「パーセプションフロー・モデルとはどんなもの?」
「パーセプションフロー・モデルとカスタマージャーニーマップの違いがわからない」
マーケティング担当者の中には、そのような疑問を持っている方も多いでしょう。
「パーセプションフロー・モデル」とは、「消費者の購買行動を、その “認識( パーセプション)” の変化に沿って描き、それをもとにマーケティング活動を設計するためのフレームワーク」です。
マーケティング活動の全体を可視化し、活動全体の設計図となります。
類似したフレームワークとしてカスタマージャーニーマップもありますが、両者を比較した場合のパーセプションフロー・モデルの特徴としては、以下の3点が挙げられます、
・消費者の「行動」ではなく「認識=パーセプション」を軸にしている
・消費者行動の「現在」ではなく「未来」がわかる
・「効率化」ではなく他社との「差別化」ができる
従来のように「商品をどのようにして売るか」を考えるのではなく、消費者目線に立って「どのようなきっかけで商品がほしくなり、どうなれば満足するか」をモデル化するため、消費者の自然な消費行動に沿って、より効果的なマーケティング計画を立てることが可能です。
そこでこの記事では、パーセプションフロー・モデルについての基礎知識が得られるようわかりやすく解説していきます。
◎パーセプションフロー・モデルとは?
◎カスタマージャーニーマップとの違い
◎パーセプションフロー・モデルを作成するメリット
◎パーセプションフロー・モデル作成のポイント
パーセプションについては、以下の記事で解説しています。こちらも参考にしていただければ幸いです。
参考記事:パーセプションとは
1.パーセプションフロー・モデルとは
まず、「パーセプションフロー・モデル」とは何なのかについて、わかりやすく説明します。
1-1.パーセプションフロー・モデルとは?
「パーセプションフロー・モデル」とは、長年にわたって消費財のブランドマネジメントに携わり、現在は株式会社クー・マーケティング・カンパニーの代表取締役を務める音部大輔氏によって考案されたもので、「パーセプションフロー・モデル」を端的に説明すると、「消費者の購買行動を、その “認識( パーセプション)” の変化に沿って描き、それをもとにマーケティング活動を設計するためのフレームワーク」です。
パーセプションフロー・モデルとは |
消費者の購買行動を、その “認識( パーセプション)” の変化に沿って描き |
いわゆる「マーケティングの4P」=「Product/商品戦略」「Price/価格戦略」「Place/流通戦略」「Promotion/販促戦略」を含むマーケティング活動の全体を、以下のような図の形で可視化する、いうなればマーケティング活動全体の設計図となるものです。
出典:株式会社クー・マーケティング・カンパニー「パーセプションフロー・モデル概説」
このモデルの特徴は、従来のように「商品をどのようにして売るか」を考えるのではなく、消費者目線に立って「どのようなきっかけで商品がほしくなり、どうなれば満足するか」をモデル化する点にあります。
そのため、消費者の自然な消費行動に沿って、より効果的なマーケティング計画を立てることができるのです。
1-2.カスタマージャーニーマップとの違い
パーセプションフロー・モデルは、しばしば「カスタマージャーニーマップ」と比較されます。
どちらもマーケティング活動の全体図を描く方法ですが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか?
パーセプションフロー・モデルがカスタマージャーニーマップと異なるのは、主に以下の3点です。
パーセプションフロー・モデルとカスタマージャーニーマップの違い |
・消費者の「行動」ではなく「認識=パーセプション」を軸にしている |
それぞれ詳しく説明していきましょう。
消費者の「行動」ではなく「認識=パーセプション」を軸にしている
もっとも大きな違いは、パーセプションフロー・モデルが「消費者の認識=パーセプション」の変化を追うことで、消費行動を明らかにする点です。
カスタマージャーニーマップは、以下の図のように企業と消費者とのタッチポイントごとに、「消費者がどのように行動するか」を中心に図式化します。
それに対してパーセプションフロー・モデルの中心となるのは、消費者の認識=パーセプションの変化です。
消費者の「状態」を、時間軸に沿って以下の8段階にわけ、それぞれの段階で消費者がどのような「認識=パーセプション」を持っているか、そしてその認識はどんな「知覚刺激」によって引き起こされるのかを想定します。
<パーセプションフロー・モデルにおける消費者の状態変化> 現状 → 認知 → 興味 → 購入 → 試用 → 満足 → 再購入 → 発信 |
パーセプションフロー・モデルは、マーケティング活動が「知覚刺激」となって、消費者の「認識」を変化させ、その結果、上記のように「状態や行動が変化」していく、という考え方に基づいています。
そのため、消費者の「行動」中心に考えるカスタマージャーニーマップよりさらに、マーケティング活動の全体像がとらえやすくなっているのです。
消費者行動の「現在」ではなく「未来」がわかる
カスタマージャーニーマップは、消費者が「現在」どのような消費行動をとっているかを図式化します。
それに対してパーセプションフロー・モデルは、現在の消費行動を踏まえた上で、「これから消費者にどのような認識の変化が起こり、その結果どんな消費行動をとるか」という、「未来」に起こりうる消費行動を描くという点も大きな相違です。
つまり、製品やブランドを現状より改善したい、より成長させたいという場合には、未来を描けるパーセプションフロー・モデルの方が適しているといえるでしょう。
あるいは、まず現状をカスタマージャーニーマップにした上で、それを改善するためにパーセプションフロー・モデルをつくる、という方法も有効です。
「効率化」ではなく他社との「差別化」ができる
3つめの違いは、パーセプションフロー・モデルは「競合他社との差別化」に有効であるという点です。
カスタマージャーニーマップは消費者の「行動」をもとにしているため、競合するブランドや商品のマップは似通ってしまいます。
A社の自動車に対するカスタマージャーニーマップと、B社の自動車のマップは、結局「自動車を買う人の行動」であるため、A社とB社の特性の違いが反映されにくいのです。
そのためカスタマージャーニーマップは、競合他社と差別化するのではなく、同じような質のもので価格をおさえるといった「効率化」を目指す場合に活用するとよいでしょう。
その点パーセプションフロー・モデルなら、A社とB社の図が同じになることはありません。
A社の自動車とB社の自動車では、消費者が得るベネフィットや購入目的などが異なります。
となると、消費者が持つ「認識=パーセプション」とそれを喚起する「知覚刺激」にも個々の違いが生じます。
自社のブランドや商品に沿ったマーケティング計画を描くことができるため、競合他社との差別化が可能なのです。
2.パーセプションフロー・モデルを作成するメリット
では、パーセプションフロー・モデルを作成するメリットを、より具体的に考えてみましょう。
それは主に、以下の3点が挙げられます。
パーセプションフロー・モデルを作成するメリット |
・消費者心理の変化を的確にとらえられる |
2-1.消費者心理の変化を的確にとらえられる
前述したように、パーセプションフロー・モデルは消費者の「行動」ではなく「認識」の変化を軸にして、マーケティング計画全体を設計していく方法です。
「行動がどのように変化するか」を追う方法とは異なり、「パーセプション=認識がどう変化するか」をまず想定した上で、「その変化は、どのような知覚刺激によってもたらされるか」「その結果、どのように行動するか」を考えていきます。
そのため、消費者の心理変化をより立体的に、正確にとらえることができるのです。
ちなみに最近では、カスタマージャーニーマップの中にもこのメリットを取り入れて、以前はなかった消費者の「感情変化」を記載するケースが増えてきています。
適切なマーケティング施策を考えるには、消費者心理をより精度高く理解することがポイントになるのです。
2-2.消費者目線に立った効果的なマーケティング施策を立てられる
消費者のパーセプション=認識の変化がどのような「知覚刺激」によって引き起こされるかが図式化できると、「消費者にその知覚刺激を与えるには、どのような広告やコミュニケーション手段が有効か」が浮き彫りになってきます。
つまり、消費者を理想的な購買行動に導くための、的確なマーケティング計画を立てることができるわけです。
例えば、「自分に合った製品が見つからない」と悩んでいる人が、「A社の製品はいいかもしれない」と興味を抱くようになるには、「A社の製品ならではのベネフィット」のアピールが必要だと想定したとします。
となると、とるべき施策は「そのベネフィットをアピールできる方法」と、具体的に見えてくるでしょう。
しかも、以下の消費者の状態変化8段階のそれぞれに対応した最適な施策を考えることができるため、消費者目線に沿ったよりきめ細かいマーケティングが可能になるのです。
<パーセプションフロー・モデルにおける消費者の状態変化> 現状 → 認知 → 興味 → 購入 → 試用 → 満足 → 再購入 → 発信 |
2-3.企業全体でマーケティング活動の共有・一元管理ができる
さらにパーセプションフロー・モデルは、いわゆる「マーケティングの4P」=「Product/商品戦略」「Price/価格戦略」「Place/流通戦略」「Promotion/販促戦略」を含むマーケティング活動の全体を可視化するものです。
そのため、マーケティング部門だけでなく、営業部門、商品開発部門など企業全体で共有して利用することができます。
マーケティング活動の全体像が見えると、各部門は「自分たちは、どのポイントで何をすべきか」「他部署は何のためにどんな施策を行っているのか」を把握できるようになります。
自部署の活動だけに目が向いていると、全体が目指す目的からずれてしまってもそれに気づけず、軌道修正できない恐れがあります。
それに対して、パーセプションフロー・モデルによって活動全体が見えれば、つねに「全体が目指す目的に対して、自部署がどんな施策を行うのが最適か」を考えることができるのです。
3.パーセプションフロー・モデル作成のポイント
続いてパーセプションフロー・モデルを作成する際に、注意したいポイントがいくつかあります。
3-1.プロジェクトの目的、マーケティング戦略は事前に明確に立てておく
パーセプションフロー・モデルを考えるとき、枠内の「パーセプション」や「知覚刺激」、「メディア」といった要素を重視しがちです。しかしそれらの前提として、枠外に記載したこのプロジェクトの「目的」や「戦略」が明確でなければなりません。
目的や戦略があいまいなままパーセプションフロー・モデルを作ろうとするのは、ゴールが見えないまま地図を描くようなものです。
枠内の各項目を考えていると、迷ったりなかなかひとつに決めきれなかったりすることがよくあります。
そんな際に、目的と戦略が明確に示されていれば、「そこに到達するにはどうなればいいか」が見えてくるでしょう。
パーセプションフロー・モデルを成立させるためには、まずこれら「目的」と「戦略」を明確化することから始める必要があるのです。
3-2.「興味」から「購入」に移行させるには「口実」と「便益」を重視する
パーセプションフロー・モデルにおける8段階の変化の中でも、企業が特に注目するポイントのひとつが「興味」から「購入」への移行でしょう。
消費者を実際に購入に踏み切らせる「パーセプションの変化」、「知覚刺激」とそれを与える「メディア」はどのように想定すればいいのでしょうか?
ここで重視したいのは、「購入の口実」と「購入による便益」です。
「口実」とは、消費者が「この製品を買ってもいい」と思える要因となるものです。
消費者は、「メリットがあるから」という理由だけで製品を購入するわけではありません。
「この製品なら〇〇だから買ってもいいかな」という、いわば “言い訳” が立つものであることも重要です。
例えば高価な商品であっても、「健康にいい」「長く使える」「時間の節約になる」などの口実があることによって、購入に踏み切ることができるのです。
また、「便益」とは「この製品を買うと、〇〇できる(〇〇になる)」といった具体的なメリットのイメージです。製品に興味を持っている消費者が、これを感じることができれば、「買ってみよう」という心境に変化します。
「興味」から「購入」への移行を考える際には、この2つのポイントをおさえておきましょう。
4.トランスコスモスのパーセプション診断もご活用ください
トランスコスモスのパーセプション診断は、パーセプション分析を5Aのスキームの中に取り込んだトランスコスモスオリジナルの新しい分析手法です。
パーセプション分析そのものは、マサチューセッツ工科大学のグレン・L・アーバン名誉教授が開発したPPA(パーセプション・プリファレンス・アナリシス)というものをベースとしており、5ALoyalty診断と組み合わせることによってパーセプション診断という手法を独自に生み出しました。
「「効率化」ではなく他社との「差別化」ができる」でも解説しましたが、パーセプション診断も自らのブランドと競合ブランドのそれぞれの違いを明確にする手法です。
パーセプション診断はロイヤルティの理由を定量的に明確にする診断として提供できるツールになります。
対象市場において消費者が何を重要視して選好し購入するか、また何が推奨行動において重要視されているかを明らかにします。対象者市場のニーズ構造を理解することで自社のポジショニングを描いたり、コミュニケーション設計に役立ちます。
パーセプション診断について興味がある方はこちらをご覧ください。
またトランスコスモスが提供するサービス「5ALoyalty診断」について専用サイトを設置しております。こちらのサイトでもパーセプション診断について詳しく解説しております。
まとめ
いかがでしたか?
パーセプションフロー・モデルとはどんなものか、理解できたかと思います。
ではあらためて、記事のポイントをおさえておきましょう。
◎パーセプションフロー・モデルとは
「消費者の購買行動を、その “認識( パーセプション)” の変化に沿って描き、それをもとにマーケティング活動を設計するためのフレームワーク」
◎カスタマージャーニーマップとの違いは、
・消費者の「行動」ではなく「認識=パーセプション」を軸にしている
・消費者行動の「現在」ではなく「未来」がわかる
・「効率化」ではなく他社との「差別化」ができる
◎パーセプションフロー・モデルを作成するメリットは、
・消費者心理の変化を的確にとらえられる
・消費者目線に立った効果的なマーケティング施策を立てられる
・企業全体でマーケティング活動の共有、一元管理ができる
以上を踏まえて、あなたのマーケティング活動がより効果的になるよう願っています。