
音声認識とは人が発した音声を解析して、テキスト化する技術のことです。
身近な音声認識の例として、スマートフォンの音声入力やスマートデバイスが挙げられます。現在さまざまな業界で新たなソリューションとして活用されています。
例えば、以下のようなシーンで音声認識は既に活用が始められています。
今後はますます、あらゆるシーンにおいて標準的な技術になっていくと考えられます。
特に、2020年以降のコンタクトセンター(コールセンター)では音声認識が一般的になってきています。
この記事では、注目を集めている「音声認識」について、基礎知識から解説します。
■本記事のポイント |
「音声認識の概要をキャッチアップしたい」
「自社にとって導入の価値があるのか見極めたい」という方におすすめの内容です。
この解説を最後までお読みいただければ、「音声認識で何ができるのか」はもちろん、その必要性まで理解できるようになるでしょう。
導入の注意点も解説しているので、導入の際には失敗を回避する助けになるでしょう。
1.音声認識とは
まず音声認識の基礎知識から解説します。
1-1.音声認識とは人が発した音声を解析し、テキスト化する技術
冒頭でも触れましたが、音声認識とは「人が発した音声を解析し、テキスト化する技術」のことです。
具体的には、以下のような流れで音声認識を行います。
【音声認識の流れ】
①音声入力 | コンピューターが人の発した音声を取り込む |
②音声の変換 | 音声(アナログデータ)をコンピューターが理解できるデータ(デジタルデータ)に変換する |
③音の最小単位を特定 | デジタル化された音声から音の最小単位を特定する (例)「ありがとう」は「a-r-i-g-a-t-o」という音の連なりとして認識される |
④音を単語へ変換 | あらゆる単語が登録された電子辞書を参照して、音の連なりがどんな単語になるのかを調べ、候補となる単語に変換する (例)「h-a-s-h-i」という音の連なりから「橋」「箸」「端」などの候補を見つけ出す |
⑤テキスト化 | 見つけた単語をつなげて自然な文章にする (例)「近くのhashiの上」は前後の文脈から「近くの橋の上」が適切だと判断する |
このように、音声認識はコンピューターが音声を取り込んですぐにテキスト化できるというものではありません。
人の音声を取り込んで音の最小単位に分解し、それを単語へ変換し、単語をつなげて自然な文章になるように整えていくというコンピューターの処理は、現代の技術力があるからこそ実現できているのです。
こうした音声認識の技術はさまざまなシーンで活用されていますが、多くの人にとってイメージしやすいのは「スマートフォンの音声認識」です。
あなたがお持ちのスマートフォンにも、音声認識機能があるのではないでしょうか。
スマートフォンのマイクに向かって話しかけるだけで、話した言葉を認識し、テキストに変換してくれる便利な機能です。ここにも、音声認識の技術が活用されています。
1-2.より高精度の「AI音声認識」とは
この音声認識の技術は、日進月歩で進化を続けています。
近年特に画期的だった進歩の一つは、AI(人工知能)の導入です。
AI音声認識は、人間の脳を模した「ニューラルネットワーク」という仕組みによって「ディープラーニング(=深層学習)」を行い、音声を認識する精度を格段に向上させることに成功しました。
また、音声を単にテキスト化するだけでなく、
・感情にかかわる音声の特徴を、データベース化する「感情分析」 |
なども可能です。
これにより、コンタクトセンター(コールセンター)で顧客対応する際に、オペレーターが顧客の感情の変化をリアルタイムで把握することができたり、トラブルになりそうな気配があればスーパーバイザーが対応を指示して問題発生を未然に防いだりすることが可能になります。
その結果、応対品質を向上させ、顧客満足度の向上につなげることもできる、非常に有用な技術なのです。
2.音声認識でできること
ここまで音声認識について解説してきました。では、この技術を用いて私たちは何ができるのでしょうか?
その用途は多岐にわたりますので、なかでも代表的なものを以下6つ挙げてみました。
・音声データの文字起こし |
これらの用途は、音声認識技術の進化によりさらに便利になり、様々な場面で活用されています。
2-1.音声データの文字起こし
最もシンプルな使い道は、音声データをテキスト化する「文字起こし」です。
話したことをそのままテキストデータにできるため、人力でキーボードを打って入力するという手間がなくなります。
具体的な活用シーンは以下の通りです。
従来 | 音声認識によって | |
会議の議事録作成 | ・録音した音声データを聴きながら人の手で文章に打ち直す →時間と手間がかかる | ・リアルタイムで文字起こしできる →業務効率化が実現 |
取材・インタビュー | ・インタビュー録音を手動で文字起こしする →膨大な時間と手間がかかる | ・音声認識が自動でテキスト化してくれる →スピーディに文字起こしできる |
2-2.多言語での通訳、翻訳
音声認識は、翻訳ソフトや翻訳アプリにも活用されています。
多言語の学習機能や辞書機能を搭載することで、多様な国の言葉をリアルタイムで翻訳できるのが利点です。
具体的な活用シーンは以下の通りです。
従来 | 音声認識によって | |
外国の方とのコミュニケーション | ・通訳者を通して会話をする →通訳者を用意するコストがかかる | ・通訳者を用意せず直接コミュニケーションが取れる →通訳者を用意するコストが不要 |
災害時の情報提供 | ・災害時に翻訳作業のため情報提供が遅れる可能性がある →被害が大きくなる恐れあり | ・緊急時に多言語で迅速かつ正確な序図法を提供できる →言語の壁を越えて、適切な避難指示や支援情報を伝えることができる |
2-3.音声のみによる文字入力
テキストデータの作成を、キーボードを使わずに音声だけで行うことも可能です。
以下のようなシーンでは、音声のみでテキスト入力ができるため、非常に便利です。
【活用シーン例】
従来 | 音声認識によって | |
車で移動する際のメール作成 | ・運転中はメールを作成できない →スピーディにメール対応ができず生産性が低下 | ・運転なかでも中でも音声入力によってメールの文面を作成できる →スピーディにメール対応でき、生産性が向上(時間を無駄にしない) |
製造業・建設業における現場の記録、書類入力 | ・作業の手を止めて紙に文字を入力する →手間がかかる | ・作業をしながら並行して音声入力で文字を入力する →生産性が向上 |
2-4.音声による電子機器の操作
声だけで電子機器を操作することも可能です。
以下のようなシーンで活用できます。
従来 | 音声認識によって | |
家電制御音楽再生の音声操作 | ・暖房や照明のスイッチは手動で切り替える →自分自身が動いて操作する必要があり面倒 | ・「電源ONにして」などと声をかけるだけで暖房や照明のスイッチを切り替えることができる ・「●●(曲のタイトル)をかけて」と言うだけで聴きたい音楽を再生できる →動かなくても家電の操作ができて楽できる |
車のナビの音声操作 | ・ナビ操作のために手で操作する必要がある →運転中だと集中力が妨げられて前方不注意リスクが高まる | ・ハンズフリーでナビ操作できる →運転への集中力が維持できる |
2-5.電話対応
AI音声認識を活用することで、人間の代わりに電話応対を行うことも可能です。
具体的な活用例は、以下の通りです。
従来 | 音声認識によって | |
ボイスボットによる顧客対応 | ・すべての問い合わせに人間が対応する →問い合わせ件数が増えると顧客の待ち時間が長くなる | ・顧客が電話で話した内容を音声認識で解析し、適切な回答をAIが作成、それを合成音声で読み上げることで人間と会話する →より多くの問い合わせに対応できるようになり、顧客の待ち時間を減らせる |
そのほかにも、コンタクトセンター(コールセンター)で音声認識を活用できるシーンが多々あります。
【活用シーン例】
従来 | 音声認識によって | |
顧客の感情を分析 | ・オペレーターが会話の中で顧客の感情を推し量る必要がある →オペレーターによって感情の読み取り具合に差が出る | ・コンピューターが顧客の話した内容をリアルタイムで分析し、顧客の感情を的確に読み取れる →顧客満足度を向上できる |
「要注意ワード」を検出 | ・トラブルにつながりやすい「要注意ワード」をオペレーターが覚えておき、電話対応中に顧客の口からそのワードが出たら、トラブルにならないように対応する →オペレーターが要注意ワードを聞き逃してしまうこともある | ・「要注意ワード」を登録し、会話中にそれらのワードが出てきたらオペレーターやスーパーバイザーにアラートを出す →確実に要注意ワードを検出し、トラブルを未然に防ぐことができる |
コンタクトセンターにおける顧客とのやり取りのテキスト化 | ・オペレーターが対応後に内容を手入力で要約する →時間と手間がかかる | ・リアルタイムで会話内容を文字起こしし、テキスト化できる →後処理の工数削減、より多くの応対が可能 |
3.音声認識の4つのメリット
音声認識を導入することで期待できる効果について、以下の4つのポイントについて解説します。
1.業務の効率化が可能になる |
それぞれについて見ていきましょう。
3-1.業務の効率化が可能になる
音声認識を導入することで、業務効率化が可能となります。
例えば、第2章でも紹介した実用例をご覧ください。
・音声データの文字起こし |
音声認識を導入することで、日常的に音声を使用する業種では、業務効率化が可能となります。
具体的には、音声認識によって以下のようなことが可能となります。
・オペレーターの正確な応対を自動サポートできる |
音声認識システムを導入しない場合、オペレーターは問い合わせごとに情報を探したり対応する必要があります。そのため、対応に時間がかかり、顧客を待たせることがあります。
しかし音声認識システムを導入することで、AIが問い合わせ内容を解析し、必要な情報や応対をサポートできます。また、オペレーターは対応ごとに記録を残す必要がありますが、自動的にレポートを作成することも可能です。
このように、音声認識は業務効率化に大きく貢献するツールといえるでしょう。
3-2.人員不足が解消される
音声認識を導入することで業務効率化を実現し、人員不足の解消が可能となります。
これまでは手作業で行ってきた業務を音声認識が担うことで、人的リソースを節約しながら業務を遂行できるからです。
例えば、会議の議事録作成を従業員に依頼していた場合を考えてみましょう。
従業員が会議の音声を録音し、手作業で議事録を作成すると数時間がかかることが一般的です。
しかし、音声認識を導入することでこの作業を数十分に短縮できれば、短縮できた分のリソースで他の作業を行うことが可能となります。
このように、貴重なリソースを節約し、より重要な業務に注力することで企業は利益を最大化できます。特に、コンタクトセンター(コールセンター)などで音声認識の作業が多い場合、音声認識の効果を顕著に実感できるでしょう。
3-3.顧客データの細かな分析が容易になる
音声認識を導入することで、顧客データの細やかな分析が容易になります。
音声認識によって顧客の声をデータベース化することで、これまでにできなかった分析や解析が可能となります。
従来は手作業で行っていた音声データのテキスト化を音声認識によって自動化することで、顧客からの問い合わせなどの声を統一された形式で分析できるようになります。
これによりオペレーターによる表現のばらつきや、要約の一貫性の問題が解消されます。
音声認識を活用することで、膨大な音声データをテキスト化し、必要な情報を抽出して細かなデータ分析や顧客分析が可能となります。
新しいニーズや知見を発見し、それを活かした商品開発やマーケティング施策を行うことができるでしょう。特にコンタクトセンター(コールセンター)においてはその効果が顕著に表れるでしょう。
より詳しい内容に関しては、「7.コンタクトセンター(コールセンター)に音声認識を導入した4つの活用例」で解説しています。
3-4.入力ミスが減り業務精度が向上する
また、音声認識を利用することで、手入力によるミスを減らすことができます。
タイプミスや誤字脱字を防ぎ、数値データの正確性を確保できます。
音声認識は、発声した内容をそのままテキスト化するため、ヒューマンエラーを減らすことができます。
ただし、明瞭な発音や雑音が少ない環境で使用することで、音声認識の正確性を高めることができます。適切な使い方をすることで、ミスを減らし業務精度を向上させることができるでしょう。
以上のように、音声認識を活用することで顧客データの分析や業務効率化に大きな効果が期待できます。
4.音声認識の3つのデメリット
音声認識には様々な利点がありますが、いくつかの課題も存在します。それは以下のような点です。
・雑音があると認識精度が低下する |
4-1.雑音があると認識精度が低下する
音声認識は、録音データやマイクがリアルタイムで拾った音声をテキスト化することができます。しかし、雑音が入ると音声を正確に認識できず、誤った単語や文章が生成される可能性があります。
さらに、複数人が同時に話すと、正確な認識が難しい場合があります。
そのため、認識精度を向上させるためには、以下の点に留意することが重要です。
・雑音のない環境で利用する |
4-2.方言などの特殊な言語環境では認識が困難な場合がある
方言や特殊な言語環境において、音声認識が困難な場合があります。方言やなまり、一般的ではない言葉(特定の業界用語やスラングなど)は正しく認識されない可能性があります。
標準語であっても、アクセントが異なると認識が難しくなることもあります。
このような課題に対処するためには、個別にチューニングを行い、様々な話し方やアクセントに適応できる技術の開発が求められています。
現時点では、顧客が一般的でないアクセントを使用している場合に、オペレーターが一般的なアクセントで復唱するなど対処が必要となります。
4-3.AI音声認識では、適切な学習データが必要となる
AI音声認識においては、高い精度を実現するためには膨大な学習データが必要あり、その収集は容易ではありません。
AI音声認識は、数千人や数万人といった人の様々な話者の音声データを学習し、パターンを抽出して判断の基準にします。画像認識では、インターネットなどから多数の画像データを入手しやすいため、AIの学習に活用して精度を向上させることが可能です。
音声認識の学習データは画像認識に比べて入手が難しいため、十分な精度を確保するためには十分なデータを収集することが課題となっています。
現在は無償で公開されている音声データセットも存在しますが、今後ますます利用可能なデータが増えることが期待されています。
5.音声認識を導入する流れ
5章では、音声認識を導入する際の具体的なステップについて詳しく解説します。
具体的には、以下のステップで音声認識を導入します。
・適切な音声認識サービスを選ぶ |
それぞれのステップについて解説していきます。
5-1.適切な音声認識サービスを選ぶ
まず、音声認識を提供するサービスを選びます。
企業が独自に音声認識を開発することは困難あるため、一般的には既存の音声認識サービスを導入することが一般的です。
具体的には、以下の2つのポイントを考慮してサービスを選択することが重要です。
・過去の実績や信頼性が高いサービスを選ぶ |
実績があり信頼できるサービスを選ぶ
音声認識サービスを選ぶ際には、実績が豊富で信頼性の高いサービスを選ぶことが重要です。
新しいシステムは開発直後に不具合や誤りが発生する可能性があり、安定性に欠けることがあります。そのため、運用開始と同時に様々なリスクが伴うことに注意が必要です。
一方、導入実績が豊富なシステム運用過程での改善が進み、安定性が確保されています。また、データ学習も進んでいるため、高い精度で稼働し、エラーが少ない傾向にあります。
具体的には、
・提供開始から数年以上が経過している |
このようなシステムを選ぶのがおすすめです。
現場で利用がしやすいUI(ユーザーインターフェース)を重視する
音声認識サービスを選ぶ2つ目の注意点は「現場での利用がしやすいUI(ユーザーインターフェース)を重視する」ことです。
システムの選定は、通常システム担当者や経営者が主導して行うことが多いのですが、忘れてはならないのは実際に使用する担当者にとっての使い勝手の良さです。
たとえシステム担当者や経営者にとって魅力的に見えるシステムであっても、現場での利用が複雑だと期待する効果を実感することはできません。
対策として、デモ版やテスト版を利用して、実際にシステムを使用するコンタクトセンター(コールセンター)の管理者やオペレーター自らが動作確認した上で、現場が納得するシステムを選定しましょう。
現場目線で使いやすいシステムを導入すれば、期待した効果を確実に発揮できます。
5-2.録音環境を整備する
音声認識サービスの選定を行った後は、実際に運用を始める前に録音環境の整備を行いましょう。第3章でも述べている通り、音声認識の精度は録音環境に大きく左右されます。
具体的には、以下のような業務環境を整えることをおすすめします。
【音声認識を利用するための業務環境】
議事録や医療現場など | コンタクトセンター(顧客対応)の場合 |
・雑音のない静かな部屋を用意する | ・オペレーター側には静かな部屋を用意する |
音声認識を活用する際には、できるだけ静かな部屋で使用するようにしましょう。
また、録音時にはヘッドセットを利用するなど、マイクと口元に近づけることでよりクリアな録音が可能です。
特にコンタクトセンターでの活用を考える場合、複数のオペレーターが同じ部屋で声を出して対応することが予想されます。大きな声を出さなくても明瞭に録音できるよう、ヘッドセットの導入は必須と言えるでしょう。
5-3.音声認識を実行し、業務プロセスの改善を行う
音声認識サービスの選定と録音環境が完了したら、次は実際に音声認識を実行していきましょう。
会議の録音データを音声認識で文字起こしをしたり、コンタクトセンター(コールセンター)の会話を正確に音声認識できるかを実際に活用して確認します。
音声認識を業務に取り入れたら、作業を進めながら必要に応じて改善を行います。
実際に音声認識を利用することで、どれだけの精度で認識が行われるかを把握できます。
この結果に基づいて、録音環境の再調整などの改善を行いながら業務を進めていきましょう。
6.コンタクトセンター(コールセンター)で音声認識の活用が注目される
音声認識の活用シーンはさまざまありますが、そのなかでも注目されているのが「コンタクトセンター(コールセンター)」での音声認識です。
ではなぜコンタクトセンターでは音声認識が特に注目されているのでしょうか。
その背景としては以下のようなことが考えられます。
・人手不足への対応が急務である |
6-1.人手不足への対応が急務のコンタクトセンター(コールセンター)業界
コンタクトセンター(コールセンター)業界において、最も注目される一つは人手不足への対応が急務であることです。
現在、日本では少子高齢化の影響であらゆる業界で人手不足が深刻化しており、コンタクトセンターも例外ではありません。
このため、コンタクトセンター業務はできるだけ効率的かつ合理的に行わなければなりません。その中で、音声認識技術が効果的な解決策として期待されています。
音声認識をコンタクトセンターに導入することで、具体的にどのような利点があるかについては後述の「7.コンタクトセンター(コールセンター)に音声認識を導入した4つの活用例」で詳しく解説しますが、音声認識によってコンタクトセンター業務を大幅に効率化することが可能です。
6-2.カスタマーエクスペリエンス(CX)向上のカギを握る顧客応対
コンタクトセンター(コールセンター)において、顧客応対の質がカスタマーエクスペリエンス(CX)向上に直結しているという点も重要です。
音声認識は、カスタマーエクスペリエンスを向上させるため非常に有益な技術です。
カスタマーエクスペリエンスとは、顧客が企業やブランドとの接点で感じる体験全体を指します。顧客は商品を利用する際だけでなく、購入前から購入後までの全体的な体験を通じて、その企業やブランドに対する印象を形成します。
コンタクトセンターに音声認識を導入することで、以下のようなメリットが得られます。
・顧客への対応が迅速化する |
音声認識の活用により、顧客への対応が速やかになるだけでなく、個々の顧客のニーズに応じたサービス提供も可能となります。また、音声データの分析を通じて、オペレーターのスキル向上や顧客の嗜好の把握が要因になります。
これにより、顧客対応の品質が向上し、最終的にはカスタマーエクスペリエンスの向上につながるでしょう。
コンタクトセンターへの音声認識の導入には、単なる効率化以上の効果が期待されます。
近年、ビジネス全体において、カスタマーエクスペリエンスの向上が重要視されており、特にコンタクトセンターにおいて “音声” を通じたコミュニケーションが、顧客に与える影響は大きいと言えます。
コンタクトセンターを通じたカスタマーエクスペリエンスの向上は、ビジネス全体の競争力向上につながります。
まとめると、コンタクトセンターでの音声認識活用は、人手不足対策だけでなく、次世代のカスタマーエクスペリエンスの実現に向けた重要な施策となっています。
カスタマーエクスペリエンス(CX、顧客体験)についてより詳しくお知りになりたい方は、「顧客体験(CX)とは|CX向上が必要な3つの理由とは?」をぜひ参考にしてみてください。
7.コンタクトセンター(コールセンター)に音声認識を導入した4つの活用例
音声認識システムはコンタクトセンター(コールセンター)運営において多くの利点があり、導入がおすすめです。この章では、具体的に導入することで可能となる4つの活用例をご紹介します。
・オペレーターの正確な応対を自動サポート |
それぞれ見ていきましょう。
※補足:音声認識システムにはさまざまな種類がありますが、ここではコンタクトセンター向け音声認識ソリューション『transpeech(トランスピーチ)』を導入した場合を例にご紹介します。
7-1.【サービス業】受注窓口で後処理時間を20%削減
まず、オペレーターの正確な応対を自動サポートできる事例を見ていきましょう。
音声認識技術を活用することで、顧客やオペレーターの音声をコンピューターが認識し、認識した内容に基づいて適切なサポートを自動化することが可能です。
例えば、「支払い方法」というキーワードを検知した場合、オペレーターのパソコン画面に支払い方法に関するナレッジが自動的に表示されるよう設定ができます。
また、「解約」というキーワードを検知した際には、自動的に適切なトークスクリプトが表示されるようにすることで、品質の維持と迅速化が見込めます。
このように、ナレッジ支援や苦情の早期発見、トーク遵守の促進など、さまざまな目的に応じて音声認識技術を活用することで、オペレーターの負担を減らしつつ、良質な顧客体験(CX)を実現できます。
実際にトランスコスモスが運用しているキャンペーン系の受注窓口においても、新人比率が高いため注文受付時に聴取事項を忘れることがあり、顧客に再度確認の電話をする必要性が生じていました。
そこでナレッジ支援を導入し、注文に関連するキーワードが発話された場合に、聴取事項を自動的に表示されるようにしました。結果として、聴取漏れによる問題が解消され、聴取後の処理時間も20%削減することができました。
7-2.【保険業】アウトバウンド業務で獲得率126%UP・売上金額112%UP
次に、複数の応対をリアルタイムに把握してリスク回避できる」事例も見てみましょう。
従来は、1人の管理者(スーパーバイザー)がリアルタイムでモニタリングできるのは1人のオペレーターだけでした。どの通話をモニタリングするかは、管理者の経験や勘に頼って決定されていました。
しかし、音声認識によって通話をテキスト化し、リアルタイムで把握できるようになれば、複数の通話を同時にモニタリングすることが可能です。
NG応対をアラート通知したり、オペレーターから支援が必要という要求を受けることもできます。
音声認識を活用することで、オペレーターの「応対の品質」だけでなく、管理者の「マネジメントの質」を向上させることができます。これにより、リスクの高い通話を早期に発見・介入することができ、トラブルの予防や早期解決に効果的です。
トランスコスモスが運用している保険加入勧奨のアウトバウンド業務でも、管理者の稼働がひっ迫しており獲得見込み顧客をリアルタイムで把握することが難しい状態でした。
そこでtranspeechを導入し、座席表を活用したテキストモニタリングを行い、複数のオペレーターを同時にサポートすることが可能となりました。
対応履歴がテキスト化されていることで、効率的に顧客ニーズを把握することができ、管理者は応対状況を把握した上で適切な指示が出せるようになりました。その結果、獲得率が126%向上し、売上も112%増加し、顧客企業の売上拡大に貢献しています。
7-3.【サービス業】アウトバウンドの新人育成期間を従来の2/3に短縮
次に「応対の課題を可視化して効果的な人材育成を可能にした」例を見てみましょう。
オペレーターの教育において、自らの課題に気が付くことは非常に重要ですが、自己評価だけでは客観的な視点を得るのは難しい場合があります。
音声認識によって応対内容を可視化することで、具体的にどのような課題が存在するのか、客観的に分析できます。
例えば、顧客・オペレーターの感情、発話のかぶり、特定キーワードの出現頻度などを可視化することで、応対における問題点を具体的に把握できます。
教育担当の管理者は、主観的な意見ではなく音声認識による分析結果に基づいて指導ができるため、自身を持って育成活動に取り組むことができます。
また、オペレーター自身も視覚的に理解することで、改善に取り組みやすくなります。
実際にトランスコスモスの来店促進業務において、新人オペレーターの早期育成が課題となっていました。以前は、品質評価のために録音の聞き起こし作業に時間が掛かり、モニターフォローやフィードバックの時間が確保しにくい状況でした。
そこでtranspeechを導入し、新人オペレーターに対してリアルタイムで指導とフィードバックを行いました。テキストデータを活用することで、オペレーターへのフィードバック機会が増回し、新人育成期間を2/3まで短縮することに成功しています。
コンタクトセンターにおけるオペレーターの教育について、より詳しい内容は「コールセンターのオペレーター教育で取り組むこと3つを解説」を参考にしてください。
7-4.【電気機器業】ACWを約100秒短縮、応答率90%以上を達成
最後に「履歴記録などの後処理時間を短縮した」例です。
従来のコンタクトセンターでは、オペレーターが通話内容を要約して履歴を保管する作業が行われていました。
音声認識を導入すると、応対テキストをそのまま履歴として残すことができるので、大幅な時間短縮が可能です。
履歴記録のほかに、社内の他部署(システム部、マーケティング部)などに顧客の要望を共有する際など、テキストデータを活用することで処理効率が向上します。
そこでtranspeechを導入し、再入電の可能性が少ない案件については、応対ログのキーワードと応対ログが保存されているURLをCTSに張り付ける運用に変更しました。これにより後処理時間の大幅短縮に成功しています。
導入から2か月で新人オペレーターの後処理時間を約100秒短縮し、CPHも12件向上しました。
コンタクトセンターでの後処理時間の短縮に関して、より詳しい内容は「コールセンターにおける後処理時間の短縮方法6つを徹底解説」でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
コンタクトセンターの音声認識の導入をお考えの場合はトランスコスモスにご相談ください |
トランスコスモスでは、コンタクトセンター(コールセンター)のCX向上に貢献する音声認識ソリューション「transpeech」の導入から活用まで。ノンストップでサポートを行っています。 transpeechはさらなるパワーアップを果たし、音声認識×生成AIを活用した次世代のオペレーター支援によってCX向上を実現します。 具体的には、以下の機能でコンタクトセンター業務をサポートします。 ◆対話要約 ◆VOC抽出 ◆FAQ生成 ◆モニタリング ◆オペレーターへの労い ◆誤案内防止 音声認識を活用したコンタクトセンター構築は、高品質な顧客対応を実現する一貫です。 音声認識というデジタル技術を活用し、顧客にワンランク上の顧客体験(CX)を提供しましょう。 具体的な取り組みについて検討したい方は、お気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。コンタクトセンターを知り尽くした専門スタッフが、最適なソリューションをご提案いたします。 またtranspeechの特徴やメリットをまとめたソリューションページもご用意しています。是非こちらもご覧ください。 |
まとめ
音声認識とは「人が発した音声を解析し、テキスト化する技術」のことです。
音声認識の仕組みには最先端のデジタル技術であるディープラーニング(深層学習)が使われており、多種多様な「声の情報」「言語の情報」を解析することで、音声をテキストへ変換しています。
特に注目したいのが「コンタクトセンター(コールセンター)」での音声認識の活用で、人手不足への対応やカスタマーエクスペリエンス(CX)向上の効果が期待できます。