHT短縮を成功させるには、明確な目標値の設定とチーム全体での共有が不可欠です。

設定方法の例
・トークスクリプトをもとに理想的な通話時間をシミュレーション
・通話時間や保留時間なども含めた現実的な目標設定
・定期的なモニタリングやフィードバック

目標が明確であれば、取り組みの方向性が定まり、成果につながりやすくなります。

7.AHT短縮ならトランスコスモスへご相談ください

トランスコスモスでは、音声認識ソリューションtranspeech(トランスピーチ)をAIアシストソリューションにフルリニューアルしました。従来の音声認識機能や対話要約機能を軸に、コンタクトセンター(コールセンター)の現場でも特にニーズの高い機能を追加しています。

○リアルタイムテキスト化

・音声データをリアルタイムでテキスト化
・音声確認時に便利な5秒単位での巻き戻し/早送り、再生速度の変更、柔軟な検索処理で円滑なモニタリング業務を支援

○必須案内チェックリスト

・コールリーズン毎に、必須の案内事項をセット
・チェックしつつ対応を進め、未確認件数の表示により案内漏れや誤案内を防止

○AI Agent

・ 通話終了後に生成AIで自動要約し、ACWのログ作成時間を大幅短縮
・オペレーターが気付きにくい通話ログに潜むVOCやFAQを抽出
・コールリーズンや用途に応じ、最適なプロンプトを個別に設計が可能
・CTSへの貼付けを簡素化するコピーボタンを用意

transpeechの使用イメージ

これらの機能はすべてAIテクノロジーと融合しており、能動的なサポートでオペレーターに寄り添うことで、進化したコンタクトセンターオペレーションを実現します。

【transpeechによる効果事例】

transpeechによる効果事例

transpeechの音声認識機能・自動要約機能・VOC抽出機能を活用したところ、生産性が導入前比170%向上した企業もございます。

リニューアルしたtranspeechはセキュリティ・システム構成を刷新しており、トランスコスモスのCXスクエアはもちろん、お客様企業のシステム環境下で稼働するコンタクトセンターへの導入も可能です。

まとめ

本記事では、コンタクトセンター(コールセンター)における重要な指標であるAHT(Average Handling Time:平均処理時間)について、基本的な定義から計算方法、業界平均、計測・改善のメリット、具体的な短縮方法まで網羅的に解説しました。

◎AHTとは:1件の問い合わせ対応にかかる平均時間で、ATT(平均通話時間)+ACW(平均後処理時間)で算出されます。

◎最新の業界平均(2024年版):ATTが6.75分、ACWが4.8分で、AHTは約11.55分と推定されます。
中央値の重要性:平均値だけでなく中央値も確認することで、より実態に近い業務状況を把握できます。

コンタクトセンターにおけるATT、ACW、AHTの構成

◎AHTを計測・改善するメリット

・顧客側:待ち時間の短縮と丁寧な対応により、顧客満足度が向上
・企業側:業務効率の向上により、人件費や運用コストの削減が可能

◎AHTを短縮する5つの方法

・オペレーターのスキルアップを図る
・業務フロー・マニュアルの見直し
・応対サポートツールを活用する(CTI・CRMなど)
・後処理の自動化を進める(音声認識・AI要約)
・目標値を設定して共有する

AHTは、コンタクトセンターの生産性を測る重要なKPIです。
本記事が、AHTの理解と改善に向けた取り組みの一助となれば幸いです。

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