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1on1ミーティングとは?実施する意義と成功例、取り組むステップ

この記事で学べること

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行う対話の場で、業務の進捗確認だけでなく、キャリアや悩み、モチベーションなど幅広いテーマを扱います。

  • 1on1ミーティングの意義:部下の成長支援、信頼関係の構築、自律的な人材の育成など、組織力の向上に直結する重要なマネジメント施策。
  • 1on1ミーティングを取り入れるべき企業の特徴:離職率の高さやマネジメント課題を抱える企業、部下の主体性を高めたい企業にとって、導入効果が期待できる。
  • 効果的な1on1ミーティングをするステップ:アイスブレイクから振り返りまで、7つのステップに沿って進めることで、対話の質と成果を高めることができる。
  • 1on1ミーティングをするときの注意点:上司の姿勢や継続性が成果に直結する。詰問にならないよう配慮し、メンターとして部下を支援する姿勢が求められる。
  • 効果的な1on1ミーティングをするためのポイント:頻度の設定、記録の活用、テーマの事前準備など、運用を仕組み化することで継続しやすくなり、効果も高まる。

「リーダー層が多忙で部下のマネジメントが行き届かない」
「部下の成長を促すために1on1ミーティングを導入したいが、具体的な進め方が分からない」

このような悩みを抱える担当者は少なくありません。

近年、部下の育成や信頼関係の構築を目的とした「1on1ミーティング」が、多くの企業で導入されています。しかし、「聞いたことはあるけれど、具体的な効果や進め方が分からない」という声も多く、自社・自チームで導入すべきが迷っている方も多いのではないでしょうか。

1on1ミーティングとは

1on1ミーティングは、上司と部下が定期的に1対1で対話を行い、心身の健康状態、プライベートな話題まで幅広く扱うことで、組織課題の早期発見や離職率の低下など、様々な効果が期待できます。

1on1ミーティングをする意義

ただし、1on1ミーティングは人事評価やフィードバックとは異なるため、正しい進め方やポイントを理解しておかないと期待する成果につながらない可能性もあります。

この記事を最後まで読めば、1on1ミーティングとはどのような取り組みなのか理解し、自社にあった方法で、正しく導入できるようになります。企業の課題解決や従業員エンゲージメント向上を目指す方はぜひ参考にしてください。

1.1on1ミーティングとは

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行うコミュニケーションのことです。人材育成や離職率の改善、エンゲージメント向上を目的とした施策として注目されています。

1on1ミーティングとは

1on1ミーティングの概要

目的

部下の成長促進
部下と上司の信頼関係の構築
主体的な人材の育成

対象者

部下と上司 (基本的には1対1)

頻度

短い間隔で定期的に実施 (例:1週間に1回、隔週など)

時間

15~30分

場所

会議室や打ち合わせスペースなど、周囲に人がいない静かな場所が理想

テーマ

・仕事に関する悩みや課題の共有
・現状の振り返りと目標確認
・心身の健康チェック
・キャリアや将来のビジョン
・プライベートの悩みや趣味の共有など

1on1ミーティングでは、上司が一方的に話すのではなく部下の話に耳を傾け、共感し、サポートをする姿勢が重要です。傾聴をベースに、部下のモチベーションを引き出し、具体的な行動につなげることが目的です。

このような対話を継続することで、部下と上司の信頼関係が深まり、成果を出しやすいチーム作りが可能になります。また、部下が自分の強みを発揮しやすくなり、企業全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。

実際に、2024年にパーソル総合研究所が実施した「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」によると、直近半年間に55.7%の部下が1on1ミーティングを経験しています。

直近半年で1on1ミーティングを経験した部下の割合を表したグラフ

参考:パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」

この結果からも分かるように、半数以上の企業が1on1ミーティングを導入しており、今後も拡大が見込まれる施策です。

2.1on1ミーティングと評価面談との違い

1on1ミーティングと混同されやすいのが評価面談です。

評価面談とは、部下の目標達成度を確認し、人事評価に反映させるための面談です。
企業の人事制度の一環として、四半期や年に1回などの頻度で実施されることが一般的です。

どちらも上司と部下が1対1で行う面談形式のコミュニケーションですが、目的や内容、頻度、上司のスタンスに大きな違いがあります。

【1on1ミーティングと評価面談との違い】

1on1ミーティング

評価面談

目的

部下の成長支援・意欲向上
信頼関係の構築

部下の目標管理と人事評価

内容

・キャリア形成に関する課題
・業務における悩みや相談
・プライベートの話題や健康状態の確認

・目標の進捗確認
・成果の振り返り
・評価結果のフィードバック

上司のスタンス

傾聴とサポートが中心
評価は行わない

評価者としての立場でフィードバックを行う

実施頻度

週1回~月に1回など定期的に実施

四半期~年1回程度

1on1ミーティングは、部下の成長や信頼関係を目的としており、人事評価には直接反映されません。一方で、評価面談は、部下の業績や目標達成度を評価し、昇進・昇給などの判断材料となる重要なプロセスです。

このように、目的が異なるため、話す内容上司の関わり方も大きく変わります。両者を混同せず、適切に使い分けることが、部下のモチベーション維持や組織の信頼構築において重要です。

3.1on1ミーティングをやる意義

1on1ミーティングの基本的な概要を理解したところで、企業が1on1ミーティングを導入する意義について整理しておきましょう。

1on1ミーティングをやる意義

・部下の成長を促進する
・相互理解を深めて信頼関係を築く
・自走できる人材を育成する

これらの要素は、組織の生産性向上や人材定着率の改善、企業の持続的成長に直結します。1on1ミーティング導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

3-1.部下の成長を促進する

1on1ミーティングは、部下の主体性を高め、気付きを与える場として機能します。

【1on1ミーティングで扱う題材例】
・業務の進め方や課題の整理
・失敗体験、成功体験の振り返り
・業務量や時間に関する悩み
・目標達成度の確認
・キャリアに関する相談

例えば、部下が業務上の課題を抱えている場合、上司が過去の経験を共有しながら、部下自身が納得できる解決策を見つけるサポートを行います。

【1on1ミーティングの対話例】

  • 「業務で困っていることはありますか?」
  • 「〇〇業務の進め方について悩んでいます。現状~~ですが、成果を出すにはどうすればいいのか模索中です。」
  • 「模索中なんですね。これまでに似たような状況を乗り越えた経験ってありますか?」
  • 「そうですね…以前△△プロジェクトで、初めての業務だったけど、チームで話し合いながら進めて成果を出せたことがあります。」
  • 「そうなんですね。そのとき、特に効果的だったと感じる取り組みや工夫は何でしたか?」
  • 「メンバーとのこまめな情報共有と、進捗を見える化したことが良かったと思います。」
  • 「なるほど、それは素晴らしいですね。今回の〇〇業務にも、その経験を活かせそうな部分はありますか?」
  • 「確かに、進捗の見える化は今回も有効かもしれません。チームとの連携ももっと意識してみようと思います。」
  • 「いいですね。まずはその方法で進めてみて、途中で気づいたことがあればまた一緒に考えましょう。」
  • 「ありがとうございます!やってみます。」

この例では部下の悩みに対して上司が過去に実践した例を挙げて、試しに取り組んでみる方向性を決めることができました。このような対話を通じて、部下は自ら考え、行動する力を身につけ、成長のスピードが加速します。

3-2.相互理解を深めて信頼関係を築く

1on1ミーティングでは、業務以外の話題も扱うことで、上司と部下の相互理解が深まり、信頼関係が構築されます。

【1on1ミーティングで扱う仕事以外のテーマ例】
・プライベートの悩みや関心事
・休日の過ごし方や、趣味の共有
・心身の健康状態の確認
・キャリアに関する思いや不安

実際にパーソル総合研究所が実施した「上司と部下の信頼関係に関する研究」では、1on1ミーティングが信頼関係の構築に有効であることが示されています。特に、部下の発言回数が増えるほど、信頼関係が深まりやすい傾向があると報告されています。

信頼関係が築かれることで、部下は「この人となら安心して働ける」と感じ、離職率の低下やチームの結束力向上につながります。

3-3.自走できる人材を増やす

株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した「1on1ミーティング導入の実態調査」によると、1on1ミーティングの導入目的は「社員の主体性・自律性の向上」が52.5%と、過半数を占めていることが分かりました。

つまり、多くの企業は、1on1ミーティングを通じて、社員が主体的に考えて行動できるようになることを目指しているのです。

昨今はVUCA時代(Volatility変動性・Uncertainty不確実性・Complexity複雑性・Ambiguity曖昧性)と呼ばれており、企業は柔軟に対応できる人材を求めています。

1on1ミーティングでは自分自身を振り返り、次の行動に活かすサイクルを繰り返すことで、自ら考えて行動する力が自然に身につきます

このような人材は、上司の指示を待つことなく、主体的に課題解決に取り組み、組織の変化に対応できる貴重な戦力となります。

4.企業の1on1ミーティングの実施例

企業がどのように1on1ミーティングを導入・運用しているかを知ることで、自社での活用方法を具体的にイメージできます。ここでは、実際に企業が取り組んでいる1on1ミーティングの実施例をご紹介します。

実施企業

概要

トランスコスモス株式会社

1on1ツール〈tra:lien(トラリアン)を活用し、1on1ミーティングの導。入早期離職率が0%に改善。

LINEヤフー株式会社

・週に1回、30分の1on1ミーティングを実施
・経験、内省、教訓、実践を通じて部下の成長を支援

株式会社きらぼし銀行

・月に1回、30分の1on1ミーティングを実施
・部下が自由にテーマを決定し、心理的安全性を重視

株式会社資生堂

・1on1支援ツールを導入し、継続的な成長機会を提供
・マネージャー菅で振り返りも実施

導入の背景や運用方法、得られた成果を知ることで、自社での導入検討や改善のヒントになるはずです。

4-1.トランスコスモス株式会社

1on1ミーティングの効果を最大限に引き出すには、継続的な運用と仕組み化が欠かせません
ここでは、実際に1on1ミーティングを導入し、早期離職率の大幅な改善と従業員満足度の向上を実現した、トランスコスモスの事例をご紹介します。

導入背景:オペレーターの早期離職率28.5%という課題

トランスコスモスのCXスクエア名古屋では、建設業向けソフトウェアのヘルプデスク業務を担うオペレーターの早期離職率が、2023年度には28.5%に達していました。

この課題に対し、「コミュニケーションの質と頻度を高めることが離職防止につながる」と考え、1on1ミーティングの導入を決断しました。

施策内容:1on1ツール〈tra:lien(トラリアン)〉の活用

導入されたのは、トランスコスモスが独自開発した1on1支援ツール〈tra:lien〉。
このツールには以下のような機能が搭載されており、管理者とオペレーターの対話を効率化・可視化しています。

・自動議事録作成(生成AIによるリアルタイム記録)
・発話量分析(上司の話しすぎを防止)
・面談後アンケート機能
・管理者間での情報共有機能

また、研修業務の一部を動画化することで、管理者の負担を軽減し、1on1ミーティングに充てる時間を確保する工夫も行われました。

成果:離職率ゼロ・満足度20ポイント向上

これらの取り組みにより2024年度には早期離職率が0%に改善。
さらに、年2回実施している従業員満足度調査では、満足度が58%から78%へと大幅に向上しました。

オペレーターからは「複数の管理者と話せるのが安心」「フォローが手厚い」といった声が寄せられ、管理者からも「記録作成の手間が省けた」「対話に集中できる」といったポジティブな反応が得られています。

この事例から分かるのは、1on1ミーティングを単発で終わらせず、ツールや体制を整えて継続的に運用することが成功の鍵であるということです。

特に、記録の共有・対話の質の可視化・管理者の負担軽減といった仕組みが整っていることで、1on1ミーティングの効果が最大化されます。

この事例について詳しくは、以下のインタビュー記事をご覧ください。

現場担当者の声Vol.02の記事バナー

4-2.LINEヤフー株式会社

LINEヤフー株式会社(旧株式会社ヤフー)は、10年以上前から1on1ミーティングに取り組む先進企業です。

当初は「上司の背中を見て育つ」文化が根強く、部下への教育機会が不足していたことから、人事施策の一環として1on1ミーティングを導入しました。

【1on1ミーティングの導入方法】
・週に1回、30分間の1on1ミーティングを実施
・上司はティーチング・コーチング・フィードバックの研修を受講
・経験→内省→教訓→実践のサイクルで部下の成長を支援

特に重視したのは、1on1ミーティングの「質」と「頻度」
高速でPDCAが回すことで、前回の振り返りを活かし、部下の成長を加速させています。

現在では約93%の社員が隔週で1on1を実施しており、企業文化として定着しています。

4-3.株式会社きらぼし銀行

株式会社きらぼし銀行は、2018年に3行が合併して誕生した金融機関で、組織内のコミュニケーション不足を解消するために1on1ミーティングを導入しました。

【1on1ミーティングの導入方法】
・月1回、30分間の1on1ミーティングを実施
・部下が自由にテーマを決定
・対話の第三者に聞かれない場所で実施
・実施後にアンケートを実施し、効果を検証

アンケート結果では、部下から「心理的な安心感がある」「上司の考え方が理解できた」といった声が寄せられ、上司からも「意思疎通ができた」「チームの課題が可視化できた」との評価がありました。

現在も課題を改善しながら、対応部署を拡大中です。

4-4.株式会社資生堂

株式会社資生堂は、マネージャーによってメンバーのパフォーマンスに差が出ることに課題を感じ、誰がマネージャーでも成果を出せる仕組みづくりを目指して1on1ミーティングを導入しました。

【1on1ミーティングの導入方法】
・1on1支援ツールを導入し、定期的に実施
・メンバーに成長機会を提供
・「今何をすべきか」を考える時間を確保
・データは評価に使わず、マネージャー菅で振り返り開を実施

この取り組みにより、メンバーとマネージャー双方の成長を促進し、組織全体のパフォーマンス向上につながっています。

5.1on1ミーティングを取り入れるべき企業の特徴

こまで解説してきたように、1on1ミーティングはフィードバックや評価面談とは異なり、上司と部下が定期的に対話を重ねることで、信頼関係の構築や部下の成長支援を実現するコミュニケーション施策です。

業種や企業規模問わず、人材育成・離職防止・組織力強化を目指す企業にとって、非常に有効な取り組みだといえるでしょう。特に、以下のような課題を抱えている場合は、1on1ミーティングの導入を積極的に検討する価値があります。

【1on1ミーティングを取り入れるべき企業の特徴】
・部下の成長を促進したい
・部下が主体的に行動できる組織を目指したい
・離職率が高く、人材の定着に課題がある
・部下と上司の信頼関係を築きたい
・上司のマネジメント力を向上させたい
・部下のモチベーションを向上させたい

1on1ミーティングは、部下の現状や課題を把握し、適切な支援を行うことで成長を促す場です。また、プライベートな話題やキャリアの悩みなども扱えるため、心理的安全性の向上や信頼関係の構築にもつながります。

例えば、以下のような状況に心当たりがある企業は、1on1ミーティングの導入によって現状を改善できる可能性があります:

「忙しくて部下と十分なコミュニケーションが取れていない」
「部下の課題や悩みを把握できておらず、適切な支援ができていない」
「上司のマネジメントスキルにばらつきがあり、部下の育成に差が出ている」

6.効果的な1on1ミーティング進め方:7ステップ

1on1ミーティングは、以下の7つのステップに沿って進めることで、部下の成長支援や信頼関係の構築、組織力の向上につながります。それぞれのステップで何を意識すべきかを理解しておくことで、より効果的な1on1ミーティングの運用が可能になります。

1on1ミーティングをするときの手順

6-1.アイスブレイク

上司が部下の仕事をほめているイメージ

目的:日頃の仕事を労い、安心感を与えることで信頼関係を築く
効果:緊張をほぐし、1on1ミーティングがスムーズに進む環境を整える

1on1ミーティングは、アイスブレイクから始めることが基本です。
アイスブレイクには、部下の緊張を和らげ対話しやすい雰囲気をつくる効果があります。

具体的には、部下の日頃の仕事を承認することが効果的です。
承認とは、相手の行動や存在をそのまま認めることであり、評価や比較を含まない肯定的な受け止め方です。

【会話例】
「提案内容が素晴らしかったとお客様からお礼のメールが届きました。」
「先月の目標を達成できましたね。」

このような会話を通じて、部下は「自分の行動が見られている」「認められている」と感じ、安心して本音を話せる状態になります。

注意点として、「他の社員より優れている」などの評価的な言葉を加えると“褒める”になり、警戒心を生む可能性があります。1on1ミーティングの冒頭では、承認を意識した言葉選びが重要です。

6-2.目的確認

目的:1on1ミーティングの目的とゴールを明確にする
効果:上司と部下が共通認識を持ち、対話の質と集中力が高まる

効果的な、1on1ミーティングを実施するには、冒頭で目的とゴールを明確にすることが重要です。多くの企業では、ミーティングの目的は共有されていても、具体的なゴール設定が曖昧なまま進行してしまうケースが少なくありません。

1on1ミーティングは一1回あたりの時間が限られているため、話し合いの方向性を明確にしておくことで、短時間でも実りある対話が可能になります。

あらかじめゴールを設定しておくことで、以下のようなメリットがあります:

・話が脱線せず、時間を有効に使える
・部下が「何を得られるか」を理解しやすくなる
・ミーティング後のアクションが明確になる

【会話例】
「今日は、事業ミッション達成のための個人目標の確認とし、具体的にどのような行動が必要かを一緒に整理していきましょうことをすればいいのか明確にしていきましょう。」
「10分後には何が整理され、どのようなことが明確になっていたらいいですか良いと思いますか?」

このように、部下の意見を引き出しながらゴールを設定することで、対話の質が高まり、主体的な参加を促すことができます。

6-3.現状把握

目的:現状を正しく認識し、課題や改善点を明確にする
効果:目標とのギャップを把握し、次のアクションにつなげる

1on1ミーティングでは、目的とゴールを共有した後に、部下自身が現状を振り返る時間を設けることが重要します。

上司が「〇〇さんの目標は月5件のアポイント取得ですが、今月は3件ですね」と一方的に現状を伝えると、説教のように受け取られ、対話の質が低下してしまいます。

代わりに、部下自身が現状を言語化することで、以下のような効果が期待できます。

・自分事として捉えられる
・状況を客観的に認識できる
・課題や改善点に気づきやすくなる

例えば、「目標に対して、現状どの程度達成できているか」「どんな課題があるか」などを部下の口から語ってもらうことで、主体的な気づきと行動意欲が生まれます。

【会話例】
「課題と比べると、現状はどうなっていますか?」
「現在の出勤状態は、100点中どれくらいですか?」

6-4.課題特定

目的:目標と現状のギャップを把握し、課題の本質を明らかにする
効果:ギャップが生まれた背景や原因を冷静に分析し、改善のヒントを得る

1on1ミーティングでは、現状を把握したときに、目標とギャップを特定するステップが重要です。この段階でなぜギャップが生またのかを明確にすることで、新たな課題や改善がすべきポイントが見えてきます

ギャップがあることを指摘する際に、部下を責めるような口調や質問は避けるべきです。
例えば、「なぜ遅刻をしたのですか?」といった問いかけは、部下にプレッシャーを与え、本音を話しづらくしてしまいます。

1on1ミーティングは部下の行動の振り返り、成長につなげるための対話の場です。
そのため、課題を特定する際は、部下の現状を承認し、前向きな質問で気づきを促す姿勢が求められます。

【会話例】
・「何が問題だと感じましたか?」
・「何があると課題を解決できますか?」

6-5.改善策の立案

目的:課題や目標と達成のためにやるべきことを明確にする
効果:行動を具体的にすることですぐに実行できる

1on1ミーティングでは、課題が明らかになってきたら、それを解決するための改善策を具体的な行動レベルで立案することが重要です。

課題を把握しただけで終わってしまうと、1on1ミーティングの効果が半減してしまいます。現状を変えるためには、実行可能なアクションプランを部下自身が考え、決定することがカギとなります。

改善策を立てる際に最も重要なのは、部下自身が改善案を提案し、納得して決定することです。
上司が「こうしたほうがいい」「この方法はどうですか?」と提案してしまうと、指示になってしまい、部下の主体性が損なわれる可能性があります。

改善策を考える際には、部下が前向きに思考できるような質問を投げかけることが効果的です。

【会話例】
・「どのように行動を変えると良くなりますか?」
・「この1週間で試せることはありますか?」

6-6.目標設定

上司に目標を宣言するイメージ

目的:具体的な行動計画を設定して、目標達成プロセスをより明確にする
効果:実践すべき行動がより具体化され目標達成をイメージできる

1on1ミーティングでは、改善策立案の後に、それを実行に移すための具体的な行動計画(目標)を設定することが重要です。このステップでは、部下が自ら考えた改善策を「いつまでに」「どのように」実行するかを明確にすることで、目標達成への意識と行動力が高まります。

目標設定は、上司が一方的に決めるのではなく、部下自身が主体的に考えることがポイントです。例えば、「〇日までに達成しましょう」「今週中に〇回実践しましょう」といった上司主導の提案は、部下の主体性を損なう可能性があります。

代わりに、「具体的な計画を教えてもらえますか?」などの質問を通じて、部下が自分事として目標を設定できるようにサポートしましょう。

【会話例】
・「具体的な計画を教えてもらえますか?」
・「目標を設定して、一緒に確認していきましょう。」

6-7.振り返り

目的:1on1ミーティングの目的達成度を確認し、次回に活かす
効果:信頼関係の強化と継続的なサポート体制の構築

1on1ミーティングの最後には、冒頭で共有した目的やゴールが達成できたかを振り返る時間を設けましょう。

この振り返りによって、部下がどのような成果や気づきを得られたかを確認でき、次回の1on1ミーティングの質向上にもつながります。また、率直な感想を聞くことで、1on1ミーティングが部下にとって有意義な時間だったかどうかを評価する指標にもなります。

1on1ミーティングは、単発で終わらせず、継続的に実施することが重要です。
終了前に次回の実施日を決めたり、「今後もサポートしていく」と伝えることで、部下に安心感と信頼感を与えることができます。

このような継続的な関わりが、上司と部下の信頼関係を強化し、組織全体のエンゲージメント向上にもつながります。

【会話例】
・「この時間を通じてどのような成果がありましたか?」
・「本日の1on1ミーティングの目的は達成できましたか ?」

今回ご紹介したステップは、あくまでも1on1ミーティングの一例です。1on1ミーティングには定められているルールや規則はないので、やりやすい方法で取り組んでみてください。

【上司向け 1on1ミーティングで使えるミーティング項目テンプレート】

1on1ミーティングを実施する際には、話したいテーマや実際に話したことを記入できるシートを用意しておくと、聞き漏らしを防ぐことができ、スムーズに1on1ミーティングを進めることができます。

●テンプレート例

上司向け 1on1ミーティングで使えるミーティング項目テンプレート

7.1on1ミーティングを実施する際の注意点

1on1ミーティングを効果的に運用するには、これまで紹介したステップだけでなく、実施時の注意点を理解しておくことが重要です。

特に、部下との信頼関係を築き、継続的な成果につなげるためには、以下の3つのポイントを意識しましょう。

1on1ミーティングを実施するときの注意点

・上司は無い無い症候群にならないこと
・詰問ではなく、メンターとしての姿勢を心掛けること
・効果がすぐに出ないことを理解し、継続すること

7-1.上司は無い無い症候群にならないこと

上司は日々の業務に追われ、部下とのコミュニケーションを後回しにしがちです。特に1on1ミーティングは、部下と1対1で向き合う時間を確保する必要があるため、実施を避ける理由を探してしまうケースもあります。

【1on1ミーティングを避ける理由】
・部下を育成する時間がない
・部下を育成できる環境が整っていない
・部下を育成する方法が分からない

しかし、こうした理由で1on1ミーティングを避け続けると、部下との意思疎通が困難になり、信頼関係の構築が遅れてしまいます。

「できない理由」ではなく、「どうすれば実施できるか」を前向きに考える姿勢が、マネジメント力の向上と人材育成の第一歩です。

7-2.詰問ではなく、メンターとしての姿勢を心がける

1on1ミーティングでは、上司が一方的に問い詰めるのではなく、メンターとして部下の成長を支援する姿勢が求められます。

【メンターの役割とは】
・部下の話を傾聴し、共感する
・課題解決や成功に向けてサポートする
・主体的な気づきと行動を促す

【メンターが取るべき行動】
・部下の話が7割、上司は聞き役に徹する
・途中で遮らず、傾聴を心がける
・アドバイスよりも、部下に考えさせる
・部下自身が「次にやるべきこと」を導き出せるよう促す

このような対話を通じて、部下は自分の経験を振り返り、自ら課題を発見し、行動に移す力を育むことができます。

7-3.効果がすぐに実感できるわけではない

1on1ミーティングは、短期的な成果を求める施策ではなく、長期的な人材育成と信頼関係の構築を目的とした取り組みです。
部下によって課題や改善スピードは異なり、すぐに成果が出るとは限りません。

場合によっては、目に見える変化が出るまでに半年〜1年以上かかることもあります。
途中で諦めず、粘り強く継続することで、離職率の低下や業務効率の向上など、組織全体にポジティブな影響を与えることができます。

8.効果的な1on1ミーティングをする4つのポイント

1on1ミーティングを継続的かつ効果的に運用するためには、事前準備と運用ルールの整備が不可欠です。ここでは、部下との信頼関係を築き、成長を支援するために押さえておきたい4つの実践ポイントをご紹介します。

効果的な1on1ミーティングをする4つのポイント

・1on1ミーティングの頻度を決めておく
・一度の1on1ミーティングですべてを解決しようとしない
・1on1ミーティングの内容を記録する
・1on1ミーティングで話すテーマや質問項目を事前に考えておく

これらのポイントを意識することで、1on1ミーティングの導入・定着がスムーズになり、部下の成長支援や離職防止にもつながります。

8-1.1on1ミーティングの頻度を決めておく

1on1ミーティングは、部下一人ひとりに対して個別対応を行うため、時間と計画性が必要です。PDCAサイクルに合わせて、月1回や隔週など、継続的に実施できる頻度をあらかじめ設定しましょう。

・上司のスケジュールを先に確保
・部下の出勤日や業務状況に合わせて日程調整
・定例会議のように「習慣化」することで継続しやすくなる

8-2.一度の1on1ミーティングですべてを解決しようとしない

1on1ミーティングは、15〜30分程度の短時間で行うのが一般的です。
そのため、すべての課題を一度で解決しようとするのではなく、部下の気づきや内省を促すことを重視しましょう。

・ゴールが見えなくても問題なし
・継続的な対話の中で少しずつ変化を促す
・次回のミーティングで前回の続きから始められるようにする

【1on1ミーティングで感じられる変化の例】
・部下が成長のきっかけを掴めた
・上司との関係が良好になった
・部下が主体的に行動できるようになった

8-3.1on1ミーティングの内容を記録する

1on1ミーティングは、継続的な成長支援を目的とするため、記録の管理が重要です。
上司はメモを取り、目的・ゴール・改善案などを整理しておくことで、振り返りや進捗確認がしやすくなります。

・プライバシーに配慮し、個別シートで管理
・上司・部下以外の第三者が閲覧できないようにする
・記録をもとに次回のミーティングを設計

8-4.1on1ミーティングで話すテーマや質問項目を事前に考えておく

1on1ミーティングを効果的に進めるには、事前に話すテーマや質問項目を準備しておくことが重要です。準備なしで臨むと、雑談で終わってしまったり、部下の本音を引き出せない可能性があります。

【1on1ミーティングで話すテーマや質問項目の例】
・今困っていることや悩みは?
・業務で感じるストレスや不安は?
・最近の気づきや学びは?
・モチベーションが上がる瞬間・下がる瞬間は?
・次にチャレンジしたいことは?
・中長期的なキャリアの展望は?

まとめ

いかがでしたか?この記事では、1on1ミーティングの基本的な概要から導入方法、実践ステップ、注意点、成功のポイントまでを体系的に解説しました。

ここで、内容を振り返りながら、自社で1on1ミーティングを導入・運用する際の参考ポイントを整理しておきましょう。

〇1on1ミーティングとは
上司と部下が1対1で定期的に行うコミュニケーションの場
業務の進捗確認だけでなく、キャリア・健康・悩みなど幅広いテーマを扱う

〇1on1ミーティングを実施する意義は下記のとおり

・部下の成長を促進する
・相互理解を深めて信頼関係を築く
・自走できる人材を増やす

〇効果的な1on1ミーティングをするステップは次のとおり

1)アイスブレイク:日頃の仕事を労い、信頼関係を築く
2)目的確認:1on1ミーティングの目的とゴールを明確にする
3)現状把握:現状がどうなっているのか明確にする
4)課題特定:課題や目標と現状のギャップを把握する
5)改善策の立案:課題や目標達成のためにやるべきことを明確にする
6)目標設定:具体的な行動計画を設定して、目標達成プロセスをより明確にする
7)振り返り:目的達成ができたか1on1ミーティングを振り返る

〇1on1ミーティングをするときの注意点は次の3つ

1) 上司は無い無い症候群にならないこと
2)詰問ではなく、にメンターとしての姿勢を心掛ける
3)効果がすぐに実感できるわけではない

〇効果的な1on1ミーティングをするためのポイントは次の4つ

1)1on1ミーティングの頻度を決めておく
2)一度の1on1ミーティングですべてを解決しようとしない
3)1on1ミーティングの内容は記録する
4)1on1ミーティングで話すテーマや質問項目を事前に考えておく

この記事をもとに、1on1ミーティングが実施できるようになることを願っています。

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ノウハウを活かして、CX向上や売上拡大・コスト最適化を支援します。お気軽にお問い合わせください。
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