
「カスタマージャーニーマップって何だろう?」
「カスタマージャーニーマップはどうやって作ればいいの?」
このようにお考えではないですか?
カスタマージャーニーマップとは、顧客の感情、行動、企業との接点を地図になぞらえて可視化したものです。
近年ではインターネットの普及などにより、顧客行動は多様化しつつあります。そこで企業は、マーケティング戦略を考える際「いつ」「どうやって」「誰に」「どのように」情報を届けるか、施策を立てる必要が出てきました。
その戦略を立てるために活用できるのがカスタマージャーニーマップです。
【カスタマージャーニーマップの例】
カスタマージャーニーマップを活用すれば、顧客がどのような意思決定をして、何を考えて購入しているのかまで、顧客の行動と感情の変化を可視化することができ、顧客視点でサービス全体を見直して対策を立てられるようになります。
具体的には、カスタマージャーニーマップを作成することで、以下のようなことが実現可能となるでしょう。
この記事では、カスタマージャーニーマップを作成したいという方に向けて
・カスタマージャーニーマップとはいったいどんなものなのか |
について、基礎知識からわかりやすく解説していきます。課題解決の糸口にぜひカスタマージャーニーマップをご活用ください。
なお、カスタマージャーニーってどういうもの?という疑問をお持ちの方は、以下の記事でわかりやすく説明していますので、是非参考にしてください。
1.カスタマージャーニーマップとは
この章では、カスタマージャーニーマップの基本的な知識として以下の内容を詳しく解説します。
・カスタマージャーニーマップとは顧客体験を地図のようにあらわしたもの |
それぞれ、見ていきましょう。
1-1.カスタマージャーニーマップとは顧客体験を地図のようにあらわしたもの
カスタマージャーニーマップは顧客の感情、行動、企業との接点を地図になぞらえて可視化したものです。
そもそもカスタマージャーニーとは「顧客の旅」を意味します。顧客が商品を認知し、購入・利用するまでの一連のプロセスを旅になぞらえたマーケティング用語です。
顧客はサービスや商品を認知・購入または利用する際に、以下のような体験をします。
<例>
・SNSで商品やサービスについて認知する |
こうしたサービスや商品を認知・購入または利用する際の体験のことを「顧客体験」と呼びます。これら全てが顧客と企業を結びつける接点であり、それぞれのタイミングで顧客は様々な感情を持ちます。
カスタマージャーニーマップは、こうした顧客体験を「旅」になぞらえ「思考・行動・感情」を時系列に可視化・図式化し、顧客の視点で全体像を俯瞰して見ることで、最適なコミュニケーションを見出すことができるツールです。
1-2.カスタマージャーニーマップの例
続いて、実際のカスタマージャーニーマップの例を見てみましょう。
カスタマージャーニーマップでは主に、顧客の行動や接点、感情の変化などの分析項目をあらわす縦軸と、顧客行動の流れをあらわす横軸によって構成されます。
縦軸と横軸に関してもう少し詳しく見てみましょう。
顧客行動の流れを表す横軸は、顧客が商品やサービスと出会ってリサーチの上購入し、それを活用するまでの一連の流れを可視化します。
縦軸には、顧客感情をより詳しく分析するための項目を記載します。行動や感情の変化を細かく分析することで、最終的に顧客へのアプローチ(対応策)を見出すためのステップです。
これらのそれぞれの項目を埋めることで顧客感情を理解しやすくなり、顧客に対するアプローチにも活かすことが可能です。
カスタマージャーニーマップのより詳しい作り方に関しては、「4.カスタマージャーニーマップを作る7つのステップ」を参考にしてください。
1-3.顧客行動を正しく導くためにはカスタマージャーニーマップが重要
顧客行動を正しく導くためには、カスタマージャーニーマップが重要です。
カスタマージャーニーマップを活用するとあらゆるタッチポイントごとの顧客感情を正確に読み取れるようになり、それぞれのポイントごとの課題や対応策が見出しやすくなります。
カスタマージャーニーマップで最も重要視されるのが、「感情の変化」です。顧客行動や企業との接点を割り出して、顧客がそれぞれの接点においてどのような感情を持つのかを分析するために、カスタマージャーニーマップを作成すると言っても過言ではありません。
企業はあらゆるタッチポイントで、顧客がどのように感じたのかを正確に理解する必要があります。
上のマップの例では、ECサイトで商品を購入してもらうために会員登録の必要があるのですが、顧客は「登録が面倒だという感情を持つかもしれない」と、カスタマージャーニーマップを作成することで見出せます。そうした顧客の負の感情を見出すことができれば、対応策を練ることで顧客が離脱しないよう行動を導くことが可能というわけです。
改善策としては登録しなくても購入が可能なシステムを使ったり、広く利用されている決済方法を取り入れることで、商品購入へのハードルを下げるといった対策を取ることができます。
このように、顧客の感情の変化を見出すために必要な情報を整理するためのフレームワークがカスタマージャーニーマップです。
「顧客の感情」という抽象性の高い情報を見出すための一連の流れが整理されているので、企業側はフレームワークに則って情報を当てはめていくだけで、比較的簡単に顧客の感情を見出すことができます。
そうして問題点や課題を見出すことで、最適な解決策を導き出すことが可能となるのです。
2.カスタマージャーニーマップで実現可能な3つのこと
カスタマージャーニーマップを作ることで、具体的にはどのようなことが実現可能となるでしょうか?
ここでは主に以下の3点について解説します。
・顧客に愛されるブランディングができる |
2-1.顧客に愛されるブランディングができる
カスタマージャーニーマップを作ることで、顧客に愛されるブランディングができるようになります。
1章で解説してきた通り、カスタマージャーニーマップは顧客のことを知ることができるツールです。
顧客がどんなタイミングでどのような感情を抱くのかをリアルに想像することができます。
その結果、どのようなアプローチを行えば顧客が喜ぶのかということを見出すことも可能です。
「このサービスはベストなタイミングでユーザーに提供されているだろうか?」など、新たな課題を発見して解決策を検討できるようになるため、より顧客視点でのアプローチを行うことが可能となります。
競争が激化する昨今においては、顧客が何を求めているかを追求することは重要です。
顧客をよく知ることで、愛されるブランドや商品に昇華させることができるでしょう。
カスタマージャーニーマップはそのための優れたフレームワークなのです。
2-2.本質的な課題を見出しやすい
カスタマージャーニーマップを活用することで、プロジェクトにおいてマイナス要因になっている本質的な原因を見出しやすくなります。
例えば、「新商品の売り上げが悪い」といった課題を持っているとします。
企業としてはなぜその商品が売れないのか、様々な視点からの分析が必要となります。
そこでまず、カスタマージャーニーマップを作成します。顧客がその商品とどのように接点を持ち、どのような感情の動きがあって購入に至る、または至らないのかという点について詳しく推測します。
その結果、以下のような結論を見出すことができる可能性があります。
・Web広告で魅力を伝えきれていない |
ECサイトのレビューやSNSでの評判が高く、商品の購入を検討していたとしても、公式サイトで情報を十分に得られなかったり、いざ購入しようとしてもECサイトが使いにくい等の場合には購入に至らないといったことが考えられます。
このように、一旦顧客行動の流れと企業との接点を洗い流すことで、本質的にどんなことが原因でマイナスが起きているのか見いだせる可能性が高くなるのです。
2-3.目標や課題解決策を社内で共有しやすい
カスタマージャーニーマップを活用することで、社内やチーム全体で目標や課題解決策を共有しやすくなります。
カスタマージャーニーマップは通常、マーケティング担当者だけでなく、営業担当者やエンジニアなど、製品やサービスに関わる多くの部署を横断して作成されます。
これにより、社内のさまざまな部署が関与することで、高い精度で施策を立案し、将来的な課題に対する共通認識を促進でき、関係者間での認識の調整が容易になります。
3.カスタマージャーニーマップを活用した成功事例
実際にカスタマージャーニーマップを活用して、課題解決に成功した実例を見てみましょう。
3-1.成功事例|ブライダル施設運営会社
導入目的 | 見込み客から成約を獲得する |
明らかになったこと | 顧客は「キーワード検索」ではなく「画像検索」から施設を探し出していることが判明 |
実行したこと | 広告予算の投下先を変更し、効果的な施策を実行 |
成果 | 顧客獲得単価が大幅に改善し、媒体ごとの貢献度も向上した |
ブライダル施設運営会社Aのマーケティング部は、ウェディング会場を検討する人の来場から成約までの集客業務を担っています。
従来は、大手の広告媒体の営業力に頼る集客が主流でしたが、多様な顧客に対応できるよう、見込み客からの成約を獲得するためにカスタマージャーニーマップを作成しました。
そこで企業Aは対象エリアを舞台にペルソナを「ウェディング会場を探している人」で設定し、ゴールを「会場の利用」とするカスタマージャーニーマップを作成。
マップ作りを通して、コンバージョンまでの重要な中間地点を明確化しました。
作成したカスタマージャーニーマップを実際の顧客の声を照らし合わせてみたところ、顧客の大半が「キーワード検索」ではなく「画像検索」からブライダル施設を探し出し、流入していることに気づきました。
その結果を受け、マーケティング部ではサイト内の全画像を再確認し、altタグ(画像検索時に読み込まれる言葉)にきちんとテキストが埋め込まれているかチェックして内容をコントロールするようにしました。
また、新たにInstagramのアカウントを立ち上げたり、会場の特徴に合わせてFacebookの投稿頻度を上げたり、広告予算の投下先を変更するといった施策を実行。
その結果、顧客獲得単価が大幅に改善し、媒体ごとの貢献度も向上しました。
3-2.成功事例|総合人材サービス会社
導入目的 | 新卒採用を効率的に進めるためのWEBサイト設計 |
明らかになったこと | 説明会やインターンの限られた時間で満足に情報収集ができない |
実行したこと | 学生に役立つ社員インタビューをサイトに盛り込む |
成果 | コンテンツの目的の見直し |
総合人材サービス会社Bは、新卒採用を効率的に進めるための目的で、就活生が就活をはじめてから入社を決定するまでの流れを知るためにカスタマージャーニーマップを作成しました。
カスタマージャーニーマップは、ペルソナとなるターゲット層である学生が作成することにしました。
就活で学生が実際に行なったことやその時の考え、思いなどを活かしながらワークショップ形式で作成し、就活生が求めるサービスや課題を明確にしました。
就活生の多くが実際に企業で働く社員からの声を求めていることがわかりました。
しかし、説明会やインターンの際は、限られた時間で満足に情報収集ができないという課題が明らかになりました。
そこで、WEBサイト作成では学生に役立つ情報や社員インタビューなど、学生の希望に寄り添うコンテンツを作るという目的が決まりました。
就活生のニーズに応えたことで、新卒採用を効率的に進められるようになりました。
4.カスタマージャーニーマップを作る7つのステップ
カスタマージャーニーマップの作成は、別の記事にて簡単な7つのSTEPを紹介しています。
カスタマージャーニーについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
この記事ではもう少し詳細な方法を説明し、以下の7つのステップに分けて作成していきます。
STEP❶ | スタートとゴールを決める | マップの全体像を作成する |
STEP❷ | ペルソナを決める | 対象の顧客像を明確にする |
STEP❸ | 顧客視点で行動を洗い出す | 顧客のスタートからゴールまでの行動を明確にする |
STEP❹ | 行動をステージに分ける | 行動を分類し、グルーピングする |
STEP❺ | 顧客接点(タッチポイント) | 顧客が利用する店舗やアプリなどの接点を探る |
STEP❻ | 感情を想像する | 「いいね」「困った」などの気持ちを想像する |
STEP❼ | 対応策を考える | マップを俯瞰して、改善ポイントを検討する |
以上の手順で、以下のようなマップを作ります。
4-1.STEP①|スタートとゴールを決める
最初のステップでは、カスタマージャーニーマップが対象とする範囲=テーマを決めます。
テーマを決定する際には、同時に以下の4点の内容についても定めておきましょう。
商品・サービス | テーマとなる自社の商品 | 例)カジュアルブランド「A」 |
スタート | スタート地点の顧客の状態 | 例)ブランド名を知らない |
ゴール | ゴール地点の顧客の状態 | 例)購入し、グループのブランドにも接点を持つ |
期間 | スタートからゴールまでの期間 | 例) 3週間 |
これらは、これから作成するカスタマージャーニーマップの起点として必要な情報です。
カスタマージャーニーマップの土台となりすべてのステップに影響を与えますので、しっかり書き出しておきましょう。
念頭に置くべきは、「どういった顧客が、商品(またはサービス)と関わった結果どのような状況になるのか」を、期限を交えて設定することです。
「スタート」では、商品のこともブランドのことも知らないユーザーなのか、ブランドの名前くらいは知っているユーザーなのかなどという点を考慮します。
「ゴール」では、最終的にこのユーザーがどうなることを目標とするのかという点を考えます。「商品を購入する」ことがゴールの場合もあれば、「リピーターになる」「ファンになる」等、最終的にどうなっているのかを考えて設定します。
「期間」では、スタートからゴールまでの期間を設定します。この期間は1カ月でも3カ月でも、現実的な数字であれば問題ありません。しかし例えば10年等長いスパンになると具体的なマップを作ることが難しいため、余りに長い期間を設定することはやめておきましょう。
例えば今回の場合においては「商品のことをまったく知らなかった顧客が、商品のことを知り、3週間で購入しただけでなく、グループの他のブランドにも興味を持つ」このような一連の流れを想定して、カスタマージャーニーマップを作っていきます。
4-2.STEP②|ペルソナを決める
次のステップでは、カスタマージャーニーマップのメインターゲットの人物像=ペルソナを設定します。
ペルソナを設定する際、個人消費向けの「B to C」ビジネスか、法人向けの「B to B」ビジネスかによってペルソナ像は異なります。
ここでは分かりやすく、「B to C」向けのペルソナ設定の方法について解説します。
ペルソナの設定は、具体的にアイディアを出すことでイメージが膨らみやすくなります。
名前や基本情報のほかに、休日の過ごし方や趣味など、その人のライフスタイルが手にとってわかるくらいにペルソナ像の解像度を上げましょう。
ペルソナ像は大きく3つに分けて考えることをおすすめします。
1.基本情報:名前・性別・年収・家族構成・居住エリア |
さらに、人物のイラストを描いてみるとさらにイメージが膨らみやすくなります。
4-3.STEP③|顧客視点で行動を洗い出す
ステップ3から、いよいよカスタマージャーニーマップを描いていきます。マップの「顧客行動」の欄に、ペルソナがどんな行動をとるのか、思いつく限り書き出していきましょう。
▼行動を洗い出す方法
・顧客行動の「スタート」と「ゴール」を決めて、行動を洗い出す |
なぜ顧客行動を洗い出す必要があるのかというと、顧客の感情の変化に気づくことができるようになるためです。
書き出した顧客行動が多ければ多いほど、この後のステップがスムーズに進みますので、思いつく限りの顧客の行動を付箋に書き出して見てください。
それでは、具体的な例を見てみましょう。
ペルソナである20代女性・鈴木さんの行動を考えて見ましょう。
今回設定したケースでは「スタート」はSNSで商品を見つけ、「ゴール」が商品を購入することです。その過程を行動に書き出していきます。
例えば、以下のような行動が考えられます。
1.Instagramで女性タレントの投稿写真を見て、ブランドAのアイテムに注目 |
ペルソナ個人になりきり、どのような行動を経てゴールにたどり着くか、その行動を洗い出して順番に並べていきましょう。
4-4.STEP④|行動をステージに分けグルーピングする
ステップ4では、先ほど洗い出した「顧客行動」をグルーピングしていきましょう。
「ステージ」欄にそれぞれの行動の名前を記入し、グルーピングした行動を分類します。ステージごとに行動や感情を分類することで、「顧客行動」に貼られた1つひとつの「点」の行動が、大きな流れとなり、俯瞰して見られるようになります。
この例ではでは、顧客の行動に合わせて、「認知」「リサーチ」「比較」「会員登録」「購入」というカテゴリーに分けました。
グルーピングする時のコツは、行動の背景にあるペルソナの変化に注目することです。
例えば、そのブランドに興味はなかったけれど、SNSを眺めているうちに気になるようになったり、好きになることがありますよね。ペルソナの変化は、ステージが変わることを意味します。
行動を分類していくと、顧客はこんな行動も取っているはず、ステージとステージの間にはもう一段階存在するのではないか、といった発見が出てきます。その場合、行動を追加したり、ステージを増やしたりして整理していきましょう。
4-5.STEP⑤|顧客との接点(タッチポイント)を明確にする
顧客の行動が明確になったら、ステップ5では「タッチポイント」を明確にしましょう。
顧客はさまざまな接点を通じて情報に触れ、意思決定をしています。具体的には、テレビやWEBサイト、アプリ、SNS、クチコミ、友人からの情報、店舗など、デジタルやリアルを含めると多彩な接点が存在します。
「顧客接点」の欄では、顧客が行動を起こすきっかけとなった接点や、行動を起こした先の接点を洗い出して行きましょう。
例えば、ペルソナの鈴木さんが気になるアイテムに出会ったのは「SNS」です。その後、Google検索やAmazonのレビューを確認したり、比較サイトで他社商品との比較を行うと想定します。最終的にECサイトで会員登録を行い、商品を購入するという流れです。
このように、顧客がとる行動には常に企業との何かしらの接点があります。それらをイメージしながら「顧客接点」を書き出していきます。
4-6.STEP⑥|感情を想像して整理する
ステップ6は、ペルソナの感情を想像することです。
顧客行動と接点を可視化したら、その背景にある感情の変化に注目しましょう。
顧客はメディアやデバイスから商品を見て興味を持ち、検索する過程で、「可愛い」「欲しい」「試してみたい」「面倒くさい」などさまざまな感情に触れます。
このような行動の中で、ペルソナの湧き出る感情を想像して整理してみましょう。この感情の変化が施策を考えるときの材料となります。顧客の感情に想像力が働くと、そこが施策を立てるヒントになるのです。
図のように、ポジティブな感情、ニュートラルな感情、ネガティブな感情に分け、ポジティブは上の欄、ネガティブは下の欄、ニュートラルは真ん中に配置することで感情をより可視化できます。
ネガティブな感情が多く向けられるプロセスは顧客体験を改善するヒントがたくさんあるはずです。感情が動き、ポジティブに傾きやすいプロセスは、その要因を強化することでより良い顧客体験へ導くことができます。
最終的には顧客が笑顔になるように、満足する顧客体験で終わることを目標にマップを描きましょう。
4-7.STEP⑦|対応策を考える
ステップ7では、企業の視点で顧客体験をいかに良いものにできるか対応策を考えていきます。
ネガティブな感情であれば「どうしたらポジティブになってもらえるのか」、ポジティブな感情なら「どうすればさらに喜んでもらえるのか」という視点で、対応策を考えていきましょう。
ここでポイントなのが、ステップ7では、マップをタテとヨコに見ることです。
「タテ」では、ステージや顧客行動、接点、感情がセットで機能しているかを考えます。
「ヨコ」では、顧客がスムーズに次のステージや行動に移行できているかを判断します。
マップをタテに見る際は、ステージ→行動→接点→感情を見ながら、接点は行動を充分にサポートできているか、感情はマイナスに傾いていないかを見て、そのステージにどんな課題があるのかを判断します。
マップをヨコに見る際は、ステージや顧客の行動がスムーズに流れているか、そのための接点が足りているか、感情の起伏に極端なところはないかを観察します。
これにより、SNSやウェブサイトを管轄しているチームが店舗へスムーズに顧客を誘導できているかを確認できます。この視点があれば、部門間の連携が高まり、顧客視点で一貫したイメージを持てるようになります。
4-8.実行と改善を繰り返す
7つのステップを経て、カスタマージャーニーマップが完成したら、実際に対応策を実践します。
しかし、カスタマージャーニーマップは一度作ったら終わりというわけではありません。いくら顧客感情を想定して作成しても必ずしもマップがすべて正しいというわけではありません。実際に対応策をとっても効果が無かったり、新しい顧客感情を見出す、といったことも十分に考えられます。
そうした新しい発見や修正点を見出した場合にはカスタマージャーニーマップを修正し、改善しながら施策を実行していくことが重要です。一か月に一度など、定期的にカスタマージャーニーマップの見直しを行います。定期的に方向性を見直すことで、プロジェクトをより良い方向へと導くことが可能となるのです。
5.カスタマージャーニーマップを作るべき企業
この章では、実際にカスタマージャーニーマップの制作がおすすめの企業について話します。ここでは以下の2つの例を解説します。
ただし、カスタマージャーニーマップは原則として商品やサービスを取り扱っている企業に関しては実行して損はないフレームワークです。ぜひ、まずは実践してみてください。
5-1.顧客ロイヤルティを向上させたい企業
顧客ロイヤルティを向上させたい企業は、カスタマージャーニーマップの作成がおすすめです。顧客ロイヤルティとは、顧客が企業やサービス、ブランドに対して持つ愛着や親しみのことです。
近年はインターネットの普及により顧客は以前よりも多くの情報を簡単に得ることができました。それにより顧客の獲得競争は激化しており、他社との差別化に課題を持つ企業が増えているのが現状です。
「2-1.顧客に愛されるブランディングができる」でも解説しましたが、顧客が自社のサービスや商品を選んでくれるためにはブランドに対して愛着を持ってもらうこと(=顧客ロイヤルティ)が重要です。しかし顧客感情を無視して顧客ロイヤルティを向上させることは簡単ではありません。
カスタマージャーニーマップを作成することで、企業側は顧客の感情をよりリアルに想像することができます。それにより、顧客が求める施策を打ち出しやすくなるため、結果として顧客ロイヤルティが高まりやすくなるのです。
5-2.営業アプローチの見直しをしたい企業
営業アプローチの見直しをしたい企業にとっても、カスタマージャーニーマップ作成は有効と言えるでしょう。
例えば顧客に営業をかける際、営業そのもののことだけを考えるのではなく、顧客体験を想定してどのような感情を顧客が持つかといった全体像を見てみてください。
そうすることで、実際に顧客がどのようなことを企業に求めているのか、どういったアプローチなら効果的に働くかといったことが分かるかもしれません。
以前は営業を全て電話で行っていて、あまり効果が出ていなかった場合。
カスタマージャーニーマップを作成し、顧客感情を想像することで、電話営業がむしろ逆効果になっていた、ということが分かるかもしれません。
逆にメールでの営業や、そもそも営業ではなくネット広告などを打ち出すことで顧客感情に寄り添った形でのアプローチが可能かもしれません。
こうした内容は営業先の考え方や商品、サービス内容によっても大きく異なります。具体的にどんなアプローチが適切かを見直す意味でも、カスタマージャーニーマップの作成は有効と言えるでしょう。
6.カスタマージャーニーマップ作成前に押さえるべき5つのポイント
カスタマージャーニーマップの作成に入る前に、念頭に入れておいていただきたいポイントが5つあります。以下のポイントは、マップの作成の成否に関わりますので、必ず押さえてください。
6-1.初めから完璧を目指さずにまずは作ってみる
カスタマージャーニーマップを作る場合は、初めから完璧を目指す必要はありません。細かい部分にはこだわらず、まずは作ってみることをおすすめします。
なぜなら、カスタマージャーニーマップに明確な答えはないためです。企業が想定する顧客もそれぞれに異なりますし、商品やサービスもマップによって全て異なります。
顧客感情にしても、必ず最初から「これが絶対に正しい」と思える結論を見出すことは現実的ではありません。
カスタマージャーニーマップはあくまでも、顧客の感情をよりリアルに推理して対策を練ることです。想定と間違っていたら修正しながら、カスタマージャーニーマップは長期的に見ながら運用することをおすすめします。
6-2.プロジェクトや商品に関わるメンバーで作成する
精度の高いカスタマージャーニーマップを作るためには、プロジェクトや商品に関わるメンバーで作成する必要があります。
前章でも解説した通り、カスタマージャーニーマップとは顧客の感情を推理して作成するものです。そのため、必ず初めから正解が導き出せるとは限りません。
しかし、複数人で作成することで精度はより高いものとなります。
プロジェクトに関わるメンバー全員、もしくは、人数が多すぎる場合は代表者を何人かピックアップして、アイディアを出し合いながら作成するようにしましょう。
また社内やチーム全体で共通認識を持たせるためにも、作成段階でメンバーの意見が一致していることが大切です。
6-3.ペルソナ設定を重視する
カスタマージャーニーマップを作成する際には、ペルソナ設定を重視する必要があります。ペルソナ設定を無視してマップを作成してしまうと、顧客感情の想定が上手く行かず、精度の高いものができない可能性があるためです。
例えば25歳で乾燥肌の悩みを持っている女性Aさんをペルソナ設定としておきながら、カスタマージャーニーマップを作成する際にはその設定を無視して、30歳くらいの女性を想定してしまった場合を想像してみてください。
肌の悩みは20代と30代では大きく異なりますし、化粧品の売上は年収によっても左右します。一見、25歳の女性と30歳の女性ではそれほど結論は変わらないようにも感じられるかもしれませんが、結果的に精度の高いカスタマージャーニーマップを作成することは困難になります。
あらゆる視点において、ペルソナ設定を確認しながら制作して良く必要があるでしょう。
6-4.目的を明確にしておく
カスタマージャーニーマップを作成する際には、目的を明確化しておく必要があります。
カスタマージャーニーマップの作成は、プロジェクトチームやスタッフ全体でなど、複数の参加者が協力して課題に取り組みます。そのため、参加者全員での共通認識が必要となるのです。
・なぜカスタマージャーニーマップを作るのか |
など、参加者が理解していなければゴールにたどり着けません。そのためには、目的と必要性を明確化し、伝えておく必要があるのです。
また、参加者にはカスタマージャーニーマップは作成後のアクションにつながる取り組みであることも理解してもらうこともポイントです。
6-5.多角的な視点を取り入れる
カスタマージャーニーマップを作成する上で大切なのが、多角的な視点を持つことです。
例えば、営業アプローチの見直すために営業チーム全体でカスタマージャーニーマップを作成した場合、営業側の視点に偏ったマップが完成してしまいます。
この場合、営業だけではなく、経営者視点や現場を知るエンジニアの視点を加えることで、既にあるチャネルのみで検討することなく、可能性を広げて新しいアイディアを生むことができるようになります。
ぜひ多角的な視点を取り入れてマップを作成してください。
まとめ
カスタマージャーニーマップの活用で、顧客がどのような意思決定をして、何を考えて購入しているのか、顧客の行動と感情の変化を可視化し、顧客視点でサービス全体を見直して対策を立てられるようになります。
カスタマージャーニーマップを活用すると、以下のようなことが実現可能となります。
・顧客に愛されるブランディングができる |
顧客の動きやニーズを理解して予測することが難しい時代だからこそ、顧客視点に立ち返理、ぜひカスタマージャーニーマップを活用して課題解決に役立ててください。