
コールセンターにおけるCRM(顧客情報管理システム)は、顧客情報の一元管理、応対履歴の記録、データ分析などの機能を通じて業務の効率化と応対品質の向上を実現します。
- CRMとは:CRMは顧客情報を管理し、顧客サービスを向上させる為のITツール。顧客の基本情報、対応履歴、購入履歴を一元管理することで、効率的な業務運営が可能になる。
- コンタクトセンター(コールセンター)向けCRMの導入事例:共栄火災海上保険株式会社がCRMを活用して業務効率化と顧客満足度向上を実現したケースを紹介。
- コンタクトセンター(コールセンター)におけるCRM導入のメリット:業務の効率化、顧客満足度の向上、売上向上など、CRM導入による多くのビジネスメリットが存在する。
- コンタクトセンター向けCRMの選び方:幅広いチャネルでの対応履歴の一元管理や他部署との連携、操作性などを考慮し、最適なCRMを選ぶポイントについて解説。
「コンタクトセンター(コールセンター)で使用されるCRMとはどのようなシステムなのか?」
「自社のコールセンターでもCRMの導入を考えているが、どのような機能があり、どれを選択すればよいか分からない…」
このような疑問を抱える方は多いのではないでしょうか。
コンタクトセンターにおけるCRMは、顧客情報を管理するITシステムです。
主に以下の情報を管理・参照できます。
・顧客の基本情報(氏名・住所・連絡先など) |
これにより、コンタクトセンターは業務効率化と応対品質の向上を実現でき、多くのセンターで導入されています。
この記事では、コンタクトセンター業務に携わる方がCRMについて知っておくべきことをまとめました。まず初めに、以下の基礎知識を解説します。
・CRMとは何か |
その後、次の観点から詳細に解説します。
・コンタクトセンター向けCRMの導入事例 |
最後までお読みいただければ、コンタクトセンターのスタッフとして必要なCRMの知識が得られるでしょう。この記事が、あなたのコンタクトセンターに最適なCRMの導入と活用に役立つことを願っています。
1.コンタクトセンター(コールセンター)向けのCRMとは
CRM(顧客情報管理システム)は、多くのコンタクトセンターで導入されている重要なITツールです。ここでは、CRMの基本を確認していきましょう。
コンタクトセンターにおけるCRMは、顧客情報を一元管理するためのシステムです。主に以下の情報を管理・参照できます。
・顧客基本情報(氏名・住所・連絡先など) |
これにより、コンタクトセンターは「業務効率化」と「応対品質の向上」を実現します。
具体的には、以下の情報がCRM上で管理されます。
情報の種類 | 活用方法 |
顧客基本情報 | 問い合わせ時にスムーズに対応し、顧客に安心感を提供 |
問い合わせ履歴 | 再度同じ問い合わせがあった場合に迅速に対応 |
購入・契約履歴 | アップセルやクロスセルの機会を見つけ、販売促進に活用 |
苦情履歴 | 苦情の原因や解決策を迅速に把握し、顧客の不満を解消 |
顧客の要望や好み | パーソナライズされた提案を行い、顧客満足度を向上 |
フォローアップ情報 | 継続的なサポートを行い、信頼関係を築く |
顧客の属性に応じた対応 | 効果的なコミュニケーションを図る |
過去の対応メモ | スムーズな応対と問題解決を促進し、顧客満足度を高める |
具体的な活用例として、顧客から問い合わせがあった際に、オペレーターがCRMで過去の対応履歴を確認し、「前回は商品の設定についてご案内しましたが、その後の使い心地はいかがでしょうか?」とスムーズに対応できる場面が挙げられます。
このように、コンタクトセンター向けCRMは顧客情報を管理し、業務に活かす重要なツールです。
さらに詳しいCRMの機能については、「2.コンタクトセンター(コールセンター)向けCRMでできること」で解説しますので、そちらも参照してください。
CRMとCTIの違い |
ここで、よく混同される「CTI」と「CRM」の違いを解説します。言葉は似ていますが、両者は全く異なるシステムです。 ・CRM:顧客情報を管理し、顧客により良いサービスを提供するITツール CRMとCTIの機能や役割が重複するケースもあります。例えば、簡易な顧客管理機能が備わったCTIシステムや、CTI機能を含むCRMシステムなどです。また、CTIとCRMを連携させて運用するコンタクトセンターも多く、両者は密接に関係したシステムと言えます。 |
2.コンタクトセンター(コールセンター)向けCRMでできること
CRMにはコンタクトセンター(コールセンター)で役立つさまざまな「できること」があります。
導入する際には、それらの機能のうち自社に必要なものが備わっているシステムを選んだり、自社向けにカスタマイズしたりして運用するため、基礎知識としてCRMが基本的にできることを把握しておきましょう。
具体的に、コンタクトセンターのCRMができることは以下5つです。
コンタクトセンター向けCRMができること |
・顧客情報を一元管理できる |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1.顧客情報を一元管理できる
コンタクトセンター(コールセンター)のCRMの重要な機能の1つ目は、「顧客情報を一元管理できる」ことです。CRMを活用することで、すべての顧客に関する情報を一つのシステムに集約できます。
【CRM上で蓄積される情報一覧】
情報の種類 | 活用方法 |
顧客基本情報 | 問い合わせ時にスムーズに対応し、顧客の安心感を提供する |
問い合わせ履歴 | 再度同じ問い合わせが発生した場合に迅速に対応できる |
購入・契約履歴 | アップセルやクロスセルの機会を見つけ、販売促進に活用する |
苦情履歴 | 苦情の原因や解決策を迅速に把握し、顧客の不満を解消する |
顧客の要望や好み | パーソナライズされた提案を行い、満足度を向上させる |
フォローアップ情報 | 継続的なサポートやフォローアップで信頼関係を築く |
顧客の属性に応じた対応 | 属性に基づく効果的なコミュニケーションを実現する |
過去の対応メモ | スムーズな応対と問題解決を通じて顧客の満足度を向上させる |
このように、オペレーターは異なるシステムやファイルを参照することなく、一元管理されたすべての顧客情報にアクセス可能です。この情報を一元管理することで、企業は以下のような多くのメリットを享受できます。
【CRMによる一元管理のメリット一覧】
メリット | 説明 |
顧客対応の迅速化・効率化 | オペレーターが迅速に顧客情報にアクセスでき、顧客の待ち時間が減少し、業務効率が向上する |
一貫したサービスの提供 | 過去の問い合わせ内容や対応履歴を参照できるため、複数のオペレーターが関わる場合でも一貫した対応が可能 |
パーソナライズされた | CRMに蓄積された顧客の好みや傾向を基に、個別の対応ができ、アップセルやクロスセルの機会が増える |
顧客満足度向上・苦情削減 | 顧客の不満や要望を一元管理することで、苦情が繰り返されず、顧客満足度が向上する |
データ分析によるサービス改善 | 蓄積されたデータを分析し、よくある質問や苦情に対するサービス改善策を立てやすくなる |
2-2.過去の応対履歴を記録・管理できる
CRMの重要な機能の2つ目は、「過去の応対履歴を記録・管理できる」ことです。応対履歴管理とは、顧客情報と共に、その顧客の過去の問い合わせやオペレーターとのやり取り、商品購入履歴を記録・管理することを指します。
具体的には、以下の情報を記録します。
・いつ、どんな内容の連絡があったか |
最近では、電話だけでなく、メールやチャット、SNSなど、さまざまなチャネルで顧客とコンタクトを取れるコンタクトセンターが増加しています。そのため、CRMもこれらの多チャネルからの情報を一元管理できる機能を持つものが登場しています。
応対履歴を一元管理することで、過去に他のオペレーターが対応していた場合でも、スムーズに引継ぎが可能です。
顧客側も一貫した対応を受けることができ、不満の原因となる「以前も説明したのに…」といった状況を減少させることができます。これにより、顧客満足度の向上にも寄与します。
このように、CRMは過去から現在に至るまでの応対履歴を管理できるため、以下のようなメリットがあります。
・オペレーターの引継ぎがスムーズになる |
このように、コンタクトセンター(コールセンター)にとって、過去の対応履歴管理は非常に重要な機能となっています。
2-3.CTIと連携する
CRMの重要な機能の3つ目は「CTIと連携する」ことです。CTI(Computer Telephony Integration)連携によって、主に以下の2つの機能を実現できます。
【CRMのCTI連携で実現できること】 ◆ポップアップ表示 これによりオペレーターは顧客情報を把握したうえで対応でき、電話対応がスムーズに進みます。また個別ニーズに応じたきめ細やかな対応が可能となり、顧客満足度向上につながります ◆ワンクリック発信 |
CTI連携は、上記のようにコンタクトセンター(コールセンター)の「顧客満足度」や「業務効率」を向上させるため、CRM導入時にはぜひ連携を検討することをおすすめします。
2-4.データ分析ができる
CRMの重要な機能の4つ目は「データ分析ができる」ことです。CRM上で収集した顧客への対応内容や対応時間などのデータを集計し、以下のような視点で分析することができます。
・顧客のニーズ |
例えば、顧客からの問い合わせ内容を分析した場合、多くの顧客が「設定方法」や「設定の仕方」について問い合わせていることが判明したとします。この情報をもとに、以下の改善施策を実行できます。
・マニュアルやFAQに「設定方法」「設定の仕方」を詳しく記載する |
このように、CRMで収集したデータを分析することで、顧客のニーズや満足度に影響を与える要因を特定でき、改善点や課題を洗い出すことが可能です。これにより、顧客満足度や応対品質の向上へとつながります。
2-5.セキュリティ対策ができる
CRMの重要な機能の5つ目は「セキュリティ対策ができる」ことです。CRMが管理する情報は以下のように、気密性の高いものが多く含まれています。
・顧客の個人情報 |
そのため、情報漏洩や外部からの不正アクセス、データの改ざんを未然に防ぐための強固なセキュリティ機能が備わっています。具体的には以下のような対策が含まれます。
・データの暗号化 |
このように、CRMは重要な情報を一元管理できるだけでなく、セキュリティ面でも強力な対策が施されている信頼性の高いツールです。
3.コンタクトセンター(コールセンター)のCRMの導入事例
これまでコンタクトセンター(コールセンター)の基礎知識や機能について解説してきましたが、ここではより具体的なイメージを持っていただくために、CRMの導入事例をご紹介します。導入事例を読むことで、自社への導入イメージを具体化できるでしょう。
まず、「共栄火災海上保険様(以下、共栄火災様)」の導入事例を見ていきます。
課題 |
・電話対応内容をExcelに入力し、印刷してからFAXで次の担当者に情報伝達していた |
そこで、「電話対応の記録をデジタル化して一元管理するCRM」を導入しました。
成果 |
・電話対応をシステムに入力することで、次に対応する人がいつでも情報を確認できるようになり、現場の負担が軽減され、業務効率化が実現した |
このように、CRMを導入することで、業務効率化と顧客満足の向上を同時に実現きるため、コンタクトセンターにとって導入メリットは非常に大きいと言えるでしょう。
4.コンタクトセンター(コールセンター)にCRMは必要不可欠
ここまでコンタクトセンター(コールセンター)のCRMが提供する機能や導入事例を通じて、その大きなメリットをお伝えしてきました。結論として、コンタクトセンターにはCRMが必要不可欠です。その理由は以下の2点です。
・【理由1】時代背景に合っているため |
それぞれの理由について、以下で解説します。
4-1.【理由1】時代背景と合っているため
1つ目の理由は「時代背景と合っているため」です。
以前は、マスマーケティングに基づいて大量生産された商品やサービスが、多くのユーザーに消費されていました。しかし、情報があふれ、誰もがその情報にアクセスできる社会になると、顧客の前には無数の選択肢が広がり、個々の好みも多様化しました。
この結果、顧客それぞれの異なるニーズに応えるためには、より詳細な顧客データの収集と分析が求められるようになりました。そこで重要性を増したのが、顧客情報を管理する「CRM」です。
CRMは以下のようなメリットを提供し、多様化したニーズに対してパーソナライズされた対応を可能にします。その結果、顧客の満足度が向上し、囲い込み(ファン化)がしやすくなります。
時代背景に合うCRMのメリット |
【応対品質の向上】 |
このように、ニーズが多様化した現代において、顧客をリピーターとして囲い込むためには、CRMの導入が重要であると言えるでしょう。
4-2.【理由2】企業にとってインパクトの大きい「業務効率化」「売上向上」というメリットがあるため
2つめの理由は「企業にとってインパクトの大きい業務効率化と売上向上というメリットがあるため」です。コンタクトセンター(コールセンター)のCRMには、以下のような企業にとって重要なメリットがあります。
企業にとってCRMの2つのメリット |
【メリット1】業務効率化 【メリット2】売上向上 |
企業は利潤を追求することが本質であるため、業務効率化や売上向上はCRM導入の重要な理由となります。
これら2つの理由から、コンタクトセンターにとってCRMは必要不可欠であると言えるでしょう。
次章では、コンタクトセンターへのCRM導入に向けたツール選定のポイントについて理解を深めていきます。
5.コンタクトセンター(コールセンター)向けCRM選びのポイント
業務効率化と応対品質向上という大きなメリットがあるCRMをぜひ導入したいと考える方も多いでしょう。
しかし、CRMにはさまざまな機能があり、各社から多種多様なタイプのCRMシステムが提供されているため、「どの会社のCRMが最適なのか」「どの機能が必要なのか」を判断するのが難しいと感じるかもしれません。
そこで、CRMを選ぶ際の判断基準として以下のポイントを挙げます。これらの点をチェックして、最適なCRMを選んでみてください。
5-1.幅広いチャネルでの対応履歴を一元管理・閲覧できるか
現在のコンタクトセンター(コールセンター)では、多チャネル化が急速に進んでいます。
電話対応だけでなく、メール、チャット、SNSなど、さまざまなチャネルから顧客とコンタクトを取るケースが増加しています。そのため、ひとりの顧客が電話やメールを使い分けて連絡することも一般的になりました。
このような状況で重要なのが、「多チャネルでの対応履歴を一元管理できること」です。
具体的には、以下のような機能が求められます。
・ひとりの顧客について、電話、メール、LINE、チャットなどの対応履歴を一つの画面で集約し、同時に閲覧できること |
しかし、実際にはすべてのチャネルの履歴を統合できるCRMシステムは多くありません。その代わりに、「メインのチャネルに絞り、補助的に他のチャネルの履歴も記録できる」CRMが存在します。
したがって、「うちのセンターは電話のインバウンド中心で、メールとSMSがサブ的な位置づけ」といった特性や、「メールでの問い合わせがメインで、できない場合にのみ電話での問い合わせが入る」といったニーズに応じた一元管理が可能なCRMを選ぶことが重要です。
5-2.顧客対応状況を他部署と連携できるか
CRMで管理する顧客情報をコンタクトセンター(コールセンター)外の他部署と連携できるかどうかも重要なポイントです。
CRMが扱う顧客情報は、コンタクトセンターだけでなく、営業部門など他の部署でも利用されます。営業部門も顧客と接触し、独自の顧客情報を持っています。このデータとコンタクトセンターで得られる顧客情報を統合することで、より精度の高い顧客ニーズの把握が可能になります。
さらに、集まった顧客データを分析することで、コンタクトセンターの応対品質向上のみならず、次のようにさまざまな部署で有効活用できます。
・契約件数や成約率を上げるための営業戦略の策定 |
そのためには、CRMの情報を他部署と連携させる必要があります。
特に効果的な連携先としては、以下のようなシステムがあります。
・SFA(営業支援システム)との連携 |
CRM導入前には、どのシステムと連携が可能かを必ず確認することが重要です。
5-3. 操作性・使いやすさ(UI)に優れているか
3つ目のポイントは、 操作性や使いやすさ(UI:ユーザーインターフェイス)です。スーパーバイザーなどの管理者やオペレーターにとっての操作性や使いやすさは、非常に重要な評価基準です。
どんなに高度な機能を持つシステムでも、実際に現場でスーパーバイザーやオペレーターが使いづらいと、その機能を十分に活かすことはできません。
実際に、「現場で使いづらいから」という理由でシステムを入れ替える企業も少なくありません。そのため、CRM導入前にはユーザーインターフェイスの操作性をしっかりと確認することが重要です。
6.多チャネルを一元管理できる「Contact-Link」がおすすめ
「5.コンタクトセンター(コールセンター)向けCRM選びのポイント」で、最も重要なポイントとして「幅広いチャネルでの対応履歴を一元管理・閲覧できるか」を挙げました。そこでおすすめしたいのが、Contact-Linkです。
「Contact-Link」は、電話、メール、チャット、SMSなどのマルチチャネルの対応履歴を一元管理できるシステムです。シンプルでわかりやすいインターフェースにより、オペレーターは瞬時に対応履歴を把握できます。
以下のような充実した機能も備えています。
インバウンド・アウトバウンド機能 | ||
・対応履歴管理 | ・顧客管理 | ・過去履歴検索 |
共通機能 | ||
・FAQ | ・周知事項管理 | ・レポート |
オプション機能 | ||
・CTI連携 | ・IVR連携 |
詳しい資料のご請求やお問い合わせは、以下のリンクからお願いいたします。
まとめ
いかがでしたか?コンタクトセンター(コールセンター)におけるCRMの役割や機能について、理解が深まったかと思います。改めて、記事の内容を振り返ってみましょう。
・コンタクトセンターにおける「CRM」とは
顧客情報や対応履歴、取引履歴などのデータを管理するITシステム
・コンタクトセンター向けCRMによってできること
顧客情報を一元管理できる |
・コンタクトセンターにおけるCRMの導入メリット
業務の効率化 |
・コンタクトセンター向けCRM選びのポイント
幅広いチャネルでの対応履歴を一元管理できるか |
以上を踏まえ、あなたのコンタクトセンターが最適なCRMを導入し、活用できることを願っています。