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メタバース市場は2030年に79兆円規模!期待できるビジネスは?

メタバース市場は2030年に79兆円規模!期待できるビジネスは?

「メタバースが話題だけれど、市場規模はどれくらいあるの?」
「わが社もメタバース市場に興味があるが、どんな事業でなら参入できる?」

そのような疑問や希望を持っている企業も多いのではないでしょうか。

メタバースの世界市場は、総務省の「情報通信白書令和4年版」によれば2021年に4兆2,640億円だったものが2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想されています。

中でも、ビジネスにおいてメタバースの活用が期待される分野としては、以下のようなものが挙げられます。

・EC
・広告、PRイベント
・エンターテインメント
・観光
・医療
・教育
・不動産
・マッチングサービス
・バーチャルオフィス  など

ただ現状では課題も多く、以下の点については早急な対応、改善が求められている状況でもあります。

<技術的な課題>
・デバイス性能・ユーザビリティの向上
・仕様の標準化

<経済的な課題>
・VRヘッドマウントディスプレイの低価格化
・マネタイズ

<社会的な課題>
・人材の確保
・コンテンツの普及

<政治的な課題>
・仮想空間ビジネスに関する法整備

そこでこの記事では、メタバース市場の現状と今後の動向について、詳しく解説していきます。

◎メタバース市場の現状と動向
◎メタバースが成長を見込まれる理由
◎メタバース市場への取り組み
◎今後メタバース市場で多くの企業の参入が期待されるビジネス分野・領域
◎メタバース市場拡大に向けた今後の課題

の記事があなたの会社のメタバ市場参入役立つことをっています。

1.メタバース市場の現状と動向

メタバース市場の現状と動向

2021年にFacebook社が社名を「メタ(Meta)」に変更するなど、近年なにかと注目を集めている「メタバース」ですが、「ビジネスとしては活用できるのか?」と気になっている企業も多いのではないでしょうか。

そこでまず、メタバース市場がどのような状況にあるか、客観的なデータから見てみましょう。

1-1.メタバースの市場規模

総務省情報通信白書令和4年版」の「世界のメタバ市場規模売上高)の推移及予測」によると、技術進展とサビス開発によって、メタバスの世界市場202142,640億円だったものが2030には788,705億円まで拡大すると予想されメディアやエンタテインメントだけではなく、教育小売りなど様々領域での活用期待されています。

メタバースの市場規模出典:総務省「情報通信白書令和4年版

このレポートからわかるのは、現在のメタバース市場はまだ黎明期であって、数年以内にその市場規模は急拡大するであろう、ということです。

つまり、これから参入を考えている企業にとっては、将来性が高い市場と言えるでしょう。

1-2.メタバース市場の今後の動向

このように、今後数年間で急拡大が期待されているメタバース市場ですが、具体的にはどのように成長していくのでしょうか。

その動向は、以下のように予想されています。

・現在のメタバ市場は「初期市場」の段階で、「キャズム(=製品やサビスが普及するに、えなければならない『』)」をえれば「メインストリム」になる
・VRデバイスの普及、キラコンテンツの登場というブレイクスル必要。もしそれがない場合は、ライフスタイルに訴求するサビスから一般消費者普及市場拡大していく
・日本国内でのメタバ市場は、「産業・ビジネス分野」と「ゲムなどのエンタテイメント分野」がそれぞれ発展していく

詳しく説明していきましょう。

デバイス、コンテンツともにブレイクスルーがあれば一般に普及する

経済産業省は、2021年に「仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する調査分析事業」を実施しましたが、その報告書の中で、メタバース市場の現状と今後について以下のように分析しています。

仮想空間市場の現状と拡大の方向性出典:経済産業省「【報告書】 令和2年度コンテンツ海外展開促進事業(仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する 調査分析事業)(KPMGコンサルティング株式会社作成)

つまり、現在のメタバース市場は上図でいえば「初期市場」の段階で、展開されているビジネスや活用方法はまだ限定的です。

これが一般に広く普及するためには、「キャズム(=製品やサービスが広く普及する際に、越えなければならない『溝』)」を乗り越えなければなりません

この「キャズム」を乗り越えるにあたっては、技術の向上、コンテンツの充実、法整備などさまざまな課題が想定されていますが、いずれそれらが解決され、メタバースが上図における「メインストリーム」になることが期待されているわけです。詳しくは、「5.メタバース市場拡大に向けた今後の課題」解説します。

同報告書では、メタバース市場拡大の展望として、以下のように述べています。

現時点ではVRデバイスの普及、キラーコンテツ(原文ママ)の登場ともに解決するための課題が多く、デバイスおよびコンテンツ共にブレイクスルーが必要である。ブレイクスルーが発生しない場合は、AR/MRのスマートグラスなどのライフスタイルに訴求するサービスから一般消費者に普及していき、徐々にVRが浸透していき、市場が拡大していくと思われる

出典:経済産業省「【報告書】 令和2年度コンテンツ海外展開促進事業(仮想空間の今後の可能性と諸課題に関する 調査分析事業)(KPMGコンサルティング株式会社作成)

国内市場ではビジネス分野とエンターテインメント分野がそれぞれ発展

さらに具体的にいえば、日本国内でのメタバース市場に関しては、「産業・ビジネス分野」と「ゲームなどのエンターテイメント分野」がそれぞれ発展していくと予想されています。

まず、コロナ禍の影響で在宅ワークが普及したことを受け、バーチャルオフィスサービスやバーチャル展示会などを導入する企業が増えました。

また、小売業におけるバーチャルショップや観光業でのバーチャルツアーなど、各種産業でもメタバース展開が始まっています。一方、その流れとは別に、エンターテインメント業界でもメタバースは独自に普及してきました。また、イベントやコンサートなどをメタバース内でバーチャル開催する例も見られます。

そして、これらが一般に浸透していく中で各メタバースにさまざまな機能やサービスが加わっていき、バーチャル空間の中で現実同様にさまざまな経済活動が行えるようになると予想されているのです。

さらに具体的にどのような分野での活用が期待されているかについては、4.今後メタバース市場で多くの企業参入が期待されるビジネス分野・領域で説明します。

2.メタバースが成長を見込まれる理由

メタバースが成長を見込まれる理由

このように、メタバースは日本国内でも世界レベルでも、今後の大きな成長が見込まれていますが、ではその根拠は何でしょうか?

それは主に、以下の3つの理由によります。

・VR技術の進化
・NFTなど周辺技術の進化
・コロナ禍によるオンラインコミュニケーション需要

それぞれ説明していきましょう。

2-1.VR技術の進化

第一の要因は、VR技術の進化です。

「VR」とは「Virtual Reality」の略で、日本語では仮想現実などと呼ばれます。

コンピュータによって作られた仮想の空間=メタバースの中で、あたかも現実のような擬似体験をすることが可能になる仕組みを指します。

つまり、ユーザーがメタバースを利用するために、欠かせないのがVR技術というわけです。

メタバースは、スマートフォンやパソコンモニターで表示、参加することもできますが、VRゴーグルやヘッドマウントディスプレイなどを装着することで、より没入感を得ることができます。

さらに、両手にコントローラーを持ったり、グローブ型のコントローラーを装着したりすることで、メタバース内で手指の動きを自由に再現できるようにもなりました。

たとえばMeta(元 Facebook)によるVRヘッドセットのハイエンド機種Meta Quest Proは、装着した人の目の動きや表情をセンサーで感知し、アバターに実際の顔の表情を反映できる機能などを備えています。これにより、メタバでアバタがより自然行動、コミュニケションできるようになるわけです。

このようなVR技術の進化によって、メタバース内でできることの可能性がどんどん広がっています。

加えてインターネット回線の高速化などもあり、ユーザーがメタバースによりアクセスしやすくなってきたことも、メタバース市場の成長を後押しすることでしょう。

2-2.NFTなど周辺技術の進化

次に挙げられるのが、NFTをはじめとするメタバース周辺技術の進化です。

NFT(=Non Fungible Token/非代替性トークン)とは、「 『偽造・改ざん不能のデジタルデータ』であり、ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一性を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能をもつ」ものです。
(かぎカッコ内は、経済産業省「デジタル時代の規制・制度のあり方について」第4回 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 事務局説明資料(2022年2月)より引用)

例えるなら、「本物である証明書付きのデジタルデータ」とも言えます。

このNFTが実用化されたことは、メタバースにとって非常に重要です。

というのも、NFTによって、メタバース内で流通する通貨が、複製ではない本物であると保証されることになったからです。

メタバースを、ゲームなどエンターテインメントを楽しむ場としてだけでなく、さまざまなビジネスで活用するには、現実世界に準じる経済活動が成り立たなければなりません。

そのために欠かせないのが仮想通貨ですが、NFTの技術によりそれが「本物」と保証できるようになったことで、メタバース内に信頼性の高い「経済圏」が形成できるようになったのです。

それだけでなく、NFTによってメタバース内でアバターが身につけるファッションアイテム、メタバース内のスペースや建物といった不動産、メタバースゲームで使うアイテムなどにも唯一性という価値が生まれます。

そのため多くの企業が、メタバースを舞台にしたさまざまなビジネス創出を目指して、参入を検討しているというわけです。

2-3.コロナ禍によるオンラインコミュニケーション需要

3つめの理由としては、コロナ禍の影響も大きいでしょう。

人と人とが直接対面することが難しい期間が長引いたため、ビジネスでもプライベートでもバーチャルなコミュニケーションが求められるようになりました。

その結果、ビジネスシーンでは、バーチャルオフィス、バーチャル展示会などを導入する企業が増えています。

Eコマースでも、従来のネットショッピングの枠を超えて、メタバース内で自分のアバターが服を試着して購入できるなど、新たな購買体験が生まれました。

また、コロナ禍で大きな打撃を受けたアミューズメント分野では、イベントやコンサート、バーチャルツアーなどがメタバース内で開催されるようになりました。

このように、メタバースでは今までにないコミュニケーションの形や体験を実現できることが、コロナ禍を経てわかってきたため、新たなビジネスチャンスを期待するさまざまな業界から注目が集まっているのです。

3.メタバース市場で進行中の取り組み事例

メタバース市場で進行中の取り組み事例

各業界・企業から期待が高まっているメタバース市場ですが、では実際にはどのような取り組みがなされているでしょうか?

日本と海外それぞれに、具体的な取り組み事例を見てみましょう。

3-1.日本の取り組み

日本では、官民それぞれがメタバースの活用に向けて多角的に取り組んでいます。

政府では、メタバースを推進するにあたって必要な環境整備や法整備などを目指して、例えば以下のような計画や事業の推進に乗り出しました。

取り組み

担当省庁

概要

知的財産推進計画2022

内閣府
知的財産
戦略推進
事務局

この計画の中で、「デジタル時代のコンテンツ戦略」として、以下の施策を提唱

◎デジタル時代に対応した著作権制度・関連政策の改革
◎メタバース上のコンテンツ等をめぐる法的課題の把握と論点整理、官民一体となったルール整備
◎NFTの活用に係るコンテンツホルダーの権利保護、利用者保護
◎国内向け作品づくりから「世界で売れる」作品づくりへ

・ 制作システムの抜本的転換と国際販売力の強化
・ クリエーター等主導への転換を踏まえた人材育成 など

Web3.0時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る調査事業

経済産業省

主にクリエイターの観点から、Web3.0やメタバース空間における以下の論点整理を行う

①法的論点の調査・整理
②海外事例の調査
③研究会による議論 など

Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会

総務省

メタバース等の仮想空間の利活用に関して、利用者利便の向上、その適切かつ円滑な提供及びイノベーションの創出に向け、有識者による研究会を開催

<研究事項>
(1)メタバース等の利活用における利用者利便の向上に関連する事項
(2)メタバース等のユースケース毎の利活用における課題整理に関連する事項
(3)メタバース等の利活用拡大が、デジタルインフラ、社会経済活動、利用者等へ与える影響
(4)(1)から(3)に掲げる事項のほか、新たな時代のメタバース等の利活用に関連する事項

一方民間では、多くの企業がメタバース市場に参入しています。

以下は一部の事例です。

企業名

取り組み

概要

KDDI

バーチャル渋谷 など

都市連動型メタバース「バーチャル渋谷」や、野球観戦ができる「バーチャルハマスタ」などさまざまな試みを行う

日産自動車

NISSAN HYPE LAB など

メタバース内のショールームで車を選んだり、バーチャルスタッフのサポートを受けたり、車のカスタマイズをシミュレーションしたりできる

大和ハウス工業

LiveStyle PARTNER

「メタバース住宅展示場」で、さまざまな住宅を内覧、担当者からリモートで説明を受けたり、外装や内装をシミュレーションしたりできる

このほかにもさまざまな業種、ビジネスでメタバースの活用が始まっています。

それについては、次章4.今後メタバース市場で多くの企業参入が期待されるビジネス分野・領域でさらに詳しく説明します。

3-2.世界の取り組み

一方、世界各国でもメタバースへの取り組みは進んでいます。

総務省による「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会(第7回)」の資料メタバース等の利活用に係る海外動向等(諸外国・国際機関・標準化団体の動向)(三菱総合研究所作成)には、以下のような事例が挙げられています。

web3に向けたメタバースの動向

web3に向けたメタバースの動向出典:総務省「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会(第7回)」資料
メタバース等の利活用に係る海外動向等(諸外国・国際機関・標準化団体の動向)

これらを見ると、今後急成長が見込まれるメタバース市場において、自国がイニシアティブを取りたい、自国ならではの価値を創出したいと考える国がある一方で、課題やリスクについても整理して、あらかじめ対応しておきたいという意図もあることが伺えます。

日本もまた、これらの国々に遅れを取らないよう、戦略的な取り組みと早急な法整備、環境整備が求められるでしょう。

4.今後メタバース市場で多くの企業参入が期待されるビジネス分野・領域

今後メタバース市場で多くの企業参入が期待されるビジネス分野・領域

ここまで、メタバース市場をめぐる国内外の事情を考察してきました。

それを踏まえて、「そんなに有望な市場なら、わが社も参入を検討したい」と考える企業もあるでしょう。

その場合、どのようなビジネスが考えられるでしょうか?

今後メタバース市場において、さまざまな企業からの参入が期待されているビジネス分野、ビジネス領域としては、以下のようなものが挙げられます。

・EC
・広告、PRイベント
・エンターテインメント
・観光
・教育
・不動産
・マッチングサービス
・医療
・バーチャルオフィス  など

それぞれ説明していきましょう。

4-1.EC

まず、販売できる商品を持っている企業であれば、取り組みやすいのは「メタバースEC」でしょう。

これは、顧客がメタバース内にあるバーチャル店舗を訪れて、商品の3Dモデルを見たり、自分のアバターに試着させたりできるサービスです。

従来のネットショッピングがもっている「世界中どこからでも買える」「24時間いつでも買える」というメリットはそのままに、より現実世界での買い物に近い体験ができるのが魅力だと言えます。

メタバースECを出店するには、以下の3つの方法があります。

1)メタバースプラットフォームに出店する
→「cluster」「HIKKY」などのプラットフォームで、店舗出店サービスを利用する

2)メタバース内のイベントに出店する
→「バーチャルマーケット」(プレスリリース)などメタバース内でのイベントで、企業ブースを利用する

3)自社独自のメタバースを構築、出店する 
→自社のショップ専用のメタバース空間を構築する

もっとも手軽なのは2)メタバのイベントに出店する方法ですが、恒常的に出店したい場合は、1)メタバスプラットフォムに出店するの方法を選ぶのが一般的なようです。

また、取り扱う商品も、以下の2パターンが考えられます。

・現実っている製品販売する
チャル店舗には製品3Dモデルなどを展示購入されたら実製品送付する

・NFTアイテムを販売する
メタバでアバタにつけるファッションや、ゲムのアイテム、メタバのスペ建物など、現実世界には存在しないデジタルデタを商品化する

前者は、従来のECサイトの機能をメタバース内で展開するようなイメージですが、後者はメタバースならではのビジネス形態です。

4-2.広告、PRイベント

メタバースを、広告やイベントに利用するケースもあります。

広告の場合、以下のような広告方法が考えられるでしょう。

・メタバース内のスペースに大型ビジョンや看板、ポスタなど広告を表示する
・メタバース内に自社の店舗を開設して商品やサービスをPRする
・メタバース内のインフルエンサーとなる存在にPRしてもらう

すでに広告代理店などが、メタバース広告を手がけ始めていて、今後メタバース市場が広がるにつれて広告効果も増大することが期待されます。

また、PRイベントをメタバース内で開催するケースもあります。

これまで対面で行ってきた新製品発表会、展示会などを、バーチャル空間で開催するわけです。

この方法なら、海外など遠方の顧客もいながらにして、24時間いつでも参加できますし、開催企業側としては、イベント会場の設備費や人件費などが削減できるメリットもあります。

実際に、日産自動車が銀座のショールーム「NISSAN CROSSING」を「VR Chat」内に再現し、新車の発表会やバーチャル試乗会などのイベントを開催するなど、新しい試みで注目を集める企業も出てきました。

このようなメタバース広告・メタバースイベントに企業が参入する際には、自社のマーケティング施策の一環として利用することもできますし、広告事業自体を手がけることも考えられるでしょう。

4-3.エンターテインメント

前項でPRイベントに触れましたが、エンターテインメントとしてのイベントにも、大きな期待が寄せられています。

実際に、コロナ禍でコンサートやライブフェス、お祭りなどの中止が相次いだ際には、そのかわりにバーチャル空間で開催されたものも多く、大勢の参加者を集めました。

メタバース内でエンタメイベントを開催することには、以下のようなメリットがあります。

・観客数大幅やせる
リアルなイベントでは、会場収容人数りがありますが、メタバでは同時接続できる10万人でも100万人でも参加できます

・どこからでも参加できる
インタネットに接続できれば、世界中どこからでも参加できます

・現実世界ではできない演出可能
CGやAR技術などを活用して、現実のライブでは不可能演出をしたり、ライブにチャットでメッセジをったりと、ライブイベントのたなしみ創出できます

これまで、国内外でビッグアーティストがメタバースライブを行うなど、数々の音楽フェスが開催されてきました。
また、バ
チャル渋谷でのハロウィンなど、おなイベントも人気めつつあり、今後もエンタテインメント分野での活用がっていくでしょう。

4-4.観光

コロナ禍で大きな打撃を受けた観光業も、メタバース市場に新たな可能性を見出しています。

メタバース内に観光地を再現し、バーチャルツアーを楽しんでもらおうという事業で、たとえば以下のような事例があります。

・沖縄県「バーチャルOKINAWA
→首里城や国際通りなどの観光地をVR Chat内に再現、イベントに参加したり買い物したりできる

・Travel DX「メタバース旅行
→世界100か国、1,000か所以上でのメタバース旅行が楽しめる

ANA GranWhale
→「Skyパーク(旅のテーマパーク空間)」、「Skyモール(ショッピング空間)」、「Skyビレッジ(未来の街をイメージした空間)」の3つのサービスで構成されたバーチャルトラベルプラットフォーム

※2023年3月にクローズドβテスト版がローンチされ、今後正式リリース予定

メタバース観光は、実際に現地を訪れたような没入感を味わえるのはもちろん、イベントに参加できたり、珍しいお土産を購入できたりといったサービスを用意することで、実際の旅行とはまた違った新しい体験を作り出すことができるものです。

さらに、「バーチャルで訪れてみて気に入ったので、リアルでも旅行してみたい」という新たな観光需要を生み出す可能性もあります。

そのため、自治体などが観光誘致の一環としてメタバース観光を主催する例も増えています。

4-5.教育

メタバースは、教育分野とも親和性が高いと考えられます。一例ですが以下のようなことが実現できます。

・いつでもどこからでも教育プログラムをけられる
いたい学校遠方あったり、障害病気家庭事情などで通学困難であったりするでも、生徒学生同様教育けることができます

・現実授業では実現しい授業内容実施できる
危険化学実験をシミュレションで体験したり、海外僻地をバチャルでれたり、過去にさかのぼって歴史上出来事擬似体験できたりと、実際授業ではできないことがバチャルで可能になります

・不登校生徒への教育機会える
心理的原因不登校になっている生徒も、自宅からアバタでなら授業参加できる可能性があります。集団授業には参加できなくても、メタバ個別授業けることもできます。

具体的な教育事業としては以下のような活用方法が考えられ、すでに実施されているケースもあります。

◎メタバース内に学校を作る
→長岡工業高等専門学校「WHITE LAB」など

◎メタバースでの教育プログラムを作る
→スタンフォード大学「Virtual People」など

◎メタバースでの企業向けの研修プログラムやセミナーを提供する
→NTTコミュニケーションズ「仮想現実ソリューション」、InstaVRなど

◎バーチャル留学のプログラムを実施する
→CURIOUS WORLD「メタバース留学」など

メタバースでeスポーツに参加しながら英会話を身につけるサービスを提供するスタートアップ企業「ゲシピ」が登場するなど、今後も新たな教育事業が生まれそうです。

4-6.不動産

メタバースを舞台にした不動産業も始まっています。

メタバースは仮想とはいえ「空間」ですから、そこで何かをするにはスペース=土地が必要です。

となると、その土地には価値が生まれ、売買の対象になるのは当然でしょう。

実際に、イタリアの高級ファッションブランド「GUCCI(グッチ)」がメタバースプラットフォーム「The Sandbox」に土地を購入した例などもあります。

メタバース上での不動産事業としては、以下のような事業内容が考えられます。

・土地を売買して売却益を得る
・土地を貸し出して賃貸料を得る
・広告スペースとして広告料を得る
・イベントやライブなどを開催して参加者から参加費を徴収する
・自社の店舗を作って運営する など

ただ、メタバース上の土地の価値は、現実の土地以上に不確定です。

そのプラットフォームの利用者が多ければ、価値は高まるかもしれませんが、利用者の少ないメタバースであれば、土地の需要も少なく、価値が上がりにくいと予想されます。

メタバース上の土地売買には、そのリスクを知った上で慎重に取り組む必要があるでしょう。

4-7.マッチングサービス

また、メタバースを舞台にしたマッチングサービスも展開されていて、現在のところ、「恋愛・婚活マッチング」と「人材マッチング」が見られます。

恋愛・婚活マッチングでは、バーチャルシェアハウスで仲を深める「OneRoof」(株式会社X square)などがリリースされています。

人材マッチングでは、メタバース内での就職相談サービス「就活メタバース」(ポート株式会社)などが始まりました。さらに、合同説明会「メタバース新卒採用EXPO」(株式会社X)なども開催されています。

いずれも、利用者はアバターで参加できるため、対面ではうまく自分を表現できない、自信がない、といった消極的な人にとっては、ハードルが低くなることが期待できます。

一方、運営企業にとっては、これまで現実社会で行われてきた事業モデルをメタバース内で実施すればいいので、取り組みやすいと言えるでしょう。

4-8.医療

医療分野でも、メタバース活用の動きが始まっています。

最もイメージしやすいのは、「メタバースクリニック」でしょう。

仮想空間内の医療施設で、アバターの医師がアバターの患者を診察するというサービスです。

現在はまだ構想、実験の段階ですが、2022年4月、順天堂大学医学部付属順天堂医院が「順天堂バーチャルホスピタル」を設立、実用に向けて研究が始まっています。

これが実現すれば、遠隔地の患者や外出困難な患者も自宅から診療を受けられるようになるでしょう。

また、こころの病気など、人に話しづらいこともアバターでなら相談しやすくなるという一面もあります。

さらに、医師や看護師がメタバース内で研修を受けたり、手術のシミュレーションをしたりといった活用法もあり、医療の質向上に期待がかかっています。

4-9.バーチャルオフィス

最後に「メタバース市場に参入する」という視点とは異なりますが、「メタバースを企業に導入する」という視点で普及が予想されているのが「バーチャルオフィス」です。

文字通り、メタバース内に仮想のオフィスを構え、社員がそこに「出社」して業務を行うというサービスで、前述したようにコロナ禍の影響で注目が集まりました。

社員のアバター同士が仮想オフィスの中で、直接音声で会話しながら共同作業を行ったり、顧客を招いて商談をしたりと、今までのリモート会議ツールなどと比べてよりリアルに近い感覚で仕事ができます。

バーチャルオフィスは、実際に出社する際の交通費やオフィス内の設備費、光熱費などが大幅に節約できるというメリットもあるため、導入にあわせて実際のオフィスの規模を縮小する企業も出始めました。

Horizon Workrooms」(Meta)や「Microsoft Mesh (プレビュー) 」(Microsoft)など、国内外でさまざまなサービスがリリースされていて、それぞれ細かい機能が異なりますので、自社に適したものを選ぶといいでしょう。

メタバースを活用したいなら、
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企業や自治体がメタバースを活用する際には、メタバースを活用してどんな取り組みをどういったプラットフォームで実現していくかが重要です。

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5.メタバース市場拡大に向けた今後の課題

メタバース市場拡大に向けた今後の課題

前章では、メタバース市場で今後どのような事業展開が可能なのか、主なものを紹介しました。

「わが社でも、この事業領域に取り組んでみたい」と検討に入る企業もあるでしょう。

しかし、メタバース市場は前述したようにまだ黎明期であり、課題も多く残されています。

それは、主に以下の7点です。

<技術的な課題>
・デバイス性能、ユーザビリティの向上
・仕様の標準化

<経済的な課題>
・VRヘッドマウントディスプレイの低価格化
・マネタイズ

<社会的な課題>
・人材の確保
・コンテンツの普及

<政治的な課題>
・仮想空間ビジネスに関する法整備

それぞれ詳しく説明します。

5-1.デバイス性能・ユーザビリティの向上

まず、技術面での大きな課題として、メタバースに参加するためのデバイスの性能や使いやすさがまだ不十分だという点が挙げられます。

メタバースは、VRゴーグルなどのヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着することでより没入感を得られるものです。しかし現状HMDはきくていものがいため、長時間利用しているとれてしまうとい欠点があります。

また、VRゴーグルで視覚から刺激を受けることで、めまいや吐き気、頭痛などを引き起こす「VR酔い」になってしまうケースもあるようです。

5-2.仕様の標準化

現状、メタバースには標準規格のようなものはありません

それぞれのプラットフォームは独立して運営され、そこで用いられる仮想通貨やアバターも異なります。

ということは、ユーザーが複数のメタバースに参加しようとすれば、プラットフォームごとに仮想通貨やアバターを用意して使い分ける必要があるのです。

これは、メタバースの普及にとってはひとつのハードルになるでしょう。

そこで現在、メタバースの「標準化」「相互運用性」を確立しようという動きが始まっています。

まずアバターに関しては、3Dアバターの標準規格として「VRM」というファイル形式があり、あらゆるプラットフォームで共通して利用できるものとして普及を目指しています。

一方、メタバース自体の標準化はまだこれからです。

2022年6月、オープン メタバースの相互運用性標準の開発を促進する団体として、「The Metaverse Standards Forum」が発足しました。

Microsoft、Adobe、Meta、Intel、SONYなど多くの企業が参加していて、この団体自体がメタバースの標準を作るわけではありませんが、そのために各企業が協力する場を提供する、としています。

メタバースとアバターの標準化が実現すれば、ユーザーは多種多様なバーチャル空間を自由に行き来できるようになり、利用する人も増えるでしょう。

5-3.VRヘッドマウントディスプレイの低価格化

5-1.デバイス性能・ユーザビリティの向上では、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)の機能面の課題に触れましたが、もうひとつ、HMDの価格が高額であることも課題でしょう。

HMDには、スマートフォンを装着してスマホ内のコンテンツを見るタイプと、パソコンに接続して利用するタイプ、そして何にも接続せず独立して仕様するスタンドアローンタイプの3種があります。

スマホ装着タイプは比較的安価なものが多く、数千円でも購入できますが、PC接続タイプやスタンドアローンタイプである程度以上の没入感を求めるのであれば、安くても3万円程度、高価なものは10万円台、20万円台です。

これでは気軽に入手できる人は限られてしまいます。

メタバースを一般に普及させ、市場を拡大するには、高性能なHMDを誰でも手に取れるよう、低価格化する必要があるでしょう。

5-4.マネタイズ

もうひとつ、経済的な課題としては、メタバースでのビジネスはまだマネタイズが難しいことも挙げられるでしょう。

繰り返しますが、現在のメタバース市場はまだ黎明期で、利用者が多いとは言えません。

そのため、参入する企業の中には実証実験や将来に向けての投資として取り組んでいるケースもあり、必ずしもすぐに収益化できるとは限らない状況です。

しかもメタバース関連は新しい技術であるため、その構築やコンテンツの作成には時間とコストがかかります。その投資分見合うよう、事業をどのタイミングでどのようにマネタイズするか、参入企業はよく検討する必要があるでしょう。

5-5.人材の確保

前述したように、メタバースはまだ新しい領域ですので、専門性の高いエンジニア人材が不足しているという問題もあります。

経済産業省をはじめ、政府も高度IT人材の育成に乗り出してはいますが、需要に対して供給が追いつかず、そのギャップは年々大きくなると予想されています。

さらにメタバースに関しては、エンジニア人材に加えてビジネスを企画、運用できる人材も足りません

前項で触れたように、マネタイズの方法も確立されていないため、メタバース内でどんな事業が有望か、どう事業展開すれば成功できるかを見極めることが重要ですが、その点で経験豊富な人材はまだ少ないのです。

これらの人材をどのように確保するか、または育成するかは、メタバース事業に参入する企業にとって大きな課題になるでしょう。

5-6.コンテンツの普及

メタバース市場でもうひとつ不足しているのが、多くの利用者を惹きつけるようなキラーコンテンツです。

何かひとつ、爆発的な人気を集めるコンテンツが登場すれば、ユーザーも増えるでしょうしHMDも売れるでしょう。そうなれば、メタバ市場急成長期待できます。

現在のところ、ゲームを中心にキラーコンテンツの模索がなされていますが、ゲームマニア以外の一般層にも普及するようなコンテンツ作りにはまだ課題がありそうです。

5-7.仮想空間ビジネスに関する法整備

最後に、非常に大きな問題となっているのが、メタバースをはじめとする仮想空間での法整備が不十分であることです。

特に、商取引に関する法律と、著作権や個人情報を保護する法律の整備は急務だと言えるでしょう。

現在の法律は、現実世界でのビジネスを前提として作られたもので、バーチャル空間での商取引を想定していません。

例えば、メタバース内で購入したアバター用の服などのNFTアイテムが、技術的なトラブルで消えてしまったり、支払いをしたのにアイテムが受け取れなかったりした場合、メタバースの運営事業者などに対して法的に補償を求めることは困難です。

また、メタバース内に現実の街や建造物などを再現する場合、その著作権や意匠権などはどうなるのか、個人情報はどう取り扱うのかなども明確にする必要があります。

メタバースには国境がないため、多国籍の人が交流する中でトラブルが起きた際に、どこの国の法律を適用するかも問題になるはずです。

これらを踏まえて、政府でも法整備に乗り出していますので、メタバースを利用する企業は最新情報をチェックしておく必要があるでしょう。

まとめ

いかがでしたか?

メタバース市場について、知りたかったことがわかったかと思います。

最後にあらためて、記事の要点を振り返ってみましょう。

◎メタバースの世界市場は、2021年に4兆2,640億円だったものが2030年には78兆8,705億円まで拡大すると予想されている

◎メタバースが成長を見込まれる理由は、

・VR技術の進化
・NFTなど周辺技術の進化
・コロナ禍によるオンラインコミュニケーション需要

◎今後メタバース市場で多くの企業の参入が期待されるビジネス分野・領域は、

・EC
・広告、PRイベント
・エンターテインメント
・観光
・教育
・不動産
・マッチングサービス
・医療
・バーチャルオフィス  など

◎メタバース市場拡大に向けた今後の課題は、

<技術的な課題>
・デバイス性能・ユーザビリティの向上
・仕様の標準化

<経済的な課題>
・VRヘッドマウントディスプレイの低価格化
・マネタイズ

<社会的な課題>
・人材の確保
・コンテンツの普及

<政治的な課題>
・仮想空間ビジネスに関する法整備

以上を踏まえて、あなたの会社がメタバース市場にうまく参入できるよう願っています。