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経験曲線とは?その効果と将来コストを予測して事業を組み立てる方法

「経験曲線って何のことだろう…」

経験曲線とは、経験を積むことで効率よく仕事をこなすことができるなどの理由により、生産コストが下がるという法則を表した曲線のことです。

経験曲線とは、

例えば何かの製品を作る際、最初に仕事を覚えたときよりも経験を積んでからの方がスピーディに作れるようになった、といったことは誰でも経験があるのではないでしょうか。

短い時間で商品を作ることができれば、その分生産コストは下がります。また、少ない人数でもたくさん生産できるようになれば人的コストも削減できます。

こうした経験則からなるデータを集計すると、以下のような曲線が導き出せます。こうした経験則からなるデータを集計すると、以下のような曲線が導き出せます。

これが、いわゆる「経験曲線」です。

経験曲線を理解していると、実務において様々なメリットがあります。例えば経験曲線に基づいた計算を行うことで、今後の生産コストを予測することが可能です。また、効率よく経験を行かせていない場合が可視化できる事で、問題点を洗い出すこともできるのです。

逆に経験曲線を理解していない場合、作業を効率化できずコストが嵩んでしまったり、競合他社との競争に負けてしまうことも考えられるのです。

この記事では、経験曲線の基礎を中心に、取り入れることでどのような効果があるのか、活用の注意点等以下の内容を詳しく解説していきます。

この記事を読めば分かること

・経験曲線の基礎知識
・経験曲線を取り入れたときの効果
・経験曲線活用の注意点
・経験曲線を取り入れて事業戦略に役立てる方法

この記事で経験曲線を理解し、ぜひ実務に役立てていただければ幸いです。

1. 経験曲線とは

経験曲線とは経験を積むことによって効率よく仕事をこなすことができるなどの理由により、結果として生産コストが下がることを表した曲線のことを指します。コンサルティング業界ではエクスペリエンスカーブと呼ばれることもあります。

経験曲線とは、

一般的に、累積生産量が2倍になると単位コストが20~30%減少すると言われています。ただし、実際の減少率は商品や産業により異なります。

ここからは、経験曲線の基礎知識としてより詳しい内容を解説していきます。

1-1.経験曲線が発見された経緯

経験曲線は、1920年代のアメリカで発見されました。

第2次世界大戦前アメリカで航空機の生産が加速する中、ライト・パターソン空軍記事では生産数が倍になると労働コストが20%減るということが発見されたのです。

とはいえ、その時代では曲線を「経験曲線」という理論にまで落とし込めてはいませんでした。経験曲線が理論として世に知れ渡るようになったのは1960年代のこと。

現代でも世界的なコンサルティング会社として名を馳せるボストン・コンサルティング・グループの創業者の一人であるブルース・ヘンダーソン(Bruce Henderson)が、経験曲線を1つの理論として確立させたのです。

1-2.経験曲線が発生する要因

実は、経験曲線は様々な産業の実際のデータを用いて発見されたものであり、それが発生するメカニズムは明らかになっていません。ただし、一般的に要因として挙げられるのは以下の2つです。

経験曲線が発生する要因として上げられるもの

・労働者の学習による能率の向上

労働者は、特定の作業を繰り替えすことにより能率が上がります。

例えば手作業で1つの商品を製造する場合、仕事を覚えたての段階よりも製作を重ねた段階の方が時間を短縮できる、などのことは誰にでも経験があるはずです。もちろん、サービス業などにも同じことが言えます。

また、製造を続けるうえでより効率化できるよう設備を整えたりシステムを構築することで効率が上がるということも、多くの企業が行っていることです。

ちなみに生産コストの減少率は業界・業種によって異なりますが、製造等を機械に頼ることの多い業界の単位コストの低減率は低く、人的作業が中心の業界・業種は低減率が高くなりやすいと言われています。

このように、労働者の経験値などが要因で経験曲線は発生します。

1-3.経験曲線に似た用語との違い

経験曲線にはいくつかの似た用語が存在します。ここでは、以下の二つの用語と経験曲線の違いを解説します。

1-3.経験曲線に似た用語との違い

1-3-1.経験曲線と学習曲線の違い

経験曲線と学習曲線の違いは、生産量が高まることで短縮または減少できる対象が「時間」なのか「コスト全体」なのかという点です。

学習曲線は経験曲線理論をもとに発展させた考え方で、経験曲線の中の一つの概念です。「経験を積むことで製造などにかかる時間を短縮できる」というもので、一見、経験曲線とその意味は同じように見えますが異なります。

1-3-1.経験曲線と学習曲線の違い

学習曲線が表しているのはあくまでも「製造などにかかる時間の減少」です。一方、経験曲線が表すのは時間だけではなく、金銭を含めた「コスト全体」を指します。

1-3-2.経験曲線と規模の経済の違い

1-3-2.経験曲線と規模の経済の違い

経験曲線と似たような意味合いの言葉に「規模の経済」というものがあります。

「規模の経済」とは生産量や生産規模を高めることで生産コストが下がる、というものです。

経験曲線と規模の経済の違いは、生産量が高まる要因が「経験値」であるかどうかという点です。

経験曲線の場合は労働者などの時間をかけた経験値の累積」が要因となるのに対し、規模の経済は経験値ではなく生産量等が起因する点が異なります。

「1つの商品を大量に作る場合にコストが減少する」といったものを規模の経済と言いうのです。

例えば、1個の製品を作るのに初期費用として5000円かかり、原材料等として1個につき1000円かかるとします。この製品を1つだけ作った場合、その製造コストは6000円となります。

しかし、この商品を100個作った場合には1個あたりの製造コストは1050円になりますよね。

、この商品を100個作った場合には1個あたりの製造コストは1050円になりますよね。

経験曲線とは違い、経験ではなく「生産量」に対しての製造コストが下がる、といった理論が規模の経済です。

経験曲線と規模の経済も意味合いとしては似ていますが、明確な違いがありますので混同しないように気を付けましょう。

「経験曲線」と「規模の経済」どちらを重要視すべき?

経験曲線と規模の経済について理解を深めると、「どちらを重要視すべきなのか?」という疑問がわいてくる人もいます。しかし、経験曲線と規模の経済は全く別物のため、「どちらがいい」と判断できるものではありません。

企業側が戦略を立てる際に、作業員の経験値を生かし製造コストを下げることを重要視するか生産規模などを高めて製造コストを下げることを重要視するかによって異なるためです。

「経験曲線」や「規模の経済」を活用する場合には、その目的が重要となるのです。

1-4.経験曲線の具体的な活用方法

経験曲線は競合他社に対する戦略として効果的に活用が可能となります。例えば、5年前からTシャツの生産を行っている会社Aを例に挙げて考えてみましょう。

A社は5年前からTシャツを製造し続けているため、経験値も十分で単価当たりのコストが低く、1枚につき1000円で製造できている状態です。そこに、競合他社としてB社が参入してきました。

B社はまだTシャツ生産の経験値が低く、時間や人的要因等様々なコストがかかります。そのため、同じTシャツを製造するのに1500円かかってしまいます。

1-4.経験曲線の具体的な活用方法

B社がすぐにA社と同じだけ商品を売りたいのであれば、単純計算ではTシャツの売価を同じ価格にする必要があります。例えばA社が2000円でTシャツを販売していたらB社も同じ2000円にする必要があるのです。

しかしこの場合は、A社の粗利は1000円でB社の粗利は500円となり、その利益は半分になってしまいます。

しかしこの場合は、A社の粗利は1000円でB社の粗利は500円となり、その利益は半分になってしまいます。

つまり、一般的には先にTシャツの製造をしていたA社が圧倒的に有利な状態といえるのです。

さて、もしこの段階でA社がこのような有利な状態に胡坐をかき、何の対策も立てなかった場合どうなるでしょう。

B社は経験曲線理論を経営に取り入れていたため、労働者の経験値をなるべく早く上げるために作業の効率化やマニュアル化を行いました。結果的に、製造開始1年でA社の生産コストに近づけることができたのです。

B社は経験曲線理論を経営に取り入れていたため、

1年後、A社のTシャツ製造コストは900円で売価は2000円。A社の粗利は1100円です。B社はこのときTシャツ製造コストが1100円で売価が2000円。粗利が900円と、たったの1年でその差を大きく詰めることに成功しました。

1年後、A社のTシャツ製造コストは900円

このように、経験曲線を活用することで将来の生産コストの推測や分析を行うことが可能となり、価格設定や新規事業への参入など、様々な分野において意思決定の根拠となりえるのです。

経験曲線は、特に競合他社と比較した際にその効果が明確に表れると言えるのです。

2.経験曲線の活用方法

経験曲線理論を理解しているかどうかによって、企業は効率化の重要性を見出し、結果として製造コスト削減を可能とします。

ここからは、具体的に経験曲線を経営に取り入れる事の効果を解説していきます。

2-1.職務の専門化・分業化

経験曲線を取り入れることで職務の専門化・分業化を行うことで生産性を上げることが可能となります。

第1章でも解説した通り、経験曲線は競合他社に対する経営戦略として持ち味を発揮します。より短時間で経験曲線における生産コストの指標を下げるためには、生産性を高めることが重要です。

労働者一人ひとりの経験値を上げ生産コストを下げるためには、職務を専門化または分業化することが効果的です。

既に事業に参入している競合他社に追いつくためには、他社が行っていないような施策を取ることで生産コストを下げる必要があります。そして、そうした施策を行う意思決定を行う際に、経験曲線理論は根拠として役立つのです。

2-2.自動化ツールの導入

自動化ツール等を導入することで効率化でき、経験曲線における生産コストを下げることが可能となります。

例えばマーケティングに活用するデータ分析をこれまで手作業で行っていたとします。社員は集めたデータを1つ1つ集計して分析に生かすこととなりますが、これには膨大な時間がかかってしまいます。

データ分析ツールを導入することで、こうした作業が全て自動化できる事となります。導入直後はツールの使い方を覚える必要があるため、一時的に作業効率は落ちる可能性がありますが、すぐに効率的な作業が可能となるでしょう。

この場合にも、データ分析ツールの導入の根拠となりえるのが経験曲線です。他社よりも生産性を早く高める必要がある場合は、経験曲線を利用してそれらを示すことが近道です。

2-3.作業方法のマニュアル化

作業方法をマニュアル化することによって効率化することが可能です。

1つの製品を作る経験を積み重ねていくことで、徐々に作業方法も最適化できるようになってきます。そうした経験を積むことで生産コストが下がるわけですが、もしも途中で別の労働者が入ってきた場合はどうなるでしょうか。

その場合、新しい労働者はまた1から作業を覚える必要が出てきてしまいます。

昔から働いている労働者がその経験を生かして最適化した作業方法をマニュアル化すれば、新しい労働者が入って来た場合も仕事を覚えやすくなります。その結果、新しい労働者は以前の労働者よりもより速い段階で経験値を上げ、生産コストを下げることができるのです。

このように、作業方法をマニュアル化するためにも経験曲線が生きてくるといえます。

3.経験曲線活用の注意点

ここまでは経験曲線の効果を解説してきました。ここからは、経験曲線を活用する注意点を解説していきます。

経験曲線を活用する場合の注意点としては、以下の3点が挙げられます。

経験曲線を活用する場合の注意点としては、以下の3点が挙げられます。

それぞれについて解説していきます。

3-1.同じ作業を繰り返し行う必要がある

生産性を上げるためには、同じ作業を繰り返し行って経験値を上げる必要があります。経験値はあくまでも「同じ作業を繰り返し行う」ことで上がっていくものです。

短期間で経験値を上げようとしたり、並行していくつもの作業を覚えさせようとするとかえって効率が悪くなる可能性があるのです。

また、同じ作業であってもマニュアルを頻繁に変更する等の場合、やはり経験値を上げるためには余計な時間がかかってしまいます。

労働者の経験値を上げるためには、同じ作業を繰り返し行ってもらうこと。そうすることで結果的には生産コストの削減につながるのです。

3-2.低コスト戦略が常に有効とは限らない

全ての企業において、経験曲線における低コスト戦略が有効とは限らないことは覚えておきましょう。

経験曲線はあくまでも低コスト戦略に活用されるものであり、製品の製造を低コストにすることで利益を上げることが目的です。

例えば生産工程において技術革新が多い業界では、技術が刷新されるたびにまたゼロから経験曲線を作り直す必要があります。ある程度長いスパンで経験曲線を積み上げていく戦略にはこの場合は向きません。

また、経験曲線は低コストで大量に生産することが前提となるもの。生産過多となり過剰在庫につながる可能性も出てしまうのです。

重要な点は、企業において経験曲線が本当に有利かどうかという点です。経験曲線が活用できる企業は生産性を加速させますが、リスクもあるということは覚えておく必要があります。

4.経験曲線をコンタクトセンターで役立てるには

経験曲線は、しっかりとデータを分析することで有効に活用することが可能となります。

経験曲線効果を取り入れることで生産コストを下げることができることがお分かりいただけたかと思います。分析した経験曲線のデータが根拠となり、生産コストを下げるための施策を打ち出すことが可能となるのです。

コンタクトセンターのような人的サービスでも育成計画において適用が可能です。新人のコンタクトセンタースタッフとベテランが同じ受電量を取るために、どのくらいの経験(成長期間)が必要なのかを予測することで、人員(リソース)の無駄な配置を減らす事ができます。つまり、要員配置コントロールを適正化してコスト削減ができます。

但し、逆のこともいえます。計画の際に、新人とベテランを同じ受電量で計算してしまうと、

人員不足に繋がり、応答率の低下を招くことで、顧客満足度を下げる可能性も有ります。

このように、経験曲線の考え方を取り入れることでコンタクトセンターの生産コストを適正化していくことが可能となるのです。

トランスコスモスでは、コンタクトセンター運営に関わるさまざまなサービスを提供していており、運営にあたり経験曲線を活用したセンター設計を実施しています。

その他にも、デジタルツール等を駆使し生産性をベテランにいち早く近づけられるように様々なソリューションを運営の中で提供していきます。より細かい情報は、トランスコスモスまでお問合せください。

まとめ

以上、この記事では経験曲線に関して以下の内容を詳しく解説してきました。

この記事を読んで分かったこと

・経験曲線の基礎知識
・経験曲線を取り入れたときの効果
・経験曲線活用の注意点
・経験曲線を取り入れて事業戦略に役立てる方法

経験曲線は正しく活用すればコスト削減や生産性向上に役立てることが可能です。とはいえ、この記事でも紹介した通り全ての産業や事業に当てはまるわけではありません。

自分の事業には経験曲線が有効かどうかを判断し、有効であった場合はぜひ存分に活用してみてください。

トランスコスモスのコンタクトセンター/コールセンターサービスでお取引いただいたお客様は、業界問わず1,700社を超え、様々なノウハウを保有しています。コンタクトセンター/コールセンターの運営に関して、お悩みの方は一度お問合せください。
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