
顧客接点とは、企業、もしくはお店などが顧客と接する一連の機会のことです。
たとえば、お店での接客や営業活動、SNS運用、YouTubeの広告、展示会やオンラインセミナーなど、顧客と企業が接する機会は購入・契約するタイミング以外にも、さまざまにあります。
ただし顧客接点について理解するためには、どのような種類や戦略があるのか、実際にどのような成功事例があるのかについても知っておく必要があります。そうすれば、顧客接点について具体的なイメージを持つことができ、自社における顧客接点強化のイメージもつきやすくなります。
そこで本記事では、以下の内容をお伝えしていきます。
・顧客接点とは |
この記事を読むことで、顧客接点とはどういうものなのかを具体的にイメージできるだけでなく、さらには自社で顧客接点を強化するためのポイントを知って実行できます。
ぜひ最後までお読みください。
1.顧客接点とは
まずは、顧客接点とはどういうものなのか、について解説していきます。
1-1.顧客接点とは、企業やお店などが顧客と関わる「場所」や「手段」のこと
顧客接点とは、企業やお店などが顧客と関わる「場所」や「手段」のことをいいます。主に「タッチポイント」とか「コンタクトポイント」とも呼ばれます。
たとえば、実際に顧客と接する店舗やコンタクトセンター(電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)の応対だけではなく、テレビCMやYouTube広告、チラシやDMなどは、顧客と企業の顧客接点といえます。
また、営業活動や展示会やSNSなどの発信も、顧客と企業が接する顧客接点と呼べるのです。
インターネットが普及する以前では、テレビやラジオのCMや雑誌広告、チラシ、コールセンター、ダイレクトメール、店頭での接客や営業活動などがメインの手法でした。
ところが、スマートフォンが普及し、インターネットが一般化されると、WebサイトやSNS、アプリ、メールマガジンなどの新たな顧客接点が増えたため、購入に至るまでの経路が多様化しています。
企業・お店が顧客と関わる「顧客接点」は、時代の変化にともなって、その手法も変化しているのです。
1-2.顧客接点の強化とは
マーケティングにおいて、「顧客接点の強化」が重要であるといわれています。
しかし、「顧客接点を強化するってどういうことなのか、いまいちイメージがつかめない…」という方もいるのではないでしょうか。
「顧客接点の強化」とはつまり、顧客接点の種類(チャネル)を増やしたり、自社が持つ顧客接点の品質を向上させたりすることです。
「顧客接点の種類(チャネル)を増やす」とは、具体的には
・店舗を追加する
・広告の種類を増やす
・コンタクトセンター(コールセンター)の問い合わせ手段を増やす
等が挙げられます。
また、「自社が持つ顧客接点の品質を向上させる」とは、
・店舗であれば商品を見やすく陳列する
・広告やチラシを見やすくする
・コンタクトセンターであれば応対のクオリティを上げる
というとイメージがつきやすいかと思います。
このように、「顧客接点の強化」というのは、主に「顧客接点の種類を増やす」「自社が持つ顧客接点の品質を向上させる」という2種類の手段で達成できるものです。
つまり「顧客接点の種類を増やす」「自社が持つ顧客接点の品質を向上させる」という2点は、そのまま「顧客接点を強化するための戦略」になります。
それぞれの戦略について、詳しくは「3.顧客接点を強化するための戦略2パターン」でご紹介しているので、すぐに知りたい方はそちらをご覧ください。
2.顧客接点が重要視される4つの理由
それではなぜ、顧客接点が重要視されるようになっているのでしょうか。
その理由は以下の4点です。
2-1.売上につながるマーケティング施策を行えるようになるため
顧客接点が重要視される1つめの理由は、売上につながるマーケティング施策を行えるようになるためです。
顧客はなにか商品やサービスを購入するまでに、いくつかの顧客接点を通過します。たとえば、「SNS→WEBサイト→ECサイトで購入」などです。
その一つ一つの顧客接点を時系列で並べてみると、顧客がそのプロセスでどんな体験や心理的変化を起こすのか理解しやすくなります。顧客の視点に立って「どのようなタイミングで」「何を感じているのか」がわかり、「このタイミングで顧客はこう思っているから、こういった施策を打つべきだ」とマーケティング施策を考え実行できるようになるので、顧客が購入・契約してくれやすくなり、売上を伸ばせます。
たとえば、BtoB向けサービスのマーケティング施策を考える際に、以下のように顧客接点を時系列にまとめれば、どのようなステップを踏み、各ステップでどのような行動をしているのかを把握でき、どのような心理変化が起こるのかを顧客の視点で推測できます。
その結果「無料セミナーのあと、検討に入る段階で、コストが懸念点になりそうなので、セミナー後に参加者へ送るメールで、割引できるクーポンを送るようにしよう」など、顧客視点のマーケティング施策を考えられるようになります。
このように、顧客接点が重要視されているのは、その接点一つ一つを時系列で並べれば、顧客の心理状況を把握でき、顧客の心理に合わせたマーケティング施策を考えられるようになるからなのです。
ちなみに、顧客が商品やサービスを知って、購入・契約に至るまでの顧客接点を時系列で見える化し、そのプロセスでどんな体験や心理的変化を起こすのかを把握することを「カスタマージャーニー」といいます。
カスタマージャーニーに興味がある方は以下が参考になるので是非ご確認ください。
2-2.新規顧客の獲得ができる可能性があるから
顧客接点が重要視される2つめの理由は、顧客接点を増やすことで新規顧客の獲得ができるためです。
もともと持っている顧客接点に加えて、新しく顧客接点を追加することで、これまでの顧客接点では出会うことのできなかった新規の顧客とつながることができ、アプローチする機会ができるため、新規顧客を獲得できる可能性があるのです。
たとえば、対面営業のみだった顧客接点に加えて、Web広告を出したり、SNSを運用したりすることで、これまでアプローチできていなかった新規の顧客層に対して、商品・サービスを知ってもらったり、購入・契約してもらうことができます。
顧客接点を新しく創り出すことで、新しい客層に対してもアプローチが可能になり、新規顧客獲得ができるようになるため、顧客接点は重要視されているのです。
2-3.企業イメージの向上ができるため
顧客接点が重要視される3つめの理由は、企業イメージの向上ができるためです。
顧客接点は、自社の商品・サービスをアプローチできる場であり、うまく活用すれば自社のイメージを向上できるのです。
たとえば、顧客接点の一つであるテレビCMや、YouTubeやWEBの広告では、自社の狙ったターゲット層に、商品・サービスをおしゃれさや面白さ、便利さなどでアピールし、自社のイメージやブランドを向上させる手法が一般的によく使われています。
これらは企業が自社の商品やサービスを顧客に向けて発信することで、よいイメージで認知してもらうために実施します。つまりこれらの顧客接点で自社のイメージを発信することによって企業イメージを向上させようとしています。
2-4.顧客満足度の向上ができるため
顧客接点が重要視される4つめの理由は顧客満足度の向上ができるためです。
顧客接点では、顧客の疑問点や問題を解決するような機能をもっているものもあります。お問い合わせフォームや電話、チャットやメールなどです。
顧客の疑問点や問題を、顧客接点で解決することができれば、顧客は企業に対する満足度を高めるでしょう。
たとえば、コンタクトセンターの応対においては、自社の商品・サービスに対する疑問点や問題を解決することによって、顧客満足度を向上させたり、応対によっては、「またこの会社の商品を購入したい」といったように、ファンになってもらえたりする可能性があります。
顧客接点は顧客へアプローチをすることによって企業イメージの向上や顧客満足度の向上によって、次の購入や契約につなげるための場となるために、重要視されています。
3.顧客接点を強化するための戦略2パターン
先に記載したとおり、顧客接点を強化するためには、上記2つの方法があります。
近年、多くの企業が顧客接点を強化することに注力しています。なぜなら、顧客接点はただ持っているだけでは、2章で述べたような顧客接点のメリットを得ることはできないからです。
この章では、効果的な顧客接点を強化するための戦略を、上記2パターンを詳しくご紹介します。
3-1.顧客接点を増やす
顧客接点を強化するための戦略1つめは、「顧客接点を増やす」です。従来から持っている顧客接点に、新たにチャネルを追加することで、顧客接点を増やします。
そうすることで、以下の2つが可能になります。
①カスタマージャーニーが把握でき、売上につながるマーケティング施策を行えるようになる |
たとえば、店舗での接客のみだった顧客接点に加えて、Web広告を出したり、SNS運用をしたり、ECサイトを開設したりすることで顧客接点を増やせば、顧客はさまざまな顧客接点を通過して購入にいたるため、「商品・サービスを知ってから購入・契約までのプロセス」をより詳細に知ることができ、質の高いカスタマージャーニーとして把握できるので、顧客視点とズレのないマーケティング施策を行えるようになります。
また、従来とは異なる顧客接点を持つことになるので、これまでアプローチできなかった新規顧客に興味を持ってもらえ、購入・契約してもらえる可能性があるのです。
顧客接点を強化してそのメリットを得るためには、このように「顧客接点を増やす戦略」はひとつの手でしょう。複数の接点を持つ「マルチチャネル」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ちなみに、顧客接点を増やす際に、どの顧客接点を増やす対象にするか迷う場合には、「デジタル化された顧客接点」を増やすと良いでしょう。
デジタル化された顧客接点とは、たとえば「SNS」「チャット・チャットボット」「オンライン接客」「オンラインセミナー」など、IT技術が取り入れられたツールを使用する顧客接点のことです。
なお、トランスコスモスではコンタクトセンターの顧客接点をどのように増やすべきかを診断する『コンタクトセンターアセスメントサービス』や、具体的にチャットやチャットボットのサービスを導入する『DEC Supportサービス』を提供しています。ご興味のある方は以下から資料をご確認ください。
3-2.顧客接点ごとの品質を高める
顧客接点を強化するための戦略2つめは、「顧客接点ごとの品質を高める」です。
顧客接点の種類によって品質の高め方は異なりますが、
- 接客や営業、コンタクトセンター(コールセンター)であれば「対応品質を高める」
- 広告やチラシ、WebサイトやCMであれば「デザインやわかりやすさ、見やすさの品質を高める」
- SNSであれば「SNS担当を置いて、顧客に反応してもらえるような品質の投稿をしてもらう」
- DMであれば「顧客の嗜好にあった商品を提案する」
などが考えられます。
自社のWebサイトのケースで例えると、サイトを見やすく、わかりやすくしたり、デザイン性の高いものにすることによってUI(ユーザーインターフェース)の品質が向上するため、利用者目線では好感が持てるようになります。結果、サイトを見た顧客の企業イメージを向上できます。
また、コンタクトセンター(コールセンター)の事例を紹介すると、オペレーターの顧客に対する対応の正確さを向上して品質を高めることを目標に、オペレーター向けFAQシステムを導入し、その結果、対応の正確性が担保され、対応品質が向上します。その結果、顧客の満足度は向上するでしょう。
このように、顧客接点を強化する際には「顧客接点ごとに品質を高める」というのもひとつの戦略として有効なのです。
とくに「利用する顧客の多い顧客接点」から優先的に、顧客接点の品質を高めていくことで、顧客接点を強化できます。
顧客を満足させるFAQの作り方はこちらの記事で詳しく解説しています。
4.顧客接点の種類とそれぞれの販売手法
顧客接点にはどのような種類があるのでしょうか。従来よりオフラインやオンラインでの顧客接点をどのように利用していくべきかが叫ばれてきましたが、具体的な顧客と繋がる方法や販売戦略を立てる手段として以下4つに分類して、それぞれの内容と提供者の一般的なメリット・デメリットを紹介します。
・オフライン |
4-1.オフライン
オフラインの顧客接点とは、テレビ・ラジオなどの電波やインターネット上以外の顧客接点以外の顧客接点を指します。
具体的には、以下のような種類があります。
・店舗での接客 |
オフラインの顧客接点のメリット・デメリットは以下のとおりです。
オフラインの顧客接点 | |
メリット | ・実際に顔を合わせる顧客接点では、顧客の興味を喚起し、顧客と信頼関係を築きやすくなる |
デメリット | ・顧客接点を持てる顧客の人数はオンラインと比べると少なくなる |
4-2.オンライン
オンラインの顧客接点とは、インターネット上での顧客接点のことです。
具体的には、以下のような種類があります。
・webサイト |
メリット・デメリットは以下のとおりです。
オンラインの顧客接点 | |
メリット | ・情報を配信するまでのスピードが早い |
デメリット | ・Webの知識やスキルが求められる |
オンライン接客の成功事例についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
4-3.O2O
O2Oとは「Online to Offline」の略で、オンラインからオフラインへの購買行動を促すマーケティングの手法です。
スマートフォンが普及し、いつでもどこでもインターネットにアクセスできること、そしてSNSによる情報共有が一般的になってきているため、O2Oは注目されるようになりました。
O2Oは、たとえば以下のようなものがあります。
・SNSやメールマガジンでクーポンを配布し、クーポン利用のために来店を顧客に促す |
メリット・デメリットは以下のとおりです。
O2Oの顧客接点 | |
メリット | ・新規顧客の獲得に活用しやすい |
デメリット | ・クーポンなどを発行してお得に購入できるため、集客はしやすいものの、顧客一人あたりの単価が上がりにくい |
4-4.OMO
OMOとは「Online Merges with Offline」の略で、オンラインとオフラインの融合という意味です。
オンラインとオフラインの境界線をなくし、個々の顧客に最適なサービスを提供することを目指しています。
現在では、スマートフォンが普及し、常にオンラインでつながっているのに加え、顧客が商品だけでなく「どこで」「どんな状況で」「どんな方法で」購入したのかという購買体験も「価値」とみなされるようになり、購入の決め手になることも多い状況です。
そこで、オンラインとオフラインで収集した、顧客個人にひもづいたデータをもとにして、個々の嗜好に合うサービスを提供し、インターネットと現実との境目を感じさせず、商品購入やサービス利用が可能なOMOが注目されるようになりました。
OMOはたとえば、以下のようなものがあります。
・あるアパレル企業では、店舗で発行している会員カードの顧客データとオンラインストアの会員データの統合を行い、顧客の詳細な買い物履歴を個人単位で把握。そしてこれらのデータをもとにして、顧客に購入した商品のスタイリング画像を提案し、顧客にコーディネートの参考にしてもらうなどして、購買体験を提供している |
OMOの顧客接点 | |
メリット | ・個々の顧客に最適な商品やサービスが提案・提供できる |
デメリット | ・個人情報の取り扱いは厳重に行う必要がある。 |
OMOについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
5.顧客接点を強化するための2つのポイント
顧客接点はただ理解を深めるだけでなく、強化するためのポイントを知っておくことで、実際に自社のマーケティングにも取り入れていくことが可能です。
そこで5章では、顧客接点を強化するための2つのポイントをご紹介します。
5-1.カスタマージャーニーマップを作成する
顧客接点を強化する際には、カスタマージャーニーマップを作成しましょう。これは、「顧客接点を増やす」ことで強化する方法です。
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを知って、購入・契約に至るまでの顧客接点を時系列で見える化し、そのプロセスでどんな体験や心理的変化を起こすのかを書き込んだものです。
カスタマージャーニーマップを作成することによって、先にも述べたとおり、ベストタイミングで顧客に刺さるマーケティング施策を実行できるようになり、その結果、売上を向上させることが可能です。顧客の視点に立って「どのようなタイミングで」「何を感じているのか」がわかり、「このタイミングで顧客はこう思っているから、こういった施策を打つべきだ」と考え実行できるようになるので、顧客が購入・契約してくれやすくなり、売上を伸ばせます。
なお、さらに詳しく、「カスタマージャーニー」についてや、「カスタマージャーニーマップ」の作り方について知りたい方は、以下の記事もぜひ、あわせてお読みください。
5-2.顧客に関する情報は一元管理する
顧客接点の品質を向上させて、接点を強化する際には、顧客に関する情報は一元管理するようにしましょう。これは、「顧客接点の品質を向上させる」ことで強化する方法です。
顧客に関するすべての情報を一元管理することで、これまで散らばっていた顧客の情報をオンライン、オフライン関係なく関連付けて整理できるようになります、そして、各商品やサービスを利用する顧客像が読み取れ、顧客接点の品質向上に役立てられます。
たとえば、あるアパレルブランドのECサイトにおける顧客の「閲覧履歴」や「購入履歴」、実店舗での「購入履歴」や「来店記録」などを顧客ごとに一元管理する場合です。
この場合、それぞれの顧客の嗜好性がわかり、DMにおすすめの商品を載せたり、おすすめのコーディネートなどを紹介でき、顧客に対する対応品質を向上できます。
その結果、顧客満足度を向上でき、継続して購入してもらえるなどのメリットがあるのです。
まとめ
この記事では顧客接点の基本知識と、成功するためのポイントをお伝えしました。ここで改めて本記事の内容をおさらいしましょう。
◆顧客接点とは、企業やお店などが顧客と関わる「場所」や「手段」のこと
◆顧客接点が重要視される4つの理由
・売上につながるマーケティング施策を行えるようになるため |
◆顧客接点を強化するための戦略2パターン
・顧客接点を増やす |
◆顧客接点の4つの種類
・オフライン |
◆顧客接点を強化するための2つのポイント
・カスタマージャーニーマップを作成する |
また、トランスコスモスではカスタマージャーニーに添ってコンタクトセンターのタッチポイントを整理する、コンタクトセンターアセスメントサービスを提供しています。ご興味のある方は以下より資料をご確認ください。
本記事が参考になれば幸いです。