ウェルビーイング(Well-being)とは、身体的・精神的・社会的にすべてが満たされた状態を継続できることです。心身の健康だけでなく、生きがいや良好な人間関係など社会的な価値を含めて良好な状態を保つことがウェルビーイングの特徴です。
昨今は下記のような理由から、ウェルビーイングの実現に向けた取り組みをする企業や団体が増えています。内閣府もウェルビーイングの推進を掲げておりウェルビーイングとはどのような考え方なのか理解し、企業として取り組めることはないか検討することが大切です。
企業がウェルビーイングに注目する理由 |
①労働者のメンタルヘルスが悪化している |
そこでこの記事では、ウェルビーイングの定義や注目されている理由、考え方などの基礎知識をまとめて解説していきます。後半では、企業ができる具体的な取り組み方法にも触れているので必見です。
◎ウェルビーイング(Well-being)とは |
この記事を最後まで読めばウェルビーイングとはどのような概念なのか分かり、企業として取り組むべき施策を検討できるようになります。ウェルビーイングは社員の幸福度を高めるために欠かせない概念なので、ぜひ参考にしてみてください。
1.ウェルビーイング(Well-being)とは
冒頭でも触れたようにウェルビーイング(Well-being)とは、身体的・精神的・社会的のすべてが満たされた状態を指す概念です。良好という意味の「Well」と状態という意味の「Being」を組み合わせた言葉で、一人一人にとって身体的・精神的・社会的に満たされた情報が継続することを示しています。
1-1.ウェルビーイングとは
厚生労働省ではウェルビーイングを下記のように定義しています。
【厚生労働省の定義】
ウェル・ビーイング」とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念。
ウェルビーイングには、適切な考え方や正解はありません。幸せを感じられる瞬間や幸福度の基準は、一人一人異なるからです。
例えば、Aさんは仕事と家庭を両立できる生活に安心や幸せを感じるのかもしれませんし、Bさんは自分の夢が叶えられるように頑張ることにやりがいを感じているかもしれません。
また、Aさんにとっては裕福になることが自己実現に該当するかもしれませんが、Bさんにとっては裕福になることよりも周囲と楽しく過ごすことが理想的な未来かもしれません。
このように、一人一人の異なる考えや背景を踏まえて、誰にとっても身体的・精神的・社会的すべてが良好な社会を目指すことがウェルビーイングの考え方です。
ウェルビーイングは、世界保健機関(WHO)の「世界保健機関憲章前文」で下記のように記述されたことで広まったと言われています。世界保健機関憲章前文では健康は病気かどうかではなく、精神的にも社会的にも満たされている情報であると記述されています。
【世界保健機関(WHO)の世界保健機関憲章前文】
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。
1-2.ウェルビーイングは企業・教育・福祉など様々な場面で重要視されている
現在、ウェルビーイングは企業経営や福祉、教育など様々な場面で重要視されるようになりました。下記のように、各分野においてウェルビーイングを実現するための取り組みが活発化しています。
ウェルビーイングを実現するため取り組みの一例 | |
企業 | 組織の環境を整え社員の意欲やエンゲージメントを高めていく |
福祉 | 新しい技術を導入しながらストレスの少ない治療を行う |
教育 | 子ども一人一人の価値観を尊重し心の充足感を大切にする |
従来の企業は利益の拡大を優先し、社員の幸福度や満足度を後回しにするケースがありました。
ウェルビーイングでは社員が心身的に良好な状態を維持できるように、健康促進や福利厚生の充実などを実施します。また、社員一人一人の目標が実現できるように、積極的に学ぶ機会を提供しているケースもあります。
内閣府もウェルビーイングの実現に積極的で、2023年の「経済財政運営と改革の基本方針」では個人と社会全体のウェルビーイングの向上を目指すことや各施策のKPIとしてウェルビーイング指標の導入を進めることを記載しています。
参考:内閣府「経済財政運営と改革の基本方針におけるWell-beingの記載」
【ウェルビーイングと間違えやすい言葉】 ウェルビーイングと間違えやすい言葉に「Health」と「Happiness」があります。 「身体的・精神的・社会的の3つすべてを継続して良好な状態にする」という意味を持つのはウェルビーイングだけなので、間違えないようにしましょう。 |
2.企業がウェルビーイング(Well-being)に注目する理由
1章でも触れたように昨今はウェルビーイングの考え方に注目する企業が増加し、企業ごとに社員のウェルビーイングを実現するための取り組みを取り入れている事例が増えています。
企業がウェルビーイングに注目する理由には、次の4つがあります。なぜ、企業がウェルビーイングの実現を目指す必要があるのか理解できるので、ぜひ参考にしてみてください。
企業がウェルビーイングに注目する理由 |
①労働者のメンタルヘルスが悪化している |
2-1.労働者のメンタルヘルスが悪化している
1つ目は、労働者のメンタルヘルス(心の健康状態)が悪化していることです。
厚生労働省が公表している「令和5年度労働者安全衛⽣調査」によると、過去1年間(2022年11月1日~2023年10月31)にメンタルヘルス不調で1ヶ月以上休業しているまたは退職した社員のいる事業所は13.5%にのぼります。
また、精神障害による労災補償も年々増加しており、労働者の精神不調は深刻化していることが分かります。
■精神障害の労災決定件数
この背景には職場での人間関係や労働環境など、複数の要因があると考えられています。例えば、年々仕事量が増えて長時間労働が当たり前となっている企業では、疲労やストレスからメンタルヘルス不調に陥ることが考えられます。
また、年功序列の評価制度や偏った評価制度でしか評価してもらえない場合にも、不平等感や劣等感を抱きやすくメンタルヘルス不調につながります。
【労働者のメンタルヘルスが悪化する原因の一例】 ・パワハラやいじめなど人間関係のトラブル |
メンタルヘルスが悪化している社員が多くなると、企業を担う人材が不足し利益の縮小につながります。それだけでなく、社員が不安や不満を抱えやすくなり、企業内の雰囲気が悪くなるでしょう。社員が心身ともに前向きに仕事に取り組むためにも、ウェルビーイングが重要視されています。
2-2.労働者人口の減少で多様な働き方への対応が求められている
2つ目は、労働者人口が減少する中で多様な背景への対応が求められていることです。
総務省によると、日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少し続けています。2050年には少子高齢化と相まって、生産年齢人口は日本人口全体の50%前後になる予測です。
出典:経済産業省「2050年までの経済社会の 構造変化と政策課題について」
この状況で現在と同じような働き方を推奨していても、企業の力は衰退していくでしょう。
例えば、若手社員を中心に採用していても、今後は少子化が進むため若手社員に頼った企業の成長が難しくなります。また、年齢制限や働き方の制限を設けしまうと労働者不足が深刻化し、利益を創出できなくなる可能性があります。
今後の社会の変化に対応するためにも、社員一人一人の望む生き方に沿った豊かで健康的な人生を歩める多様な働き方への対応が欠かせません。
【ウェルビーイングを実現する多様な働き方への対応の一例】 ・テレワークや時短勤務などの導入 |
例えば、テレワークや時短勤務など働き方を選択できれば、育児や介護をしながら勤務を継続できる社員が増えるでしょう。また、家庭の事情で一時的に休職しても復帰できる仕組みがあれば、社会とのつながりが途絶えることがありません。
このように、ウェルビーイングの実現は、今後起こり得る人材不足対策にもつながります。
2-3.ワーク・ライフ・バランスが重要視されている
3つ目は、ワーク・ライフ・バランスが重要視されていることです。
ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と生活のバランスが取れている状態のことです。仕事は充実や喜びを与えるものではありますが、家事や趣味などプライベートでの充実があってこそ幸福度や生きがいは倍増すると考えられています。
つまり、仕事が多忙でプライベートがない場合や育児や介護で仕事ができない場合など双方のバランスが取れていない状態では、ウェルビーイングを実現しにくくなるのです。
米ギャラップ社が実施している「世界幸福度レポート2023」を見ると、日本の生活への満足度は47位と低いことが分かります。
世界幸福度レポート2023「最近の自分の生活にどれくらい満足していますか?」 | |
1位 | フィンランド |
2位 | デンマーク |
3位 | アイスランド |
4位 | イスラエル |
5位 | オランダ |
15位 | アメリカ |
47位 | 日本 |
※2020~2022年の3年間の調査結果 参考:ギャラップ社「世界幸福度レポート 2023」
日本では内閣府を中心に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」などを策定し、ワーク・ライフ・バランスが取れた社会の実現を目指しています。
企業においても社会を構成する組織として仕事とプライベートの双方のバランスを保ち、社員一人一人の幸福度を上げることが求められています。
参考:内閣府「「仕事と生活の調和」推進サイト・政府の取り組み」
2-4.SDGsの推進につながる
4つ目は、SDGs(エスディージーズ)の推進につながることです。SDGsとは「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現するための国際目標を指します。
2030年を期限に17のゴール・169のターゲットを設定して、日本だけでなく世界各国で積極的に取り組んでいます。SDGsの目標3にはウェルビーイングに関連する項目が設定されています。
SDGsの目標:3
すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)
SDGsでは世界各国の平均寿命を伸ばすための予防や医療の充実を中心に述べていますが、「誰一人取り残さない」「持続可能な社会の実現」という価値観はウェルビーイングに通ずるものがあります。
誰一人残さず健康でいるには、身体的・精神的・社会的に満たされた状態を維持しなければなりません。SDGsを実現するには、ウェルビーイングを理解して実践することが大切だと言えるでしょう。
【ウェルビーイングはVISION ZEROの実現にもつながる】 VISION ZERO(ビジョンゼロ)とは、2014年にドイツで開催された「世界労働安全衛生会議」で提唱された考え方です。10,000社を超える企業・団体がパートナー企業として参画し、VISION ZEROの実現に取り組んでいます。 VISION ZEROでは「安全・健康・ウェルビーイング」の3つをコンセプトとして掲げています。ウェルビーイングに取り組むことは、VISION ZEROの実現にもつながります。 |
3.ウェルビーイング(Well-being)の3つの考え方
ウェルビーイングを実現するための考え方としては、現在下記の3つのモデルが主流となっています。どのような考え方・行動をすると、ウェルビーイングの実現に近づけるのか分かるので参考にしてみてください。
ウェルビーイングを実現するための3つの考え方 | |
PERMAモデル | マーティン・セリグマン氏が提唱した指標 |
幸せの4つの因子 | 幸福学研究の第一人者である前野隆司教授が唱えるモデル |
ギャラップ社の5つの定義 | 「世界幸福度レポート2023」調査を行っている米ギャラップ社が見つけた定義 |
3-1.「PERMA(パーマ)」モデル
「PERMA(パーマ)」モデルは、マーティン・セリグマン氏が提唱した指標です。真の幸福を満たす要素を5つに分類し、すべての要素を満たしている人が幸福度が高いと考えます。
PERMAモデルの5つの要素 | |
ポジティブな感情 | 嬉しい・楽しい・おもしろい・感謝・希望などポジティブな感情を抱くことができる |
没頭・熱中 | 時間を忘れて熱中・没頭できることがある |
良好な人間関係 | 他者とのつながりを持ち良好な人間関係を築くことができる(パワハラやいじめなどがない) |
生きる意味 | 自分の強みや良さを理解し仕事・趣味に活動でき生きがいややりがいを感じられる |
達成感 | 仕事・プライベートで達成感を味わえる |
例えば、仕事に励むときにポジティブな感情を抱き熱中して取り組める人は、仕事に後ろ向きな人よりも幸福度が高いと考えられます。PERMAモデルの中で欠けている要素がある場合はウェルビーイングを実現しにくくなるので、欠けている要素の原因を探ることが大切です。
3-2.幸せの4つの因子
「幸せの4つの因子」とは、幸福学研究の第一人者である前野隆司教授が唱えるモデルです。幸福度を高めるには、4つの因子を伸ばすことが大切だと考えています。
幸せの4つの因子 | |
第1因子 | 「楽しい」「おもしろい」と感じることに自信を持ち積極的に取り組める |
第2因子 | 多様なつながりを持ち他人に貢献したいという気持ちを持てる |
第3因子 | 失敗を恐れずに「何とかなる」の精神で積極的に行動ができる |
第4因子 | 自分らしさを大切にして好きなことや得意なことを追求できる |
例えば、第1因子の「やってみよう」は、周囲と比較することなく積極的に挑戦する姿を指します。また、他者との関わりを持ち貢献したい気持ちがある人のほうが、幸福度が高いと言われています。第2因子では、ありがとうと感謝を伝え合える関係を築けることを指しています。
幸せの4つの因子を伸ばすには、日常生活や仕事の中で主体性を持ち取り組むことが大切です。「誰かにやらされている」と感じると幸福度が下がってしまうため、前向きに取り組めることを見つけて幸せの4つの因子を伸ばすように意識してみるといいでしょう。
3-3.ギャラップ社の5つの定義
「世界幸福度レポート2023」調査を行っている米ギャラップ社では、世界規模の調査を重ねることでウェルビーイングに必要な要素を絞り込むことができました。米ギャラップ社では下記の5つの要素を高めることが大切だと定義しています。
米ギャラップ社のウェルビーイングの5つの定義 | |
キャリア | 人生の中で大半の時間を占めていること(仕事や育児、ボランティア、趣味など)に熱心に取り組める |
人間関係 | 信頼関係と愛情でつながる良好な人間関係を築けている |
経済 | 経済的に安定しており、資産の管理や活用ができている |
心身の健康 | 心身ともに健康で活動に使えるエネルギーがある |
地域社会 | 地域社会に貢献している |
この5つの要素はどれか1つが突出していても、他の要素が不安定な状態では幸福度が低いと考えられています。例えば、心身の健康や経済的な安定はあっても、仕事に不安や悩みがある場合は幸福度が下がってしまうのです。
米ギャラップ社の5つ定義では5つの要素すべてにおいて良好な状態になるように、行動することが大切だと言われています。
4.ウェルビーイング(Well-being)の具体的な取り組み方法
ウェルビーイングの重要性や要素が理解できたかと思います。では、企業ではウェルビーイングを高めるために、どのような取り組みをするべきなのでしょうか?ここでは、ウェルビーイングを実現するための具体的な取り組み方法をご紹介します。
課題となっている部分から取り組むことで社員のウェルビーイングを高めることにつながります。具体的にはどのような取り組みができるのか、参考にしてみてください。
ウェルビーイングの具体的な取り組み方法 | |
多様な働き方への対応 | 時短勤務や在宅勤務などを取り入れて働く場所や時間を自由に選択できるようにする |
社員が自ら学ぶ機会の提供 | 社員が主体性を持ってチャレンジができスキルを磨ける環境を作るために研修やリスキリングなどの学ぶ機会を提供する |
健康促進の実施 | ストレスチェックや相談窓口の設置など心身の健康を維持するための取り組みを実施する |
労働環境の見直し | ウェルビーイングを実現できそうかに着目し労働時間や評価制度などの労働環境を見直す |
コミュニケーション機会の創出 | 社内で良好な人間関係を構築するためにコミュニケーションを取る機会を創出する |
4-1.多様な働き方への対応
ウェルビーイングを実現するには、多様な働き方に対応することが大切です。「1.ウェルビーイング(Well-being)とは」でも触れたように、幸福度の指標は一人一人異なります。
家族の時間を重視したい人もいれば、仕事にやりがいを感じている人もいます。それぞれが自分らしい価値観を大切にしながら前向きに仕事に取り組むには、企業側も働く場所や時間を自由に選択できるように柔軟な対応する必要があります。
多様な働き方の一例 | |
働く時間の自由 | ・フレックスタイム(一定のルール下で社員が始業・終業時間を決めて働く) |
働く場所の自由 | ・在宅勤務(自宅で仕事に取り組む) |
その他の取り組み | 副業の許可 |
例えば、在宅勤務を選択できるようになれば、介護や育児との両立がしやすくなりワーク・ライフ・バランスが保ちやすくなる可能性があります。また、地域限定勤務が選択できれば転勤の不安から解消されて、働きやすくなる社員もいるでしょう。
働く時間と場所の選択肢を用意することで、ウェルビーイングの実現に貢献できます。トランスコスモスでは柔軟は働き方への取り組みを実施しており、時間や場所に囚われない柔軟な働き方ができる環境整備をしています。
4-2.社員が自ら学ぶ機会の提供
「3.ウェルビーイング(Well-being)の3つの考え方」でも触れたように、幸福度を高めるには主体性を持ってチャレンジができスキルを磨ける環境が必要です。企業側では日々の業務を遂行するだけでなく、社員が自らキャリアを形成できる支援が必要でしょう。
【ウェルビーイングを実現するキャリア支援の一例】 ・リスキリングの実施 |
例えば、市場の変化に対応するためにデジタル技術やAI技術を学べる機会を提供できれば、興味のある社員は主体性を持ち学べます。没頭できることを見つけるきっかけにもなり、社員によっては配置転換などにつながるかもしれません。
主体性を持ち学べる環境整備ができれば、一人一人が強みや向いている仕事を見つけやすくなります。その結果、仕事にもやりがいを持ち前向きに取り組めるようになり、ウェルビーイングの実現に近づきます。
4-3.健康促進の実施
繰り返しになりますがウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的すべてが満たされた状態のことです。ウェルビーイングの軸となる心身の健康を疎かにしないように、社員の健康促進に取り組みましょう。具体的には定期的な健康診断に加えて、下記のような取り組みを検討できるといいでしょう。
【ウェルビーイングを実現するために検討できる健康促進の一例】 ・人間ドックやがん検診の促進 |
厚生労働省が実施している「令和5年労働安全衛生調査」を見ると、心のストレスを可視化し対策を検討するためのストレスチェックを実施している企業は69.2%と過半数を超えています。
また、自社の社員の健康状況に応じて食生活の改善や運動機会の創出など工夫を凝らしているケースも見受けられます。
トランスコスモスは「健康経営優良法人2024」(大規模法人部門)に認定された企業として、ウェルビーイングを実現するためにも積極的に健康促進の取り組みを行っています。
【トランスコスモスの健康促進の取り組みの一例】 ・生活習慣病対策 詳しくは「5-2.従業員の健康への取り組み」で解説しています |
4-4.労働環境の見直し
ウェルビーイングを実現するためには、現在の労働環境の見直しも欠かせません。もしかしたら、一定の社員に業務が集中し心身ともに負担をかけているかもしれません。また、複数の部署が同じスペースで仕事をしている場合は、仕事に集中しにくくなっている可能性があります。
「社員一人一人が身体的・精神的・社会的に良好な状態を維持できそうか」というウェルビーイングの視点で、下記のような労働環境を見直してみると改善点が見つかる可能性があります。
ウェルビーイングを実現するために労働環境を見直すときのポイント | |
労働時間 | 残業時間が多く長時間労働が当たり前になっていないか |
給与体系 | 働き方によって給与に差が生じていないか |
評価制度 | 社員が納得のいく方法で人事評価ができているか |
有給取得 | 有給休暇が取得しやすい風土になっているか |
労災 | リスクとなり得る部分は適切に把握し対策ができているか |
環境整備 | オフィスの環境がよく仕事に集中できる状態になっているか |
例えば、社員の残業時間が長い場合は、業務効率化できる方法を模索して残業時間が短縮できるように取り組む必要があるでしょう。また、有給休暇などの福利厚生を活用しにくい風土がある場合は、啓蒙活動などを行いワーク・ライフ・バランスが取れる環境を整えていくことも大切です。
トランスコスモスでは生産性の向上につながるプラクティスツールなどを導入し、時間外労働の削減に取り組んでいます。また、有給休暇取得を促進取り組みもしており、誰もが有給休暇を取得しやすい環境づくりを行っています。
4-5.コミュニケーション機会の創出
「3.ウェルビーイング(Well-being)の3つの考え方」でも触れたように、人は他者とつながりを持ち良好な人間関係を築くことで幸福感を得ます。見方を変えると社内の人間関係やコミュニケーションに問題ある場合は、ウェルビーイングの実現が難しいです。
【社内のコミュニケーションに問題がある場合の一例】 ・部下と上司の意思疎通が取れていない |
そこで、社内で良好なコミュニケーションが取れるように、積極的にコミュニケーションを取る機会を創出するといいでしょう。
【ウェルビーイングを実現するために社内のコミュニケーションを活性化する方法】 ・1on1ミーティングの実施 |
例えば、上司と部下間のコミュニケーションが不足している場合は、定期的に1on1ミーティングを実施して進捗状況や意見を交換すると信頼関係が築きやすくなります。
社内全体のコミュニケーションを活性化したい場合は、コミュニケーションツールや社内向けのバーバル空間を用意することも一つの方法です。自由に出入りできるバーチャル空間があれば、部署の垣根を超えて自由に交流ができます。
社内で横のつながりを持ちやすくなり、良好な人間関係を築くきっかけになるでしょう。
5.トランスコスモスはウェルビーイング社会の実現に向けた取り組みをしています
トランスコスモスはサスティナビリティ基本方針に基づいた長期のロードマップを策定し、ウェルビーイング社会の実現に向けた取り組みをしています。
社員の満足がない状態でお客様の満足はない、お客様の満足がない状態で社会のウェルビーイング向上は有り得ないと考え、ウェルビーイングを最大化するKPIを設定して取り組んでいます。ここでは、トランスコスモスが実施しているウェルビーイングを実現するための取り組みをご紹介します。
5-1.働きやすい環境づくり
トランスコスモスでは、社員が活躍し続けられる職場環境と仕組みづくりを推進するために下記のような取り組みをしています。
働きやすい環境づくりへの取り組み | |
生産性向上に向けた時間外労働の削減 | ・各事業所から生産性向上につながるベストプラクティスツール・事例を集約して優秀な事例を表彰し全社展開している |
柔軟な働き方に向けての取り組み | ・多様で柔軟なシフト勤務体制やフレックスタイム制・在宅勤務制度・副業制度など時間や場所に囚われない柔軟な働き方ができる環境整備に取り組んでいる |
有給休暇取得促進 | ・夏季は5日間連続の有給休暇の取得を推奨 |
両立支援の取り組み | ・ライフイベントに左右されず活躍し続けるために全社員が仕事と生活を両立しながら最大限に能力が発揮できる環境を目指している |
男性の育児取得推進 | ・男性の育児休業の取得を勧奨し2023年度までに男性の育児休業と配偶者出産休暇の合計取得率を40%以上にすることを目指している |
復職支援プログラム | ・産休・育休からのスムーズな復職をサポートしキャリア形成しやすい環境づくりをしている |
この他にも、働きやすい職場環境の整備やワークライフバランス促進イベントの実施なども行い、社員が自分の生活を大切にしながら高い満足度で働けるように努めています。
5-2.従業員の健康への取り組み
トランスコスモスは経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人認定制度」で「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されました。
人事部門や統括産業医など専門的な産業保健スタッフ、健康保険組合などが連携し、従業員の健康増進活動を促進しています。2022年度からトランスコスモスSDGs委員会を設置し、下記のようなさらに踏み込んだ健康増進活動の取り組みを進めています。
健康への取り組みの一例 | |
生活習慣病対策 | ・健康診断結果に基づいた個別の保健指導 |
こころとからだの健康サポート | ・トランスコスモス健康保険組合と連携し24時間・年中無休対応できる健康相談窓口を設置(女性専用の窓口も用意している) |
多様な働き方の導入 | ・多様かつ柔軟なシフト体制の導入 |
健康診断 | ・法定健診以外に生活習慣病・婦人科・がん対策を受診できる環境が整っている |
予防接種 | ・職場でのインフルエンザ予防接種の実施など予防接種を受ける機会の提供 |
傷病休職者への支援 | ・復職支援プログラムをもとに傷病休職者と人事や職場、医療スタッフが連携体制を取りながら円滑な職場復帰をサポート |
運動支援 | ・リモートワーク従業員を対象に健康への意識改善やウォーキングイベントなどの実施 |
5-3.その他のウェルビーイングを実現するための取り組み
トランスコスモスでは今まで紹介してきた取り組み以外にも、ウェルビーイングを実現するために下記のような取り組みを行っています。
トランスコスモスのウェルビーイング社会を実現するための取り組み一例 | |
障がいのある社員への研修 | 障がいがある社員に対してビジネスマナーや基礎研修、専門的な研修を行い働きやすい環境を整えている |
サスティナブルな社会の推進 | 2022年4月に静岡県駿東郡小山町と「デジタル・トランスフォーメーションに関する連携協定」を締結し、住民サービス向上によるウェルビーイングの実現を推進する |
建設業界の業務効率化に貢献 | トランスコスモスとグループ企業の技術が建設業界の課題となっている業務効率化を推進。長時間労働の抑制や働き方改革に貢献しウェルビーイングの実現を目指す |
社員育成制度の充実 | 400以上の資格を資格奨励制度の対象にして社員の成長につながる支援を行っている |
このように、トランスコスモスでは「お客様の満足の大きさが我々の存在価値の大きさ」という経営の基本理念のもと、共創しながらウェルビーイング社会の実現を目指しています。
まとめ
いかがでしたか?ウェルビーイングとはどのような概念なのか理解して、企業での取り組み方法を検討できるようになったかと思います。最後にこの記事の内容を簡単にまとめてみましょう。
〇ウェルビーイングとは身体的・精神的・社会的のすべてが満たされた状態を指す概念のこと
〇企業がウェルビーイングに注目する理由は次の4つ
①労働者のメンタルヘルスが悪化している |
〇ウェルビーイングを実現するための考え方は次の3つ
ウェルビーイングを実現するための3つの考え方 | |
PERMAモデル | マーティン・セリグマン氏が提唱した指標 |
幸せの4つの因子 | 幸福学研究の第一人者である前野隆司教授が唱えるモデル |
ギャラップ社の5つの定義 | 「世界幸福度レポート2023」調査を行っている米ギャラップ社が見つけた定義 |
〇企業がウェルビーイングを実現するための具体的な取り組み方法は次のとおり
①多様な働き方への対応:時短勤務や在宅勤務などを取り入れて働く場所や時間を自由に選択できるようにする |
トランスコスモスでは長期のロードマップを策定し、ウェルビーイング社会の実現に向けた取り組みをしています。「お客様の満足の大きさが我々の存在価値の大きさ」という経営の基本理念のもと、共創しながらウェルビーイング社会の実現を目指していきます。