
「最近流行りのサブスクリプションってどんなもの?」
「自社でもサブスクリプションビジネスを始めてみたいが、どうすればいい?」
この記事を読んでいるのは、そんな疑問や希望を持っている方ではないでしょうか。
「サブスクリプション」とは、「定期的に一定額を支払うことで、一定期間または一定の範囲の中で、商品やサービスを自由に利用できるビジネスモデル」です。
「毎月〇〇円の定額で、好きな映画やドラマが見放題の動画配信サービス」などが代表的で、他にも「月額△△円で3着の洋服がレンタルできるファッションレンタルサービス」や、「月額◆万円でステーキを何回でも食べられるチケット」といったものなどが人気を集めています。
同じ商品を購入する場合と比べると、利用者側は費用が安く抑えられ、企業側は定期的に収益を上げることができるなど双方にメリットがあるため、ここ数年、多業種間でさまざまなサービスが展開されるようになりました。
市場も拡大中であるため、ビジネスチャンスが期待できるでしょう。
そこでこの記事では、サブスクリプションサービスとビジネスとしてのサブスクリプションについて、さまざまな視点から解説していきます。
はじめに、サブスクリプションの定義や現状などの基本的な知識を身に着けてください。
◎「サブスクリプション」の定義・意味
◎サブスクリプションと他のサービスとの違い
◎サブスクリプションビジネスの現状
◎サブスクリプションビジネスにおけるカスタマーサクセスの必要性
◎サブスクリプションのメリット・デメリット:提供企業側/顧客側それぞれ
◎現在提供されているサブスクリプションの例
その上で、実際にサブスクリプションビジネスを始める際に知っておくべきことをお伝えします。
◎サブスクリプションビジネスで重視すべきKPI
◎サブスクリプションビジネスで成功するポイント
最後まで読めば、サブスクリプションについて知りたいことがよく理解でき、この記事で、あなたの会社がサブスクリプションビジネスに成功するよう願っています。
目次
1.サブスクリプションとは
「サブスクリプション」、またはその略語である「サブスク」という言葉は、ここ数年ですっかり定着しました。あらためて「サブスクリプションとは何か?」と問われると、明確に説明できない方も多いのではないでしょうか?
そこで最初に、「サブスクリプション」の意味について正しく理解しておきましょう。
1-1.「サブスクリプション」の定義・意味
「サブスクリプション(subscription)」は、もともと「(新聞・雑誌などの)予約購読、定期購読」を意味する言葉でした。
そこから派生して、現在では「定期的に一定額を支払うことで、一定期間または一定の範囲の中で、商品やサービスを自由に利用できるビジネスモデル」を示すようになりました。
たとえば、「毎月1,000円で、好きな曲が聴き放題の音楽配信サービス」や、「毎月5,000円で3着の洋服がレンタルでき、途中で別の服に交換もできるファッションレンタルサービス」、「月額1万円で、系列チェーン店のステーキを何回でも食べられるチケット」といったものが考えられます。
同じ商品を購入する場合や、同じサービスを利用するごとに料金を支払う場合と比較すると、消費者は費用を抑えることができ、企業側は定期的に収益を上げることが可能であるため、近年さまざまな分野でサブスクリプションサービスが広がっています。
2019年には、サブスクリプションの略語である「サブスク」が流行語大賞にもノミネートされました。
1-2.サブスクリプションと他のサービスとの違い
ちなみにサブスクリプションと似たようなサービスとして、「月額課金」「定額課金」「レンタル」「リカーリング」といったものもあります。
これらとサブスクリプションとはどう違うのでしょうか?
1-2-1.主な類似サービスとの違い
まず、主な類似サービスとその特徴を表にまとめましたので、以下を見てください。
上記の中でも、特に「月額課金」と「定額課金」はサブスクリプションと混同されやすいので、以下のその違いをくわしく説明しておきます。
1-2-2.月額課金・定額課金との違い
「月額課金」「定額課金」は、消費者が一定期間ごとに一定の金額を支払うことで、継続的に商品購入・サービス利用ができる仕組みです。たとえば、新聞の購読、携帯電話の利用、電車やバスの定期券、税理士や弁護士の顧問料などが該当します。
この「一定期間」が「月ごと」の場合を特に「月額課金」とも呼んでいるわけです。
これらとサブスクリプションの違いはあいまいで、消費者視点ではほぼ同義として使われています。
一方で企業視点からはひとつ大きな違いがあります。それは「顧客満足度」の重要性です。
月額課金・定額課金の場合、企業側が目指すゴールは「商品やサービスを提供すること」です。
それに対してサブスクリプションは、「顧客を満足させること」がゴールだという考え方に立っています。そのために、つねに顧客ニーズを追及して、新たな商品を追加したりサービスを改善することが求められるのです。
これについては、「2-2.サブスクリプションビジネスにおけるカスタマーサクセスの必要性」でもくわしく説明します。
2.サブスクリプションビジネスとは
近年、サブスクリプションはさまざまなビジネスに導入され、市場も拡大しています。
そこで、企業視点からビジネスとしてのサブスクリプションについても掘り下げてみましょう。
2-1.サブスクリプションビジネスの現状
サブスクリプションは、当初は食品の定期宅配や有料動画・音楽配信などから始まりましたが、その後急速にサービス分野が拡大し、ファッション、車、ソフト・アプリ・ゲーム、家具家電、コスメなど多種多様に提供されるようになっています。
それにともなって市場も急成長しているのが現状です。
日本国内のサブスクリプション市場は、2018年に約5,600億円、2019年に約6,800億円、2020年には約8,800億円と右肩上がりと言われ、間もなく1兆円規模に届くことが予想されています。
このようにサブスクリプションが普及したのは、コロナ禍によって「おうち時間」が増えたことや、宅配需要が増加したことなどが影響していると考えられます。
が、一次的なブームではなく、今では消費者に定着しつつあるため、今後も市場の成長を期待してよいでしょう。
ちなみに、利用しているサブスクリプションの種類では、動画配信が約6割ともっとも多く、次いで音楽配信、書籍・コミック、ゲームとなっています。
出典:GMOリサーチ株式会社「今最も人気のサブスクは?」
2-2.サブスクリプションビジネスにおけるカスタマーサクセスの必要性
「1-2-2.月額課金・定額課金との違い」で触れましたが、サブスクリプションが従来の定額制と大きく異なるのは、「顧客満足」を重視したビジネスモデルだという点です。
そこで注目されるのが、「カスタマーサクセス」の重要性です。
2-2-1.「カスタマーサクセス」とは何か
「カスタマーサクセス」とは、直訳すると「顧客の成功」です。
これは、顧客に自社の商品・サービスを購入してもらうことだけを目的とせず、購入後に利用してもらうことによって顧客の本質的な要望にこたえるとともに、自社の利益にもつなげていこうという考え方です。
よく「カスタマーサービス」と同様に語られることがありますが、両者には以下のような違いがあります。
カスタマーサクセスについて、くわしくは別記事「カスタマーサクセスとは?成功事例やメリット・デメリットを解説」を参照してください。
2-2-2.消費者の意識は「所有」から「利用」へ
ではなぜ、サブスクリプションビジネスにおいてカスタマーサクセスが重要なのでしょうか?
それは、顧客の「成功」の形が変化しつつあるためです。
従来は、顧客の消費行動は「欲しいものを購入する」ことが目的であり、それが達成されれば成功を感じることができていました。
が、近年は消費者の意識が「モノを所有したい」というよりも、「モノを利用できればよい」という方向にシフトしつつあります。
たとえば、音楽は「CDを買って所有する」必要がなく、「音源データを聴きたいときに聴ければ満足」という人が増えているのです。
これは、不況によりモノを買えなくなったこと、エコ意識やミニマリズムが浸透したこと、モノよりも「体験・経験」を重視する風潮が生まれたことなどが原因と考えられ、その結果、サブスクリプションの普及につながりました。
2-2-3.カスタマーサクセスはサブスクリプションビジネス成功のカギ
サブスクリプションは、商品やサービスを「購入」せず「利用」するビジネスモデルです。
企業側からすれば、「利用し続けてもらう」ことで収益が上がります。
そこで、解約を未然に防ぎ、長期的・継続的に利用してもらうために、顧客が商品やサービスに対してつねに「成功」を感じるようにしむけることが必要です。
つまり、カスタマーサクセスを意識すること=顧客のニーズをつねに把握してそれにこたえ続けることが、サブスクリプションビジネスを成功に導くというわけです。
ちなみに、具体的な施策としては、以下のような例が挙げられます。
◎商品の使用方法やサービスの導入方法を、WEBサイトやコンタクトセンター(電話やメールに加え、SNS、チャットなど幅広いコミュニケーションチャネルを利用して、顧客と企業を結ぶ部署を指す。以前は電話コミュニケーションのみだったので、コールセンターと呼ばれており、現在でもコールセンターで表現されている所も多い。)でサポートする
◎ユーザーコミュニティを開設・運営して、ユーザー同士で交流したり課題解決ができる場をつくる
同時にコミュニティを通じて顧客データを収集し、ニーズの分析に活かす
◎顧客ニーズにあわせて定期的に商品・サービスの改善、追加、アップデートを行う など
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3.サブスクリプションのメリット
さて、市場の成長著しいサブスクリプションですが、従来の定額制やレンタルなどのサービス形態と比べてどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
「サブスクリプションを提供する企業視点のメリット・デメリット」に加えて「企業側が知っておくべき顧客にとってのメリット・デメリット」についても考えていきましょう。
3-1.提供企業側のメリット
まずは、サブスクリプションを提供する企業側のメリットですが、主に以下の4点が挙げられます。
◎継続的・長期的な収益が期待できる
◎顧客を獲得しやすい
◎顧客リストや利用データを収集できる
◎さまざまな商材に適用できる
それぞれくわしく解説します。
3-1-1.継続的・長期的な収益が期待できる
サブスクリプションの第一のメリットは、従来の「プロダクトビジネス(=モノを売ることがゴールになる売り切り型のビジネスモデル)」と異なり、継続的・長期的に収益を得られることです。
サブスクリプションの最大の特徴は、商品やサービスを1回のみ売り切るのではなく、一定期間にわたって利用してもらうことで定期的に「利用料」を徴収することができる点にあります。
一度契約してもらえれば、解約されない限りは「利用料✕契約者数」の売り上げが毎月入ってきます。
そのため売り切り型よりも売り上げの変動幅が小さく、収益の予測が立てやすいのも利点と言えるでしょう。
3-1-2.顧客を獲得しやすい
第二に、顧客を獲得しやすいというメリットもあります。
前述したように、サブスクリプションの市場は急成長中です。
消費者の間にも、「買うよりもサブスクを利用した方がお得」という意識が広がっています。
実際、サブスクリプションサービスは一般的に、同じ商品やサービスを購入する際の購入額よりも、はるかに安い利用料が設定されています。
購入すれば数千円、数万円のものでも、月額数百円で利用できるわけです。
また、WEB上で簡単な利用登録をすれば、即時に利用を開始できるサービスも多くあります。
そのようなケースでは、解約手続きもWEB上でいつでもすぐできるようになっています。
この「低価格」「簡単手続き」という特徴が契約に対するハードルを下げているため、消費者を気軽に契約に踏み切らせることができるのです。
中には「最初の〇か月間は利用料無料」といったトライアル期間を設けているケースも多く、顧客獲得に有効な施策となっています。
3-1-3.顧客リストや利用データを収集できる
また、サブスクリプションは顧客が長期間利用を継続するため、定期的に顧客の利用状況やニーズの変化などのデータが収集しやすいというのも利点です。
特に、WEBを通じて契約・解約の手続きや商品選択、支払手続きなどを行う場合は、データを自動的に蓄積できるため、顧客ニーズの的確な分析につながります。
顧客ニーズを正確に把握できれば、より顧客満足度の高いサービス改善が可能になり、カスタマーサクセスを実現できるようになるでしょう。
3-1-4.さまざまな商材に適用できる
最後のメリットは、サブスクリプションサービスの汎用性の高さです。
一般的には動画や音楽、ゲームなどのデジタルコンテンツの配信サービスというイメージが強いかもしれませんが、ここ数年でさまざまな分野にサブスクリプションが適用されるようになってきました。
たとえば洋服やバッグなどのファッションレンタル、飲食店の利用、クリーニングなどの生活サービスの提供など、有形無形の商材がサブスクリプションの対象となっています。
そのため、新たなサブスクリプションサービスを考案することができるだけでなく、すでに自社で持っている既存の商品やサービスにサブスクリプションを適用することも可能です。
ビジネスとして展開できる領域が幅広いというのは、新たに参入しようとする企業にとっては大きな利点と言えるでしょう。
3-2.顧客側のメリット
以上は企業側のメリットでした。一方で、顧客側のメリットもあります。
それを知っておけば、カスタマーサクセスの実現により近づくことができるはずですので、ここで解説しておきましょう。
顧客側が感じているサブスクリプションのメリットは、主に以下の3点です。
◎コストパフォーマンスがよい
◎初期費用が少なくてすむ
◎登録・解約が簡単
3-2-1.コストパフォーマンスがよい
消費者にとって、サブスクリプションの最大のメリットはコストパフォーマンスでしょう。
前述しましたが、同じ商品やサービスを購入する費用よりも、サブスクリプションの月額利用料のほうがはるかに低価格になっています。
たとえば、Amazonの音楽配信サービス「Prime Music」は、月額500円のAmazonPrime会員であれば無料で利用でき、200万曲が聴き放題です。
そのうち0.1%の2,000曲を聴くとしても、もしCDで購入しようとすれば数十万円、レンタルでも最低数万円はかかるため、いかにサブスクリプションがお得なサービスかがよくわかります。
逆に言えば、サービスを提供する企業は、コストパフォーマンスの高さをアピールすることが求められるでしょう。
3-2-2.初期費用が少なくてすむ
サブスクリプションサービスの中には、入会金や利用料前払いなど初期費用が必要なものもありますが、特に利用者が多い動画配信・音楽配信などのサービスでは、月額利用料のみで契約後すぐにフルサービスが利用できるものが一般的です。
中には、「初月利用料無料」「〇日間無料トライアル」「最初の〇点のみレンタル無料」といったトライアル期間を設けているものもあり、顧客としては初期費用が少なく始められるのもメリットです。
「毎月300円の利用料しかかからないなら、学生の自分でも負担なく始められる」「好きなマンガを全巻そろえると数万円かかってしまうけれど、読み放題サービスなら登録料無料、月額1,000円以下で読破できる」「1か月無料なら試しに登録してみても損はない」など、多額のお金が手元になくても契約・利用ができるため、10代~20代の学生にも普及しています。
初期費用が必要ないということは、自由になるお金が少ない若い世代や年金暮らしのシルバー世代まで幅広い消費者層をターゲットにできるということですので、ビジネスチャンスは大きいと言えるでしょう。
3-2-3.登録・解約が簡単
消費者にとってサブスクリプションが利用しやすいものとして普及したのは、利用登録や解約がWEBなどで簡単にできることも理由のひとつです。
多くのサービスは、ホームページに個人情報とクレジットカード情報などを入力するだけで登録が完了しますので、利用まで数分しかかかりません。
また、解約も同じホームページで24時間いつでも手続きできるケースが多いでしょう。
ただし、解約については「ホームページを見てもどこから解約できるかわからない」「解約はメールや電話でしかできず、なかなか返信がない(もしくは電話がつながらない)」といったトラブルもあるようです。
サービスを提供する企業としては、登録や契約の手続きを簡便化して新規顧客が流入しやすくするとともに、解約手続きもわかりやすく提示することで、顧客の安心感、信頼度を高める努力が必要だと言えそうです。
【サブスクリプションサービス事業者には、解約手続きに必要な情報提供の努力義務があります】 一般的には解約が簡単なサブスクリプションサービスですが、中には「契約はWEBで簡単にできたのに、解約のしかたがわかりにくい、あるいは解約手続き自体がしにくい」としてトラブルになっているものもあります。
そこで、これらのトラブルを受け、2022年3月に政府はサブスクリプションサービスの事業者に対して、解約手続きに必要な情報提供の努力義務を課した「消費者契約法」の改正案を閣議決定しました。 |
4.サブスクリプションのデメリット
ここまでは、サブスクリプションのメリットについて説明しました。
が、一方でもちろんデメリットもあります。
そこで、メリットと同じく企業側のデメリット、顧客視点からのデメリットについても考えていきましょう。
4-1.提供企業側のデメリット
まず、サブスクリプションを提供する企業側のデメリットは以下の5点です。
◆導入にはイニシャルコストがかかる
◆最初にコンテンツやリソースを揃える必要がある
◆利益が上がるまで時間がかかる
◆随時コンテンツやリソースを追加しなければならない
◆解約されやすい
それぞれ説明しましょう。
4-1-1.導入にはイニシャルコストがかかる
よく「サブスクリプションは初期費用が少なく始められる」と言われますが、それは自社に既存の商品やサービスを利用できる場合です。
もしサブスクリプションサービスを初めて導入するのであれば、やはりさまざまな面でイニシャルコストが必要です。
たとえば以下のようなコストが考えられるでしょう。
・商品やコンテンツを一定数揃える費用:次項参照
・システム構築費用:「6-3.提供システムをつくる」参照
・広告宣伝費:サービスをローンチしても、多くの消費者に認知されなければ顧客は増えません。
そのための広告宣伝費も必要になるでしょう。
・その他:新たなサービスを始めるための人件費、教育費なども発生する可能性があります。
これらを総計すると、それなりに大きな資金が必要になるはずです。
4-1-2.最初にコンテンツやリソースを揃える必要がある
サブスクリプションは、提供される商品やコンテンツの数やサービスのバリエーションが多いことがアピールポイントになります。
そのため、競合他社と肩を並べられる数を用意する必要があるでしょう。
音楽配信であれば数百万~数千万曲が一般的ですし、マンガ読み放題なら数万冊、ファッションレンタルなら数十~数百ブランドという品揃えが標準です。
これだけのラインナップを揃えるには、多額の費用も必要ですし、何十社を相手に契約交渉もしなければなりません。
「自社商品・自社コンテンツをそのまま利用できる」というケース以外は、このコストと労力は大きな負担になるでしょう。
4-1-3.利益が上がるまで時間がかかる
また、サブスクリプションはそもそも利益が出るまで時間がかかるビジネスモデルです。
というのも、サブスクリプションサービスは月額利用料が安いため、収益を上げるには多数の利用者を獲得する必要があります。サービス開始直後はもちろん利用者は少ないので、利用料収入も多くはありません。
利用者を増やすために広告宣伝を行ったり、無料トライアル期間を設けたりすれば、その分さらに収益化は遅れます。
そのため、収益化できるまでしばらくの間赤字でも運営が続けられるだけの資金力や企業体力がなければ途中で破綻してしまう恐れがあるのです。
4-1-4.随時コンテンツやリソースを追加しなければならない
サブスクリプションビジネスの成功には、カスタマーサクセスが必要不可欠だということは前述しました。
顧客がつねに「成功」を実感するためには、商品やサービスを常に追加、アップデートする必要がありますが、これにも大きな費用と工数が割かれます。
しかも、単に数を増やせばいいというわけではありません。
顧客のニーズを的確に分析、把握して、十分に満足させられるような改善策を講じる必要があります。
もし、顧客の要望に合わないコンテンツを追加したり、希望しないアップデートを行えば、逆に顧客の満足度は低下し、解約につながってしまうでしょう。
4-1-5.解約されやすい
さらに、前章の顧客メリットのひとつ「3-2-3.登録・解約が簡単」は、裏を返せば企業側にとっては「解約されやすい」というデメリットでもあります。
かといって、契約しやすく解約はしにくいシステムにすれば、トラブルにつながるでしょう。
そこで、システム上は解約をしやすくしておきながら、解約を防ぐ施策を講じなければなりません。
商品やサービスを定期的に魅力あるものに更新していく、新しいサービスやプランを追加するなど、つねにカスタマーサクセスを意識して改善し続ける必要があります。
売り切り型のプロダクトビジネスとは異なり、サブスクリプションのカスタマーサクセスにはゴールがないため、つねに解約のリスクがつきまとい、継続的な対策と投資が求められるのです。
4-2.顧客側のデメリット
以上が企業側のデメリットでしたが、顧客側のデメリットとは何でしょうか?
それは主に以下の3点です。
◆利用しなくても定期的に料金が発生する
◆解約後は手元に何も残らない
これらのデメリットについてよく知り、それを解消する施策を講じることで、サブスクリプションビジネスをより成功に近づけることができるはずですので、ひとつずつ説明していきましょう。
4-2-1.利用しなくても定期的に料金が発生する
消費者にとって、サブスクリプション最大のリスクは、利用してもしなくても一定料金が発生することだと言えます。
たとえば月額1,000円で動画見放題の配信サービスの場合、毎月映画を数本ずつ見ていれば、DVDをレンタルするよりもお得です。しかし忙しくて1~2本しか見られない月も同じく月額1,000円が引き落とされてしまいます。
さらに、顧客にとって必要ないサービスがついてくるケースもあります。
「音楽配信サービスだけを利用したいのに、動画配信サービスとのセット契約になっている」という場合などは、「動画配信サービスは必要ないので、料金を半額にしてほしい」と希望する顧客もいるでしょう。
自分がそのサブスクリプションをトータルでどの程度利用するかは、定期的に追加されるコンテンツにも左右されるため、予測できません。
このデメリットを解消するには、サービスを提供する企業側がつねに顧客ニーズに沿った魅力的なコンテンツやサービスを提供し続ける必要があるでしょう。
4-2-2.解約後は手元に何も残らない
売り切り型のプロダクトビジネスでは、売買後には顧客の手に商品が渡ります。
CDを買えばCDの実物が、洋服を買えばその服が、購入者の所有物として手元に残るのです。
が、サブスクリプションの場合は、「商品そのもの」や「商品の所有権」ではなく「利用権」のみを購入するため、利用後には原則的に手元には何も残りません。
音楽や動画をダウンロードしても、サービスを解約してしまうとその曲は聴けず、映画は見られなくなってしまうケースがほとんどです。
サブスクリプションが普及したとはいえ、「お金を払ったのに、モノが手元に残らない」ということに対して不満に感じる人もまだ一定数存在していて、その人たちにとってはこの点が大きなデメリットになっているようです。
5.現在提供されているサブスクリプションの例
ここまで、サブスクリプションビジネスの現状について多角的に解説してきました。
では、実際に現在提供されているサブスクリプションサービスにはどんなものがあるでしょうか?
この章では、その主な具体例を見ていきましょう。
5-1.コンテンツ配信
サブスクリプションの代表といえば、コンテンツ配信です。
・音楽配信
・動画配信
・マンガ、書籍、雑誌、絵本読み放題
などがあり、サブスクリプションサービスの中でももっとも利用者が多いジャンルとなっています。
サービス内容は、月額定額で配信されている音楽聞き放題、動画見放題、マンガや書籍読み放題といった「放題」が一般的です。
また、「〇日間利用無料」といったトライアル期間が設けられているサービスが多いのも特徴です。
人気のサービスは、配信されているコンテンツの数が多いのに対して利用料は月額1,000円以内に設定されているものがほとんどであるため、コストパフォーマンスが高いといえるでしょう。
5-2.ソフト・アプリ・ゲーム利用
また、ソフトウエアやアプリ、ゲームの利用にもサブスクリプションサービスがあります。
たとえば、数種類の画像・動画編集ソフトが月額定額で使い放題になるサービスや、複数のゲームメーカーのゲームが100作品以上、月額定額で遊び放題のサービスなどです。
このサービスの利点は、新バージョンがリリースされたりアップデートがあった場合でも、追加費用や再購入などなしに定額料金だけで利用できるというところにあります。
もちろん、それぞれのソフトやゲームを個別に購入するよりも、利用料金の方が安価に設定されているためコストパフォーマンスにも優れています。
5-3.飲食店・食品宅配利用
食の分野にも、サブスクリプションは導入されています。
・毎月定額を支払うと、定期的に野菜やミールキット、調理済みの料理などが宅配されるサービス
・飲食店が発行した定額のチケットを購入すると、一定期間その店のあるメニューが何回でも食べられるサービス
などはよく知られているでしょう。
このジャンルは、コロナ禍による外食自粛やおうち時間の増加を受けて、サービスの種類も利用者も増加したと言われており、今後も新たなサービスやビジネスモデルが生まれることが期待されています。
5-4.定額レンタル
レンタルの分野でも、サブスクリプションが普及してきました。
・洋服やバッグなどを、毎月定額で「〇着まで」「〇回まで」の制限内で貸し出すファッションレンタル
・月額利用料を支払うレンタカー、カーシェア
・月額定額で利用できるレンタルスペース、コワーキングスペース
などです。
これらの特徴は、「モノ」自体を貸し出して、利用後に回収してまた別の利用者に貸し出すことです。
従来は購入していたものを、少額の利用料で好きなときに好きなように利用できる上、自宅にそのモノを置いておくスペースも必要ありません。
SDGsやミニマリズムの観点からも、注目を集めているサービスだといえるでしょう。
5-5.その他
これ以外にも、近年はさまざまな分野にサブスクリプションサービスが広がっています。
・生活サービス:クリーニングなど
・語学レッスン
・コスメボックス
・花
・コンタクトレンズ
・おもちゃ
・アミューズメント施設利用
などが、それぞれ定額で利用し放題になったり、毎月宅配で自宅に届けられます。
このように、サブスクリプションは多種多様なビジネス領域に導入が可能です。
6.サブスクリプションビジネスで重視すべきKPI
サブスクリプションを立ち上げたら、次は顧客を増やし収益を上げていかなければなりません。
そのためには、重視すべきKPIがあります。
サブスクリプションビジネスで重要なKPIは何か、その主なものを挙げておきましょう。
6-1.LTV(顧客生涯価値)
まずもっとも重要なのは、「LTV(=Life Time Value、顧客生涯価値)」でしょう。
これは、ひとりの顧客と企業が取引を初めてから終了するまでの間(=Life Time)に、企業が得られるすべての利益の合計を表すKPIです。
サブスクリプションは、顧客に長期的に利用を継続してもらうことで収益が上がるビジネスモデルです。
そのため、短期的な収益をはかる指標よりも、優良顧客とできるだけ長期間の取引を続けることで収益を上げ続けることを目指すLTVが重要なのです。
LTVの計算式は以下のようにいくつかありますので、計算しやすいものを利用するといいでしょう。
この数値をできるだけ向上させることを目指してください。
【LTVの計算式】 1)LTV= ARPU(1ユーザーあたりの平均月次売上高)✕ 粗利率 ÷ レベニューチャーンレート(収益ベースでの解約率) 2)LTV=ARPU ✕ 購入回数 ✕ 取引継続期間 ✕ 収益率 3)LTV=顧客の年間取引額 ✕ 収益率 ✕ 取引継続年数 など |
6-2.NRR(売上継続率)
LTV同様に重視すべきなのは、「NRR(=Net Revenue Retention、売上継続率)」です。
これは、サブスクリプションサービスにおいて、既存顧客の売り上げを前年と比べてどの程度維持できているのかをパーセンテージで表す指標です。
この数値が100%を超えていれば、既存顧客が利用を継続しているか新規顧客が順調に獲得できていることがわかります。反対に、100%を下回っていれば、既存顧客の解約が増えている、新規顧客が獲得できていないなどの課題があるということになるでしょう。
NRRがわかれば、翌年の売上予測も可能になります。
その計算式は以下の通りです。
【NRRの計算式】 NRR=(月初のMRR + エクスパンションMRR + アップセルMRR)ー(Churn MRR + ダウンセルMRR)÷ 月初の合計MRR ※MRR:月間経常収益 |
6-3.解約率
もうひとつ注視しなければならないのが、「解約率(=Churn Rate、チャーンレート)」です。
これは、一定期間に既存顧客が契約を解約した率をパーセンテージで表した指標です。
前述したように、サブスクリプションサービスは顧客が利用を長期継続することを前提としています。
そのため、解約率をなるべく低く抑えることが必要で、一般的には10%以下がよいとされています。その計算式は以下です。
【解約率の計算式】 解約率=一定期間の解約総数 ÷ 同期間のアクティブ顧客数 ✕ 100 |
6-4.その他
上記の3つ以外にも、サブスクリプションビジネスで重要なKPIはさまざまです。
その主な例を挙げておきましょう。
・APRU(1ユーザーあたりの平均月次売上高)
・MRR(月次経常収益)
・CAC(顧客獲得費用)
・アップセル、クロスセル
・NPS など
適切なKPIを設定することで、カスタマーサクセスを実現し収益を最大化させるよう努めてください。
7.サブスクリプションビジネスで成功するポイント
ここまでで、サブスクリプションビジネスを始めるために知っておくべき基本的な知識は解説しましたが、最後にサブスクリプションビジネスを成功に導くためのポイントを解説します。
以下のことを心にとめてビジネスに臨めば、収益が上がるサービスを確立できる可能性が上がるでしょう。
7-1.既存の商品・サービスがあればそれを活かす
「4-1-1.導入にはイニシャルコストがかかる」で説明しましたが、サブスクリプションサービスを一から始めるにはある程度の初期費用が必要です。
その一方で、利益が上がるまでには時間がかかります。
そのようなリスクをおかすよりも、もし自社でサブスクリプションサービスに展開できる商品やサービスをすでに持っているのなら、まずはそれを活用するのが得策でしょう。
サービス開始にあたって商品やコンテンツのラインナップを揃えるための手間と費用が節約できますし、既存顧客をサブスクリプションの利用に誘導できれば集客の心配も軽減されます。
7-2.常にカスタマーサクセスを意識する
「2-2.サブスクリプションビジネスにおけるカスタマーサクセスの必要性」でも説明しましたが、カスタマーサクセスはサブスクリプションビジネスを成功させるために欠かせない要素です。
つねにカスタマーサクセスを意識して、顧客のニーズにこたえ続けることが求められます。
そのためには、顧客の消費行動の中でさまざまなタッチポイントを用意して、「VOC(=顧客の声)」をすくい上げることも必要です。
ホームページ上に問い合わせやご意見を募るフォームを設置したり、ユーザーコミュニティを形成したり、随時アンケートを実施するなどの方法でVOCを収集・分析し、顧客の要望を先取りするサービスを提供していきましょう。
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まとめ
いかがでしたか?
サブスクリプションについて、知りたかったことがわかったかと思います。
では最後にもう一度、記事の内容をまとめておきましょう。
◎「サブスクリプション」とは、「定期的に一定額を支払うことで、一定期間または一定の範囲の中で、商品やサービスを自由に利用できるビジネスモデル」
◎サブスクリプションの企業側のメリットは、
・継続的・長期的な収益が期待できる
・顧客を獲得しやすい
・顧客リストや利用データを収集できる
・さまざまな商材に適用できる
◎サブスクリプションの企業側のデメリットは、
・導入にはイニシャルコストがかかる
・最初にコンテンツやリソースを揃える必要がある
・利益が上がるまで時間がかかる
・随時コンテンツやリソースを追加しなければならない
・解約されやすい
◎サブスクリプションビジネスで成功するポイントは、
・既存の商品・サービスがあればそれを活かす
・常にカスタマーサクセスを意識する
以上を踏まえて、あなたの会社がサブスクリプションビジネスに成功するよう願っています。