13.59.122.162

【定着率向上】エンゲージメント調査とは?基礎知識、メリットを解説

「エンゲージメント調査とは、どのような調査なのだろう?」
「エンゲージメント調査をすることでどんなことがわかるのだろう?」

と疑問に感じていませんか?エンゲージメント調査とは社員が会社に対し、どのくらい愛着を持って仕事をしているのかを把握するために行うものです。

具体的には、エンゲージメント調査を実施することで、

①社員による企業への評価の度合い
②社員の仕事への熱心さの度合い
③社員が企業への貢献を実感できているかの度合い

を把握することができ、自社の課題や問題点を可視化することができます。

例えば、ある企業において立て続けに退職者が出ている現状がある場合、エンゲージメント調査の実施で「仕事へのやりがいを感じない社員が60%の割合を締めている」という結果が明らかになり、離職率が高くなっている原因を明らかにすることができます。

ただし自社にエンゲージメント調査を導入するか判断するためには、具体的な効果やデメリット、実施にどのくらいの手間がかかるのかを事前にイメージしておく必要があります。

そこでこの記事では、エンゲージメント調査の基礎知識だけでなく、

・エンゲージメント調査のメリット、デメリット
・エンゲージメント調査  実施の流れ
・エンゲージメント調査で高い効果を得るためのポイント

を解説します。
本記事の内容は以下のとおりです。

【本記事の内容】
・エンゲージメント調査とは
・エンゲージメント調査の2つのメリット
・エンゲージメント調査の2つのデメリット
・エンゲージメント調査の流れ5ステップ
・エンゲージメント調査で高い効果を得るための3つのポイント

この記事を読むことで、エンゲージメント調査とはどのようなものなのか、その基礎を学べるようになっています。

またエンゲージメント調査のメリット・デメリット、実施の流れ高い効果を得るためのポイントを知って、自社に導入するべきか判断し、導入に向けて一歩を踏み出せるようになります。

ぜひ最後までお読みください。

1.エンゲージメント調査とは

まずはエンゲージメント調査の基礎知識について以下の4点を解説します。

・エンゲージメント調査とは
・エンゲージメント調査の目的
・エンゲージメント調査の種類
・エンゲージメント調査の3つの指標

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1.エンゲージメント調査とは社員が会社に対してどのくらい愛着を持って仕事をしているのかを把握するもの

本来エンゲージメント(engagement)は「誓約」「約束」を意味しますが、人事領域においては「会社に対する愛着心」という意味合いで使われています。

社員が会社に対し、どのくらい愛着を持って仕事をしているのかを把握するために行う調査のことを「エンゲージメント調査」といいます。

具体的には、以下のような指標で社員のエンゲージメントを測定します。エンゲージメント調査で用いる各指標について、詳しくは「1-3.エンゲージメント調査の3つの指標」で解説しています。

◆社員による企業への評価
例)「求職中の友人や家族に、自社を勧めたいと思うか?」

◆社員の仕事への熱心さ
例)「仕事中、『この業務は自分が得意とすることだ』と感じる機会はありますか?」

◆社員による企業への貢献の実感度合
例)「仕事において自分の意見が考慮されていると感じますか?」

ちなみに、エンゲージメント調査は「従業員満足度調査」と混同されることがありますが、従業員満足度調査とは以下の違いがあることを知っておきましょう。

従業員満足度

エンゲージメント調査

・社員が仕事内容や職場、上司、会社について満足しているか測定する指標。

・社員からの一方的な感情しか測れない。

・社員が同僚や会社との関係に価値を感じて、積極的に貢献したいと考えている度合を測定する指標。

・従業員満足度とは異なり、企業と社員の相関関係を測定する。

1-2.エンゲージメント調査 3つの目的

最近では多くの企業でエンゲージメント調査が取り入れられるようになりました。一般的に企業でエンゲージメント調査を導入する目的は以下の3つがあります。

エンゲージメント調査の3つの目的

自社の課題や問題点を可視化する

1つ目は「目に見えない自社の課題や問題点を可視化する」ことです。

エンゲージメント調査の実施によって、企業が抱える負の側面が浮き彫りになり、改善するべき点が明確になります。

例えば、ある企業でエンゲージメント調査を実施すると、離職者の多い部署において

「半数以上が『仕事上で自分の意見が考慮されていない』と感じている」

といった結果が出ます。この調査結果から、部署で離職が多くなっている原因は、

「風通しの悪い労働環境になっていること」
「トップダウンの体制によって社員のモチベーションを奪っていること」

といったような課題が特定できるのです。

こうして今まで見えていなかった自社の課題・問題点をエンゲージメント調査で明らかにできれば「1on1ミーティングを取り入れて、もっと若手社員の意見も取り入れるようにしよう」と具体的な人事施策につなげることができるのです。

このように自社の課題や問題点を可視化し、適切な施策につなげる目的で、企業はエンゲージメント調査を導入しています。

1on1ミーティングについては別の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

人事施策の効果を測定する

2つ目は「人事施策の効果を測定する」ことです。

エンゲージメント調査は複数回実施することで、その結果を比較することができます。
そのため人事施策の実施前後にエンゲージメント調査を行うことで「施策によってエンゲージメントが向上したのかどうか」を効果測定することができます。

例えば、エンゲージメント調査結果を受けて「社員のモチベーションアップを狙った人事施策」を実施した場合を考えてみましょう。

この施策を実施して一定期間経過した後に、再度エンゲージメント調査を行ってみると「社員のモチベーションは横ばいで変化は見られなかった」といった結果が出ました。

この場合「この人事施策は効果がなかった」と判断でき、新たな施策を練り直すというアクションができます。

この例ではエンゲージメント調査の結果、人事施策に効果がないことが明らかになったケースをお伝えしましたが、一方でエンゲージメント調査は「時間もコストもかけていないのに効果が出た人事施策」を明らかにすることもできます。

つまり、最も効率的な施策を見極められ、無駄なく効果的な施策を決定し、実施できるようになるのがエンゲージメント調査の魅力なのです。

このようにエンゲージメント調査は、人事施策の効果を測定する目的もあります。

経営層・管理層と社員の意識のギャップを把握する

3つ目は「経営層・管理層と社員の意識のギャップを把握する」ことです。
「会社の理念」や「上層部が求める行動指針」と社員の行動にどのくらいのギャップがあるのかをエンゲージメント調査によって数値化できるのです。

エンゲージメント調査によって「会社全体の目標に対する社員の理解が進んでいない」という課題が明らかになった場合に、「どのくらいの社員が全体目標を理解していないのか」を具体的な割合(%)で数値化できます。

もしも経営層・管理層と社員の意識のギャップが大きい場合は、意識の差をなくすための施策を考えることができます。

上記の例でいうと「メールや社内ポータルサイトを活用して、経営計画の概要や重要なポイントを従業員に伝える」「定期的な部署ミーティングを通じて、計画に関する情報を共有し、質問や意見を募集する」といった施策を考えられるでしょう。

こうしたことから経営層・管理層と社員の意識のギャップを把握するために、エンゲージメント調査を実施する企業もあります。

1-3.エンゲージメント調査の3つの指標

エンゲージメント調査には以下の3つの指標があります。

・エンゲージメント総合指標
・ワークエンゲージメント指標
・エンゲージメントドライバー指標

エンゲージメント調査にはどのような指標があるのかを理解しておくと「調査によってどんなことがわかるのか」をイメージしやすくなります。3つの指標について、しっかりチェックしておきましょう。

エンゲージメント総合指標:社員による企業への評価を測る指標

1つ目は「エンゲージメント総合指標」です。
これは社員による企業への評価を計測するための指標で、「eNPS」「総合満足度」「継続勤務意向」という3つの設問で構成されています。

【エンゲージメント総合指標の3つの設問について】

eNPS

「親しい知人・友人にあなたの職場をどれくらい勧めたいか」を訪ね、職場の推奨度を数値化する。

総合満足度

社員が会社に対して総合的にどの程度満足しているのかを質問に回答してもらうことで測定する。

継続勤務意向

社員が今後どのくらい継続して今いる会社に勤務し続けたいのか、質問項目に回答してもらうことで測定する。

以下のような質問に回答してもらうことで、社員による企業への評価を測ることができます。

【エンゲージメント総合指標の質問例】

・求職中の友人や家族に、自社を勧めたいと思いますか?

・今の会社で働くことを誇りに思いますか?

・給与と福利厚生に満足していますか?

エンゲージメント総合指標は、このような質問に回答してもらうことで社員が会社をどう評価しているのかを数値化し、分析できるようになります。

ワークエンゲージメント指標:仕事への熱心さを測る指標

2つめは「ワークエンゲージメント指標」です。
これは社員の仕事への熱心さを測る指標で、以下の要素がどの程度揃っているのかを測定することで仕事への熱心さを測ることができます。

【ワークエンゲージメント指標の3つの視点】

①仕事をすることで活力がみなぎる
②自信の業務にやりがい・誇りを感じて熱意を持って行える
③仕事に対して没頭し、夢中になれる

以下のような質問に回答してもらうことで、社員による仕事への熱心さを測ることができます。

【ワークエンゲージメント指標の質問例】

・自分の仕事に意義や価値を大いに感じますか?

・自分がしている仕事の意味や大切さがわからなくなることがありますか?

・自分は職場で役に立っていると思うことがありますか?

エンゲージメントドライバー指標:社員が企業への貢献を実感できているか測る指標

3つ目は「エンゲージメントドライバー指標」です。
これは社員が企業への貢献を実感できているか測る指標で、社員が企業への貢献を実感できているのかを測る指標です。

【エンゲージメントドライバー指標の要素】

・他人に貢献しているという意識
・仕事を通して自身が成長している実感
・自身の目指す未来を実現するための環境

以下のような質問に回答してもらうことで、社員がどのくらい当事者意識を持って働いているのか、企業に貢献できているという実感はどのくらいあるのかを測定できます。

【エンゲージメントドライバー指標の質問例】

・仕事を行う中で、上司や同僚から褒め言葉をもらうことはありますか?

・勤務する会社や組織の戦略、理念を理解していますか?

・自分の仕事は会社の使命や目標のために重要であると感じていますか?

この指標は、社員による企業への期待の大きさを表す指標です。組織、職務、個人に関連する質問から結果を得られるため、今後の人事施策を検討する際に大いにヒントにすることができます。

1-4.エンゲージメント調査 2つの調査方法

エンゲージメント調査には、以下の2つの調査方法があります。

・パルスサーベイ
・センサスサーベイ

調査の種類を把握すると、企業でエンゲージメント調査を実施する際のイメージが描けるようになります。それぞれ見ていきましょう。

パルスサーベイ

パルスサーベイは、短いスパンで簡単な調査を繰り返し行う調査方法です。
設問数は10項目程度。頻繁に企業と社員の関係性をチェックし、細かな変化を把握することを目的としているため、週1~月1回程度の短い期間で調査を行います。

「新人がチームに馴染めているのか確認したい」「新制度の問題点や改善アイデアを探りたい」といった細かな変化を把握したいシーンではパルスサーベイにて調査を実施します。

センサスサーベイ

センサスサーベイは、半年〜年に1回などの中長期的なスパンで実施する調査方法です。
設問数は50項目以上が一般的。パルスサーベイと比較すると設問数は多くなっています。

「会社の根本的な問題点を浮き彫りにしたい」「施策準備にしっかり時間をかけて、全社的に効果のある人事施策を打ち出したい」といったように、根幹となる課題を解決したいシーンでは、センサスサーベイにて調査を実施します。

パルスサーベイとセンサスサーベイの違いをまとめると以下のとおりです。

項目

パルスサーベイ

センサスサーベイ

特徴

頻繁に企業と従業員の関係性を把握するのに適した調査形式

変遷を追うのに適した調査形式

目的

細かな変化の把握

根幹となる課題の可視化

調査規模

小規模

大規模

調査頻度

週1~月1回

半年~1年に1回

質問数

少ない
(5~15問程度)

多い
(50~150問程度)

メリット

・リアルタイムな状況把握が可能
・回答の負担が少ない
・調査や集計、分析がスピーディに行える
・習慣化しやすい

・包括的かつ多面的な調査が可能
・詳細の把握がしやすい
・頻度が低く、担当者の負担が少ない
・対策の検討や実行に十分な時間をとれる
・年次、半年間隔で比較ができる

デメリット

・設問数が少ないため、詳細の把握が難しい
・頻繁に行うため、運用担当の負担が大きい
・効果や有用性を感じにくい

・分析に時間がかかる
・課題が多く、施策の実施までに時間がかかりやすい
・回答率が低くなりやすい
・集計担当の負担が大きい

2.エンゲージメント調査の2つのメリット

ここまでエンゲージメント調査の基礎知識を解説しました。

実際にエンゲージメント調査の自社への導入を考えている場合、基礎知識だけでなくメリット・デメリットを知っておくと良いでしょう。「エンゲージメント調査の導入が自社にとってメリットが大きいのかどうか」を判断できるようになります。

まずはエンゲージメント調査のメリットを以下2つ解説します。

エンゲージメント調査の2つのメリット

それぞれ詳しく見ていきましょう。

2-1.労働生産性が向上する

1つ目のメリットは「労働生産性が向上する」ことです。

エンゲージメント調査の結果から社員の不満を可視化できるため、労働環境を改善するための施策を打ち出せるようになり、働く環境を良くすることができます。働く環境が良くなると社員のモチベーションはアップするため、労働生産性が向上するのです。

【例】ソフトウェア開発会社A社において、エンゲージメント調査を実施した場合

A社ではエンゲージメント調査の結果、

・残業が多いこと
・コミュニケーション不足
・プロジェクトのスケジュール管理の課題

といった課題が明らかになりました。
これらの課題を踏まえ、経営陣と人事部門は改善施策を策定し、

・残業の削減策
・コミュニケーションプログラム(1on1ミーティングなど)の導入
・プロジェクト管理のトレーニング

を実施し、労働環境の改善へと動きました。

その結果、残業時間が減少し、社員は仕事とプライベートのバランスを取りやすくなりました。さらに、コミュニケーションの質が向上し、プロジェクトはスムーズに進行するようになりました。

こうして労働環境が改善されていくと、社員は働きやすくなりモチベーションアップにつながります。そして仕事の質が向上して効率的に業務が進行するので、労働生産性が向上するのです。

エンゲージメント調査で労働環境を改善して社員のエンゲージメントをアップさせることで、労働生産性も向上し、業績にもプラスの影響を与えてくれる点は大きなメリットといえるでしょう。

2-2.社員の定着率がアップし、離職率が低下する

2つめのメリットは「社員の定着率がアップし、離職率が低下する」ことです。

エンゲージメント調査を通して社員が抱える不満に対処できれば、社員の仕事に対するモチベーションや会社に対する愛着を高めることができ、会社の定着率を上昇させ、離職防止につながります。

具体的にエンゲージメント調査結果から施策を打ち出した後、退職率の低下に寄与するまでの一連の流れを具体的にイメージするために、高い離職率が課題となっているIT企業B社でエンゲージメント調査を実施した場合を想像してみましょう。

B社ではエンゲージメント調査の結果、以下の課題が浮き彫りになりました。

◆ワークライフバランスの悪化
社員の多くが長時間労働を強いられており、仕事とプライベートのバランスが取りにくいと感じていた。

◆コミュニケーション不足
社員と上司やチームとのコミュニケーションが不十分で、業務の進捗や個別のニーズが適切に共有されていなかった。

◆成長機会の不透明さ
社員たちは、キャリアの成長機会やスキル向上のプランが不明確であると感じていた。

この結果を受けて、人事部門では以下の施策を実施しました。

◆ワークライフバランスの向上
 週ごとの最大労働時間の制限を設け、残業の削減を徹底しました。フレキシブルな労働時間制度とリモートワークオプションを導入し、社員のワークライフバランスを改善しました。

◆コミュニケーション強化
定期的な会議と1on1ミーティングを通じて、上司と社員、チーム間のコミュニケーションを改善しました。進捗報告とフィードバックの文化を根付かせ、情報の透明性を高めました。

◆キャリアプランニングとトレーニング
社員との個別面談を通じて、キャリアパスとスキル向上のプランを明確化しました。必要なトレーニングと成長機会を提供し、社員の職務満足度とモチベーションを向上させました。

こうした施策実行の結果、社員のモチベーションが高まり、離職率は低下。社員は会社に対する愛着を感じ、人材の流出を防ぐことができるのです。

このように、エンゲージメント調査結果を受けて改善策を実行することで、社員の離職率を低下させることができる点は、エンゲージメント調査の大きなメリットといえるでしょう。

3.エンゲージメント調査の2つのデメリット

エンゲージメント調査には以下2つのデメリットがあります。

エンゲージメント調査の2つのデメリット

それぞれ見ていきましょう。

3-1.社員から不満が出る可能性がある

1つ目は「社員から不満が出る可能性がある」ことです。

エンゲージメント調査は通常の業務とは別に行う作業です。そのため現場レベルでは調査に回答する分の工数がかかってしまい、社員から不満が出る可能性があります。

エンゲージメント調査を実施する際は繁忙期を避けて実施することで、社員への負担を低減できます。

また調査の重要性を理解してもらうために、実施後は現場に結果を共有し、明らかとなった課題に対してどのような施策を実施するのかについても発信すると、社員にとって自分事化し、積極的に施策や次のエンゲージメント調査に取り組んでもらえるようになります。

3-2.調査の実施・分析に手間がかかる

2つ目は自社でエンゲージメント調査を行う場合は「調査の実施・分析に手間がかかる」ことです。

エンゲージメント調査を自社で行う場合は、

・質問項目の作成
・調査実施スケジュールの作成
・調査結果の集計
・結果分析、課題の明確化
・課題解決のための人事施策決定、実施

などを行う必要があり、手間がかかるのです。
上記の業務を通常業務に加えて行うため、調査の実施を担当する社員への負担は避けられないでしょう。

社内に人的リソースがなく、社員に負担をかけずに調査を実施し、分析して施策を考えたい場合は、コストはかかりますが外部委託でエンゲージメント調査を依頼することをおすすめします。

4.エンゲージメント調査の流れ5ステップ

エンゲージメント調査の流れは以下の5ステップです。

エンゲージメント調査の流れ5ステップ

どのような流れでエンゲージメント調査を実施するのか知っておくことで、導入後にどのような動きが必要になるのか把握できるため、現実的に自社への導入が可能かどうか判断しやすくなります。

それでは、各ステップを詳しく見ていきましょう。

4-1.【ステップ①】調査目的を決める

ステップ①は「調査目的を決める」ことです。

エンゲージメント調査の実施目的は、会社の状況によってさまざまです。自社において、どのような目的でエンゲージメント調査を行うのかを決めてから実施することで、結果の分析から導き出したい問題点、施策がずれてしまうことなく定められます。

まずは「なぜエンゲージメント調査を実施するのか」を決定しておきましょう。

具体的には、以下のような点を参考にして自社の環境に足りない点を洗い出し、エンゲージメント調査によって改善したい「目的」としましょう。

・会社の共有理念・共有価値
・マネージメント・メンバーとその選定方法
・会社と従業員の一体化・結束力を高めるための様々な活動
・評価/査定基準、方法  
・給与、報酬制度
・柔軟な働き方、テレワークなどの方法・導入
・シニア雇用制度
・福利厚生制度
・事業計画
・研修制度
・採用方針・手法
・就業規則
・役職・職務等級制度
・ダイバーシティ
・退職金制度

4-2.【ステップ②】質問文を考える

ステップ②は「質問文を考える」ことです。

目的を決めた後は、どのような質問を投げかけることで明らかにしたい課題が明確になるのかを考えて、質問文を決めます。自社のニーズに合った質問を取り入れることによって、自社組織に最適な質問で調査を実施することができ、最良の結果とデータを得ることができます。

以下はエンゲージメント調査の代表的な質問例です。
自社の目的に沿って以下の中から質問を選び出しましょう。

「経営・管理職の能力やコミュニケーション、誠実さ」などについて知りたい場合

・自分の会社の目標や戦略、目的を理解できている
・経営陣は、事業の方向性について適切かつ健全な意思決定をしていると思う
・上司が言うことに一貫性がある
・良い仕事をしたときに、経営陣や上司からポジティブなフィードバックがある
・自分は会社やチームから何を期待されているかを理解している

「経営・管理職の職場における中立性や公平性」などについて知りたい場合

・自分が行っている仕事について、公正に報酬(給与や賞与、福利厚生など)を得ていると思う
・経歴や年齢に関係なく、新しいことに挑戦できる機会を与えてくれる
・仕事に見合った報酬を得ている
・仕事を行うのに必要な設備や材料を十分に与えられている
・自分の給与は、仕事の成果に連動している

「経営・管理職からのサポートやフォロー、協力や配慮」などについて知りたい場合

・経営陣や上司とコミュニケーションが取れている
・自分の能力や強みを理解し、足りない部分はフィードバックをしてくれる
・仕事において、必要な意思決定をできる権限が与えられている
・上司は、自分の意見にしっかりと耳を傾け、行動してくれる
・この会社は、必要に応じて人材や資金などのリソースを適切に活用している

「社員の仕事・会社・組織に対して感じている誇り」などについて知りたい場合

・自分の会社(職場)を家族や知人など(他人)にも勧めたい
・自分が働いている会社や仕事に誇りを持っている
・自分の役割以上のことをしようという思いがある
・3年後も自分はこの会社で働いていると思う
・周囲が自分の仕事ぶりを認めてくれている

「社員が職場で感じている連帯感、チームの親密さ」などについて知りたい場合

・上司や同僚と良好な関係を築けている
・他の部署やチームから協力を得られる環境だ
・オープンで双方向のコミュニケーションが取れている
・あなたの同僚は仕事や成果に対して質の高い仕事(貢献)をしている
・社内にあなたを気にかけてくれている上司や同僚がいる

4-3.【ステップ③】調査フォームを作る

ステップ③は「調査フォームを作る」です。

調査用紙を社員に配って実施する場合には、Excelなどの表計算ソフトを使用して作成します。
Excelなどの表計算ソフトを使用して作成する場合は、各質問について以下のように表を作成しましょう。

■回答基準(質問に対して、次の項目から当てはまる数字を記入してください)
①とてもそう思う ②そう思う ③どちらでもない ④そう思わない ⑤全くそう思わない

■仕事内容について

番号

質問内容

回答

Q01

自分の会社(職場)を家族や知人など(他人)にも勧めたい

Q02

自分が働いている会社や仕事に誇りを持っている

Q03

自分の役割以上のことをしようという思いがある

Q04

3年後も自分はこの会社で働いていると思う

Q05

周囲が自分の仕事ぶりを認めてくれている

一方、Web上で回答できるようにするには、アンケートフォームを提供しているサービスを利用すると、スムーズに調査フォームを作成できます。

4-4.【ステップ④】調査回答を得る

ステップ④は「調査回答を得る」です。
調査フォームを社員宛に送付し、回答を得ましょう。

4-5.【ステップ⑤】回答を集計し、施策を考案する

ステップ⑤は「回答を集計し、施策を考案する」です。

調査結果から自社の課題が浮き彫りになるため、改善するためにはどのような施策が必要なのかを考えましょう。

5-3.社員のエンゲージメントを向上する施策を実行する」では、エンゲージメントを向上させるための具体的な施策例をご紹介しているので、ぜひご参考ください。

5.エンゲージメント調査で高い効果を得るための3つのポイント

ここまでエンゲージメント調査の基礎知識や導入判断のための情報をお伝えしました。
実際にエンゲージメント調査の導入を決めた場合、気になるのは「どうすればエンゲージメント調査で高い効果を得られるのか?」ということではないでしょうか?

そこで6章ではエンゲージメント調査で高い効果を得るためのポイントを以下3つご紹介します。

エンゲージメント調査で高い効果を得るための3つのポイント

5-1.調査の目的を社内全体で共有する

1つ目のポイントは「調査の目的を社内全体で共有する」ということです。

目的を伝えないと「アンケートに回答する必要性がわからないので面倒だ」と真剣に回答してもらえないケースがあります。また回答者が目的を理解していないと、目的に沿った回答ができず、正しいデータを集計することができません。

率直な回答を得られるように、しっかりと目的を伝えて理解してもらうようにしましょう。

目的を定める際には「4-1.【ステップ①】調査目的を決める」でもお伝えした以下の中から自社の課題を特定し、改善することを目的としましょう。

・会社の共有理念・共有価値
・マネージメント・メンバーとその選定方法
・会社と従業員の一体化・結束力を高めるための様々な活動
・評価/査定基準、方法  
・給与、報酬制度
・柔軟な働き方、テレワークなどの方法・導入
・シニア雇用制度
・福利厚生制度
・事業計画
・研修制度
・採用方針・手法
・就業規則
・役職・職務等級制度
・ダイバーシティ
・退職金制度

目的の共有は、社内一斉メールや社内全体チャット、社内イントラなど、社員全員が確実に見る方法を選んで告知しましょう。

またエンゲージメント調査の告知タイミングは、「エンゲージメント調査の実施を社内に発信するタイミング」や「調査実施直前」など、複数回に分けて伝えると社内で目的の浸透がしやすくなります。

5-2.継続して調査を行える仕組みを作る

2つ目は「継続して調査を行える仕組みを作る」ことです。

エンゲージメント調査は「1度測定したら終わり」ではありません。
継続して調査を実施することで、

・前回と比較して何がどう改善したのか
・新たな課題は何か

などを把握し続けられます。
そして課題に対する効果的な施策を実行し続けることで、社内の働く環境はより良くなっていき、生産性が向上して、会社の業績も伸ばすことができるでしょう。

継続して調査を実施し続けるためには、以下の課題と対処法があるので、参考にして仕組みを整えましょう。

【継続してエンゲージメント調査を実施し続ける際の課題と対処法】

【課題①】質問項目が過去の調査と同じであると、社員は興味を失う可能性がある

定期的に質問項目を見直し、新たな課題や重要なテーマに合わせてアップデートしましょう。前回のエンゲージメント調査から新たに判明した課題については「4-2.【ステップ②】質問文を考える」を参考にしながら、新たに質問文を追加して質問項目を変えていきましょう。

【課題②】社員が継続的な調査に参加しない可能性がある。調査頻度が高い場合や社員が結果に対して何の変化も見られない場合に起こりやすい。

調査の頻度を適切に設定し、過度に頻繁に調査を行わないようにしましょう。(年1回/四半期1回が適切。ただし、リアルタイムでエンゲージメントの変化を把握し、早急に対応することを重視する場合には週1回、月1回といった頻度で調査を行う。)

また、社員に対して調査の重要性を説明し、フィードバックを受けることで組織が改善されることを伝えましょう。

5-3.社員のエンゲージメントを向上する施策を実行する

3つ目は「社員のエンゲージメントを向上する施策を実行する」ことです。

エンゲージメント調査は実施して終了しては意味がありません。調査結果をどう活用するかが最も重要です。収集したデータを集計・分析し、明らかになった課題に対して施策を打ち出すことで、社員のエンゲージメントを向上させることができます。

課題別に以下のような施策を実行すると、社員のエンゲージメントを上昇させることができるでしょう。

【エンゲージメント調査結果から可視化された課題別 人事施策例】

◆【課題】仕事の意味を感じられない、モチベーションの低い社員が多い

◎【施策①】情報オープン化とコミュニケーションの活性化
社員は、何のために今の仕事をしているのか理解できていないと、仕事へのモチベーションを失ってしまう可能性があります。そこで経営戦略や進捗などの情報を公開することで、仕事の意味を理解してもらう施策を実行します。

例:・社内のイントラネットで経営戦略や進捗状況を月次ベースで共有する
  ・四半期ごとに集会を行い、その場で情報を共有する

◎【施策②】仕事のやりがい創出
自発的に業績向上に貢献しようという意欲的な社員を増やすためには、仕事にやりがいをもたせることが重要です。

例:・部下の裁量権の拡大
  ・1on1ミーティングによる仕事の目的の明確化と共有

◆【課題】社員による企業への評価や満足度が低い

◎【施策】働く環境を整える
働く環境を整えることで、社員の企業への評価を向上させることができます。

例:・有給取得をしやすい環境にする(上司が積極的に有給を取得するなど)
  ・働く場所、働く時間を選択制にする

【課題】社員に当事者意識がない、企業の中で成長し、自身の目指す未来を実現できていると感じている社員が少ない

◎【施策】成長機会の提供
社員の成長を促し、本人が望むキャリアに進めるよう教育環境を整えたり、業務をまかせることで「この会社で自分は成長できる」「与えられた業務に取り組むことで目指す未来が実現できる」と感じてもらうことができ、社員が当事者意識を持って働くようになります。

例:・社内公募制度
  ・1on1ミーティングによるキャリア相談

まとめ

この記事では、エンゲージメント調査の基礎知識やメリット・デメリット、実施の流れ、調査の実施で高い効果を得るためのポイントを解説しました。
ここで改めて本記事の内容をおさらいしましょう。

◆エンゲージメント調査とは

社員が会社に対し「どのくらい愛着を持って仕事をしているのか」を把握するために行う調査のこと

◆エンゲージメント調査 3つの目的

①自社の課題や問題点を可視化する
②人事施策の効果を測定する
③経営層・管理層と社員の意識のギャップを把握する

◆エンゲージメント調査の3つの指標

①エンゲージメント総合指標:社員による企業への評価を測る指標
②ワークエンゲージメント指標:仕事への熱心さを測る指標
③エンゲージメントドライバー指標:社員が企業への貢献を実感できているか測る指標

◆エンゲージメント調査の種類2つ

項目

パルスサーベイ

センサスサーベイ

特徴

頻繁に企業と従業員の関係性を把握するのに適した調査形式

変遷を追うのに適した調査形式

目的

細かな変化の把握

根幹となる課題の可視化

調査規模

小規模

大規模

調査頻度

週1~月1回

半年~1年に1回

質問数

少ない
(5~15問程度)

多い
(50~150問程度)

メリット

・リアルタイムな状況把握が可能
・回答の負担が少ない
・調査や集計、分析がスピーディに行える
・習慣化しやすい

・包括的かつ多面的な調査が可能
・詳細の把握がしやすい
・頻度が低く、担当者の負担が少ない
・対策の検討や実行に十分な時間をとれる
・年次、半年間隔で比較ができる

デメリット

・設問数が少ないため、詳細の把握が難しい
・頻繁に行うため、運用担当の負担が大きい
・効果や有用性を感じにくい

・分析に時間がかかる
・課題が多く、施策の実施までに時間がかかりやすい
・回答率が低くなりやすい
・集計担当の負担が大きい

◆エンゲージメント調査の2つのメリット

・労働生産性が向上する
・社員の定着率がアップし、離職率が低下する

◆エンゲージメント調査の2つのデメリット

・社員から不満が出る可能性がある
・調査の実施・分析に手間がかかる

◆エンゲージメント調査の流れ5ステップ

【ステップ①】調査目的を決める
【ステップ②】質問文を考える
【ステップ③】調査フォームを作る
【ステップ④】調査回答を得る
【ステップ⑤】回答を集計し、施策を考案する

◆エンゲージメント調査で高い効果を得るための3つのポイント

・調査の目的を社内全体で共有する
継続して調査を行える仕組みを作る
・社員のエンゲージメントを向上する施策を実行する

トランスコスモスは3,000社を超えるお客様企業のオペレーションを支援してきた実績と、顧客コミュニケーションの
ノウハウを活かして、CX向上や売上拡大・コスト最適化を支援します。お気軽にお問い合わせください。
トランスコスモスは3,000社を超えるお客様企業のオペレーションを支援してきた実績と、顧客コミュニケーションのノウハウを活かして、CX向上や売上拡大・コスト最適化を支援します。お気軽にお問い合わせください。