「コールセンターに業務フローは必要?どのように業務フローを作成するのか知りたい」
「コールセンターの業務フローを作成する際の手順や記号が分からない」
コンタクトセンター(コールセンター)で勤務をしていると目にする業務フロー。見たことはあっても、必要性や作成方法が分からない方は多いのではないでしょうか。
そもそも業務フローとは下記のように業務の流れを図で示し、見える化したものです。
業務フローを見ることで、誰がいつどのような業務をしなければならないのかすぐに把握できます。コンタクトセンター全体で共通認識が持てるため、足並みを揃えて効率よく業務をするためにも必要です。
実際に業務フローを導入すると、下記のような効果があります。
業務フローを導入する効果 |
---|
・初めて業務に携わる人でも全体の流れが理解でき業務しやすくなる |
応対品質を均一化したい、新人研修をスムーズに進めたいなどコンタクトセンターの課題を解決するためにも、業務フローの作成は欠かせません。
そこでこの記事では、コンタクトセンターの業務フローの必要性や作成方法を詳しく解説していきます。作成例も紹介しているので、完成イメージが沸きやすくなるかと思います。
◎業務フローとは何か |
最後まで読めば、コンタクトセンターの業務フローとは何か、どのように作成すればいいのかがよくわかるはずです。この記事で、あなたがわかりやすい業務フローを作成できるよう願っています。
1.コンタクトセンター(コールセンター)の業務フロー
「コンタクトセンター(コールセンター)の業務フロー」について考える前に、まず「業務フロー」とはどんなものか、なぜ必要なのか整理して説明します。
1-1.業務フローとは
業務フローとは業務の流れを図で示し、見える化したものです。業務を円滑に進めるには、どのタイミングで誰が何をするのか理解している必要があります。
業務フローを作成すると業務に携わる社員全員が共通認識を持つことができ、業務を進めやすくなります。コンタクトセンターでは、下記のようなシーンで業務フローを活用できます。
【コンタクトセンターでの業務フローの一例】 ・入電から後処理までの流れを明確にする業務フロー |
例えば、コンタクトセンターに入電があったときの流れは下記のような業務フローで可視化できます。業務フロー図を見ることで、着信から通話までの流れを誰もが同じように理解できます。
※下図の業務フロー図の見方は「1-3.コンタクトセンター(コールセンター)の業務フローの作成例」で解説します。
※待ち呼アナウンスとは:コンタクトセンターが混み合い顧客につなげないときに待機中に流すアナウンスや音楽のこと
※IVR(Interactive Voice Response)とは:音声ガイダンスで自動応答を行うシステムのこと。プッシュ操作や音声認識に応じてあらかじめ録音してある音声を自動再生しオペレーターの割り振りなどを行う。IVRの機能については下記の記事で詳しく解説しています。
1-2.コンタクトセンター(コールセンター)における業務フローの必要性
コンタクトセンター(コールセンター)では、業務フローを作成することで下記の3つのメリットが得られます。
1)担当範囲の明確化 |
担当範囲の明確化
まず「1)担当範囲の明確化」についてですが、顧客から注文を受けた場合、下記のような作業が発生します。
・注文内容をシステムに入力する |
これをどこまでコンタクトセンターが担当するのか、どこから他部署に依頼するのかを切り分けることで、作業の流れをスムーズにし、あわせて責任の所在も明確にすることができます。
例えば、顧客との対応で注文受付時に「今日発送します」と伝えたとします。その際、倉庫に在庫がなかったり、倉庫の出荷時間を過ぎていたりした場合、発送することができず顧客に間違った案内をしたことになってしまいます。
このようにならないように、システムや倉庫側の担当と運営ルールを取り決めて「案内可能な範囲」をルールとして取り決め、「〇時までは当日発送可能と案内してよい」といったルールを作り責任範囲を明確にします。コンタクトセンターで案内して良い条件と責任範囲を整理しましょう。
タッチポイントの把握
次に、「2)タッチポイント(顧客との接点)の把握」に関して、コンタクトセンターは顧客にとってその企業の「顔」です。
そのため、どんな問い合わせにも戸惑うことなく対応できるよう、顧客がどのタッチポイントでどのような行動をとるのか、自社側から顧客はどのような対応を受けるのかを把握しておく必要があります。
特に最近ではリアル接点の他にオンラインの接点も増加しているので一貫した対応が難しくなってきています。お客様とどこでどんな接点をもったのかを記録し、一元管理された対応を実践しましょう。
他業務への影響範囲の理解
そして「3)他業務への影響範囲の理解」についてです。
もし自分の作業が遅れたり、ミスをしてしまったりした場合に、他のどの作業・どの部署に影響するかを知っておく必要があります。
「顧客からの注文を入力ミスしてしまった」「注文にキャンセルがあった」などという場合、自分の作業だけを見ていれば、注文内容を修正すればよいだけかもしれません。
しかし、実際はいろんな部署が連動することで、お客様に製品やサービスを提供しています。業務フローで全体像を把握していれば、「注文票の作成担当者と倉庫にもすぐに連絡する必要がある」ということがわかるため、有事の際に影響範囲を最低限に抑える事ができるでしょう。
急な変更やミスなどのリカバリーのためにも、業務フローは必要だといえます。
それ以外にも、
・業務を見える化することで、改善点が見つけやすくなる |
といったメリットもあり、多くのコンタクトセンターで業務フローを作成しているのです。
1-3.コンタクトセンター(コールセンター)の業務フローの作成例
コンタクトセンターでの業務フローの必要性が理解できたところで、実際の作成例を2つご紹介します。
コンタクトセンター(コールセンター)に入電があったときの業務フロー
まずは、コンタクトセンターに入電があったときの手順を可視化している作成例です。
この業務フローでは基本的な流れと3つの分岐ポイントを示し、どのような対応をするのか明確にしています。
3つの分岐ポイント | |
---|---|
①営業時間 | ・営業時間内はIVRに接続する |
②IVRでの操作 | ・「1」の場合はオペレーターに接続する |
③オペレーターの割り振り | ・割り振りができる場合はオペレーターにつなぐ |
顧客がIVR操作をしたときに「1」の場合のみすぐにオペレーターに接続します。他のチャネルを選択した場合は別途フローを用意し、オペレーターが迷わず対応できるようにしています。
コンタクトセンター(コールセンター)と外部システムの連携を可視化する業務フロー
コンタクトセンターによっては、予約システムや顧客管理システムなど外部システムと連携をしながら業務を進めます。システムを使うことで業務が複雑化しやすいですが、業務フローを作成すると全体像を明確にできます。
下記の事例は、商品の予約を受けているコンタクトセンターが予約システムと連携するときの業務フローです。
オペレーターと予約システム、店舗に分けて、それぞれどのタイミングでどのような作業をするのか明確にしています。この業務では分岐ポイントは1つで商品がある場合は予約システムに予約記録を行い、商品がない場合はオペレーターが別の提案をします。
このように、業務フローを活用するとコンタクトセンター内外の業務を分かりやすくまとめられます。
コンタクトセンター内の業務フローの作成方法については下記の記事でも詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。
2.コンタクトセンター(コールセンター)における業務フロー作成の手順
では、実際に作成するにはどうすればいいのでしょうか?
その手順は以下の通りです。
STEP1 | 業務フロー作成の目的を明確化する |
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STEP2 | 業務に関わる担当スタッフ・担当部署を書き出す |
STEP3 | 必要な作業を洗い出す |
STEP4 | 作業を担当別に振り分ける |
STEP5 | 作業を時系列に並べる |
STEP6 | 業務フロー図を作成する |
では、詳しく説明していきましょう。
2-1.業務フロー作成の目的を明確化する
まず業務フローを何のために作成するのか目的を明確にしましょう。
考えられる目的としては、
◎業務をより効率化するための、改善点の洗い出し |
などがあるでしょう。その目的により、
▢フロー化する業務の範囲 |
といった書き方が変わってきます。
2-2.業務に関わる担当スタッフ・担当部署を書き出す
次に業務フローの内容に応じて関わってくるスタッフ、部署をすべて書き出していきます。
コンタクトセンターの場合であれば、
・オペレーター |
が主で、場合によって「営業担当部署」「発送担当部署」「修理担当部署」「取引先」などが加わることもあるでしょう。
業務フロー図では、この担当者ごとに以下のように作業を分けて記載していきます。この担当者別の枠(数赤枠内)を「スイムレーン」と呼びます。
スイムレーンには担当者だけでなく、システムを含むケースがあります。たとえば、予約システムや顧客管理システムなどコンタクトセンターで使うシステムを含めることも可能です。
2-3.必要な作業を洗い出す
担当者が出揃ったら、担当者の作業をすべて洗い出します。その際には、担当者それぞれにヒアリングをして、細かい作業まですべて挙げてもらってください。
具体的には、「お客様からのコールを受ける」という大まかなタスクではなく
・顧客の名前、顧客番号をヒアリングして入力する |
といったように、管理できる作業内容を聞き取りましょう。
また、同時に
・その作業に時間や手間はどれくらいかかるか |
なども聞いておけば、業務フローの改善に役立ちます。現状の業務フローと行うべき作業の業務フローを作成して、差を確認するといいでしょう。
このときにクレームやトラブル対応、緊急時の対策などのイレギュラーフローも洗い出し、不足があればどのように対応するのかを決めておくと安心です。
2-4.作業を担当別に振り分ける
担当者と必要な作業がすべてリストアップできたら整理します。
どの作業は誰が行うのか、もしあいまいになっているものや、特定の担当者が決まっていないものがあれば、ここできっちりと仕分けして、対応スイムレーンに設置しましょう。
2-5.作業を時系列に並べる
担当者と作業の仕分けができたら、時系列に並べましょう。コンタクトセンターの場合、顧客のコール内容や要望によって、作業の流れが分岐していきます。
例えば、
・注文の場合と問い合わせの場合 |
などで、次の担当者や作業が変わってきます。それらの分岐も含めて、作業と担当者を時系列で整理してください。
2-6.業務フロー図を作成する
ここまでできたら、いよいよ業務フロー図を作成しましょう。一般的には、ExcelやPowerPointで作成されることが多いようです。
まず、前述した担当者ごとに前掲のスイムレーンを作ります。そして、時系列ごとに作業を記載していき、流れがわかるように矢印でつないでいきます。
あまり細かく記載するとフロー図が長くなり、業務の全体像がわかりにくくなってしまいます。必要十分な内容をシンプルにまとめることを心がけましょう。
3.コンタクトセンター(コールセンター)における業務フロー図に使う図形・記号
前述したように、業務フロー図はわかりやすく作ることが重要です。そのために、図形や記号を活用してわかりやすくします。
コンタクトセンター(コールセンター)でも一般的なフロー図と同じルールを利用して作成していくことが主流です。一般的な図形や記号のルールを紹介します。
記号 | 名称 | 意味 |
---|---|---|
端子・開始(終了)図形 | 作業のスタートとゴールを示す | |
プロセス・作業・処理図形 | 一般的な作業、タスクに使われる | |
条件分岐・判断図形 | 「YES/NO」や「OK/NG」など、判断や条件によって次のプロセスが分岐する場合に使われる | |
ページ結合子 | フロー図がページをまたぐ場合に使われる | |
定義済み処理・サブプロセス | 詳しい業務内容を別の業務フロー図に記載する場合に使われる | |
準備 | その後の作業に向けての準備作業に使われる | |
データ図形・入出力 | データの入出力の際に使われる | |
手操作入力 | パスワードや情報など、手動で入力する際に使われる | |
手作業 | 作業の中でも、自動化されずに人の手作業で行うものに使われる | |
保存・保管図形 | 書類や帳票などを保存する際に使われる | |
書類・帳票 | 請求書や伝票、社内稟議書などの書類を表す | |
システム・データベース | データを保存するシステムやデータベースを表す |
これらの記号を使い分け、矢印でつなぐことで、細かい説明がなくてもひと目で業務の流れがわかるようになります。
特に、表に色付けをした最初の3種、「端子・開始(終了)図形」「プロセス・作業・処理図形」「条件分岐・判断図形」はよく使用するものですので、覚えておきましょう。
4.コンタクトセンター(コールセンター)における業務フロー作成のポイント
ここまでコンタクトセンターの業務フローの作り方を具体的に説明してきました。
よりわかりやすい業務フローを作成するためには、注意したいポイントが3つあります。
業務フローを作成するときのポイント |
---|
①業務の開始と終了を明示する |
この章ではそれを説明しておきましょう。
4-1.業務の開始と終了を明示する
業務フローにおける業務の「開始時点」と「終了時点」を、担当者ごとに明確に記載することが重要です。
自分の担当する作業がどこからスタートしてどこで終わるのかが把握できないと、各担当者が自分の業務範囲や責任範囲を理解できず、業務の流れが混乱してしまう恐れがあります。
担当ごとのスイムレーンに、前章で紹介した「端子・開始(終了)図形」を活用して、スタートとゴールを明示するようにしてください。
4-2.流れを整理する
業務フローを作成する際に起こりがちな問題として「記載漏れがないようにくわしく細かく書いた結果、複雑すぎてわかりにくくなってしまう」ことがあります。
そうならないためには、流れを整理して必要十分でシンプルなフロー図にしなければなりません。
具体的には、
◆記載する必要のないプロセスは削除して、最小限の項目で構成する →記載しきれない情報は、スイムレーンの右端に「業務詳細」「備考」などの欄を設けて記載する ◆各プロセスをつなげる矢印は、なるべく交差しないように整理して配置する |
といった工夫をしてください。
4-3.図形を活用する
そして、「3.コンタクトセンター(コールセンター)における業務フロー図に使う図形・記号」で紹介したフロー図用の図形や記号を活用してください。
どの図形にどんな意味があるのかを知っておけば、ひと目見ただけで業務の流れが把握しやすくなります。図形ごとに色分けすると、さらに視認性が上がるでしょう。
ただし、あまりたくさんの図形を使いすぎると逆にわかりにくくなってしまいますので、なるべく数は絞りましょう。
もし「それでは十分な情報が記載しきれない」という場合は、スイムレーンの右端に「業務内容の詳細」や「備考」欄を設けて、そこに情報を箇条書きなどで追加していくといいでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
コンタクトセンター(コールセンター)の業務フローについて、疑問が解消されたかと思います。
コンタクトセンターは企業によってミッションが違うため、業務フローを作っていないセンターも多いと思います。
しかし、最近のコンタクトセンターでは複数のチャネルでお客様をサポートすることが一般的になってきました。
その対応方法をわかりやすく理解するためには、チャネル毎にアセスメントを実施して業務フローを作成することをお勧めします。
トランスコスモスでは、そんなコンタクトセンターでどのような業務フローを設定したらよいかわからない、どのチャネルにどのようなフローを作ったら良いかわからない方に向けて、アセスメントサービスを提供しています。
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ではあらためて、記事の内容を振り返ってみましょう。
◎「業務フロー」とは、「業務の内容や流れをわかりやすく図で『見える化』したもの」
コンタクトセンターでは、フローの中に受電や架電、メール送受信など顧客対応が含まれる
◎コンタクトセンターで業務フローを作成する理由は、
1)社内の一連の業務のうち、どこからどこまでがコンタクトセンターの担当なのかを明確化するため |
◎コンタクトセンターにおける業務フロー作成の手順は、
STEP1 | 業務フロー作成の目的を明確化する |
---|---|
STEP2 | 業務に関わる担当スタッフ・担当部署を書き出す |
STEP3 | 必要な作業を洗い出す |
STEP4 | 作業を担当別に振り分ける |
STEP5 | 作業を時系列に並べる |
STEP6 | 業務フロー図を作成する |
◎コンタクトセンターにおける業務フロー作成のポイントは、
・業務の開始と終了を明示する |
以上を踏まえて、あなたがわかりやすい業務フローを作成できるよう願っています。