
インサイドセールスのKPIは、業務の成果を数値で可視化し、改善につなげるための重要な指標です。非対面で顧客と接するインサイドセールスでは、活動の進捗や成果が見えづらいため、KPIを設定することで、目標達成に向けた行動を明確にし、チーム全体で成果を最大化することができます。
- インサイドセールスの代表的なKPI5選:インサイドセールスでよく使われるKPIには、メール開封率・架電数・商談化率・受注率・受注額の5つがある。
- インサイドセールスのKPIを適切に設定する方法:まずは目的を明確にし、それに合った指標を選定する。さらに、事業フェーズや環境の変化に応じて定期的に見直すことで、現実的かつ成果につながるKPI運用が可能になる。
- インサイドセールスのKPI設定を行う際のポイント:インサイドセールスのKPIを設定する際は、他部門との整合性を取り、現実的な数値を設定することが重要。項目数は3〜5つ程度に絞り、さらに年間目標だけでなく、月・週単位の短期目標に分解することで、進捗管理と改善がしやすくなる。
「インサイドセールスのKPIって何を設定すればいいの?」
「インサイドセールスは成果が見えづらい業務だけど、どうやって評価すればいいの?」
このような悩みを抱えるマーケティング・営業担当者は多いのではないでしょうか。
結論から言うと、インサイドセールスにKPIは必須です。
KPIがなければ、業務の成果を可視化できず、改善のためのPDCAも回せません。
インサイドセールスの代表的なKPIには下記の5つがありますが、概要や計算方法を理解したうえで自社に合うKPIを選定することが重要です。
主なKPI | 概要 | 計算方法 |
メール開封率・開封数 | メール施策の反応率を測る指標 | 開封率= |
架電数 | 担当者またはチームの活動量 | 一定時間の架電数をカウント |
商談化率・商談化数 | リードから商談に進んだ割合・件数 | 商談化率= |
受注率・受注数 | 商談から受注に至った割合・件数 | 受注率= |
受注額 | 一定期間内の受注金額 | 商談から受注に至った受注額 |
そこでこの記事では、インサイドセールスにKPIが必要な理由や代表的なKPI、KPIを適切に設定する方法をまとめてご紹介します。特に、代表的なKPIについては計算方法や改善ポイントを踏まえて説明しているので、すぐに活用できます。
この記事を最後まで読めばインサイドセールスで成果を出すために、KPIを設定できるようになります。インサイドセールスは、効果測定を行い継続して改善することが重要です。自社に合うKPIを設定し運用するためにも、参考にしてみてください。
1.インサイドセールスのKPIとは
インサイドセールスのKPIとは、インサイドセールスの業績評価をするために重要な指標です。自社の課題や目標に応じて適切なKPIを設定し、PDCAサイクルを回すことで、効率的に成果を創出できる体制を整えることができます。
【インサイドセールスのKPIの例】 |
そもそも、インサイドセールスとはメールや電話などの非対面手段を用いて、顧客の獲得から商談化までを行う営業手法です。企業によって業務範囲は異なりますが、主に以下のような業務を担います。
【インサイドセールスの主な業務内容】 |
インサイドセールスは対面営業とは異なり、成果が見えにくいため、意図的に可視化しなければボトルネックを把握することができません。
例えば、対面営業では「〇〇企業と打ち合わせをして次回のアポイントを取得した」と行動ベースで成果を把握できます。一方で、インサイドセールスでは「1日に何件架電し、どのような成果があったか」といった情報を定量的に測定する仕組みが必要です。
そこで重要なのが、インサイドセールスのKPIの設定です。
KPIを活用することで、チーム全体が同じ目標に向かって取り組むことができ、業務の改善にもつながります。
【インサイドセールスにKPIが必要な理由】 |
例えば、インサイドセールスのKPIに“メール開封率”を設定したとします。
毎月効果測定を行った結果、業界平均よりも開封率より低いことが判明した場合、メールの件名や内容を見直し、「開封率を5%向上させる」という目標を立てて改善に取り組むことができます。
このように、KPIを活用することで、インサイドセールスの成果を着実に向上させることが可能です。
2.インサイドセールスの代表的なKPIとは
インサイドセールスにKPIが必要な理由を理解したところで、次は具体的な指標について確認していきましょう。
インサイドセールスの代表的なKPIには下記の5つがあります。
主なKPI | 概要 | 計算方法 |
メール開封率・開封数 | メール施策の反応率を測る指標 | 開封率= |
架電数 | 担当者またはチームの活動量 | 一定時間の架電数をカウント |
商談化率・商談化数 | リードから商談に進んだ割合・件数 | 商談化率= |
受注率・受注数 | 商談から受注に至った割合・件数 | 受注率= |
受注額 | 一定期間内の受注金額 | 商談から受注に至った受注額 |
インサイドセールスの最終的な目的は“売上の拡大”なので、商談化率・商談化数、受注率・受注数、受注額の3つはどの企業でも基本的にKPIとして設定される傾向にあります。
一方、メール開封率・開封数、架電率は、業務内容や課題に応じて柔軟に設定されることが多いです。以下では、インサイドセールスの流れに沿って各KPIを詳しく解説します。
2-1.メール開封率・開封数
メール開封率・開封数 | |
概要 | メールマガジンやサンクスメールなどの開封率・開封数を測定する指標 |
計算方法 | 開封率=(開封数 ÷ 有効配信数)× 100 |
目安 | 企業に関心がある顧客へ送る場合:15〜25% |
メールは見込み客との関係構築に欠かせない手段です。定期的な情報提供を行っている場合、開封率をKPIとして設定することで、アプローチの有効性を可視化できます。
メールの開封率は15~25%程度が目安です。想定よりも開封率が低い場合には、配信日やメールの質、ターゲットを見直すことで開封率を改善できます。
【改善のヒント】 |
また、配信しているメール内にリンクやコンバージョン、商品購入ページを設定している場合は、それぞれのクリック率もメール開封率と併せてKPIに設定できるでしょう。
メールの開封率と併せて確認したい指標 |
・メール内のリンクのクリック率 |
2-2.架電数
架電数 | |
概要 | 一定時間に担当者(または部署全体)が顧客に架電した回数 |
計算方法 | 担当者×架電件数 |
目安 | 架電の目的や扱っている商品、サービスにより異なる |
電話は、新規顧客の創出や顧客との関係構築に有効です。架電数をKPIに設定することで、活動量と成果の関係を把握できます。
ここで注意したいのは、架電数は多ければ多いほどいいというわけではなく、成果につながっているかが重要です。商談化率や受注率と併せて確認しましょう。
インサイドセールスとテレアポの違いについて知りたい方は、こちらの記事もご覧下さい。
2-3.商談化率・商談化数
商談化率・商談化数 | |
概要 | リード(見込み客)から商談化に至った件数・比率 |
計算方法 | 商談化率=商談化した件数 ÷ リード総数 × 100 |
目安 | 3.5~30%程度(商材や業界により異なる) |
商談化率・商談化数とは、見込み客育成から商談化に至った回数・比率のことです。
インサイドセールスが顧客と信頼関係を築けているかを示す重要な指標です。
【改善のヒント】 |
2-4.受注率・受注数
受注率・受注数 | |
概要 | リード(見込み客)から商談化に至った件数・比率 |
計算方法 | 受注率=(受注数 ÷ 商談化数) × 100 |
目安 | 扱っている商品、サービスにより異なる |
受注率・受注数はインサイドセールスの最終的な成果に直結する指標です。フィールドセールスと連携してKPIを設定・確認することが重要です。
【改善のヒント】 |
2-5.受注
受注額 | |
概要 | 商談から受注に至った際の金額 |
計算方法 | 一定期間内に受注合計額 |
目安 | 扱っている商品、サービスにより異なる |
商材や申し込みコースが複数ある場合は、金額の単価の高い商材の受注が多いほど、インサイドセールスの成果は大きくなります。アップセルやクロスセルの提案も有効です。
【改善のヒント】 |
【インサイドセールスの種類によりKPIを変えることも可能】 例: 業務内容や課題に応じて、柔軟にKPIを設定することが成果につながります。 |
3.インサイドセールスのKPIを適切に設定する方法
前章では、インサイドセールスにおける代表的なKPIを5つ紹介しました。
次に気になるのは、「自社の場合は、どのKPIを選べばいいのか?」という点ではないでしょうか。
インサイドセールスのKPIは、事業フェーズや組織の成熟度、業種、目的などによって、重視すべき指標が異なります。つまり、前の章で解説した指標を全ての指標を一律に設定するのではなく、自社の状況に合ったKPIを選定することが成果につながる鍵です。
そのためこの章では、インサイドセールスのKPIを適切に設定するための3ステップを解説します。
インサイドセールスのKPI設定 3ステップ |
1. 自社の目標を明確にする |
3-1.自社の目標を明確にする
まずは、自社がインサイドセールスに期待する役割や達成したい目標を明確にしましょう。
インサイドセールスで達成したい目標は、企業の方針や事業フェーズによって異なります。
インサイドセールスによって達成したい目標の例 |
・見込み客との良好な関係を維持し、セミナーやイベントへの参加者を増やしたい |
このように、現状の課題や目的に応じて、インサイドセールスの役割は変化します。まずは自社の現状を把握し、最終的な目標はどこにあるのかという点を明確にすることが重要です。
3-2.目標に合うKPIを選ぶ
自社の目標が明確になったら、その目標を達成するための施策を洗い出し、施策が滞りなく進んでいるかどうかを測定できる指標をKPIとして設定します。
目標 | 施策 | KPI例 |
見込み客との関係構築 | メルマガで有益な情報を定期配信 | メール開封率 |
サービス理解の促進 | メルマガ+タイミングを見て架電 | メール開封率、架電数 |
確度の高い顧客の選別 | 顧客の温度感をランク付けし商談化 | 商談化率、受注率 |
売上の最大化 | 高単価商材の受注を目指す | 商談化率、受注率、受注額 |
このように目標に応じて着目すべきKPIも異なるということがおわかりいただけるのではないでしょうか。自社の目的に合ったKPIを選定することで、インサイドセールスの成果を最大化できます。
3-3.KPIを継続的に見直す
KPIは一度設定すれば終わりではなく、定期的な見直しが不可欠です。事業環境や競合状況の変化、施策の進捗に応じて柔軟に調整しましょう。
KPIの見直しを検討すべきタイミングの例 |
・設定した目標値が現実と乖離していた |
ビジネス環境は常に変化しています。そのためKPIの見直しを定期的な業務としてスケジュールに組み込むことが、持続的な成果につながります。
4.インサイドセールスのKPI設定を行う際のポイント
前章では、KPIを適切に設定するための3ステップをご紹介しました。そこで4章では、KPIを設定する際に必ず押さえておきたい5つのポイントを解説します。
これらのポイントを意識することで、KPIの効果測定や目標達成がよりスムーズに進み、インサイドセールスの成果を最大化できます。
インサイドセールスのKPI設定を行う際のポイント |
・他部門との整合性を持たせる |
4-1.他部門との整合性を持たせる
インサイドセールスは、マーケティング部門からリードを受け取り、育成した上でフィールドセールスに引き渡すという流れで業務が進みます。そのため、他部門との連携は不可欠です。
例えば、インサイドセールス部門が「500件のリード育成」を目標にしていても、マーケティング部門が「100件のリード提供」しか目標にしていなければ、目標達成は困難です。
各部門の目標をすり合わせ、整合性のあるKPI設定を行うことが重要です。
4-2.現実的に達成可能な数値とする
KPI設定は現実的に達成可能であり、少し努力すれば達成できるレベルが理想です。非現実的な目標(例:週10通のメール+週3回の電話・商談を月に100件獲得)を設定すると、行動が目的化し、顧客との関係構築が疎かになります。
逆に、簡単すぎる目標ではモチベーションが上がらず、成長も鈍化します。まずは1ヶ月の実績をもとに、徐々に目標値を調整していくのがおすすめです。
4-3.項目数は3~5つを目安とする
KPIは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」です。
本当に重要な項目に絞ることが成果への近道です。
項目が多すぎると管理が煩雑になり、優先順位が不明確になります。適切な項目数としては3〜5つ程度を目安として考え、多くても10項目以内に抑えましょう。
そのため、この記事でも具体的なKPIは5つに絞り込んで紹介しています。この中から自社に合った優先順位でKPIを選ぶようにすると良いでしょう。
4-4.結果を数値で測定できる項目を選ぶ
KPIを設定するときは、定量的に測定できる項目を選ぶことも重要です。
曖昧な指標では、進捗や成果を客観的に判断できません。
また、もし測定できる指標をKPIにしたとしても、分析できるだけの数を集められない指標だと扱いにくくなります。母数が少なすぎる指標は、誤差が大きくなり再現性が低くなります。
例えば、リードが10件しかないのに、KPIを商談化率にすると、1件獲得できたかどうかで結果は10%も変わってきてしまいます。
そうすると成果を達成できるかどうかの誤差が大きくなり再現性が担保できなくなりますので、母数がある程度確保できる項目をKPIにするほうが管理しやすいでしょう。
さらに、手作業での集計が必要な指標は避け、ITツールによる自動集計を活用することで、業務効率を高めることができます。
具体的には、この後の「5.インサイドセールスのKPI効果測定に役立つツール」の章で解説します。
4-5.短期的な数値目標に落とし込む
KPIを設定するときは、いつまでにどの数字を達成するのかを最初に明確にしますが、その際、年間や半年単位の数値目標だけでは進捗管理が難しくなります。
そのため、どの指標も長期だけでなく、日・週・月単位の短期的な数値目標に落とし込むようにしていきましょう。
メール開封率や架電数などは1日単位でも振り返ることができますし、商談化率(数)や受注率(数)、受注額も、毎週・毎月という単位で推移をチェックすることが可能です。
例えば、年間商談化数が500件なら、月間で約42件、週で約10件が目安になります。短期目標があることで、進捗の遅れに早期に気づき、迅速な対策が打てます。
5.インサイドセールスのKPI効果測定に役立つツール
どんなに優れたKPIを設定しても、その効果を正しく測定できなければ意味がありません。そこでこの章では、インサイドセールスのKPIを定量的に評価するために役立つツールを紹介します。
具体的には以下の3種類があり、それぞれ測定できる項目が少しずつ異なります。目的に応じて使い分けることが重要です。
【インサイドセールスのKPI効果測定に役立つ主なツール】
ツール名 | 測定できる主なKPI |
MA(マーケティングオートメーション) | メール開封率、URLクリック率、見込み度合い(スコアリング) |
SFA(営業支援システム) | 商談数、受注率、受注金額、購買意欲の度合い |
CRM(顧客関係管理) | 顧客数、リピート率、購入単価、購入頻度、架電数、メール配信数、問い合わせ数 |
これらのツールを活用することで、KPIだけでなく、インサイドセールス全体の活用を数値化し、業務改善や戦略の見直しをスムーズに行うことが可能になります。
5-1.MA(Marketing Automation:マーケティングオートメーション)
MAは、マーケティング活動を自動化・可視化するためのツールです。主に見込み客の育成(ナーチャリング)に活用されます。
MA(マーケティングオートメーション)測定できる主な指標 |
・メール開封率 |
これらのデータをもとに、顧客の温度感に応じたアプローチが可能になります。
例:
温度感が低い顧客 → 業界ニュースや事例紹介を配信
温度感が高い顧客 → 導入事例やサービス詳細を案内
MAは、メール施策の効果測定や顧客育成の進捗確認に欠かせないツールです。
5-2.SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)
SFAは、営業活動の履歴や進捗を一元管理・可視化するツールです。インサイドセールスとフィールドセールスの連携にも役立ちます。具体的には以下のような数値を測定することができます。
SFA(セールスフォースオートメーション)で効果測定できる数値 |
・商談数 |
SFAを使えば、「何件の商談から何件の受注につながったか」「どの顧客が高確度か」などを把握でき、成果の分析と改善施策の立案が容易になります。
5-3.CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)
CRMは、顧客との関係性を長期的に管理・分析するツールです。インサイドセールスの活動量や顧客の反応を広範囲に測定できます。具体的には以下のような数値を測定することができます。
CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)で効果測定できる数値 |
・顧客数 |
CRMは、顧客のライフサイクル全体を把握し、インサイドセールスの貢献度を定量的に評価するのに最適です。
トランスコスモスでは、ITツールを用いた効率的なインサイドセールスの導入を支援しています。
豊富なノウハウと事例・実績を基にサポートいたしますので、気になる方は以下のリンクよりお問い合わせください。
まとめ
インサイドセールスのKPIを効果的に運用するには、適切なツールによる測定と分析が不可欠です。
【インサイドセールスのKPI効果測定に役立つ主なツール】
ツール名 | 測定できる主なKPI |
MA(マーケティングオートメーション) | メール開封率、URLクリック率、見込み度合い(スコアリング) |
SFA(営業支援システム) | 商談数、受注率、受注金額、購買意欲の度合い |
CRM(顧客関係管理) | 顧客数、リピート率、購入単価、購入頻度、架電数、メール配信数、問い合わせ数 |
これらのツールを活用することで、KPIの達成状況をリアルタイムで把握し、インサイドセールスの成果を最大化するための改善サイクルを構築できます。