
優良顧客分析とは、データ分析によって収益性の高い顧客を特定する手法です。
- 優良顧客分析を行うべき理由:この分析を行うことで、企業は顧客に対して的確なアプローチができ、業務効率を向上させ、コスト削減を図るとともに、顧客満足度を高めることができる。
- 優良顧客分析の方法:代表的な分析手法には、RFM分析、デシル分析、コーホート分析、CPM分析、そして顧客推奨度(NPS®)があり、これらを用いることで対象顧客の理解を深めることが可能。
- 優良顧客を増やすための方法:既存顧客を優良顧客に育成するためには、関連商品の提案やアップセル、定期購入モデルの導入、購入履歴に基づく情報提供などが効果的。また、優良顧客を維持するためには、限定特典の提供やパーソナライズした提案が重要。
- 優良顧客を増やすためのポイント:優良顧客の基準を明確にし、その基準に基づいて顧客ニーズを把握する情報収集を行うことが重要。さらに、オペレーターの応対品質を向上させ、複数の分析手法を活用することで、より効果的なアプローチが実現する。
「優良顧客分析とは何か?」
「優良顧客分析は本当に必要なのか?具体的な方法は?」
優良顧客分析に関心があるものの、実際のところがピンと来ない、具体的なやり方がイメージできないという方も多いのではないでしょうか?
優良顧客分析とは、データ分析を用いて優良顧客を特定するプロセスです。
優良顧客の獲得は企業の利益貢献につながるため、適切な戦略が必要です。この分析は、誰に対してどのようにアプローチすべきかを検討するうえで不可欠なステップとなります。
以下に、代表的かつ効果的な優良顧客分析の方法を5つ挙げます。
優良顧客の分析方法 | |
1.RFM分析 | 最終購入日、購入頻度、購入金額の3つの指標で顧客を分類 |
2.デシル分析 | 顧客の購買データをもとに、合計購入金額の高い順に顧客を10にランク分け |
3.コーホート分析 | 顧客を世代や年齢ごとに分け、消費傾向を分析 |
4.CPM分析 | 購入頻度、購入金額、離脱期間を基準に顧客を5~10のパターンに分類 |
5.顧客推奨度(NPS ®) | 企業やブランド、サービスへの潜在的な満足度を示す指標 |
優良顧客分析は非常に有用ですが、方法や解釈を理解せずに実施しても、正確な結果を得られなかったり、その結果を効果的な施策に結び付けられなかったりする可能性があります。
本記事では、優良顧客分析の定義や具体的な実施方法について詳しく解説します。
優良顧客を増やすための具体的なアクションをお伝えしますので、優良顧客獲得に向けての行動をすぐに始められるでしょう。多くの優良顧客を獲得し、自社ビジネスを成長させる手助けとなるため、ぜひ最後までお読みください。
1.優良顧客分析とは
まずは、優良顧客分析の定義を確認しましょう。この章では、理解を深めるために以下のポイントについて解説します。
・優良顧客分析とは |
1-1.優良顧客分析とは「データ分析によって優良顧客を特定する」こと
優良顧客分析とは、データ分析によって収益性の高い「優良顧客」を特定するプロセスです。
購入単価や購入頻度が高い優良顧客は、企業の売上向上に大きく寄与します。そのため、優良顧客を増やすことは、どの企業にとっても共通する課題といえるでしょう。
優良顧客分析を通じて、優良顧客の特徴やニーズが明らかになります。これに基づいたアプローチを行うことで、優良顧客を増やしたり、育てたりすることが可能になります。
すなわち、優良顧客分析は、企業が自社の顧客の特徴を理解し、最適な方法で関係を築くために欠かせない施策であるといえます。
1-2.優良顧客は「購入単価と購入頻度が高く、収益性が高い」
優良顧客分析で特定する「優良顧客」とは、購入単価と購入頻度が高く、収益性の高い顧客を指します。
購入単価や購入頻度がどの程度であれば優良顧客とみなすかは、各企業のサービス内容や顧客特性に応じて設定します。
顧客の区分 | 概要 | 購入頻度 | 購入単価 |
ロイヤルカスタマー | 自社の商品・サービスを継続的に購入し、企業やサービスに好意的な感情を持つ | 高い | 高い |
優良顧客 | 自社の商品・サービスを継続的に購入している | 高い | 高い |
既存顧客 | 自社の商品・サービスを利用した経験がある | まばら | 一般的 |
見込み顧客 | 自社の商品・サービスを知っている | – | – |
潜在顧客 | 自社の商品・サービスを知らない | – | – |
優良顧客が増えることで、企業の収益は自然に向上します。
例えば、半年間で10万円以上の商品を購入する顧客を優良顧客に設定した場合、優良顧客が100人いれば、年間で2,000万円の商品購入が見込まれます。
このように、優良顧客が一定数存在すれば、安定した収益が期待でき、企業運営がよりスムーズになります。
1-3.優良顧客とロイヤルカスタマーの違いは愛着の有無
優良顧客と混同されがちな顧客に「ロイヤルカスタマー」がありますが、厳密には異なります。
優良顧客とロイヤルカスタマーの違いは「愛着の有無」にあります。
両者は共に購入単価と購入頻度が高いという要件を満たしていますが、企業やサービスに対する愛着の有無が異なります。
ロイヤルカスタマーは企業やサービスに対し深い愛着を持つ顧客であり、優良顧客はロイヤルカスタマーと比較し企業やサービスに対する愛着が深くないか不明な顧客です。
ロイヤルカスタマーは、企業やサービスへの愛着が深いため、他社への乗り換えが少なく、価格変動にも寛容であることが多いです。そのため、長期にわたり収益に貢献してくれる可能性が高いです。
したがって、優良顧客を獲得した後は、その顧客をロイヤルカスタマーに育成することが重要となります。
ロイヤルカスタマーについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
2.企業が優良顧客分析を行うべき3つの理由
優良顧客分析は、企業が売上を伸ばすために不可欠な要素です。その重要性をさらに詳しく見ていきましょう。企業が優良顧客分析を行うべき理由は、以下の3点です。
それぞれの内容について解説します。
2-1.顧客に的確なアプローチができる
優良顧客分析を行うことで、企業は顧客に対して的確なアプローチが可能になります。
顧客の行動、特性、ニーズを深く理解することで、それに応じたマーケティングやサービス提供が実現できます。
例えば、顧客の購入履歴をもとに、関連商品を提案したり、次回購入時に割引を提供したりすることで、リピート率を高めることができます。コンタクトセンター(コールセンター)においては、顧客のランクや購入状況を把握することで、アップセルやクロスセルの提案がしやすくなります。
実際に、通販を中心にブランド品を販売するA社の事例を見てみましょう。
A社では、顧客の興味や関心、属性、これまでの購入履歴を参考に、130種類以上もの配信メールを用意しています。
高級な靴を購入した顧客には靴のメンテナンス用商品に関連するメールを送信し、個別にアプローチを徹底することで、コンバージョン率が10倍に向上したという実績があります。
このように、優良顧客分析は顧客が求めている施策を見出し、成果を最大化するための重要な手段となります。
2-2.業務効率化・コスト削減を図れる
優良顧客分析を実施することで、業務効率化やコスト削減が可能になります。
好反応が得られるターゲットに絞ったアプローチを行うことで、マーケティングやサービス提供にかかる手間と時間を減らせるからです。
例えば、アウトバウンドのコンタクトセンターでは、膨大な顧客リストを用いて顧客にアプローチしますが、闇雲に架電しても、商品購入やアポイントに繋がらないことがあります。
優良顧客分析を行うことで、見込みの高い優良顧客に優先的に架電できるため、限られた時間の中でも成果を最大化することが可能です。
実際に、総合通販会社B社の事例を見てみましょう。
B社では、期待購買確率スコアに基づいて顧客をセグメントし、それぞれに応じたLINEメッセージを配信しています。その結果、メッセージ配信業務が効率化され、配信費用を削減しながら売上拡大を実現しました。
このように、優良顧客分析は顧客への効率的なアプローチを実現し、それに伴う手間やコストの削減に寄与します。
優良顧客への優先的なアプローチには「DataRobot」が有用 |
優良顧客に優先的にアプローチするためには、トランスコスモスの機械学習自動化AIプラットフォーム「DataRobot」が活用できます。「DataRobot」は、統計アルゴリズムを駆使して最適な予測モデルを構築するシステムです。詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 |
2-3.顧客満足度の向上につながる
企業が収益を上げるためには、優良顧客の獲得が重要な課題です。しかし、商品やサービスに応じて優良顧客を定義し、現在の優良顧客を把握しなければ、効果的な対策は立てられません。
優良顧客分析を行うことで、顧客が求める体験やサービスの質を正確に把握し、個別対応が可能になります。このプロセスは、顧客満足度の向上に直結します。
優良顧客の満足度を高めることは、ロイヤルカスタマーの育成に不可欠です。優良顧客分析を通じて、顧客に価値ある体験を提供し、顧客ロイヤルティを高めることが実現できます。
つまり、優良顧客を増やすためには、適切な分析が欠かせません。次の章では、優良顧客分析を行うべき理由をさらに詳しく解説します。
3.優良顧客分析の5つの方法
次に、優良顧客分析の具体的な方法を見ていきましょう。代表的かつ効果的な優良顧客分析の方法には、以下の5つがあります。
優良顧客の分析方法 | |
RFM分析 | 最終購入日、購入頻度、購入金額の3つの指標で顧客を分類 |
デシル分析 | 顧客の購買データをもとに、合計購入金額の高い順に顧客を10にランク分け |
コーホート分析 | 顧客を世代や年齢ごとに分け、消費傾向を分析 |
CPM分析 | 購入頻度、購入金額、離脱期間を基準に顧客を5~10のパターンに分類 |
顧客推奨度(NPS ®) | 企業やブランド、サービスへの潜在的な満足度を示す指標 |
それぞれの分析手法がどのように機能するかを解説していきます。
3-1.RFM分析
RFM分析とは、最終購入日(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)の3つの指標を用いて顧客を分類する分析方法です。この方法により、顧客のグループごとに効果的なマーケティング施策を立てることができます。
3つの指標が全て高スコアであることが優良顧客の定義と一致しますので、これらの指標が高い顧客は優良顧客とみなすことができます。以下のように、3つの指標を基にランク分けを行い、優良顧客の基準を設定します。
ランク | 最終購入日 | 購入頻度 | 購入金額 |
優良顧客 | 1ヶ月以内 | 年間12回以上 | 年間150万円以上 |
Aランク | 3ヶ月以内 | 年間8回以上12回以下 | 年間100万円以上150万円以下 |
Bランク | 半年以内 | 年間4回以上8回以下 | 年間50万円以上100万円以下 |
①最終購入日
最終購入日は、顧客が最後に商品購入やサービス利用をした日です。この指標をもとにランク分けを行います。
例え購入金額や頻度が高くても、数年前から購入履歴がない顧客は優良顧客には含まれません。最終購入日の許容範囲は商品やサービスの特性により異なるため、企業ごとに設定が必要です。
②購入頻度
優良顧客は、商品やサービスを継続的に購入する顧客を指します。数回の購入があっても、継続性がなければ優良顧客とはいえません。たとえば、半年以内または1年以内の期間を設定し、その期間内の利用頻度を確認することで、顧客の継続的な利用状況を確認します。
③購入金額
優良顧客は、収益性が高いという特徴があります。一定期間(半年や1年など)の購入金額に基づいて優良顧客の基準を設定します。取扱う商品やサービスの単価に応じて、ランク分けの金額は異なるため、特定の金額に固定する必要はなく、企業ごとに設定を行います。
RFM分析の基準が整ったら、顧客をランク分けします。
優良顧客の条件に当てはまる顧客が多いほど、企業は多くの優良顧客を抱えていることになります。逆に、AランクやBランクなど優良顧客に到達していない顧客が多い場合は、優良顧客に成長させるための施策が必要です。
3-2.デシル分析
デシル分析とは、顧客の購買データをもとに、合計購入金額の高い順に顧客を10のランクに分ける分析方法です。この方法により、顧客の購買状況を把握し、収益性の高い顧客層を特定することができます。
例えば、半年や1年などの一定期間の合計購入金額に基づいて顧客を10のランクに分け、その後各ランクの比率を算出します。
以下に、100人の顧客をデシル分析した場合の例を示します。
ランク | 人数(100人) | 合計購入金額 | 比率 |
1 | 5 | 100,000円 | 5% |
2 | 10 | 90,000円 | 10% |
3 | 15 | 80,000円 | 15% |
4 | 15 | 70,000円 | 15% |
5 | 15 | 65,000円 | 15% |
6 | 10 | 60,000円 | 10% |
7 | 10 | 55,000円 | 10% |
8 | 10 | 50,000円 | 10% |
9 | 5 | 45,000円 | 5% |
10 | 5 | 40,000円 | 5% |
この場合、ランク1と2が優良顧客に分類されます。全体の15%が優良顧客として収益性を持つことがわかります。さらに、ランク3〜5が最も多い顧客層であり、この層の顧客を優良顧客にランクアップさせるための施策が必要であると分析できます。
●デシル分析のメリット
デシル分析の大きなメリットは、非常に簡単で結果が直感的にわかりやすい点です。合計購入金額の高い顧客層を迅速に特定できるため、マーケティング戦略の立案に役立ちます。
●デシル分析のデメリット
一方で、デシル分析は簡単であるということは、メリットであると同時にデメリットでもあります。
デシル分析では、購入頻度や直近の購入を反映できず合計購入金額のみを基準にするため、以下のような2人の顧客がいる場合、同じランクに分類されてしまいます。
例えば・1年間に1回の来店で90,000円の商品を購入した顧客 |
このように、デシル分析では購入頻度や直近の購入状況を考慮できないため、優良顧客を正確に分類することが難しいです。
RFM分析 | デシル分析 |
最終購入日、購入頻度、購入金額の | 合計購入金額のみがランク付け |
より詳細で正確な顧客分類が可能 | 簡易的な顧客分析に適している |
デシル分析は「RFM分析の簡易版」ともいわれるため、あくまでも合計購入金額を目安として簡易的な顧客分析を行う際に使用することをおすすめします。
3-3.コーホート分析
コーホート分析とは、顧客を世代や年齢ごとに分けて消費傾向を分析する手法です。
人々は生まれた時代や年齢によって消費行動が異なり、例えば20代と50代では購買する商品が異なることがあります。また、各世代は異なる時代背景を経験することで、価値観や行動が変化します。
この分析を通じて、特定のターゲット層への対策を考える手助けとなり、優良顧客の育成につながります。コーホート分析の結果は、主に以下の3つの要素に起因しています。
1.年齢効果
年齢効果は、加齢や成長に伴う変化を指します。人は年齢やライフステージによって考え方や行動が変わるため、コーホート分析でもこの影響が反映されます。
2.時代効果
時代効果は、社会情勢が消費者行動に与える影響を指します。例えば、2000年代は店舗での購入が中心でしたが、2010年代にはスマートフォンの普及によりインターネット経由の購買活動が増加しました。
こうした社会環境の変化は、コーホート分析を行う際に考慮する必要があります。
3.世代効果(コーホート効果)
世代効果は、同じ世代で育った人々が共通の認識や価値観を持つことを指します。同世代の人たちは、共通の流行や教育を受けているため、特有の体験や価値観を持つことが傾向にあります。この点もコーホート分析では重要です。
コーホート分析には様々な実施方法がありますが、一般的に用いられるのは標準コーホート表です。標準コーホート表は以下のように作成します。
・縦軸:年齢効果 |
例えば、アウトバウンドのコンタクトセンターで1年間にスキンケア商品を購入した顧客を標準コーホート表に記入した場合は以下のようになります。
1年間にスキンケア商品を購入した顧客のコーホート表 | |||||
2000年 | 2005年 | 2010年 | 2015年 | 2020年 | |
20~25歳 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 |
26~30歳 | 4 | 3 | 5 | 5 | 5 |
31~35歳 | 3 | 2 | 2 | 4 | 6 |
36~40歳 | 2 | 1 | 2 | 2 | 3 |
41~45歳 | 1 | 2 | 1 | 2 | 2 |
※黄色い枠が世代効果部分
1.年齢効果
20代後半から30代前半の購入者が多く、30代後半は減少傾向にあります。年齢とともに肌質が変化し、長期間リピートする顧客は少ない可能性があります。
2.時代効果
2000年と2020年の総購入者数を比較すると、大幅に増加しています。時代の変化に伴い、どのような要因がプラスに作用したのかを分析する必要があります。
3.世代効果(コーホート効果)
購入数が多いターゲット層は20代後半から30代前半であることがわかります。この層に対して有効なアプローチを行うことで、優良顧客を増える可能性があります。
このようにコーホート分析では世代ごとの消費傾向を詳しく考察することが可能です。ただし、「この世代が優良顧客になり得る」というところまでしか分析できず、具体的な個人を特定することは難しいため、他の分析方法との併用が推奨されます。
3-4.CPM分析
CPM分析(Customer Portfolio Management)とは、商品やサービスの購入頻度、購入金額、離脱期間をもとに顧客を5〜10のパターンに分類する分析方法です。この分析方法の特徴は、顧客育成のための対策を打てる点です。
他の分析手法では考慮されていない「離脱期間」の視点を取り入れ、将来的に再度顧客になる可能性がある層を念頭に置いて分析します。離脱期間の許容範囲は商品やサービスの特性により異なるため、企業ごとに設定が必要です。
顧客の分類パターンは企業によって異なりますが、以下は単品商品を販売している企業におけるCPM分析の一例です。
単品商品を販売している企業でのCPM分析(例) | ||
分類 | 現役顧客(離脱期間に達していない顧客) | 離脱顧客(離脱期間を経過した顧客) |
ランク1 | 初回購入した顧客 | 初回購入後に離脱した顧客 |
ランク2 | 2~3回購入した顧客で利用期間が短い顧客 | 2~3回購入後に離脱した顧客 |
ランク3 | 利用期間は長いが、購入金額が小さい顧客 | 長期的に少額購入していたが離脱した顧客 |
ランク4 | 一定期間内に購入金額が大きい顧客 | 一時的に高額で購入したが離脱した顧客 |
ランク5 | 利用期間は長く、購入金額が大きい顧客 | 長期的に高額で購入したが離脱した顧客 |
顧客育成のための対策例:
・ランク1の離脱顧客:初回購入後に離脱した顧客には、再購入を促すためのアプローチが必要です。 |
このように、顧客の購入行動データをもとにCPM分析することで、優良顧客を育成するため施策立案に役立ちます。
3-5.顧客推奨度(NPS ®)
顧客推奨度(Net Promoter Score)は、企業やブランド、サービスに対する顧客の愛着や信頼を示す指標です。この指標は、顧客の潜在的な満足度を測るために使用されます。
顧客推奨度を測定するために、以下のような質問を用意します。
「このサービスを知人や友人にどれくらいすすめたいですか?」
回答は10段階評価で示し、以下のように分類します
・0〜6: 批判者 |
顧客からの回答が集まったら、批判者、中立者、推奨者の割合を計算します。最終的に、推奨者のパーセンテージから批判者のパーセンテージを引くことで、顧客推奨度を算出できます。
高い顧客推奨度は、企業やブランド、サービスに対する愛着や信頼感を持つ顧客が多いことを示します。これはロイヤルカスタマーの存在を示すものであり、顧客推奨度を継続的に分析することで、優良顧客からロイヤルカスタマーに成長している顧客の動向を把握できます。
注:ネット・プロモーター®、NPS®、NPS Prism®そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc. の登録商標です。
4.優良顧客を増やすための方法
優良顧客分析の目的は、優良顧客を増やし売上を向上させることです。分析結果をもとに、具体的な施策を講じることが重要です。この章では、以下の2つの側面から優良顧客を増やす方法を紹介します。
・既存顧客を優良顧客に育成する方法 |
4-1.既存顧客を優良顧客に育成する方法
既存顧客を優良顧客に育成するためには、購入単価と購入頻度を高めることが重要です。
以下の方法が効果的です。
関連商品の提案(クロスセル) | 顧客が興味を持ちそうな関連商品を提案する |
上位商品の提案(アップセル) | より高価格の商品やグレードの高い商品を提案する |
定期購入モデルの導入 | 定期的な購入を促すプランを提供し、安定した売上を確保 |
再購入リマインダーの送信 | 購入から一定期間経過後にリマインダーを送信し、再購入を促す |
購入履歴や嗜好に応じた情報の提供 | 顧客の購買データを基に、パーソナライズされた情報を提供 |
限定販売やタイムリミット販売の案内 | 希少性を強調し、顧客の購買意欲を刺激する |
アフターサービスの充実 | 購入後のサポートを強化し、顧客の満足度を向上させる |
顧客に「もっと買いたい」「また買いたい」と思ってもらうことが、優良顧客への育成の鍵となります。
4-2.優良顧客を維持する方法
優良顧客を維持するためには、顧客の離脱を防ぐことが重要です。
以下の方法が効果的です。
限定特典や専用サービスの提供 | 優良顧客専用の特典やサービスを用意し、特別感を演出する |
ポイント制度の導入 | 購入ごとにポイントが貯まる制度を設け、再購入を促す |
感謝状や特別メッセージの送信 | 顧客への感謝の気持ちを伝え、関係性を強化する |
顧客アンケートやフィードバックの依頼 | 顧客からの意見を積極的に収集し、サービス改善に活用する |
パーソナライズした案内や提案 | 顧客のニーズに合わせたパーソナライズされた提案を行う |
企業・顧客コミュニティの形成 | 顧客同士のつながりを促し、企業へのロイヤルティを向上させる |
優良顧客に「自分は大切にされている」と感じてもらうことが、顧客維持のポイントとなります。
5.優良顧客を増やすうえで押さえておきたい4つのポイント
優良顧客を増やすためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。これにより、優良顧客分析の精度が向上し、効果的な育成が可能になります。
5-1.優良顧客の基準を明確にして共有する
まず、どの顧客を「優良顧客」とするのかを明確にし、社内で共有しましょう。
この基準が曖昧であれば、優良顧客の分析やアプローチが立てられません。
優良顧客とは、自社の商品やサービスを継続的に購入する収益性の高い顧客を指します。この人物像は企業によって異なるため、具体的な基準を設定することが重要です。以下のような数値を取り入れて、優良顧客の基準を明確にしましょう。
【例】 |
これらの具体的な数値をもとに、優良顧客の基準を明確にし、社内で共有することが大切です。
5-2.顧客ニーズを表す情報を収集する
顧客ニーズに関する情報を収集することは非常に重要です。
顧客が企業や商品・サービスに抱く思いを理解することで、改善に向けたヒントを得ることができます。
既存顧客を優良顧客に育成したり、優良顧客を維持したりするためには、顧客ニーズに応えるために何が不足しているかを把握することが必要です。これにより、顧客ニーズに合った施策を検討できるようになります。
具体的には、コンタクトセンター(コールセンター)で顧客の声を収集することが有効です。
顧客との会話やアンケートを通じて、以下のような内容を確認しましょう。
・企業の商品やサービスに対する満足度と、その具体的な理由 |
このように、顧客の声を丁寧に収集し、ニーズに応じた施策を講じることが重要です。
5-3.オペレーターの応対品質を向上させる
優良顧客を増やすためには、オペレーターの育成が欠かせません。
その理由は以下の2点です。
・優れた顧客体験の提供において、オペレーターは非常に重要な役割を担う。 |
一度商品やサービスを購入しただけでは、優良顧客にはなりません。何度も購入してもらうためには、顧客が「また購入したい」「この企業の商品なら欲しい」と感じる顧客体験が必要です。
オペレーターの応対品質が高いと、顧客が「良い体験をした」と感じる確率が上がります。また、優良顧客分析の結果に基づいた効果的なアプローチを実行するのもオペレーターです。顧客に寄り添い、柔軟に対応できるオペレーターが多いほど、成功の可能性は高まります。
そのため、日常的にオペレーター教育に注力し、高品質な応対ができるスキルを養うことをおすすめします。
5-4.複数の分析方法を活用する
優良顧客分析においては、複数の分析方法を活用することが重要です。多角的な視点から優良顧客を検討することで、より精度の高い顧客像を描くことができます。
たとえば、RFM分析とデシル分析を併用することで、優良顧客の中でも特に売上に貢献している顧客を詳細に特定できます。ターゲットが明確であればあるほど、効果的なアプローチを見出しやすくなります。まずはいくつかの分析手法を試してみることをおすすめします。
優良顧客分析をお考えであればトランスコスモスにご相談ください |
優良顧客分析を実施する際には、顧客データの収集・管理が必要です。トランスコスモスでは、多様なチャネルから効率的にデータを収集し、簡便に管理できるソリューションを豊富に提供しています。 また、データ分析や結果の解釈、施策の立案・実践まで、優良顧客分析からその後の対応をトータルでサポートすることが可能です。まずはお気軽にご連絡ください。 |
まとめ
本記事では、優良顧客分析について詳しく解説しました。以下に要点をまとめます。
優良顧客分析とは
データ分析によって収益性の高い「優良顧客」を特定することです。優良顧客とは、購入単価と頻度が高い顧客を指します。
企業が優良顧客分析を行うべき理由
・顧客に的確なアプローチができる |
優良顧客分析の代表的かつ効果的な方法
1.RFM分析 |
優良顧客を増やすための方法
【既存顧客を優良顧客に育成する方法】 【優良顧客を維持する方法】 |
優良顧客を増やすうえで押さえておくポイント
・優良顧客の基準を明確にして共有する |
優良顧客分析は、顧客を増やし企業の売上向上を図るために不可欠な施策です。この記事の内容を参考に、まずは取り組みを始めてみることをおすすめします。