
VDIを導入することで、サーバー上に保管されたOSやアプリケーションに、端末からアクセスし場所に囚われずに業務を行えます。VDIの導入のメリットや注意点を理解し、在宅環境の整備の参考にしてください。
- VDIを導入するメリット:セキュリティの強化、出勤時と同様の環境構築、従業員の動きや進捗確認の容易さ、管理・メンテナンスの手間の削減、BCP対策が挙げられます。
- VDIを導入するデメリット:インターネット環境に依存する、サーバーのパフォーマンスに影響される、導入コストが懸念されます。
- VDIを構築する3つのステップ:VDIの目的と導入環境の確認、VDI選定、運用開始の順に進めていきます。
「テレワークなど多様な働き方に対応したいが、セキュリティが心配。VDIならセキュリティを強化できると聞いたが、その仕組みはどうなっているのか?」
「他社がVDIでテレワーク環境を構築している。自社でも導入したいが、メリットや構築方法が知りたい。」
時代に応じた多様な働き方を実現するためには、社内の機密情報やシステムに安全にアクセスできる環境が必要です。
しかし、「VDIで本当にセキュリティを強化できるのか」「VDIとはどのような仕組みなのか」が分からず、前に進めない方も多いでしょう。
VDI(デスクトップ仮想化)とは、サーバー上に仮想デスクトップ環境を構築し、端末に画像を転送して遠隔操作を行う仕組みです。これにより、サーバー上に保管されたOSやアプリケーションに、パソコンなどの端末からアクセスし、場所に囚われずに業務を行うことができます。

VDIには、セキュリティの強化や従業員の管理が容易になるなどのメリットがあります。
そのため、多様な働き方に対応したい企業や、テレワーク環境に課題を抱える企業に最適です。
VDIのメリットを最大値に活用するためには、その仕組みや導入方法を理解した上で検討することが重要です。
この記事では、VDIの仕組みやメリット、導入方法について解説します。また、VDIの導入が向いているケースについても触れていますので、必見です。
この記事を最後まで読めば、自社でVDIを導入するべきか判断できるでしょう。VDIのメリットを最大限に活用するために、ぜひ参考にしてください。
1.VDI(デスクトップ仮装化)とは

VDI(Virtual Desktop Infrastructure:デスクトップ仮想化)とは、サーバー上に仮想デスクトップ環境を構築し、端末に画像を転送して遠隔操作を行う仕組みです。システムや機器を導入してVDI環境を構築することで、業務を行うことが可能になります。
詳しくは「VDIを構築する3つのステップ」で解説しています。

従来の方法では、デスクトップにアプリケーションやデータを保存し、物理的なデスクトップにアクセスできないと作業ができません。たとえば、外出先から会社のデスクトップ上のアプリケーションを使用したくても、アクセスできないという問題があります。
VDIの大きな特徴は、従来デスクトップ上にあったOSやアプリケーション、データ環境をサーバー上で再現している点です。
サーバー上に仮想デスクトップ環境を構築するため、端末ごとにOSやアプリのインストールは不要です。データはサーバーで一元管理され、端末には残らないため、セキュリティも強化されます。

※一例:構築方法により異なる場合があります。
VDIに対応した端末があれば、社内外を問わず遠隔操作で必要な情報にアクセスし、業務を実施できます。たとえば、リモートワーク中に社外から社内のアプリケーションにアクセスする際にも、VDIを利用すればセキュリティを強化しつつ、必要なアプリケーションを使用可能です。
【VDIが活躍するシーン】 ・リモートワークや在宅勤務など多様な働き方への対応 |
VDIは多様な働き方やBCP対策のニーズが高まり、注目を集めています。VDIを導入することで、セキュリティを強化しながら多様な働き方に対応できる体制を整えている企業が増えています。
VDIを検討する際、リモートデスクトップとの違いが気になる方も多いでしょう。
リモートデスクトップとVDIは、どちらもリモートアクセスを実現する手法ですが、個別にカスタマイズしたリモート環境を実現できるかどうかが大きな違いです。
VDI | 個別のデスクトップ環境を利用できる |
リモートデスクトップ | 1つの環境、リソースを複数のユーザーで共有 |
VDIでは、社員ごとに異なるデスクトップ環境を構築できますが、リモートデスクトップでは全員が同じ環境を使用するため、個別のカスタマイズはできません。社員ごとに異なるデスクトップ環境を用意したい場合は、VDIの利用が推奨されます。
2.VDIを導入する5つのメリット

VDIを導入することで得られる主なメリットは以下の5つです。
・情報漏洩リスクを減らし、セキュリティを強化できる |
それぞれについて詳しく解説します。
2-1.情報漏洩リスクを減らし、セキュリティを強化できる
1つ目のメリットは、情報漏洩リスクを減らし、セキュリティを強化できることです。
VDIを使用する際、クライアント端末には作業データが一切残りません。データはすべてサーバー側の仮想環境に保存されるため、万が一PCが紛失や盗難に遭っても、情報漏洩を防ぐことが可能です。
また、端末のセキュリティソフトやOSのアップデートを従業員に任せている場合、アップデート漏れやトラブルが発生する可能性があります。しかし、VDIではサーバーで一括アップデートができるため、一定のセキュリティ水準を維持しやすくなります。
テレワーク時のその他のセキュリティ対策については、以下の記事で詳しく解説しています。
・在宅コールセンターで必要な13のセキュリティ対策とポイントを解説
・テレワーク時のセキュリティ対策とは?Jasmy Secure PC forコンタクトセンターの事例やメリットを含めて解説
2-2.出勤時と同じ環境を構築可能
2つ目のメリットは、出勤時と同じ環境を構築できることです。
VDIでは比較的自由にOSやソフトウェアをインストールできます。
また、既存のAD環境(Active Directory:アクティブディレクトリ環境。Windowsの機能でユーザーや組織を管理)と連携することで、同様のセキュリティポリシーを適用でき、業務に応じた複数の仮想マシンを構築可能です。
事前に準備を行えば、テレワークなどでも出勤時と同じ環境を整え、スムーズに業務を行える体制を構築できます。
2-3.従業員の動きや進捗が把握しやすい
3つ目のメリットは、従業員の動きや進捗が把握しやすいことです。
VDIは勤怠管理ソフトや情報資産管理ソフトとの相性が良く、情報の取得や蓄積が可能です。テレワークでは、成果物が明確な部門もあれば、「誰が、いつ、何をしたか」を把握しづらい部門もあります。
VDIはログの監視ソリューションとの連携が容易なため、VDIへのログイン状況やPC操作ログを収集することで、セキュリティを維持しつつ従業員の動きや進捗を把握できます。
2-4.管理・メンテナンスの手間を減らせる
4つ目のメリットは、管理とメンテナンスの手間を減らせることです。
VDIが導入されていないパソコンを使用している場合、OSやアプリケーションのアップデートは端末ごとに行う必要があります。社外にパソコンを持ち出すと、管理やメンテナンスのチェックが行き届かなくなります。
VDIを導入すれば、サーバー上で一括管理できるため、システム管理の負担を大幅に軽減できます。
2-5.BCP対策としての有効性が高い
5つ目のメリットは、BCP対策としての有効性が高いことです。
BCP(事業継続計画)対策は、災害や突発的な事態に備えて事業を継続するための施策を指します。特に新型コロナウイルスの流行により、BPC対策が注目を集めました。日本は自然災害が多いため、台風や地震などで出社が難しくなる状況もあり得ます。
BCP対策を講じていないと、不測の事態により業務が停止したり、従業員が持つ端末のデータが消失したりするリスクがあります。VDIを導入すれば、不測の事態が発生しても自宅から業務を継続できるため、BCP対策の一助となります。
BCP対策についての詳しい情報は、以下の記事で解説しています。
3.VDIを導入するデメリット

VDIを導入することで多くのメリットを享受できますが、一方で以下の3つのデメリットも考慮する必要があります。
・インターネット環境に大きく依存する |
3-1.インターネット環境に大きく依存する
VDIの1つ目のデメリットは、インターネット環境に大きく依存することです。
インターネットに障害が発生した場合、VDIに接続できなくなり、通常営業が行えなくなる懸念があります。
また、ネットワーク障害だけでなく、サーバーリソースの不足なども全体に影響を与える可能性があります。
このため、サーバーに関する管理やメンテナンスが非常に重要となります。
3-2.サーバーのパフォーマンスが影響を与える
2つ目のデメリットは、サーバーのパフォーマンスが業務に大きな影響を与えることです。
VDIは、端末に高い性能を求めませんが、サーバー側には大きなリソースが必要です。サーバーのパフォーマンスが低い場合、業務が正常に行えなくなったり、業務のストレスを感じることになったりします。
VDIを導入する際には、業務に必要な十分なスペックを持つサーバーを用意することが求められます。
3-3.導入コストがかかる
3つ目のデメリットは、導入コストが必要となることです。
VDIを利用するためには、既存のネットワーク環境と接続するための環境構築に一定の費用がかかります。また、VDIの利用費やVDIへ接続するパソコンの費用も追加で発生します。
そのため、オフィス内でPCを使用する場合と比較して、ランニングコストがやや高くなる可能性があります。
4.VDIを導入するべき企業

VDI導入のメリットとデメリットを踏まえ、VDIの導入が向いている企業は以下のとおりです。
向いているケース | 向いている理由 |
テレワークなど多様な働き方に対応したい企業 | セキュリティを強化しながらリモート環境を構築でき、BCP対策も同時に実施可能。 |
リモートワーク時の従業員管理やセキュリティに課題がある企業 | セキュリティ強化と労務管理の効率化により、現状の課題を解決できる。 |
大勢の社員の管理を効率化したい企業 | 勤怠・労務管理ソフトとの相性が良く、大勢の社員を管理しやすくなる。 |
VDIは、セキュリティを強化しながらリモートワークや在宅勤務など多様な働き方に対応できる環境を構築できることが大きなメリットです。今後、多様な働き方に対応したい企業や、現在のテレワーク環境に課題を抱える企業は、VDIのメリットを最大限に活用できるでしょう。
また、社員数が多く、労務管理に手が回らない企業もVDIを導入することで業務の効率化が期待できます。
一方で、以下のような企業は現時点ではVDIの導入が難しいかもしれません。
【VDIの導入に向いていない企業】 VDIの動作環境を整備するコストや余力がない企業 |
VDIは動作環境の整備が必要なため、導入に伴うコストや環境整備が難しい企業には向かないでしょう。
5.VDIを構築する3つのステップ

VDIが向いている企業が分かったところで、実際にVDIを構築する方法をご紹介します。
VDIの導入には専門的な知識が必要となるため、一般的にはパートナーと協力して進めることが推奨されます。
5-1.VDIの目的と導入環境を確認する
まずは、VDIを導入する目的と環境を確認します。
導入目的 | なぜVDIを導入するのか明確にする |
導入する環境の確認 | どのような環境に導入するのか確認する |
導入目的を明確にすることで、具体的なニーズに合ったシステム選定が可能になります。また、現在の環境を確認することで、周辺機器やサーバーへのトラブルを回避しながら導入を進めることができます。
5-2.VDIを選定して導入する
次に、自社に適したVDIを選定します。VDIには主に以下の4つの種類があり、それぞれ特徴や運用方法が異なります。
種類 | 概要 |
VDI方式 | 物理サーバー内に複数の仮想デスクトップ環境を構築。個別設定の自由度が高く、社員の使いやすい環境を構築しやすい。 |
SBC方式 | サーバーにインストールされたOSを複数人で共有。コストを抑えられるが自由度は低い。 |
HDI方式 | 1つの仮想デスクトップ環境に1ユーザーを割り当てる。自由度は高いがコストがかかる。 |
DaaS方式 | クラウドサーバー上に仮想デスクトップ環境を構築。自社内にサーバーを保有する必要がなく、初期コストを抑えられる。 |
VDIの種類を選定したら、パートナーに依頼してVDI環境を構築します。構築と平行して、マニュアル作成やトラブル時の対応方法も検討しておくと良いでしょう。
5-3.VDIの運用を開始する
VDIの構築が完了したら、テスト運用や検証を経て運用を開始します。運用開始時には、トラブルを避けるために社員への研修や説明を実施することが重要です。
また、広範囲に導入する場合は「まずは〇〇部署に導入する」や「〇〇支店に導入する」といったスモールスタートを推奨します。これにより、トラブルのリスクを軽減することができます。
6.トランスコスモスのVDI導入事例

ここでは、トランスコスモスのVDI導入事例をご紹介します。
導入前の課題 | ・事業継続のために本社全員分の在宅勤務環境を整える必要があった。 |
導入方法 | ・実証実験の段階から利用してきたクラウド型仮想デスクトップ(DaaS)サービス「Amazon Workspaces」を活用。 |
導入後の成果 | ・事業を止めることなくサポートできる体制が構築された。 |
トランスコスモスでは、働き方改革を推進し、社外からでも社内システムを活用できる環境を模索していました。
2016年より段階的にVDIの導入実証実験を行ってきましたが、2020年3月に新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴う外出自粛要請が発令され、事業継続のために急速に本社全員分の在宅勤務環境を構築する必要が生じました。
【VDI導入時の具体的な課題】 ・事業継続のために本社全員分の在宅勤務環境を整えること。 |
そこで、実証実験の段階から利用していた「Amazon Workspaces」を活用し、リモートワーク環境を迅速に構築しました。約3,000名分の環境を急拡大し、準備開始から約1カ月で東京本社の全スタッフの在宅勤務を実現しました。
VDI導入により、業務に必要な環境やツールを活用し、在宅勤務が可能となりました。育児や介護のために柔軟な働き方を求める社員や、クリエイティブな業務に集中したい社員からも好評を得て、生産性の向上につながりました。
7.「在宅コンタクトセンターサービス」でテレワーク推進をサポート

トランスコスモスでは、コンタクトセンター(コールセンター)におけるテレワーク推進のため、在宅コンタクトセンターサービスを展開しています。在宅コンタクトセンターでは、VDI環境と監視システムを導入し、データ流出や不正利用を防ぐ仕組みを構築しています。
また、WebHRシステムによる出勤確認とオンライン会議システムを活用したオペレーターとのコミュニケーションにより、在宅でもセンターと同様のオペレーションが可能です。
特に、以下のようなコールセンター業務での課題を抱える企業様をサポートしています。
・テレワークを推進したい |
弊社では、これらの課題解決に向けて、コールセンターの在宅化を実現するトータルソリューションを提供しています。詳しい資料が必要な方は、以下よりダウンロードが可能です。
ぜひテレワーク推進に向けてご活用ください。また、コンタクトセンターでのテレワークに関する課題や注意点をまとめた記事も参考にしてください。
まとめ
VDI(Virtual Desktop Infrastructure)とは、サーバー上に仮想デスクトップ環境を構築し、端末に画像を転送して遠隔操作を実現する仕組みです。
VDIを導入することで、セキュリティを強化し、運用負荷を軽減することが可能となります。これにより、セキュリティの心配なくオフィス外のどこからでも業務を行うことができます。
VDIを導入することにより、以下のメリットが得られます。
・情報漏洩リスクを減少させ、セキュリティを強化できる |
特に、「テレワークなど多様な働き方に対応したい企業」「リモートワーク時の従業員管理やセキュリティに課題がある企業」「大勢の社員の管理を効率化したい企業」においては、VDI導入を強くおすすめします。
VDIを活用してテレワーク環境を整え、新しいワークスタイルが確立し、業務の向上に役立ててください。
