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【図解で学ぶ】コーチングとは?特徴や活用場面をわかりやすく解説

この記事で学べること

コーチングとは、相手の潜在能力を引き出し目標達成を支援するコミュニケーション手法です。特にビジネスシーンでは、メンバー育成やチームパフォーマンス向上に活用されます。

  • コーチングを実施するメリット:メンバーのモチベーションを高め、成長を促進する効果がある。
  • コーチングを実施するデメリット:個別対応が求められ、指導に時間がかかり、コーチング担当者の負担が増加する。
  • コーチングに向いているケースと適さないケース:メンバーの能力開発やチームワーク強化に向いているが、短期成果には不向き。
  • 効果的なコーチングの手順7ステップ:アイスブレイクから振り返りまでの7ステップを踏むことで効果的なコーチングが可能。
  • コーチングで成果を出すための5つのポイント:目標を明確に設定し、受け手の発言を否定せず、3原則と5つのスキルを活用する。

コーチングとは、相手の潜在能力を引き出し、目標達成を支援するコミュニケーション手法です。
企業に取り入れることで、部下やチームメンバーのモチベーションや自発性を向上させることができます。

コーチングの概要

ただし、コーチングの効果を最大限に引き出すためには、正しい手順とポイントを理解しておく必要があります。誤った方法で進めると、以下のような問題が発生する可能性があります。

・自発性や主体性が引き出せず、依存関係を生む
・モチベーションが低下し、目標達成が難しくなる

この記事を最後まで読めば、コーチングの基礎知識を理解し、導入の判断ができるようになります。正しい手順とポイントを押さえ、効果的なコーチングを実施しましょう。

1.コーチングとは

近年、ビジネス環境は急速に変化しており、企業が競争力を維持・向上させるためには、メンバーの成長や自発的な行動が不可欠です。このような背景から、コーチングというコミュニケーション手法が注目されています。

コーチングとは、相手の潜在能力を引き出し、目標達成を支援するコミュニケーション手法です。
特に、コーチングが活用されるビジネスシーンでは、新メンバーの教育や業務改善、チームワークの強化などが多岐にわたります。

コーチングの概要

1章では、コーチングの定義やその具体的なアプローチについて詳しく解説します。今後のビジネスシーンにおけるコーチングの役割を理解し、活用する方法を探っていきましょう。

1-1.コーチングの定義とアプローチ

コーチングは、対話を通じて相手の自発性と成長を促すコミュニケーション手法です。相手の潜在能力を引き出し、最大限に力を発揮させることで目標達成を支援します。

コーチングでは、答えを教えたりアドバイスをしたりすることはありません。何度も問いかけを行い、対話を通じて相手に新しい気づきをもたらし、視点や選択肢を増やすことを目指します。

コーチングにおけるコミュニケーションの取り方

コーチングにおけるコミュニケーションの取り方

コーチングは「答えはその人自身の内側にある」と考え、外部から与えられた答えは単なる情報に過ぎないと捉えています。指導者の知識や経験を伝えることは重要ですが、最も大切なのは本人がどう考え、どう行動するかです。

このような理由から、コーチングは以下のビジネスシーンで活用されることが多くなっています。

コーチングを活用する場面例

【ビジネスにおけるコーチングの活用場面 例】
・新入社員、中途社員への教育
・職場復帰のサポート
・部下への業務改善の促進
・チームワークに課題を抱えている際
・将来の幹部候補の育成
・部下や同僚の不安や悩みの解消

1-2.コーチングの特徴は「問いかけて相手に気づきをもたらす」こと

コーチングの特徴は以下の2点です。

・答えを教えるのではなく、問いかけを繰り返して相手が自ら答えを見つけられるようサポートする
・対話を通じて、相手に新しい気づきをもたらし、視点や選択肢を増やす

これらの特徴を理解するために、「ティーチング」と「カウンセリング」と比較してみましょう。

「コーチング」「ティーチング」「カウンセリング」の比較

コーチングとティーチングの違い

ティーチングは、指導者が持つ知識や経験を伝えることで成長を促す方法です。
学校の授業やスポーツの技能指導がその例です。ティーチングの目的は、受け手の知識や技術を増やし、今までできなかったことをできるようにすることです。

「コーチング」「ティーチング」の比較

コーチングとティーチングの主な違いは以下の通りです。

コーチング

ティーチング

概要

答えを見つけ出すサポートをする

指導者が知識や経験を伝える

答えの導き方

自分の内側にある答えを引き出す

新たな知識や技術を伝える

取り組み方

自発的

受動的

ティーチングでは、指導者から教わったことが答えとなり、受け手はその知識を元に成長します。一方、コーチングでは受け手の内側にある答えを導き出すことが重視され、主体的な思考が求められます。

コーチングとカウンセリングの違い

カウンセリングは、専門的な知識を持つカウンセラーとの対話を通じて、悩みや問題を解決する方法です。人間の心理や発達に基づく対人援助活動とも定義されます。

「コーチング」「カウンセリング」の比較

カウンセリングとコーチングの違いは次の通りです。

コーチング

カウンセリング

概要

答えを見つけ出すサポートをする

専門的な知識を持つカウンセラーとの対話で悩みを解決する

答えの導き方

自分の内側にある答えを引き出す

相手の気持ちに寄り添う

取り組み方

自発的

受動的

カウンセリングは、相手の気持ちに寄り添い、マイナスの状態を改善することが目的です。対して、コーチングは相手の気持ちを刺激し、主体的に行動できるよう導くことを目指します。

2.コーチングをする3つのメリット

コーチングを実施することで得られる主なメリットは以下の3つです。

・モチベーションを継続できる
・メンバーの成長や気付きにつながる
・主体性や自主性を身につけられる

それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。

2-1.モチベーションを継続できる

コーチングは、目標達成や成果が出るまで、コーチと受け手が二人三脚で取り組むプロセスです。メンバーが一人で目標達成に向かうとモチベーションが下がることがありますが、定期的なコーチングを受けることでモチベーションを維持しやすくなります。

また、コーチングでは否定をせず、どのような考えや意見も承認から始めるため、「自分の対応は悪かった」「自分はレベルが低い」といったネガティブな感情を抱くことなく、前向きに業務に取り組むことができます。

組織やチーム全体のモチベーションが向上すると、生産性や顧客満足度の向上が期待でき、メンバー一人ひとりがやりがいを持って働けるようになり、離職率の低下にもつながります。

2-2.メンバーの成長や気付きにつながる

コーチングでは「答えはその人自身の内側にある」と考えます。これにより、今まで気づかなかった自分の長所や思いに気付くことができます。

例えば、苦情対応が苦手だと感じるメンバーがいるとします。コーチングを通じて自分の強みや考え方を深掘りしていくと、実際には苦情対応が苦手ではなく、知識が不足していることに気付くことがあります。

この気付きをもとに必要な知識を身につけることで、自信を持てるようになり、苦情対応業務に取り組めるようになります。

このように、コーチングによる気付きがメンバーの成長を後押しします。一人ひとりに合わせた気付きや成長の機会を提供できるのがコーチングの大きなメリットです。

2-3.主体性や自主性を身につけられる

コーチングでは、受け手は指導されたことを実行するのではなく、自分自身で考えて行動に移します。これにより、自然と主体性や自主性が養われます

コーチは「傾聴・質問・承認」の3つのスキルを駆使してコーチングを行いますが、これらのスキルが向上することで、受け手の主体性が向上することが分かっています。

部下の主体性と上司のコーチングスキルの関係

つまり、適切なコーチングは受け手の「自分で考え行動する力」を育成します。メンバーの主体性や自主性が向上することで、臨機応変な対応が可能になり、上司の指示を待たずとも適切な判断ができるスキルが身につきます。

3.コーチングのデメリット

コーチングのメリットを理解したところで、気になるのはデメリットです。コーチングには以下の2つのデメリットがあります。

・個別対応が求められるためコーチの負担が大きい
・すぐに結果が出るわけではない

3-1.個別対応が求められるためコーチの負担が大きい

コーチングは個別対応が必要なため、コーチの負担が大きくなります。

一人ひとりの課題や悩みに応じてサポートを行うため、同じ対応は存在しません。このため、コーチを担う人はコーチングの基本を身につける必要があり、コーチのスキルによって結果が左右される側面もあります。

さらに、すべてのメンバーと一対一でコーチングを行うため、時間が掛かることも懸念点です。管理者の負担が増加することは、事前に把握しておきたいデメリットです。

3-2.すぐに結果が出るわけではない

コーチングは即効性のある方法ではありません。

受け手がコーチングを受け、自分の内側にある答えに気づいても、実際に行動に移すことができるかは別問題です。

受け手が行動できるようになるまでには障壁があり、それを取り除くためのコーチングが必要になることもあります。そのため、一部の人にとっては成果が出るまでに数年かかる場合もあります。

すぐに結果を求める場合には、コーチングが適さないことを理解しておきましょう。

コーチングのメリットとデメリットを把握したところで、次章では実際にコーチングを行う際の手順を詳しく見ていきます。

4.コーチングを取り入れるのに向いているケース・適さないケース

ここまでコーチングの基礎知識やメリット・デメリットをお伝えしました。自社に導入しようと決断できた方もいれば、まだ導入するべきか悩んでいる方もいるかもしれません。

そこで、この章ではコーチングの導入に向いているケースと適さないケースを解説します。

コーチングを取り入れるのに向いているケース

・メンバーの能力開発が必要なケース
・チームワークの強化が必要なケース
・リーダーシップの取れる人材を育成したいケース
・モチベーション向上が必要なケース

4-1.コーチングを取り入れるのに向いているケース

それでは、コーチングを取り入れるのに向いている具体的なケース4つを見ていきましょう。

メンバーの能力開発が必要なケース

コーチングは、以下の効果を期待できます。

・自律型人材の育成
自発性と主体性を引き出し、自ら考え行動する力を養います。指示待ちではなく、自律的に動ける人材を育成できます。

・モチベーションの向上・維持:
目標達成への意欲が高まり、自己効力感や達成感を得ることで持続的なモチベーションの向上につながります。

・潜在能力の発揮:
コーチングによって、本人が気づいていない能力や可能性を引き出すことができ、個人の成長と組織のパフォーマンス向上に貢献します。

このように、メンバーの成長に大きな力を発揮するため、メンバーの能力開発にはコーチングが適しています。特に以下のようなメンバーに対して有効です。

・知識やスキルはあるが、それを十分に発揮できていないメンバー
・自信を失っているメンバー
・キャリアアップを目指すメンバー

チームワークの強化が必要なケース

コーチングを導入することで、メンバー間のコミュニケーションが活発になり、考えや価値観を理解し合える機会が増えます。これにより、チームの一体感が醸成されます。

コーチングでは、傾聴や承認を通じて相手の話に耳を傾け、その考えを尊重します。このプロセスにより、チームメンバー間の信頼関係が強化され、本音での意見交換がしやすくなります。
そのため、以下のようなケースにはコーチングの導入をお勧めします。

・部署間の連携を強化したい
・チーム内のコミュニケーションを改善したい
・新しいプロジェクトチームを立ち上げる

リーダーシップの取れる人材を育成したいケース

コーチングは、受け手が自ら考えて行動する力を養います。問いかけを重ねることで、受け手は自分の頭で考えるようになり、積極的に課題を解決していく姿勢を身につけられます。

このように、コーチングはリーダーとしての資質や姿勢を育む効果的な手法です。したがって、以下のような目的がある場合はコーチングの導入を検討してみましょう。

・新任管理職の育成
・次世代リーダーの育成
・経営層のスキルアップ

リーダーシップの取れる人材を育成したいケース

コーチングでは、問いかけを通じて受け手が自分について深く考える機会が増えます。これにより、自己理解が深まり、自分の強みや可能性に気づくことで自信を得ることができます。

自己効力感が高まることで困難な課題にも積極的に取り組む姿勢が育ち、モチベーションの向上につながります。したがって、以下のようなケースにおいてはコーチングの導入をお勧めします。

・受け身の姿勢が目立つメンバーがいる
・目標達成に向けた意欲が低いメンバーがいる
・職場の雰囲気が停滞している

4-2.コーチングを取り入れるのに適さないケース

次に、コーチングを取り入れるのに適さないケースについて解説します。

コーチングを取り入れるのに適さないケース

・短期的な成果が求められるケース
・コーチのスキルが不十分なケース

短期的な成果が求められるケース

コーチングを取り入れるのに適さないケースの1つは、「短期的な成果が求められるケース」です。
コーチングは、問いかけを繰り返し、相手の内面的な変化や成長を促すプロセスです。そのため、即効性のある手法ではありません。

例えば、営業成績が伸び悩むメンバーに対して、上司が具体的な改善点を指示するのではなく、自身の営業プロセスを振り返らせ、課題を自ら発見させることが求められます。この場合、課題に気づくまでに時間がかかることがあります。

課題を認識する際の納得感は大きいものの、成果を急ぐ状況では煩わしく感じられる可能性があります。コーチングは長期的な視点でメンバーの成長を促すため、以下のような短期的な成果が必要な場合には、導入を避けることをおすすめします。

・四半期ごとの業績向上が急務である
・短期プロジェクトの成功が求められている

コーチ担当者のスキルが不十分なケース

もう1つは、「コーチ担当者のスキルが不十分なケース」です。
コーチングにおいてコーチのスキルが低い場合、次のような問題が発生します。

・自発的な気づきを促す適切な質問ができず、誘導的な質問や表面的な質問を終始してしまう。
・表面的な言葉だけを捉え、受け手の真意や感情を理解できないこれにより、受け手は理解されていないと感じ、挫折感を抱く。

その結果、信頼関係が構築できず、受け手に不安や不信感を与えてしまうリスクがあります。こうした理由から、コーチ担当者のスキルが不十分な場合は、すぐにコーチングを導入するのではなく、まずはコーチの育成から始めることをおすすめします。

5.効果のあるコーチングの手順7ステップ

コーチングを行う際は、以下の手順に従って実施します。

コーチングをするときの手順

手順ごとに重要なポイントがありますので、1つずつ確認していきましょう。

5-1.アイスブレイク

コーチングのアイスブレイクのイメージ

目的:日頃の仕事を労い、信頼関係を築く
効果:緊張をほぐし、コーチングしやすい環境を作る

アイスブレイクは、メンバーの緊張をほぐし、コーチングしやすい状態を作るために行います。コーチングの目的は、自分自身の中にある答えを見つけ出すことです。緊張した状態では、自分の意見や思いを話しにくくなるため、メンバーにリラックスしてもらう必要があります。

具体的には、メンバーの日頃の活動を承認します。承認はその人をありのまま受け入れることを意味します。承認されることで「認められている」と感じられ、良好な関係が築きやすくなります。

【会話例】
「今日は10分ほどコーチングの時間を持ちたいのですが、よろしいですか?」 
「新人さんに気配りしてくれて、とても助かっています。」 

5-2.目的確認

目的:コーチングの目的とゴールを明確にする
効果:共通認識を持ち、コーチングに向かうスイッチを入れる

メンバーがリラックスしたところで、コーチングの目的とゴールを共有します。具体的には、「何のための時間なのか」「どのようなゴールを目指して話をするのか」を明確にします。

把握できていない状態で一方的に話すのは、説教と同じです。相手の気持ちや考えを置き去りにしてしまいます。コーチングを始める前に目的とゴールを話し、メンバーの意見を聞いて同意が得られたところで本題に進みます。

【会話例】
「今日は動務状況の確認と、改善が必要な場合の具体策を考えていきましょう。」
「10分後には何が整理され、どのようなことが明確になっていたらいいですか?」

5-3.現状把握

目的:現状がどうなっているのかを明確にする
効果:目標やゴールとのギャップを把握する

コーチングの目的に応じて、現状がどうなっているのかを把握します。例えば、目標が勤務状態の確認の場合、「今月は遅刻が2回あった」「今月はあまり出勤できていない」という事実を確認します。

現状把握のポイントは、メンバー本人が自分の現状を語ることです。自分の状態を言葉にすることで、気付きや目標とのギャップを認識することにつながります。

このとき、指導者は傾聴スキルを用いてメンバーの声に耳を傾けることが重要です。「遅刻ばかりでよくない」といった責める発言や否定的な発言は避け、現状を認識できるようサポートします。

【会話例】
「目標と比べると、現状はどうなっていますか?」
「現在の出勤状態は、100点中どれくらいですか?」

5-4.課題特定

目的:課題や目標と現状のギャップを把握する
効果:ギャップが生まれた原因や背景を考え、特定する

現状を把握すると、課題や目標と現状の間にギャップがあることに気付くでしょう。なぜギャップがあるのかを明確にすることで、取り組むべきことが見えてきます。

課題を特定する際には、以下の2つのポイントがあります。

1.否定的な質問を避ける
コーチングは相手を否定せず、承認することが基本です。例えば、遅刻が多いメンバーに対して「どうして遅刻ばかりするのですか?」と質問するのは否定的です。

代わりに、「どうすればよかったと思いますか?」や「ギャップが生まれる原因に思い当たることはありますか?」といった前向きな質問をしましょう。

2.対話を重視する
一方的な話では、本質に迫れません。対話を通じてギャップの原因を明確にしていきます。

【会話例】
「残りの〇〇点はどうすれば達成できますか?」
「何があると課題を解決できますか?」

5-5.改善案立案

目的:課題や目標達成のためにやるべきことを明確にする
効果:行動を具体化し、すぐに実行できる

課題が明確になったら、どのように改善するのかを行動レベルで具体化します。コーチングの担当者が「明日から遅刻しないように10分早く起きられますか?」と指示するのは避けましょう。メンバー自身が導き出した答えでなければ、コーチングの効果が得られません。

改善策はメンバーが提案し、できる限り具体的にすることが重要です。
例えば、「遅刻しないように早起きをします」とメンバーが言った場合、「どのように早起きをしますか?」と質問し、具体的な行動を明確にします。

その後に「早起きをすることで何が変わりますか?」と質問し、改善策を実施する必然性を確認します。

【会話例】
「どのように行動を変えると良くなりますか?」
「この1週間で試せることはありますか?」

5-6.目標設定

コーチングで目標設定する際のイメージ

目的:具体的な行動計画を設定し、目標達成プロセスを明確にする 
効果:実践すべき行動が具体化され、目標達成をイメージできる

改善策をどのように達成するのか具体的な計画を立てます。目標設定時も、コーチングの担当者が一方的に提案するのは避けましょう。「1ヶ月以内にできますか?」などとスケジュールを決めてはいけません。コーチングはメンバーの自発的な行動をサポートするものです。

コーチングを始めたばかりの頃は、自分の意思でスケジュールを決められないメンバーもいるかもしれません。その場合は二択や三択を用意し、メンバーに選択してもらいます。自分で選ぶことがコーチングの成果につながります。

【会話例】
「具体的な計画を教えてもらえますか?」
「目標を設定して、一緒に確認していきましょう。」

5-7.振り返り

目的:目的達成ができたかコーチングを振り返る
効果:信頼関係を構築し、継続的なサポートを約束する

最後に、コーチングのスタート時に設定したゴールや目的が達成できたか確認します。「面談のゴールは達成できましたか?」と質問し、フィードバックをもらうことで次回のコーチングに活かします。

また、コーチングは継続して行うことが大切です。終了前に次回のコーチング時間を決めたり、困りごとがあったらサポートすることを伝え、今後も継続的にサポートしていくことを約束します。

【会話例】
「この時間を通じてどのような成果がありましたか?」
「今日のコーチングは何点だと感じましたか?」

6.コーチングで成果を出すための5つのポイント

最後に、コーチングを行う際に知っておきたい5つのポイントをご紹介します。

コーチングで知っておきたいポイント

・目標を明確にする
・受け手の発言を否定しない
・目標や課題は行動に移せるようにサポートする
・コーチングの「3原則」を意識する
・コーチングの「5つのスキル」を駆使する

これらのポイントを把握することで、コーチングの質が向上しますので、ぜひ参考にしてください。

6-1.目標を明確にする

コーチングは個人対応が基本です。
スキルや勤続年数が異なるメンバーが同じ課題を抱えているとは限りません。一人ひとりの現状に合った目標を設定できるようにサポートしましょう。

先にもお伝えしましたが、目標はメンバー自身が設定することが重要です。
コーチングでは、自分の中に答えがあると考えます。管理者が目標を設定することは指示となり、コーチングからかけ離れてしまいます。

管理者は傾聴や質問、承認のスキルを活用し、メンバーが目標を見つけて達成するための計画を立てられるよう支援しましょう。

6-2.受け手の発言を否定しない

コーチングの基本は承認です。
メンバーの存在や現状をそのまま受け入れることが大切です。

例えば、遅刻が多いメンバーに対して「遅刻はよくないことだと感じていますか?」や「どうして遅刻ばかりするのですか?」といった否定的な質問は、コーチングの基本に反します。このような質問はメンバーを萎縮させ、自分の本音や真意を発見しにくくします。

現状が良くない場合でも、ありのままを受け入れ、今後どうしていくのかを考えることが重要です。否定的な質問を避け、「何をすると遅刻が減りますか?」や「何があれば現状を変えられますか?」といったポジティブな質問を選びましょう。

6-3.目標や課題は行動に移せるようにサポートする

コーチングで課題や目標を見つけても、具体的な行動に移せないことがあります。頭では理解していても行動に移せなければ、現実は変わりません。

そのため、目標や課題はできるだけ具体的にし、行動に移せるようサポートします。
行動の期限や日時、具体的な回数を数値化すると、理解しやすくなります。

ただし、行動に至るプロセスはメンバー自身が決めることが大切です。プロセスが見つからない場合は、じっくりと考えさせ、メンバーが主体的に考えた方法で実行できるように促しましょう。

6-4.コーチングの「3原則」を意識する

コーチングでは、基本となる「3原則」を意識して、受け手に寄り添い、問いかけを行い、気づきを与えます。コーチングの3原則は以下の通りです。

コーチングの3原則

コーチングの3原則

インタラクティブ(双方向)

双方向のコミュニケーションであること

オンゴーイング(現在進行形)

成果が出るまで関わり続けること

テーラーメイド(個別対応)

一人ひとり一人一人に合わせた個別対応をすること

この3原則が守られていないと、コーチングとは言えません。実践するためにも、これらをチェックしておきましょう。

インタラクティブ(双方向)

1つ目の原則は、双方向であることです。

一方的なコミュニケーションでは、受動的かつ支配的な関係になりがちです。例えば、上司がミーティングで一方的に意見を述べていると、メンバーの意見は伝わらず、上司の指示に従うしかなくなります。

このような関係では、自分で考えて行動することができず、「上司に確認したい」という意識が強まります。そこで、相手の意見を聞く、対話を重視することが重要です。双方が自由に意見を出し合うことで、自発的に考え、行動する力が養われます。

オンゴーイング(現在進行形)

2つ目の原則は、成果が出るまで関わり続けることです。
コーチングは一度実施しただけでは結果が出ません。答えが明確になったとしても、行動に移せるかどうかは別の問題です。

理解していても、いざ実践しようとすると行動できないことがよくあります。実際、コーチングの成果が出るまでに数年かかる場合もあります。焦らずに、継続してコーチングを行い、実践とフィードバックを繰り返すことで、少しずつ変化を実感できるようになります。

テーラーメイド(個別対応)

3つ目の原則は、一人ひとりに合わせた個別対応です。
考え方や価値観は人によって異なります。同じ方法を全員に当てはめても、思ったような効果は得られません。

体型や好みに合わせて服を選ぶように、コーチングも一人ひとりの価値観やコミュニケーションスタイルに合わせて調整する必要があります。相手に合わせてコミュニケーションの取り方や言葉選びを工夫し、相手の中から答えを引き出しましょう。

6-5.コーチングの「5つのスキル」を駆使する

コーチングの3原則を実現するためには、以下の5つのスキルを駆使する必要があります。

コーチングに必要な5つのスキル

傾聴

相手の話を聞くスキル

質問

的を射た質問ができるスキル

承認

相手の存在を認めるスキル

要望・提案

新しい視点や方法、行動を促すスキル

フィードバック

成果や取り組み方を振り返り、軌道修正するスキル

このスキルのいずれかが欠けると、コーチングの効果を最大限に引き出すことができません。必要なスキルを理解しておくことが重要です。

傾聴

傾聴とは、相手の話を真剣に聞くスキルです。
人は自分の話を聞いてくれる人に心を開くと言われています。コーチングでは、受け手が8、指導者が2の割合で話すことが重要です。

具体的には、アクティブリスニングを用います。これは、相手の立場に立って理解しようとする姿勢を持つことです。相手が何を言わんとしているのか、どのような価値観を持っているのかを把握することが大切です。

アクティブリスニングには、以下の2つのコミュニケーションスキルが含まれます。

1.バーバルコミュニケーション:言葉や文字でコミュニケーションを取る方法
2.ノンバーバルコミュニケーション:言葉以外の方法でコミュニケーションを取ること

コーチングにおいては、相手の立場で理解し、話しやすい環境を作ることが求められます。

質問

コーチングでは、目標や目的を達成するための答えを引き出すために的を射た質問が必要です。以下のような質問を用います。

コーチングの3原則

コーチングの3原則

オープンクエスチョン

自分で考えて答える質問

例:「目標達成に必要だと感じることはなんですか?」

掘り下げる質問

曖昧な回答を具体化する質問

例:「それはどういうことですか?」

広げる質問

回答の幅を広げる問

例:「他にはありますか?」

過去と未来を確認する質問

課題と理想を確認する質問

例:「1ヶ月後にはどうなりたいですか?

コーチングでは、イエスやノーで答えられる質問ではなく、自分の言葉で話さなければならないオープンクエスチョンが基本です。

承認

承認は、相手の存在を認めることです。
現状をありのまま受け入れることが基本で、他人との比較や評価を含みません。承認されることで安心感が生まれ、前向きな行動を促進します。

承認には以下の4つの種類があります。

【承認の種類】

承認の種類

概要

存在承認

相手の存在を認めること

例:「いつも業務をしてくれていて助かっています」

事実承認

行った努力や行動を認めること

例:「細かな部分に気を遣ってくれてありがとう」

成長承認

行った努力や行動を認めること

例:「先月が1件だったけれど、今月は5件できているね」

成果承認

具体的な成果を認めること

例:「最後までやり遂げたね」

承認をする際は「褒める」との違いに注意しましょう。承認はそのままの状態を伝えることですが、褒めることには評価が含まれます。

要望・提案

要望や提案は、目的や目標達成のために新しい視点や方法、行動を促すスキルです。

コーチングでは、答えは受け手自身の内側にあると考えるため、強要せずにサポートすることが重要です。提案を行う際には、相手に気付きを与える内容が理想です。指導者側の意見を押し付けず、経験談を話したり相手の意見を聞いたりする工夫をしましょう。

フィードバック

フィードバックは、過去の成果や取り組み方を振り返り、自身の特技や強みを促進する、または軌道修正を行うスキルです。コーチングでは、フィードバックを繰り返し行うことが重要です。フィードバックには以下の2種類があります。

【コーチングにおけるフィードバックの種類】

強化型フィードバック

特技や強みを促進強調する方法

修正型フィードバック

目標達成のために必要な行動を促したり軌道修正をしたりする方法

良質なフィードバックを繰り返すことで、コーチングの効果を高めることができます。フィードバックを通じて、受け手が自発的に行動できるように促すことが重要です。

まとめ

いかがでしたか?コーチングの基本、メリット・デメリットを理解し、自社に取り入れるべきかどうか、効果的な実践方法について知識を深められたと思います。
この記事の内容を以下にまとめます。

・コーチングとは
相手の潜在能力を引き出し、最大限に力を発揮させて目標達成を支援するコミュニケーション手法

・ティーチングやカウンセリングとの違い

― ティーチング
  指導者が自分の持つ知識や経験を伝えることで成長を促す方法
― カウンセリング
  専門的な知識を持つカウンセラーとの対話を通じて、悩みや問題が解決できるようサポートする方法

・コーチングを行うメリット

1.モチベーションを継続できる
2.メンバーの成長や気付きにつながる
3.主体性や自主性を身につけられる

・コーチングを行うデメリット

1.スキルアップや時間管理など、上司の負担が大きくなる
2.コーチングはすぐに成果が現れるものではない

・コーチングを取り入れるのに向いているケース・適さないケース

― 向いているケース
  ・メンバーの能力開発が必要なケース
  ・チームワークの強化が必要なケース
  ・リーダーシップの取れる人材を育成したいケース
  ・モチベーション向上が必要なケース
― 適さないケース
  ・短期的な成果が求められるケース
  ・コーチ担当者のスキルが不十分なケース

・コーチングを導入する手順

1.アイスブレイク
2.目的確認
3.現状把握
4.課題特定
5.改善案立案
6.目標設定
7.振り返り

・コーチングで成果をだすための5つのポイント:

・目標を明確にする
・受け手の発言を否定しない
・目標や課題は行動に移せるようにサポートする
・コーチングの「3原則」を意識する
・コーチングの「5つのスキル」を駆使する

この記事を参考に、コーチングを最大限に活用し、メンバーがいきいきと働けるコンタクトセンターの運営ができることを願っています。

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