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コトラー『マーケティング5.0』まとめ 第1回 なぜいまマーケティング5.0なのか? 共著者が解説

※本記事は2021年1月28日に5A Loyalty Suiteに掲載された記事を転載しています。

『コトラーのマーケティング5.0』(日本語版)が2022年4月に発売されました。
トランスコスモスでは、本書の共著者であるイワン・セティアワン氏のWebセミナーを2020年12月に開催し大変ご好評いただきました。『マーケティング5.0』の内容について、共著者本人に語っていただいた内容を記事にまとめています。

本記事では第1回「なぜいまマーケティング5.0なのか? 」を解説、紹介いたします。

1.はじめに

マーケティング4.0からの進化点は、デジタル化をさらに進めたオートメーション化にあります。

マーケティング5.0までの変遷と、なぜいまマーケティング5.0が必要なのか、デジタルとテクノロジーの観点から解説します。

2.マーケティング5.0への変遷

『マーケティング5.0 ヒューマニティのためのテクノロジー』はマーケティングX.0と呼んでいる三部作の最新作かつ最終書です。

2010年の『マーケティング3.0 商品から顧客、人間中心へ』、2017年の『マーケティング4.0 伝統的な方法からデジタルへの移行』と続いたマーケティングX.0シリーズは、2021年2月に『マーケティング5.0 ヒューマニティのためのテクノロジー』を最新刊として発売します。マーケティングX.0シリーズの最終章ともいえる内容になっています。

マーケティング1.0からマーケティング5.0のマーケティングに至る進化をおさらいしておきましょう。

まず、マーケティング1.0〜3.0は伝統的なマーケティング戦略です。

マーケティング5.0への変遷

マーケティング1.0
マーケティングは製品によって動かされていました(Product-driven)。この時代のマーケターはできる限り企業側が考えたベストな製品を売ることに注力していました。

マーケティング2.0

マーケティング2.0では企業中心のマーケティングが、顧客中心のマーケティングにシフトしました(Customer-oriented)。マーケティングはセグメント化(細分化)され、製品は提供するマーケットに適したものでなければならないと説きました。

マーケティング3.0
マーケティング3.0は人間中心のマーケティングです。顧客中心となった2.0にさらに、顧客のニーズや欲求に応え、同時に社会や環境に影響を与え世界の変革を促進するという人間中心のマーケティング(Human-centric)にシフトしたのです。

マーケティング4.0
マーケティング4.0(Moving to Digital)以降は、マーケティングはデジタル戦略へのかじを切りました。今回のマーケティング5.0においては、高度なテクノロジーをマーケティングで駆使していくフェーズに入ります。AI、ロボティックス、IoTなどのテクノロジーを使い、マーケティング活動をより深化させていきます。

3.なぜいまマーケティング5.0なのか?

なぜいまマーケティング5.0なのでしょうか。2つの理由があります。

①デジタル化により人々はさまざまなマイナス面とプラス面に直面しジレンマに陥っていること、②従来できなかったさまざまなことがテクノロジーの成熟により可能になっていること。

これらによりマーケティング4.0からマーケティング5.0への進化が求められています。

3-1.マーケティングはデジタル化のジレンマに直面している

いま、我々はデジタル化のジレンマに直面しています。マーケティングテクノロジーの進化は、顧客心理やマーケティングの考え方に多くの不安をもたらしています。

ロボティックスによりオートメーション化が進むと、人々は雇用を奪われると恐れます。またテクノロジーの進化は未知であり、将来を予測するのが難しいため不安になるのです。

プライバシーやセキュリティーに対する懸念もあります。テクノロジー企業が消費者行動や消費者プロフィールに関する情報や消費者の属性データを持つことに対し、多くの人はプライバシーが侵害され、サイバー上の詐欺や犯罪に巻き込まれるのではないかという懸念を持ちます。

デジタル化のジレンマ

テクノロジーとSNSの時代はポスト真実の時代と呼ばれますが、インターネット上にウソやフェイクニュースといった誤った情報があふれており、人々はこれらのことにも懸念を示しています。
また、若者世代にはデジタルを中心としたライフスタイルは、社会行動への副作用があるかもしれません。このことは世界中の多くの親たちが懸念しています。

このように今日のマーケティングテクノロジーは多くの不安を生み出していますが、テクノロジーは不安をもたらすだけでなく機会も創造するため、デジタル化のジレンマが発生するのです。

デジタル化によりこれまでコストが高いという理由で行き届いていなかったマーケットにも貢献することができ、デジタルエコノミーにより多くの富を生み出すことが可能になります。
またデジタル化は、生涯教育にも貢献します。インターネット上で多くの情報に無料でアクセス可能となった今、ビッグデータなどの情報源がたくさんあります。かなり高齢になっても学び続けることができるのです。

最近では、スマートリビングの実現や人間の能力の拡張がテクノロジーの進化により可能となりました。医療テクノロジーの発展によりより健康になり寿命も延びています

マーケットはより包括的になっており以前よりも多くの顧客セグメントを対象とできるようになりました。これまでターゲットにしづらかった低所得層、遠隔地の住人といった制限のある人たちもターゲットとすることができるようになったのです。

デジタル化は良いことも悪いことももたらしますが、これからは人々がテクノロジーを信頼し利用するようになれば、ビジネスにおいては、リスクよりも多くの恩恵を受けられるようになるでしょう。

3-2.テクノロジーの成熟がマーケティング5.0へと導く

イワン氏はマーケティング5.0を語る上で「エネイブラ―(技術対応)」と呼ぶいくつかのテクノロジーをあげています。

計算能力、オープンソースソフトウェア、インターネット、クラウドコンピューティング、モバイルデバイス、ビッグデータがそれです。

①計算能力は今やとても高くなり、より安価で小さいコンピュータを購入することが可能です。計算能力が必要なものも安価に対応できるようになったのです。

ソフトウェアに関しては②オープンソースのソフトウェア環境があります。例えば、GoogleはオープンソースのソフトウェアとしてTensorFlow(テンソルフロー)という機械学習アルゴリズムを開発しました。Googleのエコシステム外の世界中の開発者が、Googleの機械学習とAI技術と同じテクノロジーを使用することができます。

③インターネットの速度も高速化し、世界中でブロードバンドが使われています。インターネットにアクセスできる人が増え、以前ならできなかったことができるようになりました。

また④クラウドコンピューティングの成長も目の当たりにしています。
以前は、企業がテクノロジーに投資する際は、大型ハードウェアとオンプレミスで使用するために高価なソフトウェアを購入する必要がありましたが、今はクラウドサービスを利用することで、巨額の初期投資をせずに以前と同様のテクノロジーを享受できます。

また⑤モバイルデバイスの性能も向上しています。モバイルデバイスに加えIoTデバイスの進化もあり、仮想世界と現実世界がデータにより結びつきました。
企業が、倉庫、工場、車輛などの物理的資産をデジタル化することが可能となったのです。

⑤ビッグデータ分野の急激な成長により、いまやSNSのやり取りやネット上でのトランザクションなど多くのデータが蓄積され、顧客のカスタマージャーニーはデジタルデータで記録されています。
これらの顧客の行動履歴はさまざまなビジネスの成果向上に生かすことができます。

これらのようなテクノロジーの進化が加速する世界とは、どのようなものでしょうか?また人々との共存は可能なのでしょうか。

第2回では、マーケティング5.0を実現するためのテクノロジーと人間の関係について紹介いたします。引き続きご覧ください。

イワン・セティアワン氏
Markplus CEO

ノースウェスタン大学の経営大学院であるケロッグ経営学院にてMBAを取得。卒業後15年間、100社以上にマーケティング戦略策定を経験。インドネシアのMarkplus社 CEOとして、フィリップ・コトラーおよびMarkplus社 会長であるヘルマワン・カルタジャヤ氏と共に、『コトラーのマーケティング3.0』 と『コトラーのマーケティング 4.0』を共著し、その著書は現在27ヵ国23の言語に翻訳されている。2021年2月に最新書かつ最終書『マーケティング5.0』が発売。日本語版は2022年4月に発売された。

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トランスコスモスは3,000社を超えるお客様企業のオペレーションを支援してきた実績と、顧客コミュニケーションの
ノウハウを活かして、CX向上や売上拡大・コスト最適化を支援します。お気軽にお問い合わせください。
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