
- PBXの基本・できること|PBXを導入することで、代表番号での発着信、内線同士の通話、スマートフォンへの転送、発着信制御などが可能になる。これにより、業務効率化とコスト削減が見込まれる。
- PBXの種類|PBXには「レガシーPBX」、「IP-PBX」、「クラウドPBX」という3つの主要な種類が存在する。それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解することで、自社のニーズに最適なPBXを選択できる。
- PBXの種類と選び方|業務状況、コスト、安定性と安全性を考慮することが重要。特に、多拠点を持つ企業やテレワークを推進する企業には、コスト効率の高いクラウドPBXが推奨される。
「業者にPBXの導入を勧められたけど、PBXって何だろう?」
「ビジネスフォンとPBXの違いがわからない」
こうした疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?
PBX(構内電話交換機)は、外線からの着信を内線に転送したり、内線同士をつなぐ装置です。主に、企業のオフィスやコンタクトセンターに設置されています。
PBXに複数の内線電話機を接続することで、以下の機能が実現できます。
・代表電話番号での発着信 |
多くの企業がPBXを導入していますが、「専門的な解説が多くてわかりづらい」と感じる方もいるようです。
この記事では、オフィスの電話に欠かせないPBXについて、初心者でも理解しやすいように解説します。
「PBXとは何か知りたい」「自社に導入すべきか判断したい」 という方に最適な内容です。
この記事を最後までお読みいただければ、PBXの基礎知識や導入の選び方まで理解できるようなります。これにより、あなたにとって最適なオフィス環境の実現に役立つでしょう。それでは、PBXの解説を始めましょう。
1.PBXとは?外線からの着信を内線に転送する装置
この章では、PBXの基礎知識についてご紹介します。
PBX(Private Branch eXchange)とは、外線からの着信を内線に転送したり、内線同士をつなげる装置のことです。
主にオフィスやコンタクトセンター(コールセンター)に設置され、複数の電話機を効率よく利用する目的で導入されます。
PBXに内線電話を接続することで、以下のような機能が実現します。
・外線からの着信を特定の内線電話に転送 |
具体例:本社と支社にPBXを設置する場合
以下のように、外線と内線、スマートフォンが接続されるシナリオを考えてみましょう。
【外線から代表番号に着信があった場合】 代表番号に着信があった場合、PBXは内線電話Bに転送するよう設定しておく。 |
【本社の内線電話同士で発着信を行う場合】 本社の営業部の内線電話Aが、内線電話Bに発信。本社のPBXが内線電話Aを内線電話Bへつなぐ。 |
【本社の内線電話から支社の内線電話へ発着信を行う場合】 本社の営業部の内線電話Aが、支社の技術部の内線電話Dに発信。本社のPBXが支社のPBXに接続。 |
このように、電話回線をPBXで一つにまとめることで、外線や内線を効率よく活用できるのです。
2.PBXを導入するとできること
これまでの説明で、PBXの特徴やビジネスフォンとの違いが理解できたと思います。この章では、PBXを導入すると具体的にできることについて解説します。PBXの導入により可能になる代表的な機能は次の4つです。
【PBXを導入するとできること】 代表者番号の発着信 |
2-1.代表番号の発着信
最初の機能は「代表番号の発着信」です。これは、同じ番号で複数の電話機に同時着信・発信できる機能です。PBXを導入すると、代表番号にかかってきた電話はあらかじめ設定したルールに従って、オフィスの内線電話機へ着信させることができます。
例えば、「特定の期間は総務部の電話に転送する」、「繁忙期は全ての電話で受ける」といった設定が可能です。これにより、テレワークや外出先からでも「代表電話」として電話をかけることができます。
2-2.内線同士の通話
次の機能は「内線同士の通話」です。PBXを利用すれば、内線での通話に対して通話料は発生しません。異なる拠点に電話番号が異なる場合でも、PBXで接続すれば内線化が実現します。これにより、電話料金が安くなり、通話状況の管理も簡単になります。
2-3.スマートフォンへの転送
3つ目の機能は「スマートフォンへの転送」です。最近のPBXは、社員のスマートフォンを「内線」として設定できる機能を持っています。
例えば、顧客から営業担当宛てに電話がかかってきた場合、その着信を営業担当のスマートフォンへ転送することが可能です。これにより、顧客を待たせることなく、迅速に担当につなぐことができます。
2-4.発着信制御
最後の機能は「発着信制御」です。PBXでは、どの内線電話機にどの外線を着信させるか、あるいはどの番号で発信させるかを設定できます。
例えば、「営業部の電話を一時的に企画部の番号で発着信させる」、「カスタマーケア部に顧客相談窓口の番号を発着信させる」といった割り振りが可能です。これにより、デスクの移動やレイアウト変更時の電話工事が不要になり、配置換えを簡単に行うことができます。
3.複数拠点、社内・社外にまたがる電話管理・対応をしている企業はPBXの導入がおすすめ
ここまでPBXの基礎知識や機能についてお伝えしましたが、結論として、複数拠点や社内・社外にまたがる電話管理や対応を行っている企業にはPBXの導入をおすすめします。その理由は以下の3つです。
【PBXの導入がおすすめな理由】 複雑な電話環境を一括管理できる |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1.複雑な電話環境を一括管理できる
企業が成長するにつれて、電話環境は複雑化しますが、PBXを導入することで簡単に一括管理できます。
ビジネスフォンで多くの電話回線を使用している場合、無駄な通話や回線を見逃しやすく、管理が難しくなります。特に、テレワークや外回りの営業が増える中で、社外にいる人の電話管理は複雑化します。
PBXなら、すべての電話をパソコン上で一括管理でき、同じ施設内だけでなく、スマートフォンや遠方の支店の電話も簡単に管理できます。これにより、管理業務がシンプルになります。
3-2.業務効率化を促進
PBXは通話関連の業務を効率化します。例えば、複数の外線電話番号に対して1台の電話機で対応できるため、電話機を設置する場所や人を選びません。
また、PBXを利用すればスマートフォンを会社の電話としても使用できるため、無駄な「電話当番」を置いたり、「電話のために出社する」といった業務が減ります。
すべての電話の使用状況を一括管理できるため、通話関連の業務が大幅に効率化されます。
3-3.全体的なコスト削減につながる
PBXは、全体のコスト削減に貢献します。PBXを導入すると、通話状況をパソコンで一括管理できるため、不要な回線や無駄な通話を発見しやすくなります。さらに、複数の拠点を内線化することで、会社全体の電話料金が安くなります。
また、個人のスマートフォンやパソコンを会社の電話として利用すれば、電話機器本体の購入が不要になり、全体的なコスト削減にもつながります。このように、PBXは電話業務の管理を容易にし、業務効率化やコストダウンに寄与します。
PBXのデメリット しかし、最近では導入費用がほとんどかからないクラウド型PBXも登場しています。毎月のランニングコストはかかりますが、設置型よりも手軽に導入できます。クラウドPBXについては、こちらの記事も参考にしてください。 |
オフィスにPBXを導入すべきか検討中の方にとって、混同しやすいのが「ビジネスフォン」です。PBXとビジネスフォンの違いを以下の表で整理しましたので、違いを理解しておきましょう。
PBX | ビジネスフォン | |
特徴 | 複数の回線を複数の電話端末で制御可能 | 一つの回線を複数の電話端末で利用可能 |
電話機数 | 数千台まで可能 | 100台まで |
接続可能な範囲 | 1施設以上〜複数の拠点で接続可能(本社・支社・工場・店舗など) | 1施設内のみ |
利用できる | 電話機、FAX、パソコン、スマートフォン | 電話機、FAX |
おすすめする | 多拠点で多くの電話回線がある企業、内線で接続したい企業、スマホやパソコンを会社の電話として利用したい企業 | あまり電話を使用しない企業 |
4.PBXの3つの種類
ここまでの内容を踏まえ、PBXを導入することを決定した際には、どのタイプのPBXが自社に適しているかを把握することが重要です。PBXは進化を遂げており、現在では「レガシーPBX」「IP-PBX」「クラウドPBX」の3種類があります。
【PBXの種類】 | レガシーPBX | IP-PBX | クラウドPBX |
設置タイプ | オンプレミス(施設内にPBXを設置) | オンプレミス(施設内にPBXを設置) | クラウド(PBX設置の必要なし) |
内線通話 | 1拠点 | 多拠点間 | 多拠点間 |
機器のメンテナンス | △ 必要 | △ 必要 | 〇 不要 |
導入スピード | △ 遅い | △ 遅い | 〇 早い |
音声の品質 | ◯ 良い | ◯ 良い | △ネット環境に依存 |
それぞれのPBXの特徴を詳しく見ていきましょう。
4-1.レガシーPBX
「レガシーPBX」は、最も古いタイプのPBXで、物理的な機器をオフィスに設置するため、オンプレミス型とも呼ばれます。
【レガシーPBXの特徴】
設置タイプ | オンプレミス型(施設内にPBXを設置) |
使用可能な通話機器 | 電話機、FAX |
使用範囲 | 1施設内のみ |
メリット | 停電時でも電話が使用できる |
デメリット | コストが高い |
おすすめする企業 | インターネット回線を使用せず、PBXを導入したい企業 |
【レガシーPBXはこのような企業におすすめ】
・インターネット回線を利用せずにPBXを導入したい |
4-2.IP-PBX
次に「IP-PBX」は、レガシーPBXが進化したもので、電話線でなくインターネット回線(LANケーブル)を使用して電話機を接続します。
【IP-PBXの特徴】
設置タイプ | オンプレミス型(施設内にPBXを設置) |
使用可能な通話機器 | 電話機、FAX、パソコン、スマートフォン |
使用範囲 | 多拠点 |
メリット | 複数拠点やスマートフォンを内線化できる |
デメリット | コストが高い |
おすすめする企業 | 複数拠点での運用を希望する企業 |
【IP-PBXはこのような企業におすすめ】
・複数拠点を内線化したい |
4-3.クラウドPBX
「クラウドPBX」は最も新しいタイプのPBXで、物理的な機器が不要です。クラウド事業者がインターネット上で提供するPBXサービスを利用します。
【クラウドPBXの特徴】
設置タイプ | クラウド型(PBX設置の必要なし) |
使用可能な通話機器 | 電話機、FAX、パソコン、スマートフォン |
使用範囲 | 多拠点 |
メリット | 多拠点で内線が利用できる |
デメリット | 通話がネット環境に左右される |
おすすめする企業 | 複数拠点を内線化したい企業 |
【クラウド-PBXはこのような企業におすすめ】
・複数拠点を内線化したい |
クラウドPBXの詳細については、以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
5.自社に合うPBXを選ぶポイント
PBXの3つの種類について解説してきましたが、どのPBXが自社に適しているかは企業の状況によって異なります。この章では、自社に合ったPBXを選ぶための3つのポイントをご紹介します。
5-1.業務状況
【業務別対応可能一覧】
レガシーPBX | IP-PBX | クラウドPBX | |
多拠点に対応 | ✕ | ◯ | ◯ |
テレワークに対応 | ✕ | ◯ | ◯ |
最初のポイントは「業務状況」です。内線電話を業務でどのように利用するかによって、最適なPBXを見極める必要があります。特に重要な判断基準は「多拠点での通話が多いかどうか」と「テレワークに対応する必要があるかどうか」です。
例えば、支店や工場、店舗など、同じ会社間での通話が頻繁にある企業や、テレワークを推進している企業は、社内の電話機にしか対応できないレガシーPBXよりも、IP-PBXやクラウドPBXを選択する必要があります。
複数拠点間での通話が多い場合は、IP-PBXまたはクラウドPBXを選びましょう。
5-2.コスト
レガシーPBX | IP-PBX | クラウドPBX | |
初期費用 | ✕ 高い | ✕ 高い | ◯ 安い |
ランニングコスト | ◯ | ◯ | △ |
トータルのコスト | ✕ | ✕ | ◯ |
次のポイントは「コスト」です。コストに対する考え方は企業によって異なります。
「初期費用や機器の買い替えコストがかかっても良いので、月々のランニングコストを抑えたい」という場合は、レガシーPBXやIP-PBXが適しています。逆に「初期費用を抑えたい」という場合は、クラウドPBXが最適です。
「トータルのコストが最も安いPBXを選びたい」という場合も、クラウドPBXをおすすめします。
ただし、毎月のランニングコストが発生します。実際のコストは導入する規模、PBX機器の機種、買い替えやメンテナンス費用、選択するサービスプランによって異なります。自社の状況に合わせて、複数の専門企業から見積もりを取り、正確なコストを把握してから判断しましょう。
5-3.安定性と安全性
レガシーPBX | IP-PBX | クラウドPBX | |
停電・災害時の通話 | ◯ | ✕ | ✕ |
通話の音質 | ◯ | △ | △ |
情報の安全性 | ◯ | ✕ | ✕ |
最後のポイントは「安定性と安全性」です。停電時や災害時にネットワーク接続が途切れた場合でも安定してつながることを重視するなら、電話回線で接続するレガシーPBXが適しています。
一方、IP-PBXやクラウドPBXはネット環境に依存するため、音質やサービス提供の安定性においては、レガシーPBXと比較して不安定な面があります。
安定性や安全性が最優先される用途であれば、IP-PBXやクラウドPBXは避けた方が良いでしょう。
6.クラウドPBXをご検討なら一度ご相談ください
トランスコスモスでは、コンタクトセンター(コールセンター)向けに『Amazon Connect(アマゾンコネクト)』や『Genesys Cloud CX(ジェネシスクラウドCX)』を活用したクラウドPBXの提供を行っています。
6-1.トランスコスモスのAmazon Connect(アマゾンコネクト)サービス
Amazon Connectは、世界中のAmazonのコンタクトセンターで使用されている技術を基にしたシステムです。このクラウドソリューションは連携がしやすく、以下のようなメリットがあります。
【Amazon Connectを導入するメリット】
ランニングコストが安い |
メリット①ランニングコストが安い
Amazon Connectは完全な従量制料金サービスで、ランニングコストが低いことが大きなメリットです。最低料金や長期契約、ライセンス料金は不要で、電話番号使用量と通話料金のみに基づいて利用できます。
メリット②コンタクトセンターの立ち上げが簡単
Amazon Connectを使用したコンタクトセンターの立ち上げは、パソコンやモバイルで数回のクリックで簡単に行えます。
シンプルな通話設定なら、数分から30分程度で顧客のサポートを開始可能です。従来必要だった電話回線や通話機器の設備や工事は不要で、すべてクラウド上で完了します。
【従来のコンタクトセンターの立ち上げに必要なもの】 電話回線工事 |
メリット③最新機能が簡単に追加可能
Amazon Connectでは、直感的な操作で最新機能を随時追加できます。
標準装備のリアルタイム分析や履歴分析機能に加え、顧客の問い合わせフローや自動音声応答機能も簡単にカスタマイズ可能です。AI機能を組み込んで、通話の書き起こしや感情分析、翻訳、チャットボットなど、最新のサービスツールと連携させることも可能です。
プログラミング知識がなくても簡単に設計できるため、先進的なコンタクトセンターを構築できます。
詳しくは以下のリンクからご確認ください。
6-2.トランスコスモスのGenesys Cloud CX(ジェネシスクラウドCX)サービス
Genesysが提供するクラウドPBXで、オンプレミスからクラウド提供モデルを確立し、国内外のシェアを伸ばしています。以下のようなメリットがあります。
【Genesys Cloud CXを導入するメリット】 マルチチャネルプラットフォーム |
メリット①マルチチャネルプラットフォーム
Genesys Cloud CXは、顧客とのコミュニケーションをマルチチャネルで対応できるシステムです。
電話(ボイス)対応に加え、Webチャットやメール、SMS、LINE、Twitter、InstagramなどのSNS、チャットボットも利用できるため、オペレーターは1つのシステムで多様なインタラクションを処理できます。
メリット②柔軟な料金体系
Genesys Cloud CXはライセンス料金制で、必要な機能に応じて料金を設定できます。音声チャネル機能に加え、デジタルチャネル機能やEX向上のWFM機能など、企業のニーズに合わせた料金プランを選択可能です。
メリット③オペレーションに必要な機能が充実
Genesys Cloud CXは、マルチチャネル対応だけでなく、オペレーションに必要な機能も充実しています。
着信時にカスタマイズしたスクリプトを表示させることで、応対効率が向上し、ヒアリング漏れを防止できます。また、オペレーターのパフォーマンス管理やステータス管理もカスタマイズ可能で、管理者が効率よくコンタクトセンターを運営できる仕組みが整っています。
トランスコスモスでは、長年のシステム運営ノウハウを生かし、顧客満足度の高いコンタクトセンター構築に向けて、クラウドPBXを利用した運用サービスを提供しています。
クラウド型コンタクトセンターの構築をご希望の場合は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
PBX(構内電話交換機)とは、オフィス内の内線電話機をネットワークで接続し、内線通話や外線の発着信を制御する装置です。PBXを導入することで、外線を効果的に活用し、コストを削減することが可能になります。
PBXと類似のシステムとして「ビジネスフォン」がありますが、ビジネスフォンはPBXの機能を簡略化したもので、接続できる内線電話機の数に制限があります。
以前は小規模オフィスにはビジネスフォンが適していましたが、最近では個人事業主や中小企業でも導入しやすい「クラウドPBX」が登場したことで、状況が変わっています。
自社に合ったPBXを選ぶためのポイントとしては、以下の3つが挙げられます。
業務状況: 内線通話や多拠点間の通話が頻繁にあるかどうか。 |
それぞれの企業の状況に応じて、最適なPBXを選ぶことが重要です。
現在注目を集めている「クラウドPBX」については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。