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【登壇者】 CX事業統括 デジタルカスタマーコミュニケーション総括 2004年トランスコスモス入社。セールス業務を中心にチームリーダー、スーパーバイザーを担当。 CX事業統括 デジタルインタラクティブ事業本部 1998年トランスコスモス入社。大手スポーツメーカーWEBメディア全般の企画・制作・開発チームプロジェクトマネージャーに。 |
1.コンタクトセンター(コールセンター)のマーケティング活用
近年、VOCをマーケティングに活用し、自社商品やサービスの改善、顧客満足度を向上させる取り組みが多くの企業で重要視されています。
コンタクトセンター(コールセンター)でのVOC活動においても、単に顧客からの声を収集するだけでなく、その会話の背後にある理由や動機を明らかにすることが求められるようになるなど、センターのあり方や求められる機能も変化してきました。
まずは、そのようなコンタクトセンターの変化について触れていきましょう。
1-1.コンタクトセンターを”ご意見収集”から”インサイト収集”へ
これまでのコンタクトセンターは、「できるだけ多くの顧客対応をする」ことや「短時間で業務を処理する」ことが最も重要視されていました。
しかし、CXを中心として顧客コミュニケーションのあり方が変化していくにつれ、「効率のみを重視する」センターから「さまざまな属性情報やVOCを収集し、マーケティング活動に活かすことができる」センターへあり方も変化しています。
つまり、単に顧客から「ご意見を収集」するのではなく、「インサイト収集」をするための機能が求められているということです。
一方で、コンタクトセンターに寄せられるVOCの傾向というのは「使い方がわからない」「製品がすぐに壊れてしまった」など、顧客が直面している課題や知りたい製品についての情報・サービスに対するフィードバックの声が中心でした。
これでは「問い合わせ傾向」などの定量的な情報はわかっても、なぜその問い合わせやご意見に至ったかなどの定性的な情報は読み取れません。
コンタクトセンターが従来の「効率重視のセンター」から「情報収集拠点としてのセンター」となるためには、顧客とのコミュニケーションの中で能動的に定性情報を引き出し、VOCを深堀りしていく(=顧客インサイトに繋がる情報を収集していく)ことが不可欠です。
企業にとって、顧客と直接コミュニケーションができるコンタクトセンターで顧客インサイトを収集できることは、VOCマーケティングの観点でも大きな『強み』だと言えるでしょう。
1-2.インタビューサービス「tra:Cii(トレイシー)」とは
このような気運を受け、トランスコスモスではインタビューサービス「tra:Cii(トレイシー)」を開発しました。ここからはその概要を説明します。
・インタビューサービス「tra:Cii(トレイシー)」の概要
「tra:Cii」は、コンタクトセンターのオペレーターが応対を通じて顧客の本音を深掘りするインタビューサービスです。
どのような企業においても、「商品の開発コンセプトにできるような、顧客の潜在的ニーズを探りたい」、「競合他社との差別化ポイントを、定量的な点数だけでなく定性的な情報としても知りたい」、「自社サービスのCXが見えにくいので、定量的な評価やコメントをもらいたい」といったニーズが少なからずあることでしょう。
「tra:Cii」はそのニーズに応えるべく、オペレーターが顧客にインタビューを実施し、得られた情報をマーケティング視点で整理・分析してレポートにまとめます。
企業のマーケティング担当者は、そのレポートをもとに具体的な施策を立案し、PDCAを回していくことができるのです。
・評価方法・アウトプット
「tra:Cii」のレポートは、以下の3つの評価方法に基づいてアウトプットされます。
5Aratio | 顧客とのタッチポイントを「認知/Aware」「訴求/Appeal」「調査/Ask」「行動/Act」「推奨/Advocate」の5つに分け、各タッチポイントにおける顧客のコンディションを可視化する |
CXrate | 競合他社と「顧客体験の評価」を比較したうえで、定性的なコメントを深掘りする |
Trendインタビュー | 企業のマーケティング課題や、注力していることなどについて補足的に顧客から情報を聞き取る |
これらの情報は、基本的にはコンタクトセンターにお問い合わせいただいた顧客から収集します。つまり、すでに自社のサービスや商品を利用している既存顧客の価値観や行動動機を深掘りしていくのが「tra:Cii」の特色と言えるでしょう。
・業務フロー
「tra:Cii」は、以下のような業務フローと体制で実施します。
1)調査票の作成
はじめに、企業の担当者と共に調査票を作成します。
前述の3つの評価方法を軸に、顧客に何を聞くか、調査項目をまとめます。
2)顧客の声をヒアリング
調査票の質問項目にしたがって、オペレーターが顧客へのヒアリングを行います。
3)レポート作成、提出
ヒアリングの結果をもとにトランスコスモスがレポートを作成、提出します。
4)フィードバック
レポートから得られた定量的な結果と定性的な示唆を共有のうえ、トランスコスモスと企業の各担当者が部門横断的にアイデアを出し合い、企業のマーケティング課題に対する有効な施策案を検討します。
この4ステップのフローを繰り返すことで、より有用なVOC、顧客インサイトを掘り起こすことができるでしょう。
「tra:Cii」には「定性的なコメントにノイズが少ない」「サンプル数が確保しやすい」といった特長があり、ネットリサーチや対面インタビューの課題をカバーすることができます。
また、既存のコンタクトセンターを活用することで、自社サービスに精通しているオペレーターにより内容の濃いインタビューが行えるのも大きなメリットです。
さらに、リードタイムも2.5か月程度とスピード感のある対応が可能な点も強みと言えるでしょう。
1-3.【「tra:Cii」活用事例】新規顧客獲得や満足度向上への施策を提案
ここでインタビューサービス「tra:Cii」を実施した光回線事業者の事例をご紹介します。
・導入の目的
「tra:Cii」を導入した主な目的は、「回線契約の解約を阻止したい」ということでした。
それに加えて「他社とどのように差別化できているのかを可視化したい」「注力している格安モバイルの売上を拡大したい」という要望もありました。
・取り組み
「tra:Cii」のヒアリングは、回線契約後の顧客へのフォローコールで実施しました。
トランスコスモスのコンタクトセンターから加入者にアウトバウンドコールをする際に、通常のフォローアップだけでなく「tra:Cii」のアンケート項目を組み込み、顧客インサイトを深掘りしていきました。
・結果
ヒアリングの結果、さまざまなアウトプットが得られ、企業側に以下のような提案をすることができました。
・口コミが主な推奨手段だった |
ほかにも新規顧客の獲得や、認知・推奨の拡大などに対して、10以上の施策を練って提案しました。
・レポート例
以下は、実際に光回線事業者へ提出したレポートの一部抜粋です。
各質問項目での顧客体験について、5点満点で顧客に評価をしてもらった結果を図表化し、競合他社と比較のうえ特徴的な定性コメントを抽出しています。
たとえば6項目めの「キャンペーンの内容がよいか」については、競合他社の中で「C社」が0.5〜0.6ポイント高い数値を出しています。
インタビュー時に収集した定性コメントを確認してみると、キャンペーンについては、加入特典よりも提供エリアが重視されていたり、定期的に得するサービスが求められていることがわかります。
さらに「SNSの発信内容がよいか」のように、該当企業と競合他社のポイントにばらつきがない場合は、現時点で競合他社との間で強力な差別化ポイントがなく、ここに打ち手を講じることで他社との差別化が図れるようになるという見方もできます。
このように、企業のマーケティング課題と照らし合わせながら従来の「問い合わせ傾向」や「定量情報」よりもさらに深い視点から打ち手を講じていくことが可能になるでしょう。
2.VOCを発信した「人」に注目するデジタルマーケティング
ここからはさらに一歩進んで、「VOCとデジタルマーケティング」についても考えてみます。
2-1.VOCマーケティングが「目指すべき方向性」と「現実」のギャップ
昨今、マーケティングチームが目指すべき姿として「コンタクトセンターに集まるVOCや行動データを統合的に共有し合い顧客ロイヤルティ向上や売上増加を目指そう」という方向性が頻繁に語られます。
しかし実際は、VOCのマーケティング活用について「ひと握りの顧客だけの意見だろう(インパクトが少ないのでは?)」、「こじつけだよね(特定の意見を恣意的にピックアップしているのでは?)」、「定量的にスコアリングできないと、経営判断に役立てられない」などといったネガティブな意見も聞こえてきます。
そのため、VOCに関しては「あまり使える気がしない」「どう役立つかわからない」という懐疑的なイメージを持たれている担当者様も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
2-2.VOC活用の課題を打開するための2つのアイデア
そこで今回は、そのような状況を打開するためのアイデアを2つご紹介します。
アイデア1:VOCを発信する「人」に着目する
1つ目のアイデアは、「VOCを発信する『人』に着目する」ことです。
VOCの「声」そのものではなく、VOCを発信する人のペルソナ像を読み解き、分析するという方法です。
上の図を例に説明すると、「手続きが簡単でスムーズに進むことを望む」という「声」が全体の何%あるかを見るのではなく、顧客の30%を占める「ペルソナA」という人物像のうち、36%の人が「手続きが簡単でスムーズに進むことを望む」というデータの見方ができるようになります。
この方法を取り入れることで、より影響範囲が大きくインパクトの大きいVOCが何かを見極め、施策の判断や経営判断がしやすくなると考えています。
・VOCを発信する人のペルソナ像を捉える「AIVOC(アイボック)」とは
では、そのためには具体的に何をすればいいのでしょうか?
トランスコスモスでは、VOCを発信する「人」を定量的に把握するための生成AIのプロンプト「AIVOC(アイボック)」を用い、顧客のペルソナ別の分類と割合を算出しています。さらに、各ペルソナに分類された顧客がどのようなニーズを持っているのかを分析します。
定性的なコメントについてもペルソナごとに注目すべきものをピックアップすれば、従来よりもスムーズにニーズが掴めるでしょう。
・顧客のペルソナ像を捉える3ステップ
「AIVOC」を活用して顧客のペルソナ像をとらえる際は、以下の3ステップで進めます。
ステップ1:Big5理論に基づく性格分析を行い、その発信をする“人となり”を描写する |
順番に説明します。
ステップ1:Big5理論に基づく性格分析をかけ その発信をする“人となり”を描写する 「Big5理論」という性格分析の手法を用い、生成AIに分析させます。 |
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ステップ2:AIOアプローチによる27項目のライフスタイル分析を行い、ペルソナ像を描く 次に、ペルソナのライフスタイル分析を行います。 |
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ステップ3:ペルソナ像が持つニーズを分析 最後に、これらの情報を紐づけることで、このペルソナが持つニーズを抽出できるようになります。 |
この方法は、VOCの一部ではなく全量を分析できるのが特長です。生成AIを活用することで、人力では難しかった「より確からしい高精細なペルソナ像とニーズ」を掴めるのです。
アイデア2:高速・ローコストで場数をこなす
2つ目のアイデアは、「高速・ローコストで場数をこなす」ことです。
VOCを収集し活用できる状態にするためには莫大な時間とコストがかかると思われがちですが、コストを抑えて素早くコンパクトに回数をこなすことも重要です。
たとえば、VOCを収集する際に、新たな対象者を見つけてアンケートをとるのではなく、既存の顧客資産をリサーチに活用する、分析には生成AIを利用する、といった方法を選択することで高速・ローコストでのVOC活用が実現可能です。
この方法でトライアンドエラーを繰り返すことで、自社ではVOCをどのように活用できるのかを見出していけるはずです。
では、具体的に考えてみましょう。
上の図は、VOCをもとにしたカスタマージャーニー設計の工程を図式化したものです。
青枠内の「ペルソナ・ニーズ分析」に生成AIを活用することで、高速・ローコストで工程を補強することが可能です。
500件のコメントに対するVOC分析の全作業時間を比較したところ、人力で行った場合の約40時間に対して、生成AIを組み込むことで約20時間まで短縮することができました。
特に注目したいのは、「ペルソナ把握」「ニーズ把握」「VOC把握」といった工程にかかる時間が、50%短縮されたことです。
これにより、専任者がいなくても業務の合間にVOC分析ができるようになるほか、分析する回数を増やしたり、より手軽にVOC分析を始めることが可能になると考えます。
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