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パーセプションフロー・モデルとは?活用メリットや作成のポイント

この記事で学べること

パーセプションフロー・モデルとは、消費者の行動における認知・認識の変化を可視化し、マーケティング活動を設計するためのフレームワークです。

  • パーセプションフロー・モデルとカスタマージャーニーマップの違い:消費者行動の認識・認知に焦点を当てたパーセプションフロー・モデルは、未来の状況を見越した分析を行う一方、カスタマージャーニーマップは現在の消費者行動に基づいている。
  • パーセプションフロー・モデルを活用するメリット:消費者心理を深く理解し、効果的なマーケティング施策の立案が可能になる。また、企業全体でのマーケティング活動の共有と一元管理が実現する。
  • パーセプションフロー・モデルを作成する手順:プロジェクトの目的とマーケティング戦略を明確にし、消費者の興味を引きつける要素を考慮することが重要。
  • パーセプションフロー・モデルを作成するポイント:「口実」と「便益」を重視し、消費者の興味を購入行動へとつなげる施策を設計することが、成功のカギ。

「パーセプションフロー・モデルとはどのようなフレームワークなのか?」
「パーセプションフロー・モデルとカスタマージャーニーマップの違いは?」

マーケティング設計に役立つフレームワークとして注目されている「パーセプションフロー・モデル」。このモデルを耳にしたことがある方も多いかもしれませんが、具体的な内容や得られる知見については不明な点もあるでしょう。

そこでこの記事では、パーセプションフロー・モデルの概要、活用メリット、作成手順を解説します。最後まで読めば、パーセプションフロー・モデルの使い方が理解でき、実際のマーケティング戦略に活用できるようになります。ぜひ参考にしてください。

1.パーセプションフロー・モデルとは

パーセプションフロー・モデル(Perception Flow Model)は、消費者の行動における認知・認識の変化を可視化し、今後のマーケティング活動を設計するためのフレームワークです。

このモデルは、株式会社クー・マーケティング・カンパニーの代表である音部大輔氏が提唱しました。従来の手法では可視化されてこなかった「認知・認識」を軸に、マーケティング施策を設計できるようになっています。

パーセプションフロー・モデルは以下のような構成になっており、横軸にパーセプションフロー・モデルの構成要素、縦軸に顧客の行動を示しています。

パーセプションフロー・モデルのイメージ例

出典:株式会社クー・マーケティング・カンパニー「パーセプションフロー・モデル概説」

パーセプションフロー・モデルの要素

横軸
パーセプションフロー・モデル
の構成要素

・行動・態度:顧客の行動の結果や目的
・パーセプション(認識・認知):外部刺激に対する顧客の反応
・知覚刺激:新しい認識を与える情報や体験
・KPI:将来に向けた目標
・メディア・媒体:適したメディアや媒体

縦軸
顧客の状況

・現状
・認知
・興味
・購入
・使用
・満足
・再購入
・口コミ

例えば、顧客が競合のスマートフォンを選び使用している現状を考えてみましょう。

●パーセプションフロー・モデルの記入例

顧客行動

行動・態度

パーセプション

知覚刺激

KPI

メディア

現状

競合を選び使用中

競合が凄く気に入っているわけではなく、他の機会がない

顧客に気付いてもらえる機会を設ける

顧客の認知率

SNS、オウンドメディア

この例では、顧客の認識は「競合が凄く気に入っているわけではなく、他の機会がない」というものです。この現状を変えるためには、どのような知覚刺激を与えれば良いかを考えます。

顧客への機会不足が課題であれば、顧客に新しい刺激を与える施策が検討できます。
「知覚刺激」で決定した施策に対するKPIとしては、顧客の認知率を設定し、認知を向上させるためのメディアとしてSNSやオウンドメディアを選定します。

このように、顧客の認識・知覚を軸に将来の施策を検討することで、パーセプションフロー・モデルの横軸が埋まります。顧客行動に基づくパーセプション(認識・知覚)を理解することで、将来の顧客行動の変化を可視化することがこのモデルの特徴です。

パーセプションフロー・モデルの特徴

パーセプションフロー・モデルを活用することで、今後のマーケティング施策の設計図が完成し、一貫性を持ってマーケティング活動に取り組むことが可能になります。

2.パーセプションフロー・モデルとカスタマージャーニーマップの違い

パーセプションフロー・モデルを理解する際に、よく比較されるのがカスタマージャーニーマップです。

カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを認知してから検討、購入・利用し、他者に勧めるまでの一連の流れを時系列に沿って可視化したものです。
パーセプションフロー・モデルと同様に、マーケティング施策の改善や検討に活用されています。

ここでは、パーセプションフロー・モデルとカスタマージャーニーマップの主な違いを紹介します。両者の違いを知ることでパーセプションフロー・モデルの特徴がより明確になります。

比較項目

パーセプションフロー・モデル

カスタマージャーニーマップ

分析の軸

消費者行動ごとの認識・認知
(パーセプション)

消費者行動

消費者の状況

未来の状況に焦点をあてている

現在の状況に焦点をあてている

他社との差別化

差別化できるポイントが見えてくる

消費者行動が軸なので差別化しにくい

▼カスタマージャーニーについては、以下の記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。

2-1.パーセプションフロー・モデルは消費者の認識・認知を軸にしている

パーセプションフロー・モデル

消費者の状態を時間軸に沿って8段階に分け、各段階での消費者の認識・認知(パーセプション)を軸にしている

カスタマージャーニーマップ

企業と消費者とのタッチポイントごとの消費者行動を軸にしている

1つ目は、パーセプションフロー・モデルが消費者の認識・認知を軸にしている点です。
カスタマージャーニーマップは、企業と消費者とのタッチポイントごとに「消費者がどのように行動するか」を中心に図式化します。

対して、パーセプションフロー・モデルでは、中心となるのは消費者の認識・認知=パーセプションの変化です。消費者が持つ認識や認知を把握し、それを基にした戦略的なマーケティング活動が「知覚刺激」となり、消費者の「認識」を変化させると考えられています。

このプロセスは以下のようになります。

1.認識・認識を把握
2.マーケティング施策を立案・実行(知覚刺激)
3.消費者の認識を変化させる

そのため、消費者の「行動」中心に考えるカスタマージャーニーマップよりも、マーケティング活動の全体像が捉えやすくなります。

2-2.パーセプションフロー・モデルは、消費者の行動の未来に焦点をあてている

パーセプションフロー・モデル

現在の消費行動を踏まえ、未来に起こりうる消費行動を描く点に焦点をあてている

カスタマージャーニーマップ

消費者が現在どのような消費行動をとっているかに焦点をあてている

2つ目は、パーセプションフロー・モデルが消費者の行動の未来に焦点をあてていることです。

カスタマージャーニーマップは、消費者が現段階でどのような行動をとっているかを図式化します。一方で、パーセプションフロー・モデルは、現在の消費行動を基に、今後消費者にどのような認識の変化が起こるかを予測します。

この予測により、将来の消費行動を検討することができるのが、パーセプションフロー・モデルの特徴です。商品やブランドを改善したい、または成長させたい場合には、未来を描けるパーセプションフロー・モデルが適しているといえるでしょう。

また、現状の消費者行動をカスタマージャーニーマップで把握した後、改善のためにパーセプションフロー・モデルを作成する方法も有効です。

2-3.パーセプションフロー・モデルは他社との差別化に役立つ

パーセプションフロー・モデル

消費者の認識・認知を可視化できるため、差別化のポイントが明確になる

カスタマージャーニーマップ

消費者の行動を基にしているため、競合するブランドや商品のマップは似通ってしまい、差別化が難しい

3つ目は、パーセプションフロー・モデルが、他社との差別化に役立つ点です。

カスタマージャーニーマップは消費者の行動に焦点を当てているため、競合ブランドのマップが似通ってしまいます。例えば、A社とB社の自動車に対するカスタマージャーニーマップは、どちらも自動車購入者の行動を示すため、A社とB社の特性の違いが反映されにくいのです。

一方、パーセプションフロー・モデルでは、A社とB社の図は異なります。
A社の自動車とB社の自動車では、消費者のベネフィットや購入目的などが異なるため、認識・認知やそれを喚起する知覚刺激にも個別の違いが生まれます。

このように、自社のブランドや商品に沿ったマーケティング計画を描くことができるため、競合他社との差別化が可能となります。

3.パーセプションフロー・モデルを活用するメリット

続いてパーセプションフロー・モデルを作成するメリットを、具体的に考えてみましょう。
主に、以下の3点が挙げられます。

パーセプションフロー・モデルを活用するメリット

・消費者心理の変化を的確に理解できる
・消費者目線に立った効果的なマーケティング施策を立てられる
・企業全体でマーケティング活動の共有、一元管理ができる

3-1.消費者心理の変化を的確に理解できる

1つ目のメリットは消費者心理の変化を的確に理解できる点です。
パーセプションフロー・モデルは消費者の行動ではなく、認識・認知の変化を軸にして、マーケティング計画全体を設計する手法です。

このモデルは、行動がどのように変化するかを追う方法とは異なり、認識・認知(パーセプション)がどのように変化するかを想定した上で、その変化がどのような知覚刺激によってもたらされるかを考えます

最終的に、消費者がどのように行動するかを導き出します。

そのため、パーセプションフロー・モデルは消費者の心理変化をより立体的かつ正確に捉えることが可能です。最近では、カスタマージャーニーマップでもこのアプローチが取り入れられ、消費者の感情変化を記載するケースが増えています。

適切なマーケティング施策を考えるには、消費者心理をより高精度で理解することが重要です。

3-2.消費者目線に立った効果的なマーケティング施策を立てられる

2つ目のメリットは、消費者目線に立った効果的なマーケティング施策を立てられる点です。

消費者の認識・認知(パーセプション)の変化がどのような知覚刺激により引き起こされるかを図式化することで、消費者にその知覚刺激を与えるための有効な広告やコミュニケーション手段が明確になります。

これにより、消費者を理想的な購買行動へ導くための的確なマーケティング計画を立てることが可能です。

例えば、「自分に合った製品が見つからない」と悩む消費者が、「A社の製品は良いかもしれない」と興味を持つようになるには、「A社の製品ならではのベネフィット」をアピールする必要があります。

このように、具体的な施策が「そのベネフィットを効果的にアピールする方法」として浮き彫りになってきます。

さらに、以下の消費者の状態変化の8段階それぞれに対応した最適な施策を考慮できるため、消費者目線でのきめ細かいマーケティングが実現します。

<パーセプションフロー・モデルにおける消費者の状態変化>
現状 → 認知 → 興味 → 購入 → 試用 → 満足 → 再購入 → 発信

3-3.企業全体でマーケティング活動の共有・一元管理ができる

3つ目のメリットは、企業全体でマーケティング活動の共有・一元管理ができる点です。

パーセプションフロー・モデルは、マーケティングの4P(Product(商品戦略)・Price(価格戦略)・Place(流通戦略)・Promotion(販促戦略)を含むマーケティング活動の全体を可視化します。

このため、マーケティング部門だけでなく、営業部門や商品開発部門など企業全体で共有して活用することが可能です。

マーケティング活動の全体像が見えると、各部門は「自分たちは、どのポイントで何をすべきか」「他部署は何のためにどんな施策を行っているのか」を把握できます。

自部署の活動にのみ目が向いていると、全体が目指す目的からずれてしまっても気づけず、軌道修正できない恐れがあります。

一方、パーセプションフロー・モデルによって活動全体が把握できれば、全体の目的に対して、自部署がどのような施策を行うのが最適かを考えることができます。これにより、組織全体が連携し、効果的なマーケティング活動を実現することが可能となります。

4.パーセプションフロー・モデルを作成する手順

パーセプションフロー・モデルを作成する手順

次にパーセプションフロー・モデルを作成する手順を解説します。パーセプションフロー・モデルを作成する際は、以下のような手順に沿って進めます。

ステップ

概要

ステップ1:
縦軸と横軸に要素を入れる

横軸にパーセプションフロー・モデルの要素、縦軸に時系列に沿った顧客行動を配置する

ステップ2:
ターゲットを決める

分析対象となるターゲットを明確にする

ステップ3:
フレームの中を埋める

ターゲットの現状を踏まえ、フレームの中を埋める

まず、横軸と縦軸に「パーセプションフロー・モデル」の要素を配置します。その後、分析するターゲットを明確にします。

次に、ターゲットの現状や顧客行動を考慮して、フレームの中を埋めていきます。
全て埋めるとターゲットの現在の段階の認識・認知を変えるために、顧客行動の各段階で何するべきかが明確になるでしょう。

例えば、現状競合商品を仕様していて、他の商品を知る機会がない場合は、まず顧客に自社を知ってもらう機会を作ることを検討します(知覚刺激)。

この目標を達成するために、KPIとメディアを決定することで決めることで、より具体的な行動につなげることができます。

●パーセプションフロー・モデルの記入例

顧客行動

行動・態度

パーセプション

知覚刺激

KPI

メディア

現状

競合を選び使用中

競合が凄く気に入っているわけではなく、他の機会がない

顧客に気付いてもらえる機会を設ける

顧客の認知率

SNS、オウンドメディア

このように、パーセプションフロー・モデルはターゲットを決めた上で、今後どのようにマーケティング施策を進めれば良いのかを明確にする際に役立ちます。

5.パーセプションフロー・モデルを作成するポイント

最後に、パーセプションフロー・モデルを作成する際のポイントをご紹介します。以下のポイントを意識して、パーセプションフロー・モデルの作成に役立ててください。

パーセプションフロー・モデルを作成するポイント

・事前にプロジェクトの目的とマーケティング戦略を明確にする
・興味から購入に移行させるには「口実」と「便益」を重視する

5-1.事前にプロジェクトの目的とマーケティング戦略を明確にする

1つ目のポイントは、事前にプロジェクトの目的とマーケティング戦略を明確にすることです。

パーセプションフロー・モデルを考える際に、「パーセプション」や「知覚刺激」、「メディア」などの横軸の要素に重視が置かれがちですが、まず前提として、プロジェクトの目的や戦略が明確である必要があります。

目的や戦略が曖昧なままパーセプションフロー・モデルを作成しようとすることは、ゴールが見えないまま地図を描くようなものです。枠内の各項目について考えていると、迷ったり、なかなか一つに決めきれなかったりすることがよくあります。

このような際に、目的と戦略が明確であれば、「そこに到達するにはどうすればいいか」が見えてきます。したがって、パーセプションフロー・モデルを成立させるためには、まず目的と戦略を明確化することから始めます。

5-2.興味から購入に移行させるには「口実」と「便益」を重視する

2つ目のポイントは、興味から購入に移行させるには「口実」と「便益」を重視することです。

パーセプションフロー・モデルにおける8段階の変化の中でも、企業が特に注目すべきポイントのひとつが興味から購入への移行です。消費者を実際に購入に踏み切らせるための認識の変化、知覚刺激、そしてそれを与えるメディアはどのように想定すればよいのでしょうか?

ここで重視したいのは、購入の口実と購入による便益です。

口実とは、消費者が「この商品、サービスを購入してもいい」と思える要因のことです。
消費者は、単にメリットがあるからという理由だけでは商品やサービスを購入しません。「この商品なら〇〇だから買ってもいいかな」という、明確な理由が重要です。

例えば、高価な商品であっても、「健康にいい」「長く使える」「時間の節約になる」といった口実があれば、消費者は購入に踏み切ることができます。

一方、便益とは、この商品を購入することで得られる具体的なメリットのイメージです。
商品やサービスに興味を持つ消費者がこの便益を感じることができれば、購入に対して前向きになるでしょう。

興味から購入への移行を考える際には、この2つのポイントをしっかりと押さえておくことが重要です。

まとめ

この記事では、パーセプションフロー・モデルの概要や活用メリットなどの基礎知識を解説しました。最後に、この記事の内容を簡単に振り返りましょう

〇パーセプションフロー・モデルとは
消費者の行動ごとの認知・認識の変化を可視化し、今後のマーケティング活動を設計するフレームワークのこと

〇パーセプションフロー・モデルとカスタマージャーニーマップの違い

比較項目

パーセプションフロー・モデル

カスタマージャーニーマップ

分析の軸

消費者行動ごとの認識・認知(パーセプション)

消費者行動

消費者の状況

未来の状況に焦点をあてている

現在の状況に焦点をあてている

他社との差別化

差別化できるポイントが見えてくる

消費者行動が軸なので差別化しにくい

〇パーセプションフロー・モデルを活用するメリット

・消費者心理の変化を的確に理解できる
・消費者目線に立った効果的なマーケティング施策を立てられる
・企業全体でマーケティング活動の共有、一元管理ができる

〇パーセプションフロー・モデルを作成するときのポイント

・事前にプロジェクトの目的とマーケティング戦略を明確にする
・興味から購入に移行させるには「口実」と「便益」を重視する

以上を踏まえて、あなたのマーケティング活動がより効果的になるよう願っています。

トランスコスモスは3,000社を超えるお客様企業のオペレーションを支援してきた実績と、顧客コミュニケーションの
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