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「生成AIに興味があるけれど、どのようなことができるの?」
「コンタクトセンターで生成AIを導入すると、どのような効果が得られる?」
コンタクトセンター(コールセンター)の運営を担当していて、そのような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
実はすでに、生成AIを活用しているコンタクトセンターはあります。
具体的には、以下のようなユースケースが考えられるでしょう。
オペレーターサポート | ・高度な情報検索 |
顧客対応 | ・チャットボット |
顧客インサイト活用 | ・オムニチャネルでの予測NPS® |
注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです。
また、これらのユースケースを用いることで、コンタクトセンターのパフォーマンスに対して以下の3つの大きな効果が期待できます。
・コール自体の抑制 |
そこでトランスコスモスでは、2024年4月25日に「最新のコンタクトセンター事例から見えてくる 生成AIはカスタマーサービスのCXをどう変えていくのか」と題したセミナーを実施しました。
その中で、コンタクトセンターにおいて生成AIをどのように活用することができるかを詳しくレクチャーし、参加者から好評をいただきました。
この記事では、そのセミナーの様子を詳細にわかりやすくレポートします。
◎生成AIを活用したカスタマーサービスの高度化 |
これを読めば、コンタクトセンターで生成AIをどのように活用すればいいのかが具体的にわかるでしょう。
また、トランスコスモスが提供する生成AIサービスについても詳しく説明しています。
この記事で、あなたのコンタクトセンターがカスタマーサービスの高度化やコスト削減ができるよう願っています。
1.生成AIを活用したカスタマーサービスの高度化
今回のセミナーでは、生成AIのビジネス活用に先進的な知見とノウハウを持つコンサルティングファームベイン・アンド・カンパニー様と、コンタクトセンターでのAI活用にも取り組むトランスコスモスが、生成AIとカスタマーサービスの最前線の動向について解説します。
まずは、ベイン・アンド・カンパニー パートナー・大越一樹氏に「生成AIを活用したカスタマーサービス高度化」をテーマにお話を伺いました。
![]() ベイン・アンド・カンパニー ベイン・アンド・カンパニー |
1-1.進化を続ける顧客接点は、生成AIの登場により大きな変曲点を迎えている
カスタマーサポートは、顧客の体験をどのように高めていくのかというのがひとつのテーマです。
その際に、「顧客中心主義」が重要だとよく言われますが、それを実現するための要件・アプローチは、ここ20年で大きく変化していると考えています。
「顧客中心主義」実現の要件は常に変化し続けている
上の図のように、20年前は顧客フィードバックのインサイトの活用をしていました。
例えばアンケートや、コンタクトセンター(コールセンター)を通して集められる顧客の声に基づいて、サービスや商品の改善を図っていく、というのが顧客中心主義の初期のアプローチだったと言えるでしょう。
それが2010年に入り、電話などのリアルチャネル=対人チャネルだけではなく、オンラインでの体験、シームレスなオムニチャネル体験の比率が高まっていきました。それにつれて、オンラインでどのように横断的に顧客体験を組み立てていけばいいのか、カスタマージャーニーの設計が非常に大きなテーマになってきたと言えます。
そして、2020年以降の現在は、上図の右に挙げた顧客体験とデータの統合というステージにある、という認識です。
リアルタイムで顧客の体験を最適化していったり、データに基づいて顧客体験を包括的に設計・管理、応用分析したり、シミュレーションモデリングでの運用管理を自動化したり、といった時代に入ってきました。
顧客接点の進化は、非対面に人間性を求める試行錯誤の歴史
そこで、現在の顧客体験とデータの統合において非常に大きな役割を果たすのが生成AIです。
これまで顧客との接点は、上の図のように対面もしくはコールセンター(=電話チャネル)が担っていました。
それが、メール、インターネット、SNS、チャットというようにどんどん進化してきて、ここ1年は生成AIの登場で非常に大きな変化を迎えつつある、という状況なのです。
1-2.コンタクトセンター(コールセンター)で生成AIはどのように活用できるか
次に生成AIの登場で変化を遂げるコンタクトセンター(コールセンター)について説明していきましょう。
生成AIを活用した「インテリジェント・エージェント」とは
まるで人間のような能力を駆使して、顧客と直接やり取りをしたり、従業員をサポートしたりする役割を果たす生成AIをインテリジェント・エージェントと呼んでいます。
上の図では、生成AIの能力を「脳・目・腕」に例えてみました。
まず、「脳」にあたるのは生成AIの「モデル」です。
人間の論理や問題解決能力といったものをAIが模倣することで、これまでは自動化できなかった複雑なタスク計画を自律的に実行することができるようになりました。
何らかの意思決定が求められる場面で、いろいろなパラメータに沿って意思決定を下したり、さまざまなデータを認識するといったことが可能です。
次に「目」の役割を担うのは「データ」です。
いまや生成AIは、人間の能力を上回るほどの幅広い情報ソースから、情報を取得することができるようになりました。ストラクチャーされていないものも含めて、インターネット上のデータからビジネス上で蓄積されたデータ、個人に関するデータまで生成AIが統合的に探しに行き、それらをまとめてくれます。
さらに「腕」となるのは「ツール」です。
これは、ユーザーからの依頼を単に遂行するだけではなく、何かしら目的を与えれば、それに向かって自律的に何かをアウトプットしてくれるということです。
例えば分析やコード生成、メディア生成など、さまざまな形で人間をサポートしてくれる存在になりえます。
また、実際に現在そのような形で実装されているケースも多いと思われます。
生成AIの活用によりコンタクトセンター(コールセンター)にもたらされる3つの経済価値
では、このように生成AIを活用することで、コンタクトセンターとしてはどのような価値を得られるのでしょうか?
それは大きく分けて、以下のような3つの経済価値だと言えるでしょう。
・売上成長 |
1つ目の価値は売上成長です。「パーソナライズされた顧客体験」に対するニーズが非常に高まっており、それを提供してくれる事業者に対する顧客からの支持も、非常に高まっています。
2つ目の価値は、コスト低減そして最終的には、顧客体験の向上まで期待できるでしょう。
このように、人間よりはるかに速いスピードで課題解決を実現できるのも、生成AIによって創出され得る経済効果だと言えるのです。
1-3.コンタクトセンター(コールセンター)と生成AIに期待される今後の進化とは
今後さらに加速的に進化することが確実視されている生成AIがどのように進化していくかについて説明していきましょう。
「資本」「人材」「競争」によって生成AIは加速度的に進化する
「計算処理速度の向上」や「アルゴリズムの改善」の実現によって、進化は加速し、リスク管理もどんどん高度化していきます。
さらに、生成AIを使って、さまざまなプレイヤーが多様なサービスを提供しています。
それらが連携することでエコシステムもどんどん進化していくと期待されます。
そして、これを下支えしているのが資本投下、人材流入、テック企業間の覇権争いです。
生成AI領域には資金や人材が集まります。さらにテック企業も参入することで、企業間の競争が非常に活発になり、その結果として生成AIはどんどん進化していくでしょう。
そうなれば、まだまだこれから、生成AIを活用する余地もどんどん広がってくるはずです。
コンタクトセンター(コールセンター)の役割・ケイパビリティも進化しつつある
コンタクトセンターについて考えてみると、その果たすべき役割、必要なケイパビリティも進化しています。
現在のコンタクトセンターに求められるものを挙げると、以下のような要素があるでしょう。
・効果的なチャネル運用 |
まず1つ目は、効果的なチャネル運用です。
現在のコンタクトセンターでは、顧客は電話チャネルだけではなくさまざまなコンタクトチャネルを利用します。
その際に、チャネルをまたいでも顧客情報がきちんと引き継がれて、どのチャネルで応対してもオペレーターがその顧客についてわかっている、という状況を担保することが一つ大きな目的となります。
2つ目は、前述したパーソナライズされたサービス・ニーズの予測、3つ目はインテリジェントオートメーションです。
4つ目がオペレーターの人材、スキルで、オペレーターの採用やトレーニングに、生成AIを活用して支援していくことができます。
そして最後に、継続的な改善が挙げられます。コンタクトセンターでは、顧客の声の収集が大きな役割のひとつです。生成AIは、それらを自ら集めに行ったり、収集したデータをまとめたりといった形で、サービス自体の進化を後押ししてくれるでしょう。
このように、コンタクトセンターでの生成AIの活用は、さまざまな形で広がってきています。
2.コンタクトセンター(コールセンター)における生成AIの具体的なユースケース
さらに、コンタクトセンター(コールセンター)において生成AIはどのように活用されているのか、もっと具体的に見ていきましょう。
さまざまな企業の事例をみると、主に以下の3つのユースケースが多いようです。
・オペレーターサポート |
オペレーターサポートに関しては、オペレーターのかわりに生成AIが高度な情報検索を行ったり、顧客対応中に「次はどんなトークをすべきか」という適切なトークスクリプトを推奨してくれたり、顧客とのインタラクション(=やりとり)を自動で要約したりしてくれます。
顧客対応では、従来のチャットボットとして活用するのはもちろん、ボットがテキストではなく音声で応対したり、ボットでのやりとりにもとづいて、顧客のフォローアップを自動で行ってくれたりと、進化を続けています。
また、顧客インサイトの活用では、チャネルをまたいで「この顧客はいまどんな心理状態にあるのか」といったことを推測することが可能です。
例えば、ここまでの顧客とのやりとりを踏まえて「NPS(=ネット・プロモーター・スコア)は10点中8点となるだろう」といったように、生成AIが推測することができます。
さらには、オペレーターのコンプライアンスや応対品質を分析したり、コーチングをしたりと、生成AIがコンタクトセンターのケイパビリティを高めていく余地は、多種多様なシーンに広がっています。
3.コンタクトセンター(コールセンター)に生成AIを導入することで得られる3つの効果
そして、これらのユースケースを用いた場合、コンタクトセンター(コールセンター)のパフォーマンスには大きな効果が3種類あると考えられます。
それは以下です。
・コール自体の抑制 |
それぞれ、少し詳しく説明しましょう。
3-1.コール自体の抑制
まず、1つ目はコール自体の抑制です。
生成AIを活用することによって、顧客の課題をより早く発見し、問題を先回りして解決することが可能になります。そうなると、そもそもコンタクトセンター(コールセンター)への入電自体が減ってくる、コストの削減にもつながるというわけです。
これについては、直近の事例で5〜10%程度の抑制効果がありました。
今後活用が広まっていけば、効果はもっと高まると思われます。
具体的な例を挙げてみましょう。
物流で、配送に遅れが出た場合、「なぜ今これが遅れているのか?」「どこで問題が起きているのか?」という原因を、顧客が気づくよりも先に生成AIが問題に気づき、原因を特定して、解決することができます。
また、デジタル体験(=WEBサイト、メール、SNSなどのデジタルチャネルを通じて行われる顧客と企業とのやりとり)でも、何かトラブルや問題が発生すれば、生成AIがいち早く察知してアラートを出すことができます
この他にも、営業、マーケティング、製品管理などさまざまなオペレーションの中に生成AIを組み込むことで、課題を先回りして解決し、その結果としてコンタクトセンターへのコール抑制につなげることができるでしょう。
3-2.対応の自動化
次に、2つ目は対応の自動化です。
これはまさに、今までコンタクトセンター(コールセンター)で人が顧客に対応していたところを、生成AIが応対します。
これにより、インタラクションを10〜30%程度減らすことができるため、コスト削減にもつながるでしょう。
上の図の左の「今後3年間に生成AIで代替可能なインタラクションの割合」を見てください。
非音声のやりとりに関しては、今後3年の間にほぼ半数が生成AIで代替できると予想されています。
また、音声でのやりとりも、簡単な対話であれば3割程度、高度な対話でも1〜2割程度は生成AIが対応することができるでしょう。
ただ、対応をどの程度自動化できるかは、業界によって異なります。
上の図の「業界別 形式別のインタラクションの割合」というグラフを見てみましょう。
「非音声」や「音声(簡易的な対話)」の割合が多い業界(IT企業、通信など)ほど、生成AIによる置き換え効果は高いと考えられます。
とはいえ、代替可能なインタラクションをすべて生成AIに任せるのがいいかというと、そうとばかりは言えません。
それが顧客にとってベストな体験かどうかという問題もありますし、競合との差別化も図りづらくなるでしょう。
そこで、あえて「対人の対応」を残すのも、非常に大切なことです。
その対応の中に、生成AIには取って代わることができない「真実の瞬間(=顧客が企業と接するわずかな時間。その一瞬で、企業に対する顧客の印象や満足度が決まる)」があるからです。
そのため、「対応をどの程度、どの部分で自動化するか」は企業ごとに選択する必要があり、同時に工夫の余地があるとも言えます。
3-3.オペレーションの最適化
3つ目の効果は、オペレーションの最適化です。
生成AIがオペレーターをアシストしてくれることで、対応時間を10〜20%減らすことができます。
また、数値化はしづらいですが、オペレーターの応対品質も向上し、顧客満足度アップにも貢献するでしょう。
実際に、生成AIを導入したコンタクトセンター(コールセンター)では、上の図のようなさまざまな効果が出ています。
オペレーターの生産性が14%向上した例もありますが、中でも特に、スキルの低い人や仕事を始めてからまだ日が浅い人の場合は、生成AIが底上げや早期育成に貢献し、効率が35%改善しました。
1時間で2.5件の応対を解決できるまでの期間が、2〜3割短縮された例もあります。
これは、オペレーターのトレーニングが加速されたということでしょう。
また、生成AIに関してよく心配されるのが、「対人対応から生成AIでの対応に変えると、顧客満足度が低下するのでは?」という点だと思います。
しかし、ベイン・アンド・カンパニーがクライアント企業と行った取り組みの中には、NPSが2ポイント上がった事例もあり、顧客満足度はほとんど変わらない、あるいはむしろ少し向上する場合もあります。
ただそれには、「どこを自動化するのか」という選択が非常に重要です。
もう1つ挙げられる効果は、離職率の改善です。
生成AIによって、前述のようにオペレーターのスキルが向上したり、仕事がやりやすく改善されたりするため、結果として離職率も改善するという、非常にポジティブなサイクルを実現することができるでしょう。
4.ベイン・アンド・カンパニーが手がけたコンタクトセンター(コールセンター)への生成AI導入事例とその成果
生成AI導入の効果を知ると、いろいろなことを実現したくなってしまう一方で、「生成AIを導入するなら、まずは顧客に直接触れないところから」と考える企業も多いです。
実際に、ベイン・アンド・カンパニーが手がけたコンタクトセンター(コールセンター)の事例でも、「直接顧客と生成AIが接触する前に、まずは社内で活用する」というところが主流です。
4-1.生成AI導入のロードマップ
例えば以下のようなロードマップに沿って、導入を進めます。
まず左下を見てください。
「ナレッジベースでの活用を考えよう」とか、「IVRで簡単な対話から始めよう」など、初期的にできるものから進めていき、徐々に右側の難易度が高いものに移行していく、というのが通常のやり方です。
これをベースにしつつ、そのコンタクトセンター(コールセンター)の業務の性質や、どんな問い合わせが多いのか、データはどの程度揃っているのかなどによって、ロードマップも変わってくるでしょう。
4-2.ベイン・アンド・カンパニーが生成AI活用に取り組んだ4事例
ベイン・アンド・カンパニーが生成AIを活用したオペレーション改革に取り組んだ事例をいくつかご紹介しましょう。
まず、1例目は海外の運送企業です。
10〜20%のコスト改善余地が特定できました。
また、品質向上により、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
2例目は、海外の金融機関で上記の図で示している効果をあげています。
3例目は、国内メーカーで小売も行っている企業で、コール量の60~80%が生成AIに置き換えられるようになり、現在は小売店からのコールに対してだけ対応していますが、今後は消費者からの直接の質問にも回答できることを目指して動いているところです。
生成AIに置き換えられなかった20~40%の内容は都度判断が必要なものやトラブルシューティングでアクションが必要なものなど定型的に回答するだけでは課題が解決しないものです。このような内容は引き続き人が対応することの価値が高い問い合わせということになります。
最後の例は、国内のヘルスケア企業です。
製品情報検索のチャットボットの導入で製品に関する問い合わせに対して、大量の情報の中から必要なものをすぐに見つけることができるようになり、情報を探す時間が3〜4割削減できた、という事例です。
5.コンタクトセンター(コールセンター)への生成AI導入の流れ
ベイン・アンド・カンパニーが行っている生成AIを導入しようとしているクライアントへの支援の方法や流れについても説明していきましょう。
5-1.まず初期的な診断で生成AI活用の余地を見極める
最初に、初期的な診断で「どこで生成AIを活用する余地があるのか」を見極めることが非常に大事です。
上の図は1つの例ですが、左側の「AIで置換可能な問い合わせの特定」のように、どんなユーザーからどんな問い合わせやリクエストが入ってくるのか、件数はどのくらいで、どのような流れで応対・解決されているのか、などをステップごとに解析します。
それを踏まえて、この流れのどの部分に生成AIを活用する余地があるのかを特定するのが「活用可能性診断」です。
生成AIは、さまざまな業界で多様な使い方をされていますので、「この業界ならこんな使い方もできるのではないか?」などと考えながら、この診断を行っています。
次に、右側の「エージェントの生産性改善の機会の特定」です。これも一例ですが、コンタクトセンター(コールセンター)ではどうしてもオペレーターごとに生産性のバラつきが発生します。
そこで、「なぜバラつきが発生しているのか」、そして「どのようにしてバラつきを揃えていくのか」などを把握しつつ、そのプロセスのどの部分で生成AIを活用する余地があるのか、を見極めていきます。
AIの活用による業務効率化の可能性については、業界ごとの事例などをベンチマークしながら、想定インパクトを試算していくのが最初のステップとなっています。
5-2.生成AIで成果を創出するために必須の3要件
また、生成AIを使って何かしらの成果を出したいと考えるに当たって、すべきことが3つあります。それは以下です。
・経営層の巻き込み |
経営層の巻き込み
1つ目に、経営層の巻き込みです。
やはり生成AIの活用に対しては、慎重に考えている企業は非常に多いです。
リスクがともなう取り組みですし、これまでのIT開発のあり方とは大きく異なるものでもあります。
また、生成AIを導入すれば自動的に効果が出るというものでもなく、人の動きや商品設計なども変えていかなければ最大のインパクトは出せません。
そこで、これを全社戦略と位置付けて、どのように取り組んでいくのか、自社がなぜ生成AIに取り組むのかの目的をはっきりさせる必要があります。
そのためには、経営層の支持がなければなかなか成果につながらないでしょう。
データマネジメント
2つ目に、データマネジメントです。
これは、生成AIに取り組み始めると実感されることですが、きちんとデータが揃っているか、それも生成AIが取り込みやすいデータになっているか、といったことが非常に重要です。
今後は生成AI自体の能力がどんどん強化されていくでしょう。
その中で、「とにかくデータは、使えるかわからないものも含めて全部生成AIに学習させていくものだ」と考えて、データマネジメントに取り組んでいる先進的な企業の例もあります。
テスト&ラーン
また、3つ目はテスト&ラーンです。
生成AIの取り組みでは、通常のウォーターフォール型のITシステムの開発とは異なり、このテスト&ラーンが非常に重要になってきます。
生成AIを活用してコンタクトセンターの応対を自動化するにあたっては、「どのように生成AIを調教していくか」というところが重要ですが、これは職人技に近いものがあります。
実際に導入してみて、なかなか思ったような挙動が得られない場合、「調教の仕方を少し変えてみよう」といったように、テストをしながら改善していくわけです。
ですから、最初は多少精度が粗くても現場に投入して、そこでフィードバックを得て進化させていく、それをいち早く始めることが非常に大切です。
最初から完璧なものができるわけではないので、完璧になるのを待っていては遅れをとってしまうので注意しましょう。
最後に一番重要なことがあります。
生成AIを導入する際には、これを活用することによってどんな効果を得たいのか、コスト削減か、顧客体験の向上か、成功の定義をまず明らかにして定めることです。
これをしないと、目的を見失ってしまいますので、大事なポイントとして留意しておいてください。
6.顧客体験の向上とコスト削減を実現 ── 生成AI活用によるコンタクトセンター(コールセンター)サービスの進化
ベイン・アンド・カンパニー 大越一樹氏からのお話は以上でした。
続いて、トランスコスモス CX事業統括 デジタルカスタマーコミュニケーション総括 サービス開発本部本部長/DX推進本部副本部長・岩浅佑一から、「生成AI活用によるコンタクトセンター(コールセンター)サービスの進化」についてお話しします。
![]() トランスコスモス 2004年にトランスコスモス株式会社に入社、コールオペレーターからセンター長となる。2017年よりデジタルサービス組織の立ち上げ、事業開発を担当。AIやデータを活用したテクノロジー、CXサービスの展開を推進している。 |
6-1.顧客体験(CX)を高めるためのオペレーション
まず、顧客体験に関しての実際の取り組みについて紹介しましょう。
優れたCXは競争優位を作り出す
「顧客体験」、いわゆる「CX(=カスタマーエクスペリエンス)」というのは、単純なスローガンに留まらず、企業価値に直結する重要な要素になってきています。
CX先進国のアメリカでは、CXに取り組んでいる先進企業とそうではない企業とで、株価の上昇率が約10倍、投資対効果については約7倍の差がつくというデータも出ています(上図参照)。
つまり、CXの良し悪しは企業の成長にダイレクトに反映されるわけです。
「顧客満足度」と「コスト削減」を両立させることが必要
一方で、多くの企業で大きな悩みの種になっているのではないかと思いますが、顧客満足度とコスト削減というのは、顧客満足度を上げようとすると、コストが大きくなってしまう、という二律背反の構造を抱えていました。
この両者の関係を最適に成立させていくことが必要であり、この問題に対して生成AIも含めた解決が可能なのではないか、と考えています。
これまでの常識では、顧客体験を上げるとコストも上がってしまいましたが、トランスコスモスがいま注力しているのは、顧客体験をしっかりと上げつつ、コストは下げていくという取り組みです。
「顧客体験向上」と「コスト削減」を両立させるには「自己解決」が重要
次の図は、生命保険業界の事例で、「手続きで困った場合にどのような手段で解決しましたか」というアンケートを実施した結果です。
これを見ると、実は「手続きに困ったことがない」という人が約50%で、「検索サイトやアプリから自己解決する」という人が約20%います。
一方で、調べても解決ができずに、コンタクトセンター(コールセンター)にチャットやメール、電話で問い合わせするという解決手段を講じた人があわせて約20%程度いました。
また「調べずに最初から電話で解決する」という顧客もいます。
この構造バランスは、企業によってかなり異なりますが、これを踏まえると、顧客体験を向上させつつコストは下げたいというときにもっとも有効なのは、「顧客が手続きに困らない」「自己解決させる」という部分をまずしっかり強化することと言えます。
その上で、電話などの有人チャネルに入ってきた問い合わせについては、オペレーションの効率を上げていくことも非常に重要です。
今トランスコスモスが行っているのは、これらの課題に対して、生成AIを活用することで更なる効率化とユーザビリティの向上を実現しようという取り組みです。
トランスコスモスが支援する3つのコンタクトセンター向け生成AI活用
実際に生成AIを使って行おうとしていることは大きく分けると以下の3点です。
・ユーザー対応支援 |
まず1点目は、ユーザー対応の支援です。先ほどベイン・アンド・カンパニー様のお話の中にも「生成AIの導入は、まず内部改善・内部利用からが多い」というお話がありました。
しかし、そこから更に「次はユーザー対応につなげていきたい」というニーズもありますので、その部分の準備を進めているところです。
ユーザー対応支援に関して、現在は「社内問い合わせの自動応答」での活用がよく見られます。
また、エンドユーザーへの対応自動化については、問い合わせいただく方が窓口につながりやすいような環境を提供していくという目的が多いでしょう。
次に、管理者の支援です。オペレーターから管理者へのエスカレーションや、AIでのロールプレイングなどをすることで、コンタクトセンターにいる管理者の負担を軽減させることができます。
実際に、問い合わせデータを活用して、今までできていなかったナレッジ・Q&A強化や、オペレーション品質の向上に注力させていくというような取り組みをしています。
そして3点目は、オペレーター支援です。顧客との会話の要約や、適切な回答のレコメンド、品質チェックといった取り組みをしています。
といっても、基本的にはオペレーターさんの負担を軽減して自走させていき、パフォーマンスを最大化させていくことが目的です。
中でも特に、生成AIは「会話の要約」に対して高い効果が出やすい領域だと感じています。
生成AIを活用した顧客対応の具体的なプロセス
さて、以下の図は、生成AIを活用した顧客対応を、プロセスに起こしたイメージ図です。
上段は、標準的ないわゆるコールセンター(=電話チャネル)のプロセスです。
顧客に困りごとが発生すると、まずWeb検索をするか、あるいは冊子などから電話番号を探して電話をします。
コンタクトセンターのオペレーターは、オープニングで「お電話ありがとうございます」と言ったあとに用件を確認し、必要に応じて本人確認をします。
そして、解決策を検討して顧客にアナウンスし、クローズします。
そのあとは、コールセンターシステムがあれば、そこに問い合わせのカテゴリを入力したり、問い合わせ記録を残したりという作業をして、1件の対応が終わる、というのが標準的なプロセスでしょう。
一方、生成AIを使うことによって、この流れを効率化して、これまでできなかったことをすることができるようになります。
特に、真ん中の「応対・接客/後処理」という部分で、AIによってスクリプトの最適化やナレッジを検索する時間の短縮が可能になり、「トークタイム=顧客との会話時間」を最適に短縮することができるでしょう。
また、後工程に関しては、顧客記録を入力する部分で、顧客との会話を要約することによって、記録作成にかかる時間を短縮します。
さらにもうひとつ、実はこの会話を要約するタイミングで、VOC(=顧客の声)を収集したり、問い合わせの中からQ&AやFAQを抽出したりすることも可能です。
これらのデータを活用して、コンテンツやAIの強化といった取り組みにつなげていくことも行っています。
続いてトランスコスモスが手がけたコンタクトセンターの導入事例をご紹介します。
※続きは限定公開です。すべての内容を閲覧するには、フォームにご記入ください。
7.生成AIを活用したユーザー対応AI「DEC Support」
ここまで、コンタクトセンター(コールセンター)における生成AI活用についてのウェビナー内容をレポートしました。
それを踏まえて、最後に最新の取り組みとして、生成AIを活用したユーザー対応のAI「DEC Support」についてご紹介しておきましょう。
トランスコスモスでご提供している生成AI自動回答ボット「DEC Support」は、生成AIが複数のFAQから回答を要約することで、自己解決率と満足度を向上したユーザー対応を行うことができます。
また、有人チャットへシームレスに切り替えができ、迅速な解決へと導くことが可能です。
メンテナンスはFAQデータの更新のみで、シナリオの修正などは不要なため、工数削減も併せて行うことができます。
顧客とのやりとりの中で有人対応が必要になった場合には、シームレスにコミュニケーターに交代することも可能です。
「ユーザー対応に生成AIを導入したい」という場合は、 |
まとめ
いかがでしたか?
生成AIについて知りたかったことがわかったかと思います。
ではあらためて、記事の要点をまとめましょう。
◎生成AIを活用して、カスタマーサービスの高度化が可能
◎コンタクトセンターにおける生成AIの活用例は、
オペレーターサポート | ・高度な情報検索 |
顧客対応 | ・チャットボット |
顧客インサイト活用 | ・オムニチャネルでの予測NPS |
◎生成AIの活用でコンタクトセンターに期待できる効果は、
・コール自体の抑制 |
この記事を踏まえて、あなたのコンタクトセンターが顧客体験をより向上させ、コスト削減も実現できるよう願っています。