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Chat GPTの登場を機に、「生成AI」への注目が急速に高まっています。
2023年の秋時点では、「生成AIについてまったく知らない」という人はわずか4%という統計もありました。
ただ、「生成AIは要約が得意」ということは知っていても、実際に業務にどのように活用すればいいのかはいまひとつピンとこないという人も多いのではないでしょうか?
実は生成AIの要約機能を「音声を認識してテキスト化する技術」と組み合わせることで、コンタクトセンター(コールセンター)の業務効率や応対品質を飛躍的に向上させることができるのです。
特に、多くのコンタクトセンターが抱える以下のような課題は、生成AIの活用によって解決できるでしょう。
【生成AIの導入で解決できるコンタクトセンターの4つの課題】
・人員や席数を増やさずに応答率や作業効率を早期に回復させたい |
そこでトランスコスモスでは、2024年5月28日に「コンタクトセンターの生産性・VOC活用が劇的向上 生成AIで変貌を遂げる 「音声テキスト活用」 最前線」と題してオンラインセミナーを開催しました。
生成AIとは何かという基本のおさらいから、生成AIがコンタクトセンターでどのように活用できるのか、特にトランスコスモスの音声認識ソリューション「transpeech」と組み合わせることで、以下の4つの課題を解決できることなどをわかりやすく解説しました。
中でも「個人情報を入力することなく生成AIを活用できる取り組み」については、参加者から高い関心が集まりました。
5月に参加できなかった方からも「ぜひ聴きたい」という声が多く、2024年7月31日に再開催されました。
そこでこの記事では、そのセミナーの内容をくわしくお伝えします。
※当レポートは5月28日開催分と7月31日開催分を合わせた内容となっています。
◎コンタクトセンターにおける生成AIの活用状況 |
最後まで読めば、コンタクトセンターでの生成AI活用について理解が深まるでしょう。
この記事で、あなたのセンターがより効率的に運用されるよう願っています。
【セミナー登壇者】 トランスコスモス株式会社 村田秀一 兵庫県神戸市生まれ。 |
1.コンタクトセンターにおける生成AIの活用状況
まず、生成AIをコンタクトセンターの現場でどのように活用しているのか、各企業が生成AIをどのように活用しているのかという現在の状況について、ご説明します。
2023年の春の時点では、「生成AIを活用している」「生成AIを使ったことがある」という方はわずか10%しかいませんでした。
ところが2023年の秋になると、実に74%の方が「生成AIを活用している」「生成AIを使ったことがある」と回答しています。
反対に、生成AIについて「全く知らない」という方はわずか4%しかいません。
ほとんどの方は、生成AIを知っているという状況です。
出典:IPA「2023年度ソフトウェア開発に関するアンケート調査」、pwc「生成AIに関する実態調査2023 秋」
また、生成AIの活用に関しても、実に約9割の企業が「検討中」を含めて活用に乗り出しているというデータもあります。
出典:IPA「2023年度ソフトウェア開発に関するアンケート調査」、pwc「生成AIに関する実態調査2023 秋」
このように、生成AIを取り巻く現状は、わずか半年で状況が大きく変わっています。
競合他社より優位に立つためにも、この大きな波にぜひ乗って、小規模からでも生成AIの活用に着手していただきたいと思います。
2.生成AIとは?
ところで、そもそも「生成AI」とは何なのでしょうか?
ご存知の方も多いとは思いますが、あらためて復習しておきましょう。
ひと口に「生成AI」といっても多種多様で、さまざまなデータを生成することが可能です。
大きくわけると以下の4タイプがあると考えてください。
・画像の生成 |
トランスコスモスでは、この中でも「文章を生成する」作業で生成AIを活用しています。
たとえば、マーケティングのために文章を書いてもらったり、取引先へのメールを書いてもらったりと、本当にさまざまな活用方法を考えられるのが生成AIだと言えるでしょう。
生成AIを活用することで、業務の生産性が著しく向上しますし、コスト削減や顧客満足度の向上など、さまざまな利点もあります。
そこでここからは、特にコンタクトセンター(コールセンター)の現場において、「生成AI」と「音声のテキスト化」をどのように活用しているのかについて、お伝えしていきます。
3.「transpeech」とは?
では次に、トランスコスモスが提供している音声認識ツール「transpeech(トランスピーチ)」についても説明しておきましょう。
transpeechは、顧客とオペレーターの会話を認識してテキスト化する機能を備えています。
単にテキスト化するだけでなく、
・発話ごとに音声を再生できる |
といった機能もあります。
また、テキスト化された内容をもとに、対応資料などのナレッジを自動でポップアップすることも可能です。
たとえば、顧客から「解約したいので手続きをお願いします」と言った場合、transpeechが「解約」というキーワードを検知して、解約希望の際に確認すべきトークスクリプトを自動で表示することができます。
そのため、オペレーターが事前にナレッジを用意したり、対応中に顧客を待たせて資料を探したりする必要はありません。
応対品質は維持しつつ、迅速な対応を行うことができるわけです。
さらに、シートマップを利用してモニタリングができるため、ひとりの管理者が複数のオペレーターを同時にモニタリングすることも可能です。
シートマップには言ってはいけないことを言ってしまったなど、NG対応をしたオペレーターがいればアラートを出したり、オペレーターから支援要求があれば画面上に表示されたりといった機能もあります。
これまでは、オペレーターに何か困ったことがあれば、管理者に手を挙げてフォローを求めたりしていましたが、transpeechの場合は画面上で伝えられるので、オペレーターも気づいてもらいやすいという安心感を得られ、管理者の効率化にもつながるはずです。
4.生成AIの導入で解決できるコンタクトセンターの4つの課題
では次に、コンタクトセンター(コールセンター)になぜ生成AIを導入するのか、その理由についてお伝えしましょう。
生成AIの導入によって解決したかった課題は、大きくわけて4つです。
・人員や席数を増やさずに応答率や作業効率を早期に回復させたい |
これらを解決する具体的な方法は以下の3つですが、それについては次章「5.コンタクトセンターの課題を解決する生成AIの3つの活用効果」で説明しますので、まずは4つの課題について考えてみましょう。
4-1.人員や席数を増やさずに応答率や作業効率を早期に回復させたい
1つ目の課題は、「人員や席数を増やさずに応答率や作業効率を早期に回復させたい」ということです。
たとえば、入電数が予想よりも大幅に増加した場合や、コスト削減への対策が急務になっている場合などに、「オペレータは増やせない」けれども「応答率や効率をアップさせたい」という相反する状況を両立させるにはどうすればいいか、が課題になります。
4-2.応対ログをしっかり記述したいが、効率悪化が懸念されて徹底できていない
2つ目は、「応対ログをしっかり記述したいが、効率悪化が懸念されて徹底できていない」ことです。
コンタクトセンターでは、過去の対応を振り返ることが重要です。
顧客との対応中に、過去の対応履歴を参照する必要が出てくることもありますし、オペレーターの応対スキル向上のためにも役立ちます。
そこで、しっかりとログを残しておきたいと思いながらも、オペレーターがそれをていねいに手入力するほど効率が悪化してしまうため、なかなか徹底できていないセンターもあるでしょう。
4-3.DXを実現したいが、自社だけでは導入・運用に不安がある
3つ目は、「DXを実現したいが、自社だけでは導入・運用に不安がある」ことです。
これは、私たちのクライアント様にもある課題ですが、「最新のAI技術などを導入することでDX化を行いたい」「それにより、CXの向上、顧客満足の向上を実現したい」と希望しつつも、「自社だけで行うには、導入やその後の運用について不安があって踏み出せない」というケースです。
4-4.大量のログデータの中から有益なVOCを抽出することが難しい
最後の課題は、「大量のログデータの中から有益なVOCを抽出することが難しい」ことです。
コンタクトセンターには、要望や不満などさまざまな「顧客の声=VOC(Voice of Customer)」が集まります。
それを製品やサービス、WEBサイトの改善などに活用したいと思いながらも、大量の会話ログデータの中から有益なVOCを抽出するのは困難なため、うまく活用できていない、という問題です。
以上の4つの課題は、生成AIの導入によって解決できますので、次にその解決方法について説明しましょう。
5.コンタクトセンターの課題を解決する生成AIの3つの活用効果
これらの課題を解決するために必要なことは以下の3点で、いずれも生成AIによって実現可能です。
・ログ作成時間の大幅短縮 |
5-1.ログ作成時間の大幅短縮
まず必要なのは、「ログ作成時間の大幅短縮」です。
これにより、4つの課題のうち以下の3つの解決をはかることができます。
・人員や席数を増やさずに応答率や作業効率を早期に回復させたい |
今回ご紹介している対話要約AIを導入すれば、会話文をテキスト化するだけでなく要約することも可能です。
その要約をログとしてそのまま残すことで、ログ作成時間を含む後処理時間を大幅に短縮、生産性を一気に向上させることができます。
生産性の向上に向けては、みなさんさまざまな対策に取り組んでいることでしょう。
たとえば、オペレーターのタイピングスキルを伸ばしたり、応対中にタイミングを見計らって記録を残すように指導したりといった取り組みです。
しかし、それらを行っても、どこかでやはり効率化の限界が来てしまい、記載するログの内容を薄くするほうに進んでしまう可能性もあります。そうなると詳細な情報が残せなくなってしまいます。
そこで私たちは、transpeechを活用することで、「ログをほとんど書かない」という方法を実施しています。
今までのtranspeechでは1通話ごとに通話のIDが自動発行されますので、ログにはこの通話IDのみを記載することでログの記載時間は大幅に短縮されます。
ただ、同じお客さまから同じ案件について再度問い合わせがあった場合は、前回の内容を把握するために、そのIDで検索して前回の通話内容を確認しなければなりませんでした。
そのため、お客さまを待たせてしまうという弊害がありCX向上に結び付けることが難しいこともありました。
しかし今回の対話要約AIを導入することでこのような弊害もなく、対話履歴を効率的かつ短時間で残すことができるようになりました。
5-2.オペレーターの依存度を減らし標準化
次に必要なのは、「オペレーターの依存度を減らし標準化」することです。
これは、4つの課題すべての解決につながります。
transpeechを活用することで、応対内容を自動でテキスト化、要約することが可能になるため、誰でも短時間で内容の濃いログを作成できるようになるでしょう。
オペレーター個人のスキルに左右されず、ログの内容が薄くなってしまう弊害もなく、ログの品質が全体的に向上するはずです。
5-3.応対ログに潜むVOCをAIで自動抽出
最後の解決法は、「応対ログに潜むVOCをAIで自動抽出」することです。
これを実施すれば、4つの課題のうち以下の3つが解決されます。
・人員や席数を増やさずに応答率や作業効率を早期に回復させたい |
前述したように、コンタクトセンター(コールセンター)では、お客さまと直接お話するため、非常に多くのVOCが集まってきます。
ただ、その中から何をログに残すべきかという判断は、センター側である程度の基準を設けていたとしても、最終的には各オペレーターの判断に委ねざるをえません。
そのため、本当は商品やサービスの改善につながったであろうVOCも、ログとして残されなかったという残念なケースも発生してしまいます。
この問題も、生成AIの利用することによってログの記録漏れや見落としなどなく、有用なVOCを抜き出して活用できるようになるでしょう。
6.コンタクトセンターでどのように生成AIを活用しているか
〜transpeechの機能の画面でシミュレーション〜
では、実際にコンタクトセンター(コールセンター)では、生成AIのどんな機能をどのように活用しているか、transpeechの画面で見ていきましょう。
まず、私たちが提供しているサービスは以下のようなものです。
通話の終了からAIの要約、CTSの情報入力まで、マウス操作中心で行えるため、後処理時間の短縮が可能です。
では、流れに沿って説明しましょう。
まずは音声認識ソリューション「transpeech」を利用します。
transpeechでは、通話の開始から終了まですべてをテキスト化、通話が終了した時点でその全文をコピーします。
この操作は、1クリックだけで可能です。
続いて、「対話要約AI」です。
先ほどtranspeechでコピーした会話テキスト全文を、そのまま貼り付けて「要約スタート」をすると、要約結果やVOCの内容が出力されます。
その要約結果を確認して、必要に応じて手修正や追加をした上で、またそれをコピーしてください。
最後にそのコピーを、CTSに貼り付ければ、後処理は完了です。
では次に、UI部分をくわしく説明しましょう。
以下が「対話要約AI」のUI画面です。
VOC抽出によるサービスの改善や、FAQを自動で生成する機能も実装しています。
まず「要約」機能は、コールリーズン(=問い合わせ内容)や用途に応じて最適なプロンプトに個別設計をすることが可能です。
つまり、お客様企業ごとに必要な記録を残すということが可能です。
また「VOC抽出」機能では、製品やサービス、WEBサイトやSNSについてなど、さまざまな観点からVOCを抽出して残すことができます。
出力された結果はデータベースに格納されるので、たとえば「前月のVOCではどんな意見が多かったか」などを把握することが可能です。
これらを分析し、サービスや製品の改善につなげることで、顧客満足度の向上をはかることができるでしょう。
さらに、「スキル向上アドバイス」や「ねぎらい」といった活用法もあります。
通常は、管理者はすべての通話が終わるごとに、オペレーターにアドバイスやねぎらいの言葉をかけるのは実質不可能でしょう。
それに対して、この「対話要約AI」なら、通話終了後の記憶が鮮明な状態で、AIから情報を受け取ることができます。
管理者が直接声をかける場合ほどの効果はないかもしれませんが、オペレーターにはリフレッシュした状態次の対応に入ってもらえるのではないでしょうか。
「生成AIは要約が得意」ということはよく知られていると思いますが、それに加えて、
・生成AIがオペレーターの対応を評価する |
という段階まで実現しています。
7.個人情報を生成AIに入力しないための取り組み
ここまで、実際のtranspeechの動きを見てきましたが、続いて説明したいのが「個人情報を生成AIに入力しないための取り組み」です。
生成AIと聞くと、「個人情報の取り扱いは大丈夫なのか?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか?
実は私も、この業務に携わる前はそのような不安を抱いていました。
現在の生成AIは、使用するモデルにもよりますが、入力したデータ(顧客との会話文など)が生成AI側で保持されることはなく、また生成AIの学習にデータを使用することもありませんので安心して利用していただけます。
とはいえ、多くの企業にとっては生成AIというのはまだまだ新しいサービスで、よくわからない部分もあり、個人情報の入力に関しては非常に慎重だということも事実です。
そうなると、生成AIを業務に導入するためには、「個人情報の入力をどのように回避するか」が非常に重要かつ外せない課題だと言えるでしょう。
では、私たちがその問題をどのように解決したかをご説明します。
まず、以下は私たちが「個人情報の要素」と定義した6つの情報です。
・氏名:「姓」と「名」が揃うことで個人情報になる |
私たちはこれらを削除するために、氏名や住所、また英数字についてすべて削除を行うという方針で、「個人情報削除プログラム」というものを作成しました。
以下の図はその削除イメージです。
氏名や住所、電話番号などはすべて米印で伏せ字になります。
transpeechで要約スタートのボタンを押してから対話要約AIにデータを入れるまでの間に、個人情報削除プログラムが働いてこのように削除される、とイメージしてください。
実際にどの程度の精度で削除が行われているかというと、以下がその検証結果です。
氏名については100個のサンプル、それ以外の要素は30個のサンプルで検証を行いましたが、いずれもひとつも残らずに削除を行うことができました。
削除のしくみについて、もう少しくわしく説明しましょう。
まず「氏名」は、形態素解析によって人名の判定を行い、漢字の「姓」「名」を削除し、さらに日本人の苗字ランキング上位3000位までを追加で削除しています。
ちなみにこの3000位までで、日本の人口の約7割をカバーしているそうです。
次に「住所」ですが、こちらも形態素解析で地名の判定を行い、都道府県や市区町村などを削除した上で、部屋番号や地番の情報も残さないように、英数字を削除しています。
「電話番号」「郵便番号」「メールアドレス」「ID」なども、英数字をすべて削除し、さらにメールアドレスについては、パターンマッチでメールアドレスと思われる表記はすべて削除しています。
このように、生成AIへのデータ投入の前段階で「個人情報削除プログラム」を活用することによって、個人情報の入力を防いでいるというわけです。
8.transpeech × 生成AIの導入事例とその効果
さて、ここからはみなさんが知りたい「実際に対話要約AIを導入して効果が出た事例」についてご紹介しましょう。
今回取り上げるのは、「修理問い合わせ窓口」の事例で、transpeechと生成AIを掛け合わせてログの作成を自動化しました。
その結果、以下のような効果が上がっています。
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