「自治体DXとはどういうもの?」
「自治体DXを効果的に推進するためには、どうしたらよい?」
自治体DXについて、このような疑問をお持ちではありませんか?
自治体DXとは、デジタル技術を活用して行政サービスの質向上を図ることです。「誰もが幸せに暮らせる社会の実現」というビジョンに向けて、行政サービスを変革することを意味します。
DXの推進は政府の方針であり、住民にとって身近な行政を担う自治体には特に積極的な取り組みが求められています。つまり、もはや自治体DXがわからない・できないと言える状況ではなくなっているということです。
しかし自治体DXについては、政府から関連資料が数多く公表されているため、それら全てに目を通して理解を深めるにはかなりの労力が必要になるでしょう。
そこでこの記事では、政府が公表している自治体DX資料を軸として、以下の内容をわかりやすく解説します。
▼自治体DXとは |
この記事を読むことで、自治体DXとは何か・どのように進めるべきなのかが理解できます。自治体DX推進し効果的な施策を講じるために、ぜひ最後までお読みください。
1.自治体DXとは
最初に、自治体DXとは何かということを確認しましょう。
この章では、自治体DXを理解するために必要な以下の内容について解説します。
・自治体DXという言葉の意味 |
1-1.デジタル技術を活用して行政サービスの質向上を図ること
自治体DXとは「デジタル技術を活用して行政サービスの質向上を図ること」です。
政府は、デジタル社会実現のため自治体には以下の取り組みが求められると述べています。
・ 自らが担う行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させる ・デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を行政サービスの更なる向上に繋げていく |
そもそもDXとは、単なる業務のデジタル化ではありません。DXの神髄は、デジタル技術を活用してサービスやビジネスモデルを変革することです。
企業におけるDXは変革によって競争上の優位性を確立することを指しますが、自治体では上記のように、住民のために行政サービスの質を向上させる変革がDXにあたります。
1-2.「誰もが幸せに暮らせる社会の実現」というビジョンを目指す
自治体DXが目指すビジョンは、「誰もが幸せに暮らせる社会の実現」です。
2020年12月、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が閣議決定され、目指すべきデジタル社会のビジョンとして“デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~”が示されました。
ビジョンの実現には官民一体となって取り組むことが必要になりますが、住民にとって身近な行政を担う自治体の役割が特に重要であるといわれています。
つまり自治体は、誰もが幸せに暮らせる社会の実現に向けて、積極的にDXを推進していくべき立場にあるといえるのです。
1-3.新型コロナウイルス感染症を契機に推進されるようになった
自治体DXが推進されるようになった背景には、2019年に始まった新型コロナウイルス感染症の流行があります。
新型コロナウイルス感染症への対応において、各種手続きのデジタル化の遅れや、地域・組織間での横断的なデータ活用が不十分であるなどの課題が明らかになったのです。
これを受けて、2020年に行政機関におけるDX施策の指針となる「デジタル・ガバメント実行計画」が改訂され、2021年には計画実行の中心的な役割を担うデジタル庁が発足しました。
2023年現在は、デジタル・ガバメント実行計画の施策を具体化し、関係省庁による支援策などを取り纏めた「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】」(2022年改訂)をもとに、各自治体がDXに取り組んでいます。
2.自治体DXの現状
自治体DXとは何かが理解できたところで、現時点でどの程度推進されているのかということを見てみましょう。
この章では、自治体DXの現状を知ることにつながる以下の内容について、解説します。
・自治体DXの推進状況 |
2-1.推進状況は自治体の規模によって異なる
自治体DXの推進状況は、自治体の規模によって異なります。具体的には、都道府県ではほぼ全ての自治体が取り組みを始めている一方で、市区町村ではまだこれからというところも少なくありません。
以下は、DXを推進するための全体⽅針を策定している自治体の割合(2022時点)を表したグラフです。
出典:⾃治体DX・情報化推進概要〜令和4年度地⽅公共団体における⾏政情報化の推進状況調査の取りまとめ結果~(総務省)
また以下は、DXを推進するための全庁的・横断的な推進体制を構築している自治体の割合(2022時点)を表したグラフです。
出典:⾃治体DX・情報化推進概要〜令和4年度地⽅公共団体における⾏政情報化の推進状況調査の取りまとめ結果~(総務省)
都道府県では90%以上の自治体がDX推進のための全体方針を策定し、体制も整備していますが、市区町村で同じように取り組めている自治体は半数に満たないということがわかります。
このことから、小規模な自治体ではDX推進に苦慮している可能性が高いといえるでしょう。
2-2.自治体DXには複数の障壁がある
自治体DXを推進する上ではいくつかの障壁があり、特に小規模な自治体ではその解決が難しいために取り組みが遅れてしまう場合があります。
自治体DXの障壁となることには、以下のようなものがあります。
・財源確保の難しさ |
財源確保の難しさ
1つ目の障壁は、財源確保の難しさです。
自治体DXでデジタル技術を活用するためには、システムの改変などに伴って相応の予算が必要になります。しかしその確保は簡単ではなく、実際に各自治体がDX推進上の課題として一番に挙げる内容なのです。
DXに充てられる財源があるかということに加えて、予算編成に対する住民の理解も求められるため、尚更難しいといえるでしょう。
【自治体DXに活用できる補助金】 自治体DXの財源確保が難しいという場合には、政府から補助金や特別交付税措置を受けるという対処法があります。 どのような取り組みをするかよって手続きや金額が異なるため、総務省のホームページで情報収集することをおすすめします。 |
デジタル専門人材の不足
2つ目の障壁は、デジタル専門人材の不足です。
DXを推進するためには、デジタル技術に関する専門知識を有し計画を牽引できるような人材が必要ですが、その確保が難しいのです。
人材の採用や育成における自由度が高い民間企業でも苦戦している状況なので、自治体でそう簡単に確保できないのは明らかでしょう。
自治体内で適任者を探すだけでは限界があるため、外部の人材を活用することも求められます。
根強いアナログ文化
3つ目の障壁は、根強いアナログ文化です。
DXの推進にあたっては業務や手続きのデジタル化が必要ですが、自治体には「紙に押印」に代表されるようなアナログ文化が定着しているケースが少なくありません。
それを変革していくにあたって、煩雑化や関係者の抵抗といった課題をクリアしなければならない難しさがあります。
自治体の管理層と職員・住民がDX推進の目的や必要性に対する共通認識をもち、協同して取り組もうという機運を高めることが求められます。
高齢者への対応
4つ目の障壁は、高齢者への対応です。
自治体のサービス利用者の年代は幅広く、デジタル技術活用の度合いもそれぞれに異なります。デジタル技術の活用を苦手とする人にとっては、DXが推進されると逆に不便になってしまう可能性もゼロではありません。
内閣府の調査によると、2020年時点でスマートフォンやタブレットといった通信機器を使用していない人の割合は、70歳以上で49.8%に上ります。
このように、高齢者では自治体DXへの適応が難しい場合があるため、どのように配慮していくかという点が課題になります。手続きのオンライン化と併せて通信機器、電子端末の操作をサポートする体制を整えるなど、複数の施策を同時進行しなければならないでしょう。
3.自治体DXで重点的に取り組むべき6つの事項
次に、自治体DXでは具体的にどんな施策を講じるのかを確認しましょう。
自治体DXの指針として政府が公表している「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】」には、重点的に取り組むべき事項として以下の6つが挙げられています。
それぞれの内容について、解説していきます。
3-1.自治体情報システムの標準化・共通化
自治体DXで重点的に取り組むべき事項の1つ目は、自治体情報システムの標準化・共通化です。
政府共通のクラウドサービス環境であるガバメントクラウド上で、基準に適合した情報システムを利用することによって、各自治体が共用できるようにする取り組みです。
【情報システムの標準化・共通化イメージ図】
出典:地方自治体によるガバメントクラウドの活用について(内閣官房IT総合戦略室)
これまでの情報システムは、各自治体が独自に管理していました。それが共通化されることによって、改修などにかかる負担が軽減し、情報のスムーズな活用による住民サービスの質向上が可能になります。
具体的には、以下の基幹系20業務にかかわるシステムを標準化・共通化されたシステムに移行することが政令で定められています。
1)住民基本台帳 |
3-2.マイナンバーカードの普及促進
自治体DXで重点的に取り組むべき事項の2つ目は、マイナンバーカードの普及促進です。
政府はマイナンバーカードを「デジタル社会のパスポート」だとして、2022年末にはほぼ全国民に行き渡ることを目指してきました。
総務省の発表によると、2023年9月末時点での普及率は72.5%ですが、マイナンバーカードがもつ本人確認・認証機能をデジタル社会の基盤として徹底的に利活用していくという方針に変わりはありません。
具体的には、健康保険証としての利用・運転免許証との一体化や、市町村施設の利用証とするなど、生活のさまざまな局面で「マイナンバーカード1枚をかざせば済む」という環境を作ることを目指しています。
マイナンバーカード普及促進のために、これまではマイナポイントの付与や出張申請受付などの施策が講じられていましたが、今後はマイナンバーカードの交付率を普通交付税における財政需要の算定に反映することが検討されています。
3-3.行政手続きのオンライン化
自治体DXで重点的に取り組むべき事項の3つ目は、行政手続きのオンライン化です。
特に住民の利便性向上に寄与する以下31の手続き(子育て関係15・介護関係11・被災者支援関係1・自動車保有関係4)を、マイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続きできるようにします。
【優先的にオンライン化を行う31手続き】
上記以外の各種行政手続きについても、以下のスケジュールを目標に積極的にオンライン化を進めるとしており、住民の利便性向上と職員の対応負担軽減が期待されています。
【行政手続きオンライン化のスケジュール】
例えば岡山県鏡野町では、各種申請・届出や補助⾦などの交付申請をオンライン化しています。書類の郵送請求にかかる⼿数料の⽀払いはクレジット決済に対応し、「スマホで完結」を実現した結果、窓⼝利⽤が減少するという成果を得ました。
3-4.AI・RPAの利用推進
自治体DXで重点的に取り組むべき事項の4つ目は、AI・RPAの利用推進です。
AIとは人工知能、RPAとは作業を自動化できるソフトウェアロボットのことであり、従来は人間が行っていた業務を一定範囲内で代行させることができます。
政府は、業務プロセスの見直しや情報システムの標準化・共通化などの根本的な対策を行った上で、AI・RPAを活用して定型的な業務の効率化を図るべきだとしており、以下のガイドラインを公表しています。
総務省の調査によると、2022年時点でAI・RPAを導入している自治体の割合は以下のようになります。
【AI導入済】 【RPA導入済】 |
また、その他の市町村では、導入済の割合に「実証中・導入予定あり・検討中」を含めると6割以上になるとされており、小規模な自治体でも導入に向けての取り組みが進んでいることがわかります。
例えば大阪府豊中市では、業務フロー⾒直しや電⼦化に加えてAIによる画像データのテキスト認識・データ入力作業などへのRPA導入を行った結果、業務時間が年間約10,400時間削減でき、職員1⼈あたりの時間外勤務状況も17.5%減少しました。
3-5.テレワークの推進
自治体DXで重点的に取り組むべき事項の5つ目は、テレワークの推進です。
テレワークは職員一人ひとりのライフステージに合った多様な働き方を実現できる「働き方改革の切り札」であり、災害発生時にも行政機能を維持する有効手段だとして、政府は積極的な導入をすすめています。
総務省の調査によると、2022年時点でテレワークを導入している自治体の割合は以下のようになります。
・都道府県:100% |
その他の市区町村では、2021年時点での導入率49.3%から増加がみられますが、未だ半数強に留まるというのが現状であり、課題の明確化と積極的な対策が求められるといえるでしょう。指針となる資料は以下の通りです。
3-6.セキュリティ対策の徹底
自治体DXで重点的に取り組むべき事項の6つ目は、セキュリティ対策の徹底です。
住民の個人情報や機密情報を扱う行政サービスでは、その漏洩を防ぐことが絶対的な義務になります。しかし、日本年金機構への不正アクセスによる個人情報流出(2015年)に代表されるように、サイバー攻撃のリスクが年々増しているのも事実です。
DXにはデジタル機器とインターネットの利用が不可欠であるため、どうしても情報漏洩のリスクが付き纏います。安全に推進するためには、強固なセキュリティ環境を整備することが求められるのです。
政府は、「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を参考にセキュリティ対策の見直し・徹底を行うよう推奨しています。
【自治体DXと併せて取り組むべき事項】 「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】」では、ここまでに解説した6つの事項に加えて、併せて取り組むべき事項として以下の3点を挙げています。 1)地域社会のデジタル化 2)デジタルデバイド対策 3)条例等の規制の点検・見直し |
4.自治体DXに取り組むメリット
政府の方針によって推進される自治体DXですが、取り組みを行うことにはどのようなよさがあるのでしょうか?自治体DXの目的明確化や士気向上のために、確認しておきましょう。
自治体DXに取り組むメリットには、以下のようなものがあります。
それぞれの内容について、解説していきます。
4-1.住民の利便性が向上する
自治体DXに取り組むメリットとしてまず挙げられるのは、住民の利便性向上です。
自治体DXによって、これまでよりも手軽に行政サービスを利用できるようになるからです。
たとえば希望の手続きが完全にオンライン化されていれば、窓口に出向く必要がありません。必要な情報が自治体間で共有されていれば、複数の手続きを1つの窓口で完結させることができます。
このように、自治体DXは行政サービスにおける住民の負担を軽減し、簡単便利な利用を後押しします。
4-2.業務の効率化につながる
自治体DXには、業務の効率化につながるというメリットもあります。
デジタル技術を活用することで、業務を省力化することができるからです。
たとえば、AI(人工知能)やRPA(ソフトウェアロボット)を用いて業務を自動化したり、行政サービスのオンライン化によって窓口対応の数を減らしたりできれば、少ない工数で業務を行うことができます。
工数が少なければ、同じ時間内に多くの業務をこなすことが可能になります。また、じっくりと取り組むべき業務に充てる時間が確保でき、成果も上がりやすくなるでしょう。
このようにDXは、自治体職員の業務負担を軽減することに役立つのです。
4-3.データの有効活用が可能になる
自治体DXに取り組むと、データの有効活用が可能になります。
多くのデータが一元管理されるようになり、簡単に参照や分析ができるからです。
たとえば、住民のデータを集約して最適なサービスを提案したり、地域特性や過去の評価といったデータから効果的な施策を予測したりという活用方法が考えられます。
客観的な根拠となるデータを活用するDXは、自治体に求められるEBPM(Evidence-based Policy Making :根拠に基づく政策立案)にとって欠かせないものであるといえるでしょう。
トランスコスモスの自治体DX支援事例 トランスコスモスでは自治体DXの総合的なサポートをご提供しており、それによって自治体DXのメリットを最大化することが可能になります。 2023年7月には、静岡県裾野市(村田 悠市長)と「自治体DXの推進に関する包括連携協定」を締結しました。 裾野市とトランスコスモスとの連携協定は、人と企業に選ばれるまちを目指して、最高の行政サービスを提供するためにデジタルを活用した業務改革に取り組み、「日本一市民目線の市役所」の実現に資することを目的としています。 具体的な連携は以下で、住民の利便性向上や業務の効率化といった自治体DXのメリットを後押しする内容になっています。 ・デジタルを活用した情報収集・分析など市民満足度の向上に関すること |
5.自治体DXを推進する上での注意点
自治体DXの推進は避けられないものですが、注意点も存在します。取り組みを始めたものの成果が得られないという事態を避けるために、おさえておきましょう。
自治体DXを推進する上での注意点には、以下のようなものがあります。
それぞれの内容について、解説していきます。
5-1.一定のリソースが必要
自治体DXを推進するためには、一定のリソースが必要になります。
DX推進にあたっては、デジタル機器の導入・システム改変にかかるコストや、計画実行を担う人材などを確保しなければなりません。
リソース不足の状態で進めてしまうと、推進計画を立てたものの頓挫してしまうという事態に陥る可能性があるのです。
自治体DXに取り組む際には、事前に必要なリソースを洗い出し、確実に準備をしましょう。
5-2.一朝一夕に成果を得ることは難しい
自治体DXの成果を一朝一夕に得ることは難しい、と理解しておくことも必要です。
短期間で成果を求めてしまうと、施策の可否を正確に判断することが難しくなるからです。
たとえば行政手続きのオンライン化を行ったのに、住民の利用率が伸びないとしましょう。この時点で施策が失敗したと考えるのは早計だといえます。
「1-1.デジタル技術を活用して行政サービスの質向上を図ること」で解説したように、自治体DXは単なる業務のデジタル化ではなく、行政サービスの変革なのです。短期的・場当たり的な取り組みでは実現しません。
そのため、一次的な結果ではなくその変化や住民の声などを注視しながら、継続的な取り組みを行い、包括的・長期的な視点で成果を評価することが必要になります。
6.自治体DXを進める4つのステップ
自治体DXへの取り組みに意欲が湧いたという方へ向けて、進めていく際の手順をご紹介しておきます。
政府は「自治体DX推進計画」を踏まえ、自治体が着実にDXに取り組めるよう「自治体DX全体手順書【第2.1版】」を公表しています。これによると、自治体DXの手順は以下の4ステップになります。
それぞれの内容について、解説していきます。
6-1.ステップ0:認識共有・機運醸成
最初のステップでは、自治体DXを推進する前提として組織内での認識共有・機運醸成を行います。
取り組み以前に重要な事項であり、取り組み期間中にも継続して実施する必要があるため、ステップ「0」と表現されています。
自治体職員一人ひとりがDXの意味や目的を理解し、利用者中心の行政サービス改革に向けて積極的に取り組もうという意識をもてるようにすることが重要です。
具体的には、組織内外の関係者でワークショップを開催したり、共通理解すべき内容を明文化したりすることが効果的です。
6-2.ステップ1:全体方針の決定
次のステップでは、自治体DXの全体方針を決定します。
自治体DXの全体方針は、DX推進のビジョンと工程表から構成されます。つまり、どんなビジョンに向かってどのように施策を講じていくかを定めたものであり、一般的にはDX戦略と呼ばれることも多いです。
この全体方針は、全庁的に一貫した取り組みを継続していくために不可欠なものであり、明確に策定し広く共有することが求められます。
たとえば以下は、群馬県前橋市の事例です。ビジョンに加えてミッション・バリューを明示し、それを実現するための3つの柱と8つの重点事業を設定しています。
併せて以下のような工程表を作成すれば、自治体DXの全体方針を決めることができます。
※DX戦略についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
6-3.ステップ2:推進体制の整備
自治体DXの全体方針を決定したら、推進体制を整備します。自治体DXの推進体制は、以下の両面から検討する必要があります。
・組織 |
組織
司令塔としての役割を果たすDX推進担当部門を設置した上で、各部門と緊密に連携する全庁的・横断的な推進体制を構築します。
具体的には、首長のリーダーシップのもと、最高情報統括責任者(CIO:Chief Information Officer)を任用し、全体状況と部門間の連携をマネジメントしながら活動できる状況を作ります。
人材
各部門の役割に見合ったデジタル人材が適切に配置されるよう人材育成に取り組むと共に、必要に応じて外部人材の活用や民間事業者への業務委託なども検討します。
たとえば以下は、高知県高知市の事例です。DX推進本部の下に幹事会を、その下にプロジェクトチームを設置して指示系統を明確化すると共に、組織内で横断的な取り組みを進められるような体制を構築しています。
6-4.ステップ3:DXの取り組みの実行
自治体DXの推進体制が整備できたら、取り組みを実行します。
ステップ1で策定した全体方針に則り、関連する公的資料やガイドラインなどをふまえて、個別の取り組みを計画的に進めていきます。
KPI(重要業績評価指標)の設定・PDCAサイクルやOODA(ウーダ)ループといったフレームワークの活用によって、全体方針における進捗管理を行うことが求められます。
7.自治体DXを成功させるためのポイント
自治体DXの手順がわかったところで、成功させるためにはどのような点に配慮すべきか、ということを確認しておきましょう。
自治体DXを成功させるためのポイントには、以下のようなものがあります。
それぞれの内容について、解説していきます。
7-1.明確なDX戦略を策定する
自治体DXを成功させるために欠かせないのは、明確なDX戦略を策定することです。
DX戦略とは「6-2.ステップ1:全体方針の決定」で解説した全体方針と同義だと考えて構いません。DXを推進するにあたり、どんなビジョンに向かってどのように施策を講じていくかを定めたものです。
行政サービスの変革である自治体DXでは、長期的な取り組みを継続することが求められます。しかしロードマップとなるDX戦略が不明確であれば、道筋を見失ってしまう可能性があるのです。
ビジョンや工程表を細部まで検討し、明文化して全職員に周知するようにしましょう。
7-2.全職員が一丸となって取り組む
自治体DXを成功させるためには、全職員が一丸となって取り組むことも不可欠です。
なぜなら、DXのビジョンを達成するためには、全職員が部門を超えて協同する必要があるからです。職員間の理解度や意欲の差が大きければ、取り組みがスムーズに進まないかもしれません。
各部門を巻き込んだ推進体制を構築すると共に、DX戦略を全職員に周知して皆で取り組む必要性があることを伝え、一人ひとりが自分事として認識できるように働きかけましょう。
7-3.住民の反応を確認しながら進める
自治体DXにおいては、住民の反応を確認しながら進めることも重要です。
自治体DXのビジョンは「誰もが幸せに暮らせる社会の実現」であり、そのための行政サービス変革なので、住民に恩恵がなければ意味がないからです。
地域特性に配慮した施策を検討すると共に、利用率やアンケートなどのデータから住民目線でその効果を評価し、最適解を模索し続ける姿勢が求められます。
7-4.外部サポートを有効活用する
自治体DXの推進にあたっては、外部サポートを有効活用するのもおすすめです。
DXを成功させるためには取り組みをリードできる人材の存在が不可欠ですが、「デジタル専門人材の不足」で解説したように、自治体で確保することは容易ではないからです。
実際に「自治体DX全体手順書【第2.1版】」も、必要に応じて外部人材の活用や民間事業者への業務委託などを検討するようにすすめています。
ただしその場合には、守秘義務や公平性・透明性の確保にかかわる措置について、契約書や業務委託仕様書などで担保することが必要になります。具体的な考え方や手順については「自治体DX全体手順書【第2.1版】」に記載されていますので、参照しながら進めると安心でしょう。
自治体DXの総合支援についてはトランスコスモスにご相談ください |
自治体DXのサポートをお求めの場合には、トランスコスモスにご相談ください。 課題抽出から戦略立案に始まり、システム開発・導入に加えて、運用まで支援します。さらに、DX推進のための人事戦略や職員のトレーニング支援にも対応可能です。 また、導入を急ぐケースや短期間のスポット対応、試験導入にも柔軟に対応いたします。 具体的なサービスの一例は、以下のようになります。 ・DEC Bot for Government(オンラインでの申請書作成) どんなサポートを依頼すべきかわからないという段階のご相談もお受けできますので、まずはお気軽にお問い合わせください。 |
8.自治体DXで確認しておきたい参考資料
最後に、自治体DXに関する参考資料をご紹介しておきます。
全て政府が公表している資料で、自治体DX推進にあたっては欠かせないものになりますので、必要に応じて参照することをおすすめします。
自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】 自治体DX推進参考事例集 自治体DX推進手順書 ・自治体 DX 全体手順書【第 2.1 版】 |
まとめ
この記事では、自治体DXとは何かについて詳しく解説しました。以下に要点をまとめます。
自治体DXとは、「誰もが幸せに暮らせる社会の実現」というビジョンに向けて、デジタル技術を活用して行政サービスの質向上を図ることです。
自治体DXの指針として政府が公表している「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第2.0版】」によると、重点的に取り組むべき事項は以下の6つです。
1)自治体の情報システムの標準化・共通化 |
自治体DXに取り組むメリットには、以下のようなものがあります。
・住民の利便性が向上する |
政府が公表している「自治体DX全体手順書【第2.1版】」によると、自治体DXの手順は以下の4ステップになります。
ステップ0:認識共有・機運醸成 |
自治体DXを成功させるためには、以下のポイントをおさえましょう。
・明確なDX戦略を策定する |
社会的なDX推進の波は、自治体でも避けることはできません。住民だけではなく職員の負担軽減にもつながるため、この記事の内容を参考に、前向きに取り組んでみてはいかがでしょうか。