※本記事は2020年4月6日に5A Loyalty Suiteに掲載された記事を転載しています。 |
今回の記事では、協働というトレンドについて考えてみます。
現代ではさまざまな技術発達により、個人や集団が常にインターネットに接続し、交流できるようになりました。安価なコンピューター・タブレット・スマートフォンの登場や、低コストのインターネット回線、オープンソースによってインターネット上でのコミュニケーションは飛躍的に発達しています。
そんな中、顧客の意見を参考にして製品を開発する「協働」という概念が注目されてきました。
1.ソーシャルメディアは2つのカテゴリーに分類できる
接続性の時代に、顧客に大きな力を与えているのはソーシャルメディアです。ソーシャルメディアには、大きく分けて2つのカテゴリーがあります。
ひとつは表現型のメディアで、ブログ、Twitter、Facebook、Instagram、YouTubeなどのソーシャル・ネットワーキング・サイトで、顧客自身が表現する場となっています。
もうひとつは協働型のメディアで、オンライン百科事典のWikipedia、レストラン評価サイトの食べログ、レシピサイトのクックパッドなどが挙げられます。
これらは集合知的なコンテンツ内容を協働により生成するメディアです。
1-1.表現型のソーシャルメディア
近年はソーシャルメディアの活用、検索エンジンの技術発達のため、顧客の声の影響力が無視できない状態になっています。顧客は自身の考えをブログやTwitterで発信し、他の顧客と意見を共有できます。
その内容の多くは私的なものですが、ニュースに対して論評したり、企業の製品の使用感についてレビューを書いたりするブロガーの中から、影響力が高い人物は、インフルエンサーとなり企業から金銭を得ることも増えています。
かつてミニブログと言われたTwitterも、いまや情報発信のスタンダードになっています。日本のフォロワーランキング上位を占めるのは、企業ではなく個人となっているのも興味深い事実です。
1位で韓国のヒップホップボーイズグループであるBTSは1,336万人で、ソーシャルメディアをうまく活用して人気を得たグループでもあります。
続いてZOZO創業者の前澤友作さんの1,072万、ダウンタウンの松本人志さんの917万、お笑い芸人の有吉弘行さんの776万フォロワーとなっており、個人が企業を超えて影響力を持つ時代です。
企業アカウントは、ローソンの721万、スターバックスの610万フォロワーが1,2を争う存在です。(2022年8月末現在のフォロワー数)
YouTubeも個人アカウントから企業アカウントまで数多くのアカウントが存在します。個人で活躍するヒカキン、はじめしゃちょーなどビデオ映像を作って全世界へ発信するYouTuberは、今ではなりたい職業ランキングにも入るほど、影響力のある存在となっています。
ソーシャルメディアが自己表現の要素を強めるにつれて、顧客は自分の意見や経験によって他者に影響を与えられる存在になっています。
ブロガーが書いた製品レビューやYouTuberが撮影した製品紹介は、企業のCMでは伝わらない悪い点も含めた感想やCMよりも長尺で詳細な解説など、マスメディアに真似できない内容となることも多く、広告としても存在感を増しつつあります。
1-2.協働型のソーシャルメディア
一方、Wikipedia、食べログ、クックパッドなどは、顧客の自主的な活動により支えられているメディアです。
ネット上の百科事典コンテンツの編集、レストランのレビュー投稿、レシピの投稿など、無数の話題を自主的に作成する膨大な顧客によって成り立っています。
誰もが編集・投稿できるCGM(Consumer Generated Media)は、顧客が編集作業を続けることにより莫大な情報を有することになります。
このようなメディアは圧倒的なWEBサイトのページ数となることが多く、顧客が常にネットに接続できる今日では、顧客の検索行動の受け皿としても機能し、大きな自然検索流入を獲得しているケースが増えています。
参考記事:UGCとは/CGMとは
運営面では、ユーザーの初回書き込みのハードルを下げるか、いかに継続して書き込みができるようにするかなど、ゲーミフィケーションを使った利用促進施策も実施されています。
2.協働マーケティングとは
協働マーケティングとは、企業が顧客にパートナーとして協働するように働きかけることです。
すでに顧客は技術・ソーシャルメディアの発達により自身の意見を発信することで、企業のブランディングに影響を及ぼす力をつけてきています。マーケターはもはや自社のブランドを完全にはコントロールできず、自社のプロダクト・サービスについて顧客の集合知と競争することになるのです。
顧客がマーケターの仕事の一部を奪っているこの状況は、今後も続くとみられるため、顧客と良好な関係を築き、顧客と協働することが理想的な関係といえるでしょう。
顧客の考え方を知り、市場の知見を得るために顧客の声に耳を傾けることから協働がはじまります。協働が高度になれば、製品やサービスの価値創造の中心的な役割を果たすでしょう。
こういった協働は、コネクトアンドデベロップメントと呼ばれ、R&D(研究開発)の新しい手法となってきています。
たとえば、P&Gでは売上の35%は、顧客との協働によって生まれたものと言われており、商品例としてはクレストスピンブラシ等が挙げられるでしょう。
もちろん、日本でも顧客との協働に力を入れている企業が現れています。顧客と直接つながり、顧客と対話を続けることを重視し、D2C(Direct To Customer)やCRM(Customer Relationship Management)に力を入れる企業が増えているのです。花王の運営する会員制サイト「Kao PLAZA」では、キャンペーン、モニターアンケート、製品レビュー等を実施しています。
大規模な協働もあれば、小さな協働もあります。簡単なところでは、スマホアプリのフィードバック欄から改善点を見つけ出し、アプリを改修していくのも協働にあたるでしょう。顧客の声を聴き、自社プロダクトの改善に活かすのも立派な協働です。
また、前項で挙げた影響力のあるブログへのスポンサード記事の出稿や食べログ内でのお店のレビュー投稿促進、試食レビューなども協働にあたります。
協働マーケティングでは、顧客は単なる消費者ではなくパートナーです。パートナーとして、顧客に寄り添う関係になるために、企業・ブランドは人間的側面を持ち、顧客が接しやすい環境を作る必要も出てくるでしょう。
企業の人間的側面については下記の記事で触れていますのでぜひご覧ください。
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