
「中小企業にもDXって必要なの?」
「わが社でもDXを行いたいけれど、何をどうすればいい?」
中小企業の経営者やIT担当者で、そのような疑問や悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。
「DX(=デジタルトランスフォーメーション)」というと、大企業が大きな予算をかけてするものと思われがちですが、実は中小企業にとっても必要な取り組みです。多くの企業ではDXを推進することによってビジネスモデルを変革し、競合他社から抜きん出ることができるようになるでしょう。
この記事では、DX推進を検討している中小企業が知っておくべきことをまとめました。
◎中小企業にDXが必要な理由 |
最後まで読めば、中小企業のdxについて知りたいことがわかり、自社でどのように進めるべきか検討できるでしょう。この記事で、あなたの会社がDXを成功させられるよう願っています。
1.いま、中小企業にこそDXが必要
しかし、そんなことはありません。「中小企業にこそDXが必要」と言われているのです。
一方で、「すべての中小企業に必要なわけではない、不要なケースもある」という声もあります。
この章ではまず、中小企業におけるDXの必要性や現状について、じっくりと考えてみましょう。
1-1.中小企業にDXが必要な理由
中小企業にDXが必要な理由を端的に言えば、大きく以下の2つになるでしょう。
・企業として競争力を高め、競合他社から抜きん出るため |
この2点はDXの目的と深く関わっています。
そこでまず、「DXとは何か」簡単に振り返ってみましょう。
【DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義】 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」 ─── 経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」より引用 「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」 ─── 総務省「令和3年版 情報通信白書」より引用 |
つまりDXの目的は、新しい製品・サービス・ビジネスモデルの創出によって、市場競争でリードすることです。
その点中小企業は、「新しいことへの取り組みやすさ」とそのための「意思決定の速さ」で大企業よりアドバンテージがあります。言い換えれば、DXにより取り組みやすいのは中小企業のほうなのです。
一般的に、中小企業は大企業よりも競争力において劣るケースが多いと言われます。
その「弱点」である競争力を高めるためにはDX化が有効で、実際にDXに取り組んだ中小企業の8割以上が何らかの成果を得ています。これについては、「DXで成果が出ている中小企業は「82.3%」」で説明します。
このように、「中小企業ならではの強み=小回りが効くこと」を活かし、「中小企業の弱み=競争力の弱さ」を克服することができるのが「DX=デジタルトランスフォーメーション」なのです。
1-2.DXが不要な中小企業もある
すべての中小企業がDXに取り組むべき、とは言い切れません。
「わが社はあえてDXに取り組まない」という企業があってもいいのです。
例えば、「自社の課題は業務効率化や製品改良であって、ビジネスモデルの変革などは必要ない」という場合は、DXではなく、顧客管理や在庫管理などの一部業務をITツールで行う「デジタイゼーション」だけを行う、という選択肢も考えられます。
実際にDXを推進している中小企業でも、業種によってその成果には差があるようです。
独立行政法人 中小企業基盤整備機構による「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」では、DXに取り組む日本の中小企業に対してその成果をたずねたところ、業種別に以下のような回答がありました。
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」
製造業はDXの成果を比較的強く感じていますが、卸売業では「成果が出ている」という回答はありません。この調査だけでは「卸売業にはDXは必要ない」とは言えませんが、業種ごとにその効果に差があることはうかがえます。
つまり、「中小企業にはDXが向いているし必要」ではありますが、一方で「自社にとってビジネスモデルの変革、創出が必要なのか」「何のためにDXするのか」をよく検討した上で、不要だと判断すれば、あえてDXしなくてもよいのです。
1-3.中小企業におけるDX推進の現状
では、実際に中小企業におけるDXへの取り組みは、どの程度進んでいるのでしょうか?
DXに取り組んでいる中小企業はわずか「13.8%」
総務省は、2021年に「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」(株式会社 情報通信総合研究所による請負)の報告書を発表しました。
それによると、日本企業における「DXの取り組み状況」は以下のようでした。
【DXの取り組み状況】
出典:総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負 報告書」
これを見ると、大企業ですでにDXに取り組んでいるのは42.3%であるのに対して、中小企業では13.8%と、大企業の3分の1以下しかありません。
また、今後も取り組む予定がないのは、大企業で39.5%なのに対して中小企業では68.6%にものぼります。
DXで成果が出ている中小企業は「82.3%」
一方、DXに取り組んでいる数少ない中小企業の成果については、こんなデータもあります。
独立行政法人 中小企業基盤整備機構が2022年に発表した「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」から、「DXの成果状況」です。
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」
これによると、DXに取り組んでいる中小企業のうち実に82.3%は何らかの成果を得ています。
取り組む企業は少なくても、実際に取り組めばメリットを得られる確率は高いのです。
ちなみにこれを従業員規模別でみてみると、以下のようになっています。
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」
これを見ると、従業員20人以下の企業でも8割以上はDXの成果が出ていることがわかるでしょう。
つまり、事業規模にかかわらず、中小企業がDXに取り組むことの意義は高いのです。
2.中小企業が今すぐ導入すべき3つのDX
では、中小企業がDXに取り組む場合、どのようなことが可能でしょうか?
優先度高く導入してほしいのは、以下の3分野です。
・マーケティング、営業活動 |
2-1.マーケティング・営業活動のDX
第一に、マーケティング業務にDXを導入することで、営業活動の効率化をはかることができます。
例えば、以下のような課題を抱えている企業は、この分野でのDXが必要といえるでしょう。
・これまで集めた顧客データをうまく活用できていない |
これらの課題をDXで解決するには、顧客情報をクラウドシステムで一元管理、社内で共有することが有効です。
それにより、案件の進捗状況を誰でもリアルタイムで把握することができるため、顧客ごとに最適なアプローチが可能になりますし、リモートワークもスムーズになるでしょう。
また、これまでの営業活動をデータ化、分析することで、見込み度の精度が上がり、受注率の向上にもつながります。
ノウハウも見える化されるので、営業担当者のスキル平準化、収益の最大化も期待できるでしょう。
2-2.カスタマーサービスのDX
次に、カスタマーサービスのDXです。
中小企業の多くは、カスタマーサービスに関して以下のような課題を抱えています。
・問い合わせ件数に対して人手が足りない |
これらの課題に対しては、以下のようなDX施策が有効です。
・ボイスボット、AIチャットボットを導入し、自動応答、自動受付で対応する 簡単な問い合わせにはAIチャットボットが回答するため、オペレーターの対応件数を減らせる ・FAQ(よくある質問)ページを作成、顧客の自己解決手段を充実させる 顧客がWEB上で問題を自己解決できるようになり、問い合わせ件数を減らせる |
これらのDXを実施することによって、少人数でも顧客満足度の高いカスタマーサービスを実現できるでしょう。
カスタマーサービスをDXしたいなら、トランスコスモスの「AIエージェント」がおすすめ |
「AIエージェント」は、手軽にコンタクトセンター(コールセンター)を自動化できるサービスです。 お問い合わせ窓口の仕組み(システム+運用)一式を、サブスクリプションモデル(月額定額制)でご提供します。 ◎音声AIの自動応答やAIチャットボットなど、最新のコンタクトセンターサービスが利用できます。 「コストをかけずにコンタクトセンターを開設したい」 といった場合は、ぜひ「AIエージェント」をご検討ください。 |
2-3.管理部門(総務/人事/経理など)のDX
もうひとつは、総務や人事、経理といった管理部門のDXです。
これらの業務は、実はDXと相性がよく、中小企業が取り組みやすい分野だといえます。
例えば、以下のような施策が考えられます。
・請求書、契約書などをデジタル化する |
契約書の取り交わしや稟議などをWeb上で完結できるようになれば、業務工数を削減できますし、書類を電子化して管理することで、オフィスのペーパーレス化も実現できるでしょう。
中小企業がDXに取り組む際には、まずシンプルで成果の出やすい管理部門から始めるのもひとつの方法です。
3.中小企業がDXに成功した事例
中小企業にとってDXが有効であることがわかったところで、実際にDXを成功に導いた中小企業の事例を紹介します。
これらは、経済産業省が2021年より中堅・中小企業のDXモデルケースとなるような優良事例を選定している「DXセレクション」のグランプリを受賞した事例です。
ぜひ参考にしてください。
※出典:経済産業省「DXセレクション2023」
3-1.株式会社フジワラテクノアート:工数・事務作業・ミスの削減、納期短縮など成果多数
株式会社フジワラテクノアートは、岡山県岡山市で醤油・味噌・日本酒・焼酎等の醸造食品を製造する機械・プラントメーカーです。
従業員数149名、資本金3,000万円、「『喜びと感動の価値』提供」を企業理念としています。
DXを推進するにあたっては、「醸造を原点に、世界で『微生物インダストリー』を共創する企業」を目指し、「『微生物のチカラを高度に利用するものづくり』を様々なパートナーと共創し、心豊かな循環型社会に貢献する」というビジョンを掲げました。
そのための具体的な取り組みは以下です。
・部門横断の委員会で自社主導でDXに挑戦 |
ただ、創業90年の歴史ある企業のため、ベテラン社員も多く従業員のITリテラシーが高くなかったこと、DXの必要性とビジョンへの理解がすぐには得られなかったことなど、苦労もあったそうです。
それに対しては、経営者が「目的はビジョン達成であり、DXは手段である」ことを繰り返し訴えたり、DX推進委員会のメンバーが各部署のベテラン社員に何度でもていねいな説明を試みたりすることで、徐々に理解度を上げていきました。
また、外部のベンダーなどに頼らず、自社主導でDXを推進しているのも特徴で、その結果、従業員が自発的にスキルを学んだり資格試験に挑戦するなど、デジタルスキルが向上したといいます。
取り組みから3年間で、以下のような成果を上げ、DXセレクション2023のグランプリに選出されました。
・21システム・ツールを導入して全工程が進化、ビジョン実現に向けた新たな価値創造のための業務により時間を費やせるようになった |
4.中小企業におけるDX 7つのメリット
ここまで、中小企業がDXに取り組むことの必要性について解説しました。
しかし、「わが社にとってどんな効果が期待できるのか、具体的にイメージできない」という人もいるでしょう。
そこであらためて、中小企業がDXに取り組むメリットを挙げてみます。
それは主に以下の7点です。
・業務を効率化し、既存ビジネスの生産性を向上させることができる |
4-1.業務を効率化し、既存ビジネスの生産性を向上させることができる
まず最も大きなメリットは、「業務の効率化、生産性の向上」です。
これまで人力で行っていた作業を自動化したり、非効率だった業務プロセスを見直し、デジタルツールを導入したりすることで、生産性が上がると同時に、業務の工数削減、人的リソースの節約などが期待できます。時間や人手に余裕ができるため、コアビジネスにより注力できるようになり、結果として業績拡大にも繋がるでしょう。
実際に、前出の総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」(株式会社 情報通信総合研究所による請負)の報告書では、以下のような統計データが出ています。
【日本企業がDXに取り組むことによる具体的な効果】
出典:総務省「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」
これを見ると、中小企業がDXによりもっとも成果を出しているのは「業務効率化・コスト削減」です。
また、「既存製品・サービスの高付加価値化」「既存製品・サービスの販路拡大」にも2割前後の企業が成果を上げています。
ただ、デジタル技術によって業務を効率化しただけでは、DXとは言えません。それは単なる「デジタイゼーション」「IT化」です。
DXとは、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競合他社から抜きん出ることです。
これについては、次項から説明していきます。
4-2.新たなビジネスを創造できる
2つめのメリットは、「新たなビジネスの創造」です。
DXを行うと、企業には顧客データなど膨大なデジタルデータが集まるようになります。
それをデジタルツールによって管理、分析することで、消費者ニーズをより詳細に捉えることができ、それをもとに新たなサービスや製品を生み出すことが可能になるでしょう。
例えば、コンタクトセンター(コールセンター)の場合を考えてみましょう。
これまでオペレーターによる電話での問い合わせ受付だけを行っていたセンターがDX化されたとします。
簡単な質問であれば、FAQページで顧客自身が自己解決するか、あるいはチャットボットが自動回答し、そのやりとりはすべてデータ化されます。また、複雑な質問は電話でオペレーターが回答しますが、そのやりとりも音声認識技術によって自動でテキスト化され、同様にデータとして蓄積されます。
こうして集められた膨大なVOCデータは、分析ツールによって細かく精度高く分析されるため、企業は消費者のニーズを深く知ることができ、それをもとに新たな製品やサービス、ビジネスを開発することができるのです。
4-3.競合他社に対して優位性を高めることができる
3つめは、DXによって「ビジネスの優位性」を高めることができる点です。
デジタル技術の導入によって業務プロセスを変革すれば、以下のようなメリットが生じます。
・サービスの提供スピードが向上する |
前述のコンタクトセンターの例で考えてみましょう。
オペレーターが電話だけで対応していると、電話口で長時間待たされたり、営業時間外で電話が通じなかったりといった不便がありますが、FAQやチャットボットなどを導入することで、顧客は24時間いつでもすぐにその場で課題を解決できるようになります。
サービスの提供スピードが上がるわけです。
また、あらかじめ設定されたわかりやすい回答をチャットボットが提示したり、電子機器の不具合を遠隔サポートで解決したりすることができるため、サービスの品質も向上します。
応対の自動化によってオペレーターが直接対応する問い合わせ件数も減りますので、人件費などのコスト削減も可能です。
さらに、前項で挙げたVOCの活用によって、競合他社にない製品やサービスを開発、提供することもできるでしょう。
このように、さまざまな面で競争力を高めることができるというわけです。
4-4.顧客ロイヤルティの向上が期待できる
4つめのメリットとして新たなビジネスの創造、優位性の向上は、「顧客ロイヤルティの向上」にもつながります。
顧客ロイヤルティとは、顧客が特定の企業の製品やサービス、あるいはブランド自体に対して抱く信頼や愛着のことです。これが高い顧客は、その企業の製品やサービスを継続的に利用し、まわりにも勧めてくれるなど、企業にとっては大切な「ロイヤルカスタマー」となります。
前述したように、DXによって顧客データは詳細に管理、分析できるようになります。
たとえば「年代別」「性別」といった大きなカテゴリーだけでなく、顧客一人ひとりのデータを個別に分析することも可能です。
顧客がこれまで利用した製品やサービス、問い合わせの履歴、サイトの閲覧履歴などのさまざまなデータを踏まえて、一人ひとりにより適したアプローチを行えば、顧客ロイヤルティが高まり、売上アップやブランド力強化などにつながるでしょう。
顧客ロイヤルティについては別の記事で解説しています。こちらも参考にしてください。
4-5.働き方改革に対応できる
さらに、働き方改革への対応も可能です。
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、テレワークを導入するなど働き方を見直した企業も多いでしょう。ただ、中小企業の場合は「大企業のようにみんなを在宅勤務にしたり、多額のコストをかけてテレワーク環境を整えたりできない」というケースもあるはずです。
しかし、近年は低コストで利用できるITツールも増えてきたため、中小企業でもDXに取り組みやすくなりました。
WEB会議やチャットツールなどを活用すれば、どこにいても業務が可能ですし、クラウドサービスでデータ管理を一元化することで、オフィスのペーパーレス化、情報共有も簡単です。
4-6.人材不足が解消される
働き方改革が進むと、「人材不足の解消」にもつながります。
これまでは、優秀な人材であっても出産・育児、介護などで休職や退職をせざるを得ないケースは多々ありました。まずこれらの人たちが、DX化によって在宅でも働けるようになります。
また、地方や海外の人材とも連携できるので、働き場所にとらわれずに人材を採用できるでしょう。
多様な働き方が実現すれば、優秀な新卒を獲得できたり、離職率が下がったりといった効果も期待できそうです。
中小企業であっても、「働き方の自由度が高い」「DX化が進んで業務が効率化されている」という今の時代に即した魅力があれば、優秀な人材が集まってくる可能性が高まるはずです。
4-7.BCP対策ができる
最後のメリットは、「BCP対策」です。
「BCP」とは「Business Continuity Plan=事業継続計画」の略で、「自然災害や感染症の流行、通信・インフラの断絶など不測の事態が発生した際に、事業を中断することなく継続できるよう、あらかじめ対策を講じておくこと」を指します。
DX化を進めている企業は、同時にこのBCPも実現できるのです。
例えば大地震が起きて、社内の設備がダメージを受けたとしましょう。
従来であれば、保存していた紙資料やデータの保存メディアなども失われてしまい、設備やデータの復旧まで時間がかかったり、必要な人員が出社できずに業務が停止したりといった被害が想定されます。
一方DX化されていれば、データや業務システムはクラウド上にバックアップが保存されていて無事、従業員もPCとインターネット環境さえあれば、自宅でもどこでも業務に携わることが可能です。
特に中小企業の場合は、長期間の業務中断は経営を大きく左右します。
このリスクを最小限に止めるためにも、DXは有効なのです。
5.中小企業のDXが進まない原因と解決方法
このように、中小企業にとって多くのメリットがあるDXですが、実際は「DXに取り組んでいる中小企業はわずか「13.8%」」で説明したように、取り組んでいる企業はまだわずかです。
それはなぜでしょうか?
原因は主に以下の5つが考えられます。
・社内でのDXに対する理解が不足している |
課題を解決する方法もあわせて説明します。
5-1.社内でのDXに対する理解が不足している
第一に考えられるのは、「DXに対する理解不足」です。
前出の独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」に、以下のようなデータがあります。
中小企業1,000社に「DXに対する理解度」をたずねたところ、「理解している」と言い切ったのはわずか7.8%、「ある程度理解している」でも29.2%にとどまりました。
逆に「理解していない」「あまり理解していない」「わからない・どちらともいえない」は合計で63.0%、6割以上は理解しているといえない状況なのです。
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」
ちなみに「従業員規模別」「業種別」に分けると以下のようになっています。
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」
小さい企業ほど理解度は低く、業種では情報通信業以外は「理解している」「ある程度理解している」の合計が50%を超えません。
理解がなければ、「積極的にDXを推進しよう」という社内の空気も醸成されにくいでしょう。
【DXに対する理解を深めるには】 DXを進めるには、まずは社内全体で「何のために行うのか(=DXの目的)」ということへの理解を深める必要があります。 そのためには、社内に「DX推進部」などのチームを作り、担当者を決めましょう。 また、経営陣が率先してDXの意義や目的を理解し、DXによってビジネスにどんな変革をもたらしたいのか、どんなビジョンを描くのかを具体化することも求められます。 これについては、「6.中小企業がDXを進める4ステップ」で詳しく説明しますので、そちらも参照してください。 |
5-2.DX人材の確保が難しい
2つ目の問題は、「DX人材の不足」です。
日本では、以前からIT人材不足が叫ばれていて、それは今後ますます加速すると予想されています。
中でも、AIやビッグデータ、IoTといった「先端技術領域」の人材不足は顕著で、DXもこれに含まれます。
原因は、IT市場の成長や技術革新のスピードが速すぎて人材育成が追いついていないこと、それに対してエンジニアの労働環境、労働条件が改善されないことなどさまざまです。
そんな中で、DXに取り組む企業は急増しているにもかかわらず、優秀なDX人材は少ないため、企業間で奪い合っているのが現状です。
【DX人材を確保するには】 中小企業が優秀なDX人材を確保するのはかなり困難です。 そのため、中長期的な視点を持って、以下の2つのアプローチを並行で行いましょう。 ・短期的取り組み:外部人材の活用 ・中長期的取り組み:社内での人材育成 |
5-3.DX化に予算を割けない
3つ目は予算不足です。
DXは、業務プロセスやビジネスモデルを根本的に変革させる取り組みですので、大きなプロジェクトになります。
「ITツールを導入するだけ」といった単純な「デジタイゼーション」などと比較して、コストも膨大になりがちです。
そのため中小企業では、「取り組みたいけれど予算がない」というケースも多いようです。
これは、特に規模の小さい企業ほど深刻で、前述の独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」では、従業員20人以下の企業で「DXに取り組むにあたっての課題」の第1位に「予算の確保が難しい」ことが挙げられています。
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書」
【DXの予算不足を補うには】 予算不足を補うには、例えば以下のような方法が考えられます。 ・スモールスタートする ・補助金を利用する これについては、「7.中小企業がDXを成功させる5つのポイント」で詳しく説明しますので、そちらもぜひ読んでください。 |
5-4.業務が属人化している
中小企業ならではの課題としては、「業務の属人化」も見逃せません。
中小企業は大企業に比べて従業員数が少ないため、ひとつの業務を担当する人数も限られます。
中には「この業務は◯◯さんがひとりで何年も担当していて、他の人にはわからない」というケースもあるでしょう。
DXは、社内全体の業務プロセスを見直し、課題をデジタル技術で解決、新しいビジネスモデルを創り出すものです。そのため、現在の業務内容やプロセスなどをすべて把握して課題を洗い出し、それらを全体的に改革する計画を立てる必要があります。
しかし、社内で共有されていない属人化された業務があると、その部分の課題や改善を検討することができず、全社的なDXの妨げになる恐れがあるのです。
【業務の属人化を防ぐには】 業務の属人化は、DXを妨げるのはもちろん、担当者が急に休んだり退職したりといった場合に混乱を生む恐れもあるものです。 そのため、常日頃からひとつの業務に複数人であたる、情報を社内に共有するといった配慮が必要でしょう。 もしすでに属人化してしまった業務があれば、ただちに他の従業員にも共有し、DX計画から漏れないようにしていくとよいでしょう。 |
5-5.レガシーシステムから脱却できない
最後に、レガシーシステムが問題になっているケースも多そうです。レガシーシステムとは、過去に導入したもののすでに古くなってしまったITシステムを指す言葉です。
中小企業の中には、むかし大きな予算を割いて導入したシステムを長年使い続けている例も多いでしょうが、これがDX導入の障壁になりかねません。
レガシーシステムは技術的に古く、今後はサービスが終了したり、メンテナンスできる人がいなくなったりする恐れがありますし、長年使い続けているうちにシステム内に「どうなっているのかわからない」、いわゆる「ブラックボックス化」した部分が生じていることもあります。
また、セキュリティ面でも現在の基準に及ばないかもしれません。
これをDXで改善しようとしても、現在の最先端技術には対応できないため、システム自体を刷新する必要があります。
が、「長年使ってきてこれに慣れている」「ブラックボックスになっている=わからない部分があるので、新システムに移行できない」などの理由で、脱却できずに使い続けているケースがあるのです。
【レガシーシステムから脱却するには】 レガシーシステムからの脱却は、すべて新しいものに入れ替えなくても可能です。以下のような方法もあります。 ・モダナイゼーション:レガシーシステムのデータやプログラムは残し、システムを作り替える 自社のレガシーシステムの状態や、脱却にかかるコストなどを踏まえて、適した方法を検討してください。 |
6.中小企業がDXを進める4ステップ
6章では、中小企業がDXを進めるにはどうすればいいか、基本的な流れを解説します。
経済産業省が、DX推進のために経営者が実践すべきことをまとめて「デジタルガバナンス・コード2.0」という要諦集を出しているのですが、それを中小企業向けにまとめ直した「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」があります。
その中で、DX推進のプロセスが、以下の4ステップで説明されているのです。
出典:経済産業省「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」
このプロセスのポイントは、最初の2ステップは経営陣が中心になって進め、あとの2ステップは現場で進めるという点です。
では、わかりやすく説明していきましょう。
6-1.ステップ1【経営陣】意思決定
最初にすべきことは、経営陣が「DXに取り組む」という意思決定をすることです。
自社にとってDXが必要か、よく検討した上で決定しましょう。
そして決まったら、全社にそれを通達します。ここで「DXは経営層が決めた全社的なプロジェクトであること」をトップダウンで社内に徹底してください。
その上で、経営ビジョンや戦略を策定します。
DXで何を目指すのか、どのように取り組むのかなどを検討し、ロードマップなどの形に落とし込みましょう。
また、DXの推進をリードするチームを結成し、社内の組織図に組み込みます。DX人材が不足していれば、外部の専門家をアサインするといいでしょう。
そしてこれらの情報を、社内全体で共有してください。
6-2.ステップ2【経営陣】全体構想・意識改革
次に、経営陣からDX推進チームに指示して、DXの全体像を検討します。
DXは単に新システムを導入するのではなく、社内全体の業務プロセス、ビジネスモデルを変革する取り組みです。そのためにはまず、現在社内の各部署が抱えている課題を洗い出し、何をどう変革させるべきかを決定します。
また、これと並行して社内全体の意識改革も行います。
「DXとは何か」「何のために行うのか」「どんなビジョンを目指すのか」を全社員が理解し、共有することが必要です。
例えば「新しいシステムを導入するだけだろう」「自分の部署にはあまり関係なさそう」といった誤認識や無関心があれば、きちんと説明して理解を得る必要があります。
そして、社内全体で「DXを推進する」「DXによって新たなビジネスモデルを生み出す」という活発な雰囲気を醸成しましょう。
さらに、DXによって新たにツールやシステムなどを導入するための土台作りも欠かせません。
レガシーシステムがあれば整理して脱却の手はずを整える、システム環境を用意するなどです。
ここまでは、いわばDX化の準備段階と言えるでしょう。
6-3.ステップ3【DX担当者】本格推進
ここからは、経営陣ではなくDX推進チームの責任者やメンバーが中心となって進めていきます。
前段階で定めた内容に従って、業務プロセスを変革したり、新たなシステムを構築したり、これまで十分に活用されなかったデータが活用できる仕組みを作ったりと、DXを本格的に推進していきましょう。
ただ、注意したいのは、一気にすべての課題に取り組まないということです。
まずは優先順位をつけて、順番にDX化していってください。
もし失敗しても、ダメージが少なくリカバーしやすいですし、成功すればそれをナレッジやノウハウとして蓄積し、次の段階に活かすことができるからです。
6-4.ステップ4【DX担当者】DX拡大・実現
社内でのDXが成功したら、そのノウハウやナレッジをもとに、DXの範囲を拡大していきます。
一例ですが、営業やマーケティングといった顧客とのタッチポイントに関わる部門で、顧客データを活用して新たなサービスを提供するなど、最終的には、サプライチェーン全体をDXによって変革し、競争力を高めていきます。
そして、DXはここで完結しません。
デジタル技術は日進月歩ですし、競合他社もDXによって新たなビジネスモデルを提供するはずです。
そういった状況の変化に応じて、DXによる変革を続けていくことになるでしょう。
7.中小企業がDXを成功させる5つのポイント
さて、中小企業がDXを進める方法がわかりましたが、ただ漫然とこの通りに進めれば成功するわけではありません。そこには成功のコツ、ポイントがあります。
その主なものを5点、解説していきます。
・具体的なゴールを設定する |
7-1.具体的なゴールを設定する
DXを成功に導くためにもっとも重要なのは、具体的なゴールを設定することです。
DXによって自社のビジネスをどのように変革するか、また自社にはどんな課題があり、デジタル技術によってそれをどのように解決するか、明確に定めた上で取り組みましょう。
ここで心しておくべきは、「DXは手段であって目的ではない」ということです。
よく、「新しいシステムを導入すること」や「それによって業務を自動化すること」など、DX自体が目的化してしまうケースがありますが、そうならないよう注意してください。
目的はあくまでも、ITシステムやツールで業務を自動化し、「事業に変革をもたらすこと」「その結果、ビジネスの優位性を高めること」です。
経営陣も従業員もそのことをよく理解し、同じ目標、同じゴールを共有しましょう。
7-2.スモールスタートする
また、スモールスタートもポイントです。
中小企業の場合、最初から全社的にDXを行おうとすると、コスト負担が大きいですし、従業員も対応しきれない恐れがあります。
それよりも、まず身近な業務のプロセスをDXによって改善するところから始めましょう。
例えば、バックオフィスの業務から取り掛かり、それが成果を上げれば徐々にDXの範囲を拡大していくといった方法です。進め方に問題があれば、初期の段階で改善することで、ダメージを小さくとどめることができますし、従業員も抵抗感少なく慣れていくことができるはずです。
7-3.経営陣をはじめ社内全体の意識改革をはかる
「6-2.ステップ2【経営陣】全体構想・意識改革」でも触れましたが、「意識改革」も重要です。
DXは、ビジネスモデル自体を変革するものなので、全社一丸となって取り組む必要があります。
経営陣も従業員も、これまでの古いビジネスモデルやレガシーシステムにとらわれずに、大きな変革を受け入れる意識づくりが求められます。
そのためには、「このDXは、単に業務を効率化するためだけのものではないこと」「具体的な目的のために取り組むこと」を全員に徹底してください。
7-4.外部の専門家と連携する
また、外部の専門家との連携が必要なケースも多くあります。
前述したように、DX人材は不足していて、中小企業にとっては十分な人材確保はハードルが高い問題です。それを補うには、DXのナレッジと実績が豊富な外部のITベンダーやITコーディネーターなどに協力を依頼するといいでしょう。
社内の課題やDXの目的について、もっとも深く理解しているのは企業側であるため、DX推進チームが外部と密に連携して進める必要があります。加えて、プロジェクトを進める中で、外部の専門家が持っているノウハウやスキルを学び、社内に蓄積していくこともできるはずです。
7-5.中長期的な視点を持つ
最後のポイントは、中長期的な視点です。
DXは、新しいシステムを短期間に導入すれば完結する、というものではありません。
ビジネスモデル自体を変革するのですから、その成果が得られるまでにはある程度の期間が必要になります。
取り組みを始めてから定めたゴールに達するまで、数年、あるいは10年といった中長期的なロードマップを作成して進めてください。
その計画の中に、社内のDX人材を育成することも含めておけば、DX化はよりスムーズに推進されるようになるでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?
中小企業のDXについて、知りたかったことがわかったかと思います。
ではあらためて、重要なポイントをまとめましょう。
◎中小企業におけるDX 7つのメリット
・業務を効率化し、既存ビジネスの生産性を向上させることができる |
◎中小企業がDXを進める4ステップ
ステップ1 意思決定 |
◎中小企業がDXを成功させる5つのポイント
・具体的なゴールを設定する |
この記事で、あなたの会社がDXを成功させられるよう願っています。