
「新商品をより多くの人へ届けるにはどうしたらいいだろう」
「最近、メールでの集客が伸び悩んでいるのはなぜだろう」
業務の課題を持つ企業の担当者は多いのではないでしょうか?
現代ではテレビCMやWEBサイト、SNSなど、さまざまなチャネルを通して情報に触れられます。それに伴い、企業は、マーケティング戦略を考える際「いつ」「どうやって」「誰に」「どのように」情報を届けるか、施策を立てる必要が出てきました。
その戦略を立てるために活用できるのがカスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーマップを活用すれば、顧客がどのような意思決定をして、何を考えて購入しているのかまで、顧客の行動と感情の変化を可視化することができ、顧客視点でサービス全体を見直して対策を立てられるようになります。
そこでこの記事では、カスタマージャーニーマップを初めて作成したいという方に向けて
- カスタマージャーニーマップとはいったいどんなものなのか
- カスタマージャーニーマップのメリット・デメリット
- カスタマージャーニーマップを活用した具体的な事例
- カスタマージャーニーマップの作り方
について、基礎知識からわかりやすく解説していきます。課題解決の糸口にぜひカスタマージャーニーマップをご活用ください。
なお、カスタマージャーニーってどういうもの?という疑問をお持ちの方は、以下の記事でわかりやすく説明していますので、是非参考にしてください。
目次
1.カスタマージャーニーマップとは
カスタマージャーニーマップとは、顧客の感情、行動、企業との接点を可視化したものです。
カスタマージャーニーとは「顧客の旅」を意味し、顧客が商品を知って、購入し、購入後に利用するまでの一連のプロセスを旅になぞらえたマーケティング用語。カスタマージャーニーマップは、顧客の旅「思考・行動・感情」を時系列に可視化・図式化し、顧客の視点で全体像を俯瞰して見ることで、業務の改善を助けてくれるツールです。
もちろん、顧客によって描かれるカスタマージャーニーマップは異なります。顧客がたどる旅を「点」ではなく、行動・思考・感情・企業との接点を「線」としてつなげて全体像を見ることが、カスタマージャーニーマップのポイントです。
しかし、カスタマージャーニーマップがなぜ業務の改善に役立つツールになるのか、今の段階ではよく理解できないですよね。そこで、カスタマージャーニーマップを作る3つのメリットについて解説します。
2.カスタマージャーニーマップを作る3つのメリット
カスタマージャーニーマップを作ることで、どのようなメリットを得ることができるのでしょうか。メリットは以下の3つです。
・顧客視点でサービス全体を見直すことができる |
2-1.【メリット①】顧客視点でサービス全体を見直すことができる
1つ目のメリットは、顧客視点でサービス全体を見直すことができるようになることです。
あなたは顧客がどのような購買プロセスで自社製品やサービスを購入しているか、顧客の行動を本当に理解しているでしょうか?
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の3つの動き「行動・思考・感情」を時系列で可視化して、網羅的に俯瞰することができるようになります。
それにより「このサービスはベストなタイミングでユーザーに提供されているだろうか?」など、新たな課題を発見して解決策を検討できるようになるのです。
顧客の行動を把握して、顧客視点でサービス全体を見直すことは、顧客満足度を高めることにもつながります。
2-2.【メリット②】社内やチーム全体で共通認識を持つことができる
2つ目のメリットは、社内やチーム全体で共通認識を持てることです。
カスタマージャーニーマップは、マーケティング担当だけで作成するのではなく、営業担当やエンジニアなど、関係者が協力しあって作成します。
それにより、社内全体で情報を共有して関係者間での認識のすり合わせができ、精度の高い施策を立てられたり、今後どうすべきかなどの課題に対する共通認識が生まれたりなど、共通認識を持てるようになります。
2-3.【メリット③】課題の優先度を明確にしやすい
3つ目のメリットは、課題の優先度を明確にしやすいことです。
カスタマージャーニーマップを作成することで、改善すべき課題を可視化することができます。すべての課題を洗い出し、それぞれの課題の重要性を比較することで、どの施策を優先的に取り組むべきなのかが明確にわかるようになります。
重要度の高い課題を優先的に実行していくことで、改善効果を早い段階から実感できるようになり、顧客サービスの向上にもつながります。
3.カスタマージャーニーマップのデメリット
カスタマージャーニーマップを活用することが多くのメリットを得られますが、一方で、デメリットと感じることには、以下のことがあるでしょう
・作成に時間がかかる |
それぞれ詳しく解説します。
3-1.【デメリット①】作成に時間がかかる
カスタマージャーニーマップの作成には時間がかかります。
入念な事前調査を行なったり、顧客の行動を洗い出したりと、作成までにはプロセスがいくつかあります。また、プロジェクトチームやスタッフ全体でつくるので、意見を出し合い、意思決定していくまでの時間も要します。
しかし、時間をかけてつくるからこそ、自社にとって価値あるカスタマージャーニーマップを作成することができます。
3-2.【デメリット②】効果の可視化がしにくい
カスタマージャーニーマップは、作成したからといってすぐに効果が出るわけではありません。効果を実感するためにはマップを活かして具体的な施策を立案・実践した後となるため、多少の時間がかかります。
効果計測のための期間が長いため、効果の検証には複数の要因が絡んでしまう事が多くなります。その結果カスタマ―ジャーニーマップを作ったから成果がでたのかどうかわかりにくく、可視化がしにくいので、早々に諦めてしまう企業も多いのが現状です。
すぐに効果が現れることを期待せず、あらかじめ長期的なスタンスで実行することで、大きな効果を実感できるようになるでしょう。
3-3.【デメリット③】作成後もPDCAサイクルが必要
カスタマージャーニーマップは、作ってから施策を実行することで効果が発揮されます。
さらに、常に検証と改善が必要です。カスタマージャーニーマップ作成後、PDCAをしっかり回すことで、売上向上やサービス向上に近づくことができます。このプロセスがなければせっかく作っても意味のないものになってしまいますので、PDCAサイクルを回し続ける必要があります。
4.カスタマージャーニーマップを活用した成功事例
実際にカスタマージャーニーマップを活用して、課題解決に成功した実例を見てみましょう。
4-1.成功事例|ブライダル施設運営会社Aの場合
見込み客からの問い合わせを増やすために「ブライダル施設運営会社A」が行なったカスタマージャーニーマップを活用した成功事例をご紹介します。
カスタマージャーニーマップ作成の目的
ブライダル施設運営会社Aのマーケティング部は、ウェディング会場を検討する人の来場から成約までの集客業務を担っています。
従来は、大手の広告媒体の営業力に頼る集客が主流でしたが、多様な顧客に対応できるよう、見込み客からの成約を獲得するためにカスタマージャーニーマップを作成しました。
【目的】 ・見込み客から成約を獲得する |
カスタマージャーニーマップ作成の具体的な行動
対象エリアを舞台に、ペルソナを「ウェディング会場を探している人」を設定し、ゴールを「会場の利用」とするカスタマージャーニーマップを作成。マップ作りを通して、コンバージョンまでの重要な中間地点を明確化しました。
企業Aでは、SEO(グーグルなどの検索エンジン最適化)の強化に取り組み、さまざまなキーワードに投資をしていましたが、カスタマージャーニーマップを作成し、実際の顧客の声を照らし合わせてみたところ、顧客の大半が「キーワード検索」ではなく「画像検索」からブライダル施設を探し出し、流入していることに気づきました。
【具体的な行動】 ・マップで顧客がたどるゴールまでの道すじを明確化した |
カスタマージャーニーマップ作成の成果
画像検索からの流入に気づいたマーケティング部では、サイト内の全画像を再確認し、altタグ(画像検索時に読み込まれる言葉)にきちんとテキストが埋め込まれているかチェックして内容をコントロールするようにしました。
また、新たにInstagramのアカウントを立ち上げたり、会場の特徴に合わせてFacebookの投稿頻度を上げたり、広告予算の投下先を変更するといった施策を実行。その結果、顧客獲得単価が大幅に改善し、媒体ごとの貢献度も向上しました。
【成果】 ・広告予算の投下先を変更し、効果的な施策を実行できた |
4-2.成功事例|総合人材サービス会社Bの場合
サービスや商品の利用という顧客ではなく、新卒採用を効率的に進めるために「総合人材サービスB」が行なったカスタマージャーニーマップを活用した成功事例をご紹介します。
カスタマージャーニーマップ作成の目的
総合人材サービスBは、新卒採用を効率的に進めるための目的で、就活生が就活をはじめてから入社を決定するまでの流れを知るためにカスタマージャーニーマップを作成しました。
【目的】 ・新卒採用を効率的に進めるためのWEBサイト設計 |
カスタマージャーニーマップ作成の具体的な行動
カスタマージャーニーマップは、ペルソナとなるターゲット層である学生が作成することにしました。
就活で学生が実際に行なったことやその時の考え、思いなどを活かしながらワークショップ形式で作成し、就活生が求めるサービスや課題を明確にしました。
【具体的な行動】 ・ペルソナとなるターゲット層がカスタマージャーニーマップを作成 |
カスタマージャーニーマップ作成後の成果
就活生の多くが実際に企業で働く社員からの声を求めていることがわかりました。しかし、説明会やインターンの際は、限られた時間で満足に情報収集ができないという課題が明らかになりました。
そこで、WEBサイト作成では学生に役立つ情報や社員インタビューなど、学生の希望に寄り添うコンテンツを作るという目的が決まりました。就活生のニーズに応えたことで、新卒採用を効率的に進められるようになりました。
【成果】 ・現在の人材採用における課題を明らかにできた |
5.カスタマージャーニーマップを作るべき企業
現代は、顧客の動きやニーズを理解して予測することが難しい時代と言われています。
「いいねをたくさんもらえる写真を撮るために旅行に行く」「情報収集はほとんど終えているので、営業担当者との接触は最小限にしたい」など、従来とは異なる行動様式が生まれているためです。
カスタマージャーニーマップは、このような顧客に対応するためのヒントを見つけるためのツールです。
特に以下のような課題を感じている企業は、ぜひカスタマージャーニーマップを作成するべきです。
・顧客ロイヤルティを向上させたい企業 |
カスタマージャーニーマップは幅広い分野で成果を出すことのできるマーケティングの施策です。
さまざまな分野の課題解決のために活用できるため、企業にとってはこれを取り組まない手はありません。
また、上記に当てはまらないという企業でも十分活用できますので、ぜひ作成してみましょう。
6.カスタマージャーニーマップ作成前に押さえるべきポイント
カスタマージャーニーマップの作成に入る前に、念頭に入れておいていただきたいポイントが3つあります。以下のポイントは、マップの作成の成否に関わりますので、必ず押さえてください。
・プロジェクトや商品に関わるメンバーで作成すること |
6-1. ポイント①|プロジェクトや商品に関わるメンバーで作成する
精度の高いカスタマージャーニーマップを作成するために、一人で作るのはNGです。プロジェクトに関わるメンバー全員、もしくは、人数が多すぎる場合は代表者を何人かピックアップして、アイディアを出し合いながら作成するようにしましょう。
メリットで紹介した、社内やチーム全体で共通認識を持たせるためにも、作成段階でメンバーの意見が一致していることが大切です。
6-2. ポイント②|なぜやるのか目的を明確にしておく
カスタマージャーニーマップの作成は、プロジェクトチームやスタッフ全体でなど、複数の参加者が協力して課題に取り組みます。そこで大切なのは、目的(ゴール)の設定と共有です。
・なぜカスタマージャーニーマップを作るのか
・なぜメンバーを集めたのか
・なぜ2時間以上も時間が必要なのか
など、参加者が理解していなければゴールにたどり着けません。
参加者にはカスタマージャーニーマップは作成後のアクションにつながる取り組みであることも理解してもらうこともポイントです。
6-3. ポイント③|多角的な視点を取り入れること
カスタマージャーニーマップを作成する上で大切なのが、多角的な視点を持つことです。
例えば、営業アプローチの見直すために営業チーム全体でカスタマージャーニーマップを作成した場合、営業側の視点に偏ったマップが完成してしまいます。
この場合、営業だけではなく、経営者視点や現場を知るエンジニアの視点を加えることで、既にあるチャネルのみで検討することなく、可能性を広げて新しいアイディアを生むことができるようになります。
ぜひ多角的な視点を取り入れてマップを作成してください。
ポイントを押さえたら、いよいよカスタマージャーニーマップを作ってみましょう。
7.カスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーマップの作成は、別の記事にて簡単な4つのSTEPを紹介しています。カスタマージャーニーについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
この記事ではもう少し詳細な方法を説明し、以下の7つのステップに分けて作成していきます。
STEP❶ | テーマを決める | 商品やサービス、スタートとゴール、期間の設定 |
STEP❷ | ペルソナを決める | 対象の顧客像を明確にする |
STEP❸ | 顧客視点で行動を洗い出す | 顧客のスタートからゴールまでの行動を明確にする |
STEP❹ | 行動をステージに分ける | 行動を分類し、グルーピングする |
STEP❺ | 顧客接点(タッチポイント)を明確にする | 顧客が利用する店舗やアプリなどの接点を探る |
STEP❻ | 感情を想像する | 「いいね」「困った」などの気持ちを想像する |
STEP❼ | 対応策を考える | マップを俯瞰して、改善ポイントを検討する |
以上の手順で、以下のようなマップを作ります。
7-1.STEP①|テーマを決める
最初のステップでは、カスタマージャーニーマップが対象とする範囲=テーマを決めます。
まずは、自社のどの商品やサービスをもとにマップを作成するか決めましょう。
次に、顧客の旅となる「スタート」と「ゴール」、さらに、状態の変化が起こるまでの「期間」を決めて、カスタマージャーニーの前提を設定します。
このテーマ設定は、カスタマージャーニーマップの土台となりすべてのステップに影響を与えますので、しっかり書き出しておきましょう。
▼テーマ記入例
商品・サービス | テーマとなる | 例)カジュアルブランド「A」 |
スタート | スタート地点の | 例)ブランド名を知らない |
ゴール | ゴール地点の | 例)購入し、グループのブランドにも接点を持つ |
期間 | スタートから | 例) 3週間 |
商品・サービスの決め方
取り上げる商品やサービスはどのようなものでもOKです。
カスタマージャーニーマップは、「売上が伸び悩んでいる商品」「オンライン予約サービス」「開発中のアプリ」「クラウドサービス」などさまざまなものに対応可能です。
また、まだ完成していないものでもテーマに設定できます。プロジェクトの段階で仮説的に顧客体験を検証し、完成前の段階で改善点を見つけて事前に手を打つことも可能です。
スタート・ゴールの決め方
スタートとゴールはペルソナとなる人物が、その商品・サービスを知っているのか、購入や利用の経験はあるか、商品・サービスへの好意度がどのような状態かをそれぞれ記述します。
スタート地点としては、
- 商品・サービスを認知していない状態
- 便利なサービスがなくて困っている状態
- 仮会員登録をしたものの本登録には至っていない状態
などが考えられます。
ゴール地点は
- その商品のファンになる=ブランドの認知度・好意度の向上
- アプリを使って効率的に商品を購入できる状態
- 本登録を済ませはじめて購入をする状態
など、最終的に目指す状態を設定します。
期間の決め方
期間は、スタートからゴールまでどれくらいの期間を要するかを設定します。
例えば、「商品を認知していない状態」から「商品を購入する」とした場合、3週間かかりそうであればそれを期間として設定します。
10年間のように長すぎる期間になるとマップが完成しませんので、自社製品の購入サイクルや利用期間などを考慮して、現実的な期間を設定するようにしましょう。
7-2.STEP②|ペルソナを決める
次のステップでは、カスタマージャーニーマップのメインターゲットの人物像=ペルソナを設定します。
ペルソナを設定する際、個人消費向けの「BtoC」ビジネスか、法人向けの「BtoB」ビジネスかによってペルソナ像は異なります。
【STEP②】BtoCビジネスでのペルソナ設定
BtoCビジネスのペルソナから見ていきましょう。
ペルソナの設定は、具体的にアイデアを出すことでイメージが膨らみやすくなります。名前や基本情報のほかに、休日の過ごし方や趣味など、その人のライフスタイルが手にとってわかるくらいにペルソナ像の解像度を上げましょう。
ペルソナ像は大きく3つに分けて考えることをおすすめします。
- 基本情報:名前・性別・年収・家族構成・居住エリア
- 行動情報:趣味・休日の過ごし方・悩み事・消費傾向・情報接点(SNS/アプリなど)
- より人物像のイメージが沸く情報:経歴・嗜好・行動の特徴など
さらに、人物のイラストを描いてみるとさらにイメージが膨らみやすくなりますよ。
【STEP②】BtoBビジネスでのペルソナ設定
BtoBビジネスの場合では、商品・サービスを使ってほしいターゲットとなる「企業」と、その企業に所属する「個人」の2つのペルソナを設定し、アイデアを出していきます。
ペルソナは以下のように、3つに分けて考えていきましょう。
- 企業ペルソナ:業種、商材、売上規模、市場トレンド、従業員数、企業風土など
- 個人ペルソナ:氏名、部署/役職、決済可能な予算、チームのサイズ、ビジネス上の課題など
- その企業のビジネス上の課題の詳細など
BtoCのペルソナに比べて、BtoBのペルソナはイメージが膨らみづらいかもしれません。だからと言って、実在の企業や人物をペルソナに設定するのは避けるようにしましょう。発想が限定されて、アイデアの幅が狭くなってしまいます。できるだけアイデアを出しながらペルソナ像を作り上げていくようにしましょう。
7-3.STEP③|顧客視点で行動を洗い出す
ステップ3から、いよいよマップを描いていきます。
マップの「顧客行動」の欄に、ペルソナがどんな行動をとるのか、思いつく限り書き出していきましょう。
こちらもBtoBビジネスとBtoCビジネスでの記入例は異なりますが、まずは共通している基本的なやり方をお伝えします。
▼行動を洗い出す方法
・顧客行動の「スタート」と「ゴール」を決めて、行動を書いた付箋を貼る |
なぜ顧客行動を洗い出す必要があるのかというと、顧客の感情の変化に気づくことができるようになるためです。書き出した顧客行動が多ければ多いほど、この後のステップがスムーズに進みますので、思いつく限りの顧客の行動を付箋に書き出して見てください。
次に、BtoBビジネスとBtoCビジネスに分けて、記入例を見ていきましょう。
【STEP③】BtoCビジネスの記入例
BtoCビジネスの場合の記入例をご紹介します。
ペルソナである20代女性・鈴木さんの行動を考えて見ましょう。
スタートはSNSで商品を見つけ、ゴールがそのブランドのファンになることです。その過程を行動に書き出していきます。
例えば、以下のような行動が考えられます。
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ペルソナ個人になりきり、どのような行動を経てゴールにたどり着くか、その行動を洗い出して順番に並べていきましょう。
【STEP③】.BtoBビジネスの記入例
BtoBビジネスの場合の記入例をご紹介します。
ペルソナである30代男性・佐藤さんと、佐藤さんの勤務する企業Aで考えます。
スタートはキーワード検索で情報収集、ゴールは社内で評価を得るぐらい成果をあげることです。その過程の行動を洗い出していきます。
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BtoBビジネスのカスタマージャーニーは、BtoCと異なり、「課題→リサーチ→検討→発注・契約」というパターン化された流れがあります。
しかし、ツールが導入されることがゴールではありません。導入後に数字で成果が現れ、課題が改善されるまでをゴールとして設定し、考えることが重要です。
7-4.STEP④|行動をステージに分けグルーピングする
ステップ4では、先ほど洗い出した「顧客行動」をグルーピングしていきましょう。
「ステージ」欄にそれぞれの行動の名前を記入し、グルーピングした行動を分類します。ステージごとに行動や感情を分類することで、「顧客行動」に貼られた1つひとつの「点」の行動が、大きな流れとなり、俯瞰して見られるようになります。
こちらもBtoBビジネスとBtoCビジネスごとの行動で分けた例を見てみましょう。
【STEP④】BtoCビジネスの記入例
BtoCビジネスでは、顧客の行動に合わせて、「出会い」「リサーチ」「来店」「試着」「購入」「発信」「出会い」というカテゴリーに分けました。
グルーピングする時のコツは、行動の背景にあるペルソナの変化に注目することです。
例えば、そのブランドに興味はなかったけれど、SNSを眺めているうちに気になるようになったり、好きになることがありますよね。ペルソナの変化は、ステージが変わることを意味します。
行動を分類していくと、顧客はこんな行動も取っているはず、ステージとステージの間にはもう一段階存在するのではないか、といった発見が出てきます。その場合、行動を追加したり、ステージを増やしたりして整理していきましょう。
【STEP④】BtoCビジネスの記入例
BtoBビジネスでは、「リサーチ」「検討」「交渉」「社内検討」「契約」「導入準備」「活用」「成果」でグルーピングを行いました。
BtoBビジネスの特徴としては、課題を解決する手段を探す「リサーチ」から始まるケースが多いことです。企業の担当者は、キーワード検索やセミナー動画など、WEBを活用して情報収集を行なっています。
そのため、BtoBビジネスでのマーケティング担当者は、取り引きに至るまでに、いかに検索結果の上位に表示されるか、多くの企業担当者に関心を持ってもらえるかが問われます。
7-5.STEP⑤|顧客との接点(タッチポイント)を明確にする
顧客の行動が明確になったら、ステップ5では「接点」を明確にしましょう。
顧客はさまざまな接点を通じて情報に触れ、意思決定をしています。具体的には、テレビやWEBサイト、アプリ、SNS、クチコミ、友人からの情報、店舗など、デジタルやリアルを含めると多彩な接点が存在します。
「顧客接点」の欄では、顧客が行動を起こすきっかけとなった接点や、行動を起こした先の接点を洗い出して行きましょう。
こちらもBtoCビジネスとBtoBビジネスそれぞれでご紹介します。
【STEP⑤】BtoCビジネスの記入例
例えば、ペルソナの鈴木さんが気になるアイテムに出会ったのは「SNS」です。お店のサイトへ「スマートフォン」を使いアクセスし、会社の近くにある「店舗」に来店。洋服を買ったあとは、再び「SNS」で自撮り写真をUPしました。
このように、顧客がとる行動には常に何かしらの接点があります。それらをイメージしながら「顧客接点」を書き出していきます。
【STEP⑤】BtoBビジネスの記入例
BtoBビジネスでは、ウェブサイトやPCなどのツールを介した接点と、自社の営業担当者、サービス担当者の対応など、人を介した接点を考えていきます。
今回の例では、課題解決のアクションからスタートしました。解決方法を探すため、ウェブサイトで情報を検索し、気になるサービスが見つかったら問い合わせや資料をダウンロードします。その後は、顧客に対応する自社の営業担当者、サービス担当者が顧客接点を担っていきます。
このようなに、自社がどのような対応をするのかをイメージしながら接点を考えていきましょう。
7-6.STEP⑥|感情を想像して整理する
ステップ6は、ペルソナの感情を想像することです。
顧客行動と接点を可視化したら、その背景にある感情の変化に注目しましょう。
顧客はメディアやデバイスから商品を見て興味を持ち、検索する過程で、「可愛い」「欲しい」「試してみたい」「面倒くさい」などさまざまな感情に触れます。
このような行動の中で、ペルソナの湧き出る感情を想像して整理してみましょう。この感情の変化が施策を考えるときの材料となります。顧客の感情に想像力が働くと、そこが施策を立てるヒントになるのです。
BtoCビジネスとBtoBビジネスのパターン別に、感情変化の記入例を見てみましょう。
【STEP⑥】BtoCビジネスの記入例
図のように、ポジティブな感情、ニュートラルな感情、ネガティブな感情に分け、ポジティブは上の欄、ネガティブは下の欄、ニュートラルは真ん中に配置することで感情をより可視化できます。
ネガティブな感情が多く向けられるプロセスは顧客体験を改善するヒントがたくさんあるはずです。感情が動き、ポジティブに傾きやすいプロセスは、その要因を強化することでより良い顧客体験へ導くことができます。
最終的には顧客が笑顔になるように、満足する顧客体験で終わることを目標にマップを描きましょう。
【STEP⑥】BtoBビジネスの記入例
BtoBの場合、「人手が足りない」「管理ができない」「売上が伸びない」などの課題を抱え、ネガティブな感情を持った状態からスタートするケースが多いです。
ネガティブをポジティブに変えていくために、このプロセスでは、顧客が何を感じて、どんな課題を抱えているのかに注目していきましょう。
ペルソナになりきって考えるよりも、こういうタイプの人はこう考えるのでは?と問いかけながら感情を整理していくことをおすすめします。
7-7.STEP⑦|対応策を考える
ステップ7では、企業の視点で顧客体験をいかに良いものにできるか対応策を考えていきます。
ネガティブな感情であれば「どうしたらポジティブになってもらえるのか」、ポジティブな感情なら「どうすればさらに喜んでもらえるのか」という視点で、対応策を考えていきましょう。
ここでポイントなのが、ステップ7では、マップをタテとヨコに見ることです。
「タテ」では、ステージや顧客行動、接点、感情がセットで機能しているかを考えます。「ヨコ」では、顧客がスムーズに次のステージや行動に移行できているかを判断します。
それぞれ、BtoCビジネスとBtoBビジネスのパターンに分けて見ていきましょう。
【STEP⑦】BtoCビジネスの記入例
マップをタテに見る際は、ステージ→行動→接点→感情を見ながら、接点は行動を充分にサポートできているか、感情はマイナスに傾いていないかを見て、そのステージにどんな課題があるのかを判断します。
マップをヨコに見る際は、ステージや顧客の行動がスムーズに流れているか、そのための接点が足りているか、感情の起伏に極端なところはないかを観察します。
これにより、SNSやウェブサイトを管轄しているチームが店舗へスムーズに顧客を誘導できているかを確認できます。この視点があれば、部門間の連携が高まり、顧客視点で一貫したイメージを持てるようになります。
【STEP⑦】BtoBビジネスの記入例
BtoBビジネスでも基本的な対応策の考え方は同じです。感情がネガティブに傾いている所に注目して対応策を考えます。
対応策は「行動ベース」で書くことが大事です。現状の課題をつぶすために「何をやるべきなのか」を考え、対応策を記入しましょう。
7-8.マップを見ながら意見交換を行う
7つのステップを経て、カスタマージャーニーマップが完成しました。
作成後は、どんな発見があり、何が課題だったのか、これからどのようなことに取り組むべきなのかなど、参加者同士でマップを見ながら自由に意見交換を行います。
意見のなかから、すぐに取り組むべき事項を決め、「施策実行の可能性をさぐる」「企画書に落とし込む」など、次のアクションへつなげていきましょう。
まとめ
カスタマージャーニーマップの活用で、顧客がどのような意思決定をして、何を考えて購入しているのか、顧客の行動と感情の変化を可視化し、顧客視点でサービス全体を見直して対策を立てられるようになります。
カスタマージャーニーマップを活用する主なメリットには以下のようなことがあります。
・顧客視点でサービス全体を見直すことができる |
顧客の動きやニーズを理解して予測することが難しい時代だからこそ、顧客視点に立ちかえり、ぜひカスタマージャーニーマップを活用して課題解決に役立ててくださいね。